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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60L |
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管理番号 | 1388175 |
総通号数 | 9 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2022-09-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-11-01 |
確定日 | 2022-08-25 |
事件の表示 | 特願2017−219050「車両」拒絶査定不服審判事件〔令和元年 6月13日出願公開、特開2019−92279〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 この出願(以下「本願」という。)は、平成29年11月14日の出願であって、令和3年2月12日付け(発送日:同年2月24日)で拒絶理由が通知され、令和3年4月21日に意見書及び手続補正書が提出され、令和3年5月12日付け(発送日:同年5月18日)で最後の拒絶理由が通知され、令和3年7月12日に意見書及び手続補正書が提出され、令和3年8月6日付け(発送日:同年8月17日)で令和3年7月12日の手続補正の却下の決定とともに拒絶査定がされ、これに対して、令和3年11月1日に拒絶査定不服審判が請求され、それと同時に手続補正書が提出されたものである。 第2 令和3年11月1日にされた手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 令和3年11月1日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について (1)本件補正前(令和3年4月21日の手続補正書)の特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「【請求項1】 複数の電力設備のうちのいずれかに選択的に接続可能に構成された車両であって、 蓄電装置と、 前記車両に接続された前記電力設備から前記蓄電装置への充電、および前記蓄電装置から前記車両に接続された前記電力設備への放電を制御可能に構成された制御装置とを備え、 前記制御装置は、予め登録された場所が記憶された外部のサーバに前記車両の位置を示す情報を送信し、 前記制御装置は、前記車両に接続中の電力設備が前記サーバに記憶された前記予め登録された場所に設置されている場合には、前記車両に接続中の電力設備への放電を許可し、 前記制御装置は、前記車両に接続中の電力設備が前記予め登録された場所に設置されていない場合には、前記車両のユーザが予め定められた操作を行なったことを条件として前記車両に接続中の電力設備への放電を許可する、、車両。」 (2)そして、本件補正により、上述の本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載は、以下のとおり補正された(下線は、請求人が補正箇所を示すために付したものである。)。 「【請求項1】 複数の電力設備のうちのいずれかに選択的に接続可能に構成された車両であって、 蓄電装置と、 前記車両に接続された前記電力設備から前記蓄電装置への充電、および前記蓄電装置から前記車両に接続された前記電力設備への放電を制御可能に構成された制御装置とを備え、 前記制御装置は、前記車両に前記電力設備が接続された場合に、予め登録された場所が記憶された外部のサーバに前記車両の位置を示す情報を送信し、 前記制御装置は、前記サーバによって行なわれる前記車両の位置と前記予め登録された場所との照合結果に基づいて前記車両に接続中の電力設備が前記サーバに記憶された前記予め登録された場所に設置されていると判定される場合には、前記車両に接続中の電力設備への放電を許可し、 前記制御装置は、前記サーバによって行なわれる前記照合結果に基づいて前記車両に接続中の電力設備が前記予め登録された場所に設置されていないと判定される場合には、前記車両のユーザが予め定められた操作を行なったことを条件として前記車両に接続中の電力設備への放電を許可する、車両。」 2 本件補正の適否 (1)本件補正の内容 本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「制御装置」に関して、「予め登録された場所が記憶された外部のサーバに前記車両の位置を示す情報を送信し」とされていたものを「前記車両に前記電力設備が接続された場合に、予め登録された場所が記憶された外部のサーバに前記車両の位置を示す情報を送信し」と限定し、「前記車両に接続中の電力設備が前記サーバに記憶された前記予め登録された場所に設置されている場合には、前記車両に接続中の電力設備への放電を許可し」とされていたものを「前記サーバによって行なわれる前記車両の位置と前記予め登録された場所との照合結果に基づいて前記車両に接続中の電力設備が前記サーバに記憶された前記予め登録された場所に設置されていると判定される場合には、前記車両に接続中の電力設備への放電を許可し」と限定し、「前記車両に接続中の電力設備が前記予め登録された場所に設置されていない場合には、前記車両のユーザが予め定められた操作を行なったことを条件として前記車両に接続中の電力設備への放電を許可する」とされていたものを「前記サーバによって行なわれる前記照合結果に基づいて前記車両に接続中の電力設備が前記予め登録された場所に設置されていないと判定される場合には、前記車両のユーザが予め定められた操作を行なったことを条件として前記車両に接続中の電力設備への放電を許可する」と限定するものである。 