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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H02J
管理番号 1388195
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-11-15 
確定日 2022-08-02 
事件の表示 特願2019−539456「電力システム、蓄電装置、電力システムの制御方法、および移動体」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 3月 7日国際公開、WO2019/044708、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2018年(平成30年)8月24日(優先権主張 平成29年8月30日)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。

令和3年 1月26日付け 拒絶理由通知書
令和3年 4月 1日 意見書・手続補正書の提出
令和3年 8月18日付け 拒絶査定(原査定)
令和3年11月15日 拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和3年8月18日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

理由2 本願請求項1−12に係る発明は、以下の引用文献2−3に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
2.特開2012−095397号公報
3.特開2013−055734号公報

第3 本願発明
本願請求項1−10に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」−「本願発明10」という。)は、令和3年11月15日の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1−10に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
蓄電装置と、前記蓄電装置からの電力の供給を受け付ける電力装置と、を備える電力システムであって、
前記蓄電装置または前記電力装置は、前記蓄電装置と前記電力装置とが接続されると、前記電力装置が前記蓄電装置から受け付ける電力の供給を、前記蓄電装置の充放電に関する充放電履歴情報に基づいて制御し、
前記充放電履歴情報は、所定条件を満たす第1充電装置からの充電電力量に応じて増加する第1パラメータと、前記所定条件を満たさない第2充電装置からの充電電力量に応じて増加する第2パラメータと、を含み、
前記蓄電装置または前記電力装置は、前記第2パラメータがゼロでない場合に前記電力装置が前記蓄電装置から電力の供給の受け付けることを禁止し、
前記所定条件は、再生可能エネルギーを用いて発電された電力を供給し、且つ、前記蓄電装置のユーザに対応付けられた充電装置であるとの条件を含み、
前記第1充電装置は、前記ユーザによって所有されたときまたは借りられたときに、前記ユーザと前記第1充電装置との対応関係を記憶する、電力システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電力システムであって、
前記蓄電装置または前記電力装置は、前記第2パラメータがゼロである場合に前記電力装置が前記蓄電装置から電力の供給の受け付けることを許可する、電力システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電力システムであって、
前記蓄電装置は、前記電力装置に対する電力の供給以外で放電すると、放電電力量の分だけ前記第1パラメータおよび前記第2パラメータの合計値を減少させ、
前記第2パラメータがゼロよりも大きい場合、前記第2パラメータが優先的に減少する、電力システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の電力システムであって、
前記蓄電装置は、前記電力装置に対して電力の供給をすると、前記電力装置に対して供給した電力量の分だけ前記第1パラメータを減少させる、電力システム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の電力システムであって、
前記蓄電装置は、回生ブレーキによって前記蓄電装置を充電する移動体に搭載されており、
前記第2パラメータは、前記移動体の回生ブレーキによる充電電力量に応じて増加する、電力システム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の電力システムであって、
前記充放電履歴情報は、前記蓄電装置と前記電力装置とが接続されると、前記蓄電装置から前記電力装置に送信され、
前記蓄電装置または前記電力装置は、前記充放電履歴情報が前記蓄電装置から前記電力装置に送信されると、前記電力装置が前記蓄電装置から電力の供給の受け付けることを禁止するか否かを決定する、電力システム。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の電力システムであって、
前記電力装置は、前記蓄電装置によって供給された電力量に応じた報酬を前記蓄電装置のユーザに付与し、
前記報酬は、前記電力装置が設置された施設でユーザが利用可能なポイントを含む、電力システム。
【請求項8】
電力装置に対して電力を供給する蓄電装置であって、
前記電力装置と接続されると、前記電力装置が前記蓄電装置から受け付ける電力の供給を、前記蓄電装置の充放電に関する充放電履歴情報に基づいて制御する制御部を備え、
前記充放電履歴情報は、所定条件を満たす第1充電装置からの充電電力量に応じて増加する第1パラメータと、前記所定条件を満たさない第2充電装置からの充電電力量に応じて増加する第2パラメータと、を含み、
前記蓄電装置または前記電力装置は、前記第2パラメータがゼロでない場合に前記電力装置が前記蓄電装置から電力の供給の受け付けることを禁止し、
前記所定条件は、再生可能エネルギーを用いて発電された電力を供給し、且つ、前記蓄電装置のユーザに対応付けられた充電装置であるとの条件を含み、
前記第1充電装置は、前記ユーザによって所有されたときまたは借りられたときに、前記ユーザと前記第1充電装置との対応関係を記憶する、蓄電装置。
【請求項9】
蓄電装置と、前記蓄電装置から電力の供給を受け付ける電力装置と、を備える電力システムの制御方法であって、
前記蓄電装置または前記電力装置が、前記蓄電装置と前記電力装置とが接続されると、前記電力装置が前記蓄電装置から受け付ける電力の供給を、前記蓄電装置の充放電に関する充放電履歴情報に基づいて制御するステップであって、前記充放電履歴情報は、所定条件を満たす第1充電装置からの充電電力量に応じて増加する第1パラメータと、前記所定条件を満たさない第2充電装置からの充電電力量に応じて増加する第2パラメータと、を含む、制御するステップと、
前記蓄電装置または前記電力装置が、前記第2パラメータがゼロでない場合に前記電力装置が前記蓄電装置から電力の供給の受け付けることを禁止するステップと、を含み、
前記所定条件は、再生可能エネルギーを用いて発電された電力を供給し、且つ、前記蓄電装置のユーザに対応付けられた充電装置であるとの条件を含み、
前記第1充電装置が、前記ユーザによって所有されたときまたは借りられたときに、前記ユーザと前記第1充電装置との対応関係を記憶するステップをさらに含む、電力システムの制御方法。
【請求項10】
電力装置に対して電力を供給する蓄電装置を搭載する移動体であって、
前記蓄電装置または前記電力装置は、前記蓄電装置と前記電力装置とが接続されると、前記電力装置が前記蓄電装置から受け付ける電力の供給を、前記蓄電装置の充放電に関する充放電履歴情報に基づいて制御し、
前記充放電履歴情報は、所定条件を満たす第1充電装置からの充電電力量に応じて増加する第1パラメータと、前記所定条件を満たさない第2充電装置からの充電電力量に応じて増加する第2パラメータと、を含み、
前記蓄電装置または前記電力装置は、前記第2パラメータがゼロでない場合に前記電力装置が前記蓄電装置から電力の供給の受け付けることを禁止し、
前記所定条件は、再生可能エネルギーを用いて発電された電力を供給し、且つ、前記蓄電装置のユーザに対応付けられた充電装置であるとの条件を含み、
前記第1充電装置は、前記ユーザによって所有されたときまたは借りられたときに、前記ユーザと前記第1充電装置との対応関係を記憶する、移動体。」

