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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 C02F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C02F
管理番号 1387854
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-03-02 
確定日 2022-08-05 
事件の表示 特願2019−540014「油脂含有排水処理方法、システムおよび装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 5月23日国際公開、WO2019/098255、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2018年(平成30年)11月14日(優先権主張 平成29年11月14日 日本国、平成30年10月26日 日本国)を国際出願日とする出願であって、その後の実体審理に関する経緯は、概ね以下のとおりである。

令和 1年 7月23日 :手続補正書の提出
同年 8月 6日 :手続補正書(方式)の提出
同年 9月19日付け:拒絶理由の通知
同年11月 7日 :応対記録
同年11月19日 :応対記録
同年11月22日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 1月 9日 :刊行物等提出
同年 1月21日付け:拒絶理由の通知
同年 2月10日 :刊行物等提出
同年 3月 4日 :応対記録
同年 3月 9日 :意見書、手続補正書の提出
同年 4月 3日 :刊行物等提出
同年 5月14日 :刊行物等提出
同年 6月30日付け:拒絶理由の通知
同年 8月25日 :応対記録
同年 9月30日 :意見書、手続補正書の提出
同年11月11日 :刊行物等提出
同年11月19日付け:拒絶査定
令和 3年 3月 2日 :審判請求書、手続補正書の提出
同年 3月 9日付け:手続補正指令書(方式)の通知
同年 3月23日 :手続補正書(方式)の提出
同年 5月18日 :前置報告
令和 4年 3月29日付け:拒絶理由の通知
同年 4月14日 :刊行物等提出
同年 5月17日 :意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明
本願請求項1〜12に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」などといい、纏めて「本願発明」という。)は、令和4年5月17日になされた手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1〜12に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
油脂含有排水が連続的に流入出する油脂分解槽に、油脂分解能力を有する微生物製剤を連続的又は間欠的に投入し、油脂を分解する工程であって、前記微生物製剤の投入量が、微生物が油脂分解槽に定着するのに有効な量であり、油脂含有排水には前記微生物製剤に含まれる投入微生物以外の微生物が存在する、工程を含み、
前記油脂分解槽からの流出水中の投入微生物量が、1×108cells/mL以下であり、
前記微生物製剤の投入量が、油脂分解槽中の排水に対して5.0×104cells/mL以上であり、
前記微生物製剤が、22〜35℃、pH=5.5〜8.5、DO≧0.1mg/L、バッチ培養の条件で、1.0×106cells/mLになるように植菌された場合に、n−Hex値=10000mg/L相当の油脂及び加水分解物産物の脂肪酸を、72時間内に80%以上分解する能力を有し、
前記排水が平均してノルマルヘキサン抽出物300mg/L以上の濃度の油脂を含み、
前記油脂分解槽の水理学的滞留時間(HRT)が12時間以上であり、
前記微生物製剤の投入間隔は、前記HRT以下であり、
前記油脂分解槽中の油脂含有排水のpHが4.5〜9.0の範囲内であり、
前記油脂分解槽中の油脂含有排水の温度が12〜42℃の範囲内であり、
前記油脂分解槽からの流出水中の投入微生物の濃度が、前記油脂分解槽に投入する投入時投入微生物の濃度の0.1倍以上100倍以下であり、
前記投入微生物がバークホルデリア・アルボリスを最も多く含み、
前記油脂分解槽は担体を含まない、油脂含有排水処理方法。
【請求項2】
前記投入微生物が、リパーゼを生産する微生物、並びに脂肪酸及び/又はグリセロールを分解する微生物からなる群から選択される少なくとも1種の微生物をさらに含む、請求項1に記載の処理方法。
【請求項3】
前記投入微生物が、バチルス属細菌、コリネバクテリウム属細菌、ロドコッカス属細菌、バークホルデリア属細菌、アシネトバクター属細菌、シュードモナス属細菌、アルカリゲネス属細菌、ロドバクター属細菌、ラルストニア属細菌、アシドボラックス属細菌、セラチア属細菌、フラボバクテリウム属細菌、カンジダ属酵母、ヤロウィア属酵母、クリプトコッカス属酵母、トリコスポロン属酵母、及びハンゼヌラ属酵母からなる群から選択される少なくとも1種の微生物をさらに含む、請求項1または2に記載の処理方法。
【請求項4】
前記投入微生物がヤロウィア・リポリティカをさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の処理方法。
【請求項5】
前記投入微生物の投入量が、油脂分解槽中の排水に対して5.0×104〜1.0×107cells/mLとなる量である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の処理方法。
【請求項6】
前記投入微生物の投入量が、前記油脂分解槽に流入する油脂含有排水中のノルマルヘキサン抽出物1mg当たり、3.0×104〜1.0×108cellsである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の処理方法。
【請求項7】
前記投入微生物の投入量が、前記油脂分解槽に流入する油脂含有排水中のノルマルヘキサン抽出物1mg当たり、3.0×104〜1.0×107cellsである、請求項6に記載の処理方法。
【請求項8】
前記油脂分解槽中の油脂含有排水の溶存酸素濃度が0.05mg/L以上である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の処理方法。
【請求項9】
前記油脂分解槽のHRTが12時間以上48時間以下である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の処理方法。
【請求項10】
前記油脂分解槽中の油脂含有排水のC/Nが2〜50の範囲内である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の処理方法。
【請求項11】
前記油脂分解槽中の油脂含有排水のN/Pが1〜20の範囲内である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の処理方法。
【請求項12】
前記油脂分解槽からの流出水中の投入微生物の濃度が、前記油脂分解槽に投入する投入時投入微生物の濃度の0.1倍〜10倍である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の処理方法。」

