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審決分類 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1387912
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-05-07 
確定日 2022-08-25 
事件の表示 特願2017−116084「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 1月10日出願公開、特開2019− 229〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年6月13日の出願であって、令和2年7月16日付けで拒絶の理由が通知され、同年10月1日に意見書及び手続補正書が提出され、同年同月9日付けで最後の拒絶の理由が通知され、同年12月21日に意見書が提出されたところ、令和3年1月27日付け(送達日:同年2月9日)で拒絶査定がなされ、それに対して、同年5月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、これに対し、当審において、同年11月10日付けで拒絶の理由が通知され、令和4年1月13日に意見書及び手続補正書が提出され、これに対し、当審において、同年3月16日付けで最後の拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年5月16日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 令和4年5月16日に提出された手続補正書による補正の却下の決定
〔補正の却下の決定の結論〕
令和4年5月16日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
〔理由〕
1 本件補正の概要
本件補正は、特許請求の範囲についてする補正を含むものであって、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
(補正前:令和4年1月13日に提出された手続補正書)
「【請求項1】
遊技球が流下する遊技領域が形成された遊技盤と、
前記遊技領域に設けられ、遊技球が入球可能な入賞口と、
前記入賞口に遊技球が入球した場合に、該入賞口に対応する賞球を払い出す払出手段と、
前記払出手段により払い出される賞球数を払出数として計数する払出数計数手段と、
前記遊技領域に発射された遊技球の数、もしくは、該遊技領域から排出された遊技球の数である排出数をアウト球数として計数するアウト球数計数処理を実行するアウト球数計数手段と、前記アウト球数に対する前記払出数の比率をベース比率として導出するベース比率導出処理を実行するベース比率導出手段と、前記ベース比率をベース表示部に表示するベース比率表示処理を実行するベース比率表示手段と、を少なくとも有する主制御部と、
を備え、
前記主制御部は、
メモリ領域として、遊技の進行を制御する処理に用いられる使用領域と、少なくとも前記ベース比率導出処理、および、前記ベース比率表示処理に用いられる使用外領域とを有し、
予め設定された最初の区間が終了するまでの前記アウト球数および前記払出数に基づく前記ベース比率導出処理に応じた前記ベース比率の表示は行わず、前記最初の区間における前記ベース比率導出処理の結果を表さない特殊表示を前記ベース表示部に表示する特殊表示処理を実行するとともに、
前記最初の区間の終了後は、予め定められた区間に対応した前記ベース比率を前記ベース表示部に表示し得ることを特徴とする遊技機。」
から、
(補正後:令和4年5月16日に提出された手続補正書)
「【請求項1】
遊技球が流下する遊技領域が形成された遊技盤と、
前記遊技領域に設けられ、遊技球が入球可能な入賞口と、
前記入賞口に遊技球が入球した場合に、該入賞口に対応する賞球を払い出す払出手段と、
前記払出手段により払い出される賞球数を払出数として計数する払出数計数手段と、
前記遊技領域に発射された遊技球の数、もしくは、該遊技領域から排出された遊技球の数である排出数をアウト球数として計数するアウト球数計数処理を実行するアウト球数計数手段と、予め定められた所定の遊技状態において、前記アウト球数に対する前記払出数の比率をベース比率として導出するベース比率導出処理を実行し、前記所定の遊技状態以外の遊技状態において、前記ベース比率導出処理を実行しないベース比率導出手段と、前記ベース比率をベース表示部に表示するベース比率表示処理を実行するベース比率表示手段と、を少なくとも有する主制御部と、
を備え、
前記主制御部は、
メモリ領域として、遊技の進行を制御する処理に用いられる使用領域と、少なくとも前記ベース比率導出処理、および、前記ベース比率表示処理に用いられる使用外領域とを有し、
予め設定された最初の区間が終了するまでの前記アウト球数および前記払出数に基づく前記ベース比率導出処理に応じた前記ベース比率の表示は行わず、前記最初の区間における前記ベース比率導出処理の結果を表さない特殊表示を前記ベース表示部に表示する特殊表示処理を実行するとともに、
前記最初の区間の終了後は、予め定められた区間に対応した前記ベース比率を前記ベース表示部に表示し得ることを特徴とする遊技機。」
に補正された(下線は補正箇所を明示するために合議体が付した。)。

2 本件補正の適否
(1) 補正事項
本件補正は、補正前の請求項1について、次の補正事項からなるものである。
「前記アウト球数に対する前記払出数の比率をベース比率として導出するベース比率導出処理を実行するベース比率導出手段」という記載を、「予め定められた所定の遊技状態において、前記アウト球数に対する前記払出数の比率をベース比率として導出するベース比率導出処理を実行し、前記所定の遊技状態以外の遊技状態において、前記ベース比率導出処理を実行しないベース比率導出手段」とする補正。

(2) 補正の目的について
本件補正は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「ベース比率導出手段」について、補正前に「前記アウト球数に対する前記払出数の比率をベース比率として導出するベース比率導出処理を実行する」としていたのを、補正後に「予め定められた所定の遊技状態において、前記アウト球数に対する前記払出数の比率をベース比率として導出するベース比率導出処理を実行し、前記所定の遊技状態以外の遊技状態において、前記ベース比率導出処理を実行しない」と限定することにより減縮する補正であり、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(3) 新規事項の追加の有無について
本件補正は、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)の【0116】、【0423】、図49等に記載された事項であり、当該補正は、当初明細書等の記載の範囲内においてしたものであるから、特許法第17条の2第3項の規定を満たす。

3 独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明を再掲すると、次のとおりのものである(なお、AないしEは、分説するため合議体が付した。以下A等を付した事項を「特定事項A」等という。)。

「A 遊技球が流下する遊技領域が形成された遊技盤と、
B 前記遊技領域に設けられ、遊技球が入球可能な入賞口と、
C 前記入賞口に遊技球が入球した場合に、該入賞口に対応する賞球を払い出す払出手段と、
D1 前記払出手段により払い出される賞球数を払出数として計数する払出数計数手段と、
D2 前記遊技領域に発射された遊技球の数、もしくは、該遊技領域から排出された遊技球の数である排出数をアウト球数として計数するアウト球数計数処理を実行するアウト球数計数手段と、
D3 予め定められた所定の遊技状態において、前記アウト球数に対する前記払出数の比率をベース比率として導出するベース比率導出処理を実行し、前記所定の遊技状態以外の遊技状態において、前記ベース比率導出処理を実行しないベース比率導出手段と、
D4 前記ベース比率をベース表示部に表示するベース比率表示処理を実行するベース比率表示手段と、
D を少なくとも有する主制御部と、
を備え、
D 前記主制御部は、
D5 メモリ領域として、遊技の進行を制御する処理に用いられる使用領域と、少なくとも前記ベース比率導出処理、および、前記ベース比率表示処理に用いられる使用外領域とを有し、
D6 予め設定された最初の区間が終了するまでの前記アウト球数および前記払出数に基づく前記ベース比率導出処理に応じた前記ベース比率の表示は行わず、前記最初の区間における前記ベース比率導出処理の結果を表さない特殊表示を前記ベース表示部に表示する特殊表示処理を実行するとともに、
D7 前記最初の区間の終了後は、予め定められた区間に対応した前記ベース比率を前記ベース表示部に表示し得る
E ことを特徴とする遊技機。」

