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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01S
管理番号 1387901
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-04-26 
確定日 2022-08-04 
事件の表示 特願2017−567017「レーザモジュール」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 8月17日国際公開、WO2017/138649〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2017年2月10日(優先権主張 2016年2月12日)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は次のとおりである。
令和2年6月17日付け:拒絶理由通知書
令和2年8月24日 :意見書、手続補正書の提出
令和3年1月18日付け:拒絶査定
令和3年4月26日 :審判請求書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1〜16に係る発明は、令和2年8月24日に提出された手続補正書の請求項1〜16に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

<本願発明>
「レーザ光を発生させるレーザ発振部および前記レーザ光を導波する第1の光導波路を有し、第1の基板上に設けられるレーザ素子と、
前記レーザ光を導波する第2の光導波路を有し、第2の基板上に設けられる光学素子と、
を備え、
前記第1の光導波路は、前記第1の基板の出力端面に傾いて接続されており、
前記第1の光導波路から出力される前記レーザ光が前記第2の光導波路に光結合されるように、前記第1の基板および前記第2の基板が配置され、
前記第1の基板の前記出力端面に垂直な第1の軸は、前記第1の基板と前記第2の基板との間を進行するときの前記レーザ光の進行方向に対して傾いており、前記第2の基板の入力端面に垂直な第2の軸は、前記進行方向に対して前記第1の基板と反対の側又は同じ側に傾いている
ことを特徴とするレーザモジュール。」

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である以下の引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された技術的事項及び引用文献3に記載された技術的事項に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものを含むものである。

1.国際公開第2013/180291号
2.特開2011−211010号公報
3.特開2001−111177号公報

第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1(国際公開第2013/180291号)
(1)引用文献1に記載された事項
ア 引用文献1には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は当審が付した。以下同じ。)。
「[0016] (実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る半導体レーザモジュールの模式的な平面図である。図1に示すように、本実施形態1に係る半導体レーザモジュール100は、筐体1内に、第1の温度調節素子である温度調節素子2、支持部材3、分布帰還型(Distributed Feed Back:DFB)レーザ素子4、コリメートレンズ5、第2の温度調節素子である温度調節素子6、支持部材7、集光レンズ8、半導体光素子である半導体光増幅素子9、コリメートレンズ10、ビームスプリッタ11、12、パワーモニタ用フォトダイオード(Photo Diode:PD)13、エタロンフィルタ14、波長モニタ用PD15、光アイソレータ16、および集光レンズ17が収容された構成を有する。」

「[0024]
集光レンズ8は、コリメートレンズ5によって平行光にされたレーザ光L1を半導体光増幅素子9に集光して入力させる。
[0025] 半導体光増幅素子9は、活性層を含むストライプ状の埋め込みメサ構造の光導波路であるSOA部9aを有している。半導体光増幅素子9は、SOA部9aに入力されたレーザ光L1を光増幅して出力する。このとき、半導体光増幅素子9は、不図示の制御装置によって電力を供給され、レーザ光L1が所望の光強度になるように光増幅する。」

「[0027] 図2は、半導体光増幅素子9の模式的な断面図である。図2に示すように、半導体光増幅素子9は、裏面にn側電極9bが形成されたn型InP基板9c上に、順次積層した、下部クラッドを兼ねるn型InPバッファ層9d、組成を連続的に変化させた下部InGaAsP−SCH(Separate Confinement Heterostructure)層9e、MQW(Multi-Quantum Well)構造の活性層9f、上部InGaAsP−SCH層9g、およびp型InP層9hを備えている。」

「[0044] 上記実施形態1では、半導体レーザ素子として、ストライプ状の光導波路であるDFBレーザ部4aを有するDFBレーザ素子4を用いたが、半導体レーザ素子として、以下に示す構成のものを用いてもよい。
[0045] 図4は、半導体レーザ素子の別の実施形態1の模式的な平面図である。図4に示すように、半導体レーザ素子900は、半導体レーザ部910と、光導波部930とを備えている。
[0046] 半導体レーザ部910は、複数の半導体レーザ911と、各半導体レーザの出力側に設けられた複数のスポットサイズ変換器(Spot-Size Converter:SSC)912とを有している。
[0047] 各半導体レーザ911は、DFBレーザで構成されている。各半導体レーザ911は、各々の活性層のメサ幅が1.5μm〜3μmのストライプ状の埋め込みメサ構造を有する端面発光型レーザであり、半導体レーザ部910の幅方向に対してたとえば25μmピッチで形成されている。各半導体レーザ911は、各々に備えられた回折格子の周期を互いに異ならせることにより、出力光が単一モード発振のレーザ光となり、かつそのレーザ発振波長が、所望の波長範囲において3nm〜4nm程度の間隔で並ぶように設計されている。また、各半導体レーザ911は、温度調節によって例えば3nm〜4nm程度の範囲内でレーザ発振波長を変化させることができる。なお、半導体レーザ911の数はたとえば8、12、16等であるが、特に限定はされず、半導体レーザ素子900を波長可変光源として動作させる際の、所望の波長可変範囲に応じて適宜設定される。」

