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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) D06F
管理番号 1388064
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-08-20 
確定日 2022-08-18 
事件の表示 特願2019−191884号「衣類分離装置およびこれを備える衣類処理装置」拒絶査定不服審判事件〔令和2年3月26日出願公開、特開2020− 44336号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 経緯の概略
本願は、平成27年8月28日に出願された特願2015−169695号の一部を、令和元年10月21日に新たな特許出願としたものであって、その経緯は、概ね次のとおりである。
令和 2年11月 9日付け 拒絶理由通知書
令和 2年12月16日 意見書、手続補正書
令和 3年 5月17日付け 拒絶査定
令和 3年 8月20日 拒絶査定不服審判請求書
令和 4年 2月25日付け 拒絶理由通知書
令和 4年 4月22日 意見書

第2 本願発明
本願の請求項1〜15に係る発明は、令和2年12月16日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1〜15に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
洗濯槽内の衣類を把握し、把握した衣類に絡んでいる別の衣類が前記把握した衣類から分離するように動作する分離部を備える
衣類分離装置。
【請求項2】
前記分離部は、前記洗濯槽内の衣類を把握可能な把握部、および、前記把握部に把握された衣類に絡んでいる別の衣類が前記把握された衣類から分離するように少なくとも前記別の衣類に力を与える力付与部を含む
請求項1に記載の衣類分離装置。」

第3 当審にて通知した拒絶の理由の概要
当審にて令和4年2月25日付けで通知した拒絶の理由の概要は次のとおりである。すなわち、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用例に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
(引用例)
引用例1 佐藤正隆、外2名、“家庭用サービスロボットの開発”、2014年度精密工学会春季大会学術講演会講演論文集、2014年、p231-232
引用例2 特開2008−183122号公報

第4 当審にて通知した拒絶の理由についての判断
1 引用例の記載事項
(1) 引用例1
ア 引用例1には、以下の事項が記載されている(下線は、当審にて付与した。)。
・「1. 諸言
近年、家庭内において家事作業支援を行うサービスロボットの必要性が高まっているが、家事作業を支援するロボットはまだ多くはない.一般的な家庭で使う実用的な機能を持ったロボットの例として家庭内での作業支援目的のロボットとしてトヨタが開発しているパートナーロボット…やKinova RoboticsのJacoのような単腕のロボットアーム…が挙げられる.家庭内での実用的な作業を行うに当たり、双腕ロボットであれば洗濯物を畳むといった両腕を必要とする作業も可能である。双腕ロボットが家庭内で作業する場合、人と距離が近いためより高い安全性が求められる。しかし現在実用化されている双腕ロボットの多くが産業用であり、重量が重く力も強いため大変危険であり家庭内での家事支援には適していない.そこで本研究では、家事作業の1つとして洗濯作業に着目し、洗濯作業全体を支援する双腕サービスロボットを開発することとした.本報では、研究の第一段階として腰関節2軸左腕5軸を持つロボットを試作し、洗濯槽から洗濯物を取り出す一連の動作を行う実験を行った結果について報告する.」(231頁左欄)
・「2. 家庭用サービスロボット
2.1. ロボットの機能
本ロボットは、家庭内において洗濯作業全体を行うことを目的としている.本研究における洗濯作業とは、洗濯機から洗濯物を取り出して干す作業と干された洗濯物を取り込みたたむ作業に大別される.これらの作業を(i)洗濯機からの取り出し、(ii)洗濯物を干す、(iii)洗濯物を取り込む、(iv)洗濯物をたたむ、の4つに分割し、それぞれを行う機能の開発を行う.本報では、「(i)洗濯機からの取り出し機能」に関する機能実装と実験を行った.
2.2. ロボットの仕様
一般家庭の洗濯機に関するアンケート…により、全自動縦型洗濯機のシェアは80.4[%]と高いため、本ロボットはこれを対象とする.ロボットの各関節の構成・仕様、可搬重量を図1及び表1に示す.各条件の決定条件を以下に示す.
(1) 可搬重量
ロボットが持上げる洗濯物の重量は、論文…により平均1.18[kg]である.洗濯後の洗濯物は洗濯槽内にて複雑に絡まっているため、安全率を考えて可搬重量を2.0[kg]と設定する.
(2) 関節構成
ロボットの関節数の決定は論文…を参考に、洗濯機からの取り出しから洗濯物を畳むといった洗濯作業全体を行えるよう双腕及び回転関節を採用した。また、最少の関節数で作業を行えるよう片腕5自由度×2、腰2自由度の計12自由度とした.またロボットの各関節間の長さは、身長170[cm]の成人と同程度の長さになるようにした….
(3) モータの仕様
家庭内で使用するロボットに搭載できるモータの出力は、規格…により最大80[W]と定められている.そのため、本ロボットに使用するモータの出力は、80[W]以下とする.
2.3. システム構成
図3にシステムブロック図を示す.本ロボットには頭部(WY関節上部)に全体を見る画像センサとハンド部に搭載する画像センサ、赤外線センサ、力センサを有する.本報では、機能実現のためのモーション作成と動作確認実験を行うため、ブロック図は図中赤枠で示した部分のみを使用した。
2.4. 取り出し動作フローチャート
図4に洗濯槽から洗濯物を取り出す際の動作フローチャートを示す.頭部(WY 関節上部)に搭載する画像センサにより、洗濯機及び洗濯槽全体、洗濯槽底部奥側を撮影・測定することができる.ただし、洗濯槽底部手前側はWP 関節を大きく倒し頭部を前傾させる必要がある.頭部を前傾しすぎると作業中の重心が問題となるため、作業の手順として洗濯槽底部奥側から洗濯物を取り出すように作業を計画した.
2.5. 挿入モーション
一般家庭において洗濯機の種類及び位置は固定であるので、ロボットがアームを洗濯槽内に挿入あるいは抜去する場合には、一定の動作を行えばよい.そこで本研究では、取り出し・挿入動作に必要な抜去・挿入モーションを作成した.図5にモーションの途中の様子を示す.このモーションを挿入時には、同図(a)〜(j)の順で動作させ、抜去時には同図(j)〜(a)の順で動作させる。」(231頁左欄〜232頁左欄)
・「


