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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1388060
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-08-17 
確定日 2022-08-17 
事件の表示 特願2019−183817「情報表示装置、情報表示装置の制御方法、携帯端末装置及び携帯端末装置の制御方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 5月14日出願公開、特開2020− 74076、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年10月9日に出願された特願2013−212048号の一部を平成30年12月27日に新たな特許出願としたものである特願2018−244938号の、更にその一部を令和元年10月4日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 元年11月28日 :手続補正書の提出
令和 2年10月29日付け:拒絶理由通知書
令和 3年 2月26日 :意見書、手続補正書の提出
令和 3年 5月12日付け:拒絶査定
令和 3年 8月17日 :拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提

令和 4年 3月30日付け:拒絶理由(当審拒絶理由)通知書
令和 4年 5月31日 :意見書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和3年5月12日付け拒絶査定)の概要は、次のとおりである。
この出願の請求項1,3〜5に係る発明は、以下の引用文献Aに記載された発明に基づいて、請求項2に係る発明は、以下の引用文献A〜Cに記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献A:特開平8−171550号公報
引用文献B:特開平9−204540号公報
引用文献C:特表2008−507776公報

第3 当審拒絶理由の概要
当審が令和4年3月30日付けで通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の概要は次のとおりである。
この出願の請求項1,3〜5に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明に基づいて、請求項2に係る発明は、以下の引用文献1〜3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特開平8−171550号公報(拒絶査定時の引用文献A)
引用文献2:特開平9−204540(拒絶査定時の引用文献B)
引用文献3:特表2008−507776公報(拒絶査定時の引用文献C)

第4 本願発明
本願請求項1〜5に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」〜「本願発明5」という。)は、令和4年5月31日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1〜5に記載された事項により特定される、次のとおりの発明である。