また、「許可する、、車両」という誤記を「許可する、車両」と訂正するものである。 そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載された発明との産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮及び同第3号の誤記の訂正を目的とするものに該当する。 そして、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的としたものであるから本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するかについて、以下、検討する。 (2)引用文献 ア 引用文献1 原査定の拒絶理由に引用され、本願の出願日前に頒布された特開2012−178909号公報(以下「引用文献1」という。)には、「電力供給システム、電力供給装置及び電力供給方法」に関して、以下の事項が記載されている(下線は、当審が付与したものである。以下同様。)。 (ア)「【請求項4】 蓄電手段と、電力蓄積供給管理装置と、電力供給手段とを備え、外部電力装置と電気的に接続した場合に、前記蓄電手段から前記外部電力装置へ電力の供給を行う移動装置であって、 前記電力蓄積供給管理装置は、 前記蓄電手段から前記外部電力装置への電力の供給許可を判定する給電許可判定手段と、 前記外部電力装置に関する情報を取得する充電場所検出手段と、 前記充電場所検出手段が取得する又は前記移動装置の利用者により設定される前記外部電力装置に関する情報である充電場所情報と、前記移動装置の利用者により設定される前記給電許可判定手段が判定に用いる給電許可条件とを記憶する記憶手段と、 前記蓄電手段の充放電を制御する電力供給制御手段と、 を備え、 前記電力供給手段により前記外部電力装置と電気的に接続し、前記外部電力装置から電力供給の要求を受けた場合に、前記給電許可判定手段は、前記充電場所検出手段が取得する、前記外部電力装置を特定するための情報を含む取得情報が、前記記憶手段に予め記憶された前記給電許可条件を満たした場合に、電力の供給を許可し、 前記電力供給制御手段は、前記蓄電手段から前記受電手段への電力の放電を開始し、 前記外部電力装置への電力の供給を行う移動装置。 」 (イ)「【0017】 なお、図1は、電力供給システム1には、一つの移動装置100と一つの電力装置200を備えることを示すが、これに限定されず、複数の移動装置、複数の電力装置を備えてもよい。また、図1は、一の移動装置100が、一の電力装置200に対応しているように示しているが、これに限定されず、一の移動装置100が一つ以上の電力装置に対応し、逆に、一の電力装置200が一つ以上の移動装置100に対応してもよい。」 (ウ)「【0045】 (第二実施例) 図3は、本発明に係る第二実施例における電力供給システム1Aのブロック図を示す。適宜、図4〜図15を参照し、第二実施例を以下に説明する。 電力供給システム1Aは、走行用モータ等を備え自ら移動する車両100Aと、その車両100A以外の装置であって、電力を給電、受電、蓄電、送電、配電等を行う電力装置200Aを備える。車両100Aは、典型的には、EVやPHEVであるが、これに限定されず、電動機を備えた客車、貨車、路面電車などでもよい。電力装置200Aは、工作物又は建築物に備えられた設備に備えられ、電力系統2Aへ接続された受電装置、充電装置、配送電装置等を有する装置である。 【0046】 なお、図3は、電力供給システム1Aには、一つの車両100Aと一つの電力装置200Aを備えることを示すが、これに限定されないことは、第一実施例を示す図1及び図2と同様である。 【0047】車両100Aは、車両100Aが移動するための、走行用モータを動作させるために使用される電力を蓄積する蓄電手段110Aと、電力装置200Aと電気的に接続する移動装置側電力供給手段120Aと、車両100Aの電力を制御する電力蓄積供給管理装置130Aとを備える。蓄電手段110Aは、図4に示すEVでは、走行用の電力を蓄積する高圧バッテリ、電力蓄積供給管理装置130Aを含む電源制御ECUの制御の下で高圧バッテリの充放電を行うリレー、走行用モータを制御する走行電力管理装置を含む。また、蓄電手段110Aは、図5に示すPHEVでは、上記に加え、エンジンと発電装置を含む。移動装置側電力供給手段120Aは、車両側ソケットやACプラグである。」 (エ)「【0056】 電力装置200Aは、車両100Aとの間で通信を行う通信手段240Aを備える。