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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06Q
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06Q
管理番号 1388092
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-09-08 
確定日 2022-09-13 
事件の表示 特願2016− 59142「動線判定装置、動線判定システム、動線判定方法及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 9月28日出願公開、特開2017−174135、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年3月23日の出願であって、令和2年4月14日付けで拒絶理由が通知され、同年6月18日に意見書及び手続補正書が提出され、同年11月24日付けで拒絶理由が通知され、令和3年1月25日に意見書及び手続補正書が提出され、同年5月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。
その後、当審において、令和4年4月20日付けで令和3年9月8日に提出された手続補正についての補正の却下の決定がなされるとともに、同日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、これに対し、同年6月27日に意見書及び手続補正書が提出された。

第2 原査定及び当審拒絶理由の概要
1 原査定(令和3年5月18日付け拒絶査定)の概要は以下のとおりである。

理由2.(進歩性
この出願の請求項1〜8に係る発明は、以下の引用文献2〜4に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献2.特開2014−232362号公報
引用文献3.特許第5811295号公報
引用文献4.登録実用新案第3142791号公報

2 当審拒絶理由(令和4年4月20日付け拒絶理由)の概要は以下のとおりである。

理由1.(サポート要件)
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

・請求項1、3〜8
発明の詳細な説明の段落【0004】〜【0005】には、
「【0004】
ところで、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどで端末などの認証装置を持たない顧客の動線を分析する場合、作業中の店員と顧客とが混在し、顧客の動線の分析の精度が低下する可能性がある。
そのため、顧客に特別な行為を強いることなく領域における顧客の動線の分析を高精度で行うことのできる技術が求められていた。
【0005】
そこで、この発明は、上記の課題を解決することのできる動線判定装置、動線判定システム、動線判定方法及びプログラムを提供することを目的としている。」
と記載されており、本願の請求項1、3〜8に係る発明は、「顧客に特別な行為を強いることなく領域における顧客の動線の分析を高精度で行うこと」を発明が解決しようとする課題とするものである。
それに対し、本願の請求項1に係る発明は、
「顧客および店員の動線を取得する動線情報取得部と、
前記顧客および店員の動線のうち、前記動線の少なくとも一部が、店舗における予め定められた所定領域に含まれている動線を、店員の動線と判定する判定部
を備える動線判定装置。」
を特定事項とするものであって、「店員の動線」を判定することが特定されているものの、「顧客の動線」を判定することについて何ら特定がなされておらず、上記課題を解決するためには「顧客の動線」について、請求項2に記載された事項に対応する事項を特定事項として備えることが必須であるといえる。
そして、本願の請求項3〜8に係る発明についても同様に「顧客の動線」を判定することについて何ら特定がなされていない。
したがって、請求項1、3〜8には、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されておらず、本願の請求項1、3〜8に係る発明は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えることとなる。
よって、本願の請求項1、3〜8に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。

理由2.(進歩性
この出願の請求項1〜8に係る発明は、以下の引用文献1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1.特開2011−086045号公報
(令和2年4月14日付け拒絶理由通知時に引用した文献)

第3 本願発明
1 本願の請求項1〜7に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」〜「本願発明7」という。)は、令和4年6月27日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1〜7に記載された事項により特定される発明であり、そのうち「本願発明1」は、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
顧客および店員の動線を取得する動線情報取得部と、
前記顧客および店員の動線のうち、前記動線の少なくとも一部が、店舗における予め定められた所定領域に含まれている動線を、店員の動線と判定し、前記顧客および店員の動線のうち、前記店員の動線と判定された以外の動線を顧客の動線と判定する判定部と、
前記顧客が顔の画像を登録していた場合、前記顧客の動線に対応する画像を用いて、前記顧客の属性情報を抽出し、前記顧客が顔の画像を登録していない場合、前記顧客の動線に対応する画像を用いて、前記顧客の年齢および性別を特定し、特定した前記顧客の年齢および性別に基づき属性情報を抽出する属性抽出部と、
を備える動線判定装置。」