「[0057] 図5は、半導体レーザ素子の別の実施形態2の模式的な平面図である。図5に示すように、半導体レーザ素子900Aは、半導体レーザ部910Aと、光導波部930Aとを備えている。
[0058] 半導体レーザ部910Aは、半導体レーザ部910と同様に複数の半導体レーザ911を有しているが、複数のSSC912を有していない点が半導体レーザ部910とは異なる。
[0059] 光導波部930Aは、埋め込みメサ構造の半導体導波路で構成されており、半導体レーザ部910Aとモノリシックに形成されている。光導波部930Aは、複数の曲がり導波路931Aと、光合流器932Aとを有している。」

「[0061] 光合流器932Aは、MMI型の光カプラである。光合流器932Aは、各曲がり導波路931Aが導波したレーザ光を出力ポート932aAから出力させることができる。
[0062] 上述したように、半導体レーザ素子900Aは、モノリシックに形成された半導体レーザ部910Aと、光導波部930Aとが集積されたものである。」

「[0081]
集積型半導体レーザ素子40は、複数のDFBレーザストライプ40aと、複数のDFBレーザストライプ40aから出力されたレーザ光を導波する複数の光導波路40bと、複数の光導波路40bが導波したレーザ光を合流させることができる光合流器40cと、光合流器40cから出力されたレーザ光を導波する曲がり光導波路40dとを備えている。曲がり光導波路40dは、集積型半導体レーザ素子40の出力側端面において、該端面と垂直方向に対して約7°〜8°の角度をなすように屈曲している。これによって、集積型半導体レーザ素子40から出力されたレーザ光L1の出力側端面における反射光が、DFBレーザストライプ40a側に戻ることが防止される。」

「[0084]
(実施形態4)
図11は、本発明の実施形態3に係る半導体レーザモジュールの模式的な平面図である。図11に示すように、本実施形態3に係る半導体レーザモジュール400は、図10に示す半導体レーザモジュール300において、集積型半導体レーザ素子20を集積型半導体レーザ素子40に置き換え、集積型半導体レーザ素子40の近傍にパワーモニタ用PD41を設け、ビームスプリッタ30とパワーモニタ用PD31とを光増幅器、光変調器、PDなどを集積した半導体光素子である光集積素子42に置き換えた構成を有する。」

「[請求項1]
半導体レーザを有する半導体レーザ素子と、
前記半導体レーザ素子を載置する第1の支持部材と、
前記第1の支持部材を温度調整する第1の温度調節素子と、
前記半導体レーザ素子から出力されるレーザ光を増幅する半導体光増幅器を有する半導体光素子と、
前記半導体光素子を載置する第2の支持部材と、
を備えることを特徴とする半導体レーザモジュール。」

「図1



「図2



「図5



「図11



イ 上記アの記載によれば、実施形態1(図1)に係る半導体レーザモジュールであって、半導体レーザ素子が別の実施形態2(図5)であるものについて、以下の技術的事項が認められる。
(ア)SOA部9aは、半導体光増幅素子9の入力側端面と垂直に接続されている。(図1)

(イ)出力ポート932aAは、半導体レーザ素子900Aの出力側端面に垂直に接続されている。(図5)

(ウ)出力ポート932aA及びSOA部9aは、コリメートレンズ5及び集光レンズ8によって構成される光学系の光軸上に配置されている。(図1及び図5)

(エ)「半導体レーザ素子900A」は、「モノリシックに形成された半導体レーザ部910Aと、光導波部930Aとが集積されたもの」であるところ、一般に、基板上に複数の構成要素を一体のものとして集積したものを「モノリシック集積回路」と呼称することを踏まえると、「半導体レーザ部910A」及び「光導波部930A」が「モノリシック」に「集積された」ということは、「半導体レーザ部910A」及び「光導波部930A」が、基板上に、一体のものとして集積されたことを意味するといえる。
よって、「半導体レーザ部910A」及び「光導波部930A」は、基板上に一体のものとして集積されたものと認められる。([0057]、[0062])

(2)引用発明
上記(1)より、引用文献1には、実施形態1に係る半導体レーザモジュール(図1)であって、半導体レーザ素子が別の実施形態2(図5)であるものについて、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。なお、参考までに、引用発明等の認定に用いた引用文献1の記載等に係る段落番号等を括弧内に付してある(以下、同じ。)。

<引用発明>
「半導体レーザを有する半導体レーザ素子と、
前記半導体レーザ素子を載置する第1の支持部材と、
前記第1の支持部材を温度調整する第1の温度調節素子と、
前記半導体レーザ素子から出力されるレーザ光を増幅する半導体光増幅器を有する半導体光素子と、
前記半導体光素子を載置する第2の支持部材と、
を備える半導体レーザモジュールであって、(請求項1)
前記半導体レーザ素子900Aは、半導体レーザ部910Aと、光導波部930Aとを備え、モノリシックに形成された半導体レーザ部910Aと、光導波部930Aとが集積されたものであり、([0057]、[0062])
半導体レーザ部910A及び光導波部930Aは、基板上に一体のものとして集積されたものであり、(上記(1)イ(エ))
半導体レーザ部910Aは、複数の半導体レーザ911を有しており、([0058])
複数の半導体レーザ911は、DFBレーザで構成されており、([0047])
光導波部930Aは、埋め込みメサ構造の半導体導波路で構成されており、半導体レーザ部910Aとモノリシックに形成されており、複数の曲がり導波路931Aと、光合流器932Aとを有しており、([0059])
光合流器932Aは、各曲がり導波路931Aが導波したレーザ光を出力ポート932aAから出力させることができ、([0061])
出力ポート932aAは、半導体レーザ素子900Aの出力側端面に垂直に接続されており、(上記(1)イ(イ))
前記半導体光増幅素子9は、活性層を含むストライプ状の埋め込みメサ構造の光導波路であるSOA部9aを有しており、SOA部9aに入力されたレーザ光L1を光増幅して出力するものであり、([0025])
前記半導体光増幅素子9は、裏面にn側電極9bが形成されたn型InP基板9c上に、順次積層した複数の半導体層を備えており、([0027])
SOA部9aは、半導体光増幅素子9の入力側端面と垂直に接続されており、(上記(1)イ(ア))
出力ポート932aA及びSOA部9aは、コリメートレンズ5及び集光レンズ8によって構成される光学系の光軸上に配置されており、(上記(1)イ(ウ))
集光レンズ8は、コリメートレンズ5によって平行光にされたレーザ光を半導体光増幅素子9に集光させ入力させる、([0024])
半導体レーザモジュール。」

