• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1387908
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-05-06 
確定日 2022-08-23 
事件の表示 特願2019− 50920「ゲームコントローラ」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 8月15日出願公開、特開2019−134929〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2015年(平成27年)4月14日に国際出願した特願2017−505712号(パリ条約による優先権主張外国受理2014年4月14日、米国)の一部を平成31年3月19日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成31年 4月17日 :手続補正書の提出
令和 2年 5月19日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 9月 8日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年12月18日付け:拒絶査定
令和 3年 5月 6日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 3年 5月14日 :手続補正書(方式)の提出
令和 3年 6月23日付け:前置報告
令和 3年10月22日 :上申書の提出


第2 令和3年5月6日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
令和3年5月6日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所であり、審判請求人が付与した。)。

「 【請求項1】
ゲームプログラムなどのコンピュータプログラムに使用者の入力を供給するためのコントローラであって、ゲームプログラムを制御するためのコントローラにおいて、
ケースと、
前記コントローラの前方端部及び上部に位置した複数の制御部と、
を備え、
前記コントローラは、使用者の両手内に保持されるように形成されており、それによって、使用者の親指は、前記コントローラの前記上部に位置した複数の制御部を操作するために位置付けられており、且つ、使用者の人差し指は、前記コントローラの前記前方端部に位置した複数の制御部を操作するために位置付けられており、
前記コントローラは、ベース部分と少なくとも1つの第1の追加制御部とを備え、前記少なくとも1つの第1の追加制御部は、使用者の中指、薬指、又は小指で操作可能な位置で、前記コントローラのベース部分の底部に位置し、
前記少なくとも1つの第1の追加制御部は第1の細長い部材を備え、前記第1の細長い部材は本質的に弾性であり、且つ可撓性を有しており、それによって、前記第1の細長い部材は、制御機能を作動させるために使用者によって十分に変位されることができ、
前記第1の細長い部材又は各第1の細長い部材は、前記コントローラの前記底部の外側表面に固定された第1の端部と、前記第1の端部と反対側の第2の端部であって、前記制御機能を作動させるために、前記コントローラの前記外側表面に向けて変位可能である第2の端部と、第1の面を備え、前記第1の面は、前記コントローラの前記外側表面に近接して配置され、
前記第1の細長い部材又は各第1の細長い部材は、第2の面を備え、前記第2の面は、前記第1の面と反対側であり、
前記第2の端部における前記第2の面は、前記第1の細長い部材が固定された前記コントローラの前記ベース部分の底部の外側表面の一部分と平行ではないように構成され、且つ配置される、コントローラ。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和2年9月8日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。

「 【請求項1】
ゲームプログラムなどのコンピュータプログラムに使用者の入力を供給するためのコントローラであって、ゲームプログラムを制御するためのコントローラにおいて、
ケースと、
前記コントローラの前方端部及び上部に位置した複数の制御部と、
を備え、
前記コントローラは、使用者の両手内に保持されるように形成されており、それによって、使用者の親指は、前記コントローラの前記上部に位置した複数の制御部を操作するために位置付けられており、且つ、使用者の人差し指は、前記コントローラの前記前方端部に位置した複数の制御部を操作するために位置付けられており、
前記コントローラは、ベース部分と少なくとも1つの第1の追加制御部とを備え、前記少なくとも1つの第1の追加制御部は、使用者の中指、薬指、又は小指で操作可能な位置で、前記コントローラのベース部分の底部に位置し、
前記少なくとも1つの第1の追加制御部は第1の細長い部材を備え、前記第1の細長い部材は本質的に弾性であり、且つ可撓性を有しており、それによって、前記第1の細長い部材は、制御機能を作動させるために使用者によって十分に変位されることができ、
前記第1の細長い部材又は各第1の細長い部材は、第1の面を備え、前記第1の面は、前記コントローラの前記ベース部分の前記底部の外側表面に近接して配置され、
前記第1の細長い部材又は各第1の細長い部材は、第2の面を備え、前記第2の面は、前記第1の面と反対側であり、
前記第2の面は、前記第1の細長い部材が搭載される前記コントローラの前記ベース部分の底部の外側表面の一部分と平行ではないように構成され、且つ配置され、
前記第1の細長い部材又は各第1の細長い部材は、前記コントローラの前記外側表面に固定された第1の端部と、前記第1の端部と反対側の第2の端部であって、前記制御機能を作動させるために、前記コントローラの前記外側表面に向けて変位可能である第2の端部と、を備える、コントローラ。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明の
「 前記第1の細長い部材又は各第1の細長い部材は、第1の面を備え、前記第1の面は、前記コントローラの前記ベース部分の前記底部の外側表面に近接して配置され、
前記第1の細長い部材又は各第1の細長い部材は、第2の面を備え、前記第2の面は、前記第1の面と反対側であり、
前記第2の面は、前記第1の細長い部材が搭載される前記コントローラの前記ベース部分の底部の外側表面の一部分と平行ではないように構成され、且つ配置され、
前記第1の細長い部材又は各第1の細長い部材は、前記コントローラの前記外側表面に固定された第1の端部と、前記第1の端部と反対側の第2の端部であって、前記制御機能を作動させるために、前記コントローラの前記外側表面に向けて変位可能である第2の端部」
との構成を、
「 前記第1の細長い部材又は各第1の細長い部材は、前記コントローラの前記底部の外側表面に固定された第1の端部と、前記第1の端部と反対側の第2の端部であって、前記制御機能を作動させるために、前記コントローラの前記外側表面に向けて変位可能である第2の端部と、第1の面を備え、前記第1の面は、前記コントローラの前記外側表面に近接して配置され、
前記第1の細長い部材又は各第1の細長い部材は、第2の面を備え、前記第2の面は、前記第1の面と反対側であり、
前記第2の端部における前記第2の面は、前記第1の細長い部材が固定された前記コントローラの前記ベース部分の底部の外側表面の一部分と平行ではないように構成され、且つ配置される」
とするものであって、これにより、「前記コントローラの前記外側表面に固定された第1の端部」を「前記コントローラの『前記底部の』外側表面に固定された第1の端部」と限定し、「第2の面」が、「第2の端部における」と限定し、さらに、「前記第1の細長い部材が『搭載』される前記コントローラ」を「前記第1の細長い部材が『固定』された前記コントローラ」と限定するものである。
そして、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。また、上記の「底部」及び「固定」との限定については、願書に最初に添付した明細書及び図面の【0043】、【0047】、【図3】〜【図8】等に記載されており、「前記第2の端部における」第2の面がース部分の底部の外側表面の一部分と平行ではないとの点は、同【0061】、【0062】、【図7】、【図9F】、【図9G】等に記載されており、新規事項を追加する補正でもなく(同条第3項)、発明の特別な技術的特徴を変更する補正でもない(同条第4項)。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項、引用発明
ア 引用文献1記載事項、引用文献1に記載された発明
原査定の拒絶の理由で引用された、本願出願前に、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1(米国特許第2012/0322553号明細書(2012年(平成24年)12月20日公開))には、図面とともに、次の事項が記載されている。なお、下線は、当審が付与した。