なお、本願発明2〜7の概要は、以下のとおりである。
本願発明2〜5は、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明6は、本願発明1の装置の発明に対応する方法の発明であり、本願発明1とはカテゴリ表現が異なるのみの発明である。
本願発明7は、本願発明1の装置の発明に対応するプログラムの発明であり、本願発明1とはカテゴリ表現が異なるのみの発明である。

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1の記載事項
当審拒絶理由で引用した引用文献1には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は、当審で付したものである)。

ア 「【0001】
本発明は、顧客が通る監視エリアを撮像手段によって撮像し、この撮像手段による撮像画像から顧客と店員とを分離して集計する店員顧客分離集計装置に関する。」

イ 「【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、店員の認識のために帽子やユニホーム等の着用や検出機器等の設置が不要であり、撮像画像中の店員と顧客を確実に分離して顧客の集計を精度よく行うことができる店員顧客分離集計装置を提供することを課題とする。」

ウ 「【0035】
以下に、本発明による実施の形態を説明する。
図1に示すように、実施の形態による店員顧客分離集計装置1は、顧客が通る店舗の出入口を監視エリアとし、この監視エリアをカメラ(撮像手段)2で撮像し、このカメラ2の撮像画像12から店員と顧客とを分離して店舗へ入店及び退店する顧客数を集計するものである。この店員顧客分離集計装置1の主な構成として、カメラ2、人認識部3、追跡部4、店員判定部5、入退店カウント判定部6、店員カウント処理部8、集計部9、設定部10、表示部11、店員LED(報知手段)21、カウントLED22等を備える。
【0036】
カメラ2は、例えば、1台のCCDカメラ等で構成され、店舗の天井部又は壁面に設置されて顧客が通る監視エリアとなる店舗の出入口を上方から床面が見える角度に設定される。このカメラ2の設置角度としては、例えば、90度(真下を向く。)から45度程度の俯角までの角度とするのが好ましい。これは、俯角を小さくすると顧客同士が重なって撮像されて顧客同士の分離した人認識や追跡等が困難となり、また、人の位置の確定も不確かになるおそれがあるからである。また、カメラ2は、広角レンズを装着した広角撮像用カメラを使用し、その撮像範囲を広げるようにするのがよい。
【0037】
人認識部3は、カメラ2で順次撮像され送られてきた撮像画像12から人を個々に分離して認識する。この人認識は、例えば、円形フーリエ法及びベクトル焦点法による画像処理技術(特許第3406587号、特許第3406577号)を利用し、撮像画像12を複数に分割したブロック単位で画像処理して人認識する手法を使用することができる(特許第3390426号)。」

エ 「【0047】
以上のベクトル焦点法による画像処理技術によれば、カメラ2から送られてくる撮像画像12を連続的に処理して、人物画像hを代表点Gで規定しこの代表点Gの移動を追跡することができる。従って、人認識部3によれば、撮像画像12に現われる個々の人物を一人ひとり認識することができ、例えば、寄り添って歩いている2人について、その個々人をそれぞれ一人ひとりに区別して認識し、それぞれに代表点Gを認識することができる。
【0048】
追跡部4は、人認識部3により認識された人を撮像画像12内で個別に追跡する。人が認識されると個々の人を一人ひとりその代表点Gごとに個別に人物コード番号が付与され、追跡部4は、この代表点Gが撮像画像12内に現われてから撮像画像12外に消えるまで、または認識できなくなるまで追跡線(移動軌跡)を描いて追跡を行う。なお、追跡方法は、公知の方法で行うことができる。」