「【請求項1】
独立して記憶された複数のスライド情報から指定された複数のスライド情報より構成され、主な説明に用いられる主説明スライド情報と、前記主説明スライド情報に関連する情報であって前記スライド情報から独立して記憶された関連スライド情報とを任意に組み合わせて表示する情報表示装置であって、
複数の前記主説明スライド情報を構成する複数の前記スライド情報の表示順を記憶し、
前記主説明スライド情報を表示部に表示する前に、前記主説明スライド情報毎に前記主説明スライド情報のうちいずれかの前記スライド情報と関連付ける複数の前記関連スライド情報を指定して記憶し、
前記主説明スライド情報を記憶した前記表示順に前記主説明スライド情報を前記表示部に表示するとともに、この前記主説明スライド情報の1つと関連付けられている前記複数の関連スライド情報が存在する場合に、前記関連スライド情報への遷移マークを当該主説明スライド情報に表示し、
前記主説明スライド情報の表示中に、前記遷移マークが選択されると、前記関連付けられている複数の前記関連スライド情報のそれぞれに帰還マークを表示し、
前記複数の前記関連スライド情報のうち、いずれの前記帰還マークが選択されても、前記表示順に表示された前記主説明スライド情報のうち、直近に表示された同じ前記主説明スライド情報のページが1回の遷移で表示されることを特徴とする情報表示装置。
【請求項2】
前記主説明スライド情報には、複数の前記遷移マークが同時に表示され、
前記表示された前記複数の遷移マークのうち、選択された前記遷移マークは、次回から他の前記遷移マークより優先的に前記主説明スライド情報に表示され、前記スライド情報が、PDF(「Portable Document Format」ポータブル・ドキュメント・フォーマット)形式を含むことを特徴とする請求項1に記載の情報表示装置。
【請求項3】
独立して記憶された複数のスライド情報から指定された複数のスライド情報より構成され、主な説明に用いられる主説明スライド情報と、前記主説明スライド情報に関連する情報であって前記スライド情報から独立して記憶された関連スライド情報とを任意に組み合わせて表示する情報表示装置の制御方法であって、
複数の前記主説明スライド情報を構成する複数の前記スライド情報の表示順を記憶し、
前記主説明スライド情報を表示部に表示する前に、前記主説明スライド情報毎に前記主説明スライド情報のうちいずれかの前記スライド情報と関連付ける複数の前記関連スライド情報を指定して記憶し、
前記主説明スライド情報を記憶した前記表示順に前記主説明スライド情報を前記表示部に表示するとともに、この前記主説明スライド情報の1つと関連付けられている前記複数の関連スライド情報が存在する場合に、前記関連スライド情報への遷移マークを当該主説明スライド情報に表示し、
前記主説明スライド情報の表示中に、前記遷移マークが選択されると、前記関連付けられている複数の前記関連スライド情報のそれぞれに帰還マークを表示し、
前記複数の前記関連スライド情報のうち、いずれの前記帰還マークが選択されても、前記表示順に表示された前記主説明スライド情報のうち、直近に表示された同じ前記主説明スライド情報のページが1回の遷移で表示されることを特徴とする情報表示装置の制御方法。
【請求項4】
独立して記憶された複数のスライド情報から指定された複数のスライド情報より構成され、主な説明に用いられる主説明スライド情報と、前記主説明スライド情報に関連する情報であって前記スライド情報から独立して記憶された関連スライド情報とを任意に組み合わせて表示する携帯端末装置であって、
複数の前記主説明スライド情報を構成する複数の前記スライド情報の表示順を記憶し、
前記主説明スライド情報を表示部に表示する前に、前記主説明スライド情報毎に前記主説明スライド情報のうちいずれかの前記スライド情報と関連付ける複数の前記関連スライド情報を指定して記憶し、
前記主説明スライド情報を記憶した前記表示順に前記主説明スライド情報を前記表示部に表示するとともに、この前記主説明スライド情報の1つと関連付けられている前記複数の関連スライド情報が存在する場合に、前記関連スライド情報への遷移マークを当該主説明スライド情報に表示し、
前記主説明スライド情報の表示中に、前記遷移マークが選択されると、前記関連付けられている複数の前記関連スライド情報のそれぞれに帰還マークを表示し、
前記複数の前記関連スライド情報のうち、いずれの前記帰還マークが選択されても、前記表示順に表示された前記主説明スライド情報のうち、直近に表示された同じ前記主説明スライド情報のページが1回の遷移で表示されることを特徴とする携帯端末装置。
【請求項5】
独立して記憶された複数のスライド情報から指定された複数のスライド情報より構成され、主な説明に用いられる主説明スライド情報と、前記主説明スライド情報に関連する情報であって前記スライド情報から独立して記憶された関連スライド情報とを任意に組み合わせて表示する携帯端末装置の制御方法であって、
複数の前記主説明スライド情報を構成する複数の前記スライド情報の表示順を記憶し、
前記主説明スライド情報を表示部に表示する前に、前記主説明スライド情報毎に前記主説明スライド情報のうちいずれかの前記スライド情報と関連付ける複数の前記関連スライド情報を指定して
記憶し、
前記主説明スライド情報を記憶した前記表示順に前記主説明スライド情報を前記表示部に表示するとともに、この前記主説明スライド情報の1つと関連付けられている前記複数の関連スライド情報が存在する場合に、前記関連スライド情報への遷移マークを当該主説明スライド情報に表示し、
前記主説明スライド情報の表示中に、前記遷移マークが選択されると、前記関連付けられている複数の前記関連スライド情報のそれぞれに帰還マークを表示し、
前記複数の前記関連スライド情報のうち、いずれの前記帰還マークが選択されても、前記表示順に表示された前記主説明スライド情報のうち、直近に表示された同じ前記主説明スライド情報のページが1回の遷移で表示されることを特徴とする携帯端末装置の制御方法。」

第5 引用文献の記載、引用発明等
1 引用文献1、引用発明
(1)当審拒絶理由にて引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審による。以下同様。)。

