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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F24F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F24F |
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管理番号 | 1388178 |
総通号数 | 9 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2022-09-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-11-04 |
確定日 | 2022-08-12 |
事件の表示 | 特願2020−546652「空気調和システム」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 3月19日国際公開、WO2020/054055〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2018年9月14日を国際出願日とする出願であって、その手続の主な経緯は以下のとおりである。 令和2年8月24日に上申書の提出 令和3年6月9日付けで拒絶理由通知 令和3年8月10日に意見書及び手続補正書の提出 令和3年8月25日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。;令和3年8月31日発送) 令和3年11月4日に拒絶査定不服審判の請求及びその請求と同時に手続補正書の提出 令和4年1月14日に上申書の提出 第2 令和3年11月4日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和3年11月4日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) 本件補正は、本件補正前に下記(2)のとおりであった特許請求の範囲の記載を、下記(1)のとおり補正することを含むものである。 (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により、特許請求の範囲の記載は、次のとおり補正された。(下線は、補正箇所を示すために請求人が付したものである。) 「【請求項1】 室外側制御装置を有する室外ユニットと、 指示に基づいて機器の制御を行う室内側制御装置を有する複数台の室内ユニットと、 前記室外ユニットと複数台の前記室内ユニットとの間をそれぞれ通信接続する複数の通信線と、 リモコン制御装置を有し、前記室内ユニットとの間で、無線通信を行うリモートコントローラとを有する空気調和システムであって、 前記室内ユニットは、前記室内ユニットを識別する識別番号の設定が行われる室内側設定装置を有し、 前記室内側制御装置は、前記リモートコントローラから前記指示を含む信号が送られると、設定された識別信号に基づいて、前記機器の制御を行うかどうかを判定し、前記通信線を介して、前記指示を含む信号を、前記室外ユニットに送り、 前記室外側制御装置は、前記通信線を介して送られた信号に含まれる前記識別信号に基づいて、指示対象の前記室内ユニットを判定し、前記指示対象の前記室内ユニットに、前記通信線を介して、前記指示を含む信号を送り、 前記リモートコントローラは、リモコン表示装置を有し、 前記リモコン制御装置は、前記室内ユニットから送られる信号に基づいて、複数台における前記室内ユニットの冷房または暖房の別および設定温度の状態を前記リモコン表示装置に一度に表示させる空気調和システム。 【請求項2】 前記室内ユニットは、報知信号に基づいて報知を行う報知装置を備え、 前記室内側制御装置は、前記通信線を介して、前記室外ユニットから前記指示が送られると、前記報知信号を送って前記報知装置に報知させる請求項1に記載の空気調和システム。 【請求項3】 前記リモートコントローラは、前記指示対象となる前記室内ユニットが選択設定されるリモコン選択装置を有し、 前記リモートコントローラから送られる前記指示を含む信号には、前記リモコン選択装置において選択設定された前記室内ユニットの前記識別番号がデータとして含まれる請求項1または請求項2に記載の空気調和システム。 【請求項4】 前記リモコン選択装置は、切替スイッチである請求項3に記載の空気調和システム。 【請求項5】 前記リモートコントローラは、直接的に通信している前記室内ユニットに係る状態については、他の前記室内ユニットよりも前記リモコン表示装置に大きく表示させる請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の空気調和システム。 【請求項6】 3台以上の前記室内ユニットが、前記通信線により、前記室外ユニットと通信接続されている請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の空気調和システム。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲の記載 本件補正前の、令和3年8月10日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の記載は次のとおりである。 「【請求項1】 室外側制御装置を有する室外ユニットと、 指示に基づいて機器の制御を行う室内側制御装置を有する複数台の室内ユニットと、 前記室外ユニットと複数台の前記室内ユニットとの間をそれぞれ通信接続する複数の通信線と、 リモコン制御装置を有し、前記室内ユニットとの間で、無線通信を行うリモートコントローラとを有する空気調和システムであって、 前記室内ユニットは、前記室内ユニットを識別する識別番号の設定が行われる室内側設定装置を有し、 前記室内側制御装置は、前記リモートコントローラから前記指示を含む信号が送られると、設定された識別信号に基づいて、前記機器の制御を行うかどうかを判定し、前記通信線を介して、前記指示を含む信号を、前記室外ユニットに送り、 前記室外側制御装置は、前記通信線を介して送られた信号に含まれる前記識別信号に基づいて、指示対象の前記室内ユニットを判定し、前記指示対象の前記室内ユニットに、前記通信線を介して、前記指示を含む信号を送り、 前記リモートコントローラは、リモコン表示装置を有し、 前記リモコン制御装置は、前記室内ユニットから送られる信号に基づいて、複数台の前記室内ユニットに係る状態を、前記リモコン表示装置に表示させる空気調和システム。 【請求項2】 前記室内ユニットは、報知信号に基づいて報知を行う報知装置を備え、 前記室内側制御装置は、前記通信線を介して、前記室外ユニットから前記指示が送られると、前記報知信号を送って前記報知装置に報知させる請求項1に記載の空気調和システム。 【請求項3】 前記リモートコントローラは、前記指示対象となる前記室内ユニットが選択設定されるリモコン選択装置を有し、 前記リモートコントローラから送られる前記指示を含む信号には、前記リモコン選択装置において選択設定された前記室内ユニットの前記識別番号がデータとして含まれる請求項1または請求項2に記載の空気調和システム。 