オ 「【0050】
店員判定部5は、追跡部4により追跡している個々の人のうち撮像画像12上に設定された立ち位置エリアB内に一定時間静止していた人は顧客ではなく店員であると判定する。店員判定部5は、店員であると認識すると店員LED21を点灯させ、店員は店員LED21が点灯した事を認識できれば立ち位置エリアBから離れる。なお、この店員LED21に代えて、ブザーなどの音を用いて報知する方法や、店員が連絡用に所持しているトランシーバーへブザー音を送出する方法など、他の報知手段でもって店員に対して店員認識できたことを知らせるようにしてもよい。
【0051】
立ち位置エリアBは、店舗の環境等より違和感無く店員が立ちやすく、店員以外の人が静止しない場所で、人物が立ち位置エリアBに立ったときその全身が撮像画像12に映る位置に設定される(図3参照)。なお、立ち位置エリアBの枠の形状は、四角形形状でもよいし、点、円形、楕円形、三角形などの任意の形状でもよい。
【0052】
立ち位置エリアBは、計数エリアAに一部又は全部が重複されて設定されてもよいが、図9、図3に示すように、計数エリアAと重複しない任意の位置に設定されるのが好ましい。これは、計数エリアAが設定される店舗入口以外の場所の方が違和感なく自然に店員が立ちやすい場所であるからである。このような立ち位置エリアBの設定位置は撮像画像12内で店員が立って来客を待つ位置、顧客の支払いに応対するレジの位置、警備員の待機位置などが挙げられる。撮像画像12上に設定される立ち位置エリアBの位置(例えば、床、壁など)に顧客に目立たないよう立ち位置マーク(図3)を付けると、立ち位置エリアBが店員に明示されるので、立ち位置エリアBの場所間違いを削減することができる。なお、設定部10により撮像画像12上に立ち位置エリアBを設定する際、人物画像の足元の位置を指定すると、その人物画像の代表点Gを包囲する撮像画像12上の床面からの高さ位置に立ち位置エリアBが設定されるようにしてもよいし、撮像画像12上に直接立ち位置エリアBが設定されるようにしてもよい。
【0053】
そして、店員判定部5は、代表点Gが立ち位置エリアB内に一定時間(例えば、1秒)静止すれば、その代表点Gの人は店員であると判定する。なお、立ち位置エリアBは、撮像画像12内の少なくとも1箇所に設定されるが、複数個所に設定(図3参照)されて店員が立ちやすくするようにしてもよく、それぞれの立ち位置エリアBごとに静止する時間基準を設定することもできる。
そして、上記複数の立ち位置エリアBとそれぞれの静止する時間基準から、2所以上の立ち位置エリアBでの静止を組み合わせて店員判定とする設定をすることもできる。この組み合わせを複数持つ事で客による店員誤判定を減少させる事ができる。例えば、店員である人が入店又は退店する際に、第1の立ち位置エリアBで静止すると、店員判定部5は、その人を店員であると仮登録し、続いてその人が第2の立ち位置エリアBで静止すると、店員判定部5は、その人を店員であると本登録する。なお、この場合、各立ち位置エリアBの移動順序は問わない。」

カ 「【0062】
次に、上記店員顧客分離集計装置1の動作を説明する。
図7を参照して、人認識部3は、カメラ2から順次送り込まれてくる撮像画像12を取り込み(S1)、この撮像画像12に対して、円形フーリエ計算(S2)、ベクトル焦点計算(S3)、ベクトル焦点位置計算(S4)を順次行って人物位置を検索し人と認識する(S5)。そして、追跡部4は、人認識部3で人が認識されるとその人の代表点Gを決定し、その代表点Gごとに付与された固有の人物コードと共に移動状況の追跡を行う(S6)。この追跡は人物コード毎に個別に追跡線を描くようにする。以上の人認識、追跡は、個別の人ごとに撮像画像12内に人が現れてから撮像画像12外に消えるか、認識できなくなるまで行われる。」

(2)引用文献1に記載された発明
上記(1)の摘記事項ア〜カから、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