第3 原査定及び当審拒絶理由の概要
1 原査定(令和2年11月19日付け拒絶査定)の概要
(1)令和2年9月30日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の記載は、以下の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない(査定理由2:サポート要件違反)。
発明の詳細な説明において実質的に開示されているのは、微生物製剤はバークホルデリア・アルボリスとヤロウィア・リポリティカの混合製剤のみであるから、この混合製剤で担体を含まずに特定の条件で得られた所期の効果を、たとえ微生物製剤の能力として「22〜35℃、pH=5.5〜8.5、DO≧0.1mg/L、バッチ培養の条件で、1.0×106cells/mLになるように植菌された場合に、n−Hex値=10000mg/L相当の油脂及び加水分解物産物の脂肪酸を、72時間内に80%以上分解する能力を有する」と特定されていて、その投入量や分解槽の運転環境について特定されていたとしても、単にバークホルデリア・アルボリスを含むとする微生物製剤全体にまで拡張乃至一般化できるとはいえない。

(2)上記特許請求の範囲の請求項1〜14に係る発明は、下記引用文献2に記載された発明及び引用文献4〜6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない(査定理由3:進歩性欠如)。

引用文献2:特開2011−182782号公報
引用文献4:特許第5470614号公報
引用文献5:特開2017−177031号公報
引用文献6:堀克敏,Journal of Environmental Biotechnology,2017年,Vol.17, No.1,p.3-8

2 当審拒絶理由の概要
令和3年3月2日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の記載は、以下(1)及び(2)の点で、特許法第36条第6項2号に規定する要件を満たしていない(当審拒絶理由:明確性要件違反)。
(1)投入微生物について
請求項1に記載の「投入微生物製剤がバークホルデリア・アルボリスを含み」とは、バークホルデリア・アルボリスを主体とするもの、すなわち、最も多く含まれる種類の微生物がバークホルデリア・アルボリスであることを意味するものであるのか否か不明確である。

(2)水理学的滞留時間(HRT)の数値範囲について
請求項9の「前記油脂分解槽の水理学的滞留時間(HRT)が1時間以上である」との記載は、これを引用する請求項1の「前記油脂分解槽の水理学的滞留時間(HRT)が12時間以上であり」との記載と整合しないものである。

第4 原査定の理由について
1 サポート要件違反について
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

(2)サポート要件に関する判断
ア 発明の課題
本願明細書の発明の詳細な説明を参照すると、バークホルデリア・アルボリス、バークホルデリア・アルボリスとカンジダ・シリンドラセアの併用又はバークホルデリア・アルボリスとヤロウィア・リポリティカの併用等により油脂を効率的に分解可能であるが(【0005】)、分解能力の高い微生物製剤を使用しても、その使い方が正しくないと目的の効果を得ることができないという問題を受け、多くの現場のように、油脂分解槽への排水の流入と流出が連続的であって(【0006】)、投入微生物以外にも雑多な微生物が無数に存在する環境、すなわち、排水が連続的に一定の滞留時間をもって流出し、目的の投入微生物が他の無数の微生物との生存競争に打ち勝って滞留時間より速い比増殖速度で増殖できないとウォッシュアウトしてしまうような環境で処理するという前提において(【0007】)、「油脂分解能力を有する微生物製剤を用いて、連続的に流入出し、雑多な微生物が存在する排水中の油脂の濃度を効果的に低下させる油脂含有排水処理方法」「を提供する」こと(【0012】)を、本願発明の課題にしていることが理解できる。

