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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01B
管理番号 1388232
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-12-15 
確定日 2022-08-30 
事件の表示 特願2017−152592「ワイヤハーネス」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 2月28日出願公開、特開2019− 32974、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由
第1 手続の経緯

本願は、平成29年8月7日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和 3年 3月22日付け:拒絶理由通知
令和 3年 5月28日 :手続補正書、意見書の提出
令和 3年10月19日付け:拒絶査定(原査定)
令和 3年12月15日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 4年 4月18日 :上申書


第2 原査定の概要

原査定(令和3年10月19日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

理由1 本願請求項1−3に係る発明は、以下の引用文献1,2に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1 特開2009−123461号公報
引用文献2 特開2011−138740号公報


第3 本願発明

本願の請求項1−3係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」−「本願発明3」という。)は、令和3年12月15日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1−3に記載された事項により特定される以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
複数の電線と、前記複数の電線の各々と一対一に対応すると共に前記複数の電線の各々が内部に挿通された管形状を有する金属製の複数のパイプと、前記複数の電線の端末が接続されたコネクタと、前記複数のパイプの各々の管端部に設けられて前記コネクタに繋がる金属製の筒状の連結具と、を備えた、ワイヤハーネスであって、
前記連結具は、屈曲時に屈曲後の形状を自ら保持不能な柔軟性を有すると共に蛇腹形状の金属製の筒状の第1部分を有し、
前記パイプは、屈曲時に屈曲後の形状を自ら保持可能な剛性を有すると共に蛇腹形状の金属製の筒状の第2部分と、屈曲時に屈曲後の形状を自ら保持可能な剛性を有すると共に直管形状の金属製の第3部分と、を有する、
ワイヤハーネス。

【請求項2】
請求項1に記載のワイヤハーネスにおいて、
前記第1部分の管壁厚さは、前記第2部分の管壁厚さより小さく、且つ、前記第2部分の管壁厚さは、前記第3部分の管壁厚さより小さい、
ワイヤハーネス。

【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のワイヤハーネスであって、
前記複数のパイプを束ねながら取付対象物に固定する導電性の結束部材を、更に備える、
ワイヤハーネス。」


第4 引用文献、引用発明等

1 引用文献1(特開2009−123461号公報)について

(1)引用文献1の記載事項

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(なお、下線は、当審で付与した。)

(1−1)「【0001】
本発明は、ワイヤーハーネス等を覆って、このワイヤーハーネスの高周波電流による電磁ノイズが周囲に悪影響を与えるのを防止するシールド部材に関する。」

