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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09G
管理番号 1387925
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-05-21 
確定日 2022-08-24 
事件の表示 特願2019−175403「表示装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 4月16日出願公開、特開2020− 60765〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、令和元年9月26日(パリ条約による優先権主張2018年10月8日、韓国)の特許出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和 2年 9月 1日付け:拒絶理由通知書
同年12月 7日 :意見書、手続補正書の提出
令和 3年 1月14日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同年 1月26日 :原査定の謄本の送達)
同年 5月21日 :審判請求書、手続補正書の提出
同年 9月22日 :上申書の提出


第2 令和3年5月21日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和3年5月21日にされた手続補正を却下する。

[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の内容
令和3年5月21日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲について補正するものであり、次の(1)に示した本件補正前の特許請求の範囲の請求項1を、次の(2)に示した本件補正後の特許請求の範囲の請求項1のとおり補正することを含むものである。下線部は、補正箇所を示す。

(1) 本件補正前
「 【請求項1】
データラインとスキャンラインが交差され、複数の水平ラインのそれぞれに複数のピクセルが配置される表示パネルと
前記データラインにデータ電圧を供給するためのデータ駆動回路と
前記データ電圧を前記ピクセルに印加するためのスキャン信号と発光するピクセルを消灯するためのリセット信号とを前記スキャンラインを介して前記ピクセルに供給するためのゲート駆動回路と、
前記データ駆動回路とゲート駆動回路とを制御して、前記表示パネルの第1領域の第1ピクセルを同時に発光させ、同時に消灯させ、前記第1領域を除外した第2領域の第2ピクセルを順次発光させて順次消灯させるようにするタイミングコントローラと、
前記第1ピクセルと電源ラインとの間に配置された電源制御トランジスタと、を含み、
前記タイミングコントローラは、前記第1ピクセルにデータをアドレッシングする間には前記電源制御トランジスタをオフし、前記第1ピクセルへのデータのアドレッシング完了時に前記電源制御トランジスタをオンするよう構成された、表示装置。」

(2) 本件補正後
「 【請求項1】
データラインとスキャンラインが交差され、複数の水平ラインのそれぞれに前記データライン及び前記スキャンラインにより発光制御される発光素子を含む複数のピクセルが配置される表示パネルと
前記データラインにデータ電圧を供給するためのデータ駆動回路と
前記データ電圧を前記ピクセルに印加するためのスキャン信号と発光するピクセルを消灯するためのリセット信号とを前記スキャンラインを介して前記ピクセルに供給するためのゲート駆動回路と、
前記データ駆動回路とゲート駆動回路とを制御して、前記表示パネルの第1領域の第1ピクセルを同時に発光させ、同時に消灯させ、前記第1領域を除外した第2領域の第2ピクセルを順次発光させて順次消灯させるようにするタイミングコントローラと、
前記第1ピクセルと電源ラインとの間に配置された電源制御トランジスタと、を含み、
前記タイミングコントローラは、前記第1ピクセルにデータをアドレッシングする間には前記電源制御トランジスタをオフし、前記第1ピクセルへのデータのアドレッシング完了時に前記電源制御トランジスタをオンするよう構成され、
前記第1領域が、前記データラインが進行する第1方向に関して、前記表示パネルの中央に配置され、前記第2領域が前記第1方向に関して前記第1領域の上と下に第3及び第4領域に分割され、前記タイミングコントローラは、ピンポンアドレッシング方式で前記第3領域での第1スキャン動作と前記第4領域での第2スキャン動作を1水平期間を周期で交互進行するようにすることを特徴とする、表示装置。」

2 本件補正の適否についての当審の判断
(1) 本件補正の目的
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項について、次のア〜ウの点の限定をするものである。

ア 複数のピクセルが「前記データライン及び前記スキャンラインにより発光制御される発光素子を含む」点
イ 表示パネルにおける「前記第1領域が、前記データラインが進行する第1方向に関して、前記表示パネルの中央に配置され、前記第2領域が前記第1方向に関して前記第1領域の上と下に第3及び第4領域に分割」されるものである点。
ウ タイミングコントローラが「ピンポンアドレッシング方式で前記第3領域での第1スキャン動作と前記第4領域での第2スキャン動作を1水平期間を周期で交互進行するようにする」点

そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。
したがって、本件補正のうち、請求項1についての補正は、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下検討する。

(2) 独立特許要件について
ア 本件補正発明
本件補正発明は、前記1(2)の本件補正後の請求項1に記載した事項により特定されるとおりのものである。

イ 引用文献等
(ア) 引用発明
a 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された特開2012−118492号公報には、次の記載がある。なお、下線は、当審において付した。

「【0018】
図2は、本発明の実施例による有機電界発光表示装置を示す図である。
【0019】
図2に示すように、本発明の実施例による有機電界発光表示装置は、複数のブロック132、134、136に分割される画素部130と、画素部130にマトリクス状に配置される画素140と、画素140に接続される走査線S1〜Snを駆動するための走査駆動部110と、画素140に接続される発光制御線E1〜Enを駆動するための発光駆動部162、164、166と、画素140に接続されるデータ線D1〜Dmを駆動するためのデータ駆動部120と、駆動部110、120、162、164、166を制御するためのタイミング制御部150とを備える。
【0020】
画素140は、走査線S1〜Sn、データ線D1〜Dm、及び発光制御線E1〜Enの交差部に形成される。このような画素140は、走査線(S1〜Snのいずれか1つ)に走査信号が供給されたときに選択され、データ線(D1〜Dmのいずれか1つ)からデータ信号を受ける。そして、画素140は、発光制御線(E1〜Enのいずれか1つ)に発光制御信号が供給されたとき、データ信号に対応する輝度で発光する。
【0021】
画素部130は、マトリクス状に配置された画素140を含む。このような画素部130は、複数のブロック132、134、136に分割される。ここで、ブロック132、134、136の各々は、2つ以上の走査線を含む。図2では、説明の便宜上、画素部130が3つのブロック132、134、136に分割されたものと示しているが、本発明はこれに限定されない。実際に、画素部130は、2つ以上のブロックに分割可能である。
【0022】
走査駆動部110は、フレーム期間ごとに走査線S1〜Snに走査信号を順次に供給する。
【0023】
データ駆動部120は、走査線S1〜Snに供給される走査信号に同期するように、データ線D1〜Dmにデータ信号を供給する。ここで、データ駆動部120は、i(iは自然数)フレームiF期間に走査線S1〜Snに供給される走査信号に対応して左側のデータ信号を供給し、i+1フレームi+1F期間に走査線S1〜Snに供給される走査信号に対応して右側のデータ信号を供給する。
【0024】
第1発光駆動部162は、第1ブロック132に形成された発光制御線E1、E2、・・・に発光制御信号を供給する。
【0025】
第2発光駆動部164は、第2ブロック134に形成された発光制御線En/3+1、En/3+2、・・・に発光制御信号を供給する。
【0026】
第3発光駆動部166は、第3ブロック136に形成された発光制御線E2n/3+1、E2n/3+2、・・・に発光制御信号を供給する。
【0027】
ここで、各々のブロック132、134、136に含まれた画素140は、発光制御線(E1〜Enのいずれか1つ)に発光制御信号が供給されたときに発光し、発光制御信号が供給されていないときにターンオフされる。このため、発光制御信号は、走査信号と同じ極性(例えば、ロー電圧)の電圧に設定される。
【0028】
一方、本願発明において、発光駆動部162、164、166は、各々のブロック132、134、136ごとに形成される。したがって、画素部130が4つのブロックに分割されると、各々のブロックに対応するように、4つの発光駆動部が設置される。発光駆動部162、164、166の詳細な動作過程は後述する。
【0029】
タイミング制御部150は、駆動部110、120、162、164、166を制御する。」

