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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L |
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管理番号 | 1388193 |
総通号数 | 9 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2022-09-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-11-11 |
確定日 | 2022-08-23 |
事件の表示 | 特願2020− 38024「ショットキーバリアダイオード」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 6月18日出願公開、特開2020− 96197、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成23年11月9日を出願日とする特願2011−245519号の一部を、平成27年10月21日に特願2015−206884号として新たな特許出願とし、更にその一部を、平成29年7月7日に特願2017−133649号として新たな特許出願とし、更にその一部を、平成30年7月4日に特願2018−127538号として新たな特許出願とし、更にその一部を、令和2年3月5日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和 3年 1月21日付け:拒絶理由通知書 令和 3年 5月17日 :意見書の提出 令和 3年 8月 5日付け:拒絶査定 令和 3年11月11日 :審判請求書の提出 第2 原査定の概要 原査定(令和3年8月5日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願の請求項1〜6に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1〜2に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開2010−233406号公報 2.特開2006−100801号公報 第3 本願発明 本願請求項1〜6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」〜「本願発明6」という。)は、願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項1〜6に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 逆方向耐圧及び順方向電圧を定める、第1のキャリア濃度を有した、β−Ga2O3系単結晶エピタキシャル層よりなる第1のn型半導体層と、 順方向電圧を定める、前記第1のキャリア濃度よりも高い第2のキャリア濃度を有した、β−Ga2O3系単結晶基板よりなる第2のn型半導体層と、 前記第1のn型半導体層の、前記第2のn型半導体層と反対側の表面に設けられたショットキー電極と、 前記第2のn型半導体層の、前記第1のn型半導体層と反対側の表面に設けられたオーミック電極と、を含み、 前記β−Ga2O3系単結晶基板は、基板面方位を(010)面から37.5°以下の角度だけ回転させた面である、ショットキーバリアダイオード。 【請求項2】 前記第1のn型半導体層は、前記第1のキャリア濃度によって定まる空乏層の厚さより大きい厚さを有する請求項1に記載のショットキーバリアダイオード。 【請求項3】 前記第1のn型半導体層の前記第1のキャリア濃度は、1×1018/cm3以下である請求項1に記載のショットキーバリアダイオード。 【請求項4】 前記第1のn型半導体層の前記第1のキャリア濃度は、1×1017/cm3以下である請求項1に記載のショットキーバリアダイオード。 【請求項5】 前記第1のn型半導体層の前記第1のキャリア濃度は、1×1016/cm3以下である請求項1に記載のショットキーバリアダイオード。 【請求項6】 前記第2のn型半導体層の前記第2のキャリア濃度は、1×1018/cm3以上である請求項1に記載のショットキーバリアダイオード。」 第4 引用文献、引用発明等 1 引用文献1について (1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、次の記載がある。(当審注:下線は当審による。) 「【技術分野】 【0001】 本発明は、スイッチング制御装置及びショットキーダイオードに関する。」 「【発明を実施するための形態】 【0011】 [実施の形態] ・・・ 【0018】 (ショットキーダイオードの構成) 図2は、本発明の実施の形態に係るショットキーダイオードの要部断面図である。