(ア)米国特許第2012/0322553号明細書記載事項
「[0004] The only way to operate the four buttons 4 is for the user to remove his or her right thumb from the right thumb stick 3. This takes time and, in some games, can cause a loss of control. This is a particular problem in games where the right thumb stick 3 is used for aiming. A similar problem may arise in games where the direction pad 5 provides additional actions and the user has to remove his or her thumb from the left thumb stick 2 in order to operate the direction pad 5.」
(当審訳:
【0004】4つのボタン4を操作するためには、使用者が右手親指を右手親指スティック3から離すしかない。これには時間がかかり、ゲームによっては操作不能になることがある。特に、右親指スティック3を照準に使用するようなゲームでは、問題となる。方向パッド5が追加のアクションを提供し、使用者が方向パッド5を操作するために左親指スティック2から親指を離さなければならないゲームにおいても、同様の問題が生じる可能性がある。)

「[0005] In light of the above, there is a need for an improved controller which removes the need for a user to remove his or her thumb from the left or right thumb stick 2, 3 in order to operate additional actions controlled by the four buttons 4 and/or the direction pad 5.」
(当審訳:
【0005】上記に鑑みて、4つのボタン4及び/又は方向パッド5によって制御される追加のアクションを操作するために、使用者が左又は右親指スティック2、3から親指を離す必要性を除去する改良型コントローラが必要とされている。)

「[0006] The present invention provides a hand held controller for a video game console having a hard outer case and a plurality of controls located on the front and top edge of the controller. The controller is shaped to be held in both hands of the user such that the user's thumbs are positioned to operate controls located on the front of the controller and the user's index fingers are positioned to operate controls located on the top edge of the controller. The controller further includes one or more additional controls located on the back of the controller in a position to be operated by the user's other fingers.」
(当審訳:
【0006】 本発明は、硬い外側ケースと、コントローラの正面及び上端に位置した複数の制御部を有するビデオゲーム機のための手持ち式コントローラを提供する。コントローラは、使用者の両手内に保持されるように形成されており、それによって、使用者の親指は、コントローラの正面に位置した複数の制御部を操作するために位置づけられており、且つ、使用者の人差し指は、コントローラの上端に位置した複数の制御部を操作するために位置づけられている。コントローラはさらに、使用者の他の指によって操作される位置でコントローラの背面に位置した少なくとも1つの追加制御部を備える。)

「[0009] Preferably, each elongate member comprises an outermost surface which is disposed in close proximity to the outermost surface of the controller such that the user's finger may be received in said respective recess.」
(当審訳:
【0009】好ましくは、各細長部材は、使用者の指が前記凹部に受容され得るように、コントローラの外側表面に近接して配置された外側面を備える。)

「[0015] The controller of the present invention is particularly advantageous over controllers according to the prior art as it comprise sone or more additional controls located on the back of the controller in a position to be operated by middle fingers of a user.」
(当審訳:
【0015】 本発明のコントローラは、使用者の中指で操作される位置で、コントローラの背面に位置する少なくとも1つの追加制御部を備えるから、従来技術によるコントローラよりも特に有利である。)

「[0016] In a preferred embodiment of the invention the additional controls replicate the function of a control located on the front of the controller. This means that a user does not need to remove his or her thumb from one of the thumb sticks in order to operate the buttons and/or direction pad located on the front of the controller and can instead perform the function by manipulating an additional control located on the back of the controller with a finger.」
(当審訳:
【0016】 本発明の好ましい実施形態では、追加制御部は、コントローラの前面に位置する制御部の機能を複製する。これは、使用者が、コントローラの前面に位置するボタン及び/又は方向パッドを操作するために親指を親指スティックの1つから取り外す必要がなく、代わりに、コントローラの背面に位置する追加制御部を指で操作することによって機能を実行することができることを意味する。

「[0019] Advantageously, if the additional controls are paddle levers, they will be formed such that they are substantially vertically aligned with respect to the controller. This may allow the most ergonomically efficient activation of the paddle levers by the middle fingers of the user.」
(当審訳:
【0019】 有利には、もし、追加制御部がパドルレバーであるならば、それらは、コントローラに対して実質的に垂直に整列されるように形成されるであろう。これは、使用者の中指によるパドルレバーの最も人間工学的に効率的な作動を可能にし得る。)

「[0024] The particular embodiment described below and illustrated by FIGS.2 and 3 serves to further illustrate the invention, to provide those of ordinary skill in the art with a complete disclosure and description of the devices claimed herein, and is not intended to limit the scope of the invention. For example, the additional controls are described below as two paddle levers but the term“control”as used in the claims, unless otherwise made clear in the claim, refers to paddle levers as well as other controls such as buttons, analogue control sticks, bumpers, and triggers.」
(当審訳:
【0024】 特定の実施形態は、本発明をさらに説明するために、以下に記載され、図2及び3により示され、特許請求される装置の完全な開示および説明を当業者に提供するものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。例えば、追加制御部は、2つのパドルレバーとして後述されるが、請求項で用いられる制御部という用語は、請求項において他に明示されなければ、パドルレバーだけでなく、ボタン、アナログ制御スティック、バンパー及びトリガー等の他の制御部も示す。)