「【0045】
図7は、本発明の第4実施例によるフレーム期間を示す図である。
【0046】
図7に示すように、走査駆動部110は、フレーム期間iF、i+1Fごとに走査線S1〜Snに走査信号を順次に供給(Scan)する。そして、データ駆動部120は、走査信号に同期するように、データ線D1〜Dmにデータ信号を供給する。
【0047】
一方、本願発明の第4実施例において、第2ブロックに含まれた発光制御線の数は、第1ブロック及び第3ブロックに含まれた発光制御線の数より多く設定される。これに関する詳細な説明は後述する。
【0048】
発光駆動部162、164、166は、自身と接続した発光制御線に発光制御信号を順次に供給する。ここで、第1発光駆動部162及び第3発光駆動部166は、発光制御信号を順次に供給する。そして、第2発光駆動部164は、第2ブロックに含まれたすべての発光制御線に発光制御信号を同時に供給する。
【0049】
詳細に説明すると、第3発光駆動部166は、第3ブロックに含まれた1番目の走査線に走査信号が供給された後、第3ブロックに含まれた1番目の発光制御線に発光制御信号を供給する。以後、第3発光駆動部166は、第3ブロックに含まれた2番目または最後の発光制御線に順次に発光制御信号を供給しながら、画素140を発光状態に設定する。
【0050】
第2発光駆動部164は、第3ブロックの1番目の発光制御線に供給される発光制御信号に同期するように、第2ブロックに含まれた発光制御線に発光制御信号を同時に供給する。
【0051】
第1発光駆動部162は、第1ブロックに含まれた発光制御線に発光制御信号を順次に供給する。ここで、第1発光駆動部162は、第1ブロックに含まれた最後の発光制御線に供給される発光制御信号が、第2ブロックに含まれた発光制御線に供給される発光制御信号に同期するように供給する。ここで、第1ブロックに含まれた最後の発光制御線に供給される発光制御信号は、同じ水平ラインに位置する走査線に走査信号が供給される前まで供給される。
【0052】
一方、発光制御線に供給される発光制御信号の幅は、位置とは無関係に同一に設定されるため、画素の発光時間は、図7に示すように、フレーム期間の一部期間に設定される。そして、フレーム間には、第3期間T3に非発光状態に設定される。ここで、第3期間T3は、第2ブロックに含まれた発光制御線が多いほど広く設定される。
【0053】
図8は、本発明の実施例による画素を示す図である。
【0054】
図8に示すように、本発明の実施例による画素140は、有機発光ダイオードOLEDと、有機発光ダイオードOLEDに供給される電流量を制御するための画素回路142と、画素回路142と有機発光ダイオードOLEDとの間に接続される制御トランジスタCMとを備える。
【0055】
有機発光ダイオードOLEDのアノード電極は制御トランジスタCMに接続され、カソード電極は第2電源ELVSSに接続される。このような有機発光ダイオードOLEDは、画素回路142から供給される電流量に対応して所定輝度の光を生成する。
【0056】
画素回路142は、有機発光ダイオードOLEDに供給される電流量を制御する。このような画素回路142は、現在公知の多様な形態の回路で構成可能である。例えば、画素回路142は、第1トランジスタM1と、第2トランジスタM2と、ストレージキャパシタCstとを備える。
【0057】
第1トランジスタM1の第1電極はデータ線Dmに接続され、第2電極は第2トランジスタM2のゲート電極に接続される。そして、第1トランジスタM1のゲート電極は走査線Snに接続される。このような第1トランジスタM1は、走査線Snに走査信号が供給されたときにターンオンされ、データ線Dmと第2トランジスタM2のゲート電極とを電気的に接続させる。
【0058】
第2トランジスタM2の第1電極は第1電源ELVDDに接続され、第2電極は制御トランジスタCMの第1電極に接続される。そして、第2トランジスタM2のゲート電極は第1トランジスタM1の第2電極に接続される。このような第2トランジスタM2は、自身のゲート電極に接続された電圧に対応する電流を有機発光ダイオードOLEDに供給する。
【0059】
ストレージキャパシタCstは、第2トランジスタM2のゲート電極と第1電源ELVDDとの間に接続される。このようなストレージキャパシタCstは、データ信号に対応する電圧を充電する。
【0060】
制御トランジスタCMの第1電極は画素回路142に接続され、第2電極は有機発光ダイオードOLEDのアノード電極に接続される。そして、制御トランジスタCMのゲート電極は発光制御線Enに接続される。このような制御トランジスタCMは、発光制御線Enに発光制御信号が供給されたときにターンオンされ、発光制御信号が供給されていないときにターンオフされる。」














引用発明の認定
前記aで摘記した記載をまとめると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
<引用発明>
「 複数のブロック132、134、136に分割される画素部130と、画素部130にマトリクス状に配置される画素140と、画素140に接続される走査線S1〜Snを駆動するための走査駆動部110と、画素140に接続されるデータ線D1〜Dmを駆動するためのデータ駆動部120と、画素140に接続される発光制御線E1〜Enを駆動するための発光駆動部162、164、166と、駆動部110、120、162、164、166を制御するためのタイミング制御部150を備える有機電界発光表示装置であって、(【0019】)
画素140は、走査線S1〜Sn、データ線D1〜Dm、及び発光制御線E1〜Enの交差部に形成され、走査線(S1〜Snのいずれか1つ)に走査信号が供給されたときに選択され、データ線(D1〜Dmのいずれか1つ)からデータ信号を受け、発光制御線(E1〜Enのいずれか1つ)に発光制御信号が供給されたとき、データ信号に対応する輝度で発光するものであって、(【0020】)
画素140は、有機発光ダイオードOLEDと、有機発光ダイオードOLEDに供給される電流量を制御するための画素回路142と、画素回路142と有機発光ダイオードOLEDの間に接続される制御トランジスタCMを備え、(【0054】)
有機発光ダイオードOLEDは、画素回路142から供給される電流量に対応して所定輝度の光を生成し、(【0055】)
画素回路142は、第1トランジスタM1と、第2トランジスタM2と、ストレージキャパシタCstを備え、(【0056】)
第1トランジスタM1は、走査線Snに走査信号が供給されたときにターンオンされ、データ線Dmと第2トランジスタM2のゲート電極とを電気的に接続させ、(【0057】)
第2トランジスタM2は、自身のゲート電極に接続された電圧に対応する電流を有機発光ダイオードOLEDに供給し、(【0058】)
ストレージキャパシタCstは、第2トランジスタM2のゲート電極と第1電源ELVDDとの間に接続され、データ信号に対応する電圧を充電し、(【0059】)
制御トランジスタCMは、発光制御線Enに発光制御信号が供給されたときにターンオンされ、発光制御信号が供給されていないときにターンオフされ、(【0060】)
走査駆動部110は、フレーム期間ごとに走査線S1〜Snに走査信号を順次に供給し、(【0022】)
データ駆動部120は、走査線S1〜Snに供給される走査信号に同期するように、データ線D1〜Dmにデータ信号を供給し、(【0023】)
第1発光駆動部162は、第1ブロック132に形成された発光制御線E1、E2、・・・に発光制御信号を供給し、第2発光駆動部164は、第2ブロック134に形成された発光制御線En/3+1、En/3+2、・・・に発光制御信号を供給し、第3発光駆動部166は、第3ブロック136に形成された発光制御線E2n/3+1、E2n/3+2、・・・に発光制御信号を供給し、(【0024】〜【0026】)
各々のブロック132、134、136に含まれた画素140は、発光制御線(E1〜Enのいずれか1つ)に発光制御信号が供給されたときに発光し、発光制御信号が供給されていないときにターンオフされ、(【0027】)
第1発光駆動部162及び第3発光駆動部166は、発光制御信号を順次に供給し、第2発光駆動部164は、第2ブロック134に含まれたすべての発光制御線に発光制御信号を同時に供給し、(【0048】)
第3発光駆動部166は、第3ブロック136に含まれた1番目の走査線に走査信号が供給された後、第3ブロック136に含まれた1番目の発光制御線に発光制御信号を供給し、以後、第3発光駆動部166は、第3ブロック136に含まれた2番目または最後の発光制御線に順次に発光制御信号を供給しながら、画素140を発光状態に設定し、(【0049】)
第2発光駆動部164は、第3ブロック136の1番目の発光制御線に供給される発光制御信号に同期するように、第2ブロック134に含まれた発光制御線に発光制御信号を同時に供給し、(【0050】)
第1発光駆動部162は、第1ブロックに含まれた発光制御線に発光制御信号を順次に供給し、ここで、第1発光駆動部162は、第1ブロック132に含まれた最後の発光制御線に供給される発光制御信号が、第2ブロック134に含まれた発光制御線に供給される発光制御信号に同期するように供給し、ここで、第1ブロック132に含まれた最後の発光制御線に供給される発光制御信号は、同じ水平ラインに位置する走査線に走査信号が供給される前まで供給される、(【0051】)
有機電界発光表示装置。(【0019】)」