「【0010】
【実施例】以下、本発明の一実施例を図面を用いて具体的に説明する。図1は、本発明のプレゼンテーションシステムの構成を示す。オーサリング処理部10は、画面レイアウト作成部11と、時間制御部12と、リンク情報指定部13とから構成され、シナリオデータ14を作成する。プレゼンテーション処理部15は、プレゼンテーション実行部16とシナリオ管理テーブル17から構成されていて、シナリオデータ格納部14からシナリオを読み出してプレゼンテーションを編集、実行する。
【0011】上記構成において、オーサリング処理部10は、シナリオデータ14を作成するために、画面レイアウト作成部11、時間制御部12、リンク情報指定部13を操作するGUI(Graphical User Interface)を備え、また画像を合成する機能も備えている。
【0012】画面レイアウト作成部11は、画像や文字、映像、音声、図形、ボタンなどのオブジェクトをプレゼンテーションする画面内に配置し、画面のレイアウトを作成する。前述したOHPの場合、一枚のシートの画面が作成される。時間制御部12は、画面レイアウト作成部11によって作成された、画像や文字、映像、音声、図形、ボタンなどのオブジェクトの表示、または消去するタイミングを指定する。リンク情報指定部13は、画面レイアウト作成部11によって作成されたボタンに、シナリオのリンク情報、および同一のシナリオでページ間の移動を行う画面のリンク情報(ページ名称)を設定する。」

「【0020】図6は、リンクされたシナリオAとシナリオBの一例を示し、図7、8は、プレゼンテーションを実行する処理フローチャートである。いま、シナリオAが4ページ(n1〜n4)のシナリオデータからなり、シナリオBが3ページ(m1〜m3)のシナリオデータからなるものとし、シナリオAのn1ページがプレゼンテーション実行部16で実行されているものとする。
【0021】そして、シナリオAのページn1に定義されているボタン61(このボタンは各ページに設けられている)には、シナリオBとリンクするために、シナリオ名としてシナリオB、ページ番号としてm1を設定したリンク情報が定義されている。また、シナリオBのページm1に定義されているボタン63には、シナリオAに戻るために、リターン属性のリンク情報が定義されている。
【0022】さらに、シナリオの各ページに定義されているボタン60、62には、同一のシナリオ(AまたはB)で、ページ間の移動を行う画面のリンク情報(ページ名称)が設定される。
【0023】シナリオAのボタン62が選択されると(ステップ200)、プレゼンテーション実行部16には、シナリオ切り換えメッセージが送られ(ステップ201)、まず、ボタン61のリンク情報の内容が判定される(ステップ202)。判定の結果、この場合はシナリオ名が設定されているので、現在実行しているシナリオのシナリオ名(A)とページ番号(n1)をシナリオ管理テーブル17にスタックし(ステップ205)、リンク情報に設定されているシナリオBをロードする(ステップ206)。
【0024】次いで、現在実行されているシナリオを破棄し(ステップ207)、シナリオBを指定されたページ番号m1から実行する(ステップ208、209)。このとき、リンク情報に音楽のリンク属性が設定されていると、シナリオAで演奏されていた音楽を中断せずにシナリオBに引き継いで演奏する。
【0025】次に、シナリオBのボタン63が選択されると(ステップ210)、プレゼンテーション実行部16には、シナリオ切り換えメッセージが送られ(ステップ211)、まず、ボタン63のリンク情報の内容を判定し(ステップ212)、リターン属性が設定されているので、シナリオ管理テーブル17からシナリオ名(A)50とページ番号(n1)51をポップし(ステップ213)、そのシナリオAをロードする(ステップ214)。
【0026】次いで、現在実行されているシナリオBを破棄し(ステップ215)、シナリオ管理テーブル17から取り出したシナリオ名Aのシナリオをページ番号n1から実行することにより(ステップ216)、シナリオBが実行される前のシナリオAの画面に戻ることができる(ステップ217)。」