(1−2)「【0017】
本発明の一実施形態に係るシールド部材1は、図1乃至図3に示すように、例えば車両のワイヤーハーネスを挿通する金属製の筒状部材100からなり、図5、図6および図7に示すように筒状部材100の両端部から一定距離に亘って外周面に螺旋状の接続用ネジ部110(111,112)が形成されている(図5および図6では、接続用ネジ部111のみ図示)。そして、この筒状部材100の外周部に螺旋状に形成された接続用ネジ部110が、図7(b)に示すようにコネクタハウジング210のワイヤーハーネス導入部211の内周面に形成された雌ネジ部212に螺合するようになっている。
【0018】
なお、本実施形態の場合、シールド部材1を構成する筒状部材100はアルミニウム合金でできており、コネクタハウジング210もアルミニウム合金でできている。また、シールド部材100は、コネクタハウジング210に機械的に接続されると同時に電気的に導通し、シールド部材1がコネクタハウジング(他部品)210およびこれが取り付けられるモータやインバータ(図示せず)などのコネクタ2の被取付け対象物を介して車両のパネルに接地(アース)されるようになっている。これによって、いわゆるハイブリッドカーに使用される100A乃至200Aの大電流が流れるワイヤーハーネス300をこのシールド部材1で囲繞してワイヤーハーネス300から発生する電気ノイズが例えば他のECU(Electric Control Unit)の制御用信号線等に悪影響を与えないようにしている。
【0019】
また、図1に示すように、シールド部材1の長手方向の所定箇所(本実施形態では図1に示す8箇所)に上述した接続用ネジ部110とは異なる所定長さの屈曲用蛇腹部120(121〜128)が断続的に形成され、これら各屈曲用蛇腹部間はアルミニウム合金の直管(パイプ)130(131〜137)として形成されている。そして、車両に配索されるワイヤーハーネス300の経路に沿って任意の屈曲用蛇腹部120を適度に屈曲可能としている。
【0020】
なお、シールド部材1の端部近傍の屈曲用蛇腹部121,128のピッチは他の屈曲用蛇腹部122〜127のピッチよりも小さく形成され、シールド部材1をその端部近傍において曲げやすくしている。これによって、すでに車両に搭載されたモータやインバータ等にシールド部材1の端部に接続されたコネクタ等の他部品を容易に接続できるようにしている。
【0021】
なお、シールド部材1の端部近傍およびシールド部材1の長手方向所定間隔をおいて適所に形成された屈曲用蛇腹部120(121〜128)は、螺旋状に形成されている(図5等参照)。しかし、この屈曲用蛇腹部120の蛇腹状の形状は限定されるものではなく、独立した山部および谷部が交互に筒状部材の長手方向に複数設けられているものであってもよい。
【0022】
このようなシールド部材1を製造する一例として、一定の長さを有する細長いアルミニウム合金の板の上にワイヤーハーネス300を沿わせ、このワイヤーハーネス300の周囲を覆うようにアルミニウム合金の板を円筒状に成形し、その対向する端面間を溶接する。その後、上述したシールド部材の長手方向の適当な箇所をパイプ絞り装置を用いて長手方向に適当な速度で送りながら螺旋状の谷部を形成するように絞り込む。これにより、端部の接続用ネジ部110(111,112)を形成したり、長手方向適当なピッチ間隔で周面に谷部を形成するように絞り込むことで屈曲用蛇腹部120(121〜128)を形成する。この際、上述したようにパイプ絞り装置の送り速度やピッチ間隔を適宜変えることにより、上述したようにシールド部材1の両端部の接続用蛇腹部121,128を細かいピッチとして、その他の屈曲用蛇腹部122〜127を粗いピッチとして形成することができる。
【0023】
これにより、「固定機能」と「変形(可撓)機能」を持たせるため、通常二つの工程が必要であるところ、上記したように、一つの工程で端部の接続用ネジ部110(111,112)や屈曲用蛇腹部120(121〜128)を形成することができるので、工数削減を図ることができる。」

(1−3)「【0024】
続いて、このような構成を有するシールド部材1の端部をコネクタハウジング210に接続する方法について説明する。まず、この説明にあたって、シールド部材1が接続されるコネクタ2の構造について説明する。
【0025】
コネクタ2は、図6に示すように上述したアルミニウム合金でできたコネクタハウジング210と、コネクタハウジング210とシールド部材1の接続用ネジ部110を覆う防水カバー220と、コネクタハウジング内に収容されオス端子(図示せず)との接続部がコネクタハウジング前面から突出するメス端子ホルダ230と、防水カバー220をコネクタハウジング210にしっかりと被せたまま固定する固定具240(241,242)を有している。
【0026】
なお、メス端子ホルダ230には、その周囲に防水パッキン231,232が備わっている。また、シールド部材1から突出するワイヤーハーネス300の端部からは、本実施形態の場合、3つのケーブル310,320,330が分かれて延在し、それぞれの先端にはメス端子311,321,331(図13参照)が圧着されてメス端子ホルダ内に収容されている。
【0027】
コネクタハウジング210は、図6に示すようにメス端子ホルダ230の突出側の両側に図示しないボルト等の締結具を介してモータやインバータにコネクタハウジング210を取付けるための取り付け部215を備えるとともに、シールド部材1との接続部側に円筒状のワイヤーハーネス導入部211が形成されている。そして、ワイヤーハーネス導入部211の内周面には、上述したようにシールド部材1の接続用ネジ部110と螺合する雌ネジ部212(図5参照)が形成されている。
【0028】
シールド部材1とコネクタ2とがこのような構成を有することで、図7に示すようにワイヤーハーネス300(図7では図示せず)が挿通されたシールド部材1の端部の接続用ネジ部110をコネクタハウジング210の雌ネジ部212にねじ込むことで、シールド部材1をコネクタハウジング210に容易に接続することができる。従って、従来のように溶接を用いた接続作業を行わなくて済むので、シールド部材1とコネクタハウジング210との接続に伴う工数低減を図り、製造コストを抑えることができる。