イ 本願発明の課題に対応する本願明細書の記載
本願明細書の発明の詳細な説明(以下、「発明の詳細な説明」という。)には、以下の記載がある(当審注:「・・・」は省略を表す。また、下線は当審で付したもの。以下同様。)
(ア)「【0032】
微生物製剤の一例として、22〜35℃、pH = 5.5〜8.5、DO≧0.1 mg/L、バッチ培養の条件で、n−Hex値 = 10000 mg/L相当の油脂及び加水分解物産物の脂肪酸を、72時間内に、好ましくは48時間以内に、より好ましくは36時間以内に、より一層好ましくは24時間以内に80%以上分解する能力を有する微生物製剤が挙げられる。」

(イ)「【0041】
微生物製剤の油脂分解槽への投入量は、微生物が油脂分解槽に(安定的に)定着できる量である。ここで、「定着」とは、目的微生物が淘汰されずに油脂分解が可能な程度、油脂分解槽に存在する状態のことを意味する。すわなち、排水が連続的に流出する条件であっても、投入した微生物がウォッシュアウトされない状態のことである。
・・・
【0043】
通常、投入微生物量は槽内の微生物増殖量より桁違いに低く、増殖した微生物によって排水処理を試みるのが当該分野の一般的な認識であった。しかしながら、本発明者は、微生物を増殖させることを企図せず、仮に投入した微生物が増殖しない場合でも補うことができるかを検討し、
投入微生物量=流出微生物量
で補うことを考えた。・・・
すなわち、
投入微生物濃度が排水における油脂分解を担うことになる。当該分野では十分に油脂分解を行うためには、微生物を増殖させ、増殖した微生物によって油脂分解を達成する必要があると認識されていたが、本発明者は予想外に、投入微生物濃度によって、微生物の増殖に依存することなく油脂分解を達成することができることを見出した。もちろん、投入した微生物が増殖する場合であっても、本発明の利点は同様に享受可能である。
・・・
【0063】
・・・しかし、無数の種類と数の微生物が存在する排水の流れの中では、投入微生物の栄養分となる油脂が存在していても、純粋微生物のバッチ培養のように数百倍に増えることは難しい。油脂の濃度がそれほど高くない条件では、微生物濃度が減少することさえある。
【0064】
しかし、このような条件でも、本発明によれば、油脂の効率的分解は可能である。本発明は、いかに排水中で投入微生物を増殖させるかがポイントではなく、油脂の濃度に応じた一定濃度以上の投入微生物が排水中に存在していればよいという新しい概念に基づくものである。」

(ウ)「【0093】
試験例1:溶存酸素濃度(DO)の影響
・・・微生物製剤にはバークホルデリア・アルボリスとヤロウィア・リポリティカの混合製剤を使用し、前者の微生物濃度が1.0×106 cells/mLになるように、分解試験開始時に植菌した。後者の微生物濃度は、植菌時も培養中も前者の1/10程度の細胞数であることが通常であるため、前者の濃度を総投入微生物濃度とした。」

(エ)「【0101】
試験例6:間欠式投入における投入時の投入微生物濃度の影響
・・・
【0103】
微生物製剤を間欠投入する分解試験を、実排水を連続的にデモ試験機に流しながら実施した。現場において、間欠投入時の微生物濃度をステップ式に上げていった。微生物製剤には、試験例1と同じバークホルデリア・アルボリスとヤロウィア・リポリティカの混合製剤を使用した。
・・・
【0105】
6−1.低濃度油脂(n−Hex値300 mg/L程度)排水における結果
n−Hex値のレベルが300 mg/Lレベル、排水量100トン/日の現場において、1/1000の規模の100L/日の処理速度で試験を行った。油脂分解槽の処理水体積を50L、滞留時間を12時間に設定した。5×106、5×107、1×108、又は5×108cells/mLの濃度の微生物製剤を処理水体積の1/1000である50mLずつ、滞留時間に合わせるように1日2回投入した。結果を図6に示す。投入時の投入微生物濃度は、5×103、5×104、1×105、5×105 cells/mLとなる(×印)。
【0106】
その結果、投入時の投入油分解菌濃度が5×104 cells/mL以上で、n−Hex値が大幅に減少した。微生物の投入を停止すると(投入時投入微生物濃度ゼロ)、油分の濃度が即日に上昇したが、再投入により油分の分解は速やかに回復した。油脂を分解しているにも関わらず、どの投入量においても投入した微生物の100倍以上の増殖は認められなかった。また、投入時の投入油分解菌濃度が1×105cells/mLで該微生物の増殖は認められず、5×105cells/mLでは減少した。
・・・
【0108】
また、この排水中には、投入微生物以外に、もともと2×107 cells/mL程度の微生物(図6△印)が存在し、油脂分解微生物製剤を投入しても、全微生物濃度に大きな変動はなかった。流出水中の投入微生物の濃度は全微生物濃度の1%以下であり、投入微生物が優占種又は主要な種とならなくても分解効果が発揮可能であるということも、これまでの生物工学の常識から外れる。」

