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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1388005
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-07-15 
確定日 2022-08-30 
事件の表示 特願2016−217850「拠点推定装置」拒絶査定不服審判事件〔平成30年5月17日出願公開、特開2018−77608、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の概要
本願は、平成28年11月8日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和2年 9月25日:拒絶理由通知(起案日)
令和2年11月17日:意見書の提出
令和3年 4月13日:拒絶査定(原査定)(起案日)
令和3年 7月15日:審判請求書、手続補正書の提出
令和4年 6月 2日:拒絶理由通知(起案日)
令和4年 7月11日:意見書、手続補正書の提出

第2 原査定の理由
原査定(令和3年4月13日付け拒絶査定)の理由の概要は以下のとおりである。

1 請求項1〜2に係る発明は、以下の引用文献Aに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。
2 請求項1〜4に係る発明は、以下の引用文献Aに基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
A.特開2015−207291号公報

第3 当審拒絶理由の概要
当審より令和4年6月2日付けで通知した拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)の概要は以下のとおりである。

請求項1〜3に係る発明は、以下の引用文献1〜3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2015−207291号公報(原査定の引用文献A)
2.国際公開第2011/102541号(当審で新たに引用)
3.特開2015−56018号公報(当審で新たに引用)

なお、請求項4については、拒絶理由を指摘していない。

第4 本願発明
本願請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)は、令和4年7月11日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

(本願発明1)
時刻毎のユーザの位置を表す移動履歴データを基に、ユーザの滞留する場所である複数の拠点の位置を推定する拠点位置推定部と、
前記移動履歴データ及び前記複数の拠点の位置を基に、前記ユーザが前記複数の拠点のそれぞれに位置する時期的傾向を示す値を集計し、前記複数の拠点を対象に当該集計した前記値の類似度を基に、前記複数の拠点をグループ分けする拠点分類部と、
前記グループ分けされた前記複数の拠点ごとに、前記移動履歴データあるいは前記集計した値を基に、前記拠点の種別を推定する拠点種別推定部と、
複数のユーザごとの前記移動履歴データと、前記複数のユーザごとに推定された前記複数の拠点の位置とを基に、前記複数のユーザごとの前記時期的傾向を示す値を集計し、前記複数のユーザごとに集計した前記値を基に、前記複数のユーザをグループ分けするユーザ分類部と、
前記グループ分けされた前記複数のユーザごとに、前記集計した値を基に前記複数の拠点の種別を推定するユーザ拠点種別推定部と、
を備える拠点推定装置。