(イ) 周知技術1
a 引用文献5記載事項
当審において新たに引用する特開2003−186437号公報(以下「引用文献5」という。)には、次の記載がある。なお、下線は、当審において付した。

「【0018】
【発明の実施の形態】以下の実施の形態では、表示装置としてアクティブマトリックス型有機ELディスプレイ、光学素子として有機発光ダイオードを想定する。実施の形態では、前述の残像現象を低減する新しい回路を提案する。このために、光学素子のアノードから接地電位まで並列にスイッチング素子を含むバイパスを設け、また駆動用トランジスタのゲート電極と接地電位の間にもスイッチング素子を設ける。これらスイッチング素子を直前の画素ラインの走査信号を利用し、同時にオンオフすることで駆動用トランジスタに設定された輝度データを初期化するとともに光学素子に流れる電流を遮断し、また光学素子に蓄積された電荷を放電し光学素子を消灯する。
【0019】図1は、実施の形態に係る表示装置の、ある画素列の第n行の画素の回路を示す。図2は特に同一列の第n、n+1、n+2行の三画素を示したものであり一部符号を省略している。この一画素は、光学素子である有機発光ダイオードOLEDと、データ書込用トランジスタTr1と、バイパストランジスタTr3と、初期化トランジスタTr4と、有機発光ダイオードOLEDの駆動素子として機能する駆動用トランジスタTr2と、保持容量SCとを備える。
【0020】データ書込用トランジスタTr1はスイッチング素子として機能し輝度データを書き込むための走査信号が活性化された際にオンとなり、駆動用トランジスタTr2に輝度データを導く。バイパストランジスタTr3もスイッチング素子として機能し有機発光ダイオードOLEDと並列に接続され、有機発光ダイオードOLEDに蓄積された電荷を放電する。初期化トランジスタTr4もスイッチング素子として機能し駆動用トランジスタTr2に設定されている輝度データを初期化して有機発光ダイオードOLEDに供給する電流を遮断する。
【0021】電源供給線Vddは、有機発光ダイオードOLEDを発光させるための電流を供給する。データ線DLは、駆動用トランジスタTr2に設定すべき輝度データの信号を流す。第n−1走査線SLn−1から第n+2走査線SLn+2は、それぞれ第n−1から第n+2行の画素が備える有機発光ダイオードOLEDを発光させるタイミングで活性化させる走査信号を各画素に流す。データ書込用トランジスタTr1、駆動用トランジスタTr2、バイパストランジスタTr3、初期化トランジスタTr4は全てnチャネルトランジスタである。
【0022】データ書込用トランジスタTr1のゲート電極は第n走査線SLnに接続され、バイパストランジスタTr3、初期化トランジスタTr4のゲート電極は第n−1行の画素(図示せず)の第n−1走査線SLn−1に接続される。データ書込用トランジスタTr1のドレイン電極はデータ線DLに接続される。データ書込用トランジスタTr1のソース電極と、初期化トランジスタTr4のドレイン電極と、保持容量SCの一方の電極は駆動用トランジスタTr2のゲート電極に接続される。駆動用トランジスタTr2のドレイン電極は電源供給線Vddに接続される。駆動用トランジスタTr2のソース電極と、有機発光ダイオードOLEDのアノードと、保持容量SCのもう一方の電極は、バイパストランジスタTr3のドレイン電極に接続される。バイパストランジスタTr3、初期化トランジスタTr4のソース電極と有機発光ダイオードOLEDのカソードはそれぞれ接地電位に接続される。したがって、駆動用トランジスタTr2、有機発光ダイオードOLEDはこの順で電源供給線Vddと接地電位の間に直列に接続される。
【0023】この回路による動作をさらに図3のタイミングチャートを含めて説明する。輝度データ書込期間になり第n行の画素に輝度データを書き込むために、第n走査線SLnがハイになるとデータ書込用トランジスタTr1がオンとなり、駆動用トランジスタTr2のゲート電極と保持容量SCに輝度データに対応した電位が設定される。
【0024】続いて、有機発光ダイオードOLEDの発光期間になると第n走査線SLnがローとなるので、データ書込用トランジスタTr1がオフとなる。このときバイパストランジスタTr3、初期化トランジスタTr4もオフであるので、駆動用トランジスタTr2および保持容量SCに設定された輝度データに応じた電流が電源供給線Vddから有機発光ダイオードOLEDに流れる。
【0025】次に、第n行の画素に新たな輝度データを書き込むに先立ち、第n−1行の画素に輝度データを書き込むために第n−1走査線SLn−1がハイになると、第n行の画素のバイパストランジスタTr3、初期化トランジスタTr4がオンになる。初期化トランジスタTr4のオンにより駆動用トランジスタTr2のゲート電極の電荷が接地電位に引き抜かれ駆動用トランジスタTr2はオフの状態になり、この画素への電流供給が遮断される。同時にバイパストランジスタTr3のオンにより有機発光ダイオードOLEDのアノードの電荷も接地電位に引き抜かれる。したがって、駆動用トランジスタTr2に設定されていた輝度データが初期化され、また有機発光ダイオードOLEDは消灯する。この期間を有機発光ダイオーOLEDの消灯期間と呼ぶ。つまり、この消灯期間に、有機発光ダイオードOLEDを消灯するためのダミーデータが一時的に駆動用トランジスタTr2に設定される。
【0026】したがって、画素の1フレームは、輝度データ書込期間、発光期間、消灯期間の3期間からなる。よって、第n行の画素の輝度データ書込期間は、第n+1行の画素の消灯期間に対応する。」







b 周知技術1の認定
前記aで摘記した記載事項に例示されるように、次の事項は、周知技術(以下「周知技術1」という。)であると認められる。

[周知技術1]
「 画素の輝度データの初期化及び消灯するための信号を、走査線を介して画素に供給すること。」

(ウ) 周知技術2
a 引用文献6の記載事項
当審において新たに引用する特開2009−251445号公報(以下「引用文献6」という。)には、次の記載がある。なお、下線は、当審において付した。

「【0064】
より具体的に、画素回路5R、(5G、5B)においては、ソースフォロワ回路構成の駆動トランジスタTr3により有機EL素子8が電流駆動される。画素回路5R、(5G、5B)においては、この駆動トランジスタTr3のゲート、ソース間に設けられた保持容量Csのゲート側端の電圧が階調電圧Vdataに応じた電圧Vsigに設定される。これにより画像表示装置21では、画像データD1に応じた発光輝度により有機EL素子8を発光させて所望の画像を表示する。」