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用された特開2012−095397号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、下線は、強調のため当審にて付与した。

「【0006】
ここで、複数の発電元で発電された電力が蓄電池に蓄電される場合、蓄電池に貯められた電力の発電元を識別できないと、売電電力に太陽光発電による発電電力以外の電力が含まれる可能性があるため、電気事業者側に売電することができなかった。また電気事業者側に売電できたとしても、太陽光発電による発電電力以外の電力が混ざっている可能性があるため、太陽光発電装置で発電した電力が、太陽光発電の場合の買取価格よりも安い価格でしか売電できなかった。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、蓄電池に蓄電される電力を発電元の電源毎に識別して管理できる電力管理システムを提供することにある。」

「【0017】
図2は本実施形態の電力管理システムのシステム構成図である。本システムは、蓄電池1と、電力供給源である太陽光発電装置2a、燃料電池2b及び商用交流電源2cと、電力変換ユニット10と、DC分電盤20と、AC分電盤30と、電力管理装置40と、通信インタフェース50と、表示パネル60とを備えている。
【0018】
AC分電盤30では、商用交流電源2cに接続される主幹ブレーカ31と、主幹ブレーカ31の二次側に接続された複数の分岐ブレーカ32を備え、分岐ブレーカ32を介して制御機器33に交流電源(AC100V)が供給される。また主幹ブレーカ31の二次側には燃料電池2bが接続されており、燃料電池2bで発電された交流電力は主幹ブレーカ31を介して電力変換ユニット10に出力される。
【0019】
DC分電盤20は、電力変換ユニット10から直流電力の供給を受けて、制御機器21に給電する。
【0020】
電力変換ユニット10には、AC分電盤30が交流系電力線L2を介して接続されており、この交流系電力線L2を介して商用交流電源2c及び燃料電池2bに接続されるとともに、直流系電力線L1を介して太陽光発電装置2aに接続されている。電力変換ユニット10は、AC分電盤30から供給される交流電力および太陽光発電装置2aから供給される直流電力を所定の直流電力に変換してDC分電盤20に出力する。ここで、太陽光発電装置2a、燃料電池2bの発電電力が直流系の負荷の電力需要を上回っていれば、発電電力に余剰分が発生するので、電力変換ユニット10は余剰分を蓄電池1に蓄電させる。また、夜間など商用交流電源2cの単価が安い時間帯に交流電力を買電して蓄電池1に蓄電しておき、単価が高い時間帯に使用することも考えられ、電力変換ユニット10では、商用交流電源2cから買電した交流電力を直流電力に変換して蓄電池に蓄電させる。また電力変換ユニット10では、例えば直流系の負荷の電力需要が発電能力を上回ると、蓄電池1に蓄電されている電力を放出させて、直流系の負荷で利用する。また電力変換ユニット10は、蓄電池1に蓄電された蓄電分のうち、太陽光発電装置2aで発電された蓄電分を放出させて交流電力に変換し、交流電源系統に売電する機能も備えている。
【0021】
図2は電力変換ユニット10および電力管理装置40のブロック図であり、電力変換ユニット10は、入力電力計測部11と放出電力計測部12と電力放出制御部13と出力部14を主要な構成として備えている。
【0022】