このショットキーダイオード8は、一例として、寸法が10×10mmであり、図2に示すように、n型Ga2O3基板80と、オーミック電極81と、ショットキー電極82と、を備えて概略構成されている。 【0019】 n型Ga2O3基板80は、例えば、Ga2O3系の半導体基板から構成され、その厚さは、一例として、100μmである。 ・・・ 【0028】 (ショットキーダイオードの製造方法) 以下に、本実施の形態のショットキーダイオード8の製造方法の一例について説明する。まず、β−Ga2O3単結晶からなるGa2O3基板をFZ(フローティングゾーン)法により作製する。最初に、β−Ga2O3種結晶とβ−Ga2O3多結晶素材を準備する。 【0029】 β−Ga2O3種結晶は、β−Ga2O3単結晶から劈開面の利用等により切り出した断面正方形の角柱状を有し、その軸方向は、a軸<100>方位、b軸<010>方位、あるいはc軸<001>方位にある。 【0030】 β−Ga2O3多結晶素材は、例えば、純度4NのGa2O3の粉末をゴム管に充填し、それを500MPaで冷間圧縮し、1500℃で10時間焼結することにより得られる。 【0031】 次に、石英管中において、全圧が1〜2気圧の窒素と酸素の混合気体(100%窒素から100%酸素の間で変化)の雰囲気の下、β−Ga2O3種結晶とβ−Ga2O3多結晶との先端を互いに接触させ、その接触部分を加熱溶融する。次に、β−Ga2O3多結晶の溶解物を冷却し、β−Ga2O3単結晶を生成する。β−Ga2O3単結晶は、b軸<010>方位に結晶成長させた場合は、(100)面の劈開性が強くなるので、(100)面に平行な面と垂直な面で切断してβ−Ga2O3基板を作製する。なお、a軸<100>方位あるいはc軸<001>方位に結晶成長させた場合は、(100)面および(001)面の劈開性が弱くなるので、全ての面の加工性が良くなり、上記のような切断面の制限はない。 【0032】 次に、60℃の硝酸水溶液中で数分間ボイリングすることによりGa2O3基板をエッチングし、このGa2O3基板をエタノールに浸して10分間超音波洗浄し、さらに超純水に浸して10分間超音波洗浄した後、乾燥し、Ga2O3基板の表面を清浄化させ、Ga2O3基板を得る。 【0033】 なお、エッチング後に超純水に浸して超音波洗浄してもよい。また、エタノールの代りにアセトンを用いてもよい。また、エタノール、アセトン等に浸して行う超音波洗浄を省略してもよい。また、超音波洗浄する場合、Ga2O3基板を超純水、エタノール、アセトンに漬ける場合について説明したが、超純水等を吹き付けてもよく、流れる超純水等に晒してもよい。また、必ずしも洗浄を行わなくても良い。 【0034】 上記の製造方法によりGa2O3基板がn型導電性を示すことになるのは、β−Ga2O3単結晶中の酸素欠陥によるため、あるいは、n型のドーパントによるためである。 【0035】 次に、スパッタ法によってn型Ga2O3基板80上に第1の膜83及び第2の膜84を形成する。 【0036】 具体的には、スパッタ装置によってDCPowerが150W、ガス種がAr、圧力が2.0×10−1Paの条件で、n型Ga2O3基板80上に第1の膜83としてのTi膜を膜厚200nmで形成する。続いて、スパッタ装置によってDCPowerが150W、ガス種がAr、圧力が2.0×10−1Paの条件で、第1の膜83上に第2の膜84としてのAl膜を膜厚200nmで形成する。 【0037】 次に、n型Ga2O3基板80を裏返し、スパッタ法によってn型Ga2O3基板80上にショットキー電極82を形成してショットキーダイオード8を得る。 【0038】 具体的には、スパッタ装置によってショットキー電極82としてのAu膜を膜厚200nmで形成する。」 「【図2】 」 (2)引用文献1の記載事項 ア 前記(1)の【0001】によれば、引用文献1の記載は、「ショットキーダイオード」に関するものであるといえる。 イ 同【0018】には、「このショットキーダイオード8は、一例として、寸法が10×10mmであり、図2に示すように、n型Ga2O3基板80と、オーミック電極81と、ショットキー電極82と、を備えて概略構成されている」と記載されているから、「ショットキーダイオード」は、「n型Ga2O3基板80」と、「オーミック電極81」と、「ショットキー電極82」とを含む、といえる。 ウ 同【0019】には、「n型Ga2O3基板80は、例えば、Ga2O3系の半導体基板から構成され」と記載されているから、「ショットキーダイオード」の「n型Ga2O3基板80」は半導体基板である。 エ 同【0018】には、「図2は、本発明の実施の形態に係るショットキーダイオードの要部断面図である」と記載されているから、同図2は、「ショットキーダイオード」の要部断面図を示すものといえる。 ここで、同図2から、「n型Ga2O3基板80」の下側の表面に「オーミック電極81」が設けられ、「n型Ga2O3基板80」の上側の表面に「ショットキー電極82」が設けられることが見て取れる。 