(2) 先願明細書等の記載、先願発明
当審拒絶理由で先願1として引用され、本願の出願日前の特許出願であって、本願の出願後に出願公開された特願2017−12745(特開2018−23722)(出願日:平成29年1月27日、優先権主張:平成28年6月30日、同年8月3日、出願公開日:平成30年2月15日、出願人:株式会社サンセイアールアンドディ、発明者:田中勝巳)(以下「先願1」という。)の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下「先願明細書等」という。)には、遊技機(発明の名称)に関し、次の事項が図とともに記載されている(下線は合議体が付した。)。

ア 「【0013】
図1に示すように、パチンコ遊技機1は、遊技機枠50と、遊技機枠50内に取り付けられた遊技盤2(図3参照)とを備えている。遊技機枠50は、図1に示すように、パチンコ遊技機1の外郭部を構成するものであり、外枠51と内枠52と前枠(ガラス扉枠)53とを備えている。外枠(基枠部)51は、パチンコ遊技機1の外郭を形成する縦長方形状の枠体である。内枠(保持枠部)52は、外枠51の内側に配置されていて、遊技盤2を取付ける縦長方形状の枠体である。前枠(前扉部)53は、外枠51及び内枠52の前面側に配置されていて、遊技盤2を保護する縦長方形状のものである。」

イ 「【0018】
次に、図3に基づいて遊技盤2について説明する。図3に示すように、遊技盤2には、ハンドル60の操作により発射された遊技球が流下する遊技領域3が、レール部材4で囲まれて形成されている。また遊技盤2には、装飾用の盤ランプ5(図10参照)が設けられている。なお遊技盤2は、前側に配されている板状部材(遊技板)と、後側に配されている裏ユニット(後述する各種制御基板、画像表示装置7、ハーネス等を取付けるユニット)とが一体化されたものである。」

ウ 「【0025】
遊技領域3における画像表示装置7の下方には、遊技球の入球し易さが常に変わらない第1始動口(第1入球口や、第1始動入賞口、固定入球口ともいう)20を備える第1始動入賞装置(第1入球手段や固定入球手段ともいう)19が設けられている。第1始動口20への遊技球の入賞は、第1特別図柄の抽選(大当たり抽選、すなわち大当たり乱数等の取得と判定)の契機となっている。
【0026】
また遊技領域3における第1始動口20の下方には、第2始動口(第2入球口や、第2始動入賞口、可変入球口ともいう)21を備える普通可変入賞装置(いわゆる電チュー)22が設けられている。電チュー22を、可変入球手段や、第2入球手段、第2始動入賞装置ともいう。第2始動口21への遊技球の入賞は、第2特別図柄の抽選(大当たり抽選)の契機となっている。電チュー22は、開閉部材(可動部材)23を備え、開閉部材23の作動によって第2始動口21を開閉する普通電動役物である。開閉部材23は、電チューソレノイド24(図9参照)により駆動される。開閉部材23が開状態にあるときには、第2始動口21への遊技球の入球が可能となり、閉状態にあるときには、第2始動口21への遊技球の入球が不可能となる。つまり、第2始動口21は、遊技球の入球し易さが変化可能な始動口である。なお、電チューは、開閉部材が開状態にあるときの方が閉状態にあるときよりも第2始動口への入球を容易にするものであれば、閉状態にあるときに第2始動口への入球を不可能とするものでなくてもよい。
【0027】
また、遊技領域3における第1始動口20の右方には、第1大入賞口(第1特別入賞口)30を備えた第1大入賞装置(第1特別入賞手段や第1特別可変入賞装置ともいう)31が設けられている。第1大入賞装置31は、開状態と閉状態とをとる開閉部材(第1特別入賞口開閉部材)32を備え、開閉部材32の作動により第1大入賞口30を開閉する特別電動役物である。開閉部材32は、第1大入賞口ソレノイド33(図9参照)により駆動される。第1大入賞口30は、開閉部材32が開状態であるときだけ遊技球が入球可能となる。
【0028】
また、遊技領域3における第1大入賞口30の上方には、第2大入賞口(第2特別入賞口)35を備えた第2大入賞装置(第2特別入賞手段や第2特別可変入賞装置ともいう)36が設けられている。第2大入賞装置36は、開状態と閉状態とをとる開閉部材(第2特別入賞口開閉部材)37を備え、開閉部材37の作動により第2大入賞口35を開閉する特別電動役物である。開閉部材37は、第2大入賞口ソレノイド38(図9参照)により駆動される。第2大入賞口35は、開閉部材37が開状態であるときだけ遊技球が入球可能となる。
・・・
【0033】
図3に戻り、遊技領域3における第1大入賞口30の上方には、遊技球が通過可能なゲート(通過口、通過領域ともいう)28が設けられている。ゲート28への遊技球の通過は、電チュー22を開放するか否かを決める普通図柄抽選(すなわち普通図柄乱数(当たり乱数)の取得と判定)の実行契機となっている。さらに遊技領域3の下部には、普通入賞口27が設けられている。また遊技領域3の最下部には、遊技領域3へ打ち込まれたもののいずれの入賞口にも入賞しなかった遊技球を遊技領域3外へ排出するアウト口16が設けられている。」

エ 「【0071】
図9に示すように、主制御基板80には、プログラムに従ってパチンコ遊技機1の遊技の進行を制御する遊技制御用ワンチップマイコン(以下「遊技制御用マイコン」)81が実装されている。遊技制御用マイコン(主制御手段)81には、遊技の進行を制御するためのプログラム等を記憶したROM83、ROM83に記憶されたプログラムを実行するCPU82、ワークメモリとしてCPU82の処理情報を格納するRAM84、データや信号の入出力を行うためのI/Oポート部(入出力回路)87、及び出率を演算するためのワークメモリとして使用される特別メモリ89が含まれている。
【0072】
RAM84には、図9に示すように、特図保留記憶部85(第1特図保留記憶部85aおよび第2特図保留記憶部85b)と普図保留記憶部86とが設けられている。更にRAM84には、図11(B)に示すように、遊技表示器40に遊技情報を表示するためのデータ情報を記憶する第1遊技データ記憶領域、第2遊技データ記憶領域、第3遊技データ記憶領域、第4遊技データ記憶領域が設けられている。ROM83は外付けであってもよい。」

オ 「【0086】
第1始動口センサ20aは、第1始動口20内に設けられて、第1始動口20に入賞した遊技球を検出するものである。第2始動口センサ21aは、第2始動口21内に設けられて、第2始動口21に入賞した遊技球を検出するものである。ゲートセンサ28aは、ゲート28内に設けられてゲート28を通過した遊技球を検出するものである。第1大入賞口センサ30aは、第1大入賞口30内に設けられて第1大入賞口30に入賞した遊技球を検出するものである。第2大入賞口センサ35aは、第2大入賞口35内に設けられて第2大入賞口35に入賞した遊技球を検出するものである。特定領域センサ39aは、第2大入賞口35内の特定領域39に設けられて特定領域39を通過した遊技球を検出するものである。非特定領域センサ70aは、第2大入賞口35内の非特定領域70に設けられて非特定領域70を通過した遊技球を検出するものである。普通入賞口センサ27aは、各普通入賞口27内に設けられて普通入賞口27に入賞した遊技球を検出するものである。」

