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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 補正却下を取り消す 原査定を取り消し、特許すべきものとする  A61G
管理番号 1388211
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-11-25 
確定日 2022-09-13 
事件の表示 特願2019−127408号「頭部載置具および椅子」拒絶査定不服審判事件〔令和1年9月26日出願公開、特開2019−162555号、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年3月7日に出願した特願2014−44484号(以下「原出願」という。)の一部を令和1年7月9日に新たな特許出願としたものであって、令和2年7月30日付けで拒絶理由が通知され、同年8月17日に意見書及び手続補正書が提出され、令和3年1月27日付けで拒絶理由が通知され、同年3月29日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年8月25日付けで補正の却下の決定がされるとともに拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対して、同年11月25日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

第2 令和3年8月25日付けの補正の却下の決定について
請求人は、令和3年11月25日提出の審判請求書の「【請求の理由】」の「3.補正却下の決定が取り消されるべき理由」「(2)補正後の請求項1に係る発明が、出願の際独立して特許を受けることができるものであることの説明」「イ 小括」において、「以上のとおり、本願発明1は、文献1発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものではなく、進歩性(同法第29条第2項)を有していることから、独立して特許を受けることができるものであり、同法第6項第2号(当審注:正しくは「同法第17条の2第6項」)において準用する同法第126条第7項の要件を満たしている。なお、本件補正は、令和3年3月29日付けで提出した意見書において主張したとおり、技術的特徴を変更するものではないため、同法第17条の2第4項の要件を満たしているし、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるため、同条第5項第2号の要件も満たしている。」と主張し、同「4.結語」において、「以上より、補正却下の決定は取り消されるべきであるし、また、本願に係る発明は、引用文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものとは認められないため、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではなく、特許されるべきものである。よって、補正却下ならびに原査定を取り消す、本願の発明は特許すべきものとする、との審決を希求する次第である。」と主張しており、「補正の却下の決定」に対して不服が申し立てられているものと認められるため、令和3年8月25日付け補正の却下の決定の当否について検討する。

[令和3年8月25日付けの補正の却下の決定についての結論]
令和3年8月25日付けの補正の却下の決定を取り消す。
[理由]
1 補正の内容
令和3年3月29日提出の手続補正書でした手続補正(以下「本件補正」という。)は、本件補正前(令和2年8月17日提出の手続補正書により手続補正されたもの)の特許請求の範囲を、以下のとおりに補正するものである。

(1)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の特許請求の範囲の記載は次のとおりである。
「 【請求項1】
載置される後頭部の中心に当たらない幅の間隔の空間を空けて対面して配置され、互いに離れる方向に傾斜した内側立ち上がり部と、
前記内側立ち上がり部が対面する側の反対側に配置され、前記内側立ち上がり部の先端部が連接されると共に下側において前記内側立ち上がり部から離れた外側立ち上がり部と、を有し、
一方の前記内側立ち上がり部、および一方の前記外側立ち上がり部を有する第一載置具と、他方の前記内側立ち上がり部、および他方の前記外側立ち上がり部を有する第二載置具とが、前記間隔の空間を空けて個別に備えられ、
前記内側立ち上がり部が、頭部が載置される側から視して、凹弧状に湾曲して形成され、前記先端部が、頭部の側方から視して凹弧状に湾曲しており、
前記内側立ち上がり部および前記外側立ち上がり部が弾性体であり、
頭部が載置されると、後頭部の中心が、前記間隔の空間によって、何れにも接触せず、前記内側立ち上がり部が、この内側立ち上がり部毎に撓んで沈み込む、
ことを特徴とする頭部載置具。
【請求項2】
前記内側立ち上がり部と前記外側立ち上がり部とが対面する内側が中空である、
ことを特徴とする請求項1に記載された頭部載置具。
【請求項3】
前記間隔を調節する調節機構が備えられた、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載された頭部載置具。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載された頭部載置具が備えられた、
ことを特徴とする椅子。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲
本件補正により、特許請求の範囲は次のとおり補正された(下線部は、請求人が付したもので、補正箇所を示すものである。)
「 【請求項1】
載置される後頭部の中心に当たらない幅の間隔の空間を空けて対面して配置され、互いに離れる方向に傾斜し、後頭部が載置される内側立ち上がり部と、
前記内側立ち上がり部が対面する側の反対側に配置され、前記内側立ち上がり部の先端部が連接されると共に下側において前記内側立ち上がり部から離れた外側立ち上がり部と、を有し、
一方の前記内側立ち上がり部、および一方の前記外側立ち上がり部を有する第一載置具と、他方の前記内側立ち上がり部、および他方の前記外側立ち上がり部を有する第二載置具とが、後頭部が載置されるものであって前記間隔の空間を空けて個別に備えられ、
前記内側立ち上がり部が、頭部が載置される側から視して、凹弧状に湾曲して形成され、前記先端部が、頭部の側方から視して凹弧状に湾曲しており、
前記内側立ち上がり部および前記外側立ち上がり部が弾性体であり、
後頭部が載置されると、後頭部の中心が、前記間隔の空間によって、何れにも接触せず、前記内側立ち上がり部が、この内側立ち上がり部毎に撓んで沈み込む、
ことを特徴とする頭部載置具。
【請求項2】
前記内側立ち上がり部と前記外側立ち上がり部とが対面する内側が中空である、
ことを特徴とする請求項1に記載された頭部載置具。
【請求項3】
前記間隔を調節する調節機構が備えられた、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載された頭部載置具。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載された頭部載置具が備えられた、
ことを特徴とする椅子。」

