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審決分類 審判 査定不服 特174条1項 取り消して特許、登録 A61B
管理番号 1388160
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-10-21 
確定日 2022-09-06 
事件の表示 特願2017−530665「機械学習を用いた医用イメージングの変換のためのシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 6月16日国際公開、WO2016/092394、平成30年 3月 1日国内公表、特表2018−505705、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)11月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2014年12月10日、米国)を国際出願日とする特許出願であって、手続の経緯は以下のとおりのものである。
令和元年 9月 6日付け 拒絶理由通知
令和2年 3月10日 意見書及び手続補正書の提出
令和2年 4月21日付け 拒絶理由通知
令和2年 7月28日 意見書及び手続補正書の提出
令和2年 9月11日付け 拒絶理由通知(最後)
令和3年 3月22日 意見書の提出
令和3年 6月15日付け 拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和3年10月21日 審判請求

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
令和2年7月28日提出の手続補正書でした補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
具体的には、当初明細書等には、入力画像として複数の異なる画像モダリティで取得した画像を利用することは記載されているものの、それら複数の入力画像の画像モダリティのいずれとも異なる画像モダリティの画像を、ターゲット画像とすることは明示されておらず、また、当初明細書等に接した当業者にとって、技術常識から自明であるということもできない、というものである。

第3 当審の判断
1.補正の内容
令和2年7月28日提出の手続補正書でした補正(以下、「本件補正」という。)は、複数の入力画像に関し、本件補正前の請求項1に記載した「各入力画像は異なる特徴を有する」を、本件補正後の請求項1において「各入力画像は異なる画像モダリティを用いて得られたものである」とする補正(以下、「補正事項1」という。)と、ターゲット画像に関し、本件補正前の請求項1に記載した「前記ターゲット画像の特徴は前記入力画像の特徴とは異なる」を、本件補正後の請求項1において「前記ターゲット画像の画像モダリティは前記入力画像の画像モダリティとは異なる」とする補正(以下、「補正事項2」という。)と、を含むものである。

2.検討
(1)当初明細書等の記載事項
当初明細書等には、以下の事項が記載されている(下線は当審が付与した。)。


「【技術分野】
【0001】
本出願は、概して、被験者の医用画像を生成するシステムおよび方法に関する。本発明は、医用画像をある画像モダリティから、その画像モダリティとは異なる第2の画像モダリティに変換するシステムおよび方法に関連する具体的な用途に応用でき、特にこれを参照して説明する。・・・」


「【0003】
場合によっては、1つのモダリティの画像しか利用できないことがある。1つの画像モダリティの画像を変換して、別のモダリティの画像をエミュレートすることが有利であり得る。例えば、MR解剖学的画像をCT減衰画像に変換して、それを以前のCT画像と比較することが有利であり得る。別の例では、MR画像は、PET画像再構成における減衰補正のためのCTのような減衰画像に変換することができる。別の臨床例では、一以上のMR画像から画像(例えば、疑似フルオロデオキシグルコース(FDG)/PET画像、背景身体信号抑制を伴う拡散強調全身画像(DWIBS)など)を生成する。これにより、診断の信頼性を犠牲にすることなく、被験者の放射線照射を潜在的に減少させることができる。コンピュータ支援診断の領域では、マルチパラメトリック画像は、被験者管理を助けるために使用することができる病変の根底にある病理に変換することができる。
【0004】
さまざまな医用イメージングモダリティにわたって相関を確立することが緊急に必要であるにもかかわらず、一以上の理由により、従来のアプローチまたは分析的アプローチを用いてそのような変換を実現することは困難である。第1に、医用画像は雑音が入りがちであり、これは被験者の具体的な解剖学的構造およびイメージング物理に依存して変化し得る。第2に、一般的には、異なるイメージングコントラスト及びモダリティの間に1対1の変換関係はない。例えば、空気と骨は共に背景雑音に非常に近いMR信号を有するが、CTイメージングでは、空気はほぼゼロの減衰を有し、骨は非常に高い減衰を有する。第3に、そのような変換の1つの事例に適用される変換プロセッサは、異なるイメージングモダリティの異なるイメージング物理のため、異なるアプリケーションには適用できない可能性がある。現在の技術は、あいまいさやエラーの影響を受けやすい。
【0005】
本出願は、上記の問題等を解消する、新しい改良されたシステムと方法を提供するものである。」


「【0016】
ステップ12では、候補被験者のターゲット領域の複数の入力画像20が取得される。複数の入力画像20は、入力群26に含まれる。いくつかの例では、入力群26は、k個の入力画像を含む。ここで、kは2以上の整数(例えば、k=10)である。一実施形態では、複数の画像20は、さまざまな特性を有する画像を生成するようにさまざまな方法で操作される、1つのタイプの診断イメージングスキャナ28を使用してすべて取得される。別の実施形態では、入力画像20は、二以上のタイプのスキャナから得られる。例えば、スキャナ28は、MR、CT、超音波、X線、ラジオグラフィー、核医学(例えば、PET、SPECTなど)、エラストグラフィ、触覚イメージング、光音響イメージング、サーモグラフィー、心エコー検査法、機能的近赤外分光法など)を含む既知の医用イメージングシステムの群から選択される。」