カ 「【0090】
払出制御基板(主基板)110は、プログラムに従って遊技球の払い出しに係る制御処理を実行可能な払出制御用ワンチップマイコン(以下「払出制御用マイコン」)116を実装している。払出制御用マイコン(払出制御手段)116には、払い出しを制御するためのプログラムを記憶したROM118、ワークメモリとして使用されるRAM119、ROM118に記憶されたプログラムを実行するCPU117、データや信号の入出力を行うためのI/Oポート部(入出力回路)109が含まれている。なお、ROM118は外付けであってもよい。
【0091】
払出制御用マイコン116は、遊技制御用マイコン81からの信号(賞球コマンド)に基づいて、賞球払出装置120の賞球モータ121を駆動して賞球の払い出しを行う。払い出される賞球は、その計数のため賞球センサ122により検出され、賞球センサ122による検出信号が払出制御基板110に出力される。本形態では、普通入賞口27への入賞による賞球数は8球である。また、第1始動口20への入賞による賞球数は3球であり、第2始動口21への入賞による賞球数は7球である。そして、第1大入賞口30への入賞による賞球数は15球であり、第2大入賞口35への入賞による賞球数は15球である(図11(A)参照)。なお各入賞口への入賞による賞球数は、上記したものに限られず、適宜変更可能である。」

キ 「【0179】
8.遊技制御用マイコン81の動作
[主制御メイン処理]次に図42〜図56に基づいて遊技制御用マイコン81の動作について説明する。なお、遊技制御用マイコン81の動作説明にて登場する主なカウンタ、タイマ、フラグ、ステータス、バッファ等は、RAM84に設けられている。カウンタの初期値は「0」であり、フラグの初期値は「0」つまり「OFF」であり、ステータスの初期値は「1」である。主制御基板80に備えられた遊技制御用マイコン81は、パチンコ遊技機1の電源が投入されると、ROM83から図42に示した主制御メイン処理のプログラムを読み出して実行する。同図に示すように、主制御メイン処理では、まず後述する電源投入時処理を行う(S001)。
・・・
【0181】
普通図柄・特別図柄主要乱数更新処理(S003)が終了すると、割り込みを許可する(S004)。割り込み許可中は、メイン側タイマ割り込み処理(S005)の実行が可能となる。メイン側タイマ割り込み処理(S005)は、4msec周期でCPU82に繰り返し入力される割り込みパルスに基づいて実行される。そして、メイン側タイマ割り込み処理(S005)が終了してから、次にメイン側タイマ割り込み処理(S005)が開始されるまでの間に、普通図柄・特別図柄主要乱数更新処理(S003)による各種カウンタ値の更新処理が繰り返し実行される。なお、割り込み禁止状態のときにCPU82に割り込みパルスが入力された場合は、メイン側タイマ割り込み処理(S005)はすぐには開始されず、割り込み許可(S004)がされてから開始される。」

ク 「【0194】
[入力処理]図45に示すように、入力処理(S101)ではまず、主にパチンコ遊技機1に取付けられている各種センサ(第1始動口センサ20a,第2始動口センサ21a、第1大入賞口センサ30a、第2大入賞口センサ35a、普通入賞口センサ27a等(図9参照))が検知した検出信号を読み込む(S110)。そして、検出信号が賞球の払い出しに係る入賞検知信号であるか否かを判定する(S111)。入賞検知信号でなければ(S111でNO)、その他の処理(S122)を実行して、ステップS118に進む。例えば磁気センサや衝撃センサ等の検出による不正検知信号であれば、その他の処理(S122)として不正報知を行うための処理を実行する。
【0195】
一方、入賞検知信号であれば(S111でYES)、図11(A)に示す賞球数カウンタ加算テーブルを参照する(S112)。賞球数カウンタ加算テーブルは、図11(A)に示すように、入賞口の種類に応じた賞球数を示すと共に、100球用カウンタ、役物賞球数カウンタ、連続役物賞球数カウンタの何れに賞球数をカウントアップ(加算)するのかを示すテーブルである。賞球数カウンタ加算テーブルを参照した後(S112)、入賞口の種類に応じた賞球数を払い出すための賞球コマンドを遊技用RAM84の出力バッファにセットする。なおこの賞球コマンドは、後述する出力処理(S107)により払出制御基板110に送信される。」

ケ 「【0275】
<第1形態の変形例>
図63〜図73に基づいて第1形態の変形例のパチンコ遊技機1について説明する。上記第1形態では、出率表示器300に出率を表示できるように構成した。これに対して第1形態の変形例では、ベース表示器にベースを表示できように構成されている。ベース(特定割合値)は、遊技者が発射した遊技球の数である発射球数(総発射球数,特定遊技球数)に対して遊技者が獲得した総賞球数の割合のことである。ベースを表示するベース表示器は、4連7セグで構成されていて、上記した出率表示器300(図8参照)とハード的に全く同じ構成である。そのため、以下では「ベース表示器(特定表示器)300」と呼ぶことにする。なお発射球数は、ベースを演算する前の分母となる値(分母計測値)であり、総賞球数は、ベースを演算する前の分子となる値(分子計測値)である。」

コ 「【0277】
そこでこの変形例では、図63に示すように、アウト口16から遊技領域3外へ延びるアウト口排出経路HKにアウト口センサ16aが配されている。アウト口センサ16aは、アウト口16に入球した遊技球を検出するものである。なお第1始動口20、第2始動口21、第1大入賞口30、第2大入賞口35、又は普通入賞口27に入球した遊技球は、アウト口センサ16aを通過することなく、遊技領域3外へ排出されるようになっている。つまりこの変形例のアウト口センサ16aは、何れの入賞口にも入賞しなかった遊技球を検出するものである。図64に示すように、主制御基板80には中継基板88を介してアウト口センサ16aに接続されている。従って、アウト口センサ16aによる検出信号は、遊技制御用マイコン81に入力される。」

サ 「【0285】
図65(C)に示すように、変形例の特別メモリ89は、ベースを演算するための処理情報を格納する専用のメモリである。具体的に特別メモリ89には、通常100球用カウンタ、通常発射球数カウンタ、通常総賞球数カウンタ、通常ベース記憶領域、時短100球用カウンタ、時短発射球数カウンタ、時短総賞球数カウンタ、時短ベース記憶領域、大当たり100球用カウンタ、大当たり発射球数カウンタ、大当たり総賞球数カウンタ、大当たりベース記憶領域、変動回数カウンタ、チェックサム記憶領域が設けられている。変形例の特別メモリ89は、上記第1形態の特別メモリ89と同様、電源が供給されなくなると記憶内容を保持することができない揮発性の記憶手段(DRAM)である。しかしながら特別メモリ89の記憶内容は、上記第1形態と同様、電源投入時のRAMクリアスイッチ152の操作で消去されないようになっている。
【0286】
通常100球用カウンタ(第1カウンタ)は、通常遊技状態にて遊技者が発射した発射球数を1球ずつカウントするものであり、100球カウントすると「0」の値にリセットされるようになっている。通常発射球数カウンタは(第2カウンタ)は、通常100球用カウンタにより100球がカウントされると1つカウントするものである。これら通常100球用カウンタと通常発射球数カウンタは、電源が投入された時点から現時点までの通常遊技状態での発射球数を百球単位で1つとして計測するもの(百球用計測手段)である。こうして通常100球用カウンタと通常発射球数カウンタを用いて通常ベースを演算することで、上記第1形態で説明したように、除算の際のソフト的な処理を簡易にすることが可能であると共に、100倍するという乗算の処理を省くことが可能である。通常総賞球数カウンタは、電源が投入されてから現時点までの通常遊技状態での賞球数の合計をカウントするものである。通常ベース記憶領域は、演算された通常ベースを記憶しておくものである。」