「[0026] Game controller 10 differs from the conventional controller 1 in that it additionally comprises two paddle levers 11 located on the back of the controller. The paddle levers 11 are vertically orientated with respect to the controller 10 and are positioned to be operated by the middle fingers of a user 12, as shown in FIG.3.」
(当審訳:
【0026】 ゲームコントローラ10はさらに、コントローラの背面に位置する2本のパドルレバー11を備えるという点で従来のコントローラ1とは異なる。図3に示されるように、パドルレバー11はコントローラ10に対して垂直方向に方向付けされて、使用者12の中指によって操作されるように配置されている。)

「[0027] In one embodiment the paddles 11 are formed from a thin flexible material such as a plastics material for example polyethylene. Preferably, the paddles 11 are less than 10 mm thick, but may be less than 5 mm thick, and more preferably are 3 mm thick or less.」
(当審訳:
【0027】 一実施形態では、パドル11は、例えばポリエチレンのようなプラスチック材料のような薄い可撓性材料から形成されている。好ましくは、パドル11は、厚さが10mm未満であるが、5mm未満の厚さであり、より好ましくは、厚さが3mm以下である。)

「[0028] The paddles 11 are inherently resilient, which means that they return to an unbiased position when not under load. A user may displace or depress either of the paddles 11 by engaging an outer surface thereof; such displacement causes the paddle 11 to activate a switch mechanism mounted within the body of the controller 10. The paddles 11 are mounted within recesses located on the case of the controller 10; and are disposed in close proximity to the outer surface of the controller body. In this way a user may engage the paddles 11 with the tips of the fingers, preferably the middle fingers, without compromising the user's grip on the controller 10. While the example shows the paddles 11 engaged by the middle fingers, they could also be engaged by the index, ring, or little fingers. The index fingers may also engage trigger style controls mounted on the top edge of the controller 10 while the thumbs may be used to activate controls on the front of the controller 10.」
(当審訳:
【0028】 パドル11は、本質的に弾性であり、すなわち、負荷がない場合に、パドルレバーは付勢されない位置に戻る。使用者は、それらの外側表面を係合することによって、パドル11のいずれかを変位させる又は押し下げることができる。そのような変位は、作動されたパドル11が、コントローラ10の本体内に搭載されるスイッチ機構を作動させる。パドル11は、コントローラ10のケースに配置された凹部に搭載されており、コントローラの本体の外側表面に近接して配置されている。このようにして、使用者は、コントローラ10上の使用者のグリップを損なうことなく、パドルレバー11を指の先端、好ましくは中指と係合することができる。例として、中指と係合されるパドル11を示したが、人差し指、薬指、又は小指と係合されるようにすることもできる。また、親指は、コントローラ10の正面に搭載された複数の制御部を作動させるために使用することができ、人差し指はコントローラ10の上端に搭載された複数のトリガー型制御部と係合することができる。)

「[0029] The paddles 11 are elongate in shape and substantially extend in a direction from the top edge to bottom edge of the controller 10. In one embodiment the paddles are orientated parallel with each other. In an alternative embodiment the paddles are orientated such that they converge towards the top edge with respect to each other. This elongate shape allows a user to engage the paddles with any of the middle, ring, or little finger; it also provides that different users having different size hands can engage with the paddles in a comfortable position thereby reducing the effects of prolonged or repeated use such as repetitive strain injury.」
(当審訳:
【0029】 複数のパドル11は、細長い形状であり、コントローラ10の上端から後方端部の方向に延びる。一実施形態では、複数のパドルは互いに対して平行に方向付けられる。別の実施形態では、複数のパドルは、互いに対して上端に向けて集まるように方向付けられる。この細長い形状は、使用者が中指、薬指又は小指のいずれかとパドルを係合することを可能にさせる。それはまた、異なるサイズの手を有する複数の使用者が快適な位置でパドルと係合することができることも提供し、それにより、反復運動過多損傷などの長期使用または反復使用の影響を減少させる。)

「[0031] It is envisaged that the paddles 11 could be fitted to an existing controller 10. In such embodiments the paddles would be mounted on the outer surface of the controller body by means of a mechanical fixing such as a screw or bolt or alternatively bonded or welded to the controller body by adhesive or other suitable means. A switch mechanism would be mounted within the controller in vertical registry with a portion of each paddle. A portion of the switch mechanism may extend through the controller body and be disposed in close proximity or in contact with an innermost surface of the paddle 11.」
(当審訳:
【0031】 なお、パドル11は、既存のコントローラ10に組み込まれても良い。このような実施形態では、パドルは、ねじまたはボルトなどの機械的固定手段又は接着や溶接や他の適切な手段により、コントローラ本体に搭載される。スイッチ機構は、各パドルの一部分と垂直方向において位置合わせされて、コントローラの中に設けられている。スイッチ機構の一部分は、コントローラ本体を貫通して延び、パドル11の内側面と近接又は接触して配置される。)


Figure 2(図2)

Figure 3(図3)

(イ)図面から認定できる事項
a 図2について
図2から、コントローラの背面からみて、左右ハンドルと本体中央部分との間に、追加制御部としてのパドルレバー11が搭載される部分が看取できる。

b 図3について
図3について、上記[0026]と合わせてみると、パドルレバー11は、コントローラ10に対して垂直方向に方向付けされて、使用者12の中指によって操作されるように配置されるものであって、使用者によって、その端部側を押圧することで変位させらせるものといえる。

(ウ) 引用文献1に記載された発明
引用文献1には、上記(ア)及び(イ)から、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているといえる。