「【実施例6】
【0108】
図17は、図1との対比により本発明の実施例6の画像表示装置を示す図である。また図18は、図2の対比によりこの画像表示装置に適用される画素回路75R、75G、75Bの動作の説明に供するタイムチャートである。この実施例の画像表示装置71は、上述した画素回路5R、5G、5Bに代えて、この図17に示す画素回路75R、75G、75Bが適用される。また画像表示装置71は、この画素回路75R、75G、75Bの構成に対応して走査線駆動回路4に代えて走査線駆動回路74が適用される。この実施例の画像表示装置71は、この画素回路75R、75G、75Bに関する構成が異なる点を除いて、上述の各実施例の画像表示装置と同一に構成される。従ってこの図17及び図18においては、実施例1の画像表示装置31について上述した信号線駆動回路23を使用した場合を示すものの、信号線駆動回路は、上述の各実施例の画像表示装置に使用した各種信号線駆動回路を広く適用することができる。
【0109】
この画像表示装置71において、画素回路75R、(75G、75B)は、駆動トランジスタTr3のドレイン及び電源VDD1の間に電源制御用のトランジスタTr2が設けられる。画素回路75R、(75G、75B)は、このトランジスタTr2のオンオフ制御により駆動トランジスタTr3の電源が制御される。
【0110】
また画素回路75R、(75G、75B)は、さらに駆動トランジスタTr3のソースに、この駆動トランジスタTr3のソース電圧Vsを所定の固定電圧Viniに設定するトランジスタTr4が設けられる。画素回路75R、(75G、75B)は、保持容量Csの端子間電圧を駆動トランジスタTr3のしきい値電圧Vthに設定する際に、このトランジスタTr4のオンオフ制御により、この保持容量Csの端子間電圧が駆動トランジスタTr3のしきい値電圧Vth以上に設定される。
【0111】
すなわち画素回路75R、(75G、75B)は、発光期間が時点t0で終了すると(図18(I))、トランジスタTr2がオフ状態に設定される(図18(B))。これにより画素回路75R、(75G、75B)は、保持容量Csの蓄積電荷が徐々に有機EL素子8を介して放電する。その結果、画素回路75R、(75G、75B)は、駆動トランジスタTr3のソース電圧Vsが徐々に低下する。また有機EL素子8の端子間電圧が有機EL素子8のしきい値電圧Vtholedとなると、有機EL素子8を介した放電が停止してソース電圧Vsの低下が停止する(図18(H))。なお駆動トランジスタTr3のゲート電圧Vgは、このソース電圧Vsの低下に追従して低下することになる(図18(G))。これにより画素回路75R、(75G、75B)は、有機EL素子8の発光が停止する。
【0112】
続いて画素回路75R、(75G、75B)は、時点t1で書込信号WSが立ち上げられて書込トランジスタTr1がオン状態に設定される。これにより画素回路75R、(75G、75B)は、駆動トランジスタTr3のゲート電圧Vgが固定電圧Vofsに設定される。また画素回路75R、(75G、75B)は、続いて駆動信号DS2によりトランジスタTr4が一時的にオン状態に設定される。これにより画素回路75R、(75G、75B)は、駆動トランジスタTr3のソース電圧Vsが電圧Viniに設定される。これにより画素回路75R、(75G、75B)は、保持容量Csの端子間電圧Vgsが駆動トランジスタTr3のしきい値電圧Vth以上の電圧(Vofs−Vini)に設定される。
【0113】
画素回路75R、(75G、75B)は、続く時点t2で駆動信号DS1によりトランジスタTr2がオン状態に設定されて駆動トランジスタTr3への電源VDD1の供給が開始される。これにより画素回路75R、(75G、75B)は、保持容量Csの端子間電圧Vgsが駆動トランジスタTr3のしきい値電圧Vthに設定される。
【0114】
画素回路75R、(75G、75B)は、続く時点t3で駆動信号DS1によりトランジスタTr2がオフ状態に設定され、駆動トランジスタTr3への電源VDD1の供給が停止される。その後、画素回路75R、(75G、75B)は、固定電圧Vofsの信号線sigへの供給が停止されると共に、書込信号WSにより書込トランジスタTr1がオフ状態に設定される。
【0115】
画素回路75R、(75G、75B)は、続く時点t4で、スイッチ回路24がオン状態に設定されて信号線sigの電位がプリチャージ電圧Vpcgに設定される。画素回路75R、(75G、75B)は、このプリチャージ電圧Vpcgの設定が、上述の各実施例の信号線駆動回路の何れを適用するかによって、時分割で信号線を駆動する複数の画素回路で同時に実行され、又は順次時分割により実行される。
【0116】
画素回路75R、(75G、75B)は、その後、スイッチ回路24、9のオンオフ制御により、信号線sigの電位が階調設定用電圧Vsigに設定された後、時点t5で書込トランジスタTr1がオン状態に設定されて駆動トランジスタTr3のゲート電圧Vgが階調設定用電圧Vsigに設定される。また時点t6で駆動トランジスタTr3への電源VDD1の供給が開始される。
【0117】
この実施例のように、各画素回路に設けられた駆動トランジスタの電源及びソース電圧を個別のトランジスタにより制御する場合でも、上述の各実施例と同様の効果を得ることができる。」






b 周知技術2の認定
引用文献6に記載された駆動トランジスタTr3は、段落【0064】に記載されているように有機EL素子8を電流駆動するものであるところ、前記aに摘記した記載事項に例示されるように、次の事項は、周知技術(以下「周知技術2」という。)であると認められる。

[周知技術2]
「 有機EL素子8を電流駆動する駆動トランジスタのドレインと電源の間に電源制御用のトランジスタを設け、この電源制御用のトランジスタのオンオフ制御により有機EL素子8が電流駆動する駆動トランジスタの電源を制御すること。」

(エ) 引用文献7記載事項
a 引用文献7の記載事項
当審において新たに引用する特開2006−163385号公報(以下「引用文献7」という。)には、次の記載がある。なお、下線は、当審において付した。