入力電力計測部11は、各々の電力供給源2について蓄電池1に供給される電力供給量をそれぞれ計測する。本実施形態では電力供給源2として太陽光発電装置2aと燃料電池2bと商用交流電源2cがある。入力電力計測部11は、太陽光発電装置2aからの入力電流および入力電圧を計測することによって、太陽光発電装置2aからの電力供給量を計測する。また入力電力計測部11は、AC分電盤30からの入力電力を計測するとともに、センサー34を用いて燃料電池2bの発電電力を読み込み、燃料電池2bからの電力供給量および商用交流電源2cからの電力供給量(買電電力)を個別に計測する。
【0023】
放出電力計測部12は、蓄電池1から放出される電力量(放出電力量)を計測する。
【0024】
電力放出制御部13は蓄電池1からの放電を制御する。蓄電池1から放電された電力は出力部14からDC分電盤20に出力されて、直流系の制御機器21で利用されるか、或いは、出力部14で交流電力に変換されてAC分電盤30に送られ、交流電源系統に売電される。
【0025】
また電力管理装置40は、通信インタフェース(通信I/F)50を介して電力変換ユニット10との間で情報信号を授受し、蓄電池1の蓄電電力に関わる情報などを表示パネル60に表示させる。この電力管理装置40は、図1に示すように、入力電力管理部41と放出電力管理部42と蓄積電力管理部43と記憶部44とリセット部45を主要な構成として備えている。
【0026】
入力電力管理部41は、通信インタフェース50を介して電力変換ユニット10から入力電力計測部11の計測結果を読み込んでおり、電力供給源2毎に蓄電池1への電力供給量を管理する。
【0027】
放出電力管理部42は、通信インタフェース50を介して電力変換ユニット10から放出電力計測部12の計測結果を読み込み、全体の電力放出量をもとに、電力供給源2毎の電力放出量を管理する。
【0028】
蓄積電力管理部43は、入力電力管理部41及び放出電力管理部42が管理する電力供給源2毎の電力供給量及び電力放出量をもとに、電力供給源2毎の蓄積電力量を管理する。
【0029】
記憶部44は、蓄積電力管理部43が求めた電力供給源2毎の蓄電量を記憶する。
【0030】
リセット部45は、ユーザの操作に応じて記憶部43に記憶された電力供給源2毎の蓄電電力の情報を消去する。
【0031】
以下に、この電力管理システムの動作を図3(a)(b)のフローチャートに基づいて説明する。
【0032】
先ず、図3(a)のフローチャートを参照して蓄電時の動作を説明する。電力変換ユニット10は、電力供給源2である商用交流電源2cから買電された電力や、太陽光発電装置2a又は燃料電池2bで発電された電力の供給を受けると(S1)、これらの電力供給源2から供給された電力を蓄電池1に蓄積させる(S2)。この時、入力電力計測部11では、太陽光発電装置2aによる発電電力であるか、AC分電盤30から給電された電力であるかを判断する。AC分電盤30から給電されている場合、入力電力計測部11はセンサー34の出力をもとに燃料電池2bによる発電電力であるか、商用交流電源2cからの買電であるかを判断する。ここで、電力供給源が商用交流電源2cからの買電ではない場合(S3のNo)、入力電力計測部11は、センサー34の検出結果をもとに電力供給源2が太陽光発電装置2a及び燃料電池2bの何れであるかを特定して、電力供給量を計測する(S4)。また、電力供給源が商用交流電源2cからの買電である場合(S3のYes)、入力電力計測部11は、現在時刻をもとに表1のテーブルを参照して買電の種類を決定し、その電力供給量を計測する(S5)。ここで、商用交流電源2cから買電する場合、時間帯によって買電電力の単価が異なるので、各時間帯で買電量を管理している。下記の表1は時間帯と買電の種別との対応関係を示すテーブルであり、表1の例では1日を4つの時間帯に分け、時間帯毎に買電の種類を規定している。
【0033】
【表1】