「【図6】



(2)上記(1)から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「オーサリング処理部10が、画面レイアウト作成部11と、時間制御部12と、リンク情報指定部13とから構成され、シナリオデータ14を作成し、プレゼンテーション処理部15が、プレゼンテーション実行部16とシナリオ管理テーブル17から構成され、シナリオデータ格納部14からシナリオを読み出してプレゼンテーションを編集、実行する、プレゼンテーションシステムであって、
画面レイアウト作成部11は、画像や文字、映像、音声、図形、ボタンなどのオブジェクトをプレゼンテーションする画面内に配置し、画面のレイアウトを作成し、リンク情報指定部13は、画面レイアウト作成部11によって作成されたボタンに、シナリオのリンク情報、および同一のシナリオでページ間の移動を行う画面のリンク情報(ページ名称)を設定し、
シナリオAが4ページ(n1〜n4)のシナリオデータからなり、シナリオBが3ページ(m1〜m3)のシナリオデータからなり、シナリオAのページn1に定義されているボタン61(このボタンは各ページに設けられている)には、シナリオBとリンクするために、シナリオ名としてシナリオB、ページ番号としてm1を設定したリンク情報が定義され、また、シナリオBのページm1に定義されているボタン63には、シナリオAに戻るために、リターン属性のリンク情報が定義され、さらに、シナリオの各ページに定義されているボタン60、62には、同一のシナリオ(AまたはB)で、ページ間の移動を行う画面のリンク情報(ページ名称)が設定された、プレゼンテーションを実行する処理フローチャートにおいて、
シナリオAのボタン61が選択されると、現在実行しているシナリオのシナリオ名(A)とページ番号(n1)をシナリオ管理テーブル17にスタックし、リンク情報に設定されているシナリオBをロードし、シナリオBを指定されたページ番号m1から実行し、
次に、シナリオBのボタン63が選択されると、リターン属性が設定されているので、シナリオ管理テーブル17からシナリオ名(A)50とページ番号(n1)51をポップし、そのシナリオAをロードし、シナリオ管理テーブル17から取り出したシナリオ名Aのシナリオをページ番号n1から実行することにより、シナリオBが実行される前のシナリオAの画面に戻る、プレゼンテーションシステム。」

第6 当審拒絶理由について(引用発明との対比・判断)
1 本願発明1について
(1)対比
ア 本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

