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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1388038
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-08-04 
確定日 2022-08-04 
事件の表示 特願2018−37905「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔令和1年9月12日出願公開、特開2019−150330〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成30年3月2日の出願であって、令和2年6月12日付けで拒絶の理由が通知され、同年8月21日に意見書及び手続補正書が提出され、同年11月24日付けで更に拒絶の理由(最後)が通知され、令和3年2月5日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年4月27日付けで、同年2月5日付け手続補正書でした補正が却下されるとともに拒絶査定がされた。これに対し同年8月4日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出され、これに対して、令和4年1月26日付けで当審において拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年3月31日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和4年3月31日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである(A〜Iは、本願発明を分説するため当審で付与した。下線は当該手続補正書より補正された補正箇所を示す。)。

(本願発明)
「【請求項1】
A 遊技価値を用いて遊技を行うことが可能な遊技機において、
B 遊技の進行を制御する主制御部と、
C 前記主制御部の制御に基づき制御を行う第1基板及び第2基板と、
D 前記第1基板の前面側に配置された第1部材と、
E 前記第2基板の前面側に配置され、前記第1部材よりも光透過度が低い第2部材と、
F 前記第1基板と前記第2基板とのそれぞれに配置され、前記主制御部の制御に基づき発光制御され、前記主制御部の制御に関する情報を表示する複数の7セグLEDと、を備え、
G 前記複数の7セグLEDのうちの前記第1基板に配置された7セグLEDは、明るさで分類された全てのランクのうちの、明るさが最低のランクよりも明るい第1の明るさ以上のランクが準備されて組付けられており、
H 前記複数の7セグLEDのうちの前記第2基板に配置された7セグLEDは、明るさで分類された全てのランクのうちの、前記第1の明るさよりも明るい第2の明るさ以上のランクが準備されて組付けられている、
I ことを特徴とする遊技機。」

3 拒絶の理由の概要
当審拒絶理由の概要は、以下のとおりである。

理由1(進歩性
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

理由2(サポート要件)
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

●理由1(進歩性)について
・請求項1−4
・引用文献1−2

●理由2(サポート要件)について
・請求項1−4

引用文献1:特開2018−833号公報
引用文献2:特開2008−183172号公報

4 引用文献に記載された事項
(1) 引用文献1
当審拒絶理由の理由1(進歩性)に引用され、本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった上記引用文献1には、「遊技機」の発明に関し、図面と共に以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同様。)。

ア 「【0007】
前記課題を解決するために、手段1の遊技機は、
遊技領域(例えば、遊技領域10)に遊技媒体(例えば、遊技球P)を発射することにより遊技を行う遊技機(例えば、パチンコ遊技機1、パチンコ遊技機901)であって、
遊技を制御する主基板(例えば、主基板11、主基板9011)と、
遊技媒体が通過することによって賞球が払い出される所定払出領域(例えば、第2始動入賞口となる普通可変入賞球装置906B、大入賞口となる特別可変入賞球装置907、第1始動入賞口となる普通入賞球装置906A、一般入賞領域となる一般入賞口9050A〜9050D)と、
遊技媒体の前記所定払出領域への通過によって払い出される賞球に関する所定賞球情報(例えば、役連、役比)を表示可能な賞球情報表示手段(例えば、表示モニタ9029)と、
盤面板(例えば、盤面板200)と、
前記遊技領域を囲むように前記盤面板に取付けられ、遊技媒体を案内するレール部材(例えば、内レール501/第1外レール502/第2外レール503等)と、を備え、
前記レール部材は、
前記盤面板に固定される固定部(例えば、固定部504T,504U)と、
前記盤面板に固定されない部位であって可撓性を有する非固定部(例えば、非固定部505A〜505C)と、を備えてなり、
前記非固定部は、当接部(例えば、突部507A〜507F/立壁部513)を有し、
前記盤面板側には、前記当接部が当接可能な被当接部(例えば、凹部207A〜207F)が設けられ、
前記レール部材を前記盤面板に取付けた状態において、前記当接部と前記被当接部との間に空隙が形成され(例えば、突部507A〜507Fが凹部207A〜207F内に挿入された際には、突部507A〜507Fの周囲に空隙Sが形成される。/立壁部513と第3誘導部材ユニット302との間に空隙(離間寸法L5)が形成される。図11、図12、図13参照)、
前記賞球情報表示手段は、前記所定賞球情報への視認性を妨げられないように、前記主基板上に設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、遊技媒体がレール部材に衝突したときに、非固定部が撓むことにより衝撃が吸収されることでレール部材の破損を抑制できるとともに、当接部が被当接部に当接することにより非固定部が大きく位置ずれすることが防止されるため、遊技媒体を安定して案内することができる。また、どのような調整を加えられたかを認識できる。」

イ 「【0224】
以下、図面を参照しつつ、遊技機の一実施形態を詳細に説明する。図14は、この実施の形態におけるパチンコ遊技機の正面図であり、主要部材の配置レイアウトを示す。パチンコ遊技機(遊技機)901は、大別して、遊技盤面を構成する遊技盤(ゲージ盤)902と、遊技盤902を支持固定する遊技機用枠(台枠)903とから構成されている。また、パチンコ遊技機901は、遊技機用枠903に開閉可能に設けられている額縁状に形成されたガラス扉枠903aを有する。
【0225】
遊技盤902には、ガイドレールによって囲まれた、ほぼ円形状の遊技領域9010が形成されている。この遊技領域9010には、遊技媒体としての遊技球が、所定の打球発射装置から発射されて打ち込まれる。また、遊技領域9010は、左遊技領域9010Aと右遊技領域9010Bからなる。遊技領域9010は、遊技盤902において遊技球が通過可能な領域であり、遊技領域9010の中央を基準として、左側が左遊技領域9010A、右側が右遊技領域9010Bとなっている。
【0226】
遊技盤902の所定位置(図14に示す例では、遊技領域9010の右側方)には、第1特別図柄表示装置904Aと、第2特別図柄表示装置904Bとが設けられている。第1特別図柄表示装置904Aと第2特別図柄表示装置904Bはそれぞれ、例えば7セグメントやドットマトリクスのLED(発光ダイオード)等から構成され、可変表示ゲームの一例となる特図ゲームにおいて、各々が識別可能な複数種類の識別情報(特別識別情報)である特別図柄(「特図」ともいう)を、変動可能に表示(可変表示)する。例えば、第1特別図柄表示装置904Aと第2特別図柄表示装置904Bはそれぞれ、「0」〜「9」を示す数字や「−」を示す記号等から構成される複数種類の特別図柄を可変表示する。なお、第1特別図柄表示装置904Aや第2特別図柄表示装置904Bにて表示される特別図柄は、「0」〜「9」を示す数字や「−」を示す記号等から構成されるものに限定されない。以下では、第1特別図柄表示装置904Aにより可変表示される特別図柄を「第1特図」ともいい、第2特別図柄表示装置904Bにより可変表示される特別図柄を「第2特図」ともいう。なお、特別図柄表示装置は1つであってもよい。」

ウ 「【0290】
パチンコ遊技機901には、例えば図15に示すような主基板9011、演出制御基板9012、音声制御基板9013、音声ランプ制御基板9014といった、各種の制御基板が搭載されている。また、パチンコ遊技機901には、主基板9011と演出制御基板9012との間で伝送される各種の制御信号を中継するための中継基板15なども搭載されている。その他にも、パチンコ遊技機901における遊技盤902などの背面には、例えば払出制御基板、情報端子基板、発射制御基板、インタフェース基板などといった、各種の基板が配置されている。払出制御基板は、賞球の払出を制御する基板であり、払出制御用マイクロコンピュータが搭載されている。払出制御基板は、賞球個数を示すデータが設定された賞球個数コマンドの受信(主基板9011から制御信号として伝送される。)に応じて、球払出装置(図示せず)などから構成される払出機構(賞球を払い出す機構)を駆動して、賞球の払い出しを実行する。
【0291】
主基板9011は、メイン側の制御基板であり、パチンコ遊技機901における遊技の進行を制御するための各種回路が搭載されている。主基板9011は、主として、特図ゲームにおいて用いる乱数の設定機能、所定位置に配設されたスイッチ等からの信号の入力を行う機能、演出制御基板9012などからなるサブ側の制御基板に宛てて、指令情報の一例となる制御コマンドを制御信号として出力して送信する機能、ホールの管理コンピュータに対して各種情報を出力する機能などを備えている。また、主基板9011は、第1特別図柄表示装置904Aと第2特別図柄表示装置904Bを構成する各LED(例えばセグメントLED)などの点灯/消灯制御を行って第1特図や第2特図の可変表示を制御することや、普通図柄表示器9020の点灯/消灯/発色制御などを行って普通図柄表示器9020による普通図柄の可変表示を制御することといった、所定の表示図柄の可変表示を制御する機能も備えている。主基板9011には、例えば遊技制御用マイクロコンピュータ90100や、遊技球検出用の各種スイッチからの検出信号を取り込んで遊技制御用マイクロコンピュータ90100に伝送するスイッチ回路90110、遊技制御用マイクロコンピュータ90100からのソレノイド駆動信号をソレノイド9027、9028に伝送するソレノイド回路90111などが搭載されている。」