【0034】
入力電力計測部11は、上記の処理を行って、蓄電池1に蓄電される電力の供給元を特定するとともに、その供給電力量を計測すると、蓄電電力の電力供給源および供給電力量の計測結果を電力管理装置40の入力電力管理部41へ出力する。
【0035】
電力管理装置40の入力電力管理部41は、入力電力計測部11から蓄積電力の電力供給源及び供給電力量の計測結果が入力されると、記憶部44から電力供給量管理テーブル(表2参照)を読み込む。この電力供給量管理テーブルには、電力供給源毎の蓄積電力量とその合計値、並びに、蓄積電力量の合計値に対する電力供給源毎の蓄積電力量の割合が記憶されている。
【0036】
【表2】

【0037】
入力電力管理部41は、電力供給源毎の蓄積電力量を電力供給量管理テーブルから読み出し、供給元の電力供給源2の蓄積電力量に今回の計測結果を加算して蓄積電力量を更新し、記憶部44に記憶させる(S6)。また電力供給量管理テーブルが更新されると、蓄積電力管理部43は、電力供給量管理テーブルから各電力供給源2の蓄積電力量を読み出して蓄積電力量を合計し、この合計値に対する各電力供給源2の蓄積電力量の割合を求めて、電力供給量管理テーブルに記憶させる(S7)。
【0038】
次に、図3(b)のフローチャートを参照して放電時の動作を説明する。電力変換ユニット10の電力放出制御部13によって蓄電池1に蓄電された電力が放出されると、蓄電池1から放出された電力は、直流系の制御機器21で利用されるか、交流電力に変換されて交流電源系統に売電される(S11)。この時、蓄電池1から放出された電力量は放出電力計測部12によって計測され、放出電力量の計測結果が放出電力計測部12から通信インタフェース50を介して電力管理装置40へ出力される。電力管理装置40では、放出電力管理部42が放出電力量の計測結果を取り込み、この放出電力量(全体)においてS7で求めた割合で電力供給源2毎に電力放出がなされたものとして、電力供給源2毎の放出電力量を求める(S12)。すなわち、全体の放出電力量をA(kWh)、ある電力供給源2の蓄積電力量が全体に占める割合をxとすると、この電力供給源2による蓄電分から放出された電力は、A×x(kWh)として求められる。
【0039】
例えば表3に示すように、4つの電力供給源(太陽光発電P1、買電(昼)P2、買電(夜)P3、燃料電池P4)によって蓄電池1に蓄電されている状態で、時刻T1→T2→T3と電源毎の蓄積電力量が変化したとする。ここで、放電前の時刻T3において、各電源の蓄積電力量P1,P2,P3,P4がそれぞれ18Wh、12Wh、12Wh、18Whであったとすると、電源毎の蓄積電力量の比率はP1:P2:P3:P4=3:2:2:3となる。その後、蓄電池1に蓄電されていた電力が15Wh使用された場合、放出電力管理部42は、放電前に求めた電源毎の比率を用いて、電力供給源毎に放出電力量を配分する。例えば太陽光発電装置2aであれば、太陽光発電装置2aによる蓄電分の全体に対する比率は3/10であるので、太陽光発電装置2aによる蓄電分から放出された電力量は15×3/10=4.5(Wh)と求められる。他の電力供給源2についても同様の計算を行って放出電力量を求めることができ、放電後の時刻T4における蓄積電力量は下表の通りになり、放電前後で電力供給源2毎の蓄積電力量の比率は同じ値となる。
【0040】
【表3】

