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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録(定型) B60W
管理番号 1388024
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-07-21 
確定日 2022-07-12 
事件の表示 特願2018−544646「駐車支援方法及び駐車支援装置」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 4月19日国際公開、WO2018/070021、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)10月13日を国際出願日とする出願であって、令和3年4月9日付けで拒絶査定がされた。これに対し、令和3年7月21日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、手続補正書が提出され、令和3年12月21日に上申書が提出されたものである。


第2 本願発明について
1 本願発明
特許請求の範囲の請求項1〜7に係る発明(以下「本願発明1〜7」という。)は、令和3年7月21日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1〜7に記載された事項により特定される以下のとおりのものであると認める。

「【請求項1】
自車両の駐車目標位置への駐車に際し、前記駐車目標位置の周囲状況を記憶し、記憶された前記周囲状況を用いて自動駐車を実行する駐車支援方法において、
前記自車両に搭載された周囲状況センサにより前記駐車目標位置の周囲状況を検出するステップと、
検出した前記周囲状況を提示するステップと、
提示した前記周囲状況の全体に対する乗員による適否入力を受付けるステップと、
前記乗員が適するとした前記適否入力が得られた場合に、提示した前記周囲状況を記憶し、前記乗員が適さないとした前記適否入力が得られた場合に、提示した前記周囲状況のすべてを記憶しないステップと、
前記周囲状況を記憶した後に、前記自車両が再び前記駐車目標位置の周囲に到達した場合に、記憶した前記周囲状況を用いて自動駐車を実行するステップ
とを含むことを特徴とする駐車支援方法。
【請求項2】
前記周囲状況を提示するステップは、検出した前記周囲状況を用いて生成された前記駐車目標位置を含む環境地図を提示することを特徴とする請求項1に記載の駐車支援方法。
【請求項3】
前記周囲状況を提示するステップは、前記駐車目標位置とは異なる位置に駐車目標位置候補を含む前記周囲状況を提示することを特徴とする請求項1又は2に記載の駐車支援方法。
【請求項4】
前記周囲状況を検出するステップは、前記駐車目標位置への駐車を複数回繰り返し、前記駐車の都度、前記周囲状況センサにより前記駐車目標位置の周囲状況を検出し、
前記周囲状況を提示するステップは、前記駐車の都度、前記周囲状況センサにより検出した前記周囲状況を提示し、
前記適否入力を受付けるステップは、前記駐車の都度、提示した前記周囲状況に対する前記乗員の適否入力を受付け、
前記記憶するステップは、前記駐車の都度、前記乗員が適するとした前記適否入力が得られた場合に、提示した前記周囲状況を記憶する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の駐車支援方法。
【請求項5】
前記周囲状況を検出するステップは、前記駐車目標位置への駐車を複数回繰り返し、前記駐車の都度、前記周囲状況センサにより前記駐車目標位置の周囲状況を検出し、
前記周囲状況を提示するステップは、前記駐車毎に検出された周囲状況を統合することにより得られた周囲状況を提示する、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の駐車支援方法。
【請求項6】
前記周囲状況を検出するステップは、前記駐車目標位置への駐車を複数回繰り返し、前記駐車の都度、前記周囲状況センサにより前記駐車目標位置の周囲状況を検出し、
前記周囲状況を提示するステップは、前記駐車毎に検出された周囲状況を並べて又は順次提示する、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の駐車支援方法。
【請求項7】
自車両の駐車目標位置への駐車に際し、前記駐車目標位置の周囲状況を記憶し、記憶された前記周囲状況を用いて自動駐車を実行する駐車支援装置において、
前記自車両に搭載され、前記駐車目標位置の周囲状況を検出する周囲状況センサと、
検出した前記周囲状況を提示する提示装置と、
提示した前記周囲状況の全体に対する乗員による適否入力を受付けるインターフェースと、
前記乗員が適するとした前記適否入力が得られた場合に、提示した前記周囲状況を記憶し、前記乗員が適さないとした前記適否入力が得られた場合に、提示した前記周囲状況のすべてを記憶せず、前記周囲状況を記憶した後に、前記自車両が再び前記駐車目標位置の周囲に到達した場合に、記憶した前記周囲状況を用いて自動駐車を実行するコントローラ
とを備えることを特徴とする駐車支援装置。」