エ 「【0301】
主基板9011に搭載された遊技制御用マイクロコンピュータ90100は、例えば1チップのマイクロコンピュータであり、遊技制御用のプログラムや固定データ等を記憶するROM(Read Only Memory)90101と、遊技制御用のワークエリアを提供するRAM(Random Access Memory)90102と、遊技制御用のプログラムを実行して制御動作を行うCPU(Central Processing Unit)90103と、CPU90103とは独立して乱数値を示す数値データの更新を行う乱数回路90104と、I/O(Input/Output port)90105とを備えて構成される。一例として、遊技制御用マイクロコンピュータ90100では、CPU90103がROM90101から読み出したプログラムを実行することにより、パチンコ遊技機901における遊技の進行を制御するための処理が実行される。このときには、CPU90103がROM90101から固定データを読み出す固定データ読出動作や、CPU90103がRAM90102に各種の変動データを書き込んで一時記憶させる変動データ書込動作、CPU90103がRAM90102に一時記憶されている各種の変動データを読み出す変動データ読出動作、CPU90103がI/O90105を介して遊技制御用マイクロコンピュータ90100の外部から各種信号の入力を受け付ける受信動作、CPU90103がI/O90105を介して遊技制御用マイクロコンピュータ90100の外部へと各種信号を出力する送信動作なども行われる。」

オ 「【0934】
図62に示す主基板9011は、遊技に関する制御を行う基板である。主基板9011は、図64に示すように基板ケース90201に封入されており、図64(A)に示すように、主基板9011の中央には表示モニタ9029(例えば、7セグメント)が配置されている。表示モニタ9029は、主基板9011を視認する際の正面に配置されている。主基板9011は、ガラス扉枠903aを開放していない状態では視認できないので、主基板9011を視認する際の正面とは、ガラス扉枠903aを開放した状態における遊技盤902の裏面側を視認する際の正面であり、遊技機901の正面とは異なる。ただし、主基板9011を視認する際の正面と遊技機901の正面とが共通するようにしてもよい。」

カ 「【0947】
また、基板ケース90201は、透光性を有する材質で形成されており、主基板9011、及び表示モニタ9029が視認可能になっている。基板ケース90201には主基板9011に接続される配線コネクタが挿通する図示しない孔部と、主基板9011の電気部品の熱を放出するための放熱孔とが形成されている。主基板9011に設けられた表示モニタ9029は、放熱孔が真正面にはない位置に配置されている。このため放熱孔によって表示モニタ9029の視認性が遮られないようにされている。なお、ここでの「真正面」とは、主基板9011を視点としての真正面を意味し、主基板9011を視認しようとする従業員等と主基板9011との間を意味する。」

キ 「【0966】
表示モニタ9029は、第1表示部9029A、第2表示部9029B、第3表示部9029C、及び第4表示部9029Dを備えている。第1表示部9029A〜第4表示部9029Dは、いずれも「8」の字を描く7つのセグメントによって構成される7セグメントと、7セグメントの右側方下部に配置されたドットによって構成されている。これらの第1表示部9029A〜第4表示部9029Dは、それぞれ種々の色、例えば赤色、青色、緑色、黄色、白色等で点灯、点滅可能とされている。また、これらの色を極短周期で変化させながら異なる色やいわゆるレインボーで表示させることもできる。
【0967】
表示モニタ9029には、図64(B)に示す表示No1〜4の各項目が表示される。上位2桁の第1表示部9029A及び第2表示部9029Bには集計期間が表示され、下位2桁の第3表示部9029C及び第4表示部9029Dには、数値が百分率で表示される。表示No1では、短期の役連が表示され、表示No2では、短期の役比が表示される。表示No3では、総累計の役連が表示され、表示No2では、総累計の役比が表示される。」

ク 図64より、「表示モニタ9029の、第1表示部9029A、第2表示部9029B、第3表示部9029C及び第4表示部9029Dは、隣接して横一列に整列して複数桁を形成する」ことが看取される。

【図64】




そして、上記記載事項ア〜キに記載された事項及び図面に記載された事項クを総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(a〜iは、本願発明のA〜Iに概ね対応させて当審にて付与し、引用箇所の段落番号等を併記した。)。

(引用発明)
「a 遊技領域に遊技球Pを発射することにより遊技を行うパチンコ遊技機901であって(【0007】)、

b 主基板9011に搭載された遊技制御用マイクロコンピュータ90100では、CPU90103がROM90101から読み出したプログラムを実行することにより、パチンコ遊技機901における遊技の進行を制御するための処理が実行され(【0301】)、

c パチンコ遊技機901には、主基板9011が搭載され【0290】、
主基板9011は、特図ゲームにおいて用いる乱数の設定機能、所定位置に配設されたスイッチ等からの信号の入力を行う機能、演出制御基板9012などからなるサブ側の制御基板に宛てて、指令情報の一例となる制御コマンドを制御信号として出力して送信する機能、ホールの管理コンピュータに対して各種情報を出力する機能などを備え、また、第1特別図柄表示装置904Aと第2特別図柄表示装置904Bを構成する各LED(セグメントLED)などの点灯/消灯制御を行って第1特図や第2特図の可変表示を制御することや、普通図柄表示器9020の点灯/消灯/発色制御などを行って普通図柄表示器9020による普通図柄の可変表示を制御することといった、所定の表示図柄の可変表示を制御する機能も備え(【0291】)、

d 主基板9011の中央には表示モニタ9029(7セグメント)が配置され(【0934】)、
主基板9011は基板ケース90201に封入されており(【0934】)、
基板ケース90201は、透光性を有する材質で形成されており、主基板9011及び表示モニタ9029が視認可能になっており(【0947】)、

f 表示モニタ9029は、主基板9011を視認する際の正面に配置され(【0934】)、
主基板9011を視認する際の正面と遊技機901の正面とが共通するようにしてもよく(【0934】)、
表示モニタ9029は、第1表示部9029A、第2表示部9029B、第3表示部9029C、及び第4表示部9029Dを備え、第1表示部9029A〜第4表示部9029Dは、いずれも「8」の字を描く7つのセグメントによって構成される7セグメントと、7セグメントの右側方下部に配置されたドットによって構成され(【0966】)、
表示モニタ9029の、第1表示部9029A、第2表示部9029B、第3表示部9029C及び第4表示部9029Dは、隣接して横一列に整列して複数桁を形成し(図64)、
表示モニタ9029には、表示No1〜4の各項目が表示され、表示No1では、短期の役連が表示され、表示No2では、短期の役比が表示され、表示No3では、総累計の役連が表示され、表示No4(当審注:引用文献1の【0967】には「No2」と記載されているが、「No4」の明らかな誤記である)では、総累計の役比が表示され(【0967】)、
上位2桁の第1表示部9029A及び第2表示部9029Bには集計期間が表示され、下位2桁の第3表示部9029C及び第4表示部9029Dには、数値が百分率で表示され(【0967】)、
遊技領域9010の右側方には、第1特別図柄表示装置904Aと、第2特別図柄表示装置904Bとが設けられ、第1特別図柄表示装置904Aと第2特別図柄表示装置904Bはそれぞれ、7セグメントのLED(発光ダイオード)から構成される(【0226】)、

i パチンコ遊技機901(【0007】)。」

(2) 引用文献2
当審拒絶理由に引用され、本願の出願前に日本国内又は外国において頒布された上記引用文献2には、図面と共に以下の事項が記載されている。

ア 「【0039】
図1及び図2において、本実施形態に係るパチンコ遊技機1は、島(図示しない)に設置される外枠2と、該外枠2に開閉自在に軸支され且つ遊技盤4を装着し得る本体枠3と、該本体枠3に開閉自在に軸支され且つ前記遊技盤4に形成されて球が打ち込まれる遊技領域255(図7参照)を遊技者が視認し得る透明板であるガラス板60を具備したガラスユニット50と、該ガラスユニット50の下方に配置され且つ遊技の結果によって払出される球を貯留する貯留皿30とを備えた扉枠5と、を備えて構成されている。」