2 引用文献2(特開2011−211010号公報)
(1)引用文献2には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
ア 「【0002】
光ファイバ通信における波長多重通信方式では、複数の異なる波長の光信号を一本の光ファイバで伝送する。一般的に、光ファイバ通信の光源として単一モードで動作する半導体分布帰還型(DFB)レーザが用いられている。従って、波長多重通信のためには、異なる波長で動作するDFBレーザを複数個用い、それぞれを直接変調もしくは外部変調し、それらの光出力を、光結合器を用いて合波して伝送する。
【0003】
また、システムの小型化、低消費電力化のために、集積デバイスの開発も行われている。図4に従来の半導体光集積素子を示す。図4に示す半導体光集積素子(以下、これをチップとも称する)1は、同一基板1a上に作られた4つのDFBレーザ2A,2B,2C,2Dの光出力を、高周波信号を入力(印加)するための電極パッド3A,3B,3C,3Dを備えた4つの電界吸収型(EA)の外部変調器4A,4B,4C,4Dでそれぞれ変調し、光結合器5によって1本の光出力導波路6に合波する機能を有するEA‐DFBレーザ7A,7B,7C,7Dのアレイ素子である。これにより、パッケージ5を1つにすることができるため、個別に温度調節機構やレンズなどを持たせる場合に比べ、低消費電力、コスト削減を図ることが可能である。
なお、図4において、9はチップ1の光出射端面(半導体端面:ヘキ開面)1bにコーティングされた無反射コート、矢印Aはチップ1(光出力導波路6の光出力端6a)からの光の出射方向、10はレンズなどの光学部品である。
【0004】
単一モードで動作するDFBレーザなどの単一モードレーザは、一般的に反射光に弱いことが知られている。つまり、一度レーザ共振器外部に放出された光が反射されて再び共振器内部に入射することにより、反射波の強度や位相に応じて線幅の増大などを招き、通信の品質が劣化する。この反射波の影響はレーザ出射端面近傍の反射よりも、遠方の反射の方がより問題が大きい。そこで、非特許文献1のレーザアレイのように、レーザの後に半導体から空気中に出射するまでに光導波路が長く続くような素子の場合、半導体のヘキ開面(光出射端面)に無反射コートを施すだけでなく、光出力導波路をヘキ開面に対して斜めに配置することが行われており、無反射コートを施したヘキ開面でのわずかな反射光も光出力導波路に戻らないような構造としている。
【0005】
図5には光出力導波路6が、チップ1の光出射端面1bに対して斜めに形成した場合の構造を示す。なお、図5のチップ1の他の構成については、図1のチップ1と同様である。」

「【0007】
図5に示すように、光出力導波路6を光出射端面1bに対して斜めに配置した場合には、光の出射方向(矢印B方向)も光出射端面1bに対して斜めになる。従って、パッケージ8内での光学部品10の配置を簡便にするためには、パッケージ8内で、チップ1を斜めに配置し、矩形のパッケージ1の横方向(水平方向:x軸方向)に対して平行に光を出力する必要がある。
【0008】
簡単化のために平面波としてスネルの法則によって角度を考えると、半導体部分と空気の屈折率によって、光出力導波路6を角度θ1(即ち光出力導波路6と、光出射端面1bと直交する方向との成す角度θ1)だけ斜めにした場合には、光出射方向Bは角度θ2(即ち光出射方向Bと、光出射端面1bと直交する方向との成す角度θ2)となり、チップ1もその分傾ける必要がある。もし、チップ1を傾けない場合には、パッケージ8内でチップ1からパッケージ8まで光を導く経路上で光を曲げる必要があり、部品点数が増えることや、光軸調整に手間がかかり実装コストの増大を招くなどの問題が生じる。ここで、無反射コーティングなどを施し、半導体と空気の間に別の層があったとしても、図6の式から明らかのように、最終的な出力導波路6の角度と光出力方向の関係は同じである。」

