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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1388017
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-07-20 
確定日 2022-08-12 
事件の表示 特願2018−205645「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 5月 7日出願公開、特開2020− 69121〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成30年10月31日の出願であって、令和2年10月20日付けで拒絶の理由が通知され、同年12月9日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、令和3年4月14日付け(送達日:同年同月27日)で拒絶査定がなされ、それに対して、同年7月20日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正書が提出され、これに対し、当審において、令和4年3月16日付けで拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年5月18日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和4年5月18日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである(A等は、本願発明を分説するために当審で付与した)。

「【請求項1】
A 回転方向に沿って複数の図柄が表示された回胴を複数有する遊技機であって、
B 複数の前記回胴を回転駆動する回転駆動手段と、
C 前記回胴の停止を指示する回胴停止操作に基づいて前記回転駆動手段を制御して前記回胴を停止させる制御手段と、を備え、
D 前記制御手段は、
D1 1ゲームごとに繰り返されるメイン処理を実行するメイン処理手段と、
D2 一定時間ごとに前記メイン処理を中断して行われるタイマ割込み処理を実行するタイマ割込み処理手段と、を含み、
E 前記メイン処理手段は、
E1 前記回胴の原点位置を検出することを条件に前記回胴停止操作の受け付けを有効化する停止操作有効化手段と、
E2 前記回胴停止操作を検出することを条件に最大滑りコマ範囲内の停止図柄位置を決定する停止図柄位置決定手段、を有し、
F 前記停止操作有効化手段は、
F1 前記停止図柄位置決定手段が決定した前記停止図柄位置の到来を監視することなく、次の前記回胴停止操作の受け付けを有効化し、
E 前記メイン処理手段は、
E3 前記停止図柄位置決定手段が前記回胴停止操作の行われた前記回胴についての前記停止図柄位置を決定した後、次の前記回胴についての停止制御用データを、前記回胴の回転異常判定処理を経ず且つ待機処理を経ずに直ちに作成する停止データ作成手段をさらに有し、
G 前記タイマ割込み処理手段は、
G1 前記停止図柄位置が決定された前記回胴である対象回胴について前記停止図柄位置の到来を監視する停止図柄位置監視手段と、
G2 前記回胴の回転異常判定処理を行う回転異常判定手段と、を有する
H 遊技機。」

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は、以下のとおりのものである。

進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項1
・引用文献等 1−4

<引用文献等一覧>
1.特開2017−18492号公報
2.特開2012−65937号公報
3.特開2018−161497号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2011−87956号公報(周知技術を示す文献)

第4 各引用文献に記載された事項、引用発明
1 引用文献1
(1)引用文献1に記載された事項
当審拒絶理由に引用文献1として引用された本願の出願前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2017−18492号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は引用発明等の認定に関連する箇所を明示するために当審で付した。以下、同様。)。

ア「【0011】
<1.回胴遊技機の機構構成>
先ず、図1〜図4により実施の形態のスロットマシンの外観構成を説明する。
図1はスロットマシンの正面図、図2Aは平面図、図2Bは右側面図、図3は前面パネル2の背面図、図4は本体ケース1の正面図である。
【0012】
本実施の形態のスロットマシンは、図2からわかるように、矩形箱状の本体ケース1と、各種の遊技部材を装着した前面パネル2とが、図示しないヒンジ機構を介して連結され、前面パネル2が本体ケース1に対して開閉可能に構成されている。
【0013】
図4に示すように、本体ケース1の略中央には、3つの回転リール(回胴)4a,4b,4cを備える図柄回転ユニット3が配置されている。また、その下側に、メダル払出装置5が配置されている。
各回転リール4a,4b,4cには、後述する各種図柄、例えばBB(ビッグボーナス)やRB(レギュラーボーナス)用の図柄や、各種のフルーツ図柄、リプレイ図柄などが描かれている。
メダル払出装置5は、メダルを貯留するメダルタンク5aを有する。また払出ケース5b内に、図5で後述する払出モータ75、払出接続基板73、ホッパー基板74、メダル払出センサ76等が収納されている。
メダルタンク5aに貯留されたメダルは、払出モータ75の回転に基づいて、払出口5cから図面手前方向に向けて導出される。なお、限界量を越えて貯留されたメダルは、超過メダル導出部5dを通して、補助タンク6に落下するよう構成されている。
補助タンク6に対しては、該補助タンク6における貯留メダルが限界量に達したことを検出するためのオーバーフローセンサが設けられている。」

イ「【0021】
また、前面パネル2には、回転リール4a,4b,4cの回転を開始させるためのスタートレバー17と、回転中の回転リール4a,4b,4cを停止させるための停止ボタン18a,18b,18cが設けられている。
遊技者がスタートレバー17を操作すると、通常は、3つの回転リール4a,4b,4cが正方向に回転を開始する。但し、内部当選状態を予告するリール演出のために、回転リール4a,4b,4cの全部又は一部が、変則的に回転(いわゆる「演出回転」)した上で正方向の回転を開始する場合もある。
リール演出としては具体的内容が各種考えられ、例えば、
・極めてゆっくり正方向に回転(正回転)して静止するスロー演出
・正回転と逆回転を繰り返した後に、所定時間だけ逆回転して静止する逆回転演出
・第1の所定時間だけ正回転と逆回転を繰り返した後に静止する第1の揺動演出
・第2の所定時間だけ正回転と逆回転を繰り返した後に静止する第2の揺動演出
・第2の所定時間だけ正回転と逆回転を繰り返した後に静止し、さらに、極めてゆっくり正回転した後に静止するスロー揺動演出
・第2の時間だけ正回転と逆回転を繰り返した後に静止し、さらに、所定時間だけ逆回転した後に静止する揺動逆回転演出
・所定速度で正回転又は逆回転した後に所定の図柄に揃えて静止する演出
などが用意されている。そして、このようなリール演出時には、LCDユニット7におけるキャラクタ演出や、LEDランプを点滅させるランプ演出や、スピーカを駆動する音声演出の全部又は一部が適宜に選択されて実行される。」

ウ「【0033】
また、主制御基板40は、回胴中継基板53を経由して、回転リール4a,4b,4cを回転させる3つのステッピングモータ54(第1回胴ステッピングモータ54a、第2回胴ステッピングモータ54b、第3回胴ステッピングモータ54c)と接続されている。
さらに主制御基板40は、回胴中継基板53を経由して、回転リール4a,4b,4cの原点位置(後述する原点位置101)を検出するための3つのインデックスセンサ55(第1回胴インデックスセンサ55a、第2回胴インデックスセンサ55b、第3回胴インデックスセンサ55c)に接続されている。
主制御基板40は、ステッピングモータ54a,54b,54cを駆動又は停止させることによって、回転リール4a,4b,4cの回転動作と、目的位置での停止動作を実現している。また主制御基板40は、インデックスセンサ55a,55b,55cの検出信号に基づき、回転リール4a,4b,4cの原点位置を検知できる。」