イ 「【0263】
[2.遊技領域内の各種構成部材]
次に、上述した遊技盤4の各種構成部材について説明する。図115は遊技盤の正面図である。なお、遊技領域255内に打ち込まれた球(以下、「遊技球」と記載する。)が落下するとき、遊技球を弾いて遊技球の進行方向を複雑にする複数の障害釘は、図面の見やすさの関係上、図示を省略した。
【0264】
遊技盤4の遊技領域255には、図115に示すように、センター役物装置1200、入賞口ユニット1210及び装飾ユニット1220が設けられている。また遊技盤4の飾り枠251には、機能表示ユニット1225が取り付けられている。センター役物装置1200は遊技領域255の中央上寄りに配置されている。これにより、センター役物装置1200の上方及び右方及にはアウト口誘導通路1200aが形成され、遊技領域255内に発射された遊技球がアウト口誘導通路1200aに進入すると、アウト口誘導通路1200aに沿って落下して後述するアウト口に誘導されるようになっている。センター役物装置1200の下方には入賞口ユニット1210が配置されている。装飾ユニット1220はセンター役物装置1200の左下方(入賞口ユニット1210の左方)に配置されている。機能表示ユニット1225は飾り枠251の右下側に配置されている。まず、センター役物装置1200について説明し、続けて入賞口ユニット1210、装飾ユニット1220、各種表示器及び各種ランプについて説明する。」

ウ 「【0280】
機能表示ユニット1225は、図116に示すように、機能表示基板1225a、カバー部材1225bを備えて構成されている。まず、機能表示基板1225aの構成について説明し、続けてカバー部材1225bの遊技盤4への取り付けについて説明する。
【0281】
[3−1.機能表示基板の構成]
機能表示基板1225aは、図116に示すように、セグメント表示器SEG1,SEG2、LED1〜LED12を備えて構成されている。本実施形態では、セグメント表示器SEG1には上特別図柄表示器1480が割り当てられ、セグメントSEG2には下特別図柄表示器1490が割り当てられている。セグメント表示器SEG1,SEG2は、英数字及び図形等を表示することができるようになっており、これらの英数字及び図形等を特別図柄として表示することによって、上述した、上始動入賞口1330に遊技球が入球すると、セグメント表示器SEG1が所定の特別図柄を変動表示し、下始動入賞口1340に遊技球が入球すると、セグメント表示器SEG2が所定の特別図柄を変動表示するようになっている。」

エ 「【0290】
[3−2.カバー部材の遊技盤への取り付け]
機能表示基板1225aは、カバー部材1225bに図示しないネジで固定され、カバー部材1225bが遊技盤4の飾り枠251の裏面から図示しないネジで取り付けられるようになっている。飾り枠251には、機能表示基板1225aのセグメントSEG1,SEG2に対応する位置にセグメント表示器用開口251aが形成されており、これらのセグメント表示器SEG1,SEG2が表示する内容を視認できるようになっている。
【0291】
また飾り枠251には、機能表示基板1225aのLED1〜LED12に対応する位置にLED用挿通孔251bがそれぞれ設けられており、カバー部材1225bを飾り枠251の裏面に取り付ける際に、LED1〜LED12が遊技盤4と干渉しないようになっている。これらのLED用挿通孔251bは、LED1〜LED12の点灯又は点滅した光が隣接するLEDの点灯又は点滅した光と誤認されないように円筒状に形成されている。なお、セグメント表示器SEG1,SEG2が表示する内容、LED1〜LED12が点灯又は点滅して表示する内容は、後述する機能表示シール1595Aに印刷されている。飾り枠251には、機能表示シール1595Aを貼り付ける機能表示シール貼付部251cが形成されている。なお、機能表示シール貼付部251cには凹部251dが形成されている。この凹部251dにマイナスドライバ等の工具を挿入して貼り付けた機能表示シール1595Aをはがしやすくしている。ここで、機能表示シール1595Aをはがしやすくするために機能表示シール1595Aに突出部を設けることも考えられるが、扉枠5を本体枠3から開閉する際に、その突出部が何らかの原因によって引っ張られて機能表示シール1595Aが機能表示シール貼付部251cからはがれるおそれがある。そこで本実施形態では、機能表示シール貼付部251cに凹部251dを形成することによって、扉枠5を本体枠3から開閉する際に、機能表示シール1595Aが機能表示シール貼付部251cからはがれないようにしている。
【0292】
[4.機能表示シール]
次に、機能表示シール1595Aについて説明する。図117は機能表示シールの概略図であり、図118は遊技窓を介して機能表示シールを見た部分図である。機能表示シール1595Aは、図117に示すように、その表面に機能表示ごとにグループGrp1〜Grp3にグループ化等されて印刷されており、遊技盤4の非遊技領域である飾り枠251に形成された機能表示シール貼付部251cに貼り付けられている。
【0293】
グループGrp1は、図117に示すように、上特別図柄表示器1480、上特別図柄記憶ランプ1500a,1500bから構成されており、これらの上特別図柄表示器1480、上特別図柄記憶ランプ1500a,1500bを視認できる実線SL1で囲まれた状態で区画されて機能表示シール1595Aに印刷されている。実線SL1で囲まれた領域は、上特別図柄表示器1480による表示や上特別図柄記憶ランプ1500a,1500bによる点灯又は点滅を視認できるように、上特別図柄表示器1480、上特別図柄記憶ランプ1500a,1500bと対応する位置が透明となっている。グループGrp1では、上述した上始動入賞口1330への遊技球の入球による特別図柄の変動表示に関する各種情報を表示する。例えば、上述したように、上始動入賞口1330に遊技球が入球すると、上特別図柄表示器1480が所定の特別図柄を変動表示したり、入球した遊技球の球数を保留数として上特別図柄記憶ランプ1500a,1500bが点灯又は点滅したりする。このように、上特別図柄表示器1480、上特別図柄記憶ランプ1500a,1500bを1つのグループGrp1にグループ化することによって、これらの上特別図柄表示器1480、上特別図柄記憶ランプ1500a,1500bが上始動入賞口1330への遊技球の入球による特別図柄の変動表示に関する各種情報を示していることを遊技者に伝えることができる。これにより、遊技者は、実線SL1で囲まれた状態で区画されて機能表示シール1595Aに印刷されたグループGrp1を目視することによって上始動入賞口1330への遊技球の入球による特別図柄の変動表示に関する各種情報を容易に確認することができる。
【0294】
グループGrp2は、図117に示すように、下特別図柄表示器1490、下特別図柄記憶ランプ1510a,1510bから構成されており、これらの下特別図柄表示器1490、下特別図柄記憶ランプ1510a,1510bを視認できる実線SL2で囲まれた状態で区画されて機能表示シール1595Aに印刷されている。実線SL2で囲まれた領域は、下特別図柄表示器1490による表示や下特別図柄記憶ランプ1510a,1510bによる点灯又は点滅を視認できるように、下特別図柄表示器1490、下特別図柄記憶ランプ1510a,1510bと対応する位置が透明となっている。グループGrp2では、上述した下始動入賞口1340への遊技球の入球による特別図柄の変動表示に関する各種情報を表示する。例えば、上述したように、下始動入賞口1340に遊技球が入球すると、下特別図柄表示器1490が所定の特別図柄を変動表示したり、入球した遊技球の球数を保留数として下特別図柄記憶ランプ1510a,1510bが点灯又は点滅したりする。このように、下特別図柄表示器1490、下特別図柄記憶ランプ1510a,1510bを1つのグループGrp2にグループ化することによって、これらの下特別図柄表示器1490、下特別図柄記憶ランプ1510a,1510bが下始動入賞口1340への遊技球の入球による特別図柄の変動表示に関する各種情報を示していることを遊技者に伝えることができる。これにより、遊技者は、実線SL2で囲まれた状態で区画されて機能表示シール1595Aに印刷されたグループGrp2を目視することによって下始動入賞口1340への遊技球の入球による特別図柄の変動表示に関する各種情報を容易に確認することができる。
・・・
【0298】
このように、機能表示シール1595Aは、図116に示した機能表示基板1225aに集約して実装された、セグメント表示器SEG1,SEG2、LED1〜LED12の機能がグループGrp1〜Grp3等のようにグループ化されてその内容が印刷されており、区画されている。また普通図柄表示器1520等には星印が印刷されており、セグメント表示器SEG1,SEG2、LED1〜LED12が表示する内容が、機能表示シール1595Aに集約して印刷されても、それらの意味を容易に理解することができるようになっている。
・・・
【0301】
ここで、近年のパチンコ遊技機は、そのライフサイクルの短縮化にともないパチンコ遊技機の開発期間も短くなってきている。このため、本実施形態では、例えば、大入賞口1400が閉鎖状態から開放状態となる回数(ラウンド)が2回、15回である旨を点灯して報知する2ラウンド表示ランプ、15ラウンド表示ランプに加えて、ラウンド数が5回、8回である旨を点灯して報知する5ラウンド表示ランプや8ラウンド表示ランプを追加する場合、始動入賞口の数を2つから1つに減らす場合等によるパチンコ遊技機の仕様変更には、共通の機能表示基板1225aを使用することで対応することができるようになっている。このようなパチンコ遊技機の仕様変更にともない機能表示シールに印刷する内容も変更するため、上述した、セグメント表示器SEG1,SEG2、LED1〜LED12の機能と、機能表示シールに印刷された内容と、の対応関係を、シール管理番号として機能表示シールに印刷している。これにより、例えばパチンコ遊技機の製造元では、ラインの作業者が遊技盤に機能表示シールを貼り付ける前に、パチンコ遊技機の仕様と機能表示シールとが対応しているか否かを、シール管理番号を目視することによって確認することができ、パチンコ遊技機の仕様に対応しない機能表示シールが貼り付けられるのを防止することができる。なお、機能表示シールはシールであり、接着剤などを機能表示シールの裏面等に塗る作業工程がなく、生産性の向上に寄与している。」

