ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01R |
---|---|
管理番号 | 1388182 |
総通号数 | 9 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2022-09-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-11-05 |
確定日 | 2022-09-06 |
事件の表示 | 特願2017−106714「中継コネクタ」拒絶査定不服審判事件〔平成30年12月27日出願公開、特開2018−206477、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成29年5月30日の出願であって、令和3年2月3日付けで拒絶理由通知がされ、同年3月31日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたが、同年8月25日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされた。 これに対し、同年11月5日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。 第2 原査定の概要 原査定の概要は次のとおりである。 本願の請求項1〜2に係る発明は、以下の引用文献1に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開平11−87011号公報 第3 審判請求時の補正について 審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。 審判請求時の補正によって請求項1の「1又は複数の端子金具」との記載を「複数の端子金具」との記載に変更する補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「端子金具」の数について、「1又は複数」という選択的事項のうちの1つを削除することで「複数」であることの限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、当初明細書の段落【0039】の「中継コネクタは、供給する電力や送受信する信号に応じて適宜な数の端子金具を有していればよく、1又は2の端子金具を有していてもよいし、4以上の端子金具を有していてもよい。」との記載や、段落【0040】の「中継コネクタが複数の端子金具を有する場合」との記載等から、「複数の端子金具」という事項は、当初明細書等に記載された事項であり、新規事項を追加するものではないといえる。 そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1〜2に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。 第4 本願発明 本願の請求項1〜2に係る発明(以下、「本願発明1」〜「本願発明2」という。)は、令和3年11月5日にした手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1〜2に記載された事項により特定される、以下のとおりである。 「【請求項1】 車両のトランスミッションケースにおける取付面を貫通するように設けられ、該トランスミッションケースの内外に内側コネクタ部と外側コネクタ部とが配置される中継コネクタであって、 前記内側コネクタ部から前記外側コネクタ部に亘って延びる複数の端子金具と、 前記端子金具を収容するハウジングと、を備え、 前記ハウジングは、前記内側コネクタ部において前記取付面の面内方向に沿った方向に開口した内側開口部と、前記外側コネクタ部において前記取付面に対する面直方向に沿った方向に開口した外側開口部と、を有し、 前記端子金具は、前記内側コネクタ部に設けられて前記面内方向に沿って延びる内側端子部と、前記外側コネクタ部に設けられて前記面直方向に沿って延びる外側端子部と、前記内側端子部と前記外側端子部との間に形成された中間屈曲部と、を有し、 前記中間屈曲部は、前記外側端子部を基準として前記内側開口部と反対側に向かって延びる後退部を有し、 前記端子金具を複数備え、 複数の前記端子金具は、それぞれ帯板状の金属部材が屈曲されたものであって、帯板の幅方向に沿って並設されていることを特徴とする中継コネクタ。 