「【0021】
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態例に係る半導体光集積素子(以下、これをチップとも称する)11は、同一のInP基板11a上に波長1.3μm付近に利得を持つGaInAsP多重量子井戸構造を活性層に持ち、回折格子を形成することで単一モード動作が可能な半導体分布帰還型(DFB)レーザ12A,12B,12C,12Dと、波長1.3μmより短波長側に吸収ピークを持つAlGaInAs多重量子井戸構造を吸収層とする電界吸収型(EA)変調器13A,13B,13C,13Dとをそれぞれ直列に集積した4つのEA-DFBレーザ14A,14B,14C,14Dを、等間隔DMODで並列に配置して集積し、それらの光出力を1本の光導波路にまとめるための1.1μm波長のバンドギャップを有するGaInAsPをコアとする光結合器(合波器)15及び光出力導波路16を集積したものである。
EA変調器13A〜13Dは、高周波信号を入力(印加)するための電極パッド17A,17B,17C,17Dをそれぞれ備えている。
光出力導波路16は、チップ11の光出射端面(半導体端面:ヘキ開面)11bに対して斜めに形成されている。
なお、図1において、22はチップ11の光出射端面11bにコーティングされた無反射コート、矢印Cはチップ11(光出力導波路16の光出力端16a)からの光の出射方向、21はレンズなどの光学部品、17はパッケージである。」(当審注:「……斜めに形成形成されている。」は、「……斜めに形成されている。」の明らかな誤記であるので、誤記を正した上で、摘記した。)

「【0023】
EA-DFBレーザ14A〜14D(DFBレーザ12A〜12D及びEA変調器13A〜13D)の間隔DMODは、高周波信号の相互干渉を避けるために余裕を持たせ500μmとした。チップ11の幅Wは2mmである。光出力導波路16の傾き角度θ1(即ち光出力導波路16と、光出射端面11bと直交する方向との成す角度θ1)は7度とした。光出射方向Cの傾き角度(即ち光出射方向Cと、光出射端面11bと直交する方向との成す角度)はθ2である。従って、その分、チップ11も傾けている。」

「図1



「図4



「図5



イ 図5は、チップ1を斜めに配置したものであって(【0007】)、その技術的意味につき、同段落には、「パッケージ8内での光学部品10の配置を簡便にするためには」との記載があるところ、「パッケージ8内での光学部品10の配置を簡便にする」ことは、光学部品10(レンズなどの光学部品(【0003】))への光の入射方向(x軸方向)を、図4のような光出力導波路を光出射端面に対して垂直に配置した場合と同じとなるようにすることにより、得られていると解される。
すなわち、図5は、光出力導波路を光出射端面に対して斜めに配置しつつ、チップ1を斜めに配置したものである(【0007】)のに対し、図4は、光出力導波路を光出射端面に対して垂直に配置しつつ、チップ1を斜めに配置していないことが見て取れる。そして、当該図4及び図5においては、チップ1からの光の出射方向(A、B)、つまり、光学部品10への光の入射方向が、同一であることが見て取れるところ、そのように構成すれば、チップ1を斜めに配置するか否かによらず、光学部品10を変更する必要がないことが明らかである。そうすると、「パッケージ8内での光学部品10の配置を簡便にする」ことは、光学部品10への光の入射方向を、光出力導波路を光出射端面に対して垂直に配置した場合と同じとなるようにすることにより、得られているといえる。

(2)引用文献2に記載された技術的事項
上記(1)より、引用文献2には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
ア 「DFBレーザは、一般的に反射光に弱いため、DFBレーザの出射側に結合された光出力導波路を半導体の光出射端面(ヘキ開面)に対して斜めに配置することにより、光出射端面(ヘキ開面)でのわずかな反射光も光出力導波路に戻らないようにすること。(【0004】・【0021】)」(以下「引用文献2に記載された技術的事項1」という。)

イ 「スネルの法則を考慮すると、半導体光集積素子の光出力導波路を光出射端面に対して斜めに配置した場合には、光の出射方向も光出射端面に対して斜めとなるので、レンズなどの光学部品への光の入射方向を、光出力導波路を光出射端面に対して垂直に配置した場合と同じとなるようにするために、半導体光集積素子を斜めに配置すること。(【0003】・【0007】・【0008】・【0023】・上記(1)イ)」(以下「引用文献2に記載された技術的事項2」という。)

3 引用文献3(特開2001−111177号公報)
(1)引用文献3には、図面とともに、以下の記載がある。
ア 「【0004】光増幅器には、大きく分けて希土類添加光ファイバを用いた光ファイバ増幅器と、化合物半導体で作製される半導体光増幅器(SOA)があるが、SOAは素子サイズが数mm以下と非常に小型にすることができ、半導体ウェハ上で多数個を一括作製できるため低廉化やアレイ化が容易である。また、SOAの入出力光のスポットサイズを光ファイバのそれと同等程度の3〜4μmまで拡大するスポットサイズ変換器をSOAの両端にモノリシック集積することによって実装トレランスを大幅に改善させる研究開発が盛んに行われている。」