(3)補正事項
上記(1)及び(2)から、本件補正は、以下の補正事項からなるものである。
ア 補正事項1
補正前の請求項1における「互いに離れる方向に傾斜した内側立ち上がり部」を、「互いに離れる方向に傾斜し、後頭部が載置される内側立ち上がり部」に限定する。
イ 補正事項2
補正前の請求項1における「・・・第一載置具と、・・・第二載置具とが、前記間隔の空間を空けて」を、「・・・第一載置具と、・・・第二載置具とが、後頭部が載置されるものであって前記間隔の空間を空けて」に限定する。
ウ 補正事項3
補正前の請求項1における「頭部が載置されると、・・・前記内側立ち上がり部が、この内側立ち上がり部毎に撓んで沈み込む」を、「後頭部が載置されると、・・・前記内側立ち上がり部が、この内側立ち上がり部毎に撓んで沈み込む」に限定する。

2 令和3年8月25日付けの補正の却下の決定の概要
令和3年8月25日付けの補正の却下の決定の概要は、次のとおりである。
(1)
請求項1〜4についての本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる限定的減縮を目的としている
(2)
本件補正後の請求項1に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものである。
引用文献1:特表2013−526970号公報
(3)
したがって、本件補正後の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
(4)
よって、特許請求の範囲に係る本件補正は特許法第17条の2第6項において準用する特許法第126条第7項の規定に違反するものであるから、特許法第53条第1項の規定により、本件補正を却下することを決定する。

3 令和3年8月25日付けの補正の却下の決定についての検討
3−1 補正の目的について
補正事項1〜3(上記1(3)ア〜ウ)は、発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、補正の前後で請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であることは明らかであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものに該当する。
請求項2〜4は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、補正事項による補正で、請求項1に係る発明が減縮されたことに伴い、請求項2〜4に係る発明も減縮されている。
そこで、上記補正事項に係る補正後の請求項1〜4に係る発明が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について検討する。