エ「【0067】
図12は、回転リール4a,4b,4cに形成された図柄についての説明図である。
本例において、回転リール4a,4b,4cの表面には、回転方向に沿って21コマ分の図柄が配置されている。回転リール4a,4b,4cのそれぞれにおいて、図柄の種類は例えば10種類(赤7、白7、バー、キャラ、チェリー、すいか、ベル、リプレイ、はずれ1、はずれ2)とされ、それらが所定の順序で配列されている。図中では、回転リール4aに形成された21コマの図柄をそれぞれ図柄4a1,4a2,・・・,4a21と表している。同様に、回転リール4bに形成された21コマの図柄を図柄4b1,4b2,・・・,4b21、回転リール4cに形成された21コマの図柄を図柄4c1,4c2,・・・,4c21と表している。各図柄の符号の末尾に付した番号は、その図柄の番号を表している。」

オ「【0102】
<10.メイン処理>
[10-1.メイン処理]
図19は、メイン処理のフローチャートである。
メイン処理は、1ゲームごとに繰り返し実行される無限ループ状の処理である。なお、本例において、1ゲームの期間は、回転リール4を回転させて抽選結果に基づく停止態様で停止させるまでの期間となる。
【0103】
メイン処理において、CPU80aはステップS501で、遊技状態コマンドをセットする。遊技状態コマンドは、例えばRB状態やRT状態等、現在の遊技状態を演出制御基板42側に通知するためのコマンドである。」

カ「【0106】
ステップS507でCPU80aは、所定時間(例えば1.49ms)分の割込み待機処理を実行し、続くステップS508で設定確認処理を実行する。設定確認処理は、スロットマシンの電源がONの状態において、ドアが開放され設定キーがONとされた状態でリセットボタンが操作されたことに応じて、設定値vd確認用の表示器に現在の設定値vdに応じた値を表示させるための処理である。具体的に、設定確認処理においてCPU80aは、確認条件(本例ではドアセンサ66、設定キースイッチ72a、及びリセットスイッチ72bがON)が成立している場合に、現在の設定値vdに応じた値を上記の表示器に表示させるための情報をセットする。具体的には、設定確認中フラグをONとする。この設定確認中フラグがONとされたことに応じて、後述するタイマ割込み処理におけるLEDデータの作成処理(ステップS802:図25参照)で設定値vdの表示のための処理が行われる。」

キ「【0119】
続くステップS524でCPU80aは、回転リール4a〜4cについての起動設定処理を実行する。該起動設定処理としては、タイマ割込み処理における回胴制御処理(図37参照)で回転リール4a〜4cの起動に要する情報を設定する処理となる。具体的に、該起動設定処理では、少なくとも、センサ未通過フラグFmt、及び起動要求フラグFrrを全ての回転リール4についてセット(ONを表す「1」を設定)する処理を行う。
なお、起動要求フラグFrrは、タイマ割込み処理(回転制御処理)側に回転リール4の起動(回転開始)を要求するためのフラグである。
【0120】
さらに、次のステップS525でCPU80aは、759.9msの待機処理を実行する。この待機処理は、510回分のタイマ割込み待ち処理に相当する。
上記のように起動要求フラグFrrがセットされることで、タイマ割込み処理における回胴制御処理により、回転リール4a〜4cの起動処理が開始される。ステップS525の待機処理は、このようなタイマ割込み側の回胴制御処理により回転リール4a〜4cが回転状態となるまで待機するための処理として機能する。なお、ステップS525による待機時間は上記の時間に限定されるものではない。
【0121】
続くステップS526でCPU80aは、センサ未通過フラグFmt、エラーフラグの何れかがONであればOFFになるまで待機する処理を実行し、次のステップS527で全リール分の停止ボタンLED(つまり停止ボタン18a〜18cを発光させるための各LED)をONさせるための処理を実行する。
ここで、スロットマシンにおいては、回転リール4が回転を開始した後、対応するインデックスセンサ55により該回転リール4の原点位置101が検出されたことを条件として対応する停止ボタン18の受付を許可するようにされている。このため、ステップS526でセンサ未通過フラグFmtがONである場合には、ステップS527による停止ボタンLEDのON処理に処理を進めず、センサ未通過フラグFmtがOFFになるまで待機するようにされている。」

ク「【0124】
ステップS528の処理を実行したことに応じ、CPU80aはステップS529で有効な停止ボタン操作が行われているか否かを判定する。すなわち、停止ボタン18a〜18cのうち1つの停止ボタン18を押圧するという有効な停止ボタン操作が行われているか否かを判定する。
有効な停止ボタン操作が行われていない場合、CPU80aは先のステップS528に戻る。ここで、回転リール4が回転中にエラーが生じるケースとしては、ステップS528の処理の実行後からステップS529の処理が開始されるまでの間にエラーが生じるケースが考えられる。そのようなタイミングでエラーが生じた場合において、ステップS529で有効な停止ボタン操作が行われていないと判定されると、処理がステップS528に戻りエラーフラグがOFFになるまで待機が行われる。すなわち、ステップS529による停止ボタン操作の受付が中断される。
この点からも理解されるように、ステップS528の処理は、回転中にエラーが生じた場合において、停止ボタン18の操作受付を中断して、エラーの解除を待つための処理として機能する。
【0125】
一方、有効な停止ボタン操作が行われていれば、CPU80aはステップS530に進んで停止情報ビット(当該リールの停止情報ビット)をセットし、次のステップS531で当該リールの停止ボタンLEDをOFFするための処理を行う。ここで、当該リールとは、有効な停止ボタン操作が行われた回転リール4を意味する。
続くステップS532でCPU80aは、停止順データをセットする。停止順データは、停止操作に応じた回転リール4a〜4cの停止順序を表すためのデータである。
【0126】
さらに、次のステップS533でCPU80aは、停止制御処理を実行する。ステップS533の停止制御処理は、回転リール4の停止位置(停止図柄)を最大滑りコマ数を考慮して設定したり、タイマ割込み処理側の回胴制御処理によって当該リールの回転を停止させるために必要な情報を設定する等の処理が行われるが、詳細については図21により後述する。
【0127】
ステップS533の停止制御処理を実行したことに応じ、CPU80aはステップS534で全ての回転リール4が停止したか否かを判定する。全ての回転リール4が停止していないと判定した場合、CPU80aは先のステップS528に戻る。」