<引用発明>
「顧客が通る店舗の出入口を監視エリアとし、この監視エリアをカメラ2で撮像し、このカメラ2の撮像画像12から店員と顧客とを分離して店舗へ入店及び退店する顧客数を集計するものであって、カメラ2、人認識部3、追跡部4、店員判定部5、入退店カウント判定部6、店員カウント処理部8、集計部9、設定部10、表示部11、店員LED(報知手段)21、カウントLED22等を備える店員顧客分離集計装置であって(【0035】)、
カメラ2から送られてくる撮像画像12を連続的に処理して、人物画像を代表点Gで規定しこの代表点Gの移動を追跡し(【0047】)、
追跡部4は、人認識部3により認識された人を撮像画像12内で個別に追跡し、人が認識されると個々の人を一人ひとりその代表点Gごとに個別に人物コード番号が付与され、追跡部4は、この代表点Gが撮像画像12内に現われてから撮像画像12外に消えるまで、または認識できなくなるまで追跡線(移動軌跡)を描いて追跡を行い(【0048】、【0062】)、
店員判定部5は、追跡部4により追跡している個々の人のうち撮像画像12上に設定された立ち位置エリアB内に一定時間静止していた人は顧客ではなく店員であると判定し(【0050】)、
立ち位置エリアBの設定位置は撮像画像12内で店員が立って来客を待つ位置、顧客の支払いに応対するレジの位置、警備員の待機位置などであり(【0052】)、
立ち位置エリアBは、撮像画像12内の少なくとも1箇所に設定されるが、複数個所に設定(図3参照)されて店員が立ちやすくするようにしてもよく、それぞれの立ち位置エリアBごとに静止する時間基準を設定することもでき、そして、上記複数の立ち位置エリアBとそれぞれの静止する時間基準から、2箇所以上の立ち位置エリアBでの静止を組み合わせて店員判定とする設定をすることもできる(【0053】)、
店員顧客分離集計装置。」

2 引用文献2について
(1)引用文献2に記載された事項
原査定で引用した引用文献2には、図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は、当審にて付したものである。)

ア 「【0001】
本発明は、移動体行動分析・予測装置に関し、特に、カメラによって撮影された映像から移動体の動線および振る舞いなどの行動を分析し、移動体の続く行動を予測できる移動体行動分析・予測装置に関する。」

イ 「【0010】
本発明の目的は、カメラによって取得された映像から顧客などの移動体の動線および関心度を観測し、移動体の続く行動を予測できる移動体行動分析・予測装置を提供することにある。」

ウ 「【発明の効果】
【0018】
本発明では、小売店や量販店などの店舗内の顧客監視エリアのカメラ映像から観測中の顧客の動線を観測し、それから動線レベルでの続く行動を予測し、また、顧客の動作アクティビティを観測し、それから関心度レベルでの続く行動を予測するので、顧客の動線および関心度に応じた商品を推薦できる。また、観測中の顧客の動線や関心度を、それに類似した動線や関心度を持つ記録済み顧客の行動からリアルタイムで予測できるので、観測中の顧客の移動先エリアや商品を適切に推薦できる。さらに、顧客の動線や関心度から商品の陳列やレイアウトを適切に設定することもできるようになる。」