オ 図116より、「セグメント表示器SEG1,SEG2は7セグメントの表示器である」ことが看取される。

【図116】




そして、上記記載事項ア〜エに記載された事項及び図面に記載された事項オを総合すると、引用文献2には、次の事項(以下「引用文献2記載の事項」という。)が記載されていると認められる(括弧内に示された段落番号は、引用文献2における引用箇所を示す。)。

(引用文献2記載の事項)
「遊技盤4の飾り枠251には、機能表示ユニット1225が取り付けられ(【0264】)、
機能表示ユニット1225は、機能表示基板1225aを備えて構成され(【0280】)、
機能表示基板1225aは、セグメント表示器SEG1,SEG2を備えて構成され、セグメント表示器SEG1には上特別図柄表示器1480が割り当てられ、セグメントSEG2には下特別図柄表示器1490が割り当てられ、上始動入賞口1330に遊技球が入球すると、セグメント表示器SEG1が所定の特別図柄を変動表示し、下始動入賞口1340に遊技球が入球すると、セグメント表示器SEG2が所定の特別図柄を変動表示するようになっており(【0281】)、
セグメント表示器SEG1,SEG2は7セグメントの表示器であり(図116)、
機能表示基板1225aは、カバー部材1225bに固定され、カバー部材1225bが遊技盤4の飾り枠251の裏面から取り付けられるようになっており、飾り枠251には、機能表示基板1225aのセグメントSEG1,SEG2に対応する位置にセグメント表示器用開口251aが形成され、これらのセグメント表示器SEG1,SEG2が表示する内容を視認できるようになっており(【0290】)、
機能表示シール1595Aは、その表面に機能表示ごとにグループGrp1〜Grp3にグループ化等されて印刷されており、遊技盤4の非遊技領域である飾り枠251に形成された機能表示シール貼付部251cに貼り付けられ(【0292】)、
グループGrp1は、上特別図柄表示器1480から構成されており、上特別図柄表示器1480を視認できる実線SL1で囲まれた状態で区画されて機能表示シール1595Aに印刷され、実線SL1で囲まれた領域は、上特別図柄表示器1480による表示を視認できるように、上特別図柄表示器1480と対応する位置が透明となっており(【0293】)、
遊技者は、実線SL1で囲まれた状態で区画されて機能表示シール1595Aに印刷されたグループGrp1を目視することによって上始動入賞口1330への遊技球の入球による特別図柄の変動表示に関する各種情報を容易に確認することができ(【0293】)、
グループGrp2は、下特別図柄表示器1490から構成されており、下特別図柄表示器1490を視認できる実線SL2で囲まれた状態で区画されて機能表示シール1595Aに印刷され、実線SL2で囲まれた領域は、下特別図柄表示器1490による表示を視認できるように、下特別図柄表示器1490と対応する位置が透明となっており(【0294】)、
遊技者は、実線SL2で囲まれた状態で区画されて機能表示シール1595Aに印刷されたグループGrp2を目視することによって下始動入賞口1340への遊技球の入球による特別図柄の変動表示に関する各種情報を容易に確認することができ(【0294】)、
機能表示基板1225aに集約して実装された、セグメント表示器SEG1,SEG2のようにグループ化されてその内容が印刷されており、セグメント表示器SEG1,SEG2が表示する内容が、機能表示シール1595Aに集約して印刷されても、それらの意味を容易に理解することができるようになっており(【0298】)、
機能表示シール1595Aはシールであり、接着剤などを機能表示シールの裏面等に塗る作業工程がなく、生産性の向上に寄与している(【0301】)、
パチンコ遊技機1(【0039】)。」

5 本願発明と引用発明の対比
本願発明と引用発明とを分説にしたがって対比する。

(1)(構成A)
引用発明の構成aの「遊技領域に遊技球Pを発射することにより遊技を行う」こと、「パチンコ遊技機」は、それぞれ本願発明の構成Aの「遊技価値を用いて遊技を行うこと」、「遊技機」に相当する。
してみると、引用発明の構成aは、本願発明の構成Aに相当するものである。

(2)(構成B)
引用発明の構成bでは「遊技制御用マイクロコンピュータ90100」において「遊技の進行を制御するための処理が実行され」るのだから、引用発明の構成bの「遊技制御用マイクロコンピュータ90100」は本願発明の構成Bの「遊技の進行を制御する主制御部」に相当する。
してみると、引用発明の構成bは、本願発明の構成Bに相当するものである。

(3)(構成C)
引用発明の構成cの「主基板9011」は本願発明の構成Cの「第1基板」に相当する。
また、引用発明の構成cの「主基板9011」(第1基板)は、「特図ゲームにおいて用いる乱数の設定機能、所定位置に配設されたスイッチ等からの信号の入力を行う機能、演出制御基板9012などからなるサブ側の制御基板に宛てて、指令情報の一例となる制御コマンドを制御信号として出力して送信する機能、ホールの管理コンピュータに対して各種情報を出力する機能などを備え、また、第1特別図柄表示器904Aと第2特別図柄表示器9044Bを構成する各LED(セグメントLED)などの点灯/消灯制御を行って第1特図や第2特図の変動表示を制御することや、普通図柄表示器20の点灯/消灯/発色制御などを行って普通図柄表示器20による普通図柄の変動表示を制御することといった、所定の表示図柄の変動表示を制御する機能」(以下、これら機能をまとめて「主基板11の機能」という。)を備えるものであるから、本願発明の構成Cの「制御を行う第1基板」に相当するものといえる。
そして、引用発明の構成bによれば、「遊技制御用マイクロコンピュータ90100」(主制御部)が、「遊技の進行を制御するための処理」を実行するのだから、「主基板9011」(第1基板)の上記「主基板11の機能」の制御が、「遊技制御用マイクロコンピュータ」(主制御部)の「遊技の進行を制御するための処理」(制御)に基づくものであることは明らかである。
してみると、引用発明の構成cと、本願発明の構成Cは、
「前記主制御部の制御に基づき制御を行う第1基板」「を備え」る点で共通する。

(4)(構成D)
ア まず、本願発明の「前面側」について、発明の詳細な説明を参照すると、以下のとおり記載されている。
「【0117】
また、以上説明した第1及び第2の実施の形態においては、7セグLED(7L)が例えば透明な部材を通して視認できるものを前提として説明したが、これに限らず、LEDの前面側(遊技者側)に透明度の低い部材が配置されていたり、色付きのレンズ等が配置されていたりするものであってもよく、・・・」
そうすると、本願発明の「前面側」とは、「遊技者側」のことを指しているものと一応いうことができる。
一方、引用発明の構成dの「基板ケース90201」は「主基板9011」(第1基板)を「封入」しているのだから、「基板ケース90201」の一部は「主基板9011」(第1基板)の遊技者側である前面側にも位置することとなるのは明らかであり、引用発明の構成dの「基板ケース90201」は本願発明の「前面側に配置された」「第1部材」に相当する。