・「


・「3. 動作実験
3.1. 実験条件
図6(c)に実験装置の配置を示す.実験には、シャープ製5.5[kg]全自動洗濯機を使用した.この洗濯機から100[mm]離れた位置にロボットを正対させ、取り出し動作を行わせた.取り出す対象としてフェイスタオル(幅30〜35[cm]×長さ80〜90[cm])9枚を投入し、実際に洗濯機に洗濯させ同図(a)のように絡まった状態にした.洗濯終了後における洗濯槽内部の様子を図6(a)に示す.
3.2. 結果・考察
図6(b)及び(d)に取り出し作業の様子を示す.本実験により洗濯槽から洗濯物を取り出すことができることが確認できた.しかし絡まった洗濯物にアプローチするときに、洗濯物を引っ張り出せない場合があった.これは対象物を把持しながら引っ張る際に、引張方向によってハンドの把持力が不足することが原因であった.そのため、引張方向を意識した動作に変更するか、任意の引張方向においても十分な把持力を維持できるようにハンドの改良が必要である.」(232頁右欄)
・「


・「4. 結言
本研究で得られた成果を以下に示す.
(1) 片腕5自由度、腰関節2 自由度を持つロボットを設計試作した.
(2) 洗濯物を取り出す作業計画を立案し、洗濯槽に腕を挿入する際のモーションを作成した.
(3) 実験により試作したロボットで洗濯槽から洗濯物を取り出すことができることを示した.」(232頁右欄)
イ 上記のような引用例1の記載からすると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
(引用発明)
「洗濯槽内の洗濯物を把持し、洗濯槽内から把持した洗濯物を取り出すように動作するハンド部を備え、
前記ハンド部は、前記洗濯槽内の洗濯物を把持可能なハンドを含む、
家庭用サービスロボット。」