2 拒絶査定の理由について
令和3年4月9日付けの拒絶査定の理由は、概略以下のとおりである。

進歩性)この出願の請求項1、3〜7に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1に記載された発明、又は引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特開2006−298115号公報
2.特開平11−157404号公報

3 当審の判断
(1)本願発明1について
ア 引用文献1
原査定で拒絶の理由に引用された引用文献1には、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。
(ア)「【請求項1】
車両に搭載された制御手段を用いて、前記車両を目標位置まで導く運転支援方法であって、
前記制御手段が、
初期位置から前記目標位置までの前記車両の各駆動手段の駆動履歴情報を予め取得及び登録するとともに、
登録された前記駆動履歴情報を追従して、前記車両を前記目標位置まで走行させることを特徴とする運転支援方法。」

(イ)「【0034】
撮像データ取得部8は、制御部3から要求があった場合に、後方カメラ25によって生成された撮像データを、各種補正や合成等の画像処理が可能な画像データGとして制御部3に送信する。また、画像データGは、後方カメラ25に広角レンズを用いているため、ナビゲーション装置1が具備する、登録設定手段及び出力手段を構成するディスプレイ10に表示した際に、画面周辺の画像が縮む、いわゆる歪曲収差が生じている。」

(ウ)「【0053】
次に、本実施形態の処理手順について、図7及び図8に従って説明する。図7は、走行履歴登録処理の手順を示し、図8は、追従走行制御処理の手順を示す。
走行履歴登録処理は、制御部3が前記ROMに格納した履歴登録プログラムに従って行う処理である。まず、制御部3は、周辺計測情報17及び駆動履歴情報18からなる走行履歴情報の取得を開始するか否か判断する(ステップS1−1)。本実施形態では、車両Cが所定地点付近に接近、且つ車速が時速20km以下であるかを判断する。この所定地点とは、車両Cが比較的頻繁に駐車又は通過する地点であって、その判断条件は予め履歴登録プログラムに設定されている。例えば、所定地点は、地図描画データ7bに「自宅」として登録された地点、駐車を複数回繰り返した地点等である。また、時速20km以下で所定回数以上通過した狭路の入口である。そして、それらの所定地点と自車位置C1との相対距離が、所定距離(例えば、20m)以内になると、制御部3は所定地点に接近したと判断する。
【0054】
制御部3は、所定地点に接近かつ車速が時速20km以下になるまでステップS1−1の判断を繰り返す。そして、所定地点に接近かつ車速が時速20km以下になった場合(ステップS1−1においてYES)、制御部3は、図9に示すように、ディスプレイ10に表示された表示画面34に、登録設定ボタン36、消去ボタン37を表示する(ステップS1−2)。この登録設定ボタン36が運転者によって入力操作されると、制御部3は登録設定命令を受信し、その地点で取得した周辺計測情報17及び駆動履歴情報18を走行履歴情報記憶部16に登録するようになっている。消去ボタン37が入力操作されると、その周辺計測情報17のみを、後述する処理のために走行履歴情報記憶部16に格納する。
【0055】
そして、制御部3は、自車位置C1、方位、周辺計測情報17を取得する(ステップS1−3)。具体的には、制御部3は、自車位置検出部5から自車位置C1及び方位を取得する。さらに、制御部3は画像処理部15を制御して、その時点で生成された画像データGを撮像データ取得部8から取得する。さらに、画像処理部11は、レンズによる歪曲収差の補正、特徴点抽出、特徴点の3次元座標系への変換を行って、周辺計測情報17を生成する。生成された周辺計測情報17は、制御部3内のRAMに一時格納される。」

(エ)「【0061】 そして、制御部3は、サンプリング周期τごとに、ステップS1−3からステップS1−7を繰り返す。例えば、図11(a)に示すように、車両Cが、周辺計測情報17の取得を開始した初期位置S1を通過して、駐車目標領域105に向って前進するとき、そのときの舵角に応じた舵角検出信号Sr等が送信される。制御部3は、舵角検出信号Sr等に基づく検出データをこの駆動履歴情報18に含める。」