(オ)「【0118】
試験例7:連続式投入における投入時の投入微生物濃度の影響
工場の排水処理現場に、試験例6と同じ現場実証デモ試験機を設置して、排水を連続的に流しながら、微生物製剤も連続投入する分解試験を行った。各現場において供給微生物濃度を3日毎に、投入時の投入微生物濃度が5×103から1×107cells/mLの範囲内になるように、ステップ式に上げていった。微生物製剤には、試験例1と同じバークホルデリア・アルボリスとヤロウィア・リポリティカの混合製剤を使用し、前者の微生物濃度を総投入微生物濃度とした。
・・・
【0120】
7−1.低濃度油脂(n−Hex値300 mg/L程度)排水における結果
n−Hex値のレベルが300 mg/Lレベル、排水量100トン/日の現場において、1/1000の規模の100L/日の処理速度で試験を行った。油脂分解槽の処理水体積を50L、滞留時間を12時間に設定した。5×106、5×107、1×108、又は5×109cells/mLの濃度の微生物製剤を処理水流量の1/1000である4.17mL/hの供給速度で連続的に投入した。結果を図10に示す。投入時の投入微生物濃度は、5×103、5×104、1×105、5×105 cells/mLとなる(×印)。
【0121】
その結果、間欠式投入のときと同様に、投入時の投入微生物濃度が5×104 cells/mL以上で、n−Hex値が大幅に減少した。微生物の投入を停止すると(投入時投入微生物濃度ゼロ)、油分の濃度が即日に上昇した。油脂を分解しているにも関わらず、どの投入量においても投入した微生物の100倍以上の増殖は認められなかった。・・・
【0122】
また、この排水中には、投入微生物以外に、もともと2×107 cells/mL程度の微生物(図10△印)が存在し、油脂分解微生物製剤を投入しても、全微生物濃度に大きな変動はなかった。流出水中の投入微生物の濃度は全微生物濃度の1%程度又はそれ以下であり、投入微生物が優占種又は主要な種とならなくても分解効果が発揮可能であった。」

(カ)「【図6】



(キ)「【図10】



上記(イ)によれば、発明の詳細な説明には、無数の種類と数の微生物が存在する排水が連続的に流れる環境において、排水における油脂分解を投入微生物に担わせること、すなわち、微生物が油脂分解槽に安定的に定着できるように微生物製剤を油脂分解槽に投入することにより流出微生物量を投入微生物量で補い、微生物の増殖に依存することなく油脂分解を達成することが記載されている。
そして、上記(エ)、(カ)の試験例6、及び同(オ)、(キ)の試験例7を参照すると、n−Hex値が300mg/Lレベルの排水を滞留時間を12時間にして油脂分解槽で処理するとき、所定の油脂分解能力を有する微生物製剤を間欠又は連続式で5×104 cells/mL以上の濃度で投入することでn−Hex値が大幅に減少したこと、このとき、投入微生物に100倍以上の増殖はなく、微生物製剤の投入により排水の全微生物濃度にも大きな変動がなかったことが裏付けられているから、少なくとも、上記(エ)、(カ)の試験例6や同(オ)、(キ)の試験例7の態様であれば、「油脂分解能力を有する微生物製剤を用いて、連続的に流入出し、雑多な微生物が存在する排水中の油脂の濃度を効果的に低下させる油脂含有排水処理方法」「を提供する」という本願発明の課題を解決できることを当業者は認識できる。

ウ 特許請求の範囲の記載と本願明細書の発明の詳細な説明の記載との対比
上記イで検討したとおり、本願発明の課題は、上記イ(エ)、(カ)の試験例6や同(オ)、(キ)の試験例7の態様であれば解決できることが認識できるところ、本願発明1では、「油脂含有排水が連続的に流入出する油脂分解槽に、油脂分解能力を有する微生物製剤を連続的又は間欠的に投入し、油脂を分解する工程であって、前記微生物製剤の投入量が、微生物が油脂分解槽に定着するのに有効な量であり、油脂含有排水には前記微生物製剤に含まれる投入微生物以外の微生物が存在する、工程を含」むことを前提にすることが特定されている。
さらに、本願発明1において、「前記排水が平均してノルマルヘキサン抽出物300mg/L以上の濃度の油脂を含み、前記油脂分解槽の水理学的滞留時間(HRT)が12時間以上であ」ることは、上記イにおける、「n−Hex値が300mg/Lレベルの排水を滞留時間を12時間にして油脂分解槽で処理する」ことに対応するものであるし、本願発明1において、「前記微生物製剤が、22〜35℃、pH=5.5〜8.5、DO≧0.1mg/L、バッチ培養の条件で、1.0×106cells/mLになるように植菌された場合に、n−Hex値=10000mg/L相当の油脂及び加水分解物産物の脂肪酸を、72時間内に80%以上分解する能力を有」する「微生物製剤の投入量が、油脂分解槽中の排水に対して5.0×104cells/mL以上であ」ることは、上記イにおける「所定の油脂分解能力を有する微生物製剤を5×104cells/mL以上の濃度で投入すること」に対応するものであるし、本願発明1の「前記油脂分解槽からの流出水中の投入微生物の濃度が、前記油脂分解槽に投入する投入時投入微生物の濃度の0.1倍以上100倍以下であり」は、上記イにおける「投入した微生物について100倍以上の増殖はなく」に対応するものである。
そして、これらの対応関係にかんがみれば、本願発明1は、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が本願発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるということができる。