通信手段240Aは、具体的には、図4及び図5に示すように、緊急充電用の電力装置200Aでは、電力装置側電力供給手段220Aの充放電ケーブルと通信手段220Aの一部である通信線は物理的に分かれている。また、普通充電用の電力装置200A’では、電力装置側電力供給手段220A’の充放電ケーブルと通信手段220A’の一部である通信線は物理的に同じであり、電力線通信を行う。車両側の対応する物理的な通信手段も同様である。」 (オ)「【0058】 <<電力蓄積供給管理装置>> 電源制御ECUが備える電力蓄積供給管理装置130Aをより詳しく説明する。 電力蓄積供給管理装置130Aは、充電場所の電力装置200Aに関する情報を取得する充電場所検出手段133A/提示情報所得手段136Aと、車両の状態に関する情報を取得する状態情報取得手段135Aと、電力装置200Aに関する情報の充電場所情報140Aと給電許可判定手段131Aが判定に用いる給電許可条件150Aとを記憶する記憶手段134Aと、蓄電手段110A(具体的には、走行用の高圧バッテリ)から受電手段210Aへの電力の供給許可を判定する給電許可判定手段131Aと、走行用高圧バッテリの充放電を制御する電力供給制御手段132Aと、を備える。また、さらに、利用者とのインターフェースとなる情報入力手段137Aを備える。 【0059】 <充電場所検出手段、提示情報所得手段> 充電場所検出手段133A及び提示情報所得手段136Aは、通信手段240Aを介して電力装置200Aから充電場所情報などの情報を取得する。充電場所検出手段133Aが電力装置200Aに関するより詳細な情報を取得することができるため、その取得した情報に基づき判定する給電許可判定手段131Aは、その詳細な情報を基に判定することができる。これにより、よりきめの細かい条件で、車両100Aから電力装置200Aに電力を供給する電力供給システム1Aを提供できる。」 (カ)「【0102】 ・・<放電許可条件> 放電許可条件154Aは、充電場所条件、状態情報条件、充電付帯条件の設定条件が満たされた場合に、電力の供給を許可するか許可しないかの判定に使用される。図14に示されるように、基本形は、「許可する」と「許可しない」のチェックは排他的に設定され、いずれかがチェックされた状態となる。拡張形では、「自宅なら常に許可」、帰宅できる範囲で許可」、「常に禁止」などの条件を選択できる。また、後述するように、利用者自ら設定する条件式により設定することもでき、柔軟な許可条件を設定できる。 【0103】 <給電許可判定手段> 給電許可判定手段131Aは、上記条件に従い、充電場所検出手段133Aが取得した情報に基づき、電力供給の許可/不許可を判定する。給電許可判定手段131Aの判定のしかたを、図15を参照して説明する。なお、図15は、判定のしかたの例示である。」 (キ)「【0106】 <電力供給制御手段> 電力供給制御手段132Aは、蓄電手段110Aから電力装置200Aの受電手段210Aへの電力の充放電の開始と終了を制御する。具体的には、図6に示すリレー制御手段303が、リレーRY1〜4 304を制御し、電力の充放電を制御する。より具体的には、普通充電の場合は、電源制御ECUは、リレーRY1とリレーRY2をクローズする。これにより、高圧バッテリ→RY1→走行電力管理装置→RY2→高圧バッテリという通電経路ができ、充電装置(普通充電器)はその経路に並列接続され、そこから電力系統に放電する。」 (ク)「【0120】 「自宅なら常に許可」は充電場所が自宅であると判定されたら、常に許可する設定となる。「帰宅できる範囲で許可」は自宅までの距離をもとに帰宅できる範囲のバッテリ残量が残る範囲で放電が許可される設定となる。「常に禁止」のチェックボックスをチェックすれば常に放電が許可される。「常に許可」のチェックボックスをチェックすれば常に放電が禁止される。」 (ケ)「【0123】 式を用いることで、画面上で入力可能な設定条件の制約を受けることなく、放電を許可する条件を設定することができる。式は、設定番号ごとにそれぞれ複数設定することができる。式は以下のような記法で入力する。 If 条件式1 = True Then アクション 論理演算子のAnd、Or、Notで複数の式を組み合わせることが可能で、アクションは条件を満たす場合と満たさない場合にそれぞれ指定することができる。括弧の ( と ) を用いて、演算の順序を指定できる。 If ((条件式1) or (条件式2)) = True Then アクション1 Else アクション2 End If 【0124】 条件式として、充電場所に関する条件または、状態情報に関する条件を入力できる。アクションは「放電許可」、「放電不許可」、「通知する」、「通知しない」、「利用者に確認する」、「利用者に確認しない」のいずれかを指定できる。図16のように、アクションとして「放電許可」を指定すると、条件が満たされたときに放電が許可される。アクションとして「放電不許可」を指定すると、条件が満たされたときに放電が許可されない。アクションとして「通知する」を指定すると、条件が満たされたときに放電が利用者に通知される。アクションとして「通知しない」を指定すると、条件が満たされたときに放電が通知されない。