・・・途中省略・・・

【0031】
なお、実際にシールド部材1をコネクタ2に接続する際には、一例として、図6を参照して説明すると、ワイヤーハーネス300を挿通したシールド部材1の端部に防水カバー220の一部を被せ、この状態でワイヤーハーネス300の端部のケーブル310,320,330をコネクタハウジング210のワイヤーハーネス導入部211からコネクタハウジング210の前方側に導出させる。そして、この状態でシールド部材1の端部の接続用ネジ部110をコネクタハウジング210の接続部側突出部の内周面に形成された雌ネジ部212に螺合させる(図7参照)。このようなねじ込み作業によって、コネクタハウジング210にシールド部材1を簡単に接続できると共に両者を電気的に導通させることができる。
【0032】
次いで、ワイヤーハーネスの端部から導出したケーブル310,320,330の先端部に圧着されたメス端子311,321,331(図13参照)をメス端子ホルダ230に収容する。そして、防水パッキン231,232に備わったメス端子ホルダ230をコネクタハウジング210の前面からコネクタハウジング内に嵌合させてメス端子ホルダ230の爪部233をコネクタハウジング210の係合凹み部213に係合させ、両者をしっかりと固定する。
【0033】
次いで、防水カバー220をコネクタハウジング210に被せて固定具240をネジにより締結することにより、シールド部材1とコネクタ2との接続作業を完了する。
【0034】
続いて、このように端部にコネクタ2を接続したシールド部材1を車両に配索する。この配索時においては、コネクタ2の接続されたシールド部材1を車両のフロアパネルの形状に沿って、例えば、図1に示すように、本来的にワイヤーハーネス300が配索される車両のパネルの配索経路に対応した形状に沿って予めシールド部材1の屈曲用蛇腹部120を所定形状に曲げておく。
【0035】
図4は、このように各屈曲用蛇腹部を曲げて複雑な全体形状にしたシールド部材1をコネクタ2と共に示しており、図4(a)はその正面図、図4(b)はその下面図、図4(c)はその右側面図である。同図から分かるように従来のように単なるパイプ状のシールド部材を車両に取付ける場合に比べてワイヤーハーネス300(図6参照)の配索の自由度が遥かに向上する。
【0036】
なお、本実施形態では、各屈曲用蛇腹部の間が直管のパイプ状をなしているので、この部分において曲げ強度を十分確保しつつ、必要な場所において屈曲用蛇腹部120を適度に曲げることでワイヤーハーネス300(図6参照)の設計上の配索経路に合致させることができる。
【0037】
そして、このシールド部材1の端部に接続された一方のコネクタ2を例えば車両前方に搭載されたモータやインバータ等の相手側コネクタに嵌合し、他方のコネクタ2を例えば車両後方に搭載されたバッテリーの相手側コネクタに嵌合させる。この嵌合作業においては、通常車両の様々な搭載部品の配置スペースの制約上、コネクタ嵌合作業をかなり行いにくい傾向にあるが、本実施形態の場合、シールド部材端部の近傍に設けられた屈曲用蛇腹部121,128のピッチが他の部分に設けられた屈曲用蛇腹部122〜127のピッチよりも小さく形成され、より曲げやすくなっているので、このコネクタ嵌合作業を行いやすくすることができる。」

(1−4)「【図1】


【図2】


【図3】


【図5】


【図6】


【図8】


【図9】


【図12】


【図13】



(1−5)上記「(1−1)」〜「(1−4)」で摘記した記載事項のうち「シールド部材1」に関して以下の様な記載がある。

「このようなシールド部材1を製造する一例として、一定の長さを有する細長いアルミニウム合金の板の上にワイヤーハーネス300を沿わせ、このワイヤーハーネス300の周囲を覆うようにアルミニウム合金の板を円筒状に成形し、その対向する端面間を溶接する。」(【0022】)
「・・・シールド部材1から突出するワイヤーハーネス300の端部からは、本実施形態の場合、3つのケーブル310,320,330が分かれて延在し、・・・」(【0026】)
「・・・ワイヤーハーネス300(図7では図示せず)が挿通されたシールド部材1の端部の接続用ネジ部110をコネクタハウジング210の雌ネジ部212にねじ込むことで、・・・」(【0028】)

そこで、「シールド部材1」に関する上記記載事項を踏まえると、「シールド部材1」の説明として、「シールド部材1の内部にはワイヤーハーネス300が挿通されている」との事項は、引用文献1に記載されているに等しい事項である。