3−2 独立特許要件について
(1)本件補正発明
本願の請求項1〜4に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1〜4に係る発明(それぞれ、「本件補正発明1」〜「本件補正発明4」という。)は、上記1(2)に記載のとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項及び引用発明等
ア 引用文献1に記載された事項
原査定で引用された引用文献1には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審が付した。以下同様である。)。
(1a)
「【0021】
【図1】本発明の実施形態の概略上面図である。
【図2A】本発明の実施形態の概略側面図である。
【図2B】本発明の実施形態の概略側面図である。
【図3A】本発明の装置の実施形態の概略図である。
【図3B】本発明の装置の実施形態の概略図である。
【図4A】本発明の下顎アームおよび下顎パッドを多様な方向から見た概略図である。
【図4B】本発明の下顎アームおよび下顎パッドを多様な方向から見た概略図である。
【図4C】本発明の下顎アームおよび下顎パッドを多様な方向から見た概略図である。
【図4D】本発明の下顎アームおよび下顎パッドを多様な方向から見た概略図である。
【図4E】本発明の下顎アームおよび下顎パッドを多様な方向から見た概略図である。
・・・
【図12】本発明の装置の実施形態の概略側面図である。
・・・
【0032】
図2Aは、本発明のある実施形態の右側20の側面図である。この側面図は、隆起した区域80、傾斜区域90およびくぼんだ区域100を有する実施形態をより良く図示しており、この描写した区域の差が、より明らかにわかる。隆起した区域80は、一般に上側40の近傍に設けられていて、その高さ170は、一般に下側50の近傍に設けられているくぼんだ区域100の高さよりも高い。傾斜区域90では、隆起区域80のより高い高さから、くぼんだ区域100のより低い高さへ移行する。傾斜区域90は、一定の傾斜または変動する傾斜を有することができ、この傾斜は任意の適切な大きさでありえる。隆起区域80、傾斜区域90およびくぼんだ区域100が、患者の頭部および首に一般的に合うように構成されていて、傾斜区域90が患者の首とほぼ一直線になるよう構成されている実施形態もある。図2Bは、図2Aに類似の実施形態を示す図である。図2Bは、基部10が隆起区域80と傾斜区域90とのみを有する実施形態を描写している。
【0033】
高さ170は、任意の適切な高さでありえる。好ましくは、高さ170は、患者の頭部を適切な距離だけ持ち上げるのに十分な高さであり、これにより患者の頭部を、「スニッフィング」ポジションまたはこれ以外の所望の位置へ設置することができ、例えば、患者の呼吸を改善し、緩和しまたは着実にすることができる。上述のように、高さ170は長さ70に渡って一定でもよいし、可変でもよい。高さ170が約4分の1インチ〜約6インチでありえる実施形態もある。高さ170が約1インチ〜約3インチでありえる実施形態もある。隆起区域80の高さが約2インチ〜約4インチであり、くぼんだ区域100の高さが約4分の1インチ〜約1インチである実施形態もある。
・・・
【0042】
図4Cを参照すると、下顎パッド130を強調している。図4Cは、アーム部分340と、湾曲部分300と、下顎パッド130とを備えた下顎アーム120を図示している。下顎パッド130は、任意の適切なサイズ、形状および特性を有する任意の適切な材料で作られうる。下顎パッド130が細長い実施形態もあるが、楕円、円形、長方形またはこれ以外の任意の適切な形状でありえる実施形態もある。ある実施形態では、下顎パッド130は、柔軟性を有しえるが、可鍛性のある、弾力性のある、剛性のある、または、これ以外の硬さを有しえる実施形態もある。下顎パッド130は、成形された発泡体または平坦な発泡体から作られうるが、これ以外のプラスチック、ゴム、樹脂、金属またはこれ以外の任意の適切な材料で作られうる実施形態もある。さらなる実施形態では、下顎パッド130は、使い捨てでありえるが、再使用可能、洗浄可能および/または殺菌可能でありえる実施形態もある。下顎パッド130は、湾曲部分300に取り外し可能にまたは固定的に付けられうる。下顎パッド130が、接着剤、エポキシ樹脂、セメントなどで付けられうる実施形態もあるが、下顎パッド130が湾曲部分300に任意の適切な方法で付けられうる実施形態もある。好適な実施形態では、下顎パッド130は、柔軟性のある発泡体から作られ、細長く、接着剤またはエポキシ樹脂で湾曲部分300に固定的に付けられている。
【0043】
下顎パッド130が、1点以上で患者の顎に接触するように構成されている実施形態もある。下顎パッド130が、2点または3点で患者の顎に接触するように構成されている実施形態もある。例えば、図12を参照すると、顎の線900を有する患者1000が、上側40と、下側60と、支持部110と、下顎パッド130を有する下顎アーム120とを備えた基部10を有する本発明の装置上にあるところが描写されている。顎の線900は、患者の顎の骨の様々な部分に対応する複数の部分を有する。下顎枝930は患者の顎の骨の下顎枝の縁に対応し、下顎体910は、患者の顎の骨の下顎体の縁に対応し、下顎角920は、患者の顎の骨の下顎角の縁に対応する。ある実施形態では、下顎パッド130は、患者の下顎枝930、患者の下顎体910および患者の下顎角920と接触するように構成されている。当然、ここでのおよび本開示の他の箇所での言及は、直接的な接触を言及しているのではなく、患者の皮膚での接触による間接的な接触を言及している。
【0044】
ここで図4Cを参照すると、下顎パッド130は抹消表面400、内側表面410、高さ420、幅460を有し、湾曲部分300から距離430だけ離れて伸張している。高さ420は任意の適切な高さでありえる。例えば、高さ420は、約10分の1インチ〜約5インチ、約4分の1インチ〜約1と2分の1インチ、約2分の1インチ〜約1インチ、または、これ以外の任意の適切な高さでありえる。同様に、距離430も任意の適切な距離でありえる。例えば、距離430は、約10分の1インチ〜約5インチ、約4分の1インチ〜約1と2分の1インチ、約2分の1インチ〜約1インチ、または、これ以外の任意の適切な高さでありえる。さらに、幅460は、任意の適切な幅でありえる。例えば、幅460は、約8分の1インチ〜約4インチ、約2分の1インチ〜約2と2分の1インチ、約1インチ〜約2インチ、または、これ以外の任意の適切な幅でありえる。描写した実施形態は、深さ440を有するくぼみ450を有する内側表面410を有する。内側表面410が平坦、実質的に平坦、または、凸状でありえる実施形態もある。ここでは丸く描写されているが、くぼみ450は任意の適切な形状を有しえる。さらに、内側表面410は、同様の、異なるまたは同一の構成を有する複数のくぼみ450を有しえる。くぼみ450は、下顎パッド130の(図4Eに描写した)長さ470に沿って、均一または実質的に均一でありえる。あるいは、くぼみ450の存在または特徴は、下顎パッド130の長さ470に渡って変わりえる。例えば、くぼみ450の深さ440は、下顎パッド130の長さ470に沿って実質的に一定でもよいし、変わってもよい。深さ440は、内側表面410の最も高い点から任意の適切な深さでありえる。例えば、深さ440は、約16分の1インチ〜約1インチ、約8分の1インチ〜約4分の3インチ、約4分の1インチ〜約2分の1インチ、または、任意の適切な深さでありえる。同様に、長さ470も任意の適切な長さでありえる。例えば、長さ470は、約1インチ〜約7インチ、約2インチ〜約5インチ、約2と2分の1インチ〜約4インチ、約3と2分の1インチ、または、これ以外の任意の適切な長さでありえる。
・・・
【0096】
例として、図12を参照すると、把持部材160を用いてまたはこれを用いずに、本発明の装置を、担架、手術台、歯科用の椅子またはこれ以外の任意の適切な場所に基部10を操作し、位置決めすることができる。患者1000を、基部10を有する本発明の装置上に設置し、患者の頭部の頭頂を基部10の上側40の方向を向け、患者の首を基部10の下側50の方向を向けうる。このような設置は、基部10を位置決めする前、その最中および/またはその後の時点で行われえる。患者を、位置調整ガイド155(図1参照)を参照してまたはこれを参照することなく基部10上に適切に設置することができる。例えば、患者1000は、患者の口が、支持部110(および/または位置調整ガイド155)とほぼ一直線になるように位置決めされうる。一度位置決めされれば(または、実施形態によっては患者1000が位置決めされている際に)、支持部110をx軸に沿って動かすことにより、下顎の間隙150(図1参照)を調節することができ、これにより支持部の幅140を広げることができる。これを以下のように行いえる、すなわち、支持部110上のボタン230を押すことにより、および、支持部110が所望の位置に達するまで、支持部110を基部10の方向へまたはこれとは離れる方向へ動かすことにより、かつ、その後ボタン230を解除して支持部110を低位置にロックすることにより行いえる実施形態もある。さらに、支持部110は、y軸でも調節可能である。高さ調節ボタン540を押して、支持部110が所望の位置に至るまで支持部110をy軸で動かし、その後、高さ調節ボタン540を解除することにより、この調節を行う実施形態もある。さらに、必要に応じて、支持部110はw軸またはz軸で調節可能である。回転調節ボタン550を押して、支持部110が所望の位置に至るまで支持部110をw軸で動かし、その後、回転調節ボタン550を解除することにより、この調節を行う実施形態もある。図9A〜図9Cで図示したようなさらなる実施形態では、高さ調節およびw軸またはz軸での調節は、ボタン1140を用いて行いえる。これらの調節は、基部10の反対側で支持部110に対して繰り返しうる。支持部110(および下顎アーム120)のw軸での回転移動により、患者の頭部を後ろに傾け、これにより患者の支持部110の気道を開くことができるように、患者1000に対して支持部110を相対的に位置決めする実施形態もある。これらの図面が図示するように、頸椎を1回以上屈曲させること、頭部を伸ばすこと、および、下顎を前方に変移させることのうちの1つまたは複数のために、患者を支持するように、下顎パッドおよび基部が構成されうるように、装置を構成しえる実施形態もある。」
(1b)
図1〜図4E及び図12は、以下のとおりである。