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1の記載事項
当審拒絶理由で引用した引用文献1には、以下の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、セマンティックラベリング技術に係り、より詳細には、ユーザ位置の意味を決定するセマンティックラベリング技術に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、モバイル機器であるスマートフォンの大衆化とGPS(Global Positioning System)、セル識別番号(Cell ID)を利用した位置追跡のような位置追跡技術の発展につれて、モバイル機器を通じてユーザの物理的な位置を把握することができるようになった。このような位置追跡技術に基づいて、特定位置でユーザが必要とするようなサービスを推定して提供する位置基盤サービス又は位置情報サービス(LBS,Location−Based Intelligent Service)が提案されている。位置基盤サービスは、特定位置で、ユーザにカスタマイズド広告、カスタマイズドされた情報、カスタマイズドされた装置のコントロールなどの個人化されたサービスをインテリジェントに提供することができるという長所がある。特に、位置基盤サービスの個人化を果たすためには、特定位置に対する特定ユーザのセマンティックラベル又は意味ラベル(semantic label)があらかじめ定義される必要がある。ここで、セマンティックラベルとは、特定位置が、例えば、家、学校、職場、約束場所のようなユーザにとって有意義な場所(又はユーザにとって何らかの意味がある場所)であることを表わす情報である。例えば、任意の地理的座標の位置は、あるユーザにとって学校でありながら、他のユーザにとっては職場であるかもしれない。」
「【0051】
図2を参照すれば、セマンティックラベリング装置の一実施形態の構成を示すブロック図が示される。示された実施形態で、セマンティックラベリング装置20は、ユーザの位置を検出した位置データ21からユーザに対する特定位置の意味を表わすセマンティックラベルを含むラベルデータ29を算出する装置である。そのために、セマンティックラベリング装置20は、場所識別部22、グループ識別部24、ユーザインターフェース26、及びラベル決定部28などのコンポーネントを含みうる。
【0052】
場所識別部22は、位置データ21から場所を識別するコンポーネントである。位置データ21は、ユーザの位置と関連したデータを含む。位置データ21は、例えば、スマートフォン、スマートウォッチ、スマートメガネなどのモバイル機器内に内蔵されたセンサーによって感知されて生成されうる。位置データ21は、モバイル機器のセンサーによって一定の時間単位で感知された地理的な座標、例えば、GPS座標、セルIDなどを含みうる。場所識別部22は、位置データ21によって分かるユーザ位置(すなわち、地理的な座標)の経時的な変化を監視することができる。もし、ユーザの位置が一定の時間の間に一定の領域内に留まっていることが発見されると、その領域をユーザにとって意味の有る位置である場所(place)として識別することができる。
【0053】
例えば、ユーザの位置がセルIDで表示される時、ユーザの位置が特定セルIDで一定時間の間留まっていれば、場所識別部22は、この特定セルIDがカバーする領域をユーザにとって意味の有る場所として識別することができる。他の例を挙げれば、ユーザの位置がGPS座標で表示される時、一定の半径内の特定領域で一定時間の間に留まっていれば、この特定領域をユーザにとって意味の有る場所として識別することができる。このように識別された場所には、場所識別部22によって固有の識別番号(すなわち、場所ID)が割り当てられる。場所IDは、ユーザのセマンティックラベルと異なって、単純に識別用として使われる情報であれば十分なので、数字の組合わせのようなものでなされうる。
【0054】
識別された場所には、属性情報が関連するが、場所属性には、ユーザがその場所を訪問したことと関連した情報が含まれる。ユーザが場所を訪問することと関連して、ユーザがその場所に/から進入/進出した時間が分かる。このような進入及び進出時間は、ユーザの位置を検出する時の時間によって分かる。このような時間データによって、特定場所に対するユーザの進入時間と進出時間との時間の長さが分かる。この時間の長さは、訪問持続時間(duration)として保存することができる。また、互いに異なる時間帯の訪問の回数がカウントされうる。これにより、例えば、一日、一週間、または1ヶ月間に累積した訪問回数、訪問持続時間などが計算されうる。このような情報は、場所識別部22によって生成される場所属性23に含まれうる。
【0055】
グループ識別部24は、場所識別部22によって識別された場所を分類してクラスタリングするコンポーネントである。場所の分類は、場所の属性に基づくことができる。グループ識別部24は、それぞれの場所IDと関連している属性を互いに比較して、類似した属性を有した場所IDを1つのグループに分類することができる。如何なる属性を類似したものと判断するかに対する基準は、一般的な個人の行動パターンに基づくことができる。例えば、一般の人は、“夜に家で眠り、昼に学校や職場などで活動する”と言うパターンに従うという事実を利用する場合、ユーザが夜または昼の特定時間帯に留まる場所は、互いに類似した属性を有していると判断されうる。さらに、一般の人は、“毎日または毎週特定時間帯に運動などの趣味生活をする”というパターンに従うという事実を利用する場合、朝、夕方、昼食時間または週末の特定時間帯に相対的に訪問頻度数が低いが、規則的に訪問される場所は、類似した属性を有していると判断されうる。
【0056】
このような式で、グループ識別部24は、場所を1つ以上のグループにクラスタリングすることができる。それぞれのグループには、グループ識別部24によって各グループを固有に識別するためのグループIDが割り当てられる。グループIDもやはり、場所IDと同じく、ユーザのセマンティックラベルと異なって、単純に識別用として使われる情報であれば十分なので、数字の組合わせでなされうる。各グループにも、属性情報が関連する。グループの属性情報は、各グループのグループID及びグループメンバーシップ情報が含まれうる。グループメンバーシップ情報は、グループのメンバー場所の場所ID及び各場所IDと関連している場所プロファイル情報を含みうる。
【0057】
グループ識別部24は、クラスタリングされた各グループに対してユーザにセマンティックラベルを要請することができる。この要請は、ユーザインターフェース26を通じてユーザに提供され、ユーザは、ユーザインターフェース26を通じて所望のセマンティックラベルを入力することによって、各グループのセマンティックラベルを指定することができる。
【0058】−【0059】(略)
【0060】
ユーザが選択するか、書き込むことによって、指定したセマンティックラベルは、ユーザインターフェース26を通じてグループ識別部24に伝達されうる。グループ識別部24は、ユーザによって指定されたセマンティックラベルを当該グループのセマンティックラベルとして決定することができる。これにより、グループ識別部24は、各グループID、グループメンバーシップ情報を含み、ユーザが指定した場合、グループラベル情報をさらに含みうるグループ属性25を生成することができる。
【0061】
ラベル決定部28は、個別場所のセマンティックラベルを決定するコンポーネントである。ラベル決定部28は、グループ属性25を問い合わせて個別場所のセマンティックラベルを決定することができる。すなわち、グループ属性25で、ユーザが指定したセマンティックラベルをグループラベルで含むグループの場合、ラベル決定部28は、当該グループの現在メンバー場所だけではなく、未来にメンバーに属するようになる場所のいずれものセマンティックラベルであると決定することができる。ラベル決定部28は、それぞれセマンティックラベルが指定された個別場所と関連した情報を含むラベルデータ29を生成することができる。」