オ 同【0028】には、「(ショットキーダイオードの製造方法)以下に、本実施の形態のショットキーダイオード8の製造方法の一例について説明する。」と記載されているから、同【0028】以下の記載は、「ショットキーダイオード」の製造方法に関する記載であるといえる。 ここで、同【0031】に「β−Ga2O3単結晶は、b軸<010>方位に結晶成長させた場合は、(100)面の劈開性が強くなるので、(100)面に平行な面と垂直な面で切断してβ−Ga2O3基板を作製する」と記載されており、同【0034】に「上記の製造方法によりGa2O3基板がn型導電性を示すことになるのは、β−Ga2O3単結晶中の酸素欠陥によるため、あるいは、n型のドーパントによるためである」と記載されており、同【0035】に「次に、スパッタ法によってn型Ga2O3基板80上に第1の膜83及び第2の膜84を形成する」と記載されているから、「ショットキーダイオード」の「n型Ga2O3基板80」は、b軸<010>方位に結晶成長させたβ−Ga2O3単結晶を(100)面に平行な面と垂直な面で切断して作成したものであるといえる。 (3)引用文献1に記載された発明 前記(2)の記載事項から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「n型Ga2O3基板80と、 オーミック電極81と、 ショットキー電極82と、 を含み、 前記n型Ga2O3基板80は、半導体基板であり、 前記n型Ga2O3基板80の下側の表面に前記オーミック電極81が設けられ、 前記n型Ga2O3基板80の上側の表面に前記ショットキー電極82が設けられ、 前記n型Ga2O3基板80は、b軸<010>方位に結晶成長させたβ−Ga2O3単結晶を(100)面に平行な面と垂直な面で切断して作成したものである、 ショットキーダイオード。」 2 引用文献2について (1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、次の記載がある。 「【0005】 ダイオードといった窒化物半導体素子のブレイクダウンの機構は以下の様である。逆バイアス状態での最大電界強度であるショットキ接合またはPN接合での電界強度が臨界値を超えると、インパクトイオン化による逆方向リーク電流が急増する。これがブレイクダウン現象である。空乏層が伸びるところのエピタキシャル層の厚みが十分厚く接合部での電界強度が臨界値に到達した状態でも、空乏層がエピタキシャル層中にある場合には、ブレイクダウンは理想的である。しかし、エピタキシャル層の厚みがキャリア濃度に対して十分な厚さがなく接合部での電界強度が臨界値に到達する以前にエピタキシャル層全厚が空乏化してしまう場合(パンチスルー)、接合部での電界強度が、より早く臨界値に到達するので、前記の理想的な場合に比べて小さい印加電圧でブレイクダウンが生じる。また、エピタキシャル層と基板との界面にまで空乏層が伸びるので、界面の不完全性に起因したリーク電流が逆方向特性を悪化させてブレイクダウン電圧を低下させるという影響の可能性もある。以上のような影響によりパンチスルーが生じると、ブレイクダウン電圧が小さくなってしまう。」 「【0030】 (第1の実施の形態) 図1は、第1の実施の形態に係るIII族窒化物半導体素子を示す図面である。この半導体素子はショットキダイオード11である。ショットキダイオード11は、窒化ガリウム支持基体13と、窒化ガリウムエピタキシャル層15と、オーミック電極17と、ショットキ電極19とを備える。窒化ガリウム支持基体13は、第1の面13aと第1の面の反対側の第2の面13bとを有しており、1×1018cm−3を超えるキャリア濃度を示す。窒化ガリウムエピタキシャル層15は、第1の面13a上に設けられている。オーミック電極17は、第2の面13b上に設けられている。ショットキ電極19は、窒化ガリウムエピタキシャル層15上に設けられている。窒化ガリウムエピタキシャル層15の厚さD1は5マイクロメートル以上1000マイクロメートル以下である。また、窒化ガリウムエピタキシャル層15のキャリア濃度は、1×1014cm−3以上1×1017cm−3以下である。キャリア濃度が1×1014cm−3以上であれば、オン抵抗を小さくできる。キャリア濃度が1×1017cm−3以下であれば、耐圧を高くできる。 【0031】 このショットキダイオード11によれば、窒化ガリウムエピタキシャル層15の厚さが5マイクロメートル以上1000マイクロメートル以下であり、且つエピタキシャル層15のキャリア濃度が1×1014cm−3以上1×1017cm−3以下であるので、エピタキシャル層の厚みとキャリア濃度の適切な設計により、パンチスルーの生じない、理想的なブレイクダウンを実現できる。したがって、ショットキダイオード11のブレイクダウン電圧を高めることができる。 【0032】 GaN基板のキャリア濃度はエピタキシャル層のキャリア濃度より大きい。図1に示されるように、ショットキダイオード11では、オーミック電極17は、基板13の第2の面13bの全面上に設けられている。