イ 引用文献1から認定できる事項
上記アの記載ないし図面から、以下の事項が認定できる。
(ア)
上記アの段落【0032】(同様の記載において、以下、段落番号だけを記載する。)の「隆起した区域80は、一般に上側40の近傍に設けられていて、その高さ170は、一般に下側50の近傍に設けられているくぼんだ区域100の高さよりも高い。」及び「図2Bは、図2Aに類似の実施形態を示す図である。図2Bは、基部10が隆起区域80と傾斜区域90とのみを有する実施形態を描写している。」、【0033】の「高さ170は、任意の適切な高さでありえる。好ましくは、高さ170は、患者の頭部を適切な距離だけ持ち上げるのに十分な高さであり、これにより患者の頭部を、「スニッフィング」ポジションまたはこれ以外の所望の位置へ設置することができ、例えば、患者の呼吸を改善し、緩和しまたは着実にすることができる。」、並びに、【0096】の「頭部の頭頂を基部10の上側40の方向を向け」という記載と、図1、図2A、図2B、図12を併せて参照すると、隆起区域80に後頭部が載置されることで頭部を持ち上げる基部10(以下「事項A」ともいう。)が特定できる。
(イ)
上記アの【0042】〜【0044】には、「顎が接触する、くぼみ450を有する内側表面410を有する、柔軟性のある発泡体から作られた下顎パッド130」(以下「事項B」という。)が記載されていると認められるところ、事項Bの「顎が接触する、くぼみ450を有する内側表面410」は、図1、図12を参照すると、頭部の左右にそれぞれ位置し、事項Aを踏まえると、基部10の隆起区域80に後頭部が載置されている頭部における左右の顎がそれぞれ接触していることが明らかである。
このことに併せて、図1〜図4C、図12(特に、図3B、図4C、図12)を参照すると、事項Bの「顎が接触する、くぼみ450を有する内側表面410」は、基部10の隆起区域80に後頭部が載置されている頭部における右顎が接触し、頭部の右斜め前方(顔の向く方向、すなわち、図12の紙面上方を前方としている。以下同。)に向けて傾斜し、前方側から見ると凹状に湾曲し、右の側方側から見ると前方端部が凹状に湾曲している、右のくぼみ450を有する内側表面410、及び、基部10の隆起区域80に後頭部が載置されている頭部における左顎が接触し、頭部の左斜め前方に向けて傾斜し、前方側から見ると凹状に湾曲し、左の側方側から見ると前方端部が凹状に湾曲している、左のくぼみ450を有する内側表面410として特定できる。
(ウ)
図4Cの「下顎パッド130」について、内側表面410と距離430の部分に着目し、上記(イ)を踏まえると、事項Bの「柔軟性のある発泡体から作られた下顎パッド130」は、右のくぼみ450を有する内側表面410と、右のくぼみ450を有する内側表面410の前方端部から連続し頭部の右斜め後方(後頭部の方向、図12の紙面下方を後方としている。以下同。)に向けて傾斜している傾斜面とを有する、右の柔軟性のある発泡体から作られた下顎パッド130、及び、左のくぼみ450を有する内側表面410と、左のくぼみ450を有する内側表面410の前方端部から連続し頭部の左斜め後方に向けて傾斜している傾斜面を有する、左の柔軟性のある発泡体から作られた下顎パッド130として特定できる。
(エ)
上記(イ)に併せて図1、図2A、図2B、図12を参照すると、【0096】の「装置」は、基部10と、右の柔軟性のある発泡体から作られた下顎パッド130と、左の柔軟性のある発泡体から作られた下顎パッド130とを、個別に備える、装置として特定できる。