ケ「【0133】
[10-2.停止制御処理]
図21は、停止制御処理(ステップS533)のフローチャートである。なお、上記説明からも理解されるように、ステップS533の停止制御処理は、ステップS529で有効な停止ボタン操作が検知された回転リール4を対象として行われるものである。
【0134】
図21において、CPU80aはステップS601で、停止コマンドをセットする。停止コマンドは、少なくとも停止操作が受け付けられた旨を演出制御基板42に通知するためのコマンドであり、CPU80aは停止コマンドを演出制御インターフェース86における送信バッファにセットする。
【0135】
続くステップS602でCPU80aは、停止制御開始時の初期設定を行う。停止制御開始時の初期設定としては、最短停止間隔タイマの値のセット、引き込むコマ数の値のクリア、最大滑りコマ数(4コマ)の設定等を行う。なお、最短停止間隔は、或る停止ボタン18が操作されてから他の停止ボタン18の操作を受付可能とするまでの最短間隔を定めたものであり、本例では最短停止間隔タイマの値として210.09msに応じた値(タイマ割込み141回分)を設定する。」

コ「【0139】
図21に戻り、ステップS604でCPU80aは、滑りコマ数を決定するための処理を行う。すなわち、現在の図柄位置(停止操作時図柄)と図柄抽選処理の抽選結果とに基づき、滑りコマ数を決定する。ここで決定された滑りコマ数を停止操作時図柄の図柄番号に加算して特定される図柄が、対象とする回転リール4を停止させるべき図柄(停止図柄)となる。
なお、現在の図柄位置は、後述する図柄カウンタの値に基づき取得される。図柄カウンタの値としてもタイマ割込み処理における回胴制御処理によってカウントされている。
【0140】
続くステップS605でCPU80aは、停止図柄に到達しているか否かを判定する。すなわち、図柄カウンタの値に基づき、現在の図柄位置が停止図柄としての図柄位置と一致しているか否かを判定する。
停止図柄に到達していなければ、CPU80aは再びステップS605の処理を実行し、停止図柄に到達してればステップS606に処理を進める。
【0141】
ステップS606でCPU80aは、当該リールに対応する停止要求フラグFrsをONとする(「1」を設定する)。後述もするが、停止要求フラグFrsがONとされることで、タイマ割込み処理における回胴制御処理にて当該リール(停止ボタン操作が行われた回転リール4)のブレーキ制御が開始される。」

サ「【0296】
上記の説明を踏まえ、図37の回胴制御処理について説明する。
先ず、CPU80aはステップS1501で、対象リール(処理対象の回転リール4)のステータスを確認する。すなわち、対象リールのステータスが起動要求状態(起動要求フラグFrr=「1」)、起動中状態(起動中フラグFG1=「1」)、回転中状態(回転中フラグFG2=「1」)、第1停止処理中状態(第1停止処理中フラグFG3=「1」)、第2停止処理中状態(第2停止処理中フラグFG4=「1」)、又は全フラグがOFFの状態の何れであるかを確認する。
具体的に、ステップS1501においては、第2停止処理中フラグFG4、第1停止処理中フラグFG3、回転中フラグFG2、起動中フラグFG1、起動要求フラグFrrの順でフラグ=「1」か否かを順番に判定していくようにされており、該判定において「1」と判定された時点で、該「1」と判定されたフラグに対応するステータスを現在のステータスとする。或いは、最後に判定した起動要求フラグFrrが「0」であれば、全フラグOFFのステータスに該当するとの判定結果を得る。」

シ「【0318】
また、ステップS1512においてステップカウンタの値=「0」であれば、CPU80aはステップS1513に進み、ステップカウンタへの「24」のセット、及び図柄カウンタの値のインクリメント(+1)を行った上で、ステップS1514で図柄カウンタの値が「22」以上であるか否かを判定する。これは、図柄カウンタが異常な値を示しているか否かを判定していることに相当する(回転リール4における図柄数は「21」)。
図柄カウンタの値が「22」以上であれば、CPU80aはステップS1515で回転リール4の再起動のための処理を行う。具体的には、対象リールについてのセンサ未通過フラグFmt、及び起動要求フラグFrrをセットすると共に、回転中フラグFG2、及び起動中フラグFG1をクリアする。この結果、次回のタイマ割込みでは処理がステップS1501→S1502を経由して実行されるものとなり、対象リールが再起動される。
ステップS1515の処理を実行すると、CPU80aはステップS1530に処理を進める。」

ス「【図37】



(2)引用発明
上記(1)ア〜シに摘記した引用文献1の記載事項及びスの図示内容より、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。(a等の符号は、本願発明の構成A等に概ね対応させて当審で付与した。)

「a 表面に回転方向に沿って21コマ分の図柄が配置された3つの回転リール4a,4b,4c(【0021】、【0067】)を設けたスロットマシン(【0011】、【0013】)であって、
b 回転リール4a,4b,4cを回転させる3つのステッピングモータ54(【0033】)と、
c 有効な停止ボタン操作が行われると、回転リール4の停止位置(停止図柄)を最大滑りコマ数を考慮して設定したり、タイマ割込み処理側の回胴制御処理によって当該リールの回転を停止させるために必要な情報を設定する等の停止制御処理を実行するCPU80a(【0125】、【0126】)を備え、
d CPU80a(【0103】)は、
d1 1ゲームごとに繰り返し実行される無限ループ状の処理であるメイン処理を実行し(【0102】)、
d2 メイン処理において、所定時間(例えば1.49ms)分の割込み待機処理を実行し(【0103】、【0106】)、
e、e1 回転リール4が回転を開始した後、対応するインデックスセンサ55により該回転リール4の原点位置101が検出されたことを条件として対応する停止ボタン18の受付を許可し(【0121】)、
e、e2 有効な停止ボタン操作が行われれば、停止制御処理を実行し、回転リール4の停止位置(停止図柄)を最大滑りコマ数を考慮して設定し(【0125】、【0126】)、
f、f1 停止制御処理を実行したことに応じ、全ての回転リール4が停止したか否かを判定し、全ての回転リール4が停止していないと判定した場合、有効な停止ボタン操作が行われているか否かを判定し(【0124】、【0127】)、
e、e3 停止制御処理において、最短停止間隔タイマの値のセット、引き込むコマ数の値のクリア、最大滑りコマ数(4コマ)の設定等の停止制御開始時の初期設定を行い、現在の図柄位置(停止操作時図柄)と図柄抽選処理の抽選結果とに基づき、滑りコマ数を決定し、対象とする回転リール4を停止させるべき図柄(停止図柄)とし(【0133】、【0135】、【0139】)、
g、g1 タイマ割込処理における回胴制御処理では、図柄カウンタの値に基づき、現在の図柄位置が停止図柄としての図柄位置と一致しているか否かを判定し、停止図柄に到達してれば、当該リール(停止ボタン操作が行われた回転リール4)のブレーキ制御が開始され(【0140】、【0141】)、
g、g2 タイマ割込処理における回胴制御処理では、図柄カウンタが異常な値を示しているか否かを判定し、図柄カウンタの値が「22」以上であれば、回転リール4の再起動のための処理を行う(【0119】、【0296】、【0318】)
h スロットマシン(【0011】)。」