アクションとして「利用者に確認する」を指定すると、条件が満たされたときに利用者に放電を許可するかどうか確認される。アクションとして「利用者に確認しない」を指定すると、条件が満たされたときに利用者に放電を許可するかどうか確認されない。」 (コ)「【0130】 ACCがオンの場合、S20に戻る。ACCがオフの場合、S50にて、電力蓄積供給管理装置130Aは、充放電ケーブルが接続されているか、即ち、車両100Aと電力装置200Aが電気的に接続されているかチェックする。接続されていない場合、以下の実行はなされない。接続されている場合、S60にて、電力蓄積供給管理装置130Aは、充電開始操作があったかチェックする。充電開始操作があった場合、充放電処理S200が行われる。接続されていない場合及び充放電処理S200が実行された後、S70にて、電力蓄積供給管理装置130Aは、充放電ケーブルが取り外されたかチェックする。取り外されていない場合、S70に戻り、充放電ケーブルが取り外されたかチェックする。取り外されている場合、S80にて、電力蓄積供給管理装置130Aは、充放電の終了を指令する。」 上記記載事項を総合し、本件補正発明の記載ぶりに則って整理すると、引用文献1には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。また、以下の事項(以下「引用文献1記載事項」という。)が記載されている。 〔引用発明〕 「複数の電力装置200Aに対応し、電気的に接続する車両100Aであって、 蓄電手段110Aと、 電力蓄積供給管理装置130Aとを備え、 電力蓄積供給管理装置130Aは、充電場所の電力装置200Aに関する情報を取得する充電場所検出手段133Aと、車両の状態に関する情報を取得する状態情報取得手段135Aと、電力装置200Aに関する情報の充電場所情報140Aと給電許可判定手段131Aが判定に用いる給電許可条件150Aとを記憶する記憶手段134Aと、蓄電手段110Aから受電手段210Aへの電力の供給許可を判定する給電許可判定手段131Aと、走行用高圧バッテリの充放電を制御する電力供給制御手段132Aと、を備え 電力供給制御手段132Aは、蓄電手段110Aから電力装置200Aの受電手段210Aへの電力の充放電の開始と終了を制御し、 充電場所検出手段133Aは、車両100Aに電力装置200Aが接続された場合、充放電ケーブルと物理的に同じである通信手段240Aを介して電力装置200Aから充電場所情報などの情報を取得し、給電許可判定手段131Aは、その取得した情報に基づき判定し、 給電許可判定手段131Aは、充電場所検出手段133Aが取得した充電場所情報などの情報に基づき、充電場所が自宅であると判定されたら電力供給を許可する、車両100A。」 〔引用文献1記載事項〕 「条件式として充電場所に関する条件を入力し、アクションとして「利用者に確認する」を指定すると、条件が満たされたときに利用者に放電を許可するかどうか確認されること。」 イ 引用文献2 原査定の拒絶理由に引用され、本願の出願日前に頒布された国際公開第2017/037911号(以下「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。 (ア)「[0072] 実施例1では、電気自動車Dの管理を車外に設置された管理サーバ20によって行う例を示した。しかしながら、電気自動車Dが、自車両に設定された使用条件に基づいて車両の使用管理を行う管理サーバとしての機能を有していてもよい。つまり、電気自動車D自身が、車載コントローラであるEVメインコントローラ10と、管理サーバ20とを有するものであってもよい。」 (3)対比・判断 ア 一致点、相違点 本件補正発明と引用発明とを対比すると、後者の「電力装置200A」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、前者の「電力設備」に相当し、以下同様に、「車両100A」は「車両」、「自宅」は「予め登録された場所」に、「電力供給」は「放電」に、それぞれ相当する。 そして、車両と電力設備が電気的に接続される場合には、充電場所と車両の位置は一致しているから、後者の「充電場所情報などの情報」は前者の「車両の位置を示す情報」又は「車両の位置」に相当する。 また、後者の「電力蓄積供給管理装置130A」並びにその一部である「電力供給制御手段132A」及び「給電許可判定手段131A」は、同様に、前者の「制御装置」に相当する。そうすると、後者の「電力供給制御手段132Aは、蓄電手段110Aから電力装置200Aの受電手段210Aへの電力の充放電の開始と終了を制御」することは、前者の「制御装置」が「前記車両に接続された前記電力設備から前記蓄電装置への充電、および前記蓄電装置から前記車両に接続された前記電力設備への放電を制御可能に構成され」ていることに相当する。