イ 仮に、本願発明の「前面側」が、「LEDの前面側」であってかつ「遊技者側」のことを指しているとしても、引用発明の「表示モニタ9029」(複数の7セグLED)「は、主基板9011を視認する際の正面に配置され、」「主基板9011を視認する際の正面と遊技機901の正面とが共通する」(引用発明の構成f参照)のだから、「表示モニタ9029」(複数の7セグLED)が「配置され」る「遊技機901の正面とが共通」する「主基板9011を視認する際の正面」は、「LEDの前面側」であってかつ「遊技者側」であるということができる。
一方、引用発明の構成dの「基板ケース90201」は「主基板9011」(第1基板)を「封入」しているのだから、「基板ケース」の一部は「主基板9011」(第1基板)の「LEDの前面側」であってかつ「遊技者側」である前面側にも位置することとなるのは明らかであり、引用発明の構成dの「基板ケース」は本願発明の「前面側に配置された」「第1部材」に相当する。

ウ してみると、引用発明の構成d及びfは、本願発明の構成Dに相当するものである。

(5)(構成F)
引用発明の構成fの「「8」の字を描く7つのセグメントによって構成される」「第1表示部9029A、第2表示部9029B、第3表示部9029C、及び第4表示部9029Dを備え」た「表示モニタ9029」は、本願発明の構成Fの「複数の7セグLED」に相当する。
また、引用発明の構成dの「主基板の中央には表示モニタ9029が配置され」との事項から、引用発明の構成fの「第1表示部9029A、第2表示部9029B、第3表示部9029C、及び第4表示部9029Dを備え」た「表示モニタ9029」(複数の7セグLED)は「主基板」(第1基板)に「配置され」ているものということができる。
また、引用発明の「第1表示部9029A、第2表示部9029B、第3表示部9029C、及び第4表示部9029Dを備え」た「表示モニタ9029」(複数の7セグLED)には、「表示No1〜4の各項目が表示され、表示No1では、短期の役連が表示され、表示No2では、短期の役比が表示され、表示No3では、総累計の役連が表示され、表示No4では、総累計の役比が表示され、
上位2桁の第1表示部9029A及び第2表示部9029Bには集計期間が表示され、下位2桁の第3表示部9029C及び第4表示部9029Dには、数値が百分率で表示され」るのだから、「表示モニタ9029」(複数の7セグLED)には、「パチンコ遊技機における遊技の進行」が集計されて表示されているということができ、「遊技の進行を制御するための処理」を実行する「遊技制御用マイクロコンピュータ」(主制御部)の「制御に関する情報を表示」しているものといえる。
してみると、引用発明の構成d及びfは、本願発明の構成Fと、
「前記第1基板に配置され、前記主制御部の制御に基づき発光制御され、前記主制御部の制御に関する情報を表示する複数の7セグLEDと、を備え」る点で共通する。

(6)(構成I)
引用発明の「パチンコ遊技機」が本願発明の「遊技機」に相当することは、上記(1)にて説示のとおりである。
してみると、引用発明の構成iは、本願発明の構成Iに相当するものである。

そうすると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
(一致点)
A 遊技価値を用いて遊技を行うことが可能な遊技機において、
B 遊技の進行を制御する主制御部と、
C′前記主制御部の制御に基づき制御を行う第1基板と、
D 前記第1基板の前面側に配置された第1部材と、
F′前記第1基板に配置され、前記主制御部の制御に基づき発光制御され、前記主制御部の制御に関する情報を表示する複数の7セグLEDと、を備える、
I 遊技機。」

(相違点1)(構成G)
本願発明では、「前記複数の7セグLEDのうちの前記第1基板に配置された7セグLEDは、明るさで分類された全てのランクのうちの、明るさが最低のランクよりも明るい第1の明るさ以上のランクが準備されて組付けられて」いるのに対し、引用発明の「第1表示部9029A、第2表示部9029B、第3表示部9029C、及び第4表示部9029Dを備え」た「表示モニタ9029」(複数の7セグLED)はそのようなランクのものが準備されて組付けられたものであるか不明である点。

(相違点2)(構成C、E、F、H)
本願発明は、
「主制御部の制御に基づき制御を行う」「第2基板と」(構成C)、
「前記第2基板の前面側に配置され、前記第1部材よりも光透過度が低い第2部材と」(構成E)、
「前記第2基板」「に配置され、前記主制御部の制御に基づき発光制御され、前記主制御部の制御に関する情報を表示する複数の7セグLEDと、を備え」(構成F)、
「前記複数の7セグLEDのうちの前記第2基板に配置された7セグLEDは、明るさで分類された全てのランクのうちの、前記第1の明るさよりも明るい第2の明るさ以上のランクが準備されて組付けられている」(構成H)のに対し、引用発明はこれらの構成を有するかどうか不明である点。

6 相違点の検討
上記相違点について検討する。
(1) 相違点1について
ア 請求項1における構成Gの「前記複数の7セグLEDのうちの前記第1基板に配置された7セグLEDは、明るさで分類された全てのランクのうちの、明るさが最低のランクよりも明るい第1の明るさ以上のランクが準備されて組付けられており」との記載については、「準備されて組み付けられ」るという製造工程を含んでいることから、請求項1に係る発明は、製造方法によって生産物を特定しようとする記載を含むものということができる。

そして、構成Gの上記記載について、令和4年3月31日提出の意見書において審判請求人は以下の主張をしている。
「ところで、今般の補正により限定した事項は、「準備されて組付けられた」という引用文献1及び引用文献2に全く開示されていない事項ではあるが、「物の発明に係る請求項にその物の製造方法が記載されている場合」に該当するような限定が行われたと解される可能性がある。
しかしながら、・・・本願発明の構造を特定する作業とは、例えば何万台にも及ぶような遊技機の全てのLEDについて下位ランクが準備されて取付けられていないことを特定(立証)する作業となり、著しく過大な経済的支出や時間を要する場合に該当するものと思慮する。
従って、本願請求項1に係る発明は、特許法第36条第6項第2号の要件に適合するものと思慮する。」
そうすると、本願発明が、製造方法によって生産物を特定しようとする記載を含むものであることは、審判請求人もまた認めることである。
ここで、本願発明は、「遊技機」という「物」の発明であるが、物の発明において、製造方法によって生産物を特定しようとする記載がある場合、特定の方法によって製造された物のみに限定しようとしていることが明白であっても、生産物自体を意味しているものと解するのが相当である。

イ 上記アの理解に基づいて、相違点1について検討する。
まず、無作為にLEDのサンプルを取った場合における光度の頻度分布が、複数に分けられた各「ランク」ごとに一定の頻度を示すことが、技術常識である(例えば特開平8−185139号公報の図7等を参照)。このことからすれば、引用発明において、何ら「ランク」を考慮することなくLEDを準備して「第1表示部9029A、第2表示部9029B、第3表示部9029C、及び第4表示部9029Dを備え」た「表示モニタ9029」(複数の7セグLED)として実装したとしても、「第1表示部9029A、第2表示部9029B、第3表示部9029C、及び第4表示部9029Dを備え」た「表示モニタ9029」(複数の7セグLED)に「最低のランク」の7セグLEDが含まれない場合がありうることは、当業者にとって明らかなことである。

ウ また、本願の発明の詳細な説明を参照すると、以下のとおり記載されている。
「【0057】
ところで、LEDは、サファイア等の基板に、n型層、発光層、p型層等を例えば蒸着により形成してウェハを構成し、それを数万個のチップとして切断することで製造されるが、このウェハの出来によってLEDの光度にバラツキが生じてしまう。そのため、一般にLEDは、ウェハ毎に光度で分類したランクが付けられる。例えば本パチンコ機100に用いられる7セグLED(7L)は、製造時に、図5に示すように、光度(ミリカンデラ)で分類されるランク(分類記号)が付されている。詳細には、所定電圧(例えば5V)かつ所定電流(10mA)の電力で発光する光度範囲によってランクが設定されており、ランク「L」は5.6〜11[mcd]、ランク「M」は9.0〜18[mcd]、ランク「N」は14〜28[mcd]、ランク「P」は22〜45[mcd]、ランク「Q」は36〜71[mcd]に分類されている。なお、各ランクの光度範囲は、一部範囲が重なっているが、これは製造時のバラツキを考慮して設定される数値であるためで、つまりウェハ毎に付けられるランクにおける光度範囲のバラツキによるものである。
【0058】
また、図6に示すように、7セグLED(7L)について無作為に数万個(例えば3万個)のサンプルを取った場合における光度の頻度分布は、最頻度が約35[mcd]で、概ね10〜45[mcd]に分布する。従って、図5に示すランク「L」の7セグLED(7L)は、全てのランクのうちの頻度として数パーセント以下(例えば頻度1%以下)である。一方で、一般的に9.0[mcd]以上の光度範囲の7セグLED(7L)は、遊技者にとって明るいと感じるだけで、例えば9.0[mcd]の7セグLED(7L)と71[mcd]の7セグLED(7L)との光度の差は、遊技者が一見して見分けできず、これらの7セグLED(7L)が隣接して並設されていたとしても違和感を生じることがない。」