【請求項4】 前記リモコン選択装置は、切替スイッチである請求項3に記載の空気調和システム。 【請求項5】 前記リモートコントローラは、直接的に通信している前記室内ユニットに係る状態については、他の前記室内ユニットよりも前記リモコン表示装置に大きく表示させる請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の空気調和システム。 【請求項6】 3台以上の前記室内ユニットが、前記通信線により、前記室外ユニットと通信接続されている請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の空気調和システム。」 2 補正の適否 本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された、「複数台の前記室内ユニットに係る状態を、前記リモコン表示装置に表示させる」ことについて、本件補正後の請求項1において、「複数台における前記室内ユニットの冷房または暖房の別および設定温度の状態を前記リモコン表示装置に一度に表示させる」とし、リモコン表示装置に表示させる複数台の室内ユニットに係る状態の内容及びその表示態様を限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下検討する。 <特許法第29条第2項(進歩性)について> (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1(1)の請求項1に記載した事項により特定されるとおりのものである。 (2)引用文献 ア 引用文献1 (ア)引用文献1の記載 原査定の拒絶の理由で引用された文献であって、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開平8−200778号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある。(なお、下線は当審において付したものである。以下同様。) 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、空気調和機に係り、より詳しくは、複数の室内ユニットと室外に設けられた単一の室外ユニットとにより、室内ユニットが配置された室内の空気調和を行う空気調和機に関する。 【0002】 【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】従来より、複数の室内の各々に各1台設けられた複数の室内ユニットと室外に設けられた単一の室外ユニットとにより、室内ユニットが配置された室内の空気調和を行う空気調和機が知られている。 【0003】この空気調和器では、室内ユニットが設けられた複数の室内の各々にリモートコントローラ(以下、リモコンと称す。)を備え、リモコンにより該室内ユニットの各々を独立して遠隔操作している。従って、例えば、居間に備えれたリモコンにより、他の室内、例えば、寝室に設けられた室内ユニットを遠隔操作することは困難である、という問題があった。 【0004】斯かる問題を解決するためには、複数の室内ユニットの各々を相互に配線で接続することが考えられる。しかしながら、このようにすると、室内ユニットの数が多くなれば、配線数も多くなりかつ複雑になってしまう、という問題がある。 【0005】本発明は、上記問題点を解決する空気調和機を提供することを目的とする。」 「【0015】そして、本発明では、複数の室内ユニットの各々に備えられた送受信手段は、配線により室外ユニットを介して他の室内ユニットに情報の送信又は他の室内ユニットから情報を受信する。 【0016】ここで、配線により室外ユニットを介して他の室内ユニットに送信する情報、他の室内ユニットから受信する情報には、例えば、他の室内ユニットの運転モード(例えば、冷房モード、暖房モード、ドライモード及び自動運転モード)を設定する情報、他の室内ユニットの設定温度、設定湿度を設定する情報等の第1の情報や、この第1の情報に基づいて運転を開始したことを表す第2の情報がある。」 「【0022】 【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照して詳細に説明する。本実施例の空気調和機(エアコン)は、図1に示すように、複数の室内〔本実施例では3室(なお、3室に限定されない。)〕の各々に各1台つづ配置された室内ユニット10A、10B、10C、室外に設置された1台の室外ユニット12を備えている。」 「【0028】図3は、室内ユニット10Aの電気回路を示すものであり、この電気回路は電源基板70及びコントロール基板72を備えている。電源基板70には、室内に供給される風量を調整するファンモータ70Eが接続された駆動回路70A、各種モータを駆動するための電力を生成するモータ電源回路70B、制御回路用の電力を生成する制御回路用電源回路70C、及びシリアル回路用の電力を生成するシリアル回路用電源回路70Dが設けられている。 【0029】コントロール基板72には、シリアル回路用電源回路70Dに接続されたシリアル回路72A、モータを駆動する駆動回路72B、及びマイクロコンピュータ(マイコン)72Cが設けられている。駆動回路72Bには、フラップを上下動させる上下フラップモータ74A、左右フラップモータ74B、74C、床面全面の温度を検出するために床面の温度を検出するフロアセンサを回転駆動するフロアセンサモータ74D及び流量可変弁62が接続されている。 【0030】また、マイコン72Cには、表示基板76に設けられた運転モード等を表示する表示用LED、光センサ、リモートコントローラからの操作信号を受信する受信回路が接続され、さらにセンサ基板78に設けられた床面の温度検出エリアを表示するエリアLED及びフロアセンサをが接続されている。さらに、マイコン72Cには、室温を検出する室温センサ80A、室内熱交換器16の冷媒コイルの温度を検出する熱交換器用温度センサ80B、室内の湿度を検出する湿度センサ80Cが接続されると共に、スイッチ基板82に設けられた自己診断用LED、運転モードを切り換える運転切換スイッチ及び自己診断スイッチが接続されている。この運転切換スイッチには、運転モードの表示が設けられており、現在の運転モードが表示基板76に設けられた表示用LEDによって表示される。この運転切換スイッチは、図示しない運転モード切換スイッチを備えたリモートコントローラによる遠隔操作によって切り換えられるが、手動で切り換えることもできる。」 「【0031】図4は、室外ユニット12の電気回路を示すものであり、この電気回路は整流回路100及びコントロール基板102を備えている。なお、室外ユニット12の電気回路は、[1]〜[2](当審注:丸付き数字の○を[]で代用した。以下同様。)において図2の室内ユニット10Aの電気回路に接続されている。なお、室外ユニット12の電気回路は、他の室内ユニット10B、10Cの電機回路にも同様に接続されている。 