エ 小括
以上で検討したとおり、本願発明1は、その課題を解決できるものであって、発明の詳細な説明に記載された発明であるといえる。
また、本願発明1を引用する本願発明2〜12についても同様の理由により、発明の詳細な説明に記載された発明であるといえる。
よって、上記第3の1(1)の理由はない。

進歩性欠如について
(1)引用文献2の記載事項及び引用文献2に記載された発明について
ア 引用文献2の記載事項について
(ア)「【請求項1】
Serratia marcescens KY29株(FERM P−21888)である油脂分解微生物。
【請求項2】
セラチア(Serratia)属に属し、油脂分解能を有する油脂分解微生物が、担体に固定化されてなる微生物固定化担体。
・・・
【請求項7】
前記油脂分解微生物とは別種類の油脂分解微生物がさらに固定化されていることを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載の微生物固定化担体。
【請求項8】
別種類の油脂分解微生物が、セラチア(Serratia)属、バークホルデリア(Burkholderia)属、・・・からなる群より選ばれた属に属するものであることを特徴とする請求項7に記載の微生物固定化担体。
・・・
【請求項14】
油脂を含有する廃水を処理する方法であって、請求項2〜8のいずれかに記載の微生物固定化担体を前記廃水に接触させる工程を包含することを特徴とする廃水の処理方法。」

(イ)「【0005】
また、微生物製剤を用いて廃水処理する場合には、処理槽内に添加した微生物が流入廃水によって希釈されてしまい、微生物濃度を適正値に維持することが難しいという問題がある。さらに、微生物製剤を構成する微生物は廃水処理系において外来種であることが多く、土着微生物群との生存競争に不利であり、処理槽内に定着させることが難しいという問題もある。したがって、油脂分解微生物が廃水処理系に安定して存在でき、油脂含有廃水を長期にわたって安定的に処理できる技術が求められている。
【0006】
上記した現状に鑑み、本発明は、油脂分解能に優れた新規油脂分解微生物を提供するとともに、当該油脂分解微生物を利用した一連の廃水処理技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、より高い油脂分解能を有する新規微生物を分離すべく、様々な環境から採取した土壌を分離源として微生物のスクリーニングを行った。その結果、高い油脂分解能に加え、接触材(担体)への高い親和性を有し、さらに、他の微生物との共生能力にも優れた新規油脂分解微生物を分離することに成功した。そして、当該油脂分解微生物を利用した一連の廃水処理技術を開発し、本発明を完成した。

(ウ)「【0046】
以上の菌学的性質と16rDNA塩基配列の相同性より、KY29株はSerratia marcescensおよびSerratia nematodiphilaに近縁なSerratia sp.と同定された。
・・・
【0048】
本発明の微生物固定化担体は、セラチア属に属する油脂分解微生物(KY29株等)が担体に固定化されてなるものである。担体の材質としては特に限定はないが、樹脂製のものが特に好ましい。・・・担体の形状としては、立方体状、直方体状、円柱状、球状、円板状、シート状、膜状など特に限定はない。これらの条件を満たす担体の具体例として、積水化学工業株式会社製の「ソフトロンキューブ」が挙げられる。
・・・
【0051】
KY29株と共存(共生)させる別種類の油脂分解微生物として、本発明者らが分離してIPODに寄託した、Acinetobacter sp. KY3株(FERM P−21887)(以下、「KY3株」と略記することがある)、Burkholderia sp. OGA4-3株(FERM P−21889)(以下、「OGA4−3株」と略記することがある)、又はBurkholderia sp. OGA29-2株(FERM P−21890)(以下、「OGA29−2株」と略記することがある)を採用することが特に好ましい。OGA4−3株とOGA29−2株はいずれも単独では担体に固定化されにくいが、KY29株との共存(共生)により、担体に強固に固定化されるようになる。
・・・
【0056】
本発明の廃水の処理方法は、・・・樹脂発泡体からなる接触材を担体として用いる流動床式の処理に特に好ましく適用される。また、本発明の廃水の処理方法は、回分式、連続式のいずれの処理方式にも適用できる。
・・・
【0085】
(3)接触材(担体)との親和性評価
・・・結果を表2に示す。・・・
【表2】