ウ 引用文献1に記載された発明
上記ア、イから、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

[引用発明]
「隆起区域80に後頭部が載置されることで頭部を持ち上げる基部10と、
基部10の隆起区域80に後頭部が載置されている頭部における右顎が接触し、頭部の右斜め前方に向けて傾斜し、前方側から見ると凹状に湾曲し、右の側方側から見ると前方端部が凹状に湾曲している、右のくぼみ450を有する内側表面410と、右のくぼみ450を有する内側表面410の前方端部から連続し頭部の右斜め後方に向けて傾斜している傾斜面とを有する、右の柔軟性のある発泡体から作られた下顎パッド130と、
基部10の隆起区域80に後頭部が載置されている頭部における左顎が接触し、頭部の左斜め前方に向けて傾斜し、前方側から見ると凹状に湾曲し、左の側方側から見ると前方端部が凹状に湾曲している、左のくぼみ450を有する内側表面410と、左のくぼみ450を有する内側表面410の前方端部から連続し頭部の左斜め後方に向けて傾斜している傾斜面とを有する、左の柔軟性のある発泡体から作られた下顎パッド130とを、
個別に備える、
装置。」

(3)対比・判断
(3−1)本件補正発明1について
ア 対比
本件補正発明1と引用発明とを対比する。
(ア)

引用発明において、「後頭部が載置されている頭部における右顎が接触し」ている「右のくぼみ450を有する内側表面410」は、「頭部の右斜め前方に向けて傾斜し」、「後頭部が載置されている頭部における左顎が接触し」ている「左のくぼみ450を有する内側表面410」は、「頭部の左斜め前方に向けて傾斜し」ているから、引用発明の「後頭部が載置されている頭部における右顎が接触し」ている「右のくぼみ450を有する内側表面410」と「後頭部が載置されている頭部における左顎が接触し」ている「左のくぼみ450を有する内側表面410」は、互いに離れる方向に傾斜している。

引用発明において、各「くぼみ450を有する内側表面410」とは別の部分である「基部10」の「隆起区域80」に「後頭部が載置されている」ことと、上記aを踏まえると、引用発明の「後頭部が載置されている頭部における右顎が接触し」ている「右のくぼみ450を有する内側表面410」と「後頭部が載置されている頭部における左顎が接触し」ている「左のくぼみ450を有する内側表面410」は、載置される後頭部の中心に当たらない幅の間隔の空間を空けて対面して配置されていることが、明らかである。