「【0007】SOAの原理的な構造を図6に示す。図6(a)に示すように、左方から利得媒質01に入力された光aは電流注入bにより生じた利得により右方から増幅光cとして出力させる。理想的には注入電流bを上げれば、それに見合うだけの利得の上昇が利得媒質01から得られる。しかし、実際には図6(b)に示すように、利得媒質01と空気との界面の屈折率差から利得媒質01の両端面には、ある反射率をもった反射鏡02(R≠0)が形成される。
【0008】このため、利得媒質01と反射鏡02とで共振器構造を形成し、利得が大きくなると発振現象により発振光dが生じるため、利得の大半が発振現象で消費されてしまい、実際には利得を大きくすることができない本質的な原因となる。そこで、従来のSOAでは端面での反射率を低減するため、図7(a)に示すように、両端面にSiO2やTiO2などの誘電体多層膜で構成された反射防止(AR)膜03を設けている。
【0009】しかし、この方法だけで実用的な高利得を得るために必要な反射率(R<0.1%)を実現するためには、膜厚の作製誤差を数%以下に抑える必要があり、再現性や生産性に難点がある。従来のSOAは図7(a)のように、導波路が劈開端面に対し垂直に形成されているため、反射光eが再度、活性層04に結合しやすい構造となっていた。そこで、さらに反射率を低減する方策として、図7(b)に示すように導波路を壁開端面に対して傾けた構造とすることにより、端面からの反射光eを導波路へ結合させないようにする方法が提案されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】図8(a)及び(b)には端面に対して斜めの導波路構造を実現した従来の構成を示す。ここでは、スポットサイズ変換器を集積したSOAを考え、電流注入により利得が生じる活性層010のある領域を活性領域、導波光のスポットサイズを拡大するスポットサイズ変換(SS)層011のある領域をSS領域と呼ぶ。図8(a)は、活性及びSS領域が直線で端面に対して斜めになっている構造で、活性層010の全体が端面に対して斜めになっている。図8(b)は、活性層010が劈開面に垂直な直線導波路010aと曲率半径を持った曲線導波路010bで構成され、SS層011は劈開面に対して斜めの直線もしくは曲線導波路を持った構造である。」

「【0016】
【課題を解決するための手段】上記課題を達成する本発明の請求項1に係る半導体光増幅装置は、活性領域を有する第一の光導波路を持つ半導体光増幅装置において、前記第一の光導波路の光導波方向は半導体基板の結晶面方位と垂直又は平行であり、スポットサイズ変換領域を有する第二の光導波路が前記第一の光導波路に接続され、前記第二の光導波路は、曲線導波路部を有し、かつ、前記半導体基板の端面と斜行することを特徴とする。…(後略)…。」

「【0023】〔実施例〕以下、本発明の半導体光増幅装置について、実施例を参照して説明する。本発明の一実施例に係る半導体光増幅装置の作製手順を図3及び図4に示す。先ず、図3(a)に示すように、n型−InP基板21上にMOVPE法によりGaInAsP活性層22とInP薄クラッド層23を形成する。」

「図1



「図6



「図7(a)、(b)



「図8(a)、(b)




イ 図8(a)及び図8(b)に係る構造は、「端面に対して斜めの導波路構造を実現した」もの(【0010】)である(なお、図1に係る構造も同様である。)ところ、このような斜めの導波路構造を採用した理由は、文脈上、【0009】等に記載されていることが明らかである。そして、当該【0009】に記載されている図7(a)及び図7(b)について、以下の技術的事項が認められる。
(ア)図7(a)における導波路は、SOAの左側の端面(入射側端面)及び右側の端面(出射側端面)に対して垂直に形成されており、入力される「光a」の進行方向は、SOAの入射側端面に垂直となるようにされている。
すなわち、図7(a)における導波路は、「劈開端面に対し垂直に形成されている」(【0009】)以上、そのように解するのが自然である。

(イ)図7(b)における導波路は、SOAの入射側端面及び出射側端面に対して、上面視で傾いて形成されており、入力される「光a」の進行方向は、SOAの入射側端面に対して上面視で傾くようにされている。
a すなわち、まず、図7(b)における導波路は、「劈開端面に対して傾けた構造」とされている(【0009】)。そして、図7(b)が斜視図であることを考慮すれば、同図の導波路が入射側端面及び出射側端面にそれぞれ接続する位置が、上面視で上下方向に異なっていることが理解できる。そうすると、図7(b)における導波路が「劈開端面に対して傾」いている、つまり、導波路がSOAの入射側端面及び出射側端面に対して傾いているのは、上面視で成り立つことであるといえる。

b 次に、入力される「光a」に付された矢印の指し示す方向が、図7(a)では水平になっているのに対し、図7(b)では水平から傾いていることが見て取れるとともに、「増幅光」及び「増幅光c」に付された矢印の指し示す方向についても同様のことが見て取れる。ここで、光に矢印が併せて表記された場合において、その矢印の方向が光の進行方向を示すことはごく一般的な表記法であって、当該各図の矢印についてもそのように理解することは、上記(ア)の認定にも沿う上、これを妨げる事情も見いだせないところ、矢印の指し示す方向についての両図の間の上記相違が、入力される「光a」のみならず「増幅光」及び「増幅光c」においても成り立っていることになる。そうすると、図7(b)における入力される「光a」の進行方向は、図7(a)における入力される「光a」の進行方向であるSOAの入射側端面に垂直な方向(上記(ア))からは、傾いていると認めるのが相当である。
そして、図7(a)の入力される「光a」の進行方向がSOAの入射側端面に垂直である一方、図7(b)の入力される「光a」の進行方向がSOAの入射側端面に対して傾いていることも、上面視で成り立つといえるのであり、このことは、両図が斜視図であることに加え、導波路について、図7(a)の「劈開端面に対し垂直」と図7(b)の「劈開端面に対して傾けた」(【0009】)が、上記aのとおり、いずれも、上面視で成り立つことからみても明らかである。
以上については、物理法則であるスネルの法則からみても、たやすく首肯できることである。

(2)上記(1)より、引用文献3には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
ア 「半導体光増幅器(SOA)において、利得を大きくすることができない原因となる端面からの反射光を導波路へ結合させないようにするために、導波路を、SOAの入射側端面及び出射側端面に対して、上面視で傾いて形成すること。(【0004】・【0008】・【0009】・上記(1)イ(イ))」(以下「引用文献3に記載された技術的事項1」という。)