シ 「【0289】
[入力処理]図66に示す変形例の入力処理(S101)では、図45に示す第1形態の入力処理(S101)に対して、ステップS111に換えてステップS150が設けられ、ステップS117に換えてステップS152が設けられ、ステップS119〜S121に換えてステップS153〜S157が設けられている。図66に示すように、遊技制御用マイコン81は、ステップS110で各センサによる検出信号を読み込んだ後、ステップS150にて入球検知信号であるか否かを判定する。つまり、第1始動口センサ20aによる検出信号、第2始動口センサ21aによる検出信号、第1大入賞口センサ30aによる検出信号、第2大入賞口センサ35aによる検出信号、普通入賞口センサ27aによる検出信号、又はアウト口センサ16aによる検出信号であるか否かを判定する。入球検知信号であれば(S150でYES)、ステップS112及びS113の後、後述するカウンタ加算処理を実行する(S151)。但しこの変形例において、アウト口センサ16aによる検出信号である場合には、ステップS113で賞球コマンドがセットされることはない。そして、遊技機枠50が開放されていて(S115でYES)、且つ客待ち状態であれば(S116でYES)、後述するベース演算処理を実行する(S152)。」

ス 「【0292】
[カウンタ加算処理]図67に示すように、カウンタ加算処理(S151)ではまず、通常遊技状態(通常確率状態且つ非時短状態)であるか否かを判定する(S160)。即ち、高確率状態であることを示す高確フラグがOFFであり且つ時短状態であることを示す時短フラグがOFFであるか否かを判定する。通常遊技状態であれば(S160でYES)、通常100球用カウンタの値を「1」だけ加算する(S161)。そして、通常100球用カウンタの値が「100」以上になったか否かを判定する(S162)。「100」未満であれば(S162でNO)、ステップS165に進む。一方、「100」以上であれば(S162でYES)、通常発射球数カウンタの値を「1」だけ加算すると共に(S163)、通常100球用カウンタの値を「100」だけ減算して(S164)、ステップS165に進む。このようにして、通常遊技状態での発射球数を百球単位で1つとして計測することが可能である。
【0293】
ステップS165では、アウト口16への入球であるか否かを判定する。つまり、図66のステップS110で読み込んだ入球検知信号がアウト口センサ16aによる検出信号であるか否かを判定する。アウト口16への入球であれば(S165でYES)、本処理を終える。一方、アウト口への入球でなければ(S165でNO)、入賞口(第1始動口20、第2始動口21、第1大入賞口30、第2大入賞口35、普通入賞口27)への入賞であることになる。この場合には、図66のステップS110で読み込んだ入球検知信号の種類と、図65(A)に示す賞球数カウンタ加算テーブルとに基づいて、通常総賞球数カウンタの値を加算させて(S166)、本処理を終える。例えば、通常遊技状態で普通入賞口27への入賞であれば、通常総賞球カウンタの値を「8」だけ加算する。」

セ 「【0298】
[ベース演算処理]図68に示すように、ベース演算処理(S152,特定演算処理)ではまず、通常遊技状態(通常確率状態且つ非時短状態)であるか否かを判定する(S180)。通常遊技状態であれば(S180でYES)、通常発射球数カウンタの値が「1」以上であるか否かを判定する(S181)。「1」以上であれば(S181でYES)、通常ベース演算処理を実行する(S182)。具体的には、通常総賞球数カウンタの値を通常発射球数カウンタの値で除算する。これにより、100倍するという乗算の処理を行うことなく、百分率の値としての通常ベースを簡易に演算することが可能である。なお演算された通常ベースでは、小数第1位の値が四捨五入されるようになっている。そして通常ベースの値を特別メモリ89の通常ベース記憶領域(図65(C)参照)に記憶して(S183)、本処理を終える。一方、ステップS181で通常発射球数カウンタの値が「1」以上でなければ「0」であることになり、通常ベースを演算できないため、本処理を終える。」

ソ 「【0301】
[出力処理]図69に示す変形例の出力処理(S107)では、図52に示す第1形態の出力処理(S107)に対して、ステップS2304に換えてステップS2340が設けられている。図69に示すように、遊技制御用マイコン81は、遊技機枠が開放されていて(S2301でYES)、且つ客待ち状態であれば(S2302でYES)、後述するベース表示処理(特定表示処理)を実行する(S2340)。ベース表示処理は、ベースをベース表示器300に表示させるための処理である。
・・・
【0304】
表示フラグが「1」であれば(S2606でYES)、入出力端子D0〜D7から、特別メモリ89の通常ベース記憶領域に記憶されている通常ベースの十の位を表示するためのデータ情報D[0…7]を出力する(S2607)。一方、表示フラグが「1」でなければ(S2606でNO)、続いて、表示フラグが「2」であるか否かを判定する(S2608)。表示フラグが「2」であれば(S2608でYES)、入出力端子D0〜D7から、特別メモリ89の時短ベース記憶領域に記憶されている時短ベースの十の位を表示するためのデータ情報D[0…7]を出力する(S2609)。これに対して、表示フラグが「2」でなければ(S2608でNO)、「3」であることになり、入出力端子D0〜D7から、特別メモリ89の大当たりベース記憶領域に記憶されている大当たりベースの百の位を表示するためのデータ情報D[0…7]を出力する(S2610)。ステップS2607又はS2609或いはS2610の後、セレクト信号XCSE1の出力レベルを「H」レベルに切替える(S2511)。これにより、第1点灯領域310にて表示すべき点灯態様で点灯させることが可能である。そして、コモンフラグを「2」に切替えて(S2612)、本処理を終える。
・・・
【0306】
続いて、表示フラグが「1」であるか否かを判定する(S2626)。表示フラグが「1」であれば(S2626でYES)、入出力端子D0〜D7から、特別メモリ89の通常ベース記憶領域に記憶されている通常ベースの一の位を表示するためのデータ情報D[0…7]を出力する(S2627)。一方、表示フラグが「1」でなければ(S2626でNO)、続いて、表示フラグが「2」であるか否かを判定する(S2628)。表示フラグが「2」であれば(S2628でYES)、入出力端子D0〜D7から、特別メモリ89の時短ベース記憶領域に記憶されている時短ベースの一の位を表示するためのデータ情報D[0…7]を出力する(S2629)。これに対して、表示フラグが「2」でなければ(S2628でNO)、「3」であることになり、入出力端子D0〜D7から、特別メモリ89の大当たりベース記憶領域に記憶されている大当たりベースの十の位を表示するためのデータ情報D[0…7]を出力する(S2630)。ステップS2627又はS2629或いはS2630の後、セレクト信号XCSE1の出力レベルを「H」レベルに切替える(S2531)。これにより、第2点灯領域320にて表示すべき点灯態様で点灯させることが可能である。そして、コモンフラグを「3」に切替えて(S2632)、本処理を終える。」