(ア)引用発明は、「オーサリング処理部10が、画面レイアウト作成部11と、時間制御部12と、リンク情報指定部13とから構成され、シナリオデータ14を作成し、プレゼンテーション処理部15が、プレゼンテーション実行部16とシナリオ管理テーブル17から構成され、シナリオデータ格納部14からシナリオを読み出してプレゼンテーションを編集、実行する、プレゼンテーションシステムであって、
画面レイアウト作成部11は、画像や文字、映像、音声、図形、ボタンなどのオブジェクトをプレゼンテーションする画面内に配置し、画面のレイアウトを作成し、リンク情報指定部13は、画面レイアウト作成部11によって作成されたボタンに、シナリオのリンク情報、および同一のシナリオでページ間の移動を行う画面のリンク情報(ページ名称)を設定」する
ものである。
また、引用発明は、
「シナリオAが4ページ(n1〜n4)のシナリオデータからなり、シナリオBが3ページ(m1〜m3)のシナリオデータからなり、シナリオAのページn1に定義されているボタン61(このボタンは各ページに設けられている)には、シナリオBとリンクするために、シナリオ名としてシナリオB、ページ番号としてm1を設定したリンク情報が定義され、また、シナリオBのページm1に定義されているボタン63には、シナリオAに戻るために、リターン属性のリンク情報が定義され、さらに、シナリオの各ページに定義されているボタン60、62には、同一のシナリオ(AまたはB)で、ページ間の移動を行う画面のリンク情報(ページ名称)が設定された、プレゼンテーションを実行する処理フローチャートにおいて、
シナリオAのボタン61が選択されると、現在実行しているシナリオのシナリオ名(A)とページ番号(n1)をシナリオ管理テーブル17にスタックし、リンク情報に設定されているシナリオBをロードし、シナリオBを指定されたページ番号m1から実行」する
ものである。
ここで、「画面レイアウト作成部11」によって「作成」される「シナリオデータ」の「ページ」は、「作成」結果として「ページ」の情報が記憶されることが明らかであり、また、「ページ間の移動を行う画面のリンク情報」の「設定」が可能であって、「シナリオA」は、「ページ間の移動を行う画面のリンク情報(ページ名称)が設定された」、「4ページ(n1〜n4)のシナリオデータからな」るから、「シナリオA」の「4ページ(n1〜n4)」の個々の「ページ」は、「ページ間の移動を行う画面のリンク情報」を「設定」することによって、任意の順番にスライドの表示順を定めることができる、すなわち、互いに独立した関係にあり、「シナリオA」は、それらの各「ページ」から指定された、「4ページ」より構成されるといえる。
また、「シナリオAのページn1に定義されているボタン61(このボタンは各ページに設けられている)には、シナリオBとリンクするために、シナリオ名としてシナリオB、ページ番号としてm1を設定したリンク情報が定義され」るから、「シナリオB」の「3ページ(m1〜m3)」の個々の「ページ」も、上記と同様に「シナリオA」の各「ページ」から独立している一方、「シナリオA」の「ページ」と「シナリオB」の「ページ」とは、「ボタン61」を介して「リンク情報」が「定義」され、「シナリオAのボタン61が選択されると」、「シナリオBを指定されたページ番号m1から実行」する関係にあり、ここで、「シナリオA」の「4ページ」のうちのどの「ページ」の「ボタン61」を「選択」するかは任意であるから、「シナリオA」及び「シナリオB」のそれぞれの各「ページ」は、「プレゼンテーション」において任意に組み合わせて表示されるといえる。
そして、引用発明における「シナリオA」の「4ページ(n1〜n4)」の個々の「ページ」は、本願発明1の「スライド情報」に相当し、その個数が「4」であることは、本願発明1の「複数」に含まれ、一方、「シナリオA」と「シナリオB」とは、(「ボタン63」によって)「シナリオB」から「シナリオA」に「戻る」関係にあるから、「シナリオA」の「4ページ(n1〜n4)」の全体は、「シナリオB」からみて「プレゼンテーション」における主な説明に用いられる位置付けであるということができ、本願発明1の「主な説明に用いられる主説明スライド情報」に相当し、「シナリオB」の「3ページ(m1〜m3)」の個々の「ページ」は、「シナリオA」に関連する情報の位置付けであり、本願発明1の「関連スライド情報」に相当する。
また、引用発明の「プレゼンテーションシステム」は、本願発明1の「情報表示装置」に相当する。
以上のことから、引用発明と本願発明1とは、
「独立して記憶された複数のスライド情報から指定された複数のスライド情報より構成され、主な説明に用いられる主説明スライド情報と、前記主説明スライド情報に関連する情報であって前記スライド情報から独立して記憶された関連スライド情報とを任意に組み合わせて表示する情報表示装置」
である点で一致する。

(イ)引用発明の「シナリオA」は、上記(ア)で述べたように「ページ間の移動を行う画面のリンク情報(ページ名称)が設定された」、「4ページ(n1〜n4)のシナリオデータからな」るものであり、ここで、「ページ間の移動」は、「シナリオの各ページに定義されているボタン60、62には、同一のシナリオ(AまたはB)で、ページ間の移動を行う画面のリンク情報(ページ名称)が設定され」ていることによるものであって、「リンク情報」は、「シナリオA」について、その「4ページ(n1〜n4)」の表示順を特定するものといえる。
そして、当該「リンク情報」は、「リンク情報指定部13」が「設定」する、「画面レイアウト作成部11によって作成されたボタンに、シナリオのリンク情報、および同一のシナリオでページ間の移動を行う画面のリンク情報(ページ名称)」であって、「設定」により記憶されることが明らかである。
これらの点について、上記(ア)で検討した点も踏まえると、本願発明の
「複数の前記主説明スライド情報を構成する複数の前記スライド情報の表示順を記憶」する
との構成に関して、引用発明と本願発明とは、
「前記主説明スライド情報を構成する複数の前記スライド情報の表示順を記憶」する
という点で共通している。