「 ビデオゲーム機のためのコントローラにおいて、
ケースと、
前記コントローラの上端及び正面に位置した複数の制御部と、
を備え、
前記コントローラは、使用者の両手内に保持されるように形成されており、それによって、使用者の親指は、前記コントローラの前記正面に位置した複数の制御部を操作するために位置付けられており、且つ、使用者の人差し指は、前記コントローラの前記上端に位置した複数の制御部を操作するために位置付けられており、
前記コントローラは、追加制御部と、背面から見て、左右のハンドルと本体中央部分との間に、前記追加制御部が搭載される部分を備え、前記追加制御部は、使用者の中指、薬指又は小指で操作される位置で、前記コントローラの背面に位置し、
前記追加制御部は細長い部材を備え、前記細長い部材は本質的に弾性であり、且つ可撓性を有しており、それによって、前記細長い部材は、制御機能としてのスイッチ機構を作動させるために使用者によって変位されることができ、
前記細長い部材は前記コントローラの本体内に搭載される前記スイッチ機構の一部分と近接又は接触する内側面を備え、
前記細長い部材は、コントローラの外側表面に近接して配置された外側面
を備え、
前記追加制御部は細長い部材を備え、コントローラの上端から後方端部の方向に延び、
前記追加制御部は、ねじまたはボルトなどの機械的固定手段又は接着や溶接や他の適切な手段により、コントローラ本体に搭載され、
前記追加制御部は、コントローラに対して垂直方向に方向付けされて、使用者の中指によって操作されるように配置されるものであって、使用者によって、前記細長い部材の端部側を押圧することで変位させらせる、
コントローラ。」

イ 引用文献2記載事項
原査定で引用された、本願出願前に頒布された引用文献である、引用文献2([CES 2014]「Steam Controller」ファーストインプレッション。肝心要の左右トラックパッドは使いやすい?、4Gamer.net、2014年4月3日、平成29年12月14日検索、URL、http://www.4gamer.net/games/038/G003821/20140108041/)には、次の事項が記載されている。


上記図面には、両側のグリップ部と、前記両側のグリップ部に挟まれた本体中央部分とからなる本体と、ゲームコントローラ本体の背面からみて、両側のグリップ部と、両側のグリップ部に挟まれた本体中央部分との間に、各々、前記本体中央部分の表面と平行でなく、内側を向いて傾斜した表面を有する細長状の背面ボタンがあることが看取できる。
そうすると、引用文献2には、以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているといえる。
「 両側のグリップ部と、前記両側のグリップ部に挟まれた本体中央部分とからなる本体と、
本体の背面から見て、前記両側のグリップ部と、前記両側のグリップ部に挟まれた本体中央部分との間に、各々、前記本体中央部分の表面と平行でなく、内側を向いて傾斜した表面を有する細長状の背面ボタンと、を備え、
グリップ感を確保しながら、破綻なく背面ボタンを押せるように手を配置すると、手のひらが気持ち上方向を向くような持ち方になる
ゲームコントローラ。」

(3)引用発明1との対比
ア 本件補正発明と引用発明1とを対比する。
(ア)技術的にみて、引用発明1において、「コントローラ」が「使用者」によって「操作」されると「ビデオゲーム機」に「使用者」の入力を供給し、「ビデオゲーム機」を制御することは明らかである。
したがって、引用発明1の「ビデオゲーム機のためのコントローラ」と、本件補正発明の「ゲームプログラムなどのコンピュータプログラムに使用者の入力を供給するためのコントローラであって、ゲームプログラムを制御するためのコントローラ」とは、「ゲーム」のために「使用者の入力を供給するためのコントローラであって、ゲーム」「を制御するためのコントローラ」である点で共通する。

(イ)引用発明1の「ケース」は、本件補正発明の「ケース」に相当する。

(ウ)引用発明1は、「コントローラ」を「使用者の両手内に保持」状態で、「人差し指」が、「前記コントローラの前記上端に位置した複数の制御部を操作する」ことから、引用発明1の「上端」は、本件補正発明の「前方端部」に相当し、引用発明1は、「コントローラ」を「使用者の両手内に保持」状態で、「親指」が、「前記コントローラの前記正面に位置した複数の制御部を操作するために位置付けられて」いることから、引用発明1の「正面」は、本件補正発明の「上部」に相当する。そうすると、引用発明1の「前記コントローラの上端及び正面に位置した複数の制御部」は、本件補正発明の「前記コントローラの前方端部及び上部に位置した複数の制御部」に相当する。

(エ)引用発明1の「前記コントローラは、使用者の両手内に保持されるように形成されており、それによって、使用者の親指は、前記コントローラの前記正面に位置した複数の制御部を操作するために位置付けられており、且つ、使用者の人差し指は、前記コントローラの前記上端に位置した複数の制御部を操作するために位置付けられて」いることは、本件補正発明の「前記コントローラは、使用者の両手内に保持されるように形成されており、それによって、使用者の親指は、前記コントローラの前記上部に位置した複数の制御部を操作するために位置付けられており、且つ、使用者の人差し指は、前記コントローラの前記前方端部に位置した複数の制御部を操作するために位置付けられて」いることに相当する。