(2) 引用例2
引用例2には、以下の事項が記載されている。
・「【0010】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。まず、ドラム式洗濯機1の全体構成を示す図2において、ドラム式洗濯機1の外殻をなす外箱2の前面部には、中央部に扉3が設けられ、上部に操作パネル4(図3参照)が設けられている。扉3は、外箱2の前面部中央部に形成された洗濯物出入れ口5を開閉するものである。
【0011】
外箱2の内部には、円筒状をなす水槽6が配設されている。この水槽6は、その軸方向が前後方向(図2では左右方向)となる横軸状で且つ前上がりの傾斜状に配設され、弾性支持装置7により弾性的に支持されている。水槽6の内部には、円筒状をなすドラム8が水槽6と同様に横軸状に配設されている。このドラム8は、洗い(すすぎ)の他、脱水及び乾燥に共用の槽として機能するもので、胴部のほぼ全域に小孔9が多数形成され(図2に一部のみ図示)、胴部の内周部にはバッフル10が複数設けられている(図2に一つのみ図示)。」
・「【0014】
水槽6の上部には温風生成装置23が設けられ、背部には熱交換器24が設けられている。温風生成装置23は、ケース25内に配設された温風用ヒータ26、ケーシング27内に配設された温風用ファン28、温風用ファン28を回転駆動するファンモータ29で構成され、ケース25とケーシング27とは連通されている。ケース25の前部にはダクト30が接続され、ダクト30の先端部は、水槽6内の前部に突出してドラム8の開口部12に臨んでいる。温風用ヒータ26と温風用ファン28とにより温風が生成され、その温風はダクト30を通してドラム8内に供給される。ドラム8内に供給された温風はドラム8内の洗濯物を加熱するとともに水分を奪い、熱交換器24側へ排出される。」
・「【0018】
上記の運転コース表示部36に表示されている各運転コースのうち「予洗いコース」は、図4(a)に示すように、予洗い行程と、この予洗い行程の終了後に休止期間を挟んで本洗い行程とを実行する運転コースである。予洗い行程は、「給水」、「洗い」、「排水」、「脱水」及び「ほぐし」からなる。「ほぐし」は約1分間行われ、この間、ドラム8は低速回転(例えば50rpm)で約20秒ごとに反転される。また、「ほぐし」においては上記の温風生成装置23から温風が供給される。これにより、脱水後の絡まった洗濯物をほぐすことができる。本洗い行程は、「給水」、「洗い」、「排水」、「脱水」、「給水」、「すすぎ」、「排水」及び「脱水」からなる。「つけおきコース」は、図4(b)に示すように、上記の予洗い行程の一種たる予洗い(つけおき)行程において「洗い」の後はそのままの状態に放置する「つけおき」を行う運転コースである。」

2 対比及び判断
(1) 対比
本願発明と引用発明とを、その機能に照らして対比すると、引用発明の「洗濯物」は、本願発明の「衣類」に相当し、引用発明における洗濯物を「把持」することは、本願発明の衣類を「把握」することに相当する。
また、引用発明の「ハンド部」は、本願発明の「分離部」と同様に、衣類を把握可能な手段であるから、本願発明の「分離部」と「衣類把握手段」との限りで一致し、引用発明の「ハンド」は、本願発明の「把握部」に相当する。
そして、引用発明の「家庭用サービスロボット」は、本願発明の「衣類分離装置」と、「衣類に関する装置」である限りで一致する。
そうすると、本願発明と引用発明は以下の点で、一致し、相違する。
(一致点)
「洗濯槽内の衣類を把握するように動作する衣類把握手段を備える
衣類に関する装置であって、
前記衣類把握手段は、前記洗濯槽内の衣類を把握可能な把握部を含む
衣類に関する装置。」
(相違点)
本願発明は、衣類に関する装置に関し、「衣類分離装置」であって、衣類把握手段に関し、「把握した衣類に絡んでいる別の衣類が前記把握した衣類から分離するように動作する分離部」を備え、「分離部」は、「前記把握部に把握された衣類に絡んでいる別の衣類が前記把握された衣類から分離するように少なくとも前記別の衣類に力を与える力付与部」を含むのに対し、引用発明は、衣類に関する装置に関し、「家庭用サービスロボット」であって、衣類把握手段に関し、「洗濯槽内から把持した洗濯物を取り出すように動作するハンド部」を備えるものの、把持した洗濯物に絡んでいる別の洗濯物が前記把持した衣類から分離するように動作するかは明らかでなく、ハンド部が力付与部に関する構成を含むように構成されていない点。