タ 「【0375】
<第5形態>
図90〜図92に基づいて第5形態のパチンコ遊技機1について説明する。上記第1形態では、出率表示器300に出率を表示しない場合でも、前に表示していた出率が出率表示器300にそのまま表示されているようになっていた。これに対して第5形態では、出率表示器300に出率を表示しない場合には、図90に示すように、出率表示器300に「−−−−」を表示するようになっている。つまり、第1点灯領域310で出率用点灯部LB7を点灯させ、第2点灯領域320で出率用点灯部LB15を点灯させ、第3点灯領域330で出率用点灯部LB23を点灯させ、第4点灯領域340で出率用点灯部LB31を点灯させるようになっている。以下、第1形態と異なる点を中心に説明する。
・・・
【0383】
また、第5形態のパチンコ遊技機1によれば、特別図柄の変動表示の実行中や大当たり遊技状態への制御中(遊技制御状態であるとき)に、出率を演算しないで、出率表示器300の第1点灯領域310及び第2点灯領域320の態様を「−−」にする。つまり、出率表示器300に出率を表示しないときには、出率を演算するという無駄な制御処理を行わない。そして、遊技制御状態では客待ち状態に比べて、制御処理の負担が大きい。従って、制御処理の負担が大きい遊技制御状態において、出率の演算及び表示を行わないようにすることで、主制御基板80(遊技制御用マイコン81)による制御処理の負担を軽減することが可能である。第5形態のその他の作用効果は、上述した第1形態の作用効果と実質的に同様であるため、説明を省略する。
・・・
【0385】
<第5形態の変形例>
図93に基づいて第5形態の変形例のパチンコ遊技機1について説明する。上記第5形態では、出率表示器300に出率を表示しない場合には、出率表示器300に「−−−−」を表示するようにした(図90参照)。これに対して、第5形態の変形例では、ベース表示器300にベースを表示しない場合には、ベース表示器300に「−−−−」を表示するように構成されている。」

チ 「【0537】
また上記各形態の変形例では、通常ベースを演算するための分母となる発射球数を、百球単位で1つとして計測するために、通常100球用カウンタと通常発射球数カウンタとを用いた。また時短ベースを演算するための分母となる発射球数を、百球単位で1つとして計測するために、時短100球用カウンタと時短発射球数カウンタとを用いた。また大当たりベースを演算するための分母となる発射球数を、百球単位で1つとして計測するために、大当たり100球用カウンタと大当たり発射球数カウンタとを用いた。しかしながら、これら各発射球数を百球以外の単位で1つとして計測しても良く、例えば50球用カウンタや200球用カウンタを用いても良い。また、通常遊技状態での発射球数、時短状態での発射球数、大当たり遊技状態での発射球数を、それぞれ1つのカウンタを用いて1球単位で計測しても良い。この場合には、例えば通常ベースを演算する場合には、通常総賞球数カウンタの値に対して1球単位で計測したカウンタの値を除算して100倍すれば良い。
【0538】
また上記各形態の変形例では、通常遊技状態と時短状態と大当たり遊技状態という遊技状態毎に区切って、ベース(通常ベース、時短ベース、大当たりベース)を演算して表示した。しかしながら、ベースを区切る範囲は適宜変更可能であり、例えば大当たり遊技状態以外のベースと、大当たり遊技状態でのベースとを演算して表示するようにしても良い。また、遊技状態で区切らずに、電源が投入されてから現時点までの全ての状態を考慮したベースを演算して表示するようにしても良い。或いは、特定の状態(例えば時短状態)だけに限ったベースを演算して表示するようにしても良い。」

ツ 「【0556】
また上記第1形態の変形例では、遊技制御状態であるとき、即ち特別図柄の変動表示に関わる制御処理(特定の制御処理)又は大当たり遊技状態の制御中での制御処理(特定の制御処理)を実行しているときには、ベースを演算しない(ベース演算処理(S152、図66参照)を実行しない)ようにした。しかしながら、ベースを演算しない場合は、適宜変更可能であり、例えば時短状態での制御中での制御処理(特定の制御処理)を実行しているときには、ベースを演算しないようにしても良い。また例えば総発射球数が特定数に達するまでは、ベースを演算しないようにしても良い。」

テ 「【0600】
また上記各形態の変形例では、時間とは無関係なベースを演算して表示した。しかしながら、予め定められた時間でのベースを演算して表示するようにしても良い。例えば、1時間でのベース(短時間出玉率)を演算して表示するようにして良い。この場合には、1時間でのベースが300%を超えていれば、不正な改造、故障、又は不具合が生じていると判断することが可能である。また例えば、10時間でのベース(中時間出玉率)を演算して表示するようにしても良い。この場合には、10時間でのベースが50%よりも小さい、又は200%よりも大きければ、不正な改造、故障、又は不具合が生じていると判断することが可能である。」

ト (ア) 【0537】には、「通常ベースを演算するための分母となる発射球数を、百球単位で1つとして計測するために、通常100球用カウンタと通常発射球数カウンタとを用いた。・・・しかしながら、これら各発射球数を百球以外の単位で1つとして計測しても良く、・・・通常遊技状態での発射球数・・・を、1つのカウンタを用いて1球単位で計測しても良い。この場合には、例えば通常ベースを演算する場合には、通常総賞球数カウンタの値に対して1球単位で計測したカウンタの値を除算して100倍すれば良い。」と記載されている。
この記載から、先願明細書等には、「通常100球用カウンタと通常発射球数カウンタ」とを用い得ることに代えて、「発射球数を1球単位で計測するカウンタ」を備えることが記載されていると認められる。
(イ) 上記(ア)と【0285】の「特別メモリ89には、通常100球用カウンタ、通常発射球数カウンタ・・・が設けられている」の記載から、先願明細書等には、「特別メモリ89には、発射球数を1球単位で計測するカウンタが設けられている」ことが記載されていると認められる(以下「認定事項1」という。)。
(ウ) 上記(ア)と【0292】の「通常遊技状態であれば・・・、通常100球用カウンタの値を「1」だけ加算する・・・通常100球用カウンタの値が「100」以上になったか否かを判定する・・・「100」以上であれば・・・、通常発射球数カウンタの値を「1」だけ加算すると共に・・・、通常100球用カウンタの値を「100」だけ減算して」の記載から、先願明細書等には、「通常遊技状態であれば、発射球数を1球単位で計測するカウンタの値を「1」だけ加算する」ことが記載されていると認められる(以下「認定事項2」という。)。
(エ) 上記(ア)と【0298】の「ベース演算処理・・・では・・・通常総賞球数カウンタの値を通常発射球数カウンタの値で除算する」の記載から、先願明細書等には、「ベース演算処理では、通常総賞球数カウンタの値を発射球数を1球単位で計測するカウンタの値で除算する」ことが記載されていると認められる(以下「認定事項3」という。)。

ナ 【0538】には、「通常遊技状態と時短状態と大当たり遊技状態という遊技状態」と記載され、さらに、「特定の状態(例えば時短状態)だけに限ったベースを演算して表示する」と記載されている。
ここで「特定の状態」として「例えば時短状態」が例示されていることから、「特定の状態」の「状態」は「遊技状態」であるといえる。
そうすると、「特定の状態」には「通常遊技状態」も含まれることは明らかであるから、先願明細書等には、「通常遊技状態だけに限ったベースを演算して表示する」ことが記載されていると認められる(以下「認定事項4」という。)。