(オ)本件補正発明の「ベース部分」について、本願の発明の詳細な説明には、次の記載がある。なお、下線は、当審が付与した。
「【0046】
パドルレバー11A、11B、11C、11Dは、コントローラ10のベースに位置した第1のハンドル部分H1と第2のハンドル部分H2との間に搭載されており、コントローラの本体の外側表面に近接して配置される。
【0047】
パドルレバー11A、11B、11C、11Dが既存のコントローラ10にフィットされることができることは想定される。そのような実施形態において、パドルレバーは、コントローラの本体の外側表面に搭載されるだろう。図示された実施形態において、パドルレバーはねじ機構によって固定される。雄ねじのねじ山を有するねじ15は、パドルレバー11A、11B、11C、11Dのそれぞれに設けられた一対の孔のそれぞれ内に受容される。ねじ15を受容するための孔は、パドルレバー11A、11B、11C、11Dの一方の端部に設けられる。これは、固定端部である。この方法において、パドルレバー11A、11B、11C、11Dは一時的に屈曲されることができる、又は一時的に変形されることができる。パドルレバー11A、11B、11C、11Dの本質的な弾力性は、解放された場合にパドルレバー11A、11B、11C、11Dをそれらの開始位置に実質的に戻し、スイッチ機構が同じことを行うことを可能にする。ねじ15は、雌ねじのねじ山を有する各孔内でコントローラ10のベースで受容されている。雌ねじのねじ山が、コントローラの本体のベース部分において事前にねじ切られることができること、又は、例えばセルフタッピンねじ15を使用することによって、コントローラの本体のベース部分内でねじ15を駆動させる場合に雌ねじのねじ山が形成されることは、想定される。雌ねじのねじ山がコントローラの本体のベース部分を形成している材料に直接的に設けられてもよいこと、又は、雌ねじのねじ山がコントローラの本体に固定された別個のインサート又はナット或いは当該本体内に固定された別個のインサート又はナット内に設けられてもよいことも想定される。代替的な実施形態において、他の固定手段は想定されており、例えばパドルレバー11A、11B、11C、11Dはコントローラの本体に接着されてもよく、又は接着剤で固定されてもよい。他の実施形態において、パドルレバー11A、11B、11C、11Dは、コントローラの本体に位置した受容部と係合されるための戻り止め(detent)又はかえし等の、一体的に形成されたクリップ又は固定手段を備えてもよい。さらなる実施形態において、パドルレバー11A、11B、11C、11Dは、それに限定するわけではないが、バッテリーハッチ等のコントローラのカバーパネル又は後方パネルのカバー部分と一体的に形成されてもよい。
【0048】
任意選択的には、図4に最も良く示されるように、コントローラ10のベースには、4つのチャネル13A、13B、13C、13Dが設けられる。各チャネル13A、13B、13C、13Dは、パドルレバー11A、11B、11C、11Dの各1つを受容する。図示した実施形態において、チャネル13A、13B、13C、13Dは、パドルレバー11A、11B、11C、11Dの端部分を受容するように配置される。このことは、チャネル13A、13B、13C、13Dが先細になっているように、一方の端部に向けてチャネル13A、13B、13C、13Dの深さをゼロに減少させることによって達成される。このことは、図6に最も良く示されるように、パドルレバー11A、11B、11C、11Dの一方の端部がコントローラ10のベースを跨いで立設されている(stands proud of)ことを提供する。この方法において、使用者は、パドルレバー11A、11B、11C、11Dと容易に係合することができる。チャネル13A、13B、13C、13Dは、パドルレバー11A、11B、11C、11Dに安定性を提供する。このことは、パドルレバーの耐久性及び固定手段の耐久性を増加させる。
【0049】
チャネル13A、13B、13C、13Dは、移動可能な端部と係合した場合に、固定端部に関して回転するパドルレバー11A、11B、11C、11Dの可能性を減少させる。チャネルは、図7における矢印D1の方向によって指し示されるように、コントローラのベースに対して略垂直な方向におけるパドルレバー11A、11B、11C、11Dの移動を制限するのに役立つ。」
「【0053】
ハンドル部H1、H2は、図7及び図8に最も良く示されるように、内側表面SHを備える。内側表面SHは、使用者の両手の中指、薬指、及び小指によって係合される。薬指及び小指は、パドルレバー11A、11B、11C、11Dを作動させるために中指を採用する場合にコントローラのグリップのためにますます重要である。各ハンドル部H1、H2の内側表面SHは、パドルレバー11A、11B、11C、11Dが搭載されるコントローラ10のベースの領域の内側表面SBと接触する。内側表面SHは、コントローラのベースの内側表面SBに対して急な角度θ(図7に最も良く示される)で傾斜される。この角度は、45度に等しく又は45度より大きい。任意選択的には、この角度は約50度と約60度の間であってもよい。ハンドル部H1、H2は、略平坦な上側部分Tを有する。略平坦な上側部分Tは、内側の角部又は縁部を規定するために、内側表面SBと接触する。この角部又は縁部は鋭角であり、すなわち、角部又は縁部は小さな曲率半径を有する。この方法において、ハンドル部H1、H2は、使用者の手の薬指及び小指によって把持されるための人間工学的な形状を提供する。」
上記記載及び図4〜図8から、本件補正発明の「ベース部分」とは、コントローラのパドルレバー(追加制御部)が搭載された面からみて、ハンドルH1、H2の間に位置する部分と解することが相当である。
引用発明1では、「左右のハンドルと本体中央部分との間に、前記追加制御部が搭載される部分」のある面が「背面」であるから、引用発明1の「背面から見て、左右のハンドルの間に」「備え」られた「本体中央部分」は、本件補正発明の「ベース部分」に相当する。
したがって、引用発明1の「前記コントローラは、追加制御部と、背面から見て、左右のハンドルと本体中央部分との間に、前記追加制御部が搭載される部分を備え、前記追加制御部は、使用者の中指、薬指又は小指で操作される位置で、前記コントローラの背面に位置」することと、本件補正発明の「前記コントローラは、ベース部分と少なくとも1つの第1の追加制御部とを備え、前記少なくとも1つの第1の追加制御部は、使用者の中指、薬指、又は小指で操作可能な位置で、前記コントローラのベース部分の底部に位置」することとは、「前記コントローラは、ベース部分と少なくとも1つの第1の追加制御部とを備え、前記少なくとも1つの第1の追加制御部は、使用者の中指、薬指、又は小指で操作可能な位置で、前記コントローラの底部に位置」する点で共通する。

(カ)引用発明1の「前記追加制御部は細長い部材を備え、前記細長い部材は本質的に弾性であり、且つ可撓性を有しており、それによって、前記細長い部材は、制御機能としてのスイッチを作動させるために使用者によって変位されることができ」ることは、本件補正発明の「前記少なくとも1つの第1の追加制御部は第1の細長い部材を備え、前記第1の細長い部材は本質的に弾性であり、且つ可撓性を有しており、それによって、前記第1の細長い部材は、制御機能を作動させるために使用者によって十分に変位されることができ」ることに相当する。