(2)引用発明
上記(1)の記載事項からみて、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。

(引用発明)
場所識別部22、グループ識別部24、ユーザインターフェース26、及びラベル決定部28などのコンポーネントを含むセマンティックラベリング装置20(【0051】)であって、
場所識別部22は、位置データ21から場所を識別するコンポーネントであって、位置データ21によって分かるユーザ位置の経時的な変化を監視することができ、ユーザの位置が一定の時間の間に一定の領域内に留まっていることが発見されると、その領域をユーザにとって意味の有る位置である場所として識別し(【0052】)、
場所識別部22は、さらに、識別された場所には、場所識別部22によって固有の識別番号(すなわち、場所ID)を割り当てる(【0053】)とともに、ユーザがその場所を訪問したことと関連した情報である場所属性23を生成し、ここで、ユーザがその場所に/から進入/進出した時間から得た訪問持続時間を保存し、互いに異なる時間帯の訪問の回数をカウントし、これにより、例えば、一日、一週間、または1ヶ月間に累積した訪問回数、訪問持続時間などを計算し、このような情報を場所属性23に含め(【0054】)、
グループ識別部24は、場所識別部22によって識別された場所を分類してクラスタリングするコンポーネントであって、場所の分類は、場所の属性に基づくものであり、それぞれの場所IDと関連している属性を互いに比較して、類似した属性を有した場所IDを1つのグループに分類する(【0055】)ものであって、場所を1つ以上のグループにクラスタリングし、それぞれのグループには、グループ識別部24によって各グループを固有に識別するためのグループIDを割り当て(【0056】)、
グループ識別部24は、さらに、クラスタリングされた各グループに対してユーザにセマンティックラベルを要請し、ユーザが各グループのセマンティックラベルを指定する(【0057】)と、グループ識別部24は、ユーザによって指定されたセマンティックラベルを当該グループのセマンティックラベルとして決定する(【0060】)、
セマンティックラベリング装置。

2 引用文献2について
当審拒絶理由で引用した引用文献2には、次の事項が記載されている。
「本発明の一つの目的は、ユーザの行動を特徴づける自宅位置と職場位置とを、照度、騒音といった環境情報やユーザの勤務時間帯に関する情報を用いることなく、位置情報履歴から抽出できる行動特徴抽出装置、行動特徴抽出システム、行動特徴抽出方法、及び行動特徴抽出プログラムを提供することにある。
[課題を解決するための手段]
本発明の一態様における行動特徴抽出装置は、ユーザの複数の滞留のそれぞれの滞留点、当該滞留点における滞留開始日時、及び当該滞留点における滞留終了日時を含む滞留点情報を記憶する行動類型記憶手段と、前記行動類型記憶手段の前記滞留点情報を基に、複数の前記滞留点のそれぞれについて滞留日数を算出し、当該複数の滞留点のうち、当該滞留日数が最も多い前記滞留点を自宅滞留点として抽出し、当該複数の滞留点のうち、当該滞留日数が2番目に多い前記滞留点を職場滞留点として抽出する行動特徴抽出手段とを備える。」(第2頁第29行から第3頁第10行)