ニ 【0375】には、「第5形態」として「出率表示器300に出率を表示しない場合には、・・・出率表示器300に「−−−−」を表示する」と、また同じく「第5形態」に関する記載である【0383】には、「出率を演算しないで、出率表示器300の第1点灯領域310及び第2点灯領域320の態様を「−−」にする」及び「出率表示器300に出率を表示しないときには、出率を演算するという無駄な制御処理を行わない」と記載されている。
また、【0385】には、「第5形態の変形例」として「上記第5形態では、出率表示器300に出率を表示しない場合には、出率表示器300に「−−−−」を表示するようにした・・・。これに対して、第5形態の変形例では、ベース表示器300にベースを表示しない場合には、ベース表示器300に「−−−−」を表示するように構成されている」と記載されている。
これらの記載からみて、先願明細書等には、「ベース表示器300にベースを表示しないときには、ベースを演算せず、ベースの演算及び表示を行わないときには、ベース表示器300に「−−−−」を表示する」ことが記載されていると認められる(以下「認定事項5」という。)。

ヌ 上記アないしニからみて、先願明細書等には、以下の発明(以下「先願発明」という。)が記載されている。なお、引用箇所の段落番号を併記した。

「a 遊技球が流下する遊技領域3が形成されている遊技盤2と(【0018】)、
b 遊技領域3に設けられ、遊技球が入賞する第1始動口20及び第2始動口21と、遊技球が入球可能な第1大入賞口30及び第2大入賞口35と、普通入賞口27と(【0025】〜【0028】、【0033】)、
c 普通入賞口27への入賞により8球、第1始動口20への入賞により3球、第2始動口21への入賞により7球、第1大入賞口30への入賞により15球、第2大入賞口35への入賞により15球の賞球の払い出しを行う払出制御用マイコン116を実装する払出制御基板110と(【0090】、【0091】)、
d1〜d4 パチンコ遊技機1に取付けられている各種センサが検知した検出信号を読み込み、読み込んだ検出信号が、第1始動口20内に設けられて、第1始動口20に入賞した遊技球を検出する第1始動口センサ20a、第2始動口21内に設けられて、第2始動口21に入賞した遊技球を検出する第2始動口センサ21a、第1大入賞口30内に設けられて第1大入賞口30に入賞した遊技球を検出する第1大入賞口センサ30a、第2大入賞口35内に設けられて第2大入賞口35に入賞した遊技球を検出する第2大入賞口センサ35a、普通入賞口27内に設けられて普通入賞口27に入賞した遊技球を検出する普通入賞口センサ27a、又はアウト口16に入球した遊技球を検出するアウト口センサ16aによる検出信号である入球検知信号であれば、カウンタ加算処理を実行し(【0086】、【0194】、【0277】、【0289】)、
カウンタ加算処理では、通常遊技状態であれば、発射球数を1球単位で計測するカウンタの値を「1」だけ加算し(【0292】、認定事項2)、
入球検知信号が、アウト口への入球でなく、入賞口(第1始動口20、第2始動口21、第1大入賞口30、第2大入賞口35、普通入賞口27)への入賞である場合には、入球検知信号の種類と、入賞口の種類に応じた賞球数を示す賞球数カウンタ加算テーブルとに基づいて、電源が投入されてから現時点までの通常遊技状態での賞球数の合計をカウントする通常総賞球数カウンタの値を加算させ(【0195】、【0286】、【0293】)、
遊技者が発射した遊技球の数である発射球数に対して遊技者が獲得した総賞球数の割合であるベースを通常総賞球数カウンタの値を発射球数を1球単位で計測するカウンタの値で除算して演算し、演算された通常ベースの値を特別メモリ89の通常ベース記憶領域に記憶するベース演算処理を実行し(【0275】、【0298】、認定事項3)、
特別メモリ89の通常ベース記憶領域に記憶されている通常ベースの値をベース表示器300に表示させるベース表示処理を実行するものであり(【0298】、【0301】、【0304】、【0306】)、
通常遊技状態だけに限ったベースを演算して表示する(認定事項4)
メイン側タイマ割り込み処理を実行する遊技制御用マイコン81が実装されている主制御基板80と(【0071】、【0179】、【0181】)、
を備え、
主制御基板80は、
d5 ワークメモリとしてCPU82の処理情報を格納し、特図保留記憶部85と普図保留記憶部86とが設けられ、更に、遊技表示器40に遊技情報を表示するためのデータ情報を記憶する第1遊技データ記憶領域、第2遊技データ記憶領域、第3遊技データ記憶領域、第4遊技データ記憶領域が設けられているRAM84と(【0071】、【0072】)、
ベースを演算するための処理情報を格納する専用のメモリであり、発射球数を1球単位で計測するカウンタ、通常総賞球数カウンタ、通常ベース記憶領域が設けられている特別メモリ89(【0071】、【0285】、認定事項1)が含まれており、
通常ベース記憶領域は、演算された通常ベースを記憶しておくものであり(【0286】)、
d6 総発射球数が特定数に達するまでは、ベースを演算せず(【0556】)、
ベース表示器300にベースを表示しないときには、ベースを演算せず、ベースの演算及び表示を行わないときには、ベース表示器300に「−−−−」を表示し(認定事項5)、
d7 1時間でのベース(短時間出玉率)を演算して表示する(【0600】)
e パチンコ遊技機1(【0013】)。」

(3)対比、判断
ア 本願補正発明と先願発明とを対比する。なお、見出しは(a)ないし(e)とし、本願補正発明の分説と概ね対応させている。

(a) 先願発明の「遊技領域3」及び「遊技盤2」は、本願補正発明の「遊技領域」及び「遊技盤」にそれぞれ相当する。
よって、先願発明は、本願補正発明の特定事項Aを備える。

(b) 先願発明の「普通入賞口27」は、先願発明のcの「普通入賞口27への入賞により8球」「の賞球」が「払い出」されることから、先願発明の「遊技球が入賞する第1始動口20及び第2始動口21」と同様に、「遊技球が入賞する」ことは明らかである。
そうすると、先願発明の「遊技領域3に設けられ、遊技球が入賞する第1始動口20及び第2始動口21と、遊技球が入球可能な第1大入賞口30及び第2大入賞口35、普通入賞口27」は、本願補正発明の「前記遊技領域に設けられ、遊技球が入球可能な入賞口」に相当する。
よって、先願発明は、本願補正発明の特定事項Bを備える。

(c) 先願発明の「普通入賞口27への入賞により8球、第1始動口20への入賞により3球、第2始動口21への入賞により7球、第1大入賞口30への入賞により15球、第2大入賞口35への入賞により15球の賞球の払い出しを行う」ことは、本願補正発明の「前記入賞口に遊技球が入球した場合に、該入賞口に対応する賞球を払い出す」ことに相当する。
したがって、先願発明の「払出制御用マイコン116を実装する払出制御基板110」は、本願補正発明の「払出手段」の機能を備える。
よって、先願発明は、本願補正発明の特定事項Cを備える。