エ 「【0020】
以下、図面を参照して本発明を説明する。以下では、小売店や量販店などの店舗内に設置された単一のカメラによって撮影された映像(以下、カメラ映像と称する。) から単一の顧客の動線および関心度を観測し、顧客の続く動線レベルおよび関心度レベルでの行動を予測する場合について説明するが、本発明は、顧客の動線だけを観測し、動線レベルでの続く行動を予測するものとして構成することもできる。
【0021】
図1は、本発明に係る移動体行動分析・予測装置の一実施形態を示すブロック図である。本実施形態の移動体行動分析・予測装置は、移動体検出部11、移動体識別子付与部12、移動体追跡部13、動線データ記録部14、店舗内行動プロファイル蓄積部15、関心度データ推定部16、関心度データ記録部17、動線データ類似度算出部18、移動体動線予測部19、関心度データ類似度算出部20、移動体関心度予測部21および移動体行動予測部22を備える。これらの各部は、プロセッサの一部としてソフトウエアで構成でき、ハードウエアでも構成できる。
【0022】
移動体検出部11は、カメラ映像を入力とし、カメラ撮影区域内に入ってきた顧客を顧客オブジェクトとして検出する。カメラは、例えば、店舗内の天井付近の壁面に斜め下方に向けて設置される。ここでは単一のカメラを想定しているので、カメラ撮影区域は、店舗内での顧客行動観測エリア(顧客監視エリア) 全体である。顧客オブジェクトは、例えば、カメラ映像における変化部分を背景差分法などで抽出すれば検出できる。なお、店員オブジェクトは、制服の色などの画像特徴や、店舗内の滞在時間や動線データなどの行動特徴により顧客オブジェクトと区別できる。
【0023】
カメラ撮影区域内に入ってきた顧客は、移動体検出部11により顧客オブジェクトとして検出される。移動体識別子付与部12は、移動体検出部11により検出された顧客オブジェクトに識別子を付与する。
【0024】
移動体追跡部13は、移動体検出部11により検出された顧客オブジェクトを連続的に観測して追跡する。これにより、時間経過に伴う顧客の位置から、顧客オブジェクトの動線データが得られる。動線データにおける顧客の位置は、足先などとすればよく、その位置は、カメラ映像における2次元座標位置でもよいし、顧客行動観測エリアにおける2次元座標位置でもよい。移動体の追跡の手法は既知であり、ここでの追跡の手法は、どのようなものでもよい。
【0025】
動線データ記録部14は、移動体追跡部13により得られた顧客オブジェクトの動線データを店舗内行動プロファイル蓄積部15の店舗内行動プロファイルに記録する。動線データは、連続的に記録してもよいし、所定タイミング間隔で記録してもよい。
【0026】
動線データは、顧客の位置の他に、顧客識別子(顧客オブジェクトに付与された識別子)と時刻を含む。」

(2)引用文献2記載の技術的事項
上記(1)ア〜エによれば、引用文献2には、次の技術的事項が記載されているといえる。

<引用文献2記載の技術的事項>
「カメラによって撮影された映像から移動体の動線および振る舞いなどの行動を分析し、移動体の続く行動を予測できる移動体行動分析・予測装置であって(【0010】、
移動体検出部11、移動体識別子付与部12、移動体追跡部13、動線データ記録部14、店舗内行動プロファイル蓄積部15、関心度データ推定部16、関心度データ記録部17、動線データ類似度算出部18、移動体動線予測部19、関心度データ類似度算出部20、移動体関心度予測部21および移動体行動予測部22を備え(【0021】)、
移動体検出部11は、カメラ映像を入力とし、カメラ撮影区域内に入ってきた顧客を顧客オブジェクトとして検出し(【0022】)、
店員オブジェクトは、制服の色などの画像特徴や、店舗内の滞在時間や動線データなどの行動特徴により顧客オブジェクトと区別でき(【0022】)、
移動体追跡部13は、移動体検出部11により検出された顧客オブジェクトを連続的に観測して追跡し、これにより、時間経過に伴う顧客の位置から、顧客オブジェクトの動線データが得られ(【0024】)、
動線データ記録部14は、移動体追跡部13により得られた顧客オブジェクトの動線データを店舗内行動プロファイル蓄積部15の店舗内行動プロファイルに記録する(【0025】)、
移動体行動分析・予測装置。」

3 引用文献3について
(1)引用文献3に記載された事項
原査定で引用した引用文献3には、図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は、当審にて付したものである。)

ア 「【0007】
本発明の目的は、限られた設置スペースでより多くの精算処理を並行して行うことを可能とする精算処理ユニット集合体、及び、そのような精算処理ユニット集合体用の架台を提供することにある。」