イ 「導波路を、SOAの入射側端面に対して垂直に形成した場合には、入力される光の進行方向は、SOAの入射側端面に垂直となるようにされている一方、SOAの入射側端面に対して上面視で傾いて形成した場合には、入力される光の進行方向も、SOAの入射側端面に対して上面視で傾くようにされていること。(上記(1)イ(ア)及び(イ))」(以下「引用文献3に記載された技術的事項2」という。)

第5 対比及び判断
1 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、次のとおりである。
(1)本願発明の「レーザ光を発生させるレーザ発振部および前記レーザ光を導波する第1の光導波路を有し、第1の基板上に設けられるレーザ素子と、」との特定事項について
ア 引用発明の「DFBレーザで構成されて」いる「半導体レーザ部910A」及び「光導波部930A」は、それぞれ、本願発明の「レーザ光を発生させるレーザ発振部」及び「前記レーザ光を導波する第1の光導波路」に相当することが、明らかである。
そして、引用発明の「半導体レーザ部910A」及び「光導波部930A」を含む構造は、本願発明の「レーザ素子」に相当する。

イ 引用発明の「基板」は、本願発明の「第1の基板」に相当し、引用発明の「半導体レーザ部910A」及び「光導波部930A」を含む上記構造は、「半導体レーザ部910A及び光導波部930Aは、基板上に一体のものとして集積されたもの」であることに照らせば、本願発明にいう「第1の基板上に設けられる」ものといえる。

ウ したがって、引用発明は、本願発明の上記特定事項を備える。

(2)本願発明の「前記レーザ光を導波する第2の光導波路を有し、第2の基板上に設けられる光学素子と、」との特定事項について
ア 引用発明の「半導体光増幅素子9」は、「活性層を含むストライプ状の埋め込みメサ構造の光導波路であるSOA部9aを有しており、SOA部9aに入力されたレーザ光L1を光増幅して出力するもの」であるところ、「入力されたレーザ光L1を光増幅して出力する」とともに「光導波路」でもある「SOA部9a」は、本願発明の「前記レーザ光を導波する第2の光導波路」に相当する。
そして、引用発明の「SOA部9a」を含む構造は、本願発明の「光学素子」に相当する。

イ 引用発明の「半導体光増幅素子9」は、「n型InP基板9c上に、順次積層した複数の半導体層を備えて」いるところ、「n型InP基板9c」は、引用発明では「半導体レーザ素子」と「半導体増幅器」とが別の支持部材に載置されていることに照らせば、「半導体レーザ素子900A」に備わっている「基板」(本願発明の「第1の基板」に相当。)とは別の基板であるといえる。よって、当該「n型InP基板9c」は、本願発明の「第2の基板」に相当し、引用発明の「SOA部9a」を含む構造は、本願発明にいう「第2の基板上に設けられる」ものといえる。

ウ したがって、引用発明は、本願発明の上記特定事項を備える。

(3)本願発明の「前記第1の光導波路は、前記第1の基板の出力端面に傾いて接続されており、」との特定事項について
引用発明は、本願発明の上記特定事項を備えない。

(4)本願発明の「前記第1の光導波路から出力される前記レーザ光が前記第2の光導波路に光結合されるように、前記第1の基板および前記第2の基板が配置され、」との特定事項について
引用発明は、「出力ポート932aA及びSOA部9aは、コリメートレンズ5及び集光レンズ8によって構成される光学系の光軸上に配置されて」いるから、「出力ポート932aA」及び「SOA部9a」が本願発明でいう「光結合されるように」「配置され」ているものである。そして、当該「出力ポート932aA」は、「光導波部930A」に含まれるものであって、「半導体レーザ素子900A」に備わっている「基板」(本願発明の「第1の基板」に相当。)と一体的な構成であるといえるし、当該「SOA部9a」は、「n型InP基板9c」(本願発明の「第2の基板」に相当。)と一体的な構成であるといえる。
そうすると、引用発明は、本願発明の上記特定事項を備えるといえる。

(5)本願発明の「前記第1の基板の前記出力端面に垂直な第1の軸は、前記第1の基板と前記第2の基板との間を進行するときの前記レーザ光の進行方向に対して傾いており、前記第2の基板の入力端面に垂直な第2の軸は、前記進行方向に対して前記第1の基板と反対の側又は同じ側に傾いている」との特定事項について
引用発明は、本願発明の上記特定事項を備えない。

(6)本願発明の「レーザモジュール」との特定事項について
引用発明の「半導体レーザモジュール100」は、本願発明の「レーザモジュール」に相当する。

(7)以上より、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>
「レーザ光を発生させるレーザ発振部および前記レーザ光を導波する第1の光導波路を有し、第1の基板上に設けられるレーザ素子と、
前記レーザ光を導波する第2の光導波路を有し、第2の基板上に設けられる光学素子と、
を備え、
前記レーザ素子から出力される前記レーザ光が前記第2の光導波路に光結合されるように、前記第1の基板および前記第2の基板が配置される
レーザモジュール。」