【図5】




【図6】





そうすると、一般に7セグLEDは、製造時に光度でランク「L」、「M」、「N」、「P」、「Q」にランク分類され、無作為に数万個(例えば3万個)のサンプルを取った場合においても、光度の頻度分布は概ね10〜45[mcd]に分布し、最低のランクの7セグLEDは、全てのランクのうちの頻度として数パーセント以下(例えば頻度1%以下)であって、最低のランクを除いた残りの90パーセント超(例えば99%超)が「最低のランクよりも明るい第1の明るさ以上のランク」となることは、審判請求人も認めていることということができる。
してみると、引用発明において、何ら「ランク」を考慮することなくLEDを準備して「第1表示部9029A、第2表示部9029B、第3表示部9029C、及び第4表示部9029Dを備え」た「表示モニタ9029」(複数の7セグLED)として実装したとしても、7セグLEDの90パーセント超が「最低のランクよりも明るい第1の明るさ以上のランク」なのだから、「第1表示部9029A、第2表示部9029B、第3表示部9029C、及び第4表示部9029Dを備え」た「表示モニタ9029」(複数の7セグLED)に「最低のランク」のLEDが含まれない場合がありうることは、審判請求人のランクに対する理解を踏まえてもやはり当業者にとって明らかなことというべきである。

エ してみれば、引用発明において、「第1表示部9029A、第2表示部9029B、第3表示部9029C、及び第4表示部9029Dを備え」た「表示モニタ9029」(複数の7セグLED)について、明るさで分類された全てのランクのうちの、明るさが最低のランクよりも明るい第1の明るさ以上のランクのものを用い、「複数の7セグLED」を「明るさで分類された全てのランクのうちの、明るさが最低のランクよりも明るい第1の明るさ以上のランクが準備されて組付けられ」た場合のものと結果として同じものとすることは、当業者が容易に想到することである。

(2) 相違点2について
ア 相違点2の検討に当たり、本願発明の
「F 前記第1基板と前記第2基板とのそれぞれに配置され、前記主制御部の制御に基づき発光制御され、前記主制御部の制御に関する情報を表示する複数の7セグLEDと、を備え、
G 前記複数の7セグLEDのうちの前記第1基板に配置された7セグLEDは、明るさで分類された全てのランクのうちの、明るさが最低のランクよりも明るい第1の明るさ以上のランクが準備されて組付けられており、
H 前記複数の7セグLEDのうちの前記第2基板に配置された7セグLEDは、明るさで分類された全てのランクのうちの、前記第1の明るさよりも明るい第2の明るさ以上のランクが準備されて組付けられている、」
との事項については、構成Gの「前記複数の7セグLEDのうちの前記第1基板に配置された7セグLED」と、同構成Hの「前記複数の7セグLEDのうちの前記第2基板に配置された7セグLED」との記載からみて、「7セグLED」との点で共通していれば同一種の「7セグLED」(例えば同一規格の「7セグLED」)である必要はないといえる。

イ さらに、構成Gの「前記複数の7セグLEDのうちの前記第1基板に配置された7セグLED」と、構成Hの「前記複数の7セグLEDのうちの前記第2基板に配置された7セグLED」は、いずれも同一種の「7セグLED」(例えば同一規格の「7セグLED」)と解するべきなのか、「7セグLED」との点で共通していれば同一の「7セグLED」(例えば同一規格の「7セグLED」)である必要はないと解するべきなのかについて、発明の詳細な説明を参照して検討する。
すると、発明の詳細な説明には、以下のとおり記載されている。
「【0014】
これにより、同一の基板に配置された複数のLEDにおける明るさがある程度の範囲に揃い、見栄えを良好にすることができる。」
「【0106】
2−2.遊技情報表示部について
以上説明した第2の実施の形態に係るスロットマシン1にあっても、図7に示すように、遊技情報表示部DSにおける主制御表示装置500、枚数表示装置501、クレジット表示装置502等に7セグLED(7L)が備えられている。これらの7セグLED(7L)についても、第1の実施の形態と同様に、全てのランクのうちの複数のランクであるランク「M」〜「Q」(所定ランク)の7セグLED(7L)を採用して準備し、主制御表示装置500、枚数表示装置501、クレジット表示装置502として組付ける。これにより、主制御表示装置500、枚数表示装置501、クレジット表示装置502に、全ての光度のランク「L」〜「Q」のうちの、所定のランク「M」〜「Q」が用いられているので、それらLEDにおける光度がある程度の範囲に揃い、見栄えを良好にすることができる。」
「【0116】
また、以上説明した第1及び第2の実施の形態においては、同一の基板(情報表示基板181等)に複数の7セグLEDが配設された場合を説明したが、これに限らず、例えば複数の基板(第1基板と第2基板と)に分かれて複数のLEDが配設されていてもよい。即ち、複数の基板のそれぞれに複数のLEDが配設される場合、複数の基板のそれぞれに1個のLEDが配設される場合、複数のLEDが配設される基板と1個のLEDが配設される基板とがある場合でもよい。また、それぞれの基板にあって、同一の情報を表示してもよいし、複数の基板に跨って同一の情報を表示してもよい。」

また、本願の図7を参照すると、主制御表示装置500の7セグLED(7L)は、枚数表示装置501及びクレジット表示装置502の7セグLED(7L)とは明らかに大きさの異なる7セグLED(7L)であることが看取される。

【図7】




そうすると、本願発明の構成Gの「前記複数の7セグLEDのうちの前記第1基板に配置された7セグLED」と、同構成Hの「前記複数の7セグLEDのうちの前記第2基板に配置された7セグLED」は、発明の詳細な説明を参照しても、「7セグLED」との点で共通していれば同一種の「7セグLED」(例えば同一規格の「7セグLED」)である必要はないと解するのが相当である。

ウ 上記ア及びイの理解に基づいて検討すると、引用発明における「第1特別図柄表示装置904Aと、第2特別図柄表示装置904B」は、「それぞれ、7セグメントのLED(発光ダイオード)から構成され」ていることから、引用発明の「第1表示部9029A、第2表示部9029B、第3表示部9029C、及び第4表示部9029Dを備え」た「表示モニタ9029」(複数の7セグLED)と同一規格の7セグメントのLEDである旨の明示がなくとも、「第1特別図柄表示装置904Aと、第2特別図柄表示装置904B」もまた本願発明の、「複数の7セグLED」に相当する。

そして、引用発明の「第1特別図柄表示装置904Aと、第2特別図柄表示装置904B」は、「特別図柄表示装置」であるのだから、「遊技の進行を制御するための処理」を実行する「遊技制御用マイクロコンピュータ」(主制御部)の「制御に関する情報を表示」していることは技術常識である。