引用発明において、「後頭部が載置されている頭部における右顎が接触し」ていること、及び、「後頭部が載置されている頭部における左顎が接触し」していることは、上記aで述べた「傾斜」に係る事項を踏まえると、実質的に、「後頭部が載置されている頭部における右顎が」載置されていること、及び、「後頭部が載置されている頭部における左顎が」載置されていることとして、特定できる。

引用発明の「右顎」及び「左顎」は、頭部の一部であるから、引用発明の「右顎」及び「左顎」と、本件補正発明1の「後頭部」とは、「頭部」において共通している。
このことと上記cを踏まえると、引用発明の「後頭部が載置されている頭部における右顎が接触し」ている「右のくぼみ450を有する内側表面410」及び「後頭部が載置されている頭部における左顎が接触し」ている「左のくぼみ450を有する内側表面410」は、いずれも、本件補正発明1の「後頭部が載置される内側立ち上がり部」と、「頭部が載置される内側立ち上がり部」において共通している。

上記a〜dを総合すると、
引用発明の「後頭部が載置されている頭部における右顎が接触し、頭部の右斜め前方に向けて傾斜し」ている「右のくぼみ450を有する内側表面410」及び「後頭部が載置されている頭部における左顎が接触し、頭部の左斜め前方に向けて傾斜し」ている「左のくぼみ450を有する内側表面410」と、本件補正発明1の「載置される後頭部の中心に当たらない幅の間隔の空間を空けて対面して配置され、互いに離れる方向に傾斜し、後頭部が載置される内側立ち上がり部」とは、「載置される後頭部の中心に当たらない幅の間隔の空間を空けて対面して配置され、互いに離れる方向に傾斜し、頭部が載置される内側立ち上がり部」において共通している。
(イ)

引用発明の「右のくぼみ450を有する内側表面410の前方端部から連続し頭部の右斜め後方に向けて傾斜している傾斜面」について、以下のことがいえる。
引用発明において、「右のくぼみ450を有する内側表面410」は、「頭部の右斜め前方に向けて傾斜し」ているから、引用発明の「右のくぼみ450を有する内側表面410の前方端部から連続し頭部の右斜め後方に向けて傾斜している傾斜面」と「右のくぼみ450を有する内側表面410」とは、「前方端部」を底とするV字状の態様となっている。
このことを踏まえると、引用発明の「右のくぼみ450を有する内側表面410の前方端部から連続し頭部の右斜め後方に向けて傾斜している傾斜面」は、当該「傾斜面」の「後方」側において、「頭部の右斜め前方に向けて傾斜し」ている「右のくぼみ450を有する内側表面410」から離れ、各「くぼみ450を有する内側表面410」が対面する側(上記(ア)b参照)の反対側に配置されているといえる。

引用発明の「左のくぼみ450を有する内側表面410の前方端部から連続し頭部の左斜め後方に向けて傾斜している傾斜面」についても、上記aにおいて、「右」を「左」に読み替えたとおりのことがいえる。

上記a、bで述べたV字状の態様及び上記(ア)dを踏まえると、本件補正発明1の「右のくぼみ450を有する内側表面410の前方端部」及び「左のくぼみ450を有する内側表面410の前方端部」は、いずれも、本件補正発明1の「内側立ち上がり部の先端部」に相当する。
引用発明の「連続」する構成は、本件補正発明1の「連接」される構成に相当する。
引用発明の「後方」側は、本件補正発明1の「下側」に相当する。

上記a〜cを総合すると、
引用発明の「右のくぼみ450を有する内側表面410の前方端部から連続し頭部の右斜め後方に向けて傾斜している傾斜面」及び「左のくぼみ450を有する内側表面410の前方端部から連続し頭部の左斜め後方に向けて傾斜している傾斜面」は、いずれも、本件補正発明1の「前記内側立ち上がり部が対面する側の反対側に配置され、前記内側立ち上がり部の先端部が連接されると共に下側において前記内側立ち上がり部から離れた外側立ち上がり部」に相当する。
(ウ)
上記(ア)、(イ)を踏まえると、以下の相当関係などがいえる。

引用発明の「後頭部が載置されている頭部における右顎が接触し、頭部の右斜め前方に向けて傾斜し」ている「右のくぼみ450を有する内側表面410と、右のくぼみ450を有する内側表面410の前方端部から連続し頭部の右斜め後方に向けて傾斜している傾斜面とを有する、右の柔軟性のある発泡体から作られた下顎パッド130」は、本件補正発明1の「一方の前記内側立ち上がり部、および一方の前記外側立ち上がり部を有する第一載置具」に相当する。
引用発明の「後頭部が載置されている頭部における左顎が接触し、頭部の左斜め前方に向けて傾斜し」ている「左のくぼみ450を有する内側表面410と、左のくぼみ450を有する内側表面410の前方端部から連続し頭部の左斜め後方に向けて傾斜している傾斜面とを有する、左の柔軟性のある発泡体から作られた下顎パッド130」は、本件補正発明1の「他方の前記内側立ち上がり部、および他方の前記外側立ち上がり部を有する第二載置具」に相当する。