【0041】
このようにして電力供給源毎に放出電力量が分配されると、蓄積電力管理部43は、記憶部44から電力供給量管理テーブルを読み出し、各電力供給源2の蓄積電力量から放出電力量を減算することによって、蓄積電力量の値を更新する(S13)。また蓄積電力管理部43は、電力供給量管理テーブルから蓄積電力量の合計値を読み出し、この合計値から全放出電力量を減算して、蓄積電力量の値を更新し(S14)、更新後の電力供給量管理テーブルを記憶部44に記憶させる。
【0042】
したがって、記憶部44に記憶された電力供給量管理テーブルには、蓄電池1に蓄電されている蓄積電力量が、電力供給源毎に分類して記憶されるから、各々の電力供給源2による蓄電分を個別に管理することができる。
【0043】
ここで、蓄電池1に蓄電された電力を売電する場合、蓄積電力管理部43は、記憶部44に記憶された電力供給量管理テーブルを参照して、太陽光発電装置2aによる蓄電分を抽出することにより、売電可能な電力量を求めている。そして、蓄積電力管理部43では、電力変換ユニット10の電力放出制御部13に、太陽光発電装置2aによる蓄電分の範囲内で売電を指示すると、蓄電池1に蓄電された電力が出力部14から放出され、電源系統側に売電される。
【0044】
上述のように電力管理装置40は、蓄電池1に蓄電されている電力のうち、太陽光発電装置2aによる発電分がどれだけあるかを把握しているから、蓄電池1に蓄電された電力であっても、太陽光発電装置2aによる発電分として売電することができる。したがって、発電時以外でも所望のタイミングで太陽光発電装置2aによる発電電力を売電することができ、買取価格が高い時間帯を狙って売電できる。また、蓄電池1に蓄電された電力を電力供給源2毎に識別して管理しているので、太陽光発電以外の電源による電力が含まれていない太陽光発電の発電分として売電できるから、他の電源よりも高めに設定された太陽光発電の買取価格で売電することができる。
【0045】
このように本実施形態では電力供給源毎の蓄電分の割合(比率)を求め、この割合にしたがって各電力供給源の蓄電分が放出されたと判断しており、放電前後で電力供給源毎の蓄電分の比率が変化しないものとして、電源毎の放出電力量を求めることができる。」

「【図2】




以上の記載より、引用文献2には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「蓄電池1と、電力供給源である太陽光発電装置2a、燃料電池2b及び商用交流電源2cと、電力変換ユニット10と、DC分電盤20と、AC分電盤30と、電力管理装置40と、通信インタフェース50と、表示パネル60とを備えたシステムであって、(【0017】)
電力変換ユニット10は、入力電力計測部11と放出電力計測部12と電力放出制御部13と出力部14を備え、(【0021】)
電力管理装置40は、入力電力管理部41と放出電力管理部42と蓄積電力管理部43と記憶部44とリセット部45を備え、(【0025】)
記憶部44に記憶される電力供給量管理テーブルには、電力供給源毎の蓄積電力量とその合計値、並びに、蓄積電力量の合計値に対する電力供給源毎の蓄積電力量の割合が記憶されており、(【0035】、【0041】)
電力変換ユニット10は、蓄電池1に蓄電された蓄電分のうち、太陽光発電装置2aで発電された蓄電分を放出させて交流電力に変換し、交流電源系統に売電する機能を備え、蓄電池1から放電された電力は、交流電力に変換されてAC分電盤30に送られ、交流電源系統に売電され、(【0020】、【0024】)
電力変換ユニット10は、電力の供給を受けると、電力供給源2から供給された電力を蓄電池1に蓄積させ、(【0032】)
入力電力計測部11は、蓄電池1に蓄電される電力の供給元を特定するとともに、その供給電力量を計測し、(【0034】)
入力電力管理部41は、入力電力計測部11から蓄積電力の電力供給源及び供給電力量の計測結果が入力されると、供給元の電力供給源2の蓄積電力量に今回の計測結果を加算して蓄積電力量を更新し、蓄積電力管理部43は、電力供給量管理テーブルから各電力供給源2の蓄積電力量を読み出して蓄積電力量を合計し、この合計値に対する各電力供給源2の蓄積電力量の割合を求めて、電力供給量管理テーブルに記憶させ、(【0035】、【0037】)
電力変換ユニット10の電力放出制御部13によって蓄電池1に蓄電された電力が放出されると、蓄電池1から放出された電力量は放出電力計測部12によって計測され、放出電力管理部42が放出電力量の計測結果を取り込み、電力供給源2毎の放出電力量を求め、(【0038】)
蓄積電力管理部43は、記憶部44から電力供給量管理テーブルを読み出し、各電力供給源2の蓄積電力量から放出電力量を減算することによって、蓄積電力量の値を更新し、(【0041】)
蓄電池1に蓄電された電力を売電する場合、蓄積電力管理部43は、記憶部44に記憶された電力供給量管理テーブルを参照して、太陽光発電装置2aによる蓄電分を抽出することにより、売電可能な電力量を求め、蓄積電力管理部43では、電力変換ユニット10の電力放出制御部13に、太陽光発電装置2aによる蓄電分の範囲内で売電を指示すると、蓄電池1に蓄電された電力が出力部14から放出され、電源系統側に売電される、(【0043】)
システム。」