エ 引用文献2記載の事項は、上記「4 引用文献に記載された事項」「(2) 引用文献2」にて示したとおりである。
ここで、引用文献2記載の事項の「セグメント表示器SEG1」及び「セグメント表示器SEG2」は、本願発明の「複数の7セグLED」に相当する。
また、引用文献2記載の事項の「機能表示基板1225a」は、本願発明の「第2基板」に相当するとともに、引用文献2記載の事項の「機能表示基板1225aは、カバー部材1225bに固定され、カバー部材1225bが遊技盤4の飾り枠251の裏面から取り付けられるようになっており、飾り枠251には、機能表示基板1225aのセグメントSEG1,SEG2に対応する位置にセグメント表示器用開口251aが形成され、これらのセグメント表示器SEG1,SEG2が表示する内容を視認できるようになっており」、
「機能表示シール1595Aは、その表面に機能表示ごとにグループGrp1〜Grp3にグループ化されて印刷されており、遊技盤4の非遊技領域である飾り枠251に形成された機能表示シール貼付部251cに貼り付けられ」、
「グループGrp1は、実線SL1で囲まれた状態で区画されて機能表示シール1595Aに印刷され、実線SL1で囲まれた領域は、上特別図柄表示器1480による表示を視認できるように、上特別図柄表示器1480と対応する位置が透明となっており、
遊技者は、実線SL1で囲まれた状態で区画されて機能表示シール1595Aに印刷されたグループGrp1を目視することによって上始動入賞口1330への遊技球の入球による特別図柄の変動表示に関する各種情報を容易に確認することができ、
グループGrp2は、実線SL2で囲まれた状態で区画されて機能表示シール1595Aに印刷され、実線SL2で囲まれた領域は、下特別図柄表示器1490による表示を視認できるように、下特別図柄表示器1490と対応する位置が透明となっており、
遊技者は、実線SL2で囲まれた状態で区画されて機能表示シール1595Aに印刷されたグループGrp2を目視することによって下始動入賞口1340への遊技球の入球による特別図柄の変動表示に関する各種情報を容易に確認することができ」るのだから、「機能表示シール1595A」は、「機能表示基板1225a」の「セグメントSEG1,SEG2」(複数の7セグLED)側の、「遊技者」側にあるということができ、本願発明の「第2基板の前面側に配置され」「る第2部材」に相当する。
そして、引用発明の「第1特別図柄表示装置904Aと、第2特別図柄表示装置904B」(複数の7セグLED)と、引用文献2記載の事項の「セグメントSEG1,SEG2」(複数の7セグLED)とは、「特別図柄」を表示する7セグLEDである点で共通している。また、引用発明の「第1特別図柄表示装置904Aと、第2特別図柄表示装置904B」(複数の7セグLED)は「遊技領域9010の右側方に」設けられたものであることから、遊技者に向けて設けられたものであることが明らかであり、その意味を遊技者に理解できるようにすることは、遊技機における普遍的課題というべきである。
一方、引用文献2記載の事項は「機能表示基板1225aに集約して実装された、セグメント表示器SEG1,SEG2のようにグループ化されてその内容が印刷されており、セグメント表示器SEG1,SEG2が表示する内容が、機能表示シール1595Aに集約して印刷されても、それらの意味を容易に理解することができるようになって」いるのだから、引用発明において当該普遍的課題を解決するために「第1特別図柄表示装置904Aと、第2特別図柄表示装置904B」(複数の7セグLED)の取り付け構造に引用文献2記載の事項の構造を採用することは、当業者が容易に想到することである。

オ ところで、引用発明の構成dの「基板ケース90201」(第1部材)は、「透光性を有する材質で形成され」たものであるが、基板ケースを主制御部を有する基板に対する不正を発見しやすくするために無色透明のケースとすることは技術常識である。
一方、引用文献2記載の事項の「機能表示シール1595Aはシールであり、接着剤などを機能表示シールの裏面等に塗る作業工程がな」いことから、「機能表示シール1595A」(第2部材)裏面には、シールを構成するための粘着層があることが明らかである。そうすると、引用文献2記載の事項の「機能表示シール1595A」(第2部材)の、「上特別図柄表示器1480と対応する位置」の「透明」、及び「下特別図柄表示器1490と対応する位置」の「透明」とは、「機能表示シール1595A」(第2部材)の粘着層を介しての「透明」であるということができる。

してみると、無色透明のケースとすることが技術常識である引用発明の「基板ケース90201」(第1部材)よりも、「シールで」あって裏面に粘着層を備えていることが技術常識である引用文献2記載の事項の「機能表示シール1595A」(第2部材)の方が「光透過度が低い」ことは明らかなことである。

カ そして、無作為にLEDのサンプルを取った場合における光度の頻度分布が、各「ランク」ごとに一定の頻度を示すことが技術常識であることからすれば、引用発明において、何ら「ランク」を考慮することなくLEDを準備して「第1表示部9029A、第2表示部9029B、第3表示部9029C、及び第4表示部9029Dを備え」た「表示モニタ9029」(複数の7セグLED)として実装したとしても、「第1表示部9029A、第2表示部9029B、第3表示部9029C、及び第4表示部9029Dを備え」た「表示モニタ9029」(複数の7セグLED)に「最低のランク」よりも明るい「第1の明るさ以上のランク」が実装される場合がありうることは、当業者にとって明らかなことであり、
また、何ら「ランク」を考慮することなくLEDを準備して引用発明の「第1特別図柄表示装置904Aと、第2特別図柄表示装置904B」(複数の7セグLED)として実装したとしても、「第1特別図柄表示装置904Aと、第2特別図柄表示装置904B」(複数の7セグLED)に「最低のランク」よりも明るい「第1の明るさ」よりも明るい「第2の明るさ以上のランク」が実装される場合がありうることは、当業者にとって明らかなことである。

キ さらに、本願の発明の詳細な説明【0057】〜【0058】、図5〜図6(記載事項については上記「(1) 相違点1について」ウを参照)を参照すると、7セグLED(7L)について無作為に数万個(例えば3万個)のサンプルを取った場合における光度の頻度分布は、最頻度が約35[mcd](ランク「P」)であって、最頻度(約35[mcd])(ランク「P」)は、「明るさで分類された全てのランク」(ランク「L」、「M」、「N」、「P」、「Q」)のうちの、「明るさが最低のランク」(ランク「L」)「よりも明るい第1の明るさ」(例えばランク「M」相当の明るさ)「以上のランク」(ランク「P」)であって、かつ「前記第1の明るさ」(ランク「M」相当の明るさ)「よりも明るい第2の明るさ」(例えばランク「N」相当の明るさ)「以上のランク」(ランク「P」)であるということができる。
してみると、引用発明において、何ら「ランク」を考慮することなくLEDを準備して「第1表示部9029A、第2表示部9029B、第3表示部9029C、及び第4表示部9029Dを備え」た「表示モニタ9029」(複数の7セグLED)を実装し、
何ら「ランク」を考慮することなくLEDを準備して「第1特別図柄表示装置904Aと、第2特別図柄表示装置904B」(複数の7セグLED)を実装したとしても、
「第1表示部9029A、第2表示部9029B、第3表示部9029C、及び第4表示部9029Dを備え」た「表示モニタ9029」(複数の7セグLED)及び「第1特別図柄表示装置904Aと、第2特別図柄表示装置904B」(複数の7セグLED)がともに最頻度の「ランク「P」」となり、「第1表示部9029A、第2表示部9029B、第3表示部9029C、及び第4表示部9029Dを備え」た「表示モニタ9029」(複数の7セグLED)が「明るさが最低のランク」(ランク「L」)「よりも明るい第1の明るさ」(例えばランク「M」相当の明るさ)「以上のランク」(ランク「P」)となり、かつ「第1特別図柄表示装置904Aと、第2特別図柄表示装置904B」(複数の7セグLED)が「前記第1の明るさ」(ランク「M」相当の明るさ)「よりも明るい第2の明るさ」(例えばランク「N」相当の明るさ)「以上のランク」(ランク「P」)となる場合がありうることは、審判請求人のランクに対する理解を踏まえてもやはり当業者にとって明らかなことというべきである。

また、パチンコ機は一定期間パチンコホールで使用され続けるものであるから、使用期間中の劣化により表示装置の表示が見えなくなることを防ぐため、一定以上の明るさで表示される表示装置が用いられることは明らかである。

ク したがって、引用発明の「第1特別図柄表示装置904Aと、第2特別図柄表示装置904B」(複数の7セグLED)の取り付け構造に引用文献2記載の事項の構造を採用し、上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは、技術常識を踏まえれば当業者が容易に想到することである。