2 引用文献2
(1)引用文献2に記載された事項
当審拒絶理由に引用文献2として引用された本願の出願前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2012−65937号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア「【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0022】
図1及び図2は、本発明の遊技装置の実施の形態の一例としてのスロットマシンについてのものである。」

イ「【0053】
何れかの賞に内部当り状態となっている場合、制御部50は、ストップボタン30a、30b、30cの押圧等による停止信号を受けた時点から内部当り状態となっている賞への入賞に必要なシンボルが入賞に必要な位置に達するまでの差が規定停止時間(又はその他の規定範囲)内であるときは、そのシンボルが必要位置に表示されるようにリール14a、14b、14cを停止させる(表示手段が固定的に表示すべき表示内容を制御する例の一つである引込制御)。内部当り状態となっている賞の入賞となり得ない場合は、他の賞の入賞とならないように各リールを停止させる。
【0054】
このような停止制御において、各ストップボタン30a、30b、30cの押圧による停止信号が制御部50に入力されてから対応するリールを停止させるまでの最長時間(表示固定指示から所定の期間)は、この例では190ms(これに限るものではない)である。
【0055】
ストップボタン30a、30b、30cのうち何れか1つが押圧されることにより制御部50に停止信号が入力された場合(有効な表示固定指示)、他の未押圧のストップボタンについては、一旦、押圧により対応リールの回転を停止させるための停止信号を出力し得ない状態(停止信号出力の無効化)とし、10ms(有効化時間)後に停止信号出力の有効化が行われる。2つめのストップボタンが押圧されて制御部50に停止信号が入力された場合も、残りの未押圧ストップボタンについては、一旦、停止信号出力が無効化され、10ms後に停止信号出力が有効化される。すなわち、第1のストップボタンの停止信号を制御部50が入力した場合(S5)、第1のストップボタンに対応するリールの停止制御が直ちに開始され(S6)、第2又は第3のストップボタンについては、直前の停止信号入力から有効化時間を経過した後(S7、S10)に押圧されたことによる停止信号を制御部50が入力した場合(S8、S11)に、それぞれのストップボタンに対応するリールの停止制御が開始される(S9、S12)。」

(2)引用文献2の記載事項
上記(1)ア及びイに摘記した引用文献2に記載された事項より、引用文献2には、以下の事項(以下「引用文献2の記載事項」という。)が記載されているものと認められる。

「ストップボタン30a、30b、30cの押圧等による停止信号を受けた時点から内部当り状態となっている賞への入賞に必要なシンボルが入賞に必要な位置に達するまでの差が規定停止時間(又はその他の規定範囲)内であるときは、そのシンボルが必要位置に表示されるようにリール14a、14b、14cを停止させ、内部当り状態となっている賞の入賞となり得ない場合は、他の賞の入賞とならないように各リールを停止させる制御部50(【0053】)を備え、
このような停止制御において、各ストップボタン30a、30b、30cの押圧による停止信号が制御部50に入力されてから対応するリールを停止させるまで最長時間(表示固定指示から所定の期間)は、190msであり(【0054】)、ストップボタン30a、30b、30cのうち何れか1つが押圧されることにより制御部50に停止信号が入力された場合(有効な表示固定指示)、他の未押圧のストップボタンについては、一旦、押圧により対応リールの回転を停止させるための停止信号を出力し得ない状態(停止信号出力の無効化)とし、10ms(有効化時間)後に停止信号出力の有効化が行われる(【0055】)スロットマシン(【0022】)。」

3 周知技術
(1)引用文献3
ア 引用文献3に記載された事項
当審拒絶理由に周知例の引用文献3として引用された本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2018−161497号公報(以下「引用文献3」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(ア)「【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の遊技機について、図面を用いて具体的に説明する。なお、以下の実施形態では、本発明の遊技機として、図柄を変動表示する3つの回転リールを備えた遊技機であって、コイン、メダル又はトークン等の他に、遊技者に付与されたカード等の遊技価値を用いて遊技することが可能な遊技機、いわゆるパチスロ遊技機を用いて説明する。また、以下の実施形態では、パチスロ遊技機を例に挙げて説明するが、本願発明の遊技機を限定するものではなく、パチンコ機やスロットマシンであってもよい。」

(イ)「【0177】
[主制御回路のメインCPUの制御によるメインフローチャート]
図40を参照して、メインCPU64が実行する主たる処理を示したメインフローチャートについて説明する。」

(ウ)「【0230】
[リール停止制御処理]
図47を参照して、メインCPU64が内部当籤役や遊技者による停止操作のタイミング等に基づいてメインリール2〜4の回転を停止させる処理の手順を示したリール停止制御処理について説明する。」

(エ)「【0243】
[停止データ格納処理]
図49を参照して、停止データ格納処理について説明する。停止データ格納処理では、第1停止時又は第2停止時に停止テーブル選択値格納領域1〜4に格納されたデータを更新する処理を行う。

(オ)「【0247】
続いて、メインCPU64は、第1停止後変更データテーブル選択テーブル(図27)を参照し、第1停止時の作動ストップボタンの種別、停止予定位置、及び変更データ選択用番号に基づいて変更データテーブル選択値を取得する(ステップS193)。次に、メインCPU64は、変更データテーブル選択値があるか否かを判別し(ステップS194)、変更データテーブル選択値がある場合には、第1停止後変更用停止テーブル選択値格納テーブル(図28)を参照し、変更データ選択用番号及び変更データテーブル選択値に基づいて、ラインデータ及び第2・第3停止用停止テーブル番号を取得し、停止テーブル選択値格納領域1〜4を更新し(ステップS195)、第1停止後停止データ格納処理を終了する。他方、変更データテーブル選択値がない場合には、メインCPU64は、第1停止後停止データ格納処理を終了する。
【0248】
[第2停止後停止データ格納処理]
図51を参照して、第2停止時に停止テーブル選択値格納領域2に格納されたデータを更新する第2停止後停止データ格納処理について説明する。」

(カ)「【図47】



(2)引用文献3の記載事項
上記(1)ア(ア)〜(オ)に摘記した引用文献3に記載された事項及び上記(1)ア(カ)に摘記した図示内容により、引用文献3には、以下の事項(以下「引用文献3の記載事項」という。)が記載されているものと認められる。