2.引用文献3
原査定の拒絶の理由に引用された特開2013−055734号公報(以下、「引用文献3」という。)の【0020】−【0022】、【0098】−【0117】の記載からみて、引用文献3には、電気自動車にそれぞれ搭載された蓄電池の充放電により電力を売買するシステムであって、電気自動車に搭載された蓄電情報管理装置は、受電情報管理装置から条件データを受信した後、蓄電池から受電設備への給電を開始し、給電が終了すると、蓄電池から放電された電力の属性情報を含む属性データを受電情報管理装置へ送信すると共に、放電後に蓄電池に蓄電されている電力の属性を評価することが記載されている。

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 「蓄電装置と、前記蓄電装置からの電力の供給を受け付ける電力装置と、を備える電力システム」について

引用発明の「蓄電池1」は、本願発明1の「蓄電装置」に相当する。
また、引用発明は、「蓄電池1から放電された電力は、交流電力に変換されてAC分電盤30に送られ、交流電源系統に売電され」るから、引用発明の「交流電源系統」と、本願発明1の「蓄電装置からの電力の供給を受け付ける電力装置」とは、「蓄電装置からの電力の供給を受け付ける電力供給先」である点で一致する。
そうすると、本願発明1と引用発明とは、「蓄電装置と、前記蓄電装置からの電力の供給を受け付ける電力供給先と、を備える電力システム」である点で一致する。

イ 「前記蓄電装置または前記電力装置は、前記蓄電装置と前記電力装置とが接続されると、前記電力装置が前記蓄電装置から受け付ける電力の供給を、前記蓄電装置の充放電に関する充放電履歴情報に基づいて制御し、」について

引用発明は、蓄電池1から放電された電力をAC分電盤30に送ることによって、売電がなされるものであり、蓄電池1に蓄電された電力を売電する場合、記憶部44に記憶された電力供給量管理テーブルを参照して、太陽光発電装置2aによる蓄電分の範囲内で売電が指示されるから、電力供給量管理テーブルに記憶されている電力供給源毎の蓄積電力量に基づいて売電は制御されているといえる。

また、引用発明の電力供給量管理テーブルに記憶されている電力供給源毎の蓄積電力量は、電力の供給を受けると供給電力量を加算して更新され、蓄電池1に蓄電された電力が放出されると放出電力量を減算することによって更新されるから、蓄電池の充放電に関する情報であり、本願発明1の「蓄電装置の充放電に関する充放電履歴情報」と引用発明の「電力供給源毎の蓄積電力量」とは、「蓄電装置の充放電に関する充放電の情報」である点で一致する。

そして、引用発明には、「前記蓄電装置または前記電力装置は、前記蓄電装置と前記電力装置とが接続されると、」電力の供給を制御することについて、特定されていない。

そうすると、本願発明1と引用発明とは、上記アを踏まえると、「前記電力供給先が前記蓄電装置から受け付ける電力の供給を、前記蓄電装置の充放電に関する充放電の情報に基づいて制御」する点で一致する。