ケ ところで、上記オでは、無色透明の基板ケースとすることが技術常識である引用発明の「基板ケース90201」(第1部材)よりも、「シールで」あって裏面に粘着層を備えていることが技術常識である引用文献2記載の事項の「機能表示シール1595A」(第2部材)の方が「光透過度が低い」ことは明らかであるとの説示をした。
仮に引用文献2記載の事項の「シール」の裏面の粘着層からそのようにいうことができないとしても、遊技機において、遊技者に向けて設けた「7セグLED」の前面側(遊技者側)に光透過性を備えた部材を設置する際に、「7セグLED」側の内部を視認しにくくして見栄えをよくする等のために、当該部材の光透過度を下げることが例えば
特開2005−211097号公報
(当該文献については、特に、
「【0006】
・・・また、図9に示すように、光透過性表示層60の後方には、前方へ向けて光を発する発光体80が備えられている。また、・・・それぞれ、発光体80としてのLEDランプ81や7セグメントLED82が設けられている。また、LEDランプ81や7セグメントLED82は、いずれも、前方へ向けて光を発するようにしてある。そして、LEDランプ81は、光透過性表示層60を裏側から照らすようにしており、また、7セグメントLED82は、その表示する数字が光透過性表示層60を通して前方から見えるようにしている。」
「【0008】
ところで、従来の遊技機では、発光体が発光していないときに、光透過性表示層の発色が悪くなってしまったり、光透過性表示層の裏側にある部材が光透過性表示層の表側から透けて見えてしまったりして、見栄えが悪くなってしまうという問題があった。
・・・
そこで、請求項1記載の発明は、光透過性表示層と発光体との間にハーフミラー層を備えることにより、発光体が発光しているときには、発光体から発せられた光がハーフミラー層を透過して光透過性表示層を従来通り裏側から照らすようにしつつ、発光体が消灯しているときには、光透過性表示層の表側から入射した外部の光がハーフミラー層で反射して光透過性表示層を裏側から照らすようにし、これにより、特に発光体が消灯しているときの光透過性表示層の発色を従来よりも良くし、更には、発光体が消灯しているときに、光透過性表示層の裏側にある部材がハーフミラー層の特性により光透過性表示層の表側からは透けて見えにくくなるようにして、見栄えを良くした遊技機を提供することを目的とする。」
「【0013】
「また、「発光体(80)」は、前方へ向けて光を発するようにして、光透過性表示層(60)の後方に備えられる。また、発光体(80)としては、例えば、LEDランプ(81)や電球などを備えることができ、また、7セグメントLED(82)やドットマトリクスなどを備えることもできる。
・・・
また、「ハーフミラー層(70)」は、入射光の一部を反射し、一部を透過する層である。本発明では、光透過性表示層(60)と発光体(80)との間に、ハーフミラー層(70)が備えられる。また、「ハーフミラー層(70)」は、例えば、光透過性表示層(60)の裏面に、シート状のハーフミラー(71)を貼り付けることによって形成することができるし、また、光透過性表示層(60)の裏側に、パネル状のハーフミラー(71)を置くことによって形成することもできる。また、例えば、光透過性表示層(60)の裏面に、光を透過する金属薄膜層(72)を形成し、この金属薄膜層(72)をハーフミラー層(70)とすることもできる。また、ハーフミラー層(70)は、例えば、光反射率:30%、光透過率:70%とすることができ、また、光反射率:50%、光透過率:50%とすることもでき、また、光反射率:50%、光透過率:30%、光吸収率:20%とすることもできる。」
「【0035】
・・・また、本発明は、スロットマシンに限らず、例えば、パチンコ機などの遊技機に用いることもできる。」
等の記載を参照。)
や、特開2002−369959号公報
(当該文献については特に、
「【0007】プリント配線基板10は概略披針形で、その中央部前面に残高金額表示用として3個のセグメント表示器14,15,16が固設されている。・・・」
「【0008】プリント配線基板10を内側に収容し得るようにプラスチックで成形された基板ケース11は、前記セグメント表示器14,15,16の表示を透視し得るように長方形状の窓孔23が中央部に形成され、該基板ケース11の前面に一体的に貼着された着色半透明なるカラー樹脂板24を通してセグメント表示器14,15,16を透視し得るようにしている。・・・」
等を参照。)などにみられるように技術常識である。そうすると、引用文献2記載の事項の「機能表示シール1595A」(第2部材)の「光透過度」が「透明」なものと比して低いことは技術常識でもある。

そして、本願発明の作用効果は、引用発明及び引用文献2記載の事項から当業者が予測できるものである。
したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2記載の事項から当業者が容易に発明をすることができたものである。

7 請求人の主張について
(1) 審判請求人は、当審拒絶理由の通知に対する令和4年3月31日提出の意見書の「(4−2)理由1について」にて以下の主張をしている。

「今般の補正により、請求項1において、「7セグLEDは、…準備して組付けられる」ことを限定した。確かに引用発明において、『何ら「ランク」を考慮することなくLEDを準備して・・・「下位ランク」のLEDが含まれない場合がありうる』。しかしながら、換言すると、引用発明の遊技機では、『何ら「ランク」を考慮することなくLEDを準備すれば、「下位ランク」のLEDが含まれることもありうる』。
本願発明のものは、「第1基板に配置された7セグLEDは、明るさで分類された全てのランクのうちの、明るさが最低のランクよりも明るい第1の明るさ以上のランクが準備されて組付けられており」「複数の7セグLEDのうちの第2基板に配置された7セグLEDは、明るさで分類された全てのランクのうちの、第1の明るさよりも明るい第2の明るさ以上のランクが準備されて組付けられている」というものであるので、例えば数百台〜数万台の遊技機を生産したとしても、「下位ランク」のLEDが組付けられることがないものである。
このような技術的特徴は、引用文献1−2に何ら記載されてなく、ましてや、第1部材よりも光透過度が低い第2部材が前面側に配置された第2基板に配置されるLEDとして、第1基板に配置されるLEDよりも明るいLEDが準備されて組付けられることで、明るさのばらつきが抑えられて、全体として見栄えを揃えることを可能にできることは、何ら示唆もされていない。
従って、本願の請求項1に係る発明は、たとえ引用文献1に引用文献2を組合せて勘案したとしても、容易に想到し得るものではないと思慮する。」

しかし、物の発明において、製造方法によって生産物を特定しようとする記載がある場合、特定の方法によって製造された物のみに限定しようとしていることが明白であっても、生産物自体を意味しているものと解するのが相当であることは上記「6 相違点の検討」「(1) 相違点1について」にて説示のとおりであって、本願発明の
「G 前記複数の7セグLEDのうちの前記第1基板に配置された7セグLEDは、明るさで分類された全てのランクのうちの、明るさが最低のランクよりも明るい第1の明るさ以上のランクが準備されて組付けられており、
H 前記複数の7セグLEDのうちの前記第2基板に配置された7セグLEDは、明るさで分類された全てのランクのうちの、前記第1の明るさよりも明るい第2の明るさ以上のランクが準備されて組付けられている、」
という特定の製造方法によって製造された「遊技機」が、引用発明及び引用文献2記載の事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるのだから、審判請求人の上記主張を採用して、本願について特許をすべきものとすることはできない。

なお、審判請求人の上記「ましてや、第1部材よりも光透過度が低い第2部材が前面側に配置された第2基板に配置されるLEDとして、第1基板に配置されるLEDよりも明るいLEDが準備されて組付けられることで、明るさのばらつきが抑えられて、全体として見栄えを揃えることを可能にできることは、何ら示唆もされていない。」との主張について検討すべく、本願発明をみると、
「G 前記複数の7セグLEDのうちの前記第1基板に配置された7セグLEDは、明るさで分類された全てのランクのうちの、明るさが最低のランクよりも明るい第1の明るさ以上のランクが準備されて組付けられており、
H 前記複数の7セグLEDのうちの前記第2基板に配置された7セグLEDは、明るさで分類された全てのランクのうちの、前記第1の明るさよりも明るい第2の明るさ以上のランクが準備されて組付けられている、」
と特定されている。
そうすると、構成Gの「明るさで分類された全てのランクのうちの、明るさが最低のランクよりも明るい第1の明るさ以上のランク」とは、本願の発明の詳細な説明に記載のランクでいえば、例えばランクM、N、P、Qであればよく、
構成Hの「明るさで分類された全てのランクのうちの、前記第1の明るさよりも明るい第2の明るさ以上のランク」とは、本願の発明の詳細な説明に記載のランクでいえば、例えばランクN、P、Qであればよいと解するのが相当である。
そうすると、本願発明の構成Gの
「明るさで分類された全てのランクのうちの、明るさが最低のランクよりも明るい第1の明るさ以上のランク」
及び同構成Hの「明るさで分類された全てのランクのうちの、前記第1の明るさよりも明るい第2の明るさ以上のランク」
には、いずれも発明の詳細な説明におけるランクN、P、Qという同じ「ランク」のものも対応しているというべきである。
してみると、審判請求人の「第2基板に配置されるLED」が「第1基板に配置されるLEDよりも明るいLED」であると断定しての上記主張は、本願発明の構成に基づいた主張ということができない。

8 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-06-01 
結審通知日 2022-06-07 
審決日 2022-06-21 
出願番号 P2018-037905
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 古屋野 浩志
特許庁審判官 石井 哲
蔵野 いづみ
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人近島国際特許事務所  

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