「【0027】
図1は、本発明に係る移動通信端末機におけるディスプレイ部の駆動装置を示す図である。
【0028】
図1に示すように、本発明に係る移動通信端末機におけるディスプレイ部の駆動装置は、入力されたイメージデータを保存するメモリ200と、前記保存されたイメージデータと同期信号が入力され、前記入力されたイメージデータと同期信号を出力する制御部100と、前記出力されたイメージデータをフレーム内の予め決定された数のライン単位で保存するGRAM300と、前記保存されたイメージデータと同期信号が入力され、前記入力されたイメージデータと同期信号に基づいてカラムアドレスに信号電圧を出力するカラムドライバ400と、前記出力された信号電圧のロウアドレスに前記入力された同期信号に基づいてスキャン電圧を出力する少なくとも1つ以上のロウドライバ500と、該ロウドライバ500から出力されたスキャン電圧とカラムドライバ400から出力された信号電圧とに基づいて前記入力されたイメージデータを表示するディスプレイパネル600とを含む。ここで、前記同期信号は、カラムドライバ400に入力される垂直同期信号とロウドライバ500に入力される水平同期信号である。
【0029】
このように構成された本発明に係る移動通信端末機におけるディスプレイ部の駆動方法を図2を参照して説明する。
【0030】
図2は、本発明に係る移動通信端末機におけるディスプレイ部の駆動方法を示すフローチャートである。
【0031】
図2に示すように、本発明に係る移動通信端末機におけるディスプレイ部の駆動方法は、フレーム内の予め決定された数のライン単位でイメージデータをGRAMに保存する段階(S500)と、前記保存されたイメージデータと垂直同期信号をカラムドライバに提供する段階(S510)と、前記提供された垂直同期信号に対応する水平同期信号を少なくとも1つ以上のロウドライバに提供する段階(S520)と、前記提供された垂直同期信号と水平同期信号に基づいて前記ディスプレイパネルに前記イメージデータを出力する段階(S530)とを含む。ここで、前記ロウドライバは、ディスプレイパネルの中央ラインに該当するイメージデータを先に処理してから上方向に移動する第1カラムドライバと、ディスプレイパネルの中央ラインに該当するイメージデータを先に処理してから下方向に移動する第2カラムドライバである。
【0032】
以下、このような本発明に係る移動通信端末機におけるディスプレイ部の駆動方法を詳細に説明する。
【0033】
まず、制御部100は、前記移動通信端末機の各機能を制御及び監視する各種運用情報を出力し、SMSメッセージ及びMMSメッセージなどのメッセージ、イメージデータをGRAM300に出力すると共に、垂直同期信号と水平同期信号を出力する。
【0034】
GRAM300は、制御部100から1フレーム内の予め決定された個数のライン単位で提供されたイメージデータを受信して保存し(S500)、前記保存されたイメージデータをカラムドライバ400に提供する。このようにイメージデータを保存するGRAM300の容量を、176×240画素の解像度を有して1つの画素が18ビットであるディスプレイパネル600を仮定して説明する。
【0035】
GRAM300は、1フレーム単位で提供されたイメージデータを保存するために、176×240×18ビット、すなわち、760,320ビット以上の容量でなければならないが、1フレーム内の1ライン単位で提供されたイメージデータを保存するためには、176×18ビット、すなわち、3,168ビット以上の容量であれば良く、1フレーム内の2ライン単位で提供されたイメージデータを保存するためには、176×2×18ビット、すなわち、6,336ビット以上の容量であれば良いため、イメージデータを一時保存するGRAM300の容量を減少させることができる。
【0036】
カラムドライバ400は、前記保存されたイメージデータと垂直同期信号が提供される(S510)。すなわち、カラムドライバ400は、GRAM300から受信したフレーム単位のイメージデータをカラムアドレスの順に前記入力された垂直同期信号によってディスプレイパネル600の垂直方向に出力する。ここで、カラムドライバ400は、ディスプレイパネル600のカラム電極610を駆動し、該カラム電極610を介して実際にディスプレイパネル600の各画素にイメージデータ、すなわち、信号電圧を印加する役割をする。
【0037】
ロウドライバ500は、前記提供された垂直同期信号に対応する水平同期信号が提供される(S520)。すなわち、ロウドライバ500は、カラムドライバ400によりディスプレイパネル600の垂直方向に出力されるフレーム単位のイメージデータをロウアドレスの予め決定された順に、前記入力された水平同期信号に基づいてディスプレイパネル600の水平方向に分散させる。ここで、ロウドライバ500は、ロウ電極620を駆動し、該ロウ電極620を順次選択するスキャン信号を発生する役割をする。
【0038】
ここで、ロウドライバ500は、ロウアドレスを2等分してディスプレイパネル600の中央ラインに該当するイメージデータを先に処理してから上方向に移動する第1ロウドライバ510と、ディスプレイパネル600の中央ラインに該当するイメージデータを先に処理してから下方向に移動する第2ロウドライバ520とから構成される。
【0039】
以下、このように本発明に係る移動通信端末機のディスプレイ部にイメージデータを交互に上/下に表示する方向と順序を図3及び図4を参照して説明する。
【0040】
図3は、本発明に係る移動通信端末機のディスプレイ部にイメージデータを表示する方向と順序を説明するための図である。
【0041】
図3に示すように、本発明に係る移動通信端末機のディスプレイ部は、ロウアドレスを2等分して、上段ラインを第1ロウドライバ510により、下段ラインを第2ロウドライバ520により1つのロウアドレスごとに交互に上/下又は下/上の方向に駆動する。すなわち、第1ロウドライバ510は、ディスプレイパネルの中央ライン、すなわち、ロウアドレス120に該当するイメージデータを処理し、第2ロウドライバ520は、ディスプレイパネルの中央ライン、すなわち、ロウアドレス121に該当するイメージデータを処理し、その後、第1ロウドライバ510は上方向に移動してロウアドレス001まで120のラインを、第2ロウドライバ520は下方向に移動してロウアドレス240まで120のラインを交互に駆動できることが分かる。」

「【0047】
図4A、図4Bに示すように、本発明に係る移動通信端末機のディスプレイ部は、ロウアドレスを2等分して上段ラインを第1ロウドライバ510により、下段ラインを第2ロウドライバ520により1つのロウアドレスごとに交互に上/下又は下/上の方向に駆動するため、ロウアドレス001からロウアドレス240までスキャン電圧をディスプレイパネルの1つのロウ電極ごとに交互に上/下又は下/上の方向に出力することが分かる。」











b 引用文献7記載事項の認定
前記aに摘記した記載をまとめると、引用文献7には、次の事項が記載されていると認められる(以下「引用文献7記載事項」という。)。

[引用文献7記載事項]
「 イメージデータと同期信号が入力され、前記入力されたイメージデータと同期信号に基づいてカラムアドレスに信号電圧を出力するカラムドライバ400と、前記信号電圧のロウアドレスに入力された同期信号に基づいてスキャン電圧を出力するロウドライバ500と、該ロウドライバ500から出力されたスキャン電圧とカラムドライバ400から出力された信号電圧に基づいてイメージデータを表示するディスプレイパネル600において、
ロウドライバ500は、ロウ電極620を駆動し、該ロウ電極620を順次選択するスキャン信号を発生し、
ロウドライバ500は、ロウアドレスを2等分してディスプレイパネル600の中央ラインに該当するイメージデータを先に処理してから上方向に移動する第1ロウドライバ510と、ディスプレイパネル600の中央ラインに該当するイメージデータを先に処理してから下方向に移動する第2ロウドライバ520とから構成され、
ロウアドレスを2等分したときの上段ラインを第1ロウドライバ510により、また、下段ラインを第2ロウドライバ520により、1つのロウアドレスごとに交互に上/下又は下/上の方向に駆動するために、スキャン電圧をディスプレイパネルの1つのロウ電極ごとに交互に上/下又は下/上の方向に出力すること。」

ウ 対比
(ア) 対比分析
以下、補正後の請求項1における、本件補正発明を特定する事項の記載の順番に沿って、本件補正発明と引用発明を対比する。
a 引用発明は、「有機電界発光表示装置」の発明であるから、本件補正発明と引用発明は、「表示装置」の発明である点で一致する。