<相違点>
・相違点1
「レーザ素子」について、本願発明の「レーザ素子」は、「前記第1の光導波路は、前記第1の基板の出力端面に傾いて接続されて」おり、「前記第1の基板の前記出力端面に垂直な第1の軸は、前記第1の基板と前記第2の基板との間を進行するときの前記レーザ光の進行方向に対して傾いて」いるのに対して、引用発明の「半導体レーザ部910A及び光導波部930Aを含む構造」は、その「出力ポート932aA」が、「半導体レーザ素子900Aの出力側端面に垂直に接続されて」いるとともに、「SOA部9a」とは、「コリメートレンズ5及び集光レンズ8によって構成される光学系の光軸上に配置されている」ものである点。

・相違点2
「光学素子」について、本願発明の「光学素子」は、「前記第2の基板の入力端面に垂直な第2の軸は、前記進行方向に対して前記第1の基板と反対の側又は同じ側に傾いている」のに対して、引用発明の「SOA部9a」を含む構造は、その「SOA部9a」が、「半導体光増幅素子9の入力側端面と垂直に接続されている」とともに、「出力ポート932aA」とは「コリメートレンズ5及び集光レンズ8によって構成される光学系の光軸上に配置されている」ものである点。

2 判断
(1)相違点1について
ア 引用発明において相違点1に係る構成に至るためには、(i)引用発明の「半導体レーザ素子900A」において、「出力ポート932aA」を「半導体レーザ素子900A」の出力側端面に対して傾いて接続されるように構成した上で、その出力側端面を基板の端面と同じ面に形成されるように構成し、さらに、(ii)当該「出力ポート932aA」から「出力させ」た「レーザ光」の進行方向を、「コリメートレンズ5及び集光レンズ8によって構成される光学系の光軸」に沿った方向に一致するように、「半導体レーザ素子900A」を配置すれば足りるものと解される。なお、(ii)については、当該「出力ポート932aA」から「出力させ」た「レーザ光」の進行方向が、(i)のとおり構成した場合には、物理法則であるスネルの法則からみて、当然、上記出力側端面に対して傾くことが考慮されている。

イ そこで、引用発明において、(i)及び(ii)の構成を得ることに当業者が容易に至るかについて検討する。
(ア)引用発明の「半導体レーザモジュール100」では、「複数の半導体レーザ911は、DFBレーザで構成されて」いるところ、DFBレーザが戻り光に弱いことは例示するまでもなく周知な課題であって、このことは、引用文献1の[0081]の「曲がり光導波路40dは、集積型半導体レーザ素子40の出力側端面において、該端面と垂直方向に対して約7°〜8°の角度をなすように屈曲している。これによって、集積型半導体レーザ素子40から出力されたレーザ光L1の出力側端面における反射光が、DFBレーザストライプ40a側に戻ることが防止される」という記載が当然の前提としていることでもある。そして、引用発明の「半導体レーザ素子900A」は、「出力ポート932aA」が「半導体レーザ素子900Aの出力側端面に垂直に接続されて」いるから、戻り光の発生が当然に認識されるものである。
他方、引用文献2に記載された技術的事項1は、上記課題を解決するために、DFBレーザの出射側に結合された光出力導波路を光出射端面(出力側端面)に対して斜めに配置することであるといえる。この点、当該技術的事項1は、出力側端面を基板の端面と同じ面に形成されるように構成する点が特定されていないことを除き、(i)に対応する構成であるところ、出力側端面が基板の端面と同じ面であることは、当該両端面が、一般に、分割工程を経て同時に得られることを踏まえれば、通常のことにすぎない。
してみると、引用発明の「半導体レーザ素子900A」において、戻り光に弱いという課題を解決するために、引用文献2に記載された技術的事項1を採用して、(i)を満たすように構成することは、当業者が容易に想到し得たことである。

(イ)その際、当業者は、(ii)をも満たすように構成するといえる。
すなわち、引用文献2には、上記第4の2(2)イのとおり、スネルの法則を考慮すると、半導体光集積素子の光出力導波路を光出射端面に対して斜めに配置した場合には、光の出射方向も光出射端面に対して斜めとなるので、レンズなどの光学部品への光の入射方向を、光出力導波路を光出射端面に対して垂直に配置した場合と同じとなるようにするために、半導体光集積素子を斜めに配置するという引用文献2に記載された技術的事項2も記載されている。そして、引用発明は、上記技術的事項2における「光出力導波路を光出射端面に対して垂直に配置した場合」に該当するところ、引用発明において、上記の「レンズなどの光学部品」に対応する構成は、「コリメートレンズ5及び集光レンズ8によって構成される光学系」であるとともに、上記の「レンズなどの光学部品への光の入射方向」は、「コリメートレンズ5及び集光レンズ8によって構成される光学系の光軸」に沿った方向であるといえる。
そうすると、上記(ア)で説示した構成に至った当業者は、さらに、引用文献2に記載された技術的事項2をも踏まえるようにして、引用発明の「半導体レーザ素子900A」の「出力ポート932aA」(出力側端面に対して傾いて接続されるように変更されている。)からの光の出射方向、つまり、レンズなどの光学部品への光の入射方向を、(光出力導波路を光出射端面に対して垂直に配置した場合におけるレンズなどの光学部品への光の入射方向である)「コリメートレンズ5及び集光レンズ8によって構成される光学系の光軸」に沿った方向に一致するように、「半導体レーザ素子900A」を配置するといえる。