「主たる処理であるメインフローチャートを実行するメインCPU64(【0177】)を備え、
メインフローチャートでは、内部当籤役や遊技者による停止操作のタイミング等に基づいてメインリール2〜4の回転を停止させる処理の手順を示したリール停止制御処理を実行し(【0177】、【0230】、図47)、
リール停止制御処理では、第1停止時又は第2停止時に停止テーブル選択値格納領域1〜4に格納されたデータを更新する処理を行う停止データ格納処理を実行し(【0243】、図47)、第1停止時の作動ストップボタンの種別、停止予定位置、及び変更データ選択用番号に基づいて変更データテーブル選択値を取得し、変更データテーブル選択値があるか否かを判別し、変更データテーブル選択値がある場合には、第1停止後変更用停止テーブル選択値格納テーブルを参照し、変更データ選択用番号及び変更データテーブル選択値に基づいて、ラインデータ及び第2・第3停止用停止テーブル番号を取得し、停止テーブル選択値格納領域1〜4を更新し、第1停止後停止データ格納処理を終了し、変更データテーブル選択値がない場合には、メインCPU64は、第1停止後停止データ格納処理を終了し(【0247】)、第2停止時に停止テーブル選択値格納領域2に格納されたデータを更新する第2停止後停止データ格納処理を備えた(【0248】)
スロットマシン(【0018】)。」

(2)引用文献4
ア 引用文献4に記載された事項
当審拒絶理由に周知例の引用文献4として引用された本願の出願前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2011−87956号公報(以下「引用文献4」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(ア)「【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を用いて、本発明の実施の形態に係るスロットマシン(遊技台)について詳細に説明する。」

(イ)「【0109】
遊技の基本的制御は、主制御部300のMainCPU310が中心になって行い、電源断等を検知しないかぎり、MainCPU310が同図の主制御部メイン処理を繰り返し実行する。」

(ウ)「【0126】
<リール制御処理>
次に、図24を用いて、上記メイン処理におけるリール制御処理(ステップS109)について説明する。なお、同図は、リール制御処理の流れを示すフローチャートである。」

(エ)「【0132】
<リール停止処理>
次に、図25を用いて、上記リール制御処理におけるリール停止処理(ステップS303)について説明する。なお、同図は、リール停止処理の流れを示すフローチャートである。
【0133】
ステップS401では、ストップボタン131a〜131cの操作時の図柄位置データを取得する。より具体的には、ストップボタン131a〜131cの停止操作がなされた時に入賞ライン114の中段水平ラインに位置していた図柄の図柄番号を、停止操作時の図柄位置データとして取得する。
【0134】
ステップS402では、上述のステップS106で取得した停止テーブル取得情報を参照し、候補として選択した停止テーブルデータの中から、条件に合致する停止テーブルデータを取得する。なお、後述するステップS407、S410において停止テーブルデータが更新されている場合には、このステップS402を飛ばしてステップS403に進む。
【0135】
ステップS403では、ステップS402で取得した(または、後述するステップS407、S410で更新した)停止テーブルデータを参照し、ステップS401で取得した図柄位置データなどに基づいて、リールを停止させる位置情報を示す図柄停止位置情報を取得する。
【0136】
ステップS404では、ステップS401で取得した図柄位置データと、ステップS403で取得した図柄停止位置情報に基づいて、リールの引き込みコマ数を設定する。
【0137】
ステップS405では、ステップS404で設定した引き込みコマ数に基づいて、リール110〜112を停止する。
【0138】
ステップS406では、停止したリールが第1停止であるか否か、すなわち、3つのリール110〜112のうちで最初に停止したリールであるか否かを判定し、第1停止リールであればステップS407に進み、そうでない場合にはステップS409に進む。
【0139】
ステップS407では、停止テーブル取得情報を参照し、候補として選択した停止テーブルデータの中から、第1停止リールの停止図柄を加味した条件に合致する停止テーブルデータを取得して停止テーブルデータを更新し、ステップS408では、副制御部400に対して、第1停止リールコマンドを送信する。
【0140】
ステップS409では、停止したリールが第2停止であるか否か、すなわち、3つのリール110〜112のうちで2番目に停止したリールであるか否かを判定し、第2停止リールであればステップS410に進み、そうでない場合にはステップS412に進む。
【0141】
ステップS410では、停止テーブル取得情報を参照し、候補として選択した停止テーブルデータの中から、第1停止リールおよび第2停止リールの停止図柄を加味した条件に合致する停止テーブルデータを取得して停止テーブルデータを更新し、ステップS411では、副制御部400に対して、第2停止リールコマンドを送信する。」

(エ)「【図20】



(2)引用文献4の記載事項
上記(1)ア(ア)〜(ウ)に摘記した引用文献4に記載された事項及び上記(1)ア(エ)に摘記した図示内容により、引用文献4には、以下の事項(以下「引用文献4の記載事項」という。)が記載されているものと認められる。

「主制御部メイン処理を繰り返し実行する主制御部300(【0109】)を備え、
主制御部メイン処理では、リール制御処理を実行し(【0126】、図20)、
リール制御処理では、リール停止処理を実行し(【0132】)、
リール停止処理では、ストップボタン131a〜131cの操作時の図柄位置データを取得し、第1停止リールであれば、停止テーブル取得情報を参照し、候補として選択した停止テーブルデータの中から、条件に合致する停止テーブルデータを取得し、停止テーブルデータを参照し、取得した図柄位置データなどに基づいて、リールを停止させる位置情報を示す図柄停止位置情報を取得し、取得した図柄位置データと、取得した図柄停止位置情報に基づいて、リールの引き込みコマ数を設定し、設定した引き込みコマ数に基づいて、リール110〜112を停止し、停止テーブル取得情報を参照し、候補として選択した停止テーブルデータの中から、第1停止リールの停止図柄を加味した条件に合致する停止テーブルデータを取得して停止テーブルデータを更新し、副制御部400に対して、第1停止リールコマンドを送信し(【0132】〜【0139】)、
第2停止リールであれば、停止テーブル取得情報を参照し、候補として選択した停止テーブルデータの中から、第1停止リールおよび第2停止リールの停止図柄を加味した条件に合致する停止テーブルデータを取得して停止テーブルデータを更新し、第2停止リールコマンドを送信する(【0140】、【0141】)
スロットマシン(【0023】)。」