一方、ショットキ電極19は、エピタキシャル層の表面の一部、例えば素子のほぼ中央に円形状に形成されている。ショットキ電極19としては、例えばニッケル金(Ni/Au)を用いることができるが、この他にPt/Au、Auを用いてもよい。窒化ガリウム支持基体13および窒化ガリウムエピタキシャル層15はn導電型を示している。また、窒化ガリウムエピタキシャル層15は、窒化ガリウム支持基体13上に直接にホモエピタキシャル成長される。窒化ガリウム支持基体13の厚みD2は、例えば100マイクロメートル以上700マイクロメートル以下であることが好ましい。 【0033】 (実施例1) HVPE法で作製された(0001)面GaN自立基板を準備する。以下の手順によりショットキダイオードを作製する。n導電型GaN自立基板のキャリア濃度は3×1018cm−3であり、その厚みは400マイクロメートルである。この基板中の平均転位密度は5×106cm−2である。GaN自立基板上に、キャリア濃度が5×1015cm−3でありその厚みが20マイクロメートルのn導電型エピタキシャル膜をHVPE法により成長してエピタキシャル基板を作製する(以下、試料Aとして参照する)。基板の裏面にオーミック電極を形成し、エピタキシャル膜上にショットキ電極を形成する。オーミック電極は、有機洗浄した後に基板の裏面全面に形成される。オーミック電極の形成では、Ti/Al/Ti/Au(20nm/100nm/20nm/300nm)をEB蒸着法により形成する。オーミック電極膜を形成した後に、摂氏600度で約1分間の合金化を行う。ショットキ電極は、500nmの金膜を抵抗加熱蒸着法により形成する。ショットキ電極の形状は、例えば200マイクロメートル直径の円形である。オーミック電極およびショットキ電極それぞれの形成に先立って、蒸着前に、HCl水溶液(塩酸1:純水1)を用いて、エピタキシャル膜表面の処理を室温で1分間行う。 一方、別のGaN自立基板上に、キャリア濃度が5×1015cm−3でありその厚みが3マイクロメートルのエピタキシャル膜をHVPE法により成長してエピタキシャル基板を作製する(以下、試料Bとして参照する)。上記と同様にオーミック電極およびショットキ電極を形成する。 【0034】 図2は、試料Aおよび試料BのI−V特性を示す図面である。図2では、特性曲線CAが試料Aの特性を示し、特性曲線CBが試料Bの特性を示す。図3(A)は、厚いエピタキシャル膜を有するショットキダイオードの耐圧を説明するための図面であり、図3(B)は、薄いエピタキシャル膜を有するショットキダイオードの耐圧を説明するための図面である。試料Bの逆方向耐圧は、試料Aの逆方向耐圧に比べて小さい。この理由として、試料Aでは、エピタキシャル層の厚みが十分に厚いので、図3(A)に示されるように、印加電圧を大きくしていくと空乏層DepAが基板とエピタキシャル膜との界面に到達するに前に、ショットキ電極とエピタキシャル膜との界面あたりでインパクトイオン化が発生し、これによる逆方向リーク電流が流れる。このインパクトイオン化が逆方向耐圧を決定している。試料Bでは、エピタキシャル膜の厚みが十分ではないので、図3(B)に示されるように、印加電圧を大きくしていくと、ショットキ電極下エピ表面でのインパクトイオン化の発生よりも先に、空乏層DepBが基板とエピタキシャル膜との界面に到達するパンチスルーが生じてしまい、逆方向耐圧が低下する。」 「【図1】 」 「【図3】 」 第5 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 ア 引用発明1の「n型Ga2O3基板80」は、「b軸<010>方位に結晶成長させたβ−Ga2O3単結晶を(100)面に平行な面と垂直な面で切断して作成したもの」であるから、β−Ga2O3単結晶からなる基板である。 また、引用発明1の「n型Ga2O3基板80」は、「半導体基板」である。 一方、本願発明1の「第2のn型半導体層」は、「β−Ga2O3系単結晶基板よりなる」ものである。 よって、本願発明1の「第2のn型半導体層」と、引用発明1の「n型Ga2O3基板80」とは、「β−Ga2O3系単結晶基板よりなる」ものであり、かつ、「n型」の「半導体」である点で共通する。 以上によれば、本願発明1と引用発明1とは、「β−Ga2O3系単結晶基板よりなる第2のn型半導体層」を含む点で共通する。 イ 引用発明1の「オーミック電極81」は、「n型Ga2O3基板80」の「下側の表面」に設けられたものである。 よって、本願発明1と引用発明1とは、「前記第2のn型半導体層」の「表面に設けられたオーミック電極」を含む点で共通する。 ウ 引用発明1は、「ショットキー電極82」を含む。 よって、本願発明1と引用発明1とは、「ショットキー電極」を含む点で共通する。 エ 引用発明1の「ショットキーダイオード」は、本願発明1の「ショットキーバリアダイオード」に相当する。 