(1−6)上記「(1−1)」〜「(1−4)」で摘記した記載事項のうち「ワイヤーハーネス300」に関して以下の様な記載がある。

「・・・シールド部材1から突出するワイヤーハーネス300の端部からは、本実施形態の場合、3つのケーブル310,320,330が分かれて延在し、それぞれの先端にはメス端子311,321,331(図13参照)が圧着されてメス端子ホルダ内に収容されている。」(【0026】)
「・・・ワイヤーハーネス300の端部のケーブル310,320,330をコネクタハウジング210のワイヤーハーネス導入部211からコネクタハウジング210の前方側に導出させる。・・・」(【0031】)
「・・・ワイヤーハーネスの端部から導出したケーブル310,320,330の先端部に圧着されたメス端子311,321,331(図13参照)をメス端子ホルダ230に収容する。・・・」(【0032】)

そこで、「ワイヤーハーネス300」に関する上記記載事項を踏まえると、「ワイヤーハーネス300」の説明として、「ワイヤーハーネス300は3つのケーブル310、320、330を備えている」との事項は、引用文献1に記載されているに等しい事項である。


(2)引用発明

上記「(1)引用文献1の記載事項」で言及したことを踏まえると、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「端部にコネクタ2を接続したシールド部材1であって(【0034】)、
前記シールド部材1は、金属製の筒状部材100からなり、筒状部材100の両端部から一定距離に亘って外周面に螺旋状の接続用ネジ部110(111,112)が形成され(【0017】)、さらに、接続用ネジ部110とは異なる所定長さの屈曲用蛇腹部120(121〜128)が断続的に形成され、これら各屈曲用蛇腹部間はアルミニウム合金の直管(パイプ)130(131〜137)として形成されており(【0019】)、シールド部材1の端部近傍の屈曲用蛇腹部121,128のピッチは他の屈曲用蛇腹部122〜127のピッチよりも小さく形成され、シールド部材1をその端部近傍において曲げやすくしており(【0020】)、
前記シールド部材1の内部にはワイヤーハーネス300が挿通されており(上記「(1−5)」)、
前記ワイヤーハーネス300は、3つのケーブル310、320、330を備えており(上記「(1−6)」)、
前記コネクタ2は、アルミニウム合金でできたコネクタハウジング210と、コネクタハウジング210とシールド部材1の接続用ネジ部110を覆う防水カバー220と、コネクタハウジング内に収容されオス端子との接続部がコネクタハウジング前面から突出するメス端子ホルダ230と、防水カバー220をコネクタハウジング210にしっかりと被せたまま固定する固定具240(241,242)を有しており(【0025】)、
前記コネクタハウジング210は、シールド部材1との接続部側に円筒状のワイヤーハーネス導入部211が形成され、ワイヤーハーネス導入部211の内周面には、シールド部材1の接続用ネジ部110と螺合する雌ネジ部212が形成されており(【0027】)、
シールド部材1をコネクタ2に接続する際には、シールド部材1の端部の接続用ネジ部110をコネクタハウジング210の接続部側突出部の内周面に形成された雌ネジ部212に螺合させ(【0031】)、次いで、前記メス端子ホルダ230にワイヤーハーネス300の端部から導出したケーブル310、320、330の先端部に圧着されたメス端子311、321、331を収容し(【0031】、【0032】)、
また、配索時においては、コネクタ2の接続されたシールド部材1をワイヤーハーネス300が配索される車両のパネルの配索経路に対応した形状に沿って予めシールド部材1の屈曲用蛇腹部120を所定形状に曲げておく(【0034】)、
端部にコネクタ2を接続したシールド部材1。」


2 引用文献2(特開2011−138740号公報)について

(1)引用文献2の記載事項

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。(なお、下線は、当審で付与した。)

(1−1)「【0001】
この発明は、導電線を覆って保護する鞘管構造及びその鞘管構造を用いたワイヤーハーネスに関し、例えば、導電線の高周波電流による電磁ノイズが周囲に悪影響を与えることを防止するシールド機能を備えた鞘管構造及びその鞘管構造を用いたワイヤーハーネスに関する。」