イ「【0074】
ここで、図9において店員10の動線が破線で示されるように、店員10は、左側の精算処理ユニット集合体1000の第1精算処理ユニット100を扱う購買者、左側の精算処理ユニット集合体1000の第2精算処理ユニット200を扱う購買者、及び、右側の精算処理ユニット集合体1000の第1精算処理ユニット100を扱う購買者に対して、精算処理ユニット集合体1000の扱い方についてのアドバイスがし易い位置へ、スムーズに移動することができる。
同様に、店員20は、左側の精算処理ユニット集合体1000の第2精算処理ユニット200を扱う購買者、右側の精算処理ユニット集合体1000の第1精算処理ユニット100を扱う購買者、及び、右側の精算処理ユニット集合体1000の第2精算処理ユニット200を扱う購買者に対して、精算処理ユニット集合体1000の扱い方についてのアドバイスがし易い位置へ、スムーズに移動することができる。」

(2)引用文献3記載の技術的事項
上記(1)ア〜イによれば、引用文献3には、次の技術的事項が記載されているといえる。

<引用文献3記載の技術的事項>
限られた設置スペースでより多くの精算処理を並行して行うことを可能とする精算処理ユニット集合体、及び、そのような精算処理ユニット集合体用の架台において(【0007】)、
店員10の動線は、左側の精算処理ユニット集合体1000の第1精算処理ユニット100を扱う購買者、左側の精算処理ユニット集合体1000の第2精算処理ユニット200を扱う購買者、及び、右側の精算処理ユニット集合体1000の第1精算処理ユニット100を扱う購買者に対して、精算処理ユニット集合体1000の扱い方についてのアドバイスがし易い位置へ、スムーズに移動することができるものであること(【0074】)。」

4 引用文献4について
(1)引用文献4に記載された事項
原査定で引用した引用文献4には、図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は、当審にて付したものである。)

ア 「【0001】
本考案は、簡単に外装を変更できるようにした、主として業務用家具としてのサービスカウンター用の模様替え用化粧板及び該化粧板を化粧面に設けたサービスカウンターに関するものである。」

イ 「【0004】
そこで、本出願人は、買物客が必ず立寄るサービスカウンターに着目した。例えばコンビニエンスストアでは、周知のように、サービスカウンターで囲われた内側空間は、店舗従業員の主たる作業動線となるもので、その天板上には、商品代金の精算を行うためのキャッシュレジスターを始めとして、従業員のみ取扱い可能な食品類の陳列ケース、小物類の陳列ケースなどがおかれているとともに、天板下部はレジ袋や、持運び用容器、箸、スプーンなど小物類の置場所となっている一方、サービスカウンターの顧客側に面する側は前板および側板によって閉塞され、かなり目立つものであるだけに、店舗内における顧客の視線が占める割合は大きい。」

ウ 「【0016】
図において、サービスカウンターは、壁2を背にしてL字形配置とされたL字形カウンター1と、L字形カウンター1の長手方向に連続して設けられた直線形カウンター3とからなるものであり、両カウンター1、3間に明けられた隙間を売場内への出入用動線(A)とし、直線形カウンター3の後端内側と壁2との間に明けられた空間を事務室などの控室への出入口動線(B)とし、かつ壁面2には、小物入れ用の棚を設けたキャビネット4が配置されている。各サービスカウンター1、3の内側に待機する売場従業員(イ)は、サービスカウンター1、3で囲われた内側を主要動線とし、必要に応じて動線(A),(B)内を通過することによって、売場内における必要な作業を行ったり、控室内で着替や休息などを取るようにしている。なお、図中の壁2、カウンター3、およびキャビネット
におけるハッチング部分は、控室との接続位置を示している。」

(2)引用文献4記載の技術的事項
上記(1)ア〜ウによれば、引用文献4には、次の技術的事項が記載されているといえる。

<引用文献4記載の技術的事項>
「業務用家具としてのサービスカウンター用の模様替え用化粧板及び該化粧板を化粧面に設けたサービスカウンターにおいて(【0001】)、
サービスカウンターで囲われた内側空間は、店舗従業員の主たる作業動線となること(【0004】)。」

第5 進歩性(特許法第29条第2項)について
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明を以下で対比する。