【請求項2】 前記端子金具を複数備え、 複数の前記端子金具は、相対位置を位置決めするための保持部材によって保持され、 前記保持部材は、前記ハウジングに埋設されていることを特徴とする請求項1に記載の中継コネクタ。」 第5 引用文献1、引用発明 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、次の事項が記載されている。なお、下線は当審が付したものである。 (1)「【0002】 【従来の技術】従来から自動車等の電気系統の電気接続用に使用されるコネクタの成形方法に関しては種々な方法が知られている。例えば、図4に示したコネクタ31は、自動車の燃料タンク等に装着される電源接続用のコネクタである。コネクタ31の構成は、両端に相手コネクタを嵌合する嵌合凹部33a、33bが形成されており、この嵌合凹部33a、33b内に接続部が突出すると共に中間部分がハウジング32内にインサート成形されている複数の雄形端子金具34、35を備えている。このコネクタ31を1つの成形金型で一度に成形しようとすると、一方側の接続部34a、35aおよび他方側の接続部34b、35bが各々嵌合凹部33a、33b内に突出するので、金型内で正確に位置決めするのが難しく、成形時に雄形端子金具34、35が成形材料の噴流等によって位置ズレしたまま成形されてしまうことがあった。」 (2)「【0006】また、2次成形体37の一部に厚肉部38が有ると、ヒケやソリが生じる可能性が高くなり、ハウジング形状が変形して不良品が多くなり、歩留りが低下するという問題があった。前記ヒケやソリを防止するためには、肉厚が1mm〜2mm程度で均一になるように設計寸法を設定できれば良いが、厚肉部38の外形寸法は相手コネクタの取付形状やシール溝39の位置関係等で自由に変更することができない。また、厚肉部38の内形寸法は相手コネクタを嵌合させるための嵌合凹部33a、33bの形状関係で自由に変更することができない。」 (3)「【0011】図1および図2に示すように本実施の形態のコネクタ1は、両端に相手コネクタ(図示せず)を嵌合する嵌合凹部3a、3bを備えたハウジング2と、該嵌合凹部内に両接続部4a、4bおよび5a、5bが突出すると共に中間部分がハウジング2内にインサート成形された複数の雄形端子金具4、5から構成されている。」 (4)「【図1】 」 (5)「【図2】 」 (6)「【図3】 」 (7)「【図4】 」 (8)【0002】、【0006】、【図4】より、コネクタ31のハウジング32における嵌合凹部33b側の外周面(【図4】から看取)には、シール溝39が設けられるものであるが、【図2】と【図4】との対応から、【図4】のハウジング32のシール溝39に対応する、【図2】のコネクタ1のハウジング2の嵌合凹部3b外周に設けられている溝は、シール溝である。 そして、このシール溝は、技術常識によれば、所定の挿通孔に嵌合凹部3b側を貫通させて取付け対象面(「自動車の燃料タンク等」のコネクタ装着面。【0002】の「自動車の燃料タンク等に装着される電源接続用のコネクタ」との記載を参照。)に取り付けた際に、嵌合凹部3b側の外周面と当該所定の挿通孔の内周面との間を封止するためのシールを設けるものであると認められる。そして、シール溝の溝が向く方向は、取付け対象面に沿った方向であると認められる。したがって、コネクタ1における嵌合凹部3bの開口方向は、取付け対象面に対して垂直方向であると認められる。 (9)【図2】より、嵌合凹部3aの開口方向は、嵌合凹部3bの開口方向に対して直交していることが看取されるが、上記(8)より、嵌合凹部3bの開口方向は取付け対象面に対して垂直方向であると解されるから、嵌合凹部3aの開口方向は取付け対象面に対して平行方向であると認められる。 (10)【図2】より、雄形端子金具4、5は、嵌合凹部3a内において嵌合凹部3aの開口方向に沿って延びる接続部4a、5aと、嵌合凹部3b内において嵌合凹部3bの開口方向に沿って延びる接続部4b、5bと、接続部同士連結する中間部分からなることが看取される。また、各々の当該中間部分は、接続部4a、5aの基端から屈曲して嵌合凹部3bの開口方向とは反対方向に延びる部分と、そこから屈曲して接続部4b、5bの基端に向けて延びる部分とを有していることも看取される。さらに、接続部4b、5bと中間部分とは、接続部4b、5bの基端を境にして屈曲しているものと解される。 (11)【図3】より、複数の雄形端子金具4、5が並設されていると認められる。 上記摘記事項及び認定事項によれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 <引用発明> 「自動車等の電気系統の電気接続用に使用されるコネクタ1であって、 両端に相手コネクタを嵌合する嵌合凹部3a、3bを備えたハウジング2と、 嵌合凹部3a内に突出する接続部4a、5aと、嵌合凹部3b内に突出する接続部4b、5bと、中間部分とを備えた複数の雄形端子金具4、5と、 から構成され、 取付け対象面の挿通孔にハウジング2の嵌合凹部3b側を貫通させて、嵌合凹部3b側のシール溝において取付け対象面に取り付けるものであって、 ハウジング2の嵌合凹部3aは、取付け対象面と平行方向に開口し、 ハウジング2の嵌合凹部3bは、取付け対象面と垂直方向に開口するものであり、 雄形端子金具4、5の接続部4a、5aは、嵌合凹部3a内において嵌合凹部3aの開口方向に沿って延び、 雄形端子金具4、5の接続部4b、5bは、嵌合凹部3b内において嵌合凹部3bの開口方向に沿って延び、 雄形端子金具4、5の中間部分は、接続部4a、5aの基端から屈曲して嵌合凹部3bの開口方向とは反対方向に延びる部分と、そこから屈曲して接続部4b、5bの基端に向けて延び、屈曲して接続部4b、5bを連結する部分とを有し、 複数の雄形端子金具4、5が並設されている、 コネクタ1。」 第6 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。 引用発明の「自動車等の電気系統の電気接続用に使用される」こと、及び「取付け対象面の挿通孔にハウジング2の嵌合凹部3b側を貫通させて、嵌合凹部3b側のシール溝において取付け対象面に取り付けるもの」であることは、「車両」において「取付面を貫通するように設けられ」て配置されている限りにおいて、本願発明1の「車両のトランスミッションケースにおける取付面を貫通するように設けられ」ることと一致する。 引用発明の「相手コネクタを嵌合する嵌合凹部3a、3b」は、一側の「コネクタ部」と他側の「コネクタ部」である限りにおいて、本願発明1の「該トランスミッションの内外に」「配置される」「内側コネクタ部と外側コネクタ部」と一致する。 引用発明の「コネクタ1」は、本願発明1の「中継コネクタ」に相当する。 引用発明の「嵌合凹部3a内に突出する接続部4a、5aと、嵌合凹部3b内に突出する接続部4b、5bと、中間部分とを備えた複数の雄形端子金具4、5」は、「一側コネクタ部から他側コネクタ部に亘って延びる複数の端子金具」である限りにおいて、本願発明1の「前記内側コネクタ部から前記外側コネクタ部に亘って延びる複数の端子金具」と一致する。 引用発明の「ハウジング2」は、本願発明1の「ハウジング」に相当する。 引用発明の「ハウジング2」が「嵌合凹部3a、3bを備え」ており、「雄形端子金具4、5」の「接続部4a、5a」、「接続部4b、5b」が「嵌合凹部3a内」、「嵌合凹部3b内」で「突出する」ことは、本願発明1の「ハウジング」が「前記端子金具を収容する」ことに相当する。 引用発明の「ハウジング2の嵌合凹部3aは、取付け対象面と平行方向に開口」することは、「ハウジングは、一側コネクタ部において前記取付面の面内方向に沿った方向に開口した一側開口部」を有するものである限りにおいて、本願発明1の「前記ハウジングは、前記内側コネクタ部において前記取付面の面内方向に沿った方向に開口した内側開口部」を有することと一致する。 引用発明の「ハウジング2の嵌合凹部3bは、取付け対象面と垂直方向に開口するものであ」ることは、「他側コネクタ部において前記取付面に対する面直方向に沿った方向に開口した他側開口部」を有するものである限りにおいて、本願発明1の「前記外側コネクタ部において前記取付面に対する面直方向に沿った方向に開口した外側開口部と、を有」することと一致する。 引用発明の「雄形端子金具4、5の接続部4a、5aは、嵌合凹部3a内において嵌合凹部3aの開口方向に沿って延び、雄形端子金具4、5の接続部4b、5bは、嵌合凹部3b内において嵌合凹部3bの開口方向に沿って延び」ることは、「前記端子金具は、一側コネクタ部に設けられて前記面内方向に沿って延びる一側端子部と、他側コネクタ部に設けられて前記面直方向に沿って延びる他側端子部と」を有するものである限りにおいて、本願発明1の「前記端子金具は、前記内側コネクタ部に設けられて前記面内方向に沿って延びる内側端子部と、前記外側コネクタ部に設けられて前記面直方向に沿って延びる外側端子部と」を有することと一致する。 