(2) 判断
ア まず、引用発明の「ハンド部」は、把持した洗濯物に絡んでいる別の洗濯物が前記把持した衣類から分離するように動作するか必ずしも明らかではないが、引用例1には、絡まった洗濯物にアプローチするときに、洗濯物を引っ張り出せない場合があったと記載されているところ、その記載からすると、引用発明は、洗濯物を引っ張り出すことができる場合もあることがわかり、引張方向を意識した動作に変更するか、任意の引張方向においても十分な把持力を維持できるようにハンドを改良することで、引っ張り出すことができるものと解される。
その場合、重力の作用等により、把持した洗濯物に絡んでいる別の洗濯物が把持した洗濯物から分離することは十分に生じ得ることであって、その意味において、引用発明の「ハンド部」は、絡んでいる洗濯物を分離するための機能を有し、把持した洗濯物に絡んでいる別の洗濯物が把握した洗濯物から分離するように動作するといえるから、「把握した衣類に絡んでいる別の衣類が前記把握した衣類から分離するように動作する分離部を備える」点において、引用発明は本願発明と実質的に相違しているものではない(その場合、引用発明の「ハンド部」は本願発明の「分離部」に相当し、引用発明の「家庭用サービスロボット」は本願発明の「衣類分離装置」に相当するといえる。)。
そして、洗濯槽から取り出した衣類を個別の衣類に分離する必要があることは、その後の干す、たたむ等の作業の内容に照らして当然である。洗濯作業全体を支援する双腕サービスロボットを開発することを企図した引用発明において、個別の衣類ごとに分離する、絡んでいる洗濯物を分離するといった課題が内在することは明らかで、当業者であれば容易に理解できるものであるから、引用発明において、「ハンド部」に、絡んでいる洗濯物を分離するための機能を持たせることの動機付けは十分に認められる。
イ ところで、洗濯物が絡まった場合に、絡まった洗濯物を上下方向等に移動するように振動させて、把持している洗濯物に対し絡んでいる別の洗濯物を分離するといったことは、洗濯に従事する者が日常的に行っていることである。
そして、引用例1には、家庭内の洗濯作業を支援するために、双腕ロボットにより洗濯作業を行わせることが記載され、その趣旨は人間が行う作業をロボットにさせることと解されるから、引用発明において上記のような人間の動作を行わせることは、当業者にとって格別困難なことではない。
さらに、引用例2に記載のように(【0018】)、脱水後に絡まった洗濯物を、洗濯槽を正逆反転させることでほぐすといったことも、従前より行われていることである。
そうすると、引用発明において、ハンドに把持された洗濯物に絡んでいる別の洗濯物が把持された洗濯物から分離するように、ハンドを振動させて、当該別の洗濯物に力を与えるよう構成とすること、すなわち、ハンド部に分離機能を持たせること、そのために力付与部を設けることは、当業者が容易に想到することができたものである。
また、引用例2には、温風生成装置から温風を供給することで、絡まった洗濯物をほぐす点が記載されており(【0018】)、この点を引用発明に適用し、ハンドに把持された洗濯物に絡んでいる別の洗濯物が把持された洗濯物から分離するように、送風機によって、当該別の洗濯物に力を与えるよう構成すること、すなわち力付与部を設けることも、当業者が容易に想到することができたものである。
よって、引用発明において、相違点に係る本願発明の構成とし「衣類分離装置」とすることは、当業者が容易に想到することができたものと認められる。
本願発明の奏する効果をみても、引用発明及び引用例2に記載された事項から、当業者が予測可能な範囲内のものであって、格別のものとは認められない。
ウ(ア) 請求人は、概ね、次のように主張している。
・引用例1には、ハンドが把持した洗濯物に絡んでいる別の洗濯物を分離することについて記載されていない。引用例1の結果考察欄に記載の事項には、ハンドが把持した洗濯物に絡んでいる別の洗濯物を、ハンドが把持した洗濯物から分離するという技術思想は示されていない。
・引用例1の結果考察欄の記載から、引用例1に記載された洗濯物に関する課題は、洗濯槽内に放置された絡み合った洗濯物をハンドでは引っ張り出せない場合がある、という課題であることが理解できるが、引用例1には、洗濯物に関するその他の課題については記載されておらず、引用例1には、本願発明1が解決しようとする課題は開示、示唆されていない。引用例1に記載の課題に対して「そのため、引張方向を意識した動作に変更するか、任意の引張方向においても十分な把持力を維持できるようにハンドの改良が必要である。」という解決手段を検討しているが、引用例1にはその他の手段については開示、示唆されていない。これらの点から、引用例1に記載の発明に、本願構成(把握した衣類に絡んでいる別の衣類が前記把握した衣類から分離するように動作する分離部を備える点)が含まれるように構成を変更する動機付けがあるとはいえない。
・引用例1は本願発明が解決しようとする課題及び引用例1に記載の課題を解決するためのその他の手段について開示、示唆していないから、引用発明において「上記のような人間の動作を行わせる」動機付けがあるとはいえない。