(ウ)上記(ア)で述べたように、引用発明では、「シナリオA」の「ページ」と「シナリオB」の「ページ」とは、「ボタン61」を介して「リンク情報」が「定義」される関係にあるから、「シナリオB」の複数の「ページ」である「3ページ(m1〜m3)」が指定され、「シナリオA」の「ページ」と関連付けられて記憶されるといえる。ここで、「ボタン61」は、「シナリオA」の「各ページに設けられている」ものである。
また、上記「定義」されるのが「プレゼンテーションを実行する」前、すなわち、「シナリオA」を表示する前であることが明らかであり、当該表示が引用発明の「プレゼンテーションシステム」の表示手段においてなされることも明らかであって、当該表示手段は、本願発明の「表示部」に相当する。
もっとも、「ボタン61」は、「シナリオA」の「各ページに設けられている」から、上記「リンク情報」の「定義」は、「シナリオA」のいずれかである特定の「ページ」についてなされるものではない。
以上の点について、上記(ア)で検討した点も踏まえると、本願発明の
「前記主説明スライド情報を表示部に表示する前に、前記主説明スライド情報毎に前記主説明スライド情報のうちいずれかの前記スライド情報と関連付ける複数の前記関連スライド情報を指定して記憶」する
との構成に関して、引用発明と本願発明とは、
「前記主説明スライド情報を表示部に表示する前に、前記主説明スライド情報に前記主説明スライド情報の前記スライド情報と関連付ける複数の前記関連スライド情報を指定して記憶」する
という点で共通している。

(エ)上記(イ)で検討した点によれば、引用発明は、「シナリオA」について、記憶した表示順にその「4ページ(n1〜n4)」を「画面」に表示するものであり、また、上記(ウ)で検討した点、及び、引用発明の「シナリオAのページn1に定義されているボタン61(このボタンは各ページに設けられている)には、シナリオBとリンクするために、シナリオ名としてシナリオB、ページ番号としてm1を設定したリンク情報が定義され」ているとの構成によれば、「シナリオA」と関連付けられている「シナリオB」の「3ページ(m1〜m3)」が存在する場合に、「m1」の「ページ」へ遷移するための「ボタン61」を「シナリオAのページn1」に表示するものといえる。
そして、引用発明の「ボタン61」は、本願発明1の「遷移マーク」に相当する。
これらの点について、上記(ア)も踏まえると、引用発明は、本願発明の
「前記主説明スライド情報を記憶した前記表示順に前記主説明スライド情報を前記表示部に表示するとともに、この前記主説明スライド情報の1つと関連付けられている前記複数の関連スライド情報が存在する場合に、前記関連スライド情報への遷移マークを当該主説明スライド情報に表示」する
ことに相当する構成を備えている。

(オ)引用発明において、「シナリオBのページm1に定義されているボタン63には、シナリオAに戻るために、リターン属性のリンク情報が定義され」ていることは、「シナリオA」の表示中に、上記(エ)で検討した「m1」の「ページ」(「ページm1」)へ遷移するための「ボタン61」が選択されると、当該「ページ」に「シナリオAに戻るため」の「ボタン63」が表示されることを示すものである。
そして、引用発明の「ボタン63」は、本願発明1の「帰還マーク」に相当する。
これらの点について、上記(ア)、(ウ)で検討した点、及び上記(エ)で更に検討した点も踏まえると、本願発明の
「前記主説明スライド情報の表示中に、前記遷移マークが選択されると、前記関連付けられている複数の前記関連スライド情報のそれぞれに帰還マークを表示」する
との構成に関して、引用発明と本願発明とは、
「前記主説明スライド情報の表示中に、前記遷移マークが選択されると、前記関連付けられている複数の前記関連スライド情報に帰還マークを表示」する
という点で共通している。