ア 引用発明の「顧客」、「店員」は、それぞれ、本願発明1の「顧客」、「店員」に相当する。引用発明の「追跡線」は、「顧客」及び「店員」が、撮影画像12に現れてから撮影画像12外に消えるまでの移動軌跡であるから、引用発明の「追跡線」は、本願発明1の「動線」に相当するが、引用発明において、「追跡線」は、描くにとどまり、「追跡線」そのものは取得していないから、引用発明の「追跡線を描いて追跡を行」うことと、本願発明1の「動線情報取得部」において取得される「顧客および店員の動線」は、「「顧客」及び「店員」の移動の態様の情報」である点で共通する。
よって、引用発明の、「人認識部3により認識された人を撮像画像12内で個別に追跡し、人が認識されると個々の人を一人ひとりその代表点Gごとに個別に人物コード番号が付与」し、「この代表点Gが撮像画像12内に現われてから撮像画像12外に消えるまで、または認識できなくなるまで追跡線(移動軌跡)を描いて追跡を行う」「追跡部4」と本願発明1の「顧客および店員の動線を取得する動線情報取得部」は、「顧客および店員の移動の態様の情報を取得する情報取得部」である点で共通する。

イ 引用発明の「店員判定部5」は、「追跡部4により追跡している個々の人のうち撮像画像12上に設定された立ち位置エリアB内に一定時間静止していた人は顧客ではなく店員であると判定」するものである。また、当該「立ち位置エリアB」は、「店員が立って来客を待つ位置、顧客の支払いに応対するレジの位置、警備員の待機位置」であって、「人認識部3による認識された人」が「店員」であるか否かを判別するために予め設定されるものであるから、本願発明1の「店舗における予め定められた所定領域」に相当するものである。
したがって、引用発明の、「店員が立って来客を待つ位置、顧客の支払いに応対するレジの位置、警備員の待機位置」を「立ち位置エリアB」とし、「追跡部4により追跡している個々の人のうち撮像画像12上に設定された立ち位置エリアB内に一定時間静止していた人は顧客ではなく店員であると判定」する「店員判定部5」と、本願発明1の「前記顧客および店員の動線のうち、前記動線の少なくとも一部が、店舗における予め定められた所定領域に含まれている動線を、店員の動線と判定し、前記顧客および店員の動線のうち、前記店員の動線と判定された以外の動線を顧客の動線と判定する判定部」は、「顧客および店員の情報のうち、前記情報の少なくとも一部が、店舗における予め定められた所定領域に含まれる情報を、店員の情報と判定する判定部」である点で共通する。

ウ 引用発明は、所定の情報を用いて「顧客」と「店員」の判定を行う装置であることから、引用発明と本願発明は「情報判定装置」である点で共通する。

(2)一致点及び相違点
以上のことから、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>
顧客および店員の移動の態様の情報を取得する情報取得部と、
前記顧客および店員の移動の態様の情報のうち、前記情報の少なくとも一部が、店舗における予め定められた所定領域に含まれている情報を、店員の情報と判定する判定部と、
を備える情報判定装置。

<相違点1>
情報取得部により取得され、判定部において判定に用いると共に判定される移動の態様の情報について、本願発明1は「顧客および店員」の「動線」情報であるのに対し、引用発明は「顧客および店員」の代表点Gから描かれる「追跡線」情報である点。

<相違点2>
情報取得部により取得され、判定部において判定される情報の内容について、本願発明1は「前記顧客および店員の動線のうち、前記店員の動線と判定された以外の動線を顧客の動線」と判定することで「店員」の情報に加えて「顧客」の情報も判定しているのに対し、引用発明は「店員」の情報であることの判定を行うものの「顧客」の情報であるかを判定しているか明らかでない点。

<相違点3>
本願発明1は「前記顧客が顔の画像を登録していた場合、前記顧客の動線に対応する画像を用いて、前記顧客の属性情報を抽出し、前記顧客が顔の画像を登録していない場合、前記顧客の動線に対応する画像を用いて、前記顧客の年齢および性別を特定し、特定した前記顧客の年齢および性別に基づき属性情報を抽出する属性抽出部」を備えるのに対し、引用発明はそのような属性抽出部を備えていない点。