(オ)「【0065】
そして、制御部3は、例えば、車両Cが駐車目標領域105に駐車された時点や、狭路の出口で、各ボタン36,37の操作があったと判断すると(ステップS1−7においてYES)、その入力操作が、RAMに蓄積された各周辺計測情報17及び各駆動履歴情報18を登録する操作であるか否かを判断する(ステップS1−8)。
【0066】
登録設定ボタン36が操作され、各周辺計測情報17及び各駆動履歴情報18の登録が選択されたと判断すると(ステップS1−8においてYES)、RAMに蓄積された各周辺計測情報17及び各駆動履歴情報18を、走行履歴情報記憶部16に格納する。(ステップS1−9)。このとき、各周辺計測情報17及び各駆動履歴情報18にそれぞれ関連付けられた各自車位置C1及び方位も走行履歴情報記憶部16に格納する。これにより、サンプリング周期τごとの周辺計測情報17及び駆動履歴情報18が、各サンプリング時点の自車位置C1と関連付けられて登録される。また、周辺計測情報17及び駆動履歴情報18の取得を開始した地点を、初期位置S1として登録する。このとき、周辺計測情報17及び駆動履歴情報18に対して、登録名を設定してもよい。
【0067】
例えば、運転操作がうまくいかなかった場合等に消去ボタン37が操作されると、駆動履歴情報18及び周辺計測情報17の登録が選択されないと判断する(ステップS1−8においてNO)。また、制御部3は、ステップS1−5のフィルタリング処理のみを目的として、RAMに格納された周辺計測情報17のみを走行履歴情報記憶部16等に格納する(ステップS1−10)。また、各ボタン36,37の両方が操作されずに、イグニッションスイッチがオフ操作された場合等には、制御部3は、消去ボタン37が操作された場合と同様に、周辺計測情報17のみを走行履歴情報記憶部16に格納する。」

(カ)「【0069】
車両Cが初期位置S1に接近したと判断すると(ステップS2−1においてYES)、制御部3は、図12に示すように、追従走行のための制御を開始するための開始設定ボタン41を、そのときディスプレイ10に表示されている表示画面40に重ねて表示する。さらに、スピーカ13から、案内音声42を出力する。この案内音声42では、現在地点に関連付けられた周辺計測情報17及び駆動履歴情報18の登録があること、目標位置の案内等を出力する。
【0070】
同時に、制御部3は、自車位置C1及び方位と、周辺計測情報17を逐次取得する(ステップS2−3)。さらに、制御部3は、開始設定ボタン41の入力操作を待ち、追従走行が選択されたか否かを判断する(ステップS2−4)。
【0071】
開始設定ボタン41の入力操作が行われると(ステップS2−4においてYES)、制御部3は、現在の自車位置C1及び方位と、登録された周辺計測情報17及び駆動履歴情報18に基づく目標軌跡との相対距離等を算出する(ステップS2−5)。このとき、画像処理部15は、現在の周辺計測情報17の特徴点31の座標と、登録された過去の周辺計測情報17の特徴点31の座標とを合致させる。さらに、図13に模式的に示すように、現在の自車位置C1と、登録された駆動履歴情報18に基づく目標軌跡45との相対距離d(図中Y軸方向の距離)、車両Cの方向と目標軌跡45との相対方位θとを検出する。このとき、目標軌跡45は、各駆動履歴情報18に関連付けられた自車位置C1と、各駆動履歴情報18内の舵角データに基づく。
【0072】
目標軌跡45との相対距離d及び相対方位θを算出すると、制御部3は、その相対距離d及び相対方位θが所定値以下であるか否かを判断する(ステップS2−6)。相対距離d,相対方位θが予め定められた値よりも大きい場合には、目標軌跡45からのずれを補正するため、自車位置C1と方位の補正を行う(ステップS2−7)。このとき、制御部3は、目標軌跡45との相対距離d及び相対方位θが所定値以下になるように、操舵装置26及び駆動装置27を自動制御する。そして、現在の自車位置C1及び方位が、目標軌跡45のいずれかの位置と合致するまで、駆動履歴情報18を使用せずに、自動制御を行う。」