(カ)引用発明は、
「シナリオAのボタン61が選択されると、現在実行しているシナリオのシナリオ名(A)とページ番号(n1)をシナリオ管理テーブル17にスタックし、リンク情報に設定されているシナリオBをロードし、シナリオBを指定されたページ番号m1から実行し、
次に、シナリオBのボタン63が選択されると、リターン属性が設定されているので、シナリオ管理テーブル17からシナリオ名(A)50とページ番号(n1)51をポップし、そのシナリオAをロードし、シナリオ管理テーブル17から取り出したシナリオ名Aのシナリオをページ番号n1から実行することにより、シナリオBが実行される前のシナリオAの画面に戻る」
ものである。
ここで、「シナリオ管理テーブル17にスタック」される、「現在実行しているシナリオのシナリオ名(A)とページ番号(n1)」は、「シナリオAのボタン61が選択される」際に表示された「シナリオA」の「n1」の「ページ」(「ページn1」)に対応するものであり、当該「ページ」は、「シナリオBのボタン63が選択される」時点で、「シナリオA」の「4ページ(n1〜n4)」のうち、直近に表示されたものであるといえる。
したがって、「シナリオBのボタン63が選択されると、リターン属性が設定されているので、シナリオ管理テーブル17からシナリオ名(A)50とページ番号(n1)51をポップし、そのシナリオAをロードし、シナリオ管理テーブル17から取り出したシナリオ名Aのシナリオをページ番号n1から実行する」との動作の結果、上記の直近に表示されたものと同じ「ページ」が、「ボタン63」の「選択」により、1回の遷移で表示されることが明らかである。
この点について、上記(ア)、(オ)で検討した点も踏まえると、本願発明の
「前記複数の前記関連スライド情報のうち、いずれの前記帰還マークが選択されても、前記表示順に表示された前記主説明スライド情報のうち、直近に表示された同じ前記主説明スライド情報のページが1回の遷移で表示される」する
との構成に関して、引用発明と本願発明とは、
「前記複数の前記関連スライド情報の前記帰還マークが選択されると、前記表示順に表示された前記主説明スライド情報のうち、直近に表示された同じ前記主説明スライド情報のページが1回の遷移で表示される」
という点で共通している。

イ 上記アから、本願発明1と引用発明とは、以下の点で一致する。
(一致点)
「独立して記憶された複数のスライド情報から指定された複数のスライド情報より構成され、主な説明に用いられる主説明スライド情報と、前記主説明スライド情報に関連する情報であって前記スライド情報から独立して記憶された関連スライド情報とを任意に組み合わせて表示する情報表示装置であって、
前記主説明スライド情報を構成する複数の前記スライド情報の表示順を記憶し、
前記主説明スライド情報を表示部に表示する前に、前記主説明スライド情報に前記主説明スライド情報の前記スライド情報と関連付ける複数の前記関連スライド情報を指定して記憶し、
前記主説明スライド情報を記憶した前記表示順に前記主説明スライド情報を前記表示部に表示するとともに、この前記主説明スライド情報の1つと関連付けられている前記複数の関連スライド情報が存在する場合に、前記関連スライド情報への遷移マークを当該主説明スライド情報に表示し、
前記主説明スライド情報の表示中に、前記遷移マークが選択されると、前記関連付けられている複数の前記関連スライド情報に帰還マークを表示し、
前記複数の前記関連スライド情報の前記帰還マークが選択されると、前記表示順に表示された前記主説明スライド情報のうち、直近に表示された同じ前記主説明スライド情報のページが1回の遷移で表示される情報表示装置。」