引用発明の「雄形端子金具4、5の中間部分」は、一側端子部と他側端子部との間に形成された中間屈曲部である限りにおいて、本願発明1の「前記内側端子部と前記外側端子部との間に形成された中間屈曲部」と一致する。 引用発明の「接続部4a、5aの基端から屈曲して嵌合凹部3bの開口方向とは反対方向に延びる部分」は、「後退部」である限りにおいて、本願発明1の「前記外側端子部を基準として前記内側開口部と反対側に向かって延びる後退部」と一致する。 引用発明の「雄形端子金具4、5の中間部分は、接続部4a、5aの基端から屈曲して嵌合凹部3bの開口方向とは反対方向に延びる部分と、そこから屈曲して接続部4b、5bの基端に向けて延び、屈曲して接続部4b、5bを連結する部分とを有し、複数の端子金具4、5が並設されている」ことは、「前記端子金具を複数備え、複数の前記端子金具は、それぞれ金属部材が屈曲されたものであって、並設されていること」である限りにおいて、本願発明1の「前記端子金具を複数備え、複数の前記端子金具は、それぞれ帯板状の金属部材が屈曲されたものであって、帯板の幅方向に沿って並設されていること」と一致する。 以上のことから、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 【一致点】 「車両における取付面を貫通するように設けられ、一側コネクタ部と他側コネクタ部とが配置される中継コネクタであって、 前記一側コネクタ部から前記他側コネクタ部に亘って延びる複数の端子金具と、 前記端子金具を収容するハウジングと、を備え、 前記ハウジングは、前記一側コネクタ部において前記取付面の面内方向に沿った方向に開口した一側開口部と、前記他側コネクタ部において前記取付面に対する面直方向に沿った方向に開口した他側開口部と、を有し、 前記端子金具は、前記一側コネクタ部に設けられて前記面内方向に沿って延びる一側端子部と、前記他側コネクタ部に設けられて前記面直方向に沿って延びる他側端子部と、一側端子部と他側端子部との間に形成された中間屈曲部と、を有し、 前記中間屈曲部は、後退部を有し、 前記端子金具を複数備え、 複数の前記端子金具は、それぞれ金属部材が屈曲されたものであって、並設されている中継コネクタ。」 【相違点1】 「取付面」について、本願発明1は「トランスミッションケースにおける」ものであるのに対し、引用発明ではそのような特定がなされていない点。 【相違点2】 「一側」と「他側」について、本願発明1は「該トランスミッションケースの内外」を特定し、トランスミッションケースの一側を「内側」、トランスミッションケースの他側を「外側」とすることで、「トランスミッションケースの内外に内側コネクタ部と外側コネクタ部とが配置され」、「前記内側コネクタ部から前記外側コネクタ部に亘って」複数の端子金具が延び、「前記内側コネクタ部において前記取付面の面内方向に沿った方向に開口した内側開口部と、前記外側コネクタ部において前記取付面に対する面直方向に沿った方向に開口した外側開口部」とがあり、端子金具は「前記内側コネクタ部に設けられて前記面内方向に沿って延びる内側端子部と、前記外側コネクタ部に設けられて前記面直方向に沿って延びる外側端子部と、前記内側端子部と前記外側端子部との間に形成された中間屈曲部と、を有し」ている構成になっている。 それに対し、引用発明では各々いずれの側を「内側」、「外側」としているのか特定しておらず、それによって各々の「コネクタ部」、「開口部」、「端子部」が「内側」に配置されているのか「外側」に配置されているのかが特定されないため、上記の構成になることも特定がなされていない点。 【相違点3】 「後退部」について、本願発明1は、「前記外側端子部を基準として前記内側開口部と反対側に向かって延びる」ものであるのに対し、引用発明は、そのような特定がなされていない点。 【相違点4】 「前記端子金具を複数備え、複数の前記端子金具は、それぞれ金属部材が屈曲されたものであって、並設されている」ことについて、本願発明1では「帯板状」の金属部材を屈曲して「帯板の幅方向に沿って」並設したものであるのに対し、引用発明ではそのような特定がなされていない点。 (2)判断 事案に鑑みて、相違点2、3について検討する。 引用発明のコネクタ1を自動車の燃料タンク等のコネクタ装着面に装着する場合、コネクタ装着面を境にして、燃料タンク等の「内側」と「外側」とに分けられる。