「【0025】
ステップ18では、出力ターゲット画像24が入力画像20から変換される。図6の実施形態では、出力画像の群24’が入力画像の群20から生成される。入力画像の群は、入力候補画像20を含み、出力画像の群24’は、一以上のターゲット出力画像24’を含む。画像24’は、MR、CT、超音波、X線、ラジオグラフィー、核医学、エラストグラフィ、触覚イメージング、光音響イメージング、サーモグラフィー、心エコー検査、および機能的近赤外分光法を含む第2の画像モダリティグループから選択されたターゲット画像20を含む。言うまでもなく、別の医用出力ターゲット画像を生成することができ、変換22’または複数の変換が、各ベクトル34を出力イメージャ24’の1つの対応するボクセルをそれぞれ表す複数のスカラー38’に変換する。」

(2)判断
ア 補正事項1について
上記(1)ウにおける下線部の記載から、複数の入力画像20は、二以上のタイプのスキャナから得られ、例えば、二以上のタイプのスキャナは、MR、CT、超音波、X線、ラジオグラフィー、核医学(例えば、PET、SPECTなど)、エラストグラフィ、触覚イメージング、光音響イメージング、サーモグラフィー、心エコー検査法、機能的近赤外分光法など)を含む既知の医用イメージングシステムの群から選択されることが理解できる。
そうすると、当初明細書等には、複数の入力画像の「各入力画像は異なる画像モダリティを用いて得られたものである」ことが記載されていると認められる。

イ 補正事項2について
上記(1)ア及びイの下線部の記載から、本発明が、ある画像モダリティの医用画像を変換して、その画像モダリティとは別の画像モダリティの医用画像を得ることを課題とし、当該変換を行うシステム及び方法を提供するものであることが理解できる。
そして、上記(1)エにおける下線部の記載からは、入力画像の群20から生成される一以上のターゲット出力画像24’は、MR、CT、超音波、X線、ラジオグラフィー、核医学、エラストグラフィ、触覚イメージング、光音響イメージング、サーモグラフィー、心エコー検査、および機能的近赤外分光法を含む第2の画像モダリティグループから選択されたターゲット画像を含む、ということが理解できる。
ここで、入力画像の群20から生成される一以上のターゲット出力画像24’に含まれるターゲット画像は、「第2の画像モダリティグループ」から選択されるものであるが、当該「第2の画像モダリティグループ」が、入力画像の群20の画像モダリティとどのような関係を有する画像モダリティグループであるのかについては、当初明細書等に明示的に記載されていない。
しかしながら、上述したように、本発明の課題が、ある画像モダリティの医用画像を変換して、その画像モダリティとは別の画像モダリティの医用画像を得ることであるということを踏まえると、「第2の画像モダリティグループ」の画像モダリティが、入力画像の群20の画像モダリティとは別の画像モダリティを意味するものであるということが理解できる。
そして、上記(2)アのとおり、当初明細書等に、入力画像の群である複数の入力画像の「各入力画像は異なる画像モダリティを用いて得られたものである」ことが記載されていることから、入力画像の群20の画像モダリティが、入力画像のそれぞれで異なる場合を含むものであることが理解でき、かつ、上記のとおり、「第2の画像モダリティグループ」の画像モダリティが、入力画像の群20の画像モダリティとは別の画像モダリティを意味するものであることが理解できることから、各入力画像が異なる画像モダリティを用いて得られた入力画像の群から生成される一以上のターゲット出力画像に含まれるターゲット画像の画像モダリティは、当該入力画像の群の画像モダリティとは異なるものであるといえる。
したがって、「前記ターゲット画像の画像モダリティは前記入力画像の画像モダリティとは異なる」ことは、当初明細書等の記載から導き出せる事項ということができる。

ウ そうすると、補正事項1および補正事項2は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないから、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるといえる。

エ そして、他に、本件補正が、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでないという理由もない。

オ したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないとはいえない。

第4 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2022-08-23 
出願番号 P2017-530665
審決分類 P 1 8・ 55- WY (A61B)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 福島 浩司
特許庁審判官 石井 哲
井上 香緒梨
発明の名称 機械学習を用いた医用イメージングの変換のためのシステムおよび方法  
代理人 伊東 忠重  
代理人 伊東 忠重  
代理人 宮崎 修  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 伊東 忠重  
代理人 宮崎 修  
代理人 宮崎 修  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 伊東 忠彦  

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