オ 以上のア〜エによれば、本願発明1と引用発明1の一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「β−Ga2O3系単結晶基板よりなる第2のn型半導体層と、 ショットキー電極と、 前記第2のn型半導体層の表面に設けられたオーミック電極と、を含む、 ショットキーバリアダイオード。」 <相違点1> 本願発明1は、「逆方向耐圧及び順方向電圧を定める、第1のキャリア濃度を有した、β−Ga2O3系単結晶エピタキシャル層よりなる第1のn型半導体層」を含むのに対し、引用発明1は、そのようなn型半導体層を含まない点。 <相違点2> 本願発明1の「第2のn型半導体層」は、「順方向電圧を定める、前記第1のキャリア濃度よりも高い第2のキャリア濃度を有」するのに対し、引用発明1の「n型Ga2O3基板80」のキャリア濃度が不明である点。 <相違点3> 本願発明1の「ショットキー電極」は、「前記第1のn型半導体層の、前記第2のn型半導体層と反対側の表面に設けられ」、「オーミック電極」は、「前記第2のn型半導体層の、前記第1のn型半導体層と反対側の表面に設けられ」ているのに対し、引用発明1は、「第1のn型半導体層」を備えないため、そのような表面に、「ショットキー電極82」及び「オーミック電極81」が設けられているか否かが不明である点。 <相違点4> 本願発明1の「β−Ga2O3系単結晶基板」は、「基板面方位を(010)面から37.5°以下の角度だけ回転させた面である」のに対し、引用発明1の「n型Ga2O3基板80」は、そのような基板面方位を有するものか否かが不明である点。 (2)相違点についての判断 ア 事案に鑑み相違点4から検討する。 相違点4に係る本願発明1の構成は、本願明細書の【0045】の「また、基板面方位を(010)面から37.5°以下の角度だけ回転させた面であってもよい。この場合n+半導体層32とn−半導体層31との界面を急峻にすることが出来ると共に、n−半導体層31の厚みを高精度に制御することが出来る。」との記載から、n+半導体層とn−半導体層との界面を急峻にすること、及び、n−半導体層の厚みを高精度に制御することを考慮して、特定されているものである。 一方、引用文献1には、基板面方位に係る記載として、【0031】に「β−Ga2O3単結晶は、b軸<010>方位に結晶成長させた場合は、(100)面の劈開性が強くなるので、(100)面に平行な面と垂直な面で切断してβ−Ga2O3基板を作製する。なお、a軸<100>方位あるいはc軸<001>方位に結晶成長させた場合は、(100)面および(001)面の劈開性が弱くなるので、全ての面の加工性が良くなり、上記のような切断面の制限はない。」と記載されているものの、n+半導体層とn−半導体層との界面を急峻にすること、及び、n−半導体層の厚みを高精度に制御することを考慮して、「基板面方位を(010)面から37.5°以下の角度だけ回転させ」ることについては何ら記載がない。 更に、引用文献1には、ほかに、基板面方位に関する記載はない。 よって、引用文献1には、n+半導体層とn−半導体層との界面を急峻にすること、及び、n−半導体層の厚みを高精度に制御することを考慮して、「基板面方位を(010)面から37.5°以下の角度だけ回転させ」ることについて記載も示唆もされていない。 また、引用文献2にも、n+半導体層とn−半導体層との界面を急峻にすること、及び、n−半導体層の厚みを高精度に制御することを考慮して、「基板面方位を(010)面から37.5°以下の角度だけ回転させ」ることについて記載も示唆もされていない。 また、当該事項は、本願出願前において周知技術であるともいえない。 以上のとおりであるから、引用発明1において、相違点4に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 (3)小括 よって、上記相違点1〜3について判断するまでもなく、本願発明1は、引用文献1〜2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 2 本願発明2〜6について 本願発明2〜6も、相違点1〜4に係る本願発明1の構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用文献1〜2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 第6 結び 以上のとおり、本願発明1〜6は、当業者が引用文献1〜2に記載された発明に基づいて、容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2022-08-10 |
出願番号 | P2020-038024 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H01L)
|
最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
河本 充雄 |
特許庁審判官 |
鈴木 聡一郎 棚田 一也 |
発明の名称 | ショットキーバリアダイオード |
代理人 | 特許業務法人平田国際特許事務所 |