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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F |
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管理番号 | 1388248 |
総通号数 | 9 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2022-09-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-12-27 |
確定日 | 2022-08-30 |
事件の表示 | 特願2018− 51227「情報処理装置、情報処理方法及び記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 9月26日出願公開、特開2019−164485、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成28年3月19日の出願であって、その手続の経緯は次のとおりである。 令和 元年 9月26日 :手続補正書の提出 令和 2年 9月28日付け:拒絶理由通知書 令和 2年11月30日 :意見書、手続補正書の提出 令和 3年 4月23日付け:拒絶理由通知書 令和 3年 5月12日 :応対記録の作成 令和 3年 5月24日 :意見書、手続補正書の提出 令和 3年 9月30日付け:拒絶査定(原査定) 令和 3年12月27日 :審判請求書の提出 第2 原査定の概要 原査定(令和3年9月30日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願請求項1−3に係る発明は、以下の引用文献1に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特表2013−511108号公報 第3 本願発明 本願請求項1−3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」−「本願発明3」という。)は、令和3年5月24日提出の手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1−3に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 断続的な振動をアクチュエータに出力させるための振動情報を取得する取得部と、 同一のユーザに対して前記振動情報に基づく振動を出力可能な複数のアクチュエータの動作モードを、前記振動情報に基づく断続的な振動の各々を同一のアクチュエータが連続して出力する第1の動作モード、又は前記振動情報に基づく断続的な振動の各々を同一のアクチュエータが非連続に出力しながら前記複数のアクチュエータで分担する第2の動作モードに設定する設定部と、 を備え、 前記設定部は、前記振動情報と同期して前記ユーザに提供されるコンテンツが、前記アクチュエータにより出力される振動が断続的な振動として知覚され易いことを示している場合、前記動作モードを前記第1の動作モードに設定し、前記コンテンツが、前記アクチュエータにより出力される振動が一続きの振動として知覚され易いことを示している場合、前記動作モードを前記第2の動作モードに設定する、 情報処理装置。」 本願発明2,3は、それぞれ本願発明1に対応する方法の発明およびプログラムが記録された記録媒体の発明であり、本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。 第4 引用文献、引用発明 1 引用文献1、引用発明 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審による。以下同様。)。 「【0012】 電子デバイスにおける触覚帯域を増加するための例示システム まず、図1を参照すると、図1は本発明の一具現化例に係る電子デバイスにおける触覚帯域を増加するためのシステム50を示す。図1に示される具現化例にあって、携帯電話60は、タッチスクリーン66と、携帯電話60に様々な触覚効果を出力するためのいくつかのアクチュエータ70−76を備える。この例示の具現化例にあっては、二つのアクチュエータ70、72は、ピエゾ電気アクチュエータであり、さらに他の二つのアクチュエータ74、76は、偏芯回転質量を有する回転モータ(一般的に「ERM」として参照される)である。これらの部品に加えて、携帯電話60はプロセッサ62、メモリ64、センサ68を有する。」 「【0015】 例えば、ユーザがタッチスクリーン66上に表示された仮想キーボードでタイピングをすると、ユーザによって「押された」各キーは触覚効果を生じる。この具現化例にあって、プロセッサ62は、鋭い、高周波数の触覚効果が各キー押圧に必要か否かを判断する。例えば、プロセッサ62は、前記ERMアクチュエータ74、76が大きさが大きい力を発生することができるか、さらには前記ERMアクチュエータ74、76が各アクチュエータ70−76の前記メモリ64に格納されたアクチュエータ特性に基づいて携帯電話60のハウジングに結合されるのを判断する。さらに、プロセッサ62は、キーの押圧が素早く連続して起こるので、前記ERMアクチュエータ74、76のスタートアップ及びストップ特徴が次の触覚効果が出力される前に、ひとつの触覚効果を完全にストップするために長すぎて採られるので、両方のアクチュエータ74、76が用いられるべき、さらには交互に用いられるべきと判断する。つまり、個々のERMアクチュエータ74、76がキーストロークと同じに素早く発生する触覚効果をサポートするのには不十分な帯域を有する。 【0016】 振動モータアクチュエータの帯域を定義する一つの方法は、アクチュエータによって出力される、弱々しい継続する振動として知覚できるところのパルスの前のアクチュエータから得られる最大周波数である。例えば、図2に示されるように、パルス10は、不連続或いはパルス信号20に反応する単一の振動アクチュエータによって生成され、そのパルス信号20は約5Hzである。前記5Hzのパルス信号のため、前記アクチュエータによって出力される反応或いは減速は、アクチュエータがしばらくの間振動することができ、再度加速が指示される前にだいたい完全にストップ(ポイントA)することができるようである。図3は、パルス信号が10Hzの周波数におけるのと同じアクチュエータを示す。図2に示されるように、アクチュエータによって出力されるパルス振動30の大きさは、パルス信号40が再加速を始めるのを指示する前に、0値にアプローチできない(図2におけるポイントB参照)。すなわち、前記アクチュエータが最大の大きさに再び向かって加速され始まる前に、前記アクチュエータが触覚効果の大きさが検知されないところの大きさに減速できない。これは、各触覚効果が、ユーザの体験を下げがちな次の効果と区別するのが困難になりがちな「柔らかな」触角効果に導くことができる。このように、触覚帯域を増加するため、図1における例示システムは、複数のアクチュエータとそれらのアクチュエータを作動する新しい方法を利用する。」 「【0021】 図4を参照すると、図4は一具現化例に対応する電子デバイスのブロック図を示している。特に、図4は、本体或いはハウジング102と、前記本体102内にありメモリ106に結合されるプロセッサ104を有している電子デバイス100を示している。プロセッサ104は、情報をメモリ106に格納し、さらに検索することができる。そのような情報は、制限されるものではないが、アクチュエータの特性、触覚効果の特性、触覚効果出力時刻シーケンス、アクチュエータに送るプログラムされた電圧、ゲームデータ、ソフトウェアデータなどを含む。」 「【0025】 図に示される具現化例は、アクチュエータ112−116が、プロセッサ104からの入力コマンド信号を受信することで一つ以上の触覚効果を出力するように構成される。前記入力コマンド信号は、ユーザとソフトウェアプログラムによって駆動されるグラフィカル環境内のグラフィカルオブジェクトとの間で生じる対話からなり、それによってソフトウェアプログラムはローカルプロセッサ或いは前記電子デバイスから分離されたホストコンピュータによって駆動される。その対話は、ユーザのアクションが対話を引き起こさない(例えば、テキストメッセージ受信、ゲームにおけるユーザ車両をヒットするアステロイド)ユーザの独立的なものあるかもしれない。しかし、対話は、触覚効果を生じさせ、触覚領域を選択するユーザの製品であり、それらは後述される。」 「【0027】 前述の記述によれば、アクチュエータ112−116は、グラフィカル環境に生じる一つ以上の触覚イベントに反応してそれぞれ触覚効果を出力する。触覚イベントは、ここでは、いかなる対話、アクション、衝突、或いは前記装置に関連する触覚効果を潜在的に有し、前記触覚効果の様式にあってユーザに出力される前記電子デバイスの動作の間に発生する他のイベントである。 【0028