【0032】コントロール基板102には、室内ユニット10Aのシリアル回路用電源回路70Dに接続されたシリアル回路102A、室内ユニット10Bのシリアル回路用電源回路に接続されたシリアル回路120A、室内ユニット10Cのシリアル回路用電源回路に接続されたシリアル回路130A、ノイズを除去するノイズフィルタ102B、102C、120D、インバータ104をスイッチングするための電力を生成するスイッチング電源回路102E、マイコン102Fが設けられている。」 「【0035】また、マイコン102Fは、切換弁を制御してバーナーに供給されるガス流量を制御し、バーナーの燃焼度合いを制御して温水の温度を制御するバーナーコントローラ108、外気温度を検出する外気温度サーミスタ110A、室外熱交換器28の冷媒コイルの温度を検出するコイル温度サーミスタ110B、コンプレッサの温度を検出するコンプレッサ温度サーミスタ110Cが接続されている。なお、112Aはファンモータ、112Bはファンモータ用コンデンサである。 【0036】室内ユニット10A、10B、10Cの各々のマイコン72Cと室外ユニット12のマイコン102Fとは、インターフェース(I/F)152(図3参照)、インターフェース142、144、146(図4参照)を介して、情報通信用の配線(以下、通信線と称す)14A、14B、14Cにより接続されている図1、図3の[4]及び図4の[4]参照)。この通信線14A、14B、14Cの各々は、3本の線からなり、1本はGND用の線であり、他の2本はH(ハイ)/L(ロー)の電圧信号を送信するための信号線である。この2本の信号線を用いて所定情報を送信するようにしている。例えば、L信号に続いてL信号を送信するとオフ情報を送信し、L信号に続いてH信号を送信すると温水を高温(例えば、82℃)にするための指令情報を送信し、H信号に続いてL信号を送信すると温水を低温(例えば、62℃)にするための指令情報を送信することになる。」 「【0037】次に、本実施例の作用を説明する。なお、本実施例は、後述するように、室内ユニット10Aが配置された室内に備えられた図示しないリモコンからの操作信号により、室内ユニット10Bを遠隔制御する場合を例にとり説明する。なお、室内ユニット10Aが配置された室内にリモコンを備える場合に限定されるものでなく、他の室内ユニットが配置された室内にリモコンを備え、該リモコンが備えられた室内に配置された室内ユニット以外の室内ユニットをリモコンにより制御するようにしてもよい。また、リモコンにより遠隔操作する場合に限定されるものでなく、室内ユニットに手動で操作情報を入力するようにしてもよい。 【0038】まず、各室内ユニット10A、10B、10Cの各々のマイコン72Cによる制御ルーチンを、図5に示したフローチャートを参照して説明する。 【0039】ステップ202で、リモコンから操作信号を受信したか否かを判断する。ここで、操作信号に含まれる操作情報には、例えば、室内ユニット10Bの運転をオン、オフする情報、室内ユニット10Bの運転モードを冷房モード、暖房モード、ドライモード及び自動運転モードのいずれかに設定する情報、室内ユニット10Bをタイマー運転する情報(例えば、何時間経過した後に運転を開始する情報、又は、何時間経過した後に運転を停止する情報)、室内ユニット10Bの目標温度を設定する情報(16℃〜30℃まで、1℃単位に設定する情報)、更に、室内ユニット10Bを識別する識別情報がある。 【0040】ステップ202の判断が否定判定の場合には、ステップ204で、室外ユニット12から制御信号を受信したか否かを判断する。なお、制御信号に含まれる情報には、前記操作信号と略同一の運転制御情報及び室内ユニットのいずれかの運転が開始したことをリモコンに表示させるための表示情報がある。 【0041】ステップ204の判断が否定判定の場合には、ステップ202に戻って、再度操作信号を受信したか否かを判断する。一方、リモコンから操作信号が送信され、室内ユニット10Aが該操作信号を受信した場合には、ステップ202の判断が肯定判定となり、この場合には、ステップ206で、前記識別情報に基づいて、操作信号が自己の室内ユニット10Aに対するものか否かを判断する。該判断が肯定判定の場合には、ステップ208で、操作情報に基づいて空調制御を行って、本処理を終了する。一方、ステップ206の判断が否定判定の場合には、他の室内ユニット10B(又は室外ユニット10C)の空調制御用の操作信号を受信したことになるので、ステップ210で、操作情報を通信線14Aを介して室外ユニット12に送信して、本処理を終了する。 【0042】一方、ステップ204の判断が肯定判定となった場合には、ステップ212で、前記制御信号に運転制御情報が含まれているか否かを判断する。該判断が肯定判定の場合には、他の室内ユニットから操作情報が室外ユニット12を介して送信され、後述するように室外ユニット12がこれを受信し、該操作情報を制御情報として室内ユニット10Aに送信したものであるので、ステップ214で、運転制御情報に基づいて空調制御を行い、ステップ216で、運転制御情報に基づいて空調制御を行ったことを表す情報(前述した表示情報)を通信線14Aを介して室外ユニット12に送信して、本処理を終了する。 【0043】一方、ステップ212の判断が否定判定の場合には、室外ユニット12から表示情報を含んだ制御信号を受信したことになるので、ステップ218で、表示情報をリモコンに送信する。該制御情報を受信したリモコンは、室内ユニット10Bの運転が開始したことを、該当するLEDを発光させることにより、表示する。」 「【0048】以上説明したように本実施例では、複数の室内ユニットの各々が通信線を介して室外ユニットに接続されているため、室内ユニット間を通信線で接続しなくとも、ある室内ユニットから室外ユニットを介して他の室内ユニットに操作情報を通信線を介して送信することができ、これにより、通信線の配線数を少なくすることができる。 【0049】また、前述した実施例では、ある室内ユニットから室外ユニットを介して他の室内ユニットに操作情報を送信し、他の室内ユニットから操作情報に基づいて空調制御を開始したことを表す情報(表示情報)が室外ユニットを介して前述したある室内ユニットに送信された場合、この室内ユニットはこの表示情報をリモコンに送信し、リモコンは他の室内ユニットが空調制御を開始したことを該当するLEDを発光することにより、表示していることから、利用者は、他の室内の室内ユニットが空調制御を開始したことを、他の室内におもむかずとも、認識することができる。」 「 ![]() ![]() ![]() 【図5】 ![]() ![]() 」 (イ)上記(ア)及び図面の記載から認められる事項 上記(ア)及び図面の記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。 a 上記(ア)の段落0001、0005及び0022並びに図1の記載によれば、引用文献1には、室外ユニット12と、複数台の室内ユニット10A、10B、10Cとを有する空気調和機が記載されている。 b 上記(ア)の段落0036及図1の記載によれば、空気調和機は、室外ユニット12と複数台の室内ユニットト10A、10B、10Cとの間をそれぞれ通信接続する複数の通信線14A、14B、14Cを有している。 