b(a) 引用発明の「データ線D1〜Dm」と「走査線S1〜Sn」は、それぞれ本件補正発明の「データライン」と「スキャンライン」に相当する。
また、引用発明の「走査線S1〜Sn」と「データ線D1〜Dm」が、「画素140」が形成される「交差部」で交差していることは、本件補正発明の「データラインとスキャンラインが交差され」ることに相当する。
(b) 引用発明の「有機発光ダイオードOLED」は、本件補正発明の「発光素子」に相当する。
引用発明の「画素140」が備える「画素回路142」は、「有機発光ダイオードOLEDに供給される電流量を制御」し、「有機発光ダイオードOLEDは、画素回路142から供給される電流量に対応して所定輝度の光を生成」するのであるから、「画素回路142」により「有機発光ダイオードOLED」は、発光制御されているといえる。また、「画素回路142」は、「第1トランジスタM1」と、「第2トランジスタM2」と、「ストレージキャパシタCst」を含み、「第1トランジスタM1」は、「走査線Snに走査信号が供給されたときにターンオンされ、データ線Dmと第2トランジスタM2のゲート電極とを電気的に接続」させ、「第2トランジスタM2」は、「自身のゲート電極に接続された電圧に対応する電流を有機発光ダイオードOLEDに供給」し、「ストレージキャパシタCst」は、「データ信号に対応する電圧を充電し」ているのであるから、前記「有機発光ダイオードOLED」は、前記「画素回路142」を介して、「走査線」と「データ線」により発光制御されているといえる。
よって、引用発明の「有機発光ダイオードOLED」及び「画素回路142」を備える「画素140」は、本件補正発明の「前記データライン及び前記スキャンラインにより発光制御される発光素子を含むピクセル」に相当する。
(c) 引用発明の「画素部130」には、「画素140」がマトリクス状、すなわち、面状に配置されることから、当該「画素部130」は、映像が表示されるパネルであることは明らかである。よって、引用発明の「画素部130」は、本件補正発明の「表示パネル」に相当する。
(d) 明細書の段落【0032】における「縦方向に解像度が4,800、すなわち水平ラインの数が4,800であるとき」との記載、及び、【0142】における「表示パネルの垂直解像度である水平ライン数(N)」との記載と、【0045】における「同じ水平ラインに配置されるピクセル(PXL)は、データライン14の内、いずれか1つ及びスキャンライン15の内、いずれか1つに接続され、ピクセルラインを形成する。」との記載からみて、本件補正発明における水平ラインとは、画素部130の水平方向、すなわち、「スキャンライン(走査線)」方向で、「ピクセル(画素140)」が配置されるラインであるところ、引用発明の「画素部130」においては、「画素140」が「マトリクス状」に配置されているから、複数の「画素140」を含む水平ラインがデータ線の延びる垂直方向に複数並んでいると認められる。
よって、引用発明の「画素部130」において、「マトリクス状」に「画素140」が配置されることは、本件補正発明の「表示パネル」において、「複数の水平ラインのそれぞれに複数のピクセルが配置される」ことに相当する。
(e) 上記(a)〜(d)の対比結果をまとめると、本件補正発明と引用発明は、「データラインとスキャンラインが交差され、複数の水平ラインのそれぞれに前記データライン及び前記スキャンラインにより発光制御される発光素子を含む複数のピクセルが配置される表示パネル」を備える点で一致する。

c 引用発明において、「データ駆動部120」が「データ線D1〜Dmにデータ信号を供給」すると、「データ線D1〜Dm」に接続される「画素140」の「ストレージキャパシタCst」に「データ信号に対応する電圧を充電」されるから、引用発明の「データ駆動部120」は、「データ線D1〜Dmにデータ信号を供給」することで「データ線D1〜Dm」にデータ電圧を供給している。よって、引用発明の「データ駆動部120」は、本件補正発明における「前記データラインにデータ電圧を供給するためのデータ駆動回路」に相当する。
したがって、本件補正発明と引用発明は、「前記データラインにデータ電圧を供給するためのデータ駆動回路」を備える点で一致する。

d(a) 引用発明において、「画素140」は、「走査線(S1〜Snのいずれか1つ)に走査信号が供給されたときに選択され、データ線(D1〜Dmのいずれか1つ)からデータ信号を受ける」ところ、前記cでの検討結果を踏まえると、引用発明の「データ線(D1〜Dmのいずれか1つ)からデータ信号」を受けると、その結果データ電圧が画素140に印加されることになるのであるから、引用発明において、「走査信号」の供給により画素140にデータ電圧が供給されていると認められる。よって、引用発明の「走査信号」は、本件補正発明の「前記データ電圧を前記ピクセルに印加するためのスキャン信号」に相当する。
(b) 引用発明の「走査信号」を「走査線」に供給する「走査駆動部110」は、本件補正発明の「スキャン信号」を「前記スキャンライン」を介して「前記ピクセルに供給するためのゲート駆動回路」に相当する。
(c) したがって、本件補正発明と引用発明は、「前記データ電圧を前記ピクセルに印加するためのスキャン信号」を「前記スキャンラインを介して前記ピクセルに供給するためのゲート駆動回路」を備える点で共通する。

e(a) 引用発明の「タイミング制御部150」が「走査駆動部110」と「データ駆動部120」を制御することは、本件補正発明の「タイミングコントローラ」が「データ駆動回路」と「ゲート駆動回路」を制御することに相当する。
(b) 引用発明の「第2ブロック134」は、本件補正発明の「第1領域」に相当する。また、引用発明の「第1ブロック132」と「第3ブロック136」は、「画素部130」における「第2ブロック134」を除外した部分に対応するから、この「画素部130」の「第1ブロック132」と「第3ブロック136」を合わせたブロックは、本件補正発明の「第2領域」に相当する。そして、引用発明の「第1ブロック132」、及び、「第3ブロック136」は、それぞれ本件補正発明の「第2領域」における「第3領域」、及び、「第2領域」における「第4領域」に相当する。
また、引用発明の「第2ブロック134」に含まれる「画素140」、「第1ブロック132」及び「第3ブロック136」に含まれる「画素140」は、それぞれ本件補正発明の「第1ピクセル」、「第2ピクセル」に相当する。
引用発明の「画素140」は、発光制御線に発光制御信号が供給されたときに発光し、発光制御信号が供給されていないときにターンオフ、すなわち、消灯されるところ、引用発明においては、「第2ブロックに含まれたすべての発光制御線に発光制御信号を同時に供給し」ているから、「第2ブロック134」に含まれる「画素140」は、同時に発光し、同時に消灯するものである。
そして、引用発明の「第1ブロック132」及び「第3ブロック136」においては、その発光制御線に対して順次発光制御信号が供給されているから、順次発光及び順次消灯させているといえる。そして、引用発明において発光制御信号をそれぞれのブロックに供給する「第1発光駆動部162」、「第2発光駆動部164」及び「第3発光駆動部166」は、「タイミング制御部150」により制御されるものであるから、「第1ブロック132」、「第2ブロック134」及び「第3ブロック136」の発光及び消灯の制御は、「タイミング制御部150」により行われているものである。
よって、引用発明において、「タイミング制御部150」が「第2発光駆動部164」を介して「第2ブロック134」に含まれる画素を同時に発光及び同時に消灯させ、「第1発光駆動部162」及び「第3発光駆動部166」を介して「第1ブロック132」及び「第3ブロック136」を順次発光及び順次消灯するように制御することは、本件補正発明において、「タイミングコントローラ」が「前記表示パネルの第1領域の第1ピクセルを同時に発光させ、同時に消灯させ、前記第1領域を除外した第2領域の第2ピクセルを順次発光させて順次消灯させる」することに相当する。
(c)よって、本件補正発明と引用発明は、「表示装置」が「前記データ駆動回路とゲート駆動回路とを制御して、前記表示パネルの第1領域の第1ピクセルを同時に発光させ、同時に消灯させ、前記第1領域を除外した第2領域の第2ピクセルを順次発光させて順次消灯させるようにするタイミングコントローラ」を備える点で一致する。

f 引用発明の「データ線」が延びる方向は、本件補正発明の「データラインが進行する第1方向」に相当する。引用発明の「第2ブロック132」は、「画素部130」において「データ線」が延びる方向の中央に位置するから、本件補正発明の「前記データラインが進行する第1方向に関して、前記表示パネルの中央に配置」される「第1領域」に相当する。
また、引用発明の「第1ブロック132」と「第3ブロック136」は、前記「第2ブロック134」の「データ線」が延びる方向において上と下に分割されている。よって、引用発明の「第1ブロック132」と「第3ブロック136」は、本件補正発明の第1領域の上と下にある「第3領域」と「第4領域」に相当する。
よって、本件補正発明と引用発明は、「画素部130」の「前記第1領域が、前記データラインが進行する第1方向に関して、前記表示パネルの中央に配置され、前記第2領域が前記第1方向に関して前記第1領域の上と下に第3及び第4領域に分割され」る点で一致する。