さらに、後者の「給電許可判定手段131Aは、充電場所検出手段133Aが取得した情報に基づき、充電場所が自宅であると判定されたら電力供給を許可する」ことと前者の「前記制御装置は、前記サーバによって行なわれる前記車両の位置と前記予め登録された場所との照合結果に基づいて前記車両に接続中の電力設備が前記サーバに記憶された前記予め登録された場所に設置されていると判定される場合には、前記車両に接続中の電力設備への放電を許可」することとは、「前記制御装置は、前記車両の位置と前記予め登録された場所との照合結果に基づいて前記車両に接続中の電力設備が前記予め登録された場所に設置されていると判定される場合には、前記車両に接続中の電力設備への放電を許可する」という限りにおいて一致する。 そして、後者において「充電場所検出手段133Aは、車両100Aに電力装置200Aが接続された場合、充放電ケーブルと物理的に同じである通信手段240Aを介して電力装置200Aから充電場所情報などの情報を取得し、給電許可判定手段131Aは、その取得した情報に基づき判定」するためには、充電場所検出手段133Aから充電場所情報などの情報を給電許可判定手段131Aに送信する必要があることは明らかであるから、後者の「充電場所検出手段133Aは、車両100Aに電力装置200Aが接続された場合、充放電ケーブルと物理的に同じである通信手段240Aを介して電力装置200Aから充電場所情報などの情報を取得し、給電許可判定手段131Aは、その取得した情報に基づき判定」することと前者の「前記制御装置は、前記車両に前記電力設備が接続された場合に、予め登録された場所が記憶された外部のサーバに前記車両の位置を示す情報を送信し、」とは、「制御装置は、車両に電力設備が接続された場合に、車両の位置を示す情報を送信」するという限りにおいて一致する。 さらに、後者の「複数の電力装置200Aに対応し、電気的に接続する車両100A」は、前者の「複数の電力設備のうちのいずれかに選択的に接続可能に構成された車両」に相当する。 よって、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。 〔一致点〕 「複数の電力設備のうちのいずれかに選択的に接続可能に構成された車両であって、 蓄電装置と、 前記車両に接続された前記電力設備から前記蓄電装置への充電、および前記蓄電装置から前記車両に接続された前記電力設備への放電を制御可能に構成された制御装置とを備え、 前記制御装置は、前記車両に前記電力設備が接続された場合に、前記車両の位置を示す情報を送信し、 前記制御装置は、前記車両の位置と前記予め登録された場所との照合結果に基づいて前記車両に接続中の電力設備が前記予め登録された場所に設置されていると判定される場合には、前記車両に接続中の電力設備への放電を許可する、 車両。」 〔相違点1〕 本件補正発明は、「制御装置は、」「予め登録された場所が記憶された外部のサーバに前記車両の位置を示す情報を送信し、」「前記車両の位置と前記予め登録された場所との照合」が「サーバによって行なわれる」のに対して、引用発明は、「充電場所検出手段133Aが取得した情報に基づき、充電場所が自宅であると判定」するのが車両100Aに備えられた「給電許可判定手段131A」である点。 〔相違点2〕 本件補正発明は、「前記制御装置は、」「前記車両に接続中の電力設備が前記予め登録された場所に設置されていないと判定される場合には、前記車両のユーザが予め定められた操作を行なったことを条件として前記車両に接続中の電力設備への放電を許可する」のに対して、引用発明は、充電場所が自宅でないと判定された場合に、どのような条件で電力供給を許可するか特定されていない点。 イ 相違点1についての判断 車両制御の技術分野において、車両の制御を行う場所を、外部のサーバ又は車両に備えられた制御装置のいずれかとすることは、引用文献2に記載されている。 そして、引用発明は車両制御の技術分野に属するものであり、上記引用文献2に記載された事項を採用できないとする理由もないから、引用発明において、上記引用文献2に記載された事項に基づき車両の位置と予め登録された場所との照合を外部のサーバで行うようにすることは、当業者が容易に行うことができたことである。その際に、外部サーバに予め登録された場所を記憶させること及び車両の位置を示す情報を外部サーバに送信することは、それに伴って必然的になされる情報処理上の設計変更に過ぎない。 よって、引用発明において、引用文献2に記載された事項に基づき本件補正発明の相違点1に係る発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。 なお、上記引用文献2に記載された事項は、例えば、本願の出願日前に頒布された特開2013−104683号公報の段落【0067】にも以下のとおり記載されており、周知技術といえるものである。 「【0067】 また、本実施形態では、車両制御部10は、その内部に地図情報を記憶した記憶装置16を備え、ナビゲーションに関連する演算処理等はNCU14が独立して(スタンドアローンで)処理する構成となっているが、これに限らず、NCU14のナビゲーション機能の一部を自車両の外部に設置されたサーバに委託する形態とし、NCU14は、通信制御部22を介して、サーバに対し処理に必要な情報を送信し、サーバから当該処理の結果を受信する構成とすることができる。また、NCU14は、サーバに対し当該サーバが保存する情報(例えば地図情報)を要求して取得する構成とすることもできる。」 