c 上記(ア)の段落0037〜0043の記載によれば、空気調和機は、リモートコントローラを有している。 d 上記(ア)の段落0031、0032及び0035並びに図4の記載によれば、室外ユニット12は、マイコン102Fを有している。 そして、上記(ア)の段落0041及び図5(特にステップ206、208、210)の記載によれば、マイコン102Fは、通信線14A、14B、14Cを介して送られた操作情報を含む信号に含まれる識別情報に基づいて、操作情報を送信する対象の室内ユニット10A、10B、10Cを特定し、操作情報を送信する対象の室内ユニット10A、10B、10Cに、通信線14A、14B、14Cを介して、操作情報を含む制御信号を送る処理をしている。 e 上記(ア)の段落028〜0030及び0037〜0042並びに図3及び図5の記載によれば、複数台の室内ユニット10A、10B、10Cは、制御情報とされる操作情報に基づいて空調制御を行うマイコン72Cを有している。 そして、上記(ア)の段落0041及び図5(特にステップ206、208、210)の記載によれば、マイコン72Cは、リモートコントローラから操作情報を含む操作信号が送られると、設定された識別情報に基づいて、自己の室内ユニットに対する操作信号であり空調制御を行うかどうかを判定し、自己の室内ユニットに対する操作信号ではない場合、通信線14A、14B、14Cを介して、操作情報を含む信号を、室外ユニット12に送る処理をしている。 f 上記(ア)の段落0043の記載によれば、リモートコントローラは、LEDを有している。 g 上記(ア)の段落0037〜0039、0041、0043及び0049の記載によれば、リモートコントローラは、操作情報を含む操作信号の送信、LEDの発光等を制御するから、制御装置(以下「リモートコントローラ用の制御装置」という。)を有しているといえる。 そして、上記(ア)の段落0042、0043、0047及び0049の記載によれば、リモートコントローラ用の制御装置は、室内ユニット10A、10B、10Cから送られる表示情報を含む信号に基づいて、他の室内ユニットが空調制御を開始したことを該当するLEDを発光することにより、表示させる処理をしている。 h 上記(ア)の段落0030の記載によれば、リモートコントローラは、室内ユニットとの間で、無線通信を行うものである。 (ウ)引用発明 上記(ア)及び(イ)から、本件補正発明に倣って整理すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「マイコン102Fを有する室外ユニット12と、 制御情報とされる操作情報に基づいて空調制御を行うマイコン72Cを有する複数台の室内ユニット10A、10B、10Cと、 前記室外ユニット12と複数台の前記室内ユニットト10A、10B、10Cとの間をそれぞれ通信接続する複数の通信線14A、14B、14Cと、 リモートコントローラ用の制御装置を有し、前記室内ユニットとの間で、無線通信を行うリモートコントローラとを有する空気調和機であって、 前記マイコン72Cは、前記リモートコントローラから前記操作情報を含む操作信号が送られると、設定された識別情報に基づいて、自己の室内ユニットに対する操作信号であり前記空調制御を行うかどうかを判定し、自己の室内ユニットに対する操作信号ではない場合、前記通信線14A、14B、14Cを介して、前記操作情報を含む信号を、前記室外ユニット12に送り、 前記マイコン102Fは、前記通信線14A、14B、14Cを介して送られた前記操作情報を含む信号に含まれる前記識別情報に基づいて、前記操作情報を送信する対象の前記室内ユニット10A、10B、10Cを特定し、前記操作情報を送信する対象の前記室内ユニット10A、10B、10Cに、前記通信線14A、14B、14Cを介して、前記操作情報を含む制御信号を送り、 前記リモートコントローラは、LEDを有し、 前記リモートコントローラ用の制御装置は、前記室内ユニット10A、10B、10Cから送られる表示情報を含む信号に基づいて、他の室内ユニットが前記空調制御を開始したことを該当するLEDを発光することにより、表示させる空気調和機。」 イ 引用文献2 原査定の拒絶の理由で周知技術の例証として引用された文献であって、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった国際公開第2015/092831号(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。 「[0028] 室内機1の立上げ時に、ユーザは、室内機1に搭載されているアドレス設定手段14を用いてアドレスを設定する(ステップS11)。具体的には、ディップスイッチを操作し、予め定められたルールに従って各室内機のアドレスを設定する。上述したように、室内機1a〜1dのアドレスは01〜04に設定される。」 「【図1】 ![]() 」 ウ 引用文献3 原査定の拒絶の理由で周知技術の例証として引用された文献であって、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2014−194309号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の記載がある。 「【0015】 本システムでは、空調通信網に接続する室内機と室外機、及び空調アダプタは、空調通信網上で各々の機を識別し特定するためのID番号を、各々の機に接続のディップスイッチにて設定する手段を有している。このID番号は空調通信網で送信元や送信先を示す通信アドレスとして使用される。室外機の場合は、本例では一つの空調通信網に最大64台接続可能なため、1〜64までの数値を他の室外機と重複しないよう各々ID番号として設定する。室内機は、本例では一つの室外機(冷媒系統)に最大64台の室内機が接続可能なため、同じ室外機に接続している室内機同士で番号が重ならないように1〜64の値を設定し、冷媒供給元の室外機のID番号と合わせてディップスイッチで設定する。」 エ 引用文献4 原査定の拒絶の理由で周知技術の例証として引用された文献であって、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2011−133145号公報(以下「引用文献4」という。)には、次の記載がある。 「【0002】 従来、空調機システムは図5に示すものが開示されている。 図5において、91はマルチ型空気調和装置の室外機、92は、室内機であって、該室内機92にはそれぞれリモコン93がワイヤレスで接続されている。上記室外機91は、各室内機92に渡り線94を介して接続されており、該室内機92との間で空調負荷等の制御データを送受信している。 【0003】 また、上記室内機92は、図示しないアドレス設定スイッチを備えている。該アドレス設定スイッチは、ディップスイッチなどで構成されており、各室内機92毎のユニットアドレスを設定するように構成されており、例えば、“#0”、“#1”及び“#2”の各アドレスを設定することになる。」 