(キ)引用発明1の、「前記追加制御部」が、「ねじまたはボルトなどの機械的固定手段又は接着や溶接や他の適切な手段により、コントローラ本体に搭載され」ることから、引用発明1の追加制御部の細長い部材は、上記(オ)を併せてみると、固定された部位を有していることは明らかであり、引用発明1の、追加制御部の細長い部材が当該該固定された部位を備えることと、本件補正発明の「前記第1の細長い部材又は各第1の細長い部材」が「前記コントローラの前記底部の外側表面に固定された第1の端部」を備えることとは、「前記第1の細長い部材又は各第1の細長い部材」が「前記コントローラの前記底部の外側表面に固定された第1の部位」を備える点で共通する。
また、引用発明1の、「前記追加制御部」は、「コントローラに対して垂直方向に方向付けされて」、使用者の中指によって操作されるように配置されるものであって、使用者によって、「前記細長い部材の端部側を押圧することで変位させらせる」ことで制御機能を作動させることから、引用発明1の「前記第1の細長い部材又は各第1の細長い部材」が「押圧することで変位させらせる」「前記細長い部材の端部側」を備えることと、本件補正発明の「前記第1の細長い部材又は各第1の細長い部材」が「前記制御機能を作動させるために、前記コントローラの前記外側表面に向けて変位可能である第2の端部」を備えることとは、「前記制御機能を作動させるために、前記コントローラの前記外側表面に向けて変位可能である第2の部位」を備える点で共通する。
さらに、引用発明1の、「前記追加制御部」は、「前記コントローラの背面に位置し」、「前記細長い部材」が「前記コントローラの本体内に搭載される前記スイッチ機構の一部分と近接又は接触する内側面を備え」ることから、追加制御部が備える細長い部材の内側面が、コントローラの外側表面に近接して配置されていることは明らかである。そして、引用発明1のこのような「内側面」は、後述する相違点は別にして、本件補正発明の「第1の面」に相当する。そうすると、引用発明1の追加制御部が備える細長い部材の内側面が、コントローラの外側表面に近接して配置されることは、本件補正発明の「前記第1の細長い部材又は各第1の細長い部材」が「前記第1の面は、前記コントローラの前記外側表面に近接して配置され」いることに相当する。

(ク)引用発明1において、「前記追加制御部」が「前記コントローラの背面に位置し」、「前記細長い部材」が「前記コントローラの本体内に搭載される前記スイッチ機構の一部分と近接又は接触する内側面を備え」、「前記細長い部材」が「コントローラの外側表面に近接して配置された外側面を備える」ことから、細長い部材の外側面が、内側面と反対側であり、且つコントローラのベース部分の背面の外側表面と反対側に面していることは明らかである。
したがって、引用発明1は、本件補正発明の「前前記第1の細長い部材又は各第1の細長い部材は、第2の面を備え、前記第2の面は、前記第1の面と反対側」であることに相当する構成を有する。

イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>
ゲームのために使用者の入力を供給するためのコントローラであって、ゲームを制御するためのコントローラにおいて、
ケースと、
前記コントローラの前方端部及び上部に位置した複数の制御部と、
を備え、
前記コントローラは、使用者の両手内に保持されるように形成されており、それによって、使用者の親指は、前記コントローラの前記上部に位置した複数の制御部を操作するために位置付けられており、且つ、使用者の人差し指は、前記コントローラの前記前方端部に位置した複数の制御部を操作するために位置付けられており、
前記コントローラは、ベース部分と少なくとも1つの第1の追加制御部とを備え、前記少なくとも1つの第1の追加制御部は、使用者の中指、薬指、又は小指で操作可能な位置で、前記コントローラの底部に位置し、
前記少なくとも1つの第1の追加制御部は第1の細長い部材を備え、前記第1の細長い部材は本質的に弾性であり、且つ可撓性を有しており、それによって、前記第1の細長い部材は、制御機能を作動させるために使用者によって十分に変位されることができ、
前記第1の細長い部材又は各第1の細長い部材は、前記コントローラの前記底部の外側表面に固定された第1の部位と、前記制御機能を作動させるために、前記コントローラの前記外側表面に向けて変位可能である第2の部位と、第1の面を備え、前記第1の面は、前記コントローラの前記外側表面に近接して配置され、
前記第1の細長い部材又は各第1の細長い部材は、第2の面を備え、前記第2の面は、前記第1の面と反対側である、コントローラ。

<相違点>
(相違点1)
コントローラにより使用者の入力を供給する対象及びコントローラにより制御する対象は、それぞれ、本件補正発明では、「ゲームプログラムなどのコンピュータプログラム」及び「ゲームプログラム」であるのに対し、引用発明1では、その点が明示されていない点。

(相違点2)
本件補正発明は、「第1の追加制御部」が「前記コントローラの『ベース部分』の底部に位置」するのに対し、引用発明1は、「左右のハンドルと本体中央部分との間に、前記追加制御部が搭載される」点。

(相違点3)
本件補正発明は、「固定された第1の部位」が「固定された第1の端部」であり、「前記外側表面に向けて変位可能である第2の部位」が「前記外側表面に向けて変位可能である第2の端部」であり、「前記第1の端部」と「第2の端部」とが「反対側」であるのに対し、引用発明1は、「固定された第1の部位」が「固定された部位」であり、「前記外側表面に向けて変位可能である第2の部位」が「押圧することで変位させらせる」「前記細長い部材の端部側」であり、「固定された部位」と「前記細長い部材の端部側」とが「反対側」の関係にあるか定かではない点。

(相違点4)
本件補正発明は、「前記第2の端部における前記第2の面は、前記第1の細長い部材が固定された前記コントローラの前記ベース部分の底部の外側表面の一部分と平行ではないように構成され、且つ配置される」のに対し、引用発明1は、追加制御部が、ねじまたはボルトなどの機械的固定手段又は接着や溶接や他の適切な手段により、コントローラ本体に搭載されているものの、「前記第2の端部における前記第2の面は」、「前記コントローラの前記ベース部分の底部の外側表面の一部分と平行ではないように構成され、且つ配置される」か明らかでない点。