具体的な装着態様としては、引用発明のコネクタ1は、コネクタ装着面である取付け対象面の挿通孔に対し、ハウジング2の嵌合凹部3b側を貫通させて、シール溝において取付け対象面に取り付けるものであるところ、シール溝を境にして、【図2】の上側を「内側」(下側を「外側」)とするか、下側を「内側」(上側を「外側」)とする2通りの選択肢を採用しうる。かかる装着態様について、以下で検討する。 まず、引用文献1の【図2】におけるシール溝よりも上側を「内側」とし、シール溝よりも下側を「外側」とした場合、引用文献1の「嵌合凹部3a」、「接続部4a」、「接続部5a」が「内側」となり、「嵌合凹部3b」、「接続部4b」、「接続部5b」側が「外側」となる。 その場合、「後退部」について、引用文献1の【図2】を参照すると、引用発明では「内側端子部を基準として外側開口部と反対側に向かって延びる」ものになるが、本願発明1では「前記外側端子部を基準として前記内側開口部と反対側に向かって延びる」ものであるため、両者の間で基準位置と延びる方向とが逆になる。 次に、仮に引用文献1の【図2】におけるシール溝よりも下側を「内側」とし、シール溝よりも上側を「外側」とした場合、引用文献1の「嵌合凹部3b」、「接続部4b」、「接続部5b」の側が「内側」となり、「嵌合凹部3a」、「接続部4a」、「接続部5a」の側が「外側」となる。 その場合、「内側開口部」と「外側開口部」の各々の開口方向として、引用文献1の【図2】を参照すると、引用発明では「内側開口部」が「取付面の面直方向に沿った方向」になり、「外側開口部」が「取付面に対する面内方向に沿った方向」になるが、本願発明1では、「前記内側コネクタ部において前記取付面の面内方向に沿った方向に開口した内側開口部と、前記外側コネクタ部において前記取付面に対する面直方向に沿った方向に開口した外側開口部」であるため、各々の開口方向の関係が両者の間で逆になる。 よって、引用発明において、上記「2通りの選択肢」に係る装着態様のうちいずれを採用したとしても、相違点2、3に係る本願発明1の構成に到達することにはならない。 また、引用文献1において、【図2】の「シール溝」を嵌合凹部3a側に設けるようにすると、上下方向に延びるような取付け対象面に対して面直方向になるように【図2】の「嵌合凹部3a」を貫通させるような構成になり、相違点2、3に係る本願発明1の構成に到達し得るとも考えられるが、引用発明において当該構成とすることは当業者は想定していない。 具体的には、コネクタ1は、そのシール溝にシール部材を嵌入し、燃料タンク等の取付け対象にコネクタ1を取付けるという態様を考慮したうえで、嵌合凹部3a、3bの位置や方向を最適なものとして設計されているといえるから、シール溝の位置を変える理由はない。 よって、引用発明に基いて相違点2及び3に係る本願発明1の構成とすることは、当業者にとって容易に想到し得たとはいえない。 してみると、相違点1及び相違点4について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 2 本願発明2について 本願発明2も、本願発明1の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 3 まとめ 以上のとおりであるから、本願発明1〜2は、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1に基いて、容易に発明をすることができたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。 第7 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2022-08-19 |
出願番号 | P2017-106714 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H01R)
|
最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
平瀬 知明 |
特許庁審判官 |
尾崎 和寛 保田 亨介 |
発明の名称 | 中継コネクタ |
代理人 | 津田 俊明 |
代理人 | 津田 俊明 |
代理人 | 福田 康弘 |
代理人 | 瀧野 文雄 |
代理人 | 福田 康弘 |
代理人 | 瀧野 文雄 |