「 ![]() 」 オ 引用文献5 当審において新たに周知技術の例証として引用する文献であって、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2013−104645号公報(以下「引用文献5」という。)には、次の記載がある。 「【0005】 図11に示すように、3部屋に配置されたマルチ型でない一般家庭用エアコンA、B、Cにそれぞれリモコン1、2、3が対応する空気調和機において、エアコンA、B、Cとしては冷暖房能力だけが異なり基本的な制御内容は全く同じという場合がある。リモコンとしてRFリモコン(高周波無線通信方式のリモコン)を使用した場合、例えばリモコン1からの信号がエアコンB、Cにも届いてしまい、ユーザーの意図に反しエアコンB、Cが操作されてしまうおそれがあることから、通常はエアコンAに対してリモコン1という具合にそれぞれペアリング設定をして操作可能なエアコンを限定している。 【0006】 ところで、エアコンA、B、Cは基本的な制御内容は全く同じであるから、1台のリモコン1で他の部屋のエアコンB、Cも操作可能であれば便利である。例えば、リビングにいながら、次に移る部屋(寝室)のエアコンを事前に運転開始したり、子供部屋のエアコンの温度設定ができたりして、わざわざリビングから出なくてもよくなる。しかし、1台のリモコンで全てのエアコンを操作できるとなると、操作直前のエアコンの運転状態を認識しておかなければ、そのエアコンに対する操作がしづらくなるという問題がある。 【0007】 本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、複数のリモコンで複数の空気調和機本体を操作可能な空気調和機において、操作直前の空気調和機本体の運転状態を認識できるようにした空気調和機およびリモコンを提供することを目的とする。」 「【0047】 本実施例では、制御部(ペアリング設定手段)によるメイン機およびサブ機の登録後において、リモコンでメイン機のエアコンを操作する場合をメイン機操作モード(自室操作モード)、リモコンでサブ機のエアコンを操作する場合をサブ機操作モード(他室操作モード)としている。このメイン機操作モードとサブ機操作モードの切り換えは、リモコンの操作部のボタン操作により行うことができる。 【0048】 例えば、図7において、リモコン14Aのボタン操作によってメイン機操作モードからサブ機操作モードへの移行が指示されると、この移行の際にリモコン14Aがサブ機として登録してある全てのエアコン12B、12Cの運転情報(運転中/運転停止中、冷房/暖房などの情報)を取得するとともに、この運転情報を反映させて他室操作用の画面を液晶表示部34Aに表示し、サブ機操作モードに移行する。 【0049】 このサブ機操作モードにおいては、リモコンにサブ機として登録してあるエアコンは全て操作可能であり、任意のサブ機を個別に操作または全てのサブ機を一括して操作することができる。ユーザーは液晶表示部34Aを参照しながら図外の操作部36Aを操作して、操作したいサブ機を選択する。なお、図7の右側においては、操作対象を寝室か子供部屋か全室のエアコン(サブ機)かに選択可能とした画面が例示されている。 【0050】 図8(1)〜(3)は、サブ機操作モードへの移行直後にリモコン14Aの液晶表示部34Aに表示される初期画面の一例を示したものである。サブ機操作モードに移行する際に全サブ機から取得した運転情報が反映されて、各室(各サブ機)の現在の運転状況が表示されている。例えば、図8(1)は、寝室は設定温度26℃で冷房運転中で、子供部屋は運転停止していることを示している。液晶表示部内のカーソルを動かすことで、寝室のエアコンを操作したり、全室のエアコンを一括して操作(例えば運転開始/運転停止)することが可能である。」 「 ![]() ![]() 」 カ 引用文献6 当審において新たに周知技術の例証として引用する文献であって、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった国際公開第2014/128817号(以下「引用文献6」という。)には、次の記載がある。 「[0133] (全体構成) 図1は、本実施の形態におけるホームコントローラが適用されたホームコントロールシステムの全体構成図である。図1に示すように、ホームコントロールシステムは、ホームコントローラ100、機器200(対象機器の一例)、及びサーバ300を備えている。 [0134] 家の中には、ホームコントローラ100と一以上の機器200(例えば、機器A200、機器B200)が配置され、クラウドセンタには、サーバ300が配置されている。ホームコントローラ100、機器200及びサーバ300は、有線や無線のネットワークを介して相互に通信を行う。例えば、機器200及びホームコントローラ100は、無線や有線の宅内のネットワークを介して相互に通信可能に接続され、ホームコントローラ100、機器200、及びサーバ300はインターネット等の外部のネットワークを介して相互に通信可能に接続されている。 [0135] なお、ホームコントローラ100は、必ずしも家の中に配置される必要はなく、家の外に配置されてもよい。この場合、ユーザは外出先などから一以上の機器200を制御する。 [0136] ホームコントローラ100としては、スマートフォンやタブレット端末等の携帯情報端末が採用される。但し、これは一例であり、携帯電話等のボタン式の携帯情報端末がホームコントローラ100として採用されてもよい。 [0137] 図2は、ホームコントローラ100が制御する主要な機器200を示す図である。ホームコントローラ100は、空気調和機(以下、「エアコン」と称される)201、照明機器202、203、風呂204、冷蔵庫205、洗濯機206、トイレ207、電動カーテン装置208、テレビ受像機(以下、「テレビ」と称される)209などの機器200を制御する。なお、照明機器202と照明機器203というように、ホームコントローラ100が制御する機器200中には同種類の機器200が複数台あってもよい。空気調和機は、室内の空気の温度、湿度、清浄度などを調節する装置である。空気調和機は、冷房装置、暖房装置、冷暖房装置、加湿器、除湿器、空気清浄器などを含む。」 「[0479] 図106〜図108は、詳細設定ボタンが表示されたエアコンの制御画面10100の異なる例を示す図である。図109は、1つのエアコンの機器アイコンが複数の部屋のエアコンの制御に共用される場合において、ホームコントローラ100のディスプレイ101の表示画面のさらに異なる遷移例を示す図である。図109の左上図は、図80に示される基本画面を示し、図109の右上図は、図106に示される表示画面を示し、図109の右下図は、図107に示される表示画面を示し、図109の左下図は、図108に示される表示画面を示す。 [0480] まず、図109の左上図(図80)に示される基本画面において、ユーザが、接触物10600を用いて、共用のエアコンの機器アイコン11301を選択すると、この選択をタッチパネル制御部102が検知する。すると、表示制御部103は、図144Bを参照して後述される機器リスト1700から、エアコンの機器アイコン11301が共用される部屋(例えば居間及び寝室)のエアコンのステータス1709を取得する。