(4)相違点の判断
以下、相違点について検討をする。
ア 相違点1について
ビデオゲーム機がゲームプログラムなどのコンピュータプログラムにより制御されるという技術常識に照らせば、相違点1は実質的な相違点ではない。仮に実質的な相違点であったとしても、前記技術常識に基づく当業者の設計的事項にすぎないから、上記相違点1の構成とすることは、当業者が容易になし得た事項である。

イ 相違点2について
引用発明1は、引用文献1[0028]の「パドル11は、コントローラ10のケースに配置された凹部に搭載されており、コントローラの本体の外側表面に近接して配置されている。このようにして、使用者は、コントローラ10上の使用者のグリップを損なうことなく、パドルレバー11を指の先端、好ましくは中指と係合することができる。」のとおり、追加制御部が、グリップを損なわない状態で、指の先端と係合できるものであって、本件補正発明と目的を同じにしており(本願の発明の詳細な説明【0050】参照。)、使用者の両手内に保持されるように形成されたコントローラを利用者のグリップを損なわないように追加制御部を指の先端等係合させるためには、追加制御部の位置はおおよそ一義的に決まることから、引用発明1の、追加制御部が搭載される部分が備えられる左右のハンドルと本体中央部分との間の部分を、本体中央部に含めることで、上記相違点2の構成とすることは、当業者が容易になし得た事項である。

ウ 相違点3について
引用発明1は、追加制御部が、コントローラに対して垂直方向に方向付けされて、使用者の中指によって操作されるように配置されるものであって、使用者の中指、薬指又は小指によって、追加制御部の細長い部材の端部側を変位させることのできる構成であり、引用文献1の図3のように、使用者が、コントローラを保持すると、使用者の中指、薬指及び小指で操作されることから、細長い部材の、これらの指が係合する位置ではコントローラに固定されず、これらの指のいずれも係合しない位置でコントローラに固定されることは明らかである。そして、引用発明1は、4つのボタン4を操作するためには、使用者が右手親指を右手親指スティック3から離すしかなく、ゲームによっては操作不能になることがあるとの課題(引用文献1[0004]参照。)を解決するために、「前記追加制御部が搭載される部分を備え、前記追加制御部は、使用者の中指、薬指又は小指で操作される位置で、前記コントローラの背面に位置」するとの構成を有し、引用文献1[0019]のとおり、追加制御部の最も人間工学的に効率的な作動を可能にすることが考慮されていることから、引用発明1において、追加制御部の細長い部材の一端を固定し、他端を変位可能にすることで、上記相違点3の構成とすることは、当業者が容易になし得た事項である。

エ 相違点4について
引用発明2は、ゲームコントローラにおいて、本体の背面から見て、両側のグリップ部と、両側のグリップ部に挟まれた本体中央部分との間に、前記本体中央部分の表面と平行でなく、内側を向いて傾斜した表面を有する細長状の背面ボタンを備える構成が開示されている。ここで、細長状の背面ボタンの表面を内側に向けて傾斜させる形状によって、グリップ感を確保しながら、破綻なく背面ボタンを押せるように手を配置できるものである。
そして、引用発明1と引用発明2とは、使用者が両手で保持するゲーム用コントローラであって、操作ボタンを中指、薬指又は小指で操作できるという共通の機能を有していることから、引用発明2に接した当業者であれば、グリップ感を確保しながら破綻なく背面ボタンを押せるように、引用発明2を引用発明1に適用して、細長い部材の外側面を内側に向けて傾斜させることによって、細長い部材の外側面が、コントローラの凹部に挟まれた本体中央部分の外側表面と平行ではないように構成され、配置されるものとすることで相違点4の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

オ 効果について
本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明1及び引用発明2の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

(5)審判請求人の主張について
ア 審判請求人は、令和3年5月6日提出の審判請求書(令和3年5月14日提出の手続補正書(方式))、及び、令和3年10月22日提出の上申書で、次のとおり主張する。
引用文献1及び2には、パドルレバーを取り付けるための具体的な構成が開示されておらず、引用文献1及び2に係る発明のパドルレバーは、ゲームコントローラにどのように取り付けられているのか不明である旨(主張1)、
引用文献1には、パドル11のどの部分がゲーム機に固定されているか、及びパドル11のどの部分が変位可能であるのかについて全く開示されておらず、引用文献1には、パドル11がどのように変位するのかについても全く開示されていない旨(主張2)、
引用文献2の開示事項を考慮すると、引用文献2に記載されたパドルレバーを使用者が押した場合に、引用文献2に記載されたパドルレバー全体が変位し、引用発明2のパドルレバーは、その構成において、本件補正発明の前記第1の細長い部材又は各第1の細長い部材とは明確に異なり、引用文献1の開示事項を考慮すると、引用発明1のパドルレバーも、引用発明2のパドルレバーと同様の構成である旨(主張3)。

イ 審判請求人の上記主張について検討をする。
(ア)主張1について
引用発明1において、追加制御部(パドルレバー)の取り付けについての具体的な構成は特定されていないものの、具体的な構成については、上記(4)イ〜エのとおり、当業者が容易になし得た事項であるから、上記主張1を採用することはできない。

(イ)主張2について
引用発明1において、追加制御部(パドルレバー)のどの部分が固定されるのか、また、どの部分が変位するかについて、具体的な構成は特定されていないものの、具体的な構成については、上記(4)ウのとおり、当業者が容易になし得た事項であるから、上記主張2を採用することはできない。