(キ)「【図7】



(ク)「【図8】



イ 引用発明
上記記載を総合すると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「車両Cが比較的頻繁に駐車する所定地点と自車位置C1との相対距離が、所定距離(例えば、20m)以内になると、周辺計測情報17及び駆動履歴情報18からなる走行履歴情報の取得を開始するか否か判断し、登録設定ボタン36が運転者によって入力操作されると、制御部3は登録設定命令を受信し、その地点で取得した周辺計測情報17及び駆動履歴情報18を走行履歴情報記憶部16に登録し、消去ボタン37が入力操作されると、その周辺計測情報17のみを、後述する処理のために走行履歴情報記憶部16に格納するものであって、
自車位置C1、方位、周辺計測情報17を取得し、
画像処理部11は、周辺計測情報17を生成し、生成された周辺計測情報17は、制御部3内のRAMに一時格納され、
登録設定ボタン36が操作されると、RAMに蓄積された各周辺計測情報17及び各駆動履歴情報18を、走行履歴情報記憶部16に格納し、
運転操作がうまくいかなかった場合等に消去ボタン37が操作されると、RAMに格納された周辺計測情報17のみを走行履歴情報記憶部16に格納し、
車両Cが初期位置S1に接近したと判断すると、自車位置C1及び方位と、周辺計測情報17を逐次取得し、登録された周辺計測情報17及び駆動履歴情報18に基づく目標軌跡45との相対距離等を算出し、現在の自車位置C1及び方位が、目標軌跡45のいずれかの位置と合致するまで、駆動履歴情報18を使用せずに、自動制御を行う駐車支援方法。」

ウ 本願発明1と引用発明の対比・判断
(ア)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
・引用発明の「車両Cが比較的頻繁に駐車する所定地点」は、その機能、作用から、本願発明1の「自車両の駐車目標位置」に相当し、引用発明の「周辺計測情報17」は、本願発明1の「駐車目標位置の周囲状況」に相当する。
・引用発明の「自動制御を行う駐車支援方法」は、車両Cが駐車する位置へ駐車する際に、自車が駐車する位置の周辺計測情報17を登録し、登録された周辺計測情報17を用いて、自動制御をう駐車支援方法であるから、本願発明1の「自車両の駐車目標位置への駐車に際し、前記駐車目標位置の周囲状況を記憶し、記憶された前記周囲状況を用いて自動駐車を実行する駐車支援方法」に相当する。
・引用発明の「画像処理部11は、周辺計測情報17を生成」するステップは、引用文献1の【0034】、【0039】及び【0045】を参照すると、周辺計測情報17が自車に搭載された後方カメラにより検出されるから、本願発明1の「前記自車両に搭載された周囲状況センサにより前記駐車目標位置の周囲状況を検出するステップ」に相当する。
・引用発明の「登録設定ボタン36が操作される」ステップ及び「運転操作がうまくいかなかった場合等に消去ボタン37が操作される」ステップと、本願発明1の「提示した前記周囲状況の全体に対する乗員による適否入力を受付けるステップ」とは、「乗員による適否入力を受付けるステップ」の限りで一致する。
・引用発明の「登録設定ボタン36が操作されると、RAMに蓄積された各周辺計測情報17及び各駆動履歴情報18を、走行履歴情報記憶部16に格納」することと、本願発明1の「前記乗員が適するとした前記適否入力が得られた場合に、提示した前記周囲状況を記憶」することとは、「前記乗員が適するとした前記適否入力が得られた場合に、前記周囲状況を記憶する」という限りで一致する。
・引用発明の「車両Cが初期位置S1に接近したと判断すると、自車位置C1及び方位と、周辺計測情報17を逐次取得し、登録された周辺計測情報17及び駆動履歴情報18に基づく目標軌跡45との相対距離等を算出し、現在の自車位置C1及び方位が、目標軌跡45のいずれかの位置と合致するまで、駆動履歴情報18を使用せずに、自動制御を行う」ステップは、引用文献1の【0058】及び【0061】を参照すると、初期位置S1が車両Cが駐車する位置の周囲であり、車両Cが初期位置S1に通過した場合が、周辺計測情報17が登録された後に、再度、車両Cが駐車する位置の周囲に到達した場合であるから、本願発明1の「前記周囲状況を記憶した後に、前記自車両が再び前記駐車目標位置の周囲に到達した場合に、記憶した前記周囲状況を用いて自動駐車を実行するステップ」に相当する。