【0086】
(4)廃水処理システムにおける接触材(担体)への固定化特性評価
実廃水を用いた複合微生物系で、各油脂分解微生物の接触材への固定化特性を評価した。廃水試料として、食品工場の廃水処理施設に流入する廃水を使用した。処理方法として、fill & draw方式による回分式処理を採用した。廃水処理槽として、通気により旋回流を発生できる実容量800mLの実験処理槽を用いた。樹脂製担体の充填率は、投入廃水量に対する体積比で20%とした。
同時に、樹脂製担体を用いない点のみが異なる活性汚泥法としての回分式試験も実施した。」

(エ)「【0091】
(5)廃水処理現場での廃水処理実験
・・・
【0092】
本食品工場から排出される廃水(原水)は植物油と動物油を含有するものであり、その水質は平均して、
・生物化学的酸素要求量(BOD):1200mg/L、
・懸濁物質(SS):840mg/L、
・n−ヘキサン抽出物質量:300mg/L、
・pH:6〜8、
である。・・・実験装置へ供給する廃水(原水)は既存の処理装置が備える調整槽から採取し、流入水量負荷が既存の処理装置と同様になるよう設定した。実験装置への廃水(原水)供給は定量ポンプを用いて連続的に行い、廃水の連続式処理を行った。各廃水処理槽には樹脂製接触材(積水化学工業社製、架橋ポリエチレン系樹脂発泡体、10ミリ角立方体、商品名:ソフトロンキューブ)を充填した。充填量は、体積比で廃水処理槽(100L)の20%とした。
【0093】
表2のNo.1〜4の新規微生物を、上記栄養培地Bを用いてそれぞれ純粋培養した後、得られた培養液を遠心処理して体積比1/50まで濃縮した。OD660の測定値で各菌体が均等に含まれるよう混合した濃縮液に等量の50%グリセロールを加えて混和し、接種用混合菌液を調製した。接種用混合菌液は−18℃以下で使用時まで凍結保存した。pHを調整することなく廃水(原水)を第一処理槽に流入させ、両槽への通気を開始し、同時に接種用混合菌液10mLを第一処理槽に添加した。その後、1週間に3回のサイクルで接種用混合菌液10mLを定期的に添加した。定期的にサンプリングを行い、原水と一次処理水の水質評価、並びに樹脂製担体に固定化された生物汚泥の微生物群集構造解析を行った。通気開始から約2ヶ月(8月〜10月)にわたって実験を行った。
【0094】
2台の廃水処理槽を直列に接続した廃水処理装置においては、原水が最初に流入する第一処理槽に最も高い処理能力が求められる。そこで、第一処理槽に流入した原水と第一処理槽で処理された一次処理水について水質分析を行い、処理能力の評価を行った。分析項目として、油脂濃度の指標であるn−ヘキサン抽出物質の除去量を採用し、処理槽単位体積当たりの24時間で分解したn−ヘキサン抽出物質量(g/m3・日)で評価した。結果を表3に示す。・・・
【表3】