3 引用文献3について
当審拒絶理由で引用した引用文献3には、類似度の算出について、以下の事項が記載されている。
「【0088】
[学習データ作成部133:類似ユーザ検索部]
学習データ作成部133(図2)は類似ユーザ検索部を有し、この類似ユーザ検索部は、滞在目的推定対象であるユーザの「滞在時間区間」の集合と、他のユーザの「滞在時間区間」の集合との間の重畳度合いに基づいて類似度を算出する。例えば、ユーザA及びユーザBの「滞在時間区間」の集合をそれぞれSA及びSBとすると、SAとSBとの間の重畳度合いF(SA,SB)を、次式
(1) F(SA,SB)=|SA∩SB|/|SA∪SB|
により算出し、算出されたF(SA,SB)をユーザAとユーザBとの間の類似度とする。」

第6 対比、判断
1 対比
本願発明1と引用発明を対比する。
(1)引用発明の「ユーザ位置の経時的な変化」が分かる「位置データ21」は、本願発明1の「時刻毎のユーザの位置を表す移動履歴データ」に相当する。
また、引用発明の「場所識別部22」は、「ユーザの位置が一定の時間の間に一定の領域内に留まっていることが発見されると、その領域をユーザにとって意味の有る位置である場所として識別」するものであるところ、当該「領域」は、本願発明1の「ユーザの滞留する場所」といえ、引用発明の「ユーザにとって意味のある位置である場所」は、本願発明1の「拠点」に他ならない。そうすると、引用発明で「その領域をユーザにとって意味の有る位置である場所として識別」することは、本願発明1の「ユーザの滞留する場所である」「拠点の位置を推定する」ことといえる。
さらに、引用発明において前記「領域」が複数あることは自明である。
以上より、引用発明の「位置データ21から場所を識別するコンポーネントであって、位置データ21によって分かるユーザ位置の経時的な変化を監視することができ、ユーザの位置が一定の時間の間に一定の領域内に留まっていることが発見されると、その領域をユーザにとって意味の有る位置である場所として識別」する「場所識別部22」は、本願発明1の「時刻毎のユーザの位置を表す移動履歴データを基に、ユーザの滞留する場所である複数の拠点の位置を推定する拠点位置推定部」に相当する。

(2)引用発明の「場所識別部22」の「ユーザがその場所を訪問したことと関連した情報である場所属性23を生成する」機能は、「ユーザがその場所に/から進入/進出した時間から得た訪問持続時間を保存し、互いに異なる時間帯の訪問の回数をカウントし、これにより、例えば、一日、一週間、または1ヶ月間に累積した訪問回数、訪問持続時間などを計算し、このような情報を場所属性23に含め」ることを含み、「場所属性23」に含まれる「互いに異なる時間帯の訪問の回数をカウントし」た情報や、「これにより、例えば、一日、一週間、または1ヶ月間に累積した訪問回数、訪問持続時間などを計算し」た情報は、本願発明1の「前記ユーザが前記複数の拠点のそれぞれに位置する時期定期傾向を示す値を集計し」た「値」に相当し、両者は「移動履歴データ(位置データ21)」及び「複数の拠点(場所)の位置」を基にしたものである点で共通する。
以上より、引用発明の「場所識別部22」の「ユーザがその場所を訪問したことと関連した情報である場所属性23を生成する」機能は、本願発明1の「拠点分類部」の「前記移動履歴データ及び前記複数の拠点の位置を基に、前記ユーザが前記複数の拠点のそれぞれに位置する時期的傾向を示す値を集計」する機能に相当する。