(d1) 先願発明のcより、先願発明の「賞球の払い出し」は、「払出制御用マイコン116を実装する払出制御基板110」により行われるから、先願発明の「賞球」は、「払出制御用マイコン116を実装する払出制御基板110」により「払い出」されるものである。
また、先願発明の「賞球数の合計をカウントする」ことは、本願補正発明の「賞球数を」「計数する」ことに相当するから、先願発明の「通常総賞球数カウンタの値」は、本願補正発明の「払出数」に相当する。
そうすると、先願発明の「払出制御用マイコン116を実装する払出制御基板110」により「払い出」される「賞球数の合計をカウントする通常総賞球数カウンタの値を加算させ」ることは、本願補正発明の「前記払出手段により払い出される賞球数を払出数として計数する」ことに相当し、先願発明の「払出制御用マイコン116を実装する払出制御基板110」により「払い出」される「賞球数の合計をカウントする通常総賞球数カウンタの値を加算させ」ること「を実行する遊技制御用マイコン81」は、本願補正発明の「主制御部」が有する「払出数計数手段」の機能を備えているといえる。
よって、先願発明は、本願補正発明の特定事項D、D1を備える。

(d2) 先願発明の「遊技者が発射した発射球数」は、本願補正発明の「前記遊技領域に発射された遊技球の数」「である排出数」に相当するといえるから、先願発明の「遊技者が発射した発射球数」「を1球単位で計測する」ことは、本願補正発明の「排出数を」「計数する」ことに相当する。
ここで、本願補正発明は「排出数をアウト球数として計数する」のであるから、本願補正発明の「アウト球数」は、「排出数を」「計数」したものである。
そうすると、先願発明の「発射球数を1球単位で計測するカウンタの値」は、本願補正発明の「排出数を」「計数」した「アウト球数」に相当するといえる。
したがって、先願発明の「遊技者が発射した」「発射球数を1球単位で計測する」ことは、本願補正発明の「アウト球数計数処理を実行する」ことに相当し、先願発明の「遊技者が発射した」「発射球数を1球単位で計測する」こと「を実行する遊技制御用マイコン81」は、本願補正発明の「主制御部」が有する「アウト球数計数手段」の機能を備えているといえる。
よって、先願発明は、本願補正発明の特定事項D、D2を備える。

(d3) 上記(d1)、(d2)より、先願発明の「発射球数を1球単位で計測するカウンタの値」、「通常総賞球数カウンタの値」は、本願補正発明の「アウト球数」、「払出数」にそれぞれ相当するから、先願発明の「通常総賞球数カウンタの値を発射球数を1球単位で計測するカウンタの値で除算して」「演算された通常ベース」は、本願補正発明の「前記アウト球数に対する前記払出数の比率」「として導出」される「ベース比率」に相当する。
そうすると、先願発明の「通常ベースの値」を「通常総賞球数カウンタの値を発射球数を1球単位で計測するカウンタの値で除算して演算」する「ベース演算処理」は、本願補正発明の「前記アウト球数に対する前記払出数の比率をベース比率として導出するベース比率導出処理」に相当する。
また、先願発明は「通常遊技状態だけに限ったベースを演算して表示する」ものであり、先願発明のd6より、「ベース表示器300にベースを表示しないときには、ベースを演算」しないものであるから、先願発明は、「通常遊技状態」において、「ベースを」「演算し」、「通常遊技状態」以外では、「ベースを」「演算し」ないものといえる。
してみると、先願発明は「通常遊技状態」において「ベース演算処理を実行し」、「通常遊技状態」以外では「ベース演算処理を実行」しないものであり、先願発明の「通常遊技状態」は、本願補正発明の「予め定められた所定の遊技状態」に相当するといえるから、先願発明は、本願補正発明の「予め定められた所定の遊技状態において」、「ベース比率導出処理を実行し、前記所定の遊技状態以外の遊技状態において、前記ベース比率導出処理を実行しない」という構成を備えるものである。
以上のことから、先願発明の「通常遊技状態」において「ベース演算処理を実行し」、「通常遊技状態」以外では「ベース演算処理を実行」しない「遊技制御用マイコン81」は、本願補正発明の「主制御部」が有する「予め定められた所定の遊技状態において、前記アウト球数に対する前記払出数の比率をベース比率として導出するベース比率導出処理を実行し、前記所定の遊技状態以外の遊技状態において、前記ベース比率導出処理を実行しないベース比率導出手段」の機能を備えているといえる。
よって、先願発明は、本願補正発明の特定事項D、D3を備える。

(d4) 先願発明の「ベース表示器300」は、本願補正発明の「ベース表示部」に相当する。
そうすると、先願発明の「通常ベースの値をベース表示器300に表示させるベース表示処理」は、本願補正発明の「前記ベース比率をベース表示部に表示するベース比率表示処理」に相当し、先願発明の「ベース表示処理」「を実行する遊技制御用マイコン81」は、本願補正発明の「主制御部」が有する「ベース比率表示処理を実行するベース比率表示手段」の機能を備えているといえる。
よって、先願発明は、本願補正発明の特定事項D、D4を備える。

(d5) 先願発明の「RAM84」及び「特別メモリ89」は、本願補正発明の「メモリ領域」に相当する。
そして、先願発明の「RAM84」は、「ワークメモリとしてCPU82の処理情報を格納し、特図保留記憶部85と普図保留記憶部86とが設けられ、更に、遊技表示器40に遊技情報を表示するためのデータ情報を記憶する第1遊技データ記憶領域、第2遊技データ記憶領域、第3遊技データ記憶領域、第4遊技データ記憶領域が設けられている」ことから、本願補正発明の「遊技の進行を制御する処理に用いられる使用領域」に相当する。
また、先願発明のd1〜d4の「ベース演算処理」において、「特別メモリ89」に設けられている「発射球数を1球単位で計測するカウンタ」を用いており、先願発明のd1〜d4の「ベース表示処理」において、「特別メモリ89」に設けられている「通常ベース記憶領域」に記憶されている「通常ベース」を用いていることから、先願発明の「特別メモリ89」は、本願補正発明の「少なくとも前記ベース比率導出処理、および、前記ベース比率表示処理に用いられる使用外領域」に相当する。
そして、先願発明の「RAM84」及び「特別メモリ89」を備える「主制御基板80」は、本願補正発明の「メモリ領域として」、「使用領域と」、「使用外領域とを有」する「主制御部」に相当する。
よって、先願発明は、本願補正発明の特定事項D、D5を備える。

(d6) 先願発明の「総発射球数が特定数に達するまで」は、本願補正発明の「予め設定された最初の区間が終了するまで」に相当する。
そして、先願発明は、「ベース表示器300にベースを表示しないときにはベースを演算」しないのであるから、「ベースを演算」しないときには「ベース表示器300にベースを表示しない」といえる。
そうすると、先願発明では、「総発射球数が特定数に達するまでは、ベースを演算せず」とされていることから、先願発明は「総発射球数が特定数に達するまでは」、「ベース表示器300にベースを表示しない」ものといえる。
また、先願発明の「ベース」は、先願発明のd1〜d4より、「ベース」を「演算」する「ベース演算処理を実行」して求められるものであり、上記(d3)の検討で述べたとおり、前記「ベース演算処理」は、本願補正発明における「前記アウト球数に対する前記払出数の比率をベース比率として導出するベース比率導出処理」のことである。
そうすると、先願発明は、本願補正発明の特定事項の「予め設定された最初の区間が終了するまでの前記アウト球数および前記払出数に基づく前記ベース比率導出処理に応じた前記ベース比率の表示は行わ」ないという構成を備えているといえる。
また、先願発明は「ベースの演算及び表示を行わないときには、ベース表示器300に「−−−−」を表示」するものであり、「「−−−−」」が、「演算」された「ベース」を表すものでないことは明らかであるから、先願発明の「「−−−−」」は、本願補正発明の「特殊表示」に相当する。
そうすると、先願発明の「総発射球数が特定数に達するまでは、ベースを演算せず」、「ベースの演算及び表示を行わないときには、ベース表示器300に「−−−−」を表示」することは、本願補正発明の「前記最初の区間における前記ベース比率導出処理の結果を表さない特殊表示を前記ベース表示部に表示する」ことに相当する。
以上のことから、先願発明の「総発射球数が特定数に達するまでは、ベースを演算せず、ベース表示器300にベースを表示しないときには、ベースを演算せず、ベースの演算及び表示を行わないときには、ベース表示器300に「−−−−」を表示」する「遊技制御用マイコン81」は、本願補正発明の「主制御部」が有する「予め設定された最初の区間が終了するまでの前記アウト球数および前記払出数に基づく前記ベース比率導出処理に応じた前記ベース比率の表示は行わず、前記最初の区間における前記ベース比率導出処理の結果を表さない特殊表示を前記ベース表示部に表示する特殊表示処理を実行する」機能を備えているといえる。
よって、先願発明は、本願補正発明の特定事項D、D6を備える。