(3)周知技術
ア 引用文献3に記載の事項の「リール停止制御処理」における「第1停止時又は第2停止時」の「停止予定位置」が決まること、「第1停止時の作動ストップボタンの種別、停止予定位置、及び変更データ選択用番号に基づいて変更データテーブル選択値を取得し」・・・「停止テーブル選択値格納領域1〜4を更新」することは、それぞれ「停止されたリールの停止図柄が決定」すること、「次のリールについての停止制御用データを」「作成する」ことであって、引用文献3に記載の事項では、「第1停止時又は第2停止時に・・・停止テーブル選択値格納領域1〜4を更新」していることから、引用文献3に記載の事項は、待機処理やリールの異常判定処理を経ることなく、停止されたリールの停止図柄が決定すると、直ちに次のリールについての停止制御用データを作成しているといえる。
また、引用文献4に記載の事項の「リール停止処理」における「リールを停止させる位置情報を示す図柄停止位置情報を取得」すること、「停止テーブル取得情報を参照し、候補として選択した停止テーブルデータの中から、第1停止リールの停止図柄を加味した条件に合致する停止テーブルデータを取得して停止テーブルデータを更新」することは、それぞれ「停止されたリールの停止図柄が決定」すること、「次のリールについての停止制御用データを」「作成する」ことであって、引用文献4に記載の事項では、「ストップボタン131a〜131cの操作時の図柄位置データを取得し、・・・第1停止リールの停止図柄を加味した条件に合致する停止テーブルデータを取得して停止テーブルデータを更新し、・・・第1停止リールおよび第2停止リールの停止図柄を加味した条件に合致する停止テーブルデータを取得して停止テーブルデータを更新し」ていることから、引用文献4に記載の事項もまた、待機処理やリールの異常判定処理を経ることなく、停止されたリールの停止図柄が決定すると、直ちに次のリールについての停止制御用データを作成しているといえる。
イ してみると、「停止されたリールの停止図柄が決定した後、次のリールについての停止制御用データを、直ちに作成するスロットマシン。」は本願出願前に周知(以下「周知技術」という。)であると認められる。

第5 対比・判断
1 本願発明の構成Aについて
引用発明の構成aの「21コマ分の図柄が配置された」「回転リール」、「3つ」「設けた」こと、「スロットマシン」は、それぞれ本願発明の「複数の図柄が表示された回胴」、「複数有する」こと、「遊技機」に相当する。
よって、引用発明の構成aは、本願発明の構成Aに相当する構成を有する。

2 本願発明の構成Bについて
引用発明の構成bの「回転させる3つのステッピングモータ54」は、本願発明の「回転駆動する回転駆動手段」に相当する。
よって、引用発明の構成bは、本願発明の構成Bに相当する構成を有する。

3 本願発明の構成Cについて
引用発明の構成cの「有効な停止ボタン操作」、「回転リール4の停止位置(停止図柄)を最大滑りコマ数を考慮して設定したり、タイマ割込み処理側の回胴制御処理によって当該リールの回転を停止させるために必要な情報を設定する」こと、「停止制御処理を実行するCPU80a」は、それぞれ本願発明の「前記回胴の停止を指示する回胴停止操作」、「前記回転駆動手段を制御」すること、「前記回胴を停止させる制御手段」に相当する。
よって、引用発明の構成cは、本願発明の構成Cに相当する構成を有している。

4 本願発明の構成D及びD1について
引用発明の構成dの「CPU80a」、構成d1の「繰り返し実行される無限ループ状の処理であるメイン処理」は、それぞれ本願発明の「前記制御手段」、「繰り返されるメイン処理」に相当する。
また、引用発明の構成dの「CPU80a」は、構成d1では「1ゲームごとに繰り返し実行される無限ループ状の処理であるメイン処理を実行し」ており、実行していることからそれを実行する本願発明の「メイン処理手段」を備えていることは明らかである。
よって、引用発明の構成d及びd1は、本願発明の構成D及びD1に相当する構成を有している。

5 本願発明の構成D及びD2について
引用発明の構成dの「CPU80a」、構成d2の「所定時間(例えば1.49ms)」、「割込み待機処理」は、それぞれ本願発明の「前記制御手段」、「タイマ割込み処理」に相当する。
また、引用発明の構成dの「CPU80a」は、構成d2では「メイン処理において、所定時間(例えば1.49ms)分の割込み待機処理を実行し」ており、「メイン処理において」「割込み待機処理を実行し」ていることから、本願発明の「前記メイン処理を中断して」「タイマ割込み処理を実行」することに相当する構成を有しているといえる。
さらに、引用発明の構成dの「CPU80a」は、「メイン処理において」「割込み待機処理」を実行していることからそれを実行する本願発明の「タイマ割込み処理手段」を備えていることは明らかである。
よって、引用発明の構成d及びd2は、本願発明の構成D及びD2に相当する構成を有している。

6 本願発明の構成E及びE1について
引用発明の構成e、e1の「該回転リール4の原点位置101」、「検出されたことを条件」、「対応する停止ボタン18の受付を許可」することは、それぞれ本願発明の「前記回胴の原点位置」、「検出することを条件」、「前記回胴停止操作の受け付けを有効化する」ことに相当する。
そして、引用発明では、対応する停止ボタン18の受付を許可していることから、本願発明の「停止操作有効化手段」を備えていることは明らかである。
よって、引用発明は、本願発明の構成E及びE1に相当する構成を備える。

7 本願発明の構成E及びE2について
引用発明の構成e、e2の「有効な停止ボタン操作が行われ」ること、「最大滑りコマ数」、「回転リール4の停止位置(停止図柄)を」「設定」することは、それぞれ本願発明の「有効な停止ボタン操作が行われる」こと、「最大滑りコマ範囲内」、「停止図柄位置を決定する」ことに相当する。
そして、引用発明では、「回転リール4の停止位置(停止図柄)を」「設定し」ていることから、本願発明の「停止図柄位置決定手段」を備えることは明らかである。
よって、引用発明は、本願発明の構成E及びE2に相当する構成を備える。

8 本願発明の構成F及びF1について
引用発明の構成f、f1では、構成e、e2で「有効な停止ボタン操作が行われれば、停止制御処理を実行し」て、「停止制御処理を実行したことに応じ、全ての回転リール4が停止したか否かを判定し、全ての回転リール4が停止していないと判定した場合、有効な停止ボタン操作が行われているか否かを判定」していることから、有効な停止ボタン操作が行われた回転リール4の停止制御処理を実行して、次の回転リール4の停止ボタン18の受付を許可しており、その受付を許可する手段を備えることは明らかである。
よって、引用発明の構成e、e2及び構成f、f1と本願発明の構成F及びF1とは、「前記停止操作有効化手段は、」「次の前記回胴停止操作の受け付けを有効化」する点で共通する。