(3)引用発明の「場所の属性」は、上記(2)の「場所属性23」のことであって、上記(2)より、本願発明1の「集計した値」といえる。そうすると、引用発明の「グループ識別部24」の「それぞれの場所IDと関連している属性を互いに比較して、類似した属性を有した場所IDを1つのグループに分類するものであって、場所を1つ以上のグループにクラスタリング」する機能は、本願発明1の「拠点分類部」の「前記複数の拠点を対象に当該集計した前記値の類似度を基に、前記複数の拠点をグループ分けする」機能に相当する。

(4)引用発明の「セマンティックラベル」は、「セマンティックラベルとは、特定位置が、例えば、家、学校、職場、約束場所のようなユーザにとって有意義な場所(又はユーザにとって何らかの意味がある場所)であることを表わす情報である」(引用文献1の【0002】)から、本願発明1の「種別」に相当する。
また、引用発明の「グループ」は、上記(3)の「類似した属性を有した場所IDを1つのグループに分類」したものであることから、グループには複数の場所(拠点)が含まれ、ユーザが指定したグループのセマンティックラベル(種別)は、クラスタリングされたグループに含まれる複数の場所(拠点)ごとに指定されたものといえる。
以上より、引用発明の「グループ識別部24」の「クラスタリングされた各グループに対してユーザにセマンティックラベルを要請し、ユーザが各グループのセマンティックラベルを指定すると、グループ識別部24は、ユーザによって指定されたセマンティックラベルを当該グループのセマンティックラベルとして決定する」機能と、本願発明1の「拠点種別推定部」の「前記グループ分けされた前記複数の拠点ごとに、前記移動履歴データあるいは前記集計した値を基に、前記拠点の種別を推定する」機能を対比すると、両者は「前記グループ分けされた前記複数の拠点ごとに、」「前記拠点の種別を定める」機能を備える点で共通する。

(5)引用発明の「セマンティックラベリング装置」は、場所のセマンティックラベル決定する装置であるから、以下の相違点を除き、本願発明1の「拠点推定装置」に相当する。

上記(1)〜(5)より、本願発明1と引用発明とは、以下の点で一致し、また相違する。

<一致点>
時刻毎のユーザの位置を表す移動履歴データを基に、ユーザの滞留する場所である複数の拠点の位置を推定する拠点位置推定部と、
前記移動履歴データ及び前記複数の拠点の位置を基に、前記ユーザが前記複数の拠点のそれぞれに位置する時期的傾向を示す値を集計し、前記複数の拠点を対象に当該集計した前記値の類似度を基に、前記複数の拠点をグループ分けする拠点分類部と、
前記グループ分けされた前記複数の拠点ごとに、前記拠点の種別を定める拠点種別推定部と、
を備える拠点推定装置。

<相違点1>
グループ分けされた複数の拠点ごとの種別が、本願発明1は、「前記移動履歴データあるいは前記集計した値を基に」推定されるのに対し、引用発明は、セマンティックラベルをユーザが指定する点。

<相違点2>
本願発明1は、「複数のユーザごとの前記移動履歴データと、前記複数のユーザごとに推定された前記複数の拠点の位置とを基に、前記複数のユーザごとの前記時期的傾向を示す値を集計し、前記複数のユーザごとに集計した前記値を基に、前記複数のユーザをグループ分けするユーザ分類部」と、「前記グループ分けされた前記複数のユーザごとに、前記集計した値を基に前記複数の拠点の種別を推定するユーザ拠点種別推定部」を備えるのに対し、引用発明は、これらの「ユーザ分類部」及び「ユーザ拠点種別推定部」を備えていない点。