そうすると、引用発明の「隆起区域80に後頭部が載置されることで頭部を持ち上げる基部10と、基部10の隆起区域80に後頭部が載置されている頭部における右顎が接触し、頭部の右斜め前方に向けて傾斜し」ている「右のくぼみ450を有する内側表面410と、右のくぼみ450を有する内側表面410の前方端部から連続し頭部の右斜め後方に向けて傾斜している傾斜面とを有する、右の柔軟性のある発泡体から作られた下顎パッド130と、基部10の隆起区域80に後頭部が載置されている頭部における左顎が接触し、頭部の左斜め前方に向けて傾斜し」ている「左のくぼみ450を有する内側表面410と、左のくぼみ450を有する内側表面410の前方端部から連続し頭部の左斜め後方に向けて傾斜している傾斜面とを有する、左の柔軟性のある発泡体から作られた下顎パッド130とを、個別に備える」ことと、本件補正発明1の「一方の前記内側立ち上がり部、および一方の前記外側立ち上がり部を有する第一載置具と、他方の前記内側立ち上がり部、および他方の前記外側立ち上がり部を有する第二載置具とが、後頭部が載置されるものであって前記間隔の空間を空けて個別に備えられ」ることとは、「一方の前記内側立ち上がり部、および一方の前記外側立ち上がり部を有する第一載置具と、他方の前記内側立ち上がり部、および他方の前記外側立ち上がり部を有する第二載置具とが、頭部が載置されるものであって前記間隔の空間を空けて個別に備えられ」ることにおいて共通している。

引用発明の各「柔軟性のある発泡体から作られた下顎パッド130」の「くぼみ450を有する内側表面410」(内側立ち上がり部)及び「傾斜面」(外側立ち上がり部)は、「柔軟性のある発泡体から作られ」ていることが明らかであり、これらの面は弾性体であるといえる。
このことと上記aを踏まえると、引用発明の上記aの「右の柔軟性のある発泡体から作られた下顎パッド130」に係る構成及び「左の柔軟性のある発泡体から作られた下顎パッド130」に係る構成は、本件補正発明1の「前記内側立ち上がり部および前記外側立ち上がり部が弾性体であ」る構成にも相当する。
(エ)

引用発明の「前方側」は、本件補正発明1の「頭部が載置される側」に相当する。
引用発明の「右の側方側」及び「左の側方側」は、いずれも、本件補正発明1の「頭部の側方」に相当する。
引用発明の「前方端部」は、本件補正発明1の「先端部」に相当する。

上記aと上記(ア)eを踏まえると、引用発明の「前方側から見ると凹状に湾曲し、右の側方側から見ると前方端部が凹状に湾曲している、右のくぼみ450を有する内側表面410」及び「前方側から見ると凹状に湾曲し、左の側方側から見ると前方端部が凹状に湾曲している、左のくぼみ450を有する内側表面410」は、本件補正発明1の「頭部が載置される側から視して、凹弧状に湾曲して形成され、前記先端部が、頭部の側方から視して凹弧状に湾曲して」いる「前記内側立ち上がり部」に相当する、すなわち、「前記内側立ち上がり部が、頭部が載置される側から視して、凹弧状に湾曲して形成され、前記先端部が、頭部の側方から視して凹弧状に湾曲して」いることに相当する。
(オ)
引用発明の「装置」は、頭部を載置する構成(上記(ア)参照)を備えるから、本件補正発明1の「頭部載置具」に相当する。

以上から、本件補正発明1と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「載置される後頭部の中心に当たらない幅の間隔の空間を空けて対面して配置され、互いに離れる方向に傾斜し、頭部が載置される内側立ち上がり部と、
前記内側立ち上がり部が対面する側の反対側に配置され、前記内側立ち上がり部の先端部が連接されると共に下側において前記内側立ち上がり部から離れた外側立ち上がり部と、を有し、
一方の前記内側立ち上がり部、および一方の前記外側立ち上がり部を有する第一載置具と、他方の前記内側立ち上がり部、および他方の前記外側立ち上がり部を有する第二載置具とが、頭部が載置されるものであって前記間隔の空間を空けて個別に備えられ、
前記内側立ち上がり部が、頭部が載置される側から視して、凹弧状に湾曲して形成され、前記先端部が、頭部の側方から視して凹弧状に湾曲しており、
前記内側立ち上がり部および前記外側立ち上がり部が弾性体である、
頭部載置具。」
<相違点1>
第一載置具の内側立ち上がり部と第二載置具の内側立ち上がり部に、「頭部が載置される」ことについて、本件補正発明1では、「後」頭部が載置されるのに対して、引用発明では、「基部10の隆起区域80に後頭部が載置されている頭部における右顎が接触し」、「基部10の隆起区域80に後頭部が載置されている頭部における左顎が接触し」ている点。
<相違点2>
本件補正発明1では、「後頭部が載置されると、後頭部の中心が、前記間隔の空間によって、何れにも接触せず、前記内側立ち上がり部が、この内側立ち上がり部毎に撓んで沈み込む」のに対して、引用発明では、そのような構成を有しない点。