(イ) 一致点及び相違点
前記(ア)における対比分析の内容をまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の一致点において一致し、次の相違点1〜3において相違する。
[一致点]
「 データラインとスキャンラインが交差され、複数の水平ラインのそれぞれに前記データライン及び前記スキャンラインにより発光制御される発光素子を含む複数のピクセルが配置される表示パネルと
前記データラインにデータ電圧を供給するためのデータ駆動回路と
前記データ電圧を前記ピクセルに印加するためのスキャン信号を前記スキャンラインを介して前記ピクセルに供給するためのゲート駆動回路と、
前記データ駆動回路とゲート駆動回路とを制御して、前記表示パネルの第1領域の第1ピクセルを同時に発光させ、同時に消灯させ、前記第1領域を除外した第2領域の第2ピクセルを順次発光させて順次消灯させるようにするタイミングコントローラと、
前記第1領域が、前記データラインが進行する第1方向に関して、前記表示パネルの中央に配置され、前記第2領域が前記第1方向に関して前記第1領域の上と下に第3及び第4領域に分割される、
表示装置。」

[相違点1]
本件補正発明の「ゲート駆動回路」は、「発光するピクセルを消灯するためのリセット信号」を、「前記スキャンラインを介して前記ピクセルに供給」しているのに対して、引用発明の「走査駆動部110」は、このような「リセット信号」に対応する信号を走査線を介して画素に供給しているかどうか不明である点。

[相違点2]
本件補正発明は、「前記第1ピクセルと電源ラインとの間に配置された電源制御トランジスタ」を含み、「前記タイミングコントローラは、前記第1ピクセルにデータをアドレッシングする間には前記電源制御トランジスタをオフし、前記第1ピクセルへのデータのアドレッシング完了時に前記電源制御トランジスタをオンするよう構成さ」れているのに対して、引用発明は、「前記第1ピクセルと電源ラインとの間に配置された電源制御トランジスタ」を含まない点。

[相違点3]
本件補正発明は、「前記タイミングコントローラは、ピンポンアドレッシング方式で前記第3領域での第1スキャン動作と前記第4領域での第2スキャン動作を1水平期間を周期で交互進行する」のに対して、引用発明においては、第1ブロック132と第3ブロック136を含む画素部130の走査を、走査線S1〜Snに走査信号を順次に供給して行っている点。

エ 判断
(ア) 相違点の判断
以下、相違点について判断する。
a 相違点1について
引用発明において、第2トランジスタM2のゲート電極が保持するデータ信号に対応する電圧や、ストレージキャパシタCstに充電された電圧を、次フレームのデータ信号を受け取る前に、初期化して新たなデータ信号に対応する電圧とするために準備をする必要があることが、当業者にとっての当然の配慮事項であり、また、表示装置の画素の消灯は、当然に行われることであるところ、前記イ(イ)bにおいて周知技術1として示したとおり、「画素の輝度データの初期化及び消灯するための信号を、走査線を介して画素に供給すること」は、本願の優先日前において、よく知られた周知の事項である。
ここで、この周知技術1として示した「走査線を介して画素に供給」される「画素の輝度データの初期化及び消灯するための信号」は、本件補正発明の「前記スキャンラインを介して前記ピクセルに供給」される「発光するピクセルを消灯するためのリセット信号」に相当するものである。
そうすると、引用発明において、周知技術1を適用し、前記相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

b 相違点2について
引用発明の第2トランジスタM2は、自身のゲート電極に接続された電圧に対応する電流を有機発光ダイオードOLEDに供給するものであるから、前記イ(ウ)bに示した周知技術2における、有機EL素子8を電流駆動する駆動トランジスタに対応する。また、引用発明の第1電源ELVDDは、前記周知技術2における電源に対応する。そして、引用発明の制御トランジスタCMは、有機発光ダイオードOLEDのアノード電極に接続されているものの、前記第1電源ELVDDから有機発光ダイオードOLEDへの電源供給の有無を切り替えているから、前記周知技術2における、電源制御用のトランジスタと共通の機能を有するものである。
以上を踏まえると、引用発明において、第1電源ELVDDに第2トランジスタM2を接続し、当該第2トランジスタM2に制御トランジスタCMを接続することに代えて、当該周知技術2に示されるように、電源(第1電源ELVDD)に制御トランジスタCMを接続し、この制御トランジスタCMに第2トランジスタM2を接続するように、第1電源ELVDDと2つのトランジスタの接続関係を変更することは、当業者が適宜行う設計変更にすぎない。
また、引用発明における、画素140に対して走査信号及びデータ電圧の供給をすることは、本件補正発明において、「第1ピクセルにデータをアドレッシング」することに相当するところ、引用発明のタイミング制御部150により制御される第2発光駆動部164においては、走査信号及びデータ電圧が供給されているときには制御トランジスタCMに発光制御信号の供給をせず、走査信号及びデータ電圧の供給が終了した後に発光制御信号を制御トランジスタCMに対して同時に供給してターンオンしているのであるから、引用発明においては、タイミング制御部150が制御トランジスタCMの制御を行うように構成されているといえる。
ここで、制御トランジスタCMは、発光制御信号により制御されるものであるから、引用発明において、周知技術2を適用して、電源(第1電源ELVDD)に制御トランジスタCMを接続し、この制御トランジスタCMに第2トランジスタM2を接続するように変更する際に、当該制御トランジスタCMの制御信号として、接続関係変更前に制御トランジスタCMに制御信号として供給していた発光制御信号を用いるようにすることは、当業者が当然になし得たことである。
そうすると、このようなタイミング制御部150が行う制御トランジスタCMの制御は、本件補正発明の「タイミングコントローラ」が行う「前記第1ピクセルにデータをアドレッシングする間には前記電源制御トランジスタをオフし、前記第1ピクセルへのデータのアドレッシング完了時に前記電源制御トランジスタをオンする」ことに相当することになる。
よって、引用発明と周知技術2に基づいて当該相違点2に係る構成をなすことは、当業者が容易に想到し得たことである。

c 相違点3について
本願の明細書の【0043】の「表示パネル10には、列方向に配列される複数のデータライン14と行(Row)方向に配列される複数のスキャンライン(またはゲートライン)15が交差し、交差領域ごとにピクセル(PXL)がマトリックス形態に配置されてピクセルアレイを形成する。」との記載からみて、本件補正発明の「スキャンライン」は、「ピクセル」が「行(Row)方向に配列される」方向のラインであるから、引用文献7記載事項において、行(Row)方向に配列される「ロウ電極620」は、本件補正発明の「スキャンライン」及び引用発明の「走査線S1〜Sn」に対応するものであることは明らかである。また、引用文献7記載事項の「ロウ電極620」を駆動し、「該ロウ電極620を順次選択するスキャン信号を発生」する「ロウドライバ500」が、本件補正発明の「ゲート駆動回路」及び引用発明の「走査駆動部110」に対応するものであることは明らかである。
そして、タイミング制御部150でスキャン動作を順次行う引用発明において、スキャン動作の方向と順序は、当業者が適宜決め得る設計事項であるから、引用発明において、第1ブロック132と第3ブロック136を含む画素部130の走査において、引用文献7記載事項を採用し、画素部130の中央部分にある第2ブロック134を先に処理した後、第2ブロック134上方の第1ブロック132において上方向に順次スキャン電圧を出力する処理と、第2ブロック134下方の第3ブロック136において、下方向に順次スキャン電圧を出力する処理を、スキャンラインごとに交互に上/下又は下/上の方向で行うように構成することにより、当該相違点3に係る構成を得ることは、当業者が容易に想到し得たことである。