イ 引用文献2に記載された発明について
(ア)引用文献2の上記ア(ア)の請求項14には、「油脂を含有する廃水を処理する方法」が記載されている。
(イ)そして、この方法の実施例の記載である、同(エ)の【0092】の「本食品工場から排出される廃水(原水)は植物油と動物油を含有するものであり、その水質は平均して、
・生物化学的酸素要求量(BOD):1200mg/L、
・懸濁物質(SS):840mg/L、
・n−ヘキサン抽出物質量:300mg/L、
・pH:6〜8、である。・・・実験装置へ供給する廃水(原水)は既存の処理装置が備える調整槽から採取し、流入水量負荷が既存の処理装置と同様になるよう設定した。実験装置への廃水(原水)供給は定量ポンプを用いて連続的に行い、廃水の連続式処理を行った。各廃水処理槽には樹脂製接触材(積水化学工業社製、架橋ポリエチレン系樹脂発泡体、10ミリ角立方体、商品名:ソフトロンキューブ)を充填した。充填量は、体積比で廃水処理槽(100L)の20%とした。」との記載によれば、同【0092】には、「油脂を含有する廃水を処理する方法」において、油(植物油と動物油)を含有する廃水が連続的に供給される実験装置(廃水処理槽)において、廃水を処理する工程が行われること、また、前記廃水処理槽には、微生物固定化担体である10ミリ角立方体の樹脂製接触材が充填されること(上記ア(ア)の【請求項2】)、及び(廃水の)水質は平均して、n−ヘキサン抽出物質量:300mg/Lであり、pH:6〜8であることが記載されているといえる。
(ウ)また、同【0093】の「表2のNo.1〜4の新規微生物を、上記栄養培地Bを用いてそれぞれ純粋培養した後、得られた培養液を遠心処理して体積比1/50まで濃縮した。OD660の測定値で各菌体が均等に含まれるよう混合した濃縮液に等量の50%グリセロールを加えて混和し、接種用混合菌液を調製した。接種用混合菌液は−18℃以下で使用時まで凍結保存した。pHを調整することなく廃水(原水)を第一処理槽に流入させ、両槽への通気を開始し、同時に接種用混合菌液10mLを第一処理槽に添加した。その後、1週間に3回のサイクルで接種用混合菌液10mLを定期的に添加した。」との記載によれば、上記(ア)の廃水を処理する工程においては、表2のNo.1〜4の新規微生物を含む接種用混合菌液が定期的に添加され、同【0094】の「分析項目として、油脂濃度の指標であるn−ヘキサン抽出物質の除去量を採用し、処理槽単位体積当たりの24時間で分解したn−ヘキサン抽出物質量(g/m3・日)で評価した。」との記載によれば、前記接種用混合菌液は、n−ヘキサン抽出物質を分解しているといえる。
加えて、表2のNo.1〜4の新規微生物は、上記ア(ア)の【請求項2】の記載によれば、油脂分解能を有する微生物であると共に、同(ウ)の【0085】【表2】によれば、KY29株及びOGA29−2株を含むものであり、さらに、同【0046】の「KY29株はSerratia marcescensおよびSerratia nematodiphilaに近縁なSerratia sp.と同定された。」及び同【0051】の「Burkholderia sp. OGA29-2株(FERM P−21890)(以下、「OGA29−2株」と略記することがある)を採用することが特に好ましい。」との記載によれば、上記「KY29株」及び「OGA29−2株」は、それぞれ、セラチア(Serratia)属及びバークホルデリア(Burkholderia)属に属する微生物である。
以上によれば、上記【0093】及び【0094】には、上記(ア)の廃水を処理する工程においては、油脂分解能を有する微生物を含む接種用混合菌液が定期的に添加され、n−ヘキサン抽出物質を分解している工程であり、微生物は、セラチア(Serratia)属に属するKY29株、及びバークホルデリア(Burkholderia)属に属するOGA29−2株を含むことが記載されているといえる。
以上(ア)〜(ウ)に記載されているといえる事項をまとめると、引用文献2には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「油を含有する廃水が連続的に供給される廃水処理槽に、油脂分解能を有する微生物を含む接種用混合菌液が定期的に添加され、n−ヘキサン抽出物質を分解している工程であって、
前記廃水の水質は平均して、
n−ヘキサン抽出物質量が300mg/Lであり、
pHが6〜8であり、
前記微生物は、セラチア(Serratia)属に属するKY29株、及びバークホルデリア(Burkholderia)属に属するOGA29−2株を含み、
前記廃水処理槽には、微生物固定化担体である樹脂製接触材が充填される、油脂を含有する廃水を処理する方法。」

(2)引用発明との対比
ア 本願発明1と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「廃水処理槽」は油を含む廃水を処理するもので、油脂を分解するための槽であるといえるから、引用発明の「油を含有する廃水が連続的に供給される廃水処理槽に、油脂分解能を有する微生物を含む接種用混合菌液が定期的に添加され、n−ヘキサン抽出物質を分解している工程」は、本願発明1の「油脂含有排水が連続的に流入」「する油脂分解槽に、油脂分解能力を有する微生物製剤を」「間欠的に投入し、油脂を分解する工程」に相当する。

(イ)引用発明の「前記廃水の水質は平均して、n−ヘキサン抽出物質量が300mg/Lであり」は、本願発明1の「前記排水が平均してノルマルヘキサン抽出物300mg/L以上の濃度の油脂を含み」に相当する。

イ 以上のことから、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「油脂含有排水が連続的に流入する油脂分解槽に、油脂分解能力を有する微生物製剤を間欠的に投入し、油脂を分解する工程を含み、
前記排水が平均してノルマルヘキサン抽出物300mg/L以上の濃度の油脂を含む、
油脂含有排水処理方法。」

【相違点1】
油脂分解槽について、本願発明1は、油脂含有排水が流入出するものであるのに対し、
引用発明では、油脂含有廃水が流出することが特定されていない点。

【相違点2】
排水について、本願発明1は、「油脂含有排水には前記微生物製剤に含まれる投入微生物以外の微生物が存在する」ことが特定されるのに対し、
引用発明は、投入微生物以外の微生物が存在することが特定されていない点。