(ウ)主張3について
引用文献2は、上記(4)エのとおり、引用発明2を引用発明1に適用することで「前記第2の端部における前記第2の面は」、「前記コントローラの前記ベース部分の底部の外側表面の一部分と平行ではないように構成され、且つ配置される」構成とすることは、当業者が容易になし得た、との事項を説明するために用いているのであって、引用文献2に記載されたパドルレバーを使用者が押した場合に、引用文献2に記載されたパドルレバー全体が変位することとは、無関係の事項であるから、この主張を採用することはできない。
また、引用発明1は「前記コントローラは、追加制御部と、背面から見て、左右のハンドルと本体中央部分との間に、前記追加制御部が搭載される部分を備え、前記追加制御部は、使用者の中指、薬指又は小指で操作される位置で、前記コントローラの背面に位置」すること、「前記追加制御部は細長い部材を備え、前記細長い部材は本質的に弾性であり、且つ可撓性を有しており」、「前記細長い部材は、コントローラの外側表面に近接して配置された外側面」を備えており、「記追加制御部は、ねじまたはボルトなどの機械的固定手段又は接着や溶接や他の適切な手段により、コントローラ本体に搭載」されるものであって、上記(4)ウのとおり、「固定された第1の部位」が「固定された第1の端部」であり、「前記外側表面に向けて変位可能である第2の部位」が「前記外側表面に向けて変位可能である第2の端部」であり、「前記第1の端部」と「第2の端部」とが「反対側」であるとの構成とすることは、当業者が容易になし得た事項であるから、引用発明1のパドルレバーも、引用発明2のパドルレバーと同様の構成であるとの主張も採用することはできない。
よって、審判請求人の上記主張3を採用することはできない。

(6)小括
以上より、本件補正発明は、引用発明1及び引用文献2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 補正の却下の決定のむすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について

1 本願発明
令和3年5月6日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1〜29に係る発明は、令和2年9月8日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1〜29に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1〜29に係る発明は、本願出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:米国特許第2012/0322553号明細書

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項は、上記第2[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、実質的に、上記第2[理由]2で検討した本件補正発明の、「前記コントローラの前記底部の外側表面に固定された第1の端部」の「前記底部の」との限定事項、「第2の面」についての「第2の端部における」との限定事項を削除したものであり、また、本願発明の「前記第1の細長い部材が搭載される前記コントローラ」の「搭載」は、「固定」の上位概念であることは明らかであり、引用発明1は「前記追加制御部は、ねじまたはボルトなどの機械的固定手段又は接着や溶接や他の適切な手段により、コントローラ本体に搭載され」る構成を有していることから、当該事項は相違点にはならない。
そうすると、本願発明と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>
ゲームのために使用者の入力を供給するためのコントローラであって、ゲームを制御するためのコントローラにおいて、
ケースと、
前記コントローラの前方端部及び上部に位置した複数の制御部と、
を備え、
前記コントローラは、使用者の両手内に保持されるように形成されており、それによって、使用者の親指は、前記コントローラの前記上部に位置した複数の制御部を操作するために位置付けられており、且つ、使用者の人差し指は、前記コントローラの前記前方端部に位置した複数の制御部を操作するために位置付けられており、
前記コントローラは、ベース部分と少なくとも1つの第1の追加制御部とを備え、前記少なくとも1つの第1の追加制御部は、使用者の中指、薬指、又は小指で操作可能な位置で、前記コントローラの底部に位置し、
前記少なくとも1つの第1の追加制御部は第1の細長い部材を備え、前記第1の細長い部材は本質的に弾性であり、且つ可撓性を有しており、それによって、前記第1の細長い部材は、制御機能を作動させるために使用者によって十分に変位されることができ、
前記第1の細長い部材又は各第1の細長い部材は、第1の面を備え、前記第1の面は、前記コントローラの前記ベース部分の前記底部の外側表面に近接して配置され、
前記第1の細長い部材又は各第1の細長い部材は、第2の面を備え、前記第2の面は、前記第1の面と反対側であり、
前記第1の細長い部材又は各第1の細長い部材は、前記コントローラの前記外側表面に固定された第1の部位と、前記制御機能を作動させるために、前記コントローラの前記外側表面に向けて変位可能である第2の部位と、を備える、
コントローラ。

<相違点>
(相違点1)
コントローラにより使用者の入力を供給する対象及びコントローラにより制御する対象は、それぞれ、本願発明では、「ゲームプログラムなどのコンピュータプログラム」及び「ゲームプログラム」であるのに対し、引用発明1では、その点が明示されていない点。

(相違点2)
本願発明は、「第1の追加制御部」が「前記コントローラの『ベース部分』の底部に位置」するのに対し、引用発明1は、「左右のハンドルと本体中央部分との間に、前記追加制御部が搭載される」点。

(相違点3)
本願発明は、「固定された第1の部位」が「固定された第1の端部」であり、「前記外側表面に向けて変位可能である第2の部位」が「前記外側表面に向けて変位可能である第2の端部」であり、「前記第1の端部」と「第2の端部」とが「反対側」であるのに対し、引用発明1は、「固定された第1の部位」が「固定された部位」であり、「前記外側表面に向けて変位可能である第2の部位」が「押圧することで変位させらせる」「前記細長い部材の端部側」であり、「固定された部位」と「前記細長い部材の端部側」とが「反対側」の関係にあるか定かではない点。

(相違点4)
本願発明は、「前記第2の面は、前記第1の細長い部材が搭載された前記コントローラの前記ベース部分の底部の外側表面の一部分と平行ではないように構成され、且つ配置され」るのに対し、引用発明1は、追加制御部が、ねじまたはボルトなどの機械的固定手段又は接着や溶接や他の適切な手段により、コントローラ本体に搭載されているものの、「前記第2の面は」、「前記コントローラの前記ベース部分の底部の外側表面の一部分と平行ではないように構成され、且つ配置される」か明らかでない点。

上記相違点1〜4は、上記第2[理由]2(4)ア〜エで検討とおり、引用発明1及び引用発明2に基づいて、当業者が容易に想到することができたものであるから、本願発明も、引用発明1及び引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび

以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。

審判長 藤本 義仁
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
 
審理終結日 2022-03-15 
結審通知日 2022-03-22 
審決日 2022-04-05 
出願番号 P2019-050920
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 藤本 義仁
特許庁審判官 松田 直也
佐々木 創太郎
発明の名称 ゲームコントローラ  
代理人 村山 靖彦  
代理人 実広 信哉  
代理人 阿部 達彦  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