ウ 「前記充放電履歴情報は、所定条件を満たす第1充電装置からの充電電力量に応じて増加する第1パラメータと、前記所定条件を満たさない第2充電装置からの充電電力量に応じて増加する第2パラメータと、を含み、」について

引用発明の電力供給量管理テーブルに記憶されている電力供給源毎の蓄積電力量は、電力の供給を受けると供給電力量を加算して更新されるものであるから、「充電電力量に応じて増加するパラメータ」といえる。
しかしながら、引用発明の電力供給量管理テーブルに記憶されている蓄積電力量は、電力供給源毎の蓄積電力量であり、「所定条件を満たす第1充電装置」と「所定条件を満たさない第2充電装置」とに分けたものとはいえない。
そうすると、本願発明1と引用発明とは、「前記充放電の情報は、充電電力量に応じて増加するパラメータを含み、」の点で一致する。

以上より、本願発明1と引用発明とは、
「蓄電装置と、前記蓄電装置からの電力の供給を受け付ける電力供給先と、を備える電力システムであって、
前記電力供給先が前記蓄電装置から受け付ける電力の供給を、前記蓄電装置の充放電に関する充放電の情報に基づいて制御し、
前記充放電の情報は、充電電力量に応じて増加するパラメータを含む、電力システム。」

である点で一致し、次の点で相違する。

相違点1
「電力供給先」について、本願発明1は「電力装置」であるのに対して、引用発明は「交流電源系統」である点。

相違点2
本願発明1は、「前記蓄電装置または前記電力装置は、前記蓄電装置と前記電力装置とが接続されると、」前記電力装置が前記蓄電装置から受け付ける電力の供給を、制御するのに対して、引用発明は、当該事項が特定されていない点。

相違点3
「充放電の情報」について、本願発明1は「充放電履歴情報」であるのに対して、引用発明は「履歴」であることの特定がない点。

相違点4
本願発明1は、「前記充放電履歴情報は、所定条件を満たす第1充電装置からの充電電力量に応じて増加する第1パラメータと、前記所定条件を満たさない第2充電装置からの充電電力量に応じて増加する第2パラメータと、を含み、」「前記所定条件は、再生可能エネルギーを用いて発電された電力を供給し、且つ、前記蓄電装置のユーザに対応付けられた充電装置であるとの条件を含み、前記第1充電装置は、前記ユーザによって所有されたときまたは借りられたときに、前記ユーザと前記第1充電装置との対応関係を記憶する」のに対して、引用発明は、充放電の情報は、電力供給源毎の蓄積電力量である点。

相違点5
本願発明1は、「前記蓄電装置または前記電力装置は、前記第2パラメータがゼロでない場合に前記電力装置が前記蓄電装置から電力の供給の受け付けることを禁止」するのに対して、引用発明は、当該事項が特定されていない点。

(2)判断
事案に鑑み、相違点4について、検討する。
再生可能エネルギーを用いて発電された電力を供給し、且つ、前記蓄電装置のユーザに対応付けられた充電装置であるとの条件を、所定条件として、所定条件を満たす第1充電装置からの充電電力量に応じて増加する第1パラメータと所定条件を満たさない第2充電装置からの充電電力量に応じて増加する第2パラメータとすることは、引用文献3に記載されておらず、他に当業者に周知な事項であるとの証拠もない。
してみると、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、引用発明及び引用文献3に記載された事項に基づいて、当業者が容易になしえたものとはいえない。

2.本願発明2〜7について
本願発明2〜7は、本願発明1を引用するものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献3に記載された事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明8〜10について
本願発明8〜10は、本願発明1と同様の構成を備えたものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献3に記載された事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第6 原査定について
本願発明1〜10は、上記第5のとおり、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献2−3に基いて、容易に発明できたものとはいえない。
したがって、原査定の理由2を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2022-07-20 
出願番号 P2019-539456
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H02J)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 角田 慎治
特許庁審判官 衣鳩 文彦
寺谷 大亮
発明の名称 電力システム、蓄電装置、電力システムの制御方法、および移動体  
代理人 塩川 未久  
代理人 杉村 憲司  
代理人 杉村 光嗣  
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