【相違点3】
微生物の量について、本願発明1は、「前記微生物製剤の投入量が、微生物が油脂分解槽に定着するのに有効な量であり」「前記油脂分解槽からの流出水中の投入微生物量が、1×108cells/mL以下であり、前記微生物製剤の投入量が、油脂分解槽中の排水に対して5.0×104cells/mL以上であり」「前記油脂分解槽からの流出水中の投入微生物の濃度が、前記油脂分解槽に投入する投入時投入微生物の濃度の0.1倍以上100倍以下であ」るのに対し、
引用発明は、当該構成について特定されていない点。

【相違点4】
微生物製剤について、本願発明1は、「22〜35℃、pH=5.5〜8.5、DO≧0.1mg/L、バッチ培養の条件で、1.0×106cells/mLになるように植菌された場合に、n−Hex値=10000mg/L相当の油脂及び加水分解物産物の脂肪酸を、72時間内に80%以上分解する能力を有し」「バークホルデリア・アルボリスを最も多く含」むものであるのに対し、
引用発明は、「セラチア(Serratia)属に属するKY29株、及びバークホルデリア族(Burkholderia)に属する微生物を含」むものである点。

【相違点5】
油脂分解槽における処理条件について、本願発明1は、「前記油脂分解槽の水理学的滞留時間(HRT)が12時間以上であり、前記微生物製剤の投入間隔は、前記HRT以下であり、前記油脂分解槽中の油脂含有排水のpHが4.5〜9.0の範囲内であり、前記油脂分解槽中の油脂含有排水の温度が12〜42℃の範囲内であ」るのに対し、
引用発明は、当該構成について特定されていない点。

【相違点6】
担体について、本願発明1は、「前記油脂分解槽は担体を含まない」のに対し、
引用発明は「前記処理槽には微生物固定化担体として樹脂性接触材を含む」点。

(3)判断
事案にかんがみ、相違点6から検討する。
上記(1)ア(イ)の【0005】〜【0007】によれば、引用発明の技術は、処理槽内に添加した微生物が流入廃水によって希釈されてしまい、微生物濃度を適正値に維持することが難しく、さらに、微生物製剤を構成する微生物は廃水処理系において土着微生物群との生存競争に不利であり、処理槽内に定着させることが難しいという問題を受けて、「油脂分解能に優れた新規油脂分解微生物を提供するとともに、当該油脂分解微生物を利用した一連の廃水処理技術を提供する」ことを課題とし、高い油脂分解能に加え、接触材(担体)への高い親和性を有する新規油脂分解微生物を用いることを特徴とするものである。
また、同(ウ)の【0086】に記載された接触材(担体)への固定化特性評価において、回分式での処理の際に樹脂製担体を用いない態様が記載されているが、これは樹脂製担体を用いる態様に対する比較対象として記載されているといえるものである。そうすると、担体への高い親和性を有する油脂分解微生物を用いることを特徴の一つとする引用発明において、担体を用いないようにすることの動機付けはなく、むしろ阻害要因がある。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本願発明2〜12についても事情は同じであるから、本願発明2〜12は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、上記第3の1(2)の理由はない。

第5 当審拒絶理由(明確性要件違反)について
1 令和4年5月17日になされた手続補正により、請求項1において、投入微生物はバークホルデリア・アルボリスを最も多く含むことが特定されたから、本願発明1は明確である。

2 同手続補正により、拒絶理由の対象とされた補正前の請求項9は削除された。

よって、本願発明1及びこれを引用する本願発明2〜12は明確であって、上記第3の2(1)及び(2)の理由はない。

第6 情報提供に対する判断
令和4年4月14日付けの刊行物等提出書において、「『本件明細書の段落番号[0101]〜[0139]に記載される微生物製剤はバークホルデリア・アルボリスとヤロウィア・リポリティカの混合製剤だけであり、単に「バークホルデリア・アルボリスを含」むとする微生物製剤全体にまで拡張乃至一般化できるとはいえない』という点、すなわちサポート要件不備の拒絶理由については未だ解消されておらず、拒絶審決とすべきである。」旨が主張されている。
しかしながら、本願発明1が、サポート要件の判断基準に照らして、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が本願発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであることは、上記第4の1のウで検討したとおりであり、上記主張は採用できない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由及び当審拒絶理由により本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-07-26 
出願番号 P2019-540014
審決分類 P 1 8・ 121- WY (C02F)
P 1 8・ 537- WY (C02F)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 原 賢一
特許庁審判官 金 公彦
関根 崇
発明の名称 油脂含有排水処理方法、システムおよび装置  
代理人 ▲駒▼谷 剛志  
代理人 山本 秀策  
代理人 山本 健策  
代理人 石川 大輔  
代理人 森下 夏樹  
代理人 飯田 貴敏  
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