2 判断
(1)相違点1について
引用文献2には、上記第5の2の記載からみて、「ユーザの行動を特徴づける自宅位置と職場位置とを、位置情報履歴から抽出するために、ユーザの複数の滞留点について滞留日数を算出し、複数の滞留点のうち、滞留日数が最も多い滞留点を自宅滞留点とし、滞留日数が2番目に多い滞留点を職場滞留点とすること。」(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されているといえる。
ここで、引用発明は、互いに異なる時間帯の訪問の回数をカウントし、一日、一週間、または1ヶ月間に累積した訪問回数、訪問持続時間と、一般的な個人の行動パターンである、“夜に家で眠り、昼に学校や職場などで活動する”パターン、“毎日または毎週特定時間帯に運動などの趣味生活をする”パターンなどに基づいて(【0055】)グループにクラスタリングし、クラスタリングされたグループに対して、ユーザがセマンティックラベルを指定するものである。
そして、引用発明と引用文献2記載事項とは、ユーザの位置情報に基づいてユーザが場所(滞留点)に留まる意味を定めるものである点で共通し、ユーザが指定することを自動で推定するようにすることは一般的な課題であるから、引用発明の累積した訪問回数、訪問持続時間などと、一般的な個人の行動パターンである、“夜に家で眠り、昼に学校や職場などで活動する”パターン、“毎日または毎週特定時間帯に運動などの趣味生活をする”パターンなどに基づいて、クラスタリングしたグループに意味を定める際に、ユーザが意味付けすることに代えて、一般的な個人の行動パターンによる意味付けを行う引用文献2記載事項を採用し、セマンティックラベルを、グループごとに算出(集計)した滞留日数に基づいて、滞留日数が最も多いグループを自宅と推定し、滞留日数が2番目に多いグループを職場と推定し、すなわち、グループごとに種別ラベル決定部28は、推定したセマンティックラベルをグループの各場所のセマンティックラベルに推定すること、すなわち、位置データ21(移動履歴データ)を集計した値に基づいて、グループ分けされた複数の場所(拠点)ごとの種別を推定することで、相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

(2)相違点2について
引用文献2には上記引用文献2記載事項が記載され、引用文献3には、上記第5の3のとおり、類似度の算出に関する事項が記載されているものの、相違点2に係る「複数のユーザごとの前記移動履歴データと、前記複数のユーザごとに推定された前記複数の拠点の位置とを基に、前記複数のユーザごとの前記時期的傾向を示す値を集計し、前記複数のユーザごとに集計した前記値を基に、前記複数のユーザをグループ分けするユーザ分類部」と、「前記グループ分けされた前記複数のユーザごとに、前記集計した値を基に前記複数の拠点の種別を推定するユーザ拠点種別推定部」を備えることは記載されておらず、この点は、当業者にとって自明な事項であるともいえないから、相違点2に係る本願発明1の構成は、引用発明と、引用文献2及び引用文献3の記載事項から、当業者が容易に導出することはできない。
そして、本願発明1は、相違点2に係る構成を備えることで、「全体のユーザの時期的傾向を加味することにより、ユーザの有する2つの拠点の種別をより正確に推定することができる。」(本願明細書【0060】)という作用効果を奏するものである。

3 小括
以上のとおりであるから、本願発明1は、当業者であっても引用発明と引用文献2及び3の記載事項に基づいて、容易に発明をすることができたものではない。

第7 原査定の理由、当審拒絶理由についての判断
1 当審拒絶理由について
本願発明1は、当審拒絶理由を通知していない令和4年7月11日にされた手続補正前の請求項4の事項により、同請求項1を減縮したものであって、上記第6のとおり、当業者であっても引用発明と引用文献2及び3の記載事項に基づいて、容易に発明をすることができたものではない。

2 原査定の理由について
原査定の理由で引用した引用文献Aは、当審拒絶理由で引用した引用文献1と同じであり、その記載事項及び引用発明は上記第5の1に記載したとおりである。そして、本願発明1と引用発明とは、上記第6の1で述べた相違点1及び相違点2を有するから、本願発明1は、引用文献Aに記載された発明ではない。
また、本願発明1は、前記相違点2に係る構成を備えるから、上記第6のとおり、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
したがって、本願発明1は、原査定の理由によって拒絶することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、本願は、原査定の理由及び当審拒絶理由によって拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-08-17 
出願番号 P2016-217850
審決分類 P 1 8・ 113- WY (G06F)
P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 高瀬 勤
特許庁審判官 中野 浩昌
関口 明紀
発明の名称 拠点推定装置  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 深石 賢治  
代理人 沖山 隆  
代理人 黒木 義樹  

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