ここでは、居間のエアコンは暖房モードで動作中であり、寝室のエアコンはオフにされているものとする。表示制御部103は、図106(図109の右上図)に示されるように各機器アイコンを退避させて、エアコンの制御画面10100をディスプレイ101に表示する。 [0481] 表示制御部103は、取得したステータス1709に基づき、図106(図109の右上図)に示されるように、エアコンの第一の制御対象領域11302を暖色(例えば赤色)で表示し、エアコンの第二の制御対象領域11303を一定輝度未満の輝度で暗く表示する。これによって、第一の制御対象領域11302に対応する部屋(例えば居間)が、暖房モードでオンにされており、第二の制御対象領域11303に対応する部屋(例えば寝室)が、オフにされていることを表す。また、表示制御部103は、エアコンの第一の制御対象領域11302に詳細設定ボタン5041を表示し、エアコンの第二の制御対象領域11303に詳細設定ボタン5042を表示する。 [0482] 次に、図106(図109の右上図)に示される表示状態で、ユーザが、接触物10600を用いて、エアコンの第一の制御対象領域11302に表示されている詳細設定ボタン5041を選択すると、この選択をタッチパネル制御部102が検知する。すると、表示制御部103は、図107(図109の右下図)に示されるように、エアコンの第一の制御対象領域11302に対応する部屋(例えば居間)の詳細制御画面5221をディスプレイ101に表示する。 [0483] この詳細制御画面5221には、図107に示されるように、「リビング」と記載されている。この記載によって、詳細制御画面5221が、居間のエアコンの詳細制御画面であることが明確にされている。このように、詳細制御画面5221をディスプレイ101に表示することによって、居間のエアコンの設定を詳細に制御することが可能になっている。 [0484] 続いて、図107(図109の右下図)に示される表示状態で、ユーザが、接触物10600を用いて、エアコンの第二の制御対象領域11303に表示されている詳細設定ボタン5042を選択すると、この選択をタッチパネル制御部102が検知する。すると、表示制御部103は、図108(図109の左下図)に示されるように、詳細制御画面5221に切り替えて、エアコンの第二の制御対象領域11303に対応する部屋(例えば寝室)の詳細制御画面5222を、ディスプレイ101に表示する。 [0485] この詳細制御画面5222には、図108に示されるように、「寝室」と記載されている。この記載によって、詳細制御画面5222が、寝室のエアコンの詳細制御画面であることが明確にされている。このように、詳細制御画面5222をディスプレイ101に表示することによって、寝室のエアコンの設定を詳細に制御することが可能になっている。」 「[0606] 図142に示される表示状態で、ユーザが、接触物を詳細設定表示ボタン5040に接触させたまま左方にスライドすると、タッチパネル制御部102は、そのスライドを検知する。すると、表示制御部103は、詳細設定表示ボタン5040により引っ張り出されるような態様で、第一の制御対象領域11302に対応する部屋(図142では居間)の詳細制御画面5221と、第二の制御対象領域11303に対応する部屋(図142では寝室)の詳細制御画面5222とを、ディスプレイ101に表示する。 [0607] ユーザが、接触物により詳細設定表示ボタン5040をディスプレイ101の左端までスライドすると、表示制御部103は、図143に示されるように、居間の詳細制御画面5221及び寝室の詳細制御画面5222を、ディスプレイ101に表示する。 [0608] なお、図142に示される表示状態で、ユーザが、接触物で詳細設定表示ボタン5040をタップすると、図143に示されるように、居間の詳細制御画面5221及び寝室の詳細制御画面5222を、ディスプレイ101に表示するようにしてもよい。」 「[図2] ![]() [図106] ![]() [図107] ![]() [図108] ![]() [図109] ![]() [図142] ![]() [図143] ![]() 」 キ 引用文献7 当審において新たに周知技術の例証として引用する文献であって、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2011−214775号公報(以下「引用文献7」という。)には、次の記載がある。 「【0017】 次に図面に基づいて、本発明の実施例1の集中コントローラ1について説明する。 1台の室外機で運転できる室内機の数は一般に1台〜10台程度であり、以下の実施例では、9台の空調システムに使用される集中コントローラとした場合について説明する。 【0018】 図1は、壁面に設置される本発明の集中コントローラ1を示す正面図であり、この集中コントローラ1は、筐体2の上部側にフルドット表示の液晶パネル3が配置され、下部側に操作用のボタンを並べた操作パネル4が配置されている。 操作パネル4は、中央のSELECT(決定)ボタン5、SELECTボタン5の上下に配置された上下(∧∨)ボタン6、7と左右に配置された左右(<>)ボタン8、9、左上のALL・GROUPボタン10、左下のCANCELボタン11、右上のON・OFFボタン12、FUNCTIONボタン13からなる。 また、液晶パネル3に表示は、図2(a)(b)(c)(d)に示すように、上部に帯状に表示されるモード・時計表示欄14、下部に帯状に表示されるアシスト表示欄16、及びそれらの間の情報表示欄29からなる。 【0019】 この集中コントローラ1は、少なくとも、室内機の運転状況を表示するだけのモニターモードと、室内機の全ての設定項目について操作や設定変更を行うことができる管理者オペレーションモードと、室内機の選択された一部の設定項目についてのみ操作や設定変更を行うことができる一般オペレーションモードと、この一般オペレーションモードで操作や設定変更を行うことができる項目を選択する設定項目選択モードの計4種類のモードを有している。 以下、各モードにおける前記液晶パネル3の表示と、操作パネル4の機能について説明する。 【0020】 (1)モニターモード モニターモードの液晶画面2には、図2(a)に示すように、モード・時計表示欄14の左側に「Monitor Mode」の文字と右側に時計が表示される。 【0021】 情報表示欄29は、3×3の9区画に分割され、分割された個々の欄に1台の室内機が割り当てられ、縮小された個別表示欄15が表示される。この分割された個々の欄に1台の室内機が割り当てた表示形態を、本発明ではマルチ表示と呼ぶ。 個別表示欄15には、図3(a)に示すように室内機が運転している場合の表示形態と、図3(b)に示すように室内機が運転していない場合の表示形態との2種類の表示形態がある。 室内機が運転している場合の表示形態は、図3(a)に示すように、室内機を特定するための場所などを示す文字列(図の例では「Room1」)を表示する室内機表示欄18、室内機の運転が暖房か冷房かを示すシンボル(図の例では暖房を示すシンボル)を表示する運転表示欄19、室内機に設定された温度や風量、その他を表示する状態表示欄20に区分されている。 