9 本願発明の構成E及びE3について
引用発明の構成d1の「1ゲームごとに繰り返し実行される無限ループ状の処理であるメイン処理」において、構成e、e3では、構成e、e2で「有効な停止ボタン操作が行われれば、停止制御処理を実行し」て、「停止制御処理において、最短停止間隔タイマの値のセット、引き込むコマ数の値のクリア、最大滑りコマ数(4コマ)の設定等の停止制御開始時の初期設定を行い、現在の図柄位置(停止操作時図柄)と図柄抽選処理の抽選結果とに基づき、滑りコマ数を決定し、対象とする回転リール4を停止させるべき図柄(停止図柄)とし」ていることから、有効な停止ボタン操作が行われた回転リール4の停止制御処理で停止させるべき図柄(停止図柄)を決定した後、直ちに次に停止する回転リール4の制御用のデータは作成していないものの、次の回転リール4についての制御のデータを次の回転リール4の有効な停止ボタン操作時には作成していることは明らかである。
そして、引用発明の構成e、e3はメイン処理を実行していることから、引用発明が本願発明のメイン処理手段を有することは明らかであり、次の回転リール4についての制御のデータを作成する時期は異なるものの、引用発明と本願発明の構成E及びE3とは「前記メイン処理手段は、前記停止図柄位置決定手段が前記回胴停止操作の行われた前記回胴についての前記停止図柄位置を決定した後、次の前記回胴についての停止制御用データを作成する停止データ作成手段」を有する点で共通する。

10 本願発明の構成G及びG1について
引用発明の構成g、g1の「当該リール(停止ボタン操作が行われた回転リール4)」、「停止図柄としての図柄位置」、「一致しているか否かを判定」することは、それぞれ本願発明の「前記停止図柄位置が決定された前記回胴である対象回胴」、「停止図柄位置」、「到来を監視する」ことに相当する。
そして、引用発明では、「タイマ割込処理」で「回胴制御処理」を行っており、「現在の図柄位置が停止図柄としての図柄位置と一致しているか否かを判定し」ていることから、それぞれ本願発明の「タイマ割込み処理手段」、「停止図柄位置監視手段」を備えていることは明らかである。
よって、引用発明は、本願発明の構成G及びG1に相当する構成を備える。

11 本願発明の構成G及びG2について
引用発明の構成g、g2の「図柄カウンタが異常な値を示しているか否かを判定」することは、本願発明の「前記回胴の回転異常判定処理を行う」ことに相当する。
そして、引用発明では、「タイマ割込処理における回胴制御処理」で、「図柄カウンタが異常な値を示しているか否かを判定し、図柄カウンタの値が「22」以上であれば、回転リール4の再起動のための処理を行う」ことから、本願発明の「回転異常判定手段」を備えていることは明らかである。
よって、引用発明は、本願発明の構成G及びG2に相当する構成を備える。

12 本願発明の構成Hについて
引用発明の構成hの「スロットマシン」は、本願発明の「遊技機」に相当する。
よって、引用発明は、本願発明の構成Hに相当する構成を備える。

そうすると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、以下のとおりである。

(一致点)
「A 回転方向に沿って複数の図柄が表示された回胴を複数有する遊技機であって、
B 複数の前記回胴を回転駆動する回転駆動手段と、
C 前記回胴の停止を指示する回胴停止操作に基づいて前記回転駆動手段を制御
して前記回胴を停止させる制御手段と、を備え、
D 前記制御手段は、
D1 1ゲームごとに繰り返されるメイン処理を実行するメイン処理手段と、
D2 一定時間ごとに前記メイン処理を中断して行われるタイマ割込み処理を実行するタイマ割込み処理手段と、を含み、
E 前記メイン処理手段は、
E1 前記回胴の原点位置を検出することを条件に前記回胴停止操作の受け付けを有効化する停止操作有効化手段と、
E2 前記回胴停止操作を検出することを条件に最大滑りコマ範囲内の停止図柄位置を決定する停止図柄位置決定手段、を有し、
F 前記停止操作有効化手段は、
F1’次の前記回胴停止操作の受け付けを有効化し、
E 前記メイン処理手段は、
E3’前記停止図柄位置決定手段が前記回胴停止操作の行われた前記回胴についての前記停止図柄位置を決定した後、次の前記回胴についての停止制御用データを作成する停止データ作成手段をさらに有し、
G 前記タイマ割込み処理手段は、
G1 前記停止図柄位置が決定された前記回胴である対象回胴について前記停止図柄位置の到来を監視する停止図柄位置監視手段、
G2 前記回胴の回転異常判定処理を行う回転異常判定手段と、を有する
H 遊技機。」

(相違点1)(構成F1)
「前記停止操作有効化手段」について
本願発明では、「前記停止図柄位置決定手段が決定した前記停止図柄位置の到来を監視することなく、次の前記回胴停止操作の受け付けを有効化」しているのに対して、
引用発明では、「停止制御処理を実行したことに応じ、全ての回転リール4が停止したか否かを判定し、全ての回転リール4が停止していないと判定した場合、有効な停止ボタン操作が行われているか否かを判定」しており、有効な停止ボタン操作を行った回転リール4の停止制御処理を実行したことに応じて、次の回転リール4の停止ボタン操作の有効性について判定しているから、有効な停止ボタン操作を行った回転リール4の停止を監視することなく、次の回転リール4の停止ボタン操作を有効にしていない点。

(相違点2)(構成E3)
「前記メイン処理手段」について、
本願発明では、「次の前記回胴についての停止制御用データを、前記回胴の回転異常判定処理を経ず且つ待機処理を経ずに直ちに作成」しているのに対して、引用発明では、有効な停止ボタン操作が行われた回転リール4の停止制御処理で停止させるべき図柄(停止図柄)を決定した後、図柄カウンタが異常な値を示しているか否かの判定及び割込み待機処理を経ずに、直ちに次に停止する回転リール4の制御用のデータは作成していない点。