(1−2)「【0023】
前記鞘管構造は、図1及び図2に示すような鞘管構造で構成することができる。
詳しくは、この鞘管構造100は、屈曲可能な蛇腹形状で形成された長尺の蛇腹管を左右に隣接させて並列配置し、前記並列配置された2本の蛇腹管210,220のうち少なくとも1本を、前記並列する他の蛇腹管220より硬度の高い高硬度蛇腹管210で構成したことを特徴とする。
【0024】
図1(A)は高硬度蛇腹管210を示し、この高硬度蛇腹管210は車両床下の定められた取付位置の凹凸形状に応じて取り付けられる適合形状230に形作られる。
【0025】
この高硬度蛇腹管210は、可撓性を有する樹脂製の蛇腹管を素材であり、その全体を通常硬度蛇腹管220に比べて高硬度化して作ってもよく、部分的に高硬度化することにより高硬度化してもよい。具体的には、通常硬度蛇腹管220に比べて硬度の高い樹脂で樹脂製蛇腹管を構成してもよく、あるいは蛇腹管の外径は変えずに肉厚を変えて高硬度化
した樹脂製蛇腹管を組合せて構成してもよい。
【0026】
また、その他の例として、この高硬度蛇腹管210を、金属鞘管(蛇腹管、螺旋蛇腹管、直管)の材料硬度を調質して硬度の異なる金属管を組合わせて構成してもよく、あるいは金属鞘管の外径は変えずに肉厚を変えて高硬度化した金属管を組合せて構成してもよい。このように高硬度蛇腹管210を構成することにより高硬度蛇腹管210と通常硬度蛇腹管220が並走する形態とすることができる。
【0027】
例えば蛇腹管の全体を高硬度化する例として、樹脂材を用いて可撓性を有する蛇腹管を成形し、その外表面に電磁ノイズのシールド性高めるアルミコルゲート等のシールド層を施して作ることができる。
【0028】
また、部分的に高硬度化して全体を高硬度化する例として、高硬度蛇腹管210が屈曲する各屈曲部分の硬度を他の部位の硬度より高くした高硬度屈曲部240(後述)を作ることができる。この際は、高硬度部が増えて一層安定した適合形状230が得られる。
【0029】
また、高硬度屈曲部240の形成に際して、高硬度屈曲部240のみを高硬度化し、他の部分を通常硬度で構成している。このほか、全体の硬度を高めた状態から屈曲部をさらに高硬度化した高硬度屈曲部240を構成することもできる。
【0030】
そして、高硬度屈曲部240を形作ることによって、この屈曲部分で異方向に延びる一方と他方の蛇腹管の向きを所望の向きに硬く固定して形作ることができる。これにより、高硬度蛇腹管210に軸方向の剛性を付与することができる。このため、高硬度蛇腹管210は長尺であっても全体の形状が安定し、高硬度化した部位の形成数に比例して全体の形状が安定する。
【0031】
なお、図1(A)においては、高硬度蛇腹管210に、前部側に緩やかな傾斜屈曲部を2ヶ所と、後部側に略直角のL型屈曲部を2ヶ所形成した例を示している。また、蛇腹管の両端にはコネクタ250が取り付けられている。
【0032】
長尺の蛇腹管を所定の形状に曲げて適合形状230に形作られた高硬度蛇腹管210が通常硬度蛇腹管220の基準の取付形状となり、この高硬度蛇腹管210の形状に沿って、図1(B)に示す可撓性を有する通常硬度蛇腹管220を同形状に沿わせて取り付けるものである。
この通常硬度蛇腹管220は、樹脂材を用いて可撓性を有する蛇腹管で形成している。
なお、その外表面に薄いアルミコルゲート等のシールド層を施して作ることができる。
【0033】
この通常硬度蛇腹管220は高硬度部分を要しないため硬度が低く全長に亘って可撓性が得られる。このため、形が決まっている高硬度蛇腹管210の適合形状230に一致するように曲げて容易に対応させることができる。これにより、並列する蛇腹管の一方のみに高硬度化を施せばよく、他方の蛇腹管の高硬度化を省略できる。
【0034】
また、図2に示すように、蛇腹管の並列接続に際しては、左右に並ぶ2本の蛇腹管210,220を軸方向に一定間隔ごとにテープ260等で巻き付けて固定するとよい。これにより、両者を並列に取り付けてなる鞘管構造100を形作ることができる。
【0035】
図3は鞘管構造100の取付例を示し、図3(A)に示すように、高硬度蛇腹管210または通常硬度蛇腹管220に対し、その何れにも、図3(B)に示すように、それぞれ1本の高圧用シールド電線270が挿通される。
【0036】
この場合、1本の蛇腹管に1本の高圧用シールド電線270を挿通させる構成のため、高圧用シールド電線270の挿入操作が円滑になり、高圧用シールド電線270の取付作業が容易になる。
【0037】
そして、図3(B)に示すように、左右に並ぶ2本の蛇腹管210,220を例えばU字形状の取付金具280で取付面290に螺着して取り付ける。この際は、図2に示すように、取付金具280を蛇腹管の全長に渡って一定間隔ごとに取り付けるとよい。」