室内機が運転していない場合の表示形態は、図3(b)に示すように、室内機を特定するための場所などを示す文字列(図の例では「Office A」)の室内機表示欄18、室内機が運転していないことを示す文字列(図の例では「OFF」)を表示する非運転表示欄25に区分されている。 【0022】 また、室内機が運転していない場合は、非運転表示欄25の背景を白(液晶オフ)、表示されるキャラクタを黒(液晶オン)とし、室内機が運転している場合は、運転表示欄19と状態表示欄20の背景を黒、表示されるキャラクタを白として視覚的強調表示とすることによって、個別の室内機が運転しているか否かを一目で判別できるように構成されている。 【0023】 アシスト表示欄16には、次に操作できる操作パネル4上のボタンが表示される。図の例では、「∧∨<>」、「ALL・GROUP」、「SELECT」のキャラクタ及び文字列が表示されており、それぞれ、上下左右ボタン6〜9、ALL・GROUPボタン10、SELECTボタン5が操作できることが表示される。」 「【0029】 次に、以上の構成よる集中コントローラ1の作用について説明する。 集中コントローラ1の電源を投入すると、液晶パネル4には、待機画面(図示せず)を表示して接続されている室内機の運転状態及び設定温度や風量、風向などのデータを取得し、全てのデータを取得するとマルチ表示によるモニターモードの画面が表示される。 モニターモードでは、液晶パネル4に、図2(a)に示す画面が表示され、各室内機の運転状態、設定温度や設定風量などが表示される。 【0030】 ここで、上下ボタン6、7、左右ボタン8、9、ALL・GROUPボタン10のいずれかを押すことにより設定を行う室内機を選択する。選択された室内機を表示する個別表示欄15は、室内機表示欄18が白黒反転又は点滅して選択されていることを強調表示する。 【0031】 この室内機が選択された状態でSELECTボタン5を押すと、項目設定画面26により一般オペレーションモードで操作することができる項目がすでに設定されている場合には、液晶パネル4に図2(b)のシングル表示の画面が表示され、選択されていた室内機の操作を行う一般オペレーションモードに切り替わる。」 「 ![]() ![]() ![]() 」 (3)引用発明との対比 本件補正発明と引用発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。 ア 後者の「マイコン102F」は、前者の「室外側制御装置」に相当し、以下同様に、「室外ユニット12」は「室外ユニット」に、「制御情報とされる操作情報」は「指示」に、「マイコン72C」は「室内側制御装置」に、「通信線14A、14B、14C」は「通信線」に、「リモートコントローラ用の制御装置」は「リモコン制御装置」に、「リモートコントローラ」は「リモートコントローラ」に、「空気調和機」は「空気調和システム」に、「操作情報を含む操作信号」は「指示を含む信号」に、「識別情報」は「識別信号」に、「操作情報を含む信号」は「指示を含む信号」に、「操作情報を送信する対象」は「指示対象」に、「特定」は「判定」に、「操作情報を含む制御信号」は「指示を含む信号」に、「表示情報を含む信号」は「信号」に、それぞれ相当する。 イ 後者の「空調制御」は、引用文献1の段落0028〜0030及び図3に記載された、ファンモータ70E、上下フラップモータ74A、左右フラップモータ74B、74C及び流量可変弁62などの機器を操作して室内ユニットから吹き出す空気の量、向き、温度等を制御するものであることから、前者の「機器の制御」に相当する。 ウ 後者の「自己の室内ユニットに対する操作信号であり前記空調制御を行うかどうかを判定」する態様は、前者の「前記機器の制御を行うかどうかを判定」する態様に相当する。 エ 後者の「自己の室内ユニットに対する操作信号ではない場合、前記通信線14A、14B、14Cを介して、前記操作情報を含む信号を、前記室外ユニット12に送」る態様は、前者の「前記通信線を介して、前記指示を含む信号を、前記室外ユニットに送」る態様に相当する。 オ 後者の「リモートコントローラ」が有する「LED」は、他の室内ユニットが空調制御を開始したことを発光により表示するものであるから、前者の「リモコン表示装置」に相当する。 そして、後者の「他の室内ユニットが前記空調制御を開始したことを該当するLEDを発光することにより、表示させる」態様は、複数のLEDのうち該当するLEDを発光する、すなわち、複数台の室内ユニットに係る状態を表示するものといえるから、後者の当該態様と前者の「複数台における前記室内ユニットの冷房または暖房の別および設定温度の状態を前記リモコン表示装置に一度に表示させる」態様とは、「複数台の前記室内ユニットに係る状態を、前記リモコン表示装置に表示させる」という限りで一致する。 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 [一致点] 「室外側制御装置を有する室外ユニットと、 指示に基づいて機器の制御を行う室内側制御装置を有する複数台の室内ユニットと、 前記室外ユニットと複数台の前記室内ユニットとの間をそれぞれ通信接続する複数の通信線と、 リモコン制御装置を有し、前記室内ユニットとの間で、無線通信を行うリモートコントローラとを有する空気調和システムであって、 前記室内側制御装置は、前記リモートコントローラから前記指示を含む信号が送られると、設定された識別信号に基づいて、前記機器の制御を行うかどうかを判定し、前記通信線を介して、前記指示を含む信号を、前記室外ユニットに送り、 前記室外側制御装置は、前記通信線を介して送られた信号に含まれる前記識別信号に基づいて、指示対象の前記室内ユニットを判定し、前記指示対象の前記室内ユニットに、前記通信線を介して、前記指示を含む信号を送り、 前記リモートコントローラは、リモコン表示装置を有し、 前記リモコン制御装置は、前記室内ユニットから送られる信号に基づいて、複数台の前記室内ユニットに係る状態を、前記リモコン表示装置に表示させる空気調和システム。」 [相違点1] 本件補正発明では、「前記室内ユニットは、前記室内ユニットを識別する識別番号の設定が行われる室内側設定装置を有し」ているのに対して、引用発明では、室内ユニット10A、10B、10Cがそのような室内側設定装置を有しているか不明である点。 [相違点2] 「前記リモートコントローラは、リモコン表示装置を有し、前記リモコン制御装置は、前記室内ユニットから送られる信号に基づいて、複数台の前記室内ユニットに係る状態を、前記リモコン表示装置に表示させる」ことに関し、本件補正発明では、「複数台における前記室内ユニットの冷房または暖房の別および設定温度の状態を前記リモコン表示装置に一度に表示させる」のに対して、引用発明では、「他の室内ユニットが前記空調制御を開始したことを該当するLEDを発光することにより、表示させる」ものである点。 (4)判断 ア 相違点1について 例えば引用文献2〜4の上記(1)イ〜エの記載から理解できるように、受信した信号が設定された識別番号に基づいて自身への指示であるかどうかを判定するようにした複数の室内ユニットを有する空気調和システムにおいて、各室内ユニットに、当該室内ユニットを識別する識別番号の設定が行われる室内側設定装置を設けることは、本願の出願前に周知の技術(以下「周知技術1」という。)