したがって、本願発明1と引用発明とは、
<一致点>
「自車両の駐車目標位置への駐車に際し、前記駐車目標位置の周囲状況を記憶し、記憶された前記周囲状況を用いて自動駐車を実行する駐車支援方法において、
前記自車両に搭載された周囲状況センサにより前記駐車目標位置の周囲状況を検出するステップと、
乗員による適否入力を受付けるステップと、
前記乗員が適するとした前記適否入力が得られた場合に、前記周囲状況を記憶するステップと、
前記周囲状況を記憶した後に、前記自車両が再び前記駐車目標位置の周囲に到達した場合に、記憶した前記周囲状況を用いて自動駐車を実行するステップ
とを含む駐車支援方法。」

の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
本願発明1は、「検出した前記周囲状況を提示するステップ」を含み、乗員による適否入力を受付けるステップが「提示した前記周囲状況の全体に対する」のであって、前記乗員が適するとした前記適否入力が得られた場合に、記憶するのが「提示した前記周囲状況」であるのに対して、引用発明は、提示するステップを有していない点。
<相違点2>
本願発明1は、「前記乗員が適さないとした前記適否入力が得られた場合に、提示した前記周囲状況のすべてを記憶しない」のに対して、引用発明は、運転操作がうまくいかなかった場合等に消去ボタン37が操作されると、RAMに格納された周辺計測情報17のみを走行履歴情報記憶部16に格納する点。

(イ)当審の判断
事案に鑑みて、まず相違点2について検討する。
引用発明の「周辺計測情報17」は、本願発明1の「周囲状況」に相当するから、引用発明は、消去ボタン37が操作された場合にも「周辺計測情報17」が格納されるものであるところ、引用発明において、消去ボタン37が操作された場合に「周辺計測情報17」を格納しないようにする動機付けは、引用文献1には、記載も示唆もされていない。
また、引用文献2は、「駐車支援装置」に関して記載されているが、車両の周囲の障害物認識して駐車支援するものであるから、相違点2に係る本願発明1の発明特定事項に関して記載も示唆もない。
そして、本願発明1は、「前記乗員が適さないとした前記適否入力が得られた場合に、提示した前記周囲状況のすべてを記憶しない」ことにより、「自動駐車の際に参照するのに適した駐車目標位置の周囲状況を記憶することができる駐車支援方法及び駐車支援装置を提供することができる。」(本願明細書【0007】)という効果を奏するものである。
したがって、引用発明において、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。

(ウ)小括
ゆえに、相違点1について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとは、いえない。

(2)本願発明2〜6について
本願発明2〜6は、本願発明1の発明特定事項を全て有し、さらに限定を加えた発明であるから、上記(1)で検討したのと同様の理由により、本願発明2〜6は、引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(3)本願発明7について
本願発明7は、本願発明1に係る方法を実行する装置に係る発明であって、本願発明7は、実質的に、本願発明1の発明特定事項を全て有する発明であるから、上記(1)で検討したのと同様の理由により、本願発明7は、引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

第3 まとめ
以上のとおり、拒絶査定の理由によっては本願を拒絶することはできない。
また他に拒絶の理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-06-28 
出願番号 P2018-544646
審決分類 P 1 8・ 121- WYF (B60W)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 水野 治彦
特許庁審判官 佐々木 正章
山本 信平
発明の名称 駐車支援方法及び駐車支援装置  
代理人 小林 龍  
代理人 森 哲也  
代理人 田中 秀▲てつ▼  
代理人 小林 龍  
代理人 森 哲也  
代理人 田中 秀▲てつ▼  

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