(1−3)「【図1】



【図2】


【図3】



上記「(1)引用文献2の記載事項」で摘記した事項より、引用文献2には次の技術事項が開示されている。

「導電線の高周波電流による電磁ノイズが周囲に悪影響を与えることを防止するシールド機能を備えた鞘管構造を用いたワイヤーハーネスに関するものであって、
鞘管構造100は、屈曲可能な蛇腹形状で形成された長尺の蛇腹管を左右に隣接させて並列配置し、前記並列配置された2本の蛇腹管210、220のうち少なくとも1本を、前記並列する他の蛇腹管220より硬度の高い高硬度蛇腹管210で構成し、
高硬度蛇腹管210または通常硬度蛇腹管220に対し、その何れにも、それぞれ1本の高圧用シールド電線270が挿通され、
それにより、高圧用シールド電線270の挿入操作が円滑になり、高圧用シールド電線270の取付作業が容易になる。」との技術事項。


第5 対比・判断

1 本願発明1について

(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。

(1−1)引用発明の「3つのケーブル310、320、330」は、本願発明1でいう『複数の電線』に相当することは明らかである。

(1−2)引用発明において、シールド部材1を形成している「金属製の筒状部材100」は、本願発明1でいう『管形状を有する金属性のパイプ』に対応するものであることは明らかである。
そして、引用発明の「シールド部材1の内部にはワイヤーハーネス300が挿通されている」のであるから、シールド部材1を形成している「金属製の筒状部材100」は、「3つのケーブル310、320、330が内部に挿通された金属製の筒状部材100」と言い得るものである。
してみると、本願発明1と引用発明とは、「電線が内部に挿通された管形状を有する金属製のパイプ」という構成を備えている点で共通している。

(1−3)引用発明の「コネクタ2」は、メス端子ホルダ230を有しており、該メス端子ホルダ230にはワイヤーハーネス300の端部から導出したケーブル310、320、330の先端部に圧着されたメス端子311、321、331が収容されるのであるから、本願発明1でいう『複数の電線の端末が接続されたコネクタ』に相当する。

(1−4)引用発明の「接続用ネジ部110(111、112)」は、「筒状部材100の両端部から一定距離に亘って外周面に螺旋状に形成」され、「コネクタハウジング210の接続部側突出部の内周面に形成された雌ネジ部212に螺合」させることで「シールド部材1をコネクタ2に接続」させるものであり、さらに、シールド部材1を形成している金属製の筒状部材100の端部近傍の「屈曲用蛇腹部121、128」のピッチは他の屈曲用蛇腹部122〜127のピッチよりも小さく形成され、シールド部材1をその端部近傍において曲げやすくしている。
加えて、引用文献1の【図8】、【図9】の記載を参酌すると「屈曲用蛇腹部121」は「コネクタ2」に繋がっていると解しても特段の不自然さはない。
そうすると、引用発明の「接続用ネジ部110(111、112)」及び「屈曲用蛇腹部121、128」は、本願発明1でいう『コネクタに繋がる金属製の筒状の連結具』に対応する構成といえる。
してみると、本願発明1と引用発明とは、「パイプの管端部に設けられてコネクタに繋がる金属製の筒状の連結具」という構成を備えている点で共通している。

(1−5)上記(1−4)で言及した様に、引用発明の「接続用ネジ部110(111、112)」及び「屈曲用蛇腹部121、128」は、本願発明1でいう『コネクタに繋がる金属製の筒状の連結具』に対応する構成であるから、引用発明の「屈曲用蛇腹部121、128」は、本願発明1で特定されている『屈曲時に屈曲後の形状を自ら保持不能な柔軟性』を有しているか否かは不明であるものの、本願発明1でいう『蛇腹形状の金属製の筒状の第1部分』に対応するものである。

(1−6)引用発明の「屈曲用蛇腹部122〜127」は、本願発明1で特定されている『屈曲時に屈曲後の形状を自ら保持可能な剛性』を有しているか否かは不明であるものの、本願発明1でいう『蛇腹形状の金属製の筒状の第2部分』に対応するものである。