(3)相違点についての判断
上記相違点3について検討する。
引用文献1には本願発明1の「前記顧客が顔の画像を登録していた場合、前記顧客の動線に対応する画像を用いて、前記顧客の属性情報を抽出し、前記顧客が顔の画像を登録していない場合、前記顧客の動線に対応する画像を用いて、前記顧客の年齢および性別を特定し、特定した前記顧客の年齢および性別に基づき属性情報を抽出する属性抽出部」に対応する構成は記載されておらず、当該構成は自明なものでもない。そして、引用発明において本願発明1の「属性抽出部」を備えることについて何ら示唆や動機づけもされておらず、引用文献1の記載事項から相違点3に係る構成を導出することができないことは明らかである。
そして、本願発明1は、相違点3に係る構成を有することにより「顧客に特別な行為を強いることなく領域における顧客の動線の分析を高精度で行うことができる。」(本願明細書段落【0010】)という効果を奏するものである。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2 本願発明2〜5について
本願発明2〜5は、本願発明1を減縮した発明であって、本願発明1の上記相違点3に係る構成を有するから、本願発明1と同様の理由により、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3 本願発明6について
本願発明6は、本願発明1の装置の発明に対応する方法の発明であり、本願発明1の上記相違点3に係る構成に対応する構成を有するから、本願発明1と同様の理由により、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

4 本願発明7について
本願発明7は、本願発明1の装置の発明に対応するプログラムの発明であり、本願発明1の上記相違点3に係る構成に対応する構成を有するから、本願発明1と同様の理由により、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第6 サポート要件(特許法第36条第6項第1号)について
当審拒絶理由において、請求項1、3〜8について通知したサポート要件違反の拒絶理由は、令和4年6月27日に提出された手続補正書による補正により、本願発明1〜7が令和3年1月25日に提出された手続補正書に記載された請求項2に対応する事項を特定事項として含むこととなったため、解消した。

第7 原査定についての判断
令和4年6月27日に提出された手続補正書による補正により、補正後の本願発明1〜7は、「前記顧客および店員の動線のうち、前記店員の動線と判定された以外の動線を顧客の動線と判定する」ことと、「前記顧客が顔の画像を登録していた場合、前記顧客の動線に対応する画像を用いて、前記顧客の属性情報を抽出し、前記顧客が顔の画像を登録していない場合、前記顧客の動線に対応する画像を用いて、前記顧客の年齢および性別を特定し、特定した前記顧客の年齢および性別に基づき属性情報を抽出する」ことという技術的事項を有するもののとなった。当該「前記顧客および店員の動線のうち、前記店員の動線と判定された以外の動線を顧客の動線と判定する」ことと、「前記顧客が顔の画像を登録していた場合、前記顧客の動線に対応する画像を用いて、前記顧客の属性情報を抽出し、前記顧客が顔の画像を登録していない場合、前記顧客の動線に対応する画像を用いて、前記顧客の年齢および性別を特定し、特定した前記顧客の年齢および性別に基づき属性情報を抽出する」ことは、原査定における引用文献2〜4には記載されておらず、本願出願日前における周知技術でもないので、本願発明1〜7は、当業者であっても、原査定における引用文献2〜4に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、本願発明1〜7は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
そして、本願発明1〜7は、引用文献2〜4に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
また、本願発明1〜7は、発明の詳細な説明に記載したものである。
したがって、原査定の理由及び当審拒絶理由によって本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-08-30 
出願番号 P2016-059142
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G06Q)
P 1 8・ 121- WY (G06Q)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 溝本 安展
中野 浩昌
発明の名称 動線判定装置、動線判定システム、動線判定方法及びプログラム  
代理人 棚井 澄雄  
代理人 森 隆一郎  
代理人 松沼 泰史  
代理人 伊藤 英輔  

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