である。 そして、周知技術1は、引用発明と複数の室内ユニットを有する空気調和システムという技術分野において共通し、室内ユニットの設置状況に応じた識別番号の設定が容易にできるものであるから、引用発明において周知技術1を適用して、室内ユニットが、前記室内ユニットを識別する識別番号の設定が行われる室内側設定装置を有するものとし、上記相違点1に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは当業者が容易になし得たことである。 イ 相違点2について 例えば引用文献5〜7の上記(1)オ〜キの記載から理解できるように、複数台の室内ユニットを操作可能なコントローラにおいて、複数台における室内ユニットの冷房または暖房の別および設定温度の状態をリモコン表示装置に一度に表示させることは、本願の出願前に周知の技術(以下「周知技術2」という。)である。 そして、引用発明と周知技術2は、複数台の室内ユニットに係る状態をリモコン表示装置に表示させる点で共通するものである。また、引用文献1の段落0016には「他の室内ユニットから受信する情報には、例えば、他の室内ユニットの運転モード(例えば、冷房モード、暖房モード、ドライモード及び自動運転モード)を設定する情報、他の室内ユニットの設定温度、設定湿度を設定する情報等の第1の情報や、この第1の情報に基づいて運転を開始したことを表す第2の情報がある。」と記載されているから、引用発明において、受信した他の室内ユニットの冷房または暖房の別および設定温度の状態を示す情報を表示するように構成することが技術的に困難であるとはいえない。 そうすると、引用発明に周知技術2を適用して、リモートコントローラにおいて、リモコン表示装置として複数台における室内ユニットの冷房または暖房の別および設定温度の状態を表示可能なものを採用し、リモートコントローラ用の制御装置(リモコン制御装置)が、複数台における室内ユニットの冷房または暖房の別および設定温度の状態を画面表示装置に一度に表示させるようにし、上記相違点2に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは当業者が容易になし得たことである。 ウ 請求人の主張について (ア)請求人は、審判請求書の3.「(d)本願発明と引用文献に記載された発明との対比」(5ページ7行〜同ページ25行)及び上申書の「4.本願発明と各引用文献に記載された発明との対比」(2ページ35行〜3ページ8行)において、複数台の室内ユニットに係る冷房または暖房の別および設定温度の状態を、リモコン表示装置に一度に表示させることは、引用文献1〜4には記載、示唆などはない旨主張する。 しかしながら、上記イで検討したとおり、引用発明に周知技術2を適用することにより、複数台における室内ユニットの冷房または暖房の別および設定温度の状態をリモコン表示装置に一度に表示させることは、当業者が容易になし得たことである。 (イ)また、請求人は、令和4年1月14日に提出された上申書の「4.本願発明と各引用文献に記載された発明との対比」(2ページ下から3行〜3ページ8行)において、 「前置報告書に新たに追加されました引用文献5には、サブ機として登録した空気調和機の運転状態を取得して表示することができる旨が記載されております。 しかしながら、引用文献5のリモコンは、サブ機を操作するサブ機操作モードに切り換わるときに、サブ機の運転状態を取得および表示を行うものであり、請求項1に係る発明のように、複数台における室内ユニットの冷房または暖房の別および設定温度の状態をリモコン表示装置に一度に表示させるものではありません。 このため、引用文献5のリモコンでは、サブ機の運転状態表示を行うために、利用者はリモコンの操作を行う必要があります。 この点、請求項1に係る発明は、操作などを伴わず、本出願の明細書の段落番号[0039]に記載しているように、他の室内ユニットが設置された部屋の状態などを容易に把握することができます。」と主張する。 しかしながら、本件補正発明において、「複数台における室内ユニットの冷房または暖房の別および設定温度の状態をリモコン表示装置に一度に表示させる」にあたり、事前の操作を伴わないものであることの特定はされておらず、引用文献5に記載されたものを排除するものではないから、請求人の上記主張は採用できない。 エ 効果について そして、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明、周知技術1及び周知技術2の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 オ まとめ したがって、本件補正発明は、引用発明、周知技術1及び周知技術2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 本件補正についてのむすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし6に係る発明は、令和3年8月10日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2の[理由]1(2)に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由の一部は、以下のとおりである。 <理由(特許法第29条第2項)について> 本願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用文献1:特開平8−200778号公報 引用文献2:国際公開第2015/092831号(周知技術を示す文献) 引用文献3:特開2014−194309号公報(周知技術を示す文献) 引用文献4:特開2011−133145号公報(周知技術を示す文献) 3 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1ないし4、それらの記載並びに引用発明は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明と引用発明とは、前記第2の[理由]2(3)の対比を踏まえると、前記相違点1で相違し、その余の点で一致する。 そうすると、前記第2の[理由]2(4)の判断を踏まえると、本願発明は、引用発明及び周知技術1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。 |
審理終結日 | 2022-06-08 |
結審通知日 | 2022-06-14 |
審決日 | 2022-06-29 |
出願番号 | P2020-546652 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(F24F)
P 1 8・ 121- Z (F24F) |
最終処分 | 02 不成立 |
特許庁審判長 |
平城 俊雅 |
特許庁審判官 |
西村 泰英 槙原 進 |
発明の名称 | 空気調和システム |
代理人 | 特許業務法人きさ特許商標事務所 |