(4)判断
上記相違点についてそれぞれ検討する。
ア 相違点1について
上記「第4 2(2)」における引用文献2の記載事項の「シンボル」、「リール」、「制御部50」、「ストップブタン30a、30b、30cのうち何れか1つが押圧されること」、「スロットマシン」は、それぞれ本願発明の「複数の図柄」、「回胴」、「制御手段」、「前記回胴の停止を指示する回胴停止操作」、「遊技機」に相当し、引用文献2の記載事項では、各ストップボタン30a、30b、30cの押圧による停止信号が制御部50に入力されてから対応するリールを停止させるまでの最長時間(表示固定指示から所定の期間)は、190msであり、未押圧のストップボタンについて、押圧により対応リールの回転を停止させるための停止信号を出力し得ない状態は10msであることから、押圧したストップボタンに対応したリールの回転が停止するまでの最長時間である190msよりも前の10ms(前記停止図柄位置の到来を監視することなく)で他のストップボタンの停止信号出力の有効化を行って(次の前記回胴停止操作の受け付けを有効化して)いるといえる。
そして、引用発明及び引用文献2の記載事項は、ともにスロットマシンのリールの停止制御に関するものであり、引用発明のスロットマシンがテンポよく遊技を行うという課題を内在することは明らかであって、引用発明及び引用文献2の記載事項は課題が共通することから、引用発明の停止ボタン操作が有効か否かの判定処理として、引用文献2の記載事項を採用して、有効な停止ボタン操作が行われた場合、対象とする回転リール4を停止させるべき図柄(停止図柄)で停止させる前に、他の停止ボタン操作の停止信号出力の有効化を行うことにより、押圧したストップボタンに対応したリールの回転が停止するまでの最長時間である190msよりも前の10ms(前記停止図柄位置の到来を監視することなく)で他のストップボタンの停止信号出力の有効化を行うこととし、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

イ 相違点2について
上記「第4 3(3)」における周知技術の「リール」、「スロットマシン」は、それぞれ本願発明の「回胴」、「遊技機」に相当する。
そして、引用発明及び上記周知技術のスロットマシンは、ともに遊技者により停止操作されるリールの回転を制御するスロットマシンである点で共通するものであり、引用発明及び周知技術ともにスロットマシンの回胴の停止制御の安定性を高めるという内在する課題を有することが明らかであり課題が共通するから、引用発明において、次に停止する回転リール4の制御用のデータの作成手法として、上記周知技術を採用し、停止されたリールの停止図柄を決定した後、次のリールについての停止制御用データを、直ちに作成するようにすると、メイン処理において、停止制御用データを直ちに作成することとなるため、タイマ割込処理である図柄カウンタが異常な値を示しているか否かを判定及びタイマ割込み処理を経ずに次のリールについての停止制御用データが直ちに作成されることとなることから、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

したがって、本願発明は、引用発明、引用文献2の記載事項及び上記周知技術から当業者が容易に発明できたものである。

13 請求人の主張について
(1)審判請求人は意見書において、概略、以下のとおり主張している。
「[4]拒絶理由に対する意見
(4-1.引用文献2について)
引用文献2の図3や段落[0054]から[0056]には、停止操作が行われた回胴が停止する前に、他の回胴の停止信号出力の有効化が行われ得ることが開示されております。
ここで、停止操作が行われた回胴が停止する前に、他の回胴の停止信号出力を有効化し得るようにするためには、引用文献2の段落[0056]等にも記載されておりますように、複数の回胴(最大で三つの回胴)について、停止操作に応じた回胴停止制御を並行的に行えることが担保されていることを要します。しかしながら、引用文献2には、そのように複数の回胴について停止操作に応じた回胴停止制御を並行的に行うための具体的な手法については一切の記載も示唆も為されておりません。
これに対し、本願発明では、「タイマ割込み処理手段」が、
「前記停止図柄位置が決定された前記回胴である対象回胴について前記停止図柄位置の到来を監視する停止図柄位置監視手段」
を有する構成としていることで、複数の回胴について、停止操作に応じた回胴停止制御を並行的に行うことを可能としております。
上記のように回胴の停止図柄位置の到来の監視をタイマ割込み処理側で行うことについては、引用文献2には一切の記載も示唆も為されておりません。
従いまして、本願発明における
『「タイマ割込み処理手段」が、「前記停止図柄位置が決定された前記回胴である対象回胴について前記停止図柄位置の到来を監視する停止図柄位置監視手段」を有する』
という構成が、引用文献2の記載から当業者が容易に想到し得たものとは言い難いと思料します。

(4-2.引用文献1について)
引用文献1には、停止操作に応じた回胴停止制御をタイマ割込み処理において行うことで、複数の回胴についての回胴停止制御を並行的に行い得る技術が開示されております(引用文献1の図37や[0290]から[0332]の記載等)。
しかしながら、引用文献1は、本願発明のようにメイン処理において、
「前記停止図柄位置決定手段が決定した前記図柄停止位置の到来を監視することなく、次の回胴停止操作の受け付けを有効化」するものではありません。
具体的に、引用文献1は、図19から図21(特に図21のS605参照)や段落[0102]から[0140]の記載等にありますように、メイン処理(図19)側において、停止操作が行われた回胴について停止図柄位置への到達を監視する処理が行われるものです。
この点から理解されますように、引用文献1に記載の発明は、本願発明のように、停止操作が行われた回胴についての停止図柄位置の決定後、直ちに次の回胴停止操作の受け付けを有効化するということはできないものであり、打ち心地の向上効果を得ることができないものです。

(4-3.各引用文献との対比)
本願発明のように、タイマ割込み処理側において、
「前記停止図柄位置が決定された前記回胴である対象回胴について前記停止図柄位置の到来を監視する」
という処理を行うことで、メイン処理側において、
「前記停止図柄位置決定手段が決定した前記図柄停止位置の到来を監視することなく、次の回胴停止操作の受け付けを有効化し」
とする構成につきましては、引用文献1,2を始めとした何れの引用文献にも記載及び示唆は為されておりません。従いまして、このような本願発明の構成とすることが、各引用文献の記載から当業者が容易に想到し得たとは言い難く、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により拒絶されるべきものではないと思料します。」

(2)上記審判請求人の主張について検討すると、上記(4)アで説示したとおり、引用文献2の記載事項は、押圧したストップボタンに対応したリールの回転が停止するまでの最長時間である190msよりも前の10ms(前記停止図柄位置の到来を監視することなく)で他のストップボタンの停止信号力の有効化を行って(次の前記回胴停止操作の受け付けを有効化し)いるといえ、引用文献1は、本願発明のようにメイン処理において、「前記停止図柄位置決定手段が決定した前記図柄停止位置の到来を監視することなく、次の回胴停止操作の受け付けを有効化」するものではないものの、引用発明の停止ボタン操作が有効か否かの判定処理として、引用文献2の記載事項を採用して、有効な停止ボタン操作が行われた場合、対象とする回転リール4を停止させるべき図柄(停止図柄)で停止させる前に、他の停止ボタン操作の停止信号出力の有効化を行って、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
よって、審判請求人の上記主張は採用することができない。

第6 むすび
本願発明は、当業者が引用発明、引用文献2の記載事項及び上記周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-06-07 
結審通知日 2022-06-14 
審決日 2022-06-28 
出願番号 P2018-205645
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 瀬津 太朗
特許庁審判官 ▲高▼橋 祐介
澤田 真治
発明の名称 遊技機  
代理人 岩田 雅信  
代理人 中川 裕人  

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