(1−7)引用発明の各屈曲用蛇腹部間に形成された「アルミニウム合金の直管(パイプ)130(131〜137)」は、本願発明1で特定されている『屈曲時に屈曲後の形状を自ら保持可能な剛性』を有しているか否かは不明であるものの、本願発明1でいう『直管形状の金属製の筒状の第3部分』に対応するものである。

(1−8)引用発明の「端部にコネクタ2を接続したシールド部材1」と本願発明1でいう『ワイヤーハーネス』とは、表現上の差異があるだけで、それぞれをどの様な呼称とするかは任意である。


(2)一致点及び相違点
上記「(1)対比」で言及したことを踏まえると、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点がある。

(一致点)
「複数の電線と、電線が内部に挿通された管形状を有する金属製のパイプと、前記複数の電線の端末が接続されたコネクタと、前記パイプの管端部に設けられて前記コネクタに繋がる金属製の筒状の連結具と、を備えた、ワイヤハーネスであって、
前記連結具は、蛇腹形状の金属製の筒状の第1部分を有し、
前記パイプは、蛇腹形状の金属製の筒状の第2部分と、直管形状の金属製の第3部分と、を有する、
ワイヤハーネス。」

(相違点1)
本願発明1において、『パイプ』は『前記複数の電線の各々と一対一に対応すると共に前記複数の電線の各々が内部に挿通された管形状を有する金属製の複数のパイプ』と特定されているのに対し、引用発明の「金属製の筒状部材100」は「内部に3つのケーブル310、320、330が挿通されている」ものである点。

(相違点2)
前記相違点1と関連して、本願発明1の『連結具』は『前記複数のパイプの各々の管端部に設けられ』ているのに対して、引用発明の「接続用ネジ部110(111、112)及び屈曲用蛇腹部121、128」は、1つの「金属製の筒状部材100」の両端部に形成されている点。

(相違点3)
本願発明1では、連結具が有する『蛇腹形状の金属製の筒状の第1部分』について『屈曲時に屈曲後の形状を自ら保持不能な柔軟性を有する』との事項が特定されているのに対して、引用発明の「屈曲用蛇腹部121、128」には、かかる事項が特定されていない点。

(相違点4)
本願発明1では、パイプが有する『蛇腹形状の金属製の筒状の第2部分』及び『直管形状の金属製の第3部分』についてそれぞれ『屈曲時に屈曲後の形状を自ら保持可能な剛性を有する』との事項が特定されているのに対して、引用発明の「屈曲用蛇腹部122〜127」及び「直管(パイプ)130(131〜137)」には、かかる事項が特定されていない点。


(3)判断
事案に鑑みて、上記相違点3について検討する。

引用発明においては、「屈曲用蛇腹部121、128」について、「シールド部材1の端部近傍の屈曲用蛇腹部121、128のピッチは他の屈曲用蛇腹部122〜127のピッチよりも小さく形成され、シールド部材1をその端部近傍において曲げやすくしており」と特定されているだけで、シールド部材1の屈曲時に作業者の屈曲作業が容易になることは容易に想像できるものの、引用文献1には、引用発明の「屈曲用蛇腹部121、128」が本願発明1で特定されている『屈曲時に屈曲後の形状を自ら保持不能な柔軟性』を有しているのか否かを把握できる記載、又は、その旨を示唆する記載はない。
さらに、引用発明において「屈曲用蛇腹部121、128」に対して『屈曲時に屈曲後の形状を自ら保持不能な柔軟性』なる特性を備えさせる合理的理由もない。

また、引用文献2においても、上記「(1)引用文献2の記載事項」で言及したとおり、コネクタ25に繋がる蛇腹管部分が本願発明1で特定されている『屈曲時に屈曲後の形状を自ら保持不能な柔軟性』なる特性を備えている旨、又は、それを示唆することは開示されていない。

してみると、引用発明の「屈曲用蛇腹部121、128」に対して『屈曲時に屈曲後の形状を自ら保持不能な柔軟性』なる特性を備えさせることは当業者といえども容易に想到し得るとはいえない。

したがって、その他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び引用文献2に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。


2.本願発明2、3について

本願発明2、3も、相違点3に係る本願発明1の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第6 むすび

以上のとおり、本願発明1−3は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。

したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2022-08-15 
出願番号 P2017-152592
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01B)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 瀧内 健夫
特許庁審判官 小田 浩
佐藤 智康
発明の名称 ワイヤハーネス  
代理人 特許業務法人栄光特許事務所  
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