ウ 相違点2についての判断 引用文献1記載事項において、条件式を「車両に接続中の電力設備が予め登録された場所に設置されていない」とし、アクションとして「利用者に確認する」を指定すれば、相違点2に係る本件補正発明の発明特定事項の制御が行われることになる。 そして、利用者がそのように設定できるようになっていることから、引用発明はそのような制御を行うことも想定されているといえる。 よって、引用発明において、本件補正発明の相違点2に係る発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。 オ 効果について 本件補正発明は、全体としてみても、引用発明及び周知技術から予測し得ない格別な効果を奏するものではない。 (4)まとめ 以上のとおりであるから、本件補正発明は、引用発明、引用文献1記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際、独立して特許を受けることができないものである。 3 むすび 上記のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 よって、上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1及び2に係る発明は、令和3年4月21日の手続補正書により補正された請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものであって、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、第2 [理由] 1(1)に記載したとおりのものである。 2 原査定の拒絶理由の概要 原査定の拒絶理由の概要は以下のとおりである。 (進歩性)本願の下記の請求項に係る発明は、その出願日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前に発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 (引用文献等については引用文献等一覧参照) ・請求項 1−2 ・引用文献等 1−2 <引用文献等一覧> 1.特開2012−178909号公報 2.国際公開第2017/037911号(周知技術を示す文献) 3 引用文献1及び2、引用発明及び引用文献2記載事項 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及び2、引用発明、引用文献1記載事項及び引用文献2記載事項は、第2[理由]2(2)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、実質的に第2[理由]2で検討した本件補正発明における「制御装置」に関して、「前記車両に前記電力設備が接続された場合に、予め登録された場所が記憶された外部のサーバに前記車両の位置を示す情報を送信し」とされていたものを「予め登録された場所が記憶された外部のサーバに前記車両の位置を示す情報を送信し」と一部の限定を削除し、「前記サーバによって行なわれる前記車両の位置と前記予め登録された場所との照合結果に基づいて前記車両に接続中の電力設備が前記サーバに記憶された前記予め登録された場所に設置されていると判定される場合には、前記車両に接続中の電力設備への放電を許可し」とされていたものを「前記車両に接続中の電力設備が前記サーバに記憶された前記予め登録された場所に設置されている場合には、前記車両に接続中の電力設備への放電を許可し」と一部の限定を削除し、「前記サーバによって行なわれる前記照合結果に基づいて前記車両に接続中の電力設備が前記予め登録された場所に設置されていないと判定される場合には、前記車両のユーザが予め定められた操作を行なったことを条件として前記車両に接続中の電力設備への放電を許可する」とされていたものを「前記車両に接続中の電力設備が前記予め登録された場所に設置されていない場合には、前記車両のユーザが予め定められた操作を行なったことを条件として前記車両に接続中の電力設備への放電を許可する」と一部の限定を削除するものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、第2[理由]2(3)に記載したとおり、引用発明、引用文献1記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も実質的に同様の理由により、引用発明、引用文献1記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。 |
審理終結日 | 2022-06-23 |
結審通知日 | 2022-06-28 |
審決日 | 2022-07-12 |
出願番号 | P2017-219050 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B60L)
|
最終処分 | 02 不成立 |
特許庁審判長 |
水野 治彦 |
特許庁審判官 |
沼生 泰伸 山本 信平 |
発明の名称 | 車両 |
代理人 | 特許業務法人深見特許事務所 |