(d7) 先願発明において「ベースを演算して表示する」のは、「総発射球数が特定数に達」した後であるから、上記(d6)での検討を踏まえると、本願補正発明の「前記最初の区間の終了後」に相当する時期であることは明らかである。
そして、先願発明の「1時間でのベース(短時間出玉率)を演算して表示する」ことの「1時間でのベース(短時間出玉率)」は、本願補正発明の「予め定められた区間に対応した前記ベース比率」に相当する。
先願発明において「1時間でのベース(短時間出玉率)を」「表示する」のは「ベース表示器300」であるのは明らかであるから、先願発明の「1時間でのベース(短時間出玉率)を演算して表示する」ことは、本願補正発明の「予め定められた区間に対応した前記ベース比率を前記ベース表示部に表示し得ること」に相当する。
したがって、先願発明の「1時間でのベース(短時間出玉率)を演算して表示する」「遊技制御用マイコン81」は、本願補正発明の「主制御部」が有する「予め定められた区間に対応した前記ベース比率を前記ベース表示部に表示し得る」機能を備えているといえる。
よって、先願発明は、本願補正発明の特定事項D、D7を備える。

(e)先願発明の「パチンコ遊技機1」は、本願補正発明の「遊技機」に相当する。
よって、先願発明は、本願補正発明の特定事項Eを備える。

以上のことから、本願補正発明と先願発明は、
「A 遊技球が流下する遊技領域が形成された遊技盤と、
B 前記遊技領域に設けられ、遊技球が入球可能な入賞口と、
C 前記入賞口に遊技球が入球した場合に、該入賞口に対応する賞球を払い出す払出手段と、
D1 前記払出手段により払い出される賞球数を払出数として計数する払出数計数手段と、
D2 前記遊技領域に発射された遊技球の数、もしくは、該遊技領域から排出された遊技球の数である排出数をアウト球数として計数するアウト球数計数処理を実行するアウト球数計数手段と、
D3 予め定められた所定の遊技状態において、前記アウト球数に対する前記払出数の比率をベース比率として導出するベース比率導出処理を実行し、前記所定の遊技状態以外の遊技状態において、前記ベース比率導出処理を実行しないベース比率導出手段と、
D4 前記ベース比率をベース表示部に表示するベース比率表示処理を実行するベース比率表示手段と、
D を少なくとも有する主制御部と、
を備え、
D 前記主制御部は、
D5 メモリ領域として、遊技の進行を制御する処理に用いられる使用領域と、少なくとも前記ベース比率導出処理、および、前記ベース比率表示処理に用いられる使用外領域とを有し、
D6 予め設定された最初の区間が終了するまでの前記アウト球数および前記払出数に基づく前記ベース比率導出処理に応じた前記ベース比率の表示は行わず、前記最初の区間における前記ベース比率導出処理の結果を表さない特殊表示を前記ベース表示部に表示する特殊表示処理を実行するとともに、
D7 前記最初の区間の終了後は、予め定められた区間に対応した前記ベース比率を前記ベース表示部に表示し得る
E 遊技機。」である点で一致し、相違点はない。

よって、本願補正発明は、先願発明と同一である。

イ 請求人の主張について
請求人は令和4年5月16日提出の意見書の「4.特許法第29条の2について」において、次のとおり主張している。
「引用文献1では、通常遊技状態(通常確率状態且つ非時短状態)、時短状態(高確率確率、状態且つ時短状態、又は通常確率状態且つ時短状態)、大当たり遊技状態のそれぞれのベース値の導出を行うことが開示されています(引用文献1の段落0289〜0300)。
すなわち、引用文献1では、遊技状態の種類にかかわらず、ベース値の導出を行っていることが開示されているだけであります。
ここで、本日付同時提出の手続補正書により、本願の新請求項1に係る発明は、予め定められた所定の遊技状態において、ベース比率導出処理を実行し、所定の遊技状態以外の遊技状態において、ベース比率導出処理を実行しない構成を限定しております。
しかしながら、引用文献1には、本願の新請求項1の上記構成について、一切記載も示唆もされておりません。」
しかしながら、上記「ア(d3)」において検討したとおり、先願発明(引用文献1)も「予め定められた所定の遊技状態において、ベース比率導出処理を実行し、所定の遊技状態以外の遊技状態において、ベース比率導出処理を実行しない構成」を備えるものであり、請求人の主張は認められない。

(4) 独立特許要件のむすび
以上のとおりであるから、本願補正発明は、先願発明と同一の発明であり、先願明細書等に記載された発明である。また、本願の発明者が先願1の発明者と同一ではなく、また本願の出願の時に、本願の出願人と先願1の出願人とが同一でもない。
よって、本願補正発明は、特許法第29条の2の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 小括
上記3より、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、令和4年1月13日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2〔理由〕1に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2 当審拒絶理由
当審拒絶理由の概要は、次のとおりのものである。

1.(拡大先願)この出願の請求項1に係る発明は、その出願の日前の特 許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた 下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図 面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願 前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の 時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特 許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。


●理由1(拡大先願)について
・請求項1
・引用文献等 1(先願)
<引用文献等一覧>
1.特願2017−12745号(特開2018−23722号)

3 先願明細書等の記載、先願発明
令和4年3月16日付け拒絶理由通知書における拒絶の理由で引用された先願1は、上記第2〔理由〕3(2)にて先願1として示したものであり、その記載内容及び先願発明は、上記第2〔理由〕3(2)にて記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、上記第2〔理由〕3で検討した本願補正発明のうち、特定事項D3の「予め定められた所定の遊技状態において」ベース比率導出処理を実行「し、前記所定の遊技状態以外の遊技状態において、前記ベース比率導出処理を実行しない」との特定を削除し、上位概念化するものである。
そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、一部の特定事項を下位概念化した本願補正発明が先願発明と同一であるから、本願発明も先願発明と同一である。

第4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-06-22 
結審通知日 2022-06-28 
審決日 2022-07-12 
出願番号 P2017-116084
審決分類 P 1 8・ 161- WZ (A63F)
P 1 8・ 575- WZ (A63F)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 小林 俊久
特許庁審判官 三田村 陽平
蔵野 いづみ
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人青海特許事務所  

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