イ 判断
上記各相違点について以下検討する。
(ア)相違点1について
引用発明では、「基部10の隆起区域80に後頭部が載置されて」いるところ、後頭部を載置する場所を「下顎パッド130」(載置具)などの別の場所に移動させようとする特段の動機は見いだせない。
また、引用発明の「下顎パッド130」は、後頭部が「基部10の隆起区域80に」「載置されて」いることを前提として、「右顎」及び「左顎」が「接触する」ものであるところ、要するに、「右顎」及び「左顎」が動かないように機能するものであるところ、「下顎パッド130」は、その位置においても、その機能においても、後頭部を載置することに適したものとはいえないから、下顎パッド130に後頭部を載置することを着想することができたものともいえない。
そうすると、引用発明の左右の「下顎パッド130」の「くぼみ450を有する内側表面410」に、それぞれ、「頭部における」「右顎」及び「左顎」が「接触し」ていることに替えて、「後頭部が載置される」ようにして、上記相違点1に係る本件補正発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たとはいえない。

(イ)相違点2について
引用発明では、「隆起区域80に後頭部が載置されることで頭部を持ち上げる」から、「後頭部の中心が、」「何れにも接触」しない構成とはなっていないし、そのような構成を想到するために、後頭部を「下顎パッド130」などの別の場所に移動させようとすることは、上記(ア)で述べたとおり、当業者であっても想定し得ない。
そうすると、引用発明において、上記相違点2に係る本件補正発明1の構成(特に、「後頭部が載置されると、後頭部の中心が、前記間隔の空間によって、何れにも接触」しない構成)とすることは、当業者が容易になし得たとはいえない。

(ウ)本件補正発明1の作用効果について
そして、本件補正発明1は、「頭部の拘束を安定させることができる」及び「短時間で安価に製造することができる」(本願明細書の段落【0013】〜【0017】)という格別に顕著な作用効果を奏するものである。

(エ)まとめ
したがって、本件補正発明1は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3−2)本件補正発明2〜4について
本件補正発明2〜4は、本件補正発明1の発明特定事項を全て含み、さらに請求項2〜4の発明特定事項を付加して限定したものであるから、上記(3−1)と同じ理由により、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3−3)小括
したがって、本件補正発明1〜4は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により本件補正発明1〜4は特許出願の際独立して特許を受けることができないものである、とはいえない。
また、他に本件補正発明1〜4について、特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由はない。

3−3 むすび
上記3−2で検討したように、本件補正発明1〜4が特許出願の際独立して特許を受けることができないものである、とはいえない。
そして、他に本件補正を却下すべき理由はない。
したがって、原審における令和3年8月25日付けの補正の却下の決定を取り消す。

第3 原査定について
1 原査定についての判断

以上のとおり、令和3年8月25日付けの補正の却下の決定は取り消されたから、本願の請求項1〜4に係る発明(それぞれ「本願発明1」〜「本願発明4」という。)は、本件補正(令和3年3月29日提出の手続補正書でした手続補正)により補正された特許請求の範囲の請求項1〜4(上記「第2 1(2)」参照。)に記載された事項により特定されるとおりのものであり、上記「第2 3 3−2」で検討した本件補正発明1〜4と同じ発明である。

ここで、原査定の拒絶の理由は令和3年1月27日付け拒絶理由通知書に記載した理由であり、その概要は、令和2年8月17日提出の手続補正書に記載された特許請求の範囲の請求項1〜4に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基いて、その原出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。

しかしながら、上記アで説示したとおり本願発明1〜4は本件補正発明1〜4と同じ発明であり、上記「第2 3 3−2」で説示したとおり、本件補正発明1〜4は、引用文献1に記載された発明(引用発明)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないのであるから、本件補正発明1〜4と同じ発明である本願発明1〜4も同様の理由で、引用文献1に記載された発明(引用発明)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって、原査定の理由を維持することはできない。

2 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-09-01 
出願番号 P2019-127408
審決分類 P 1 8・ 121- WYA (A61G)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 筑波 茂樹
特許庁審判官 八木 誠
出口 昌哉
発明の名称 頭部載置具および椅子  
代理人 福田 伸一  
代理人 高橋 克宗  
代理人 水崎 慎  

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