・引用例2の技術事項は、洗濯槽を用いて洗濯物をほぐす技術で、洗濯槽は、本願発明の「洗濯槽内の衣類を把握可能な把握部」及び引用例1に記載のハンドのいずれとも異なる。引用例2の技術事項では、洗濯槽内に放置された洗濯物を対象としており、洗濯槽内に放置された洗濯物は本願発明の「把握部に把握された衣類」及び引用例1に記載のハンドに把持された洗濯物のいずれとも異なる。引用例1に記載の発明との間に上記のような相違点が存在する引用例2の技術事項を、引用例1に記載の発明と関連付けることを示唆する事項は各引用例に記載されていない。引用例2の技術事項を引用例1に記載の発明に組み合わせる動機付けはない。
・引用例2の技術事項におけるドラム8は本願発明の分離部とは異なるから、引用例2の技術事項を引用例1に記載の発明に組み合わせることができると仮定した場合でも、その組み合わせに基づく発明には本願発明の分離部は含まれない。
・引用例2の技術事項における温風生成装置23は本願発明の分離部とは異なるから、引用例2の技術事項を引用例1に記載の発明に組み合わせることができると仮定した場合でも、その組み合わせに基づく発明には本願発明の分離部は含まれない。
(イ) しかしながら、すでに述べたとおり、引用例1の記載から、引用発明は、絡まった洗濯物にアプローチするときに、洗濯物を引っ張り出すことができるものと解され、その場合、重力の作用等により、把持した洗濯物に絡んでいる別の洗濯物が把持した洗濯物から分離することは十分に生じ得るから、その意味において、引用発明の「ハンド部」は、把持した洗濯物に絡んでいる別の洗濯物が把握した洗濯物から分離するように動作するものである。
そして、洗濯槽から取り出した衣類を個別の衣類に分離する必要があることは、その後の作業の内容に照らして当然で、引用発明において、絡んでいる洗濯物を分離するといった課題が内在することは明らかであるから、引用発明において、「ハンド部」に、把持した洗濯物に絡んでいる別の洗濯物が把持した洗濯物から分離するための機能を持たせることの動機付けは十分に認められる。
このように、引用発明の「ハンド部」に、把持した洗濯物に絡んでいる別の洗濯物が把持した洗濯物から分離するための機能を持たせることの動機付けが十分に認められるから、引用発明において、洗濯物が絡まった場合に、絡まった洗濯物を上下方向等に移動するように振動させて、把持している洗濯物に対し絡んでいる別の洗濯物を分離するといった、人間の動作を行わせることは、当業者にとって格別困難なことではない。
また、引用例2に記載された事項は、引用発明と、洗濯槽内で絡まった洗濯物に係る技術である点で共通するから、絡んでいる洗濯物を分離するといった課題が内在する引用発明において、分離するための具体的手法として、十分に参考になるものである。
すでに述べたとおり、そもそも、絡まった洗濯物を上下方向等に移動するように振動させて、把持している洗濯物に対し絡んでいる別の洗濯物を分離するといった動作が、洗濯に従事する者が日常的に行っていることである上、引用例2に記載の、洗濯槽を正逆反転させることで脱水後に絡まった洗濯物をほぐす点は、洗濯物に振動を与えてほぐすともいえることに照らせば、ハンド部を備えた引用発明において、引用例2に記載された事項を参考に、ハンドに把持された洗濯物に絡んでいる別の洗濯物が把持された洗濯物から分離するように、ハンドを振動させて、当該別の洗濯物に力を与えるよう構成とすることは、当業者が容易になし得ることである。
さらに、絡んでいる洗濯物を分離するといった課題が内在する、ハンド部を備えた引用発明において、引用例2に記載の、温風生成装置から温風を供給することで絡まった洗濯物をほぐす点を適用し、ハンドに把持された洗濯物に絡んでいる別の洗濯物が把持された洗濯物から分離するように、送風機によって、当該別の洗濯物に力を与えるよう構成することも、当業者にとって格別困難なことではない。
よって、請求人の主張は採用することができない。
エ 以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明及び引用例2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用例2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-06-17 
結審通知日 2022-06-21 
審決日 2022-07-04 
出願番号 P2019-191884
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (D06F)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 佐々木 芳枝
特許庁審判官 田合 弘幸
窪田 治彦
発明の名称 衣類分離装置およびこれを備える衣類処理装置  
代理人 恩田 博宣  
代理人 恩田 誠  
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