(ウ)よって、当業者は、引用発明において、(i)及び(ii)の構成を得ることに容易に至るといえる。

ウ したがって、上記相違点1に係る本願発明の構成は、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。

(2)相違点2について
ア 引用発明において相違点2に係る構成に至るためには、(iii)引用発明の「半導体光増幅素子9」において、「入力側端面と垂直に接続されている」「SOA部9a」を、入力側端面に対して傾いて接続されるように構成した上で、その入力側端面をn型InP基板の端面と同じ面に形成されるように構成し、さらに、(iv)「コリメートレンズ5及び集光レンズ8によって構成される光学系の光軸」に沿った方向が、入力側端面に対して傾くように、「半導体光増幅素子9」を配置すれば足りるものと解される。

イ そこで、引用発明において、(iii)及び(iv)の構成を得ることに当業者が容易に至るかについて検討する。
(ア)引用発明の「SOA部4a」は、半導体光増幅器(SOA)である以上、利得を大きくすることが例示するまでもなく周知な課題である。
他方、引用文献3に記載された技術的事項1は、上記課題を解決するために、半導体光増幅器(SOA)において、利得を大きくすることができない原因となる端面からの反射光を導波路へ結合させないようにするために、導波路を、SOAの入射側端面(入力側端面)に対して、上面視で傾いて形成することであるといえる。この点、当該技術的事項1は、入力側端面を基板の端面と同じ面に形成されるように構成する点が特定されていないことを除き、(iii)に対応する構成であるが、入力側端面が基板の端面と同じ面であることは、当該両端面が、一般に、分割工程を経て同時に得られることを踏まえれば、通常のことにすぎない。
してみると、引用発明の「半導体光増幅素子9」において、利得を大きくするという課題を解決するために、引用文献3に記載された技術的事項1を採用して、(iii)を満たすように構成することは、当業者が容易に想到し得たことである。

(イ)その際、当業者は、(iv)をも満たすように構成するといえる。
すなわち、半導体光増幅素子は、光増幅を行うものである以上、入力光とSOAとの光結合効率が高いことが当然に望まれるところ、引用文献3に記載された技術的事項1においては、導波路がSOAの入射側端面に対して上面視で傾いて形成されていることから、入力される光と導波路との光結合効率を高めるためには、スネルの法則及び光線逆進の原理からみて、入力される光の進行方向も、SOAの入射側端面に対して上面視で傾くようにされることが望まれるのが明らかであり、実際、引用文献3に記載された技術的事項2(上記第4の3(2)イ)においても、そのようになっている。
そして、引用発明においては、「コリメートレンズ5及び集光レンズ8によって構成される光学系の光軸」に沿った光が、SOA部9aに入力されるといえる。
そうすると、上記(ア)で説示した構成に至った当業者は、「コリメートレンズ5及び集光レンズ8によって構成される光学系の光軸」に沿った光の進行方向が、引用発明の「SOA部9a」(入力側端面に対して傾いて接続されるように構成されている。)の入力側端面に対して上面視で傾いているように構成するといえる。そして、それを実現するためには、当該「SOA部9a」を備えた「半導体光増幅素子9」を傾けて配置することが、最も単純なことであるし、そのことは、引用文献2に記載された技術的事項2からも、DFBレーザと半導体光増幅器(SOA)との差異はあるにせよ、首肯できることである。

(ウ)よって、当業者は、引用発明において、(iii)及び(iv)の構成を得ることに容易に至るといえる。

ウ したがって、上記相違点2に係る本願発明の構成は、引用発明及び引用文献3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。

(3)本願発明の効果について
上記相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び引用文献3に記載された技術的事項並びに技術常識から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

3 請求人の主張
請求人は、光が入射する側の端面に関する構成、すなわち「前記第2の基板の入力端面に垂直な第2の軸は、前記進行方向に対して前記第1の基板と反対の側又は同じ側に傾いている」という構成について、引用文献1〜3のいずれにも記載されていない旨主張するが、上記2(2)において説示したとおりである。
また、請求人は、入力曲げ部を含む光導波路が接続された光入射端面を備える光増幅器の光入射端面に光が垂直に入射する文献(国際公開第2013/115179号)が存在するから、出力端面と入力端面とを同視することができない旨主張する。しかしながら、上記文献には「光増幅器の光入射端面に光が垂直に入射する」旨の明記はないし、その点を措くとしても、上記文献は、「光増幅器の光入射端面に光が垂直に入射する」ようにしなければならないことを示すものではない。そして、引用発明において、半導体レーザ素子900Aの出力ポート932aA、コリメートレンズ5及び集光レンズ8によって構成される光学系、並びに、半導体光増幅素子9のSOA部9aは、光結合されているのであって、光結合を行う際に光の進行方向が考慮されることは当然であるところ、光の進行方向については、半導体光増幅素子9の入力側端面であっても、半導体レーザ素子900Aの出力側端面と同様の物理法則(スネルの法則)が妥当するのであるから、入力側端面に対する取り扱いを、出力側端面に対する取り扱いと同様に、上記物理法則を考慮したものとすることは、当業者にとってごく自然なことであるというべきである。
よって、請求人の主張は採用できない。

4 小括
したがって、本願発明は、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び引用文献3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-05-26 
結審通知日 2022-05-31 
審決日 2022-06-21 
出願番号 P2017-567017
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01S)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 山村 浩
特許庁審判官 吉野 三寛
加々美 一恵
発明の名称 レーザモジュール  
代理人 三村 治彦  
代理人 岡部 洋  
代理人 吉澤 弘司  
代理人 岡部 讓  
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