相違点の判断のむすび
よって、本件補正発明は、引用発明と周知技術1、周知技術2及び引用文献7記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、本件補正発明の奏する効果は、引用発明、周知技術1、周知技術2及び引用文献7記載事項から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものは認められない。

(イ) 請求人の主張について
a 請求人の主張の内容
(a) 令和3年5月21日に提出した審判請求書における主張
請求人は、令和3年5月21日に提出した審判請求書において、以下の主張(以下「主張1」という。)をしている。

[主張1]
請求項1は、次の本件補正前の請求項4の発明特定事項を含み、当該発明特定事項は、拒絶査定で引用された引用文献には、記載も示唆もない。
当該構成によれば、「フォーカスエリア(焦点領域)と周辺エリア(周辺領域)でスキャン及び発光方式を異なるように適用してVR表示装置を駆動することにより、容易に発光時間を可変することができ、また、発光時間を増やすことにより、輝度を向上させ、VRめまい症を減らすことができ、これに応じてVR機器を使用するユーザの没入度と満足度を向上させることができるようになる」との効果を奏する。
よって、本件補正発明は、容易想到なものではない。

[本件補正前の請求項4]
「 前記第1領域が、前記データラインが進行する第1方向に関して、前記表示パネルの中央に配置され、前記第2領域が前記第1方向に関して前記第1領域の上と下に第3及び第4領域に分割され、前記タイミングコントローラは、ピンポンアドレッシング方式で前記第3領域での第1スキャン動作と前記第4領域での第2スキャン動作を1水平期間を周期で交互進行するようにすることを特徴とする、請求項1に記載の表示装置。」

(b) 令和3年9月22日に提出した上申書における主張
請求人は、令和3年9月22日に提出した上申書において、以下の主張(以下「主張2」という。)をしている。

[主張2]
本件補正後の請求項1において、次の構成A〜Cを付加する補正を行うことで、前置報告書で引用された特開2006−163385号公報、特開2001−060076号公報に対する差異は明確となり、特許法29条2項の拒絶理由は解消されるものとなる。

(構成A) 「前記表示パネルへの高電位電圧を供給する電源生成部」
(構成B) 「タイミングコントローラ」が「前記表示パネルの複数の水平ラインを含む第1領域の第1ピクセルを、グローバルシャッターオフ信号に基づいて、同時に発光させ、同時に消灯」させるものであり、かつ、「前記グローバルシャッターオフ信号に同期して前記第1電源制御トランジスタをオフにし、前記第1領域の前記第1ピクセルへの前記高電位電圧の供給を遮断し、同時に発光を停止させる」こと。
(構成C) 「前記第1領域の前記第1ピクセルは、第1電源制御トランジスタを介して前記高電位電圧が供給されるように制御され、前記第2領域の前記第2ピクセルは、第2電源制御トランジスタを介して前記高電位電圧が供給されるように制御され」ること。

b 請求人の主張についての判断
(a) 主張1について
本件補正後の請求項1に係る発明は、前記エにおいて示したとおり、引用発明と周知技術1、周知技術2及び引用文献7記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、本件補正後の請求項1には、表示装置がVR表示装置であることは特定されていないため、「フォーカスエリア(焦点領域)と周辺エリア(周辺領域)でスキャン及び発光方式を異なるように適用してVR表示装置を駆動することにより」奏される作用効果は、本件補正後の請求項1の記載事項により特定される発明の奏する効果であるとは認められない。
よって、請求人の主張1は、本件補正後の請求項1の記載に基づいた主張ではなく採用できない。

(b) 主張2について
前記a(b)の構成A〜Cの構成について検討する。
引用発明の「第1電源ELVDD」は、前記構成Aに相当する「電源生成部」であると認められる。
また、引用発明においては、「第2発光駆動部164は、第2ブロック134に含まれたすべての発光制御線に発光制御信号を同時に供給」して、当該第2ブロック134に含まれる画素140を同時に発光・消灯しており、この第2ブロック134に供給される発光制御信号は、前記構成Bにおける「グローバルシャッターオフ信号」に相当する。そして、第1電源制御トランジスタのオフ制御による高電位電圧の供給遮断及び発光停止については、前記エ(ア)bにおいて、電源制御用のトランジスタについて検討したとおりである。
そして、前記構成Cの第1及び第2電源トランジスタに係る構成は、前記ウ(イ)の[相違点2]の構成に相当し、こちらも前記エ(ア)bにおいて検討したとおりである。
よって、上申書の補正案により付加される構成A〜Cを加味して検討したとしても、特許法29条2項の拒絶理由は解消されないため、請求人の主張2を採用することはできない。

(c) 請求人の主張についての判断のむすび
よって、請求人の主張1及び2は、採用することができない。

(ウ) 独立特許要件判断の小括
以上検討のとおり、本件補正発明は、引用発明、周知技術1、周知技術2及び引用文献7記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。また、本件補正発明の奏する効果には、引用発明と、周知技術1、周知技術2及び引用文献7記載事項から予測される効果を超える、格別顕著な効果の存在を認めることはできない。
よって、本件補正発明は、特許法29条2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることはできない。

オ 補正の適否のむすび
以上検討のとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反する。
したがって、本件補正は、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本件発明について
1 本件発明
本件補正は、上記第2において説示したとおり却下されたので、本願の請求項1〜17に係る発明は、令和2年12月7日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1〜17に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められる。そのうち、請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、前記1(1)の本件補正前の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。

2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定における拒絶の理由のうち、本件発明についての拒絶の理由は、次のとおりである。

理由1
本件発明は、本願の優先日前に発行された、次の引用文献1、3、4に記載された事項に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2016−58165号公報
引用文献3:再公表特許第2013/073466号(周知技術を示す文献)
引用文献4:再公表特許第2012/032567号(周知技術を示す文献)

3 引用発明
原査定の拒絶理由で引用された引用文献1の記載事項及び引用発明の認定は、前記第2の2(2)イ(ア)に示したとおりである。

4 判断
(1) 本件発明と本件補正発明の関係
本件発明は、本件補正発明のうち、次のア〜ウの点の限定を省いたものである。

ア 複数のピクセルが「前記データライン及び前記スキャンラインにより発光制御される発光素子を含む」点。
イ 表示パネルにおける「前記第1領域が、前記データラインが進行する第1方向に関して、前記表示パネルの中央に配置され、前記第2領域が前記第1方向に関して前記第1領域の上と下に第3及び第4領域に分割」されるものである点。
ウ タイミングコントローラが「ピンポンアドレッシング方式で前記第3領域での第1スキャン動作と前記第4領域での第2スキャン動作を1水平期間を周期で交互進行するようにする」点。

前記ア〜ウの限定の削除により、前記第2の(2)ウ(イ)の[相違点3]に係る構成が省かれることになるから、本件発明と引用発明は、前記第2の(2)ウ(イ)の[相違点1]及び[相違点2]の点で相違する。

(2) 本件発明の想到容易性の判断
本件発明と引用発明の相違点について検討すると、前記[相違点1]の構成については、第2の(2)エ(ア)aで検討したとおりである。
また、前記[相違点2]については、前記第2の(2)エ(ア)bで検討したとおりである。なお、拒絶査定で引用された引用文献3及び引用文献4は、当審において引用される引用文献6と同様に、周知技術2として示す事項を例示するものである。
よって、本件発明は、引用発明、周知技術1及び周知技術2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


第4 むすび
以上検討のとおり、本件発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。

審判長 居島 一仁
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
 
審理終結日 2022-03-25 
結審通知日 2022-03-29 
審決日 2022-04-11 
出願番号 P2019-175403
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G09G)
P 1 8・ 121- Z (G09G)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 居島 一仁
特許庁審判官 清水 靖記
濱野 隆
発明の名称 表示装置  
代理人 園田・小林特許業務法人  
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