ウ また、本願発明1と引用発明とは、以下の点で相違する。
(相違点1)
本願発明1では、「前記主説明スライド情報」が「複数」であり、「複数の前記関連スライド情報」を「関連付ける」ことが、「前記主説明スライド情報毎に」なされるのに対して、引用発明では、「シナリオB」との「リンク情報」が「定義」された「シナリオA」と同様の位置付けの他の「シナリオ」の存在について特定されるものではない点。

(相違点2)
本願発明1では、「複数の前記関連スライド情報」を「関連付ける」対象が、「前記主説明スライド情報のうちいずれかの前記スライド情報」であるのに対して、引用発明では、「シナリオ名としてシナリオB、ページ番号としてm1を設定したリンク情報が定義され」る「ボタン61」が、「シナリオA」の「各ページに設けられている」、すなわち、「シナリオB」を関連付ける対象が「シナリオA」の「各ページ」である点。

(相違点3)
本願発明1の「帰還マーク」は、「前記関連付けられている複数の前記関連スライド情報のそれぞれ」に「表示」するものであり、これに伴い、「前記表示順に表示された前記主説明スライド情報のうち、直近に表示された同じ前記主説明スライド情報のページが1回の遷移で表示される」との動作が「前記複数の前記関連スライド情報のうち、いずれの前記帰還マークが選択されても」なされるのに対して、引用発明の「ボタン63」は、「シナリオBのページm1」の以外の「シナリオB」の「ページ」に「定義され」ることについて特定されるものではない点。

(2)判断
事案に鑑みて、相違点2について先に検討する。
主説明スライド情報を表示部に表示するよりも前に、関連スライド情報を、前記主説明スライド情報のうちいずれかのスライド情報と関連付けることは、引用文献1〜3のいずれにも記載されておらず、本願の出願日前において周知技術であったともいえない。
仮にそのようなことが周知技術であったとしても、引用発明は、「前シナリオAのボタン61が選択されると、現在実行しているシナリオのシナリオ名(A)とページ番号(n1)をシナリオ管理テーブル17にスタック」することにより、「シナリオBのボタン63が選択されると、リターン属性が設定されているので、シナリオ管理テーブル17からシナリオ名(A)50とページ番号(n1)51をポップし、そのシナリオAをロードし、シナリオ管理テーブル17から取り出したシナリオ名Aのシナリオをページ番号n1から実行することにより、シナリオBが実行される前のシナリオAの画面に戻る」ものであって、「前シナリオAのボタン61が選択される」前、すなわち「シナリオA」を表示する前の時点では、「シナリオBが実行される前のシナリオAの画面」がどの「ページ番号」の「ページ」であるかが確定しないから、その時点で「シナリオB」を「シナリオA」のうちのいずれかの「ページ」と関連付けるものとすることについて、動機付けが存在するするとはいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用文献1〜3に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2〜5について
本願発明2は本願発明1を減縮した発明であり、本願発明3は、本願発明1に対応する方法の発明である。また、本願発明4,5は、それぞれ本願発明1,3において、「表示」主体が「携帯端末装置」である旨の限定を付加したものといえる。
そうすると、本願発明2〜5は、いずれも相違点2に対応する発明特定事項を含むものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても引用文献1〜3に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3 小括
以上のとおりであるから、当審拒絶理由は解消した。

第7 原査定についての判断
令和4年5月31日に提出された手続補正書により補正された請求項1〜5は、相違点2に係る技術的事項を有するものとなった。
そして、当該技術的事項は、原査定における引用文献A〜C(引用文献1〜3)には記載されておらず、本願出願日前における周知技術でもないので、本願発明1〜5は、当業者であっても、原査定における引用文献A〜Cに基づいて容易に発明をすることができたものではない。
よって、原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-08-02 
出願番号 P2019-183817
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 稲葉 和生
特許庁審判官 富澤 哲生
▲高▼瀬 健太郎
発明の名称 情報表示装置、情報表示装置の制御方法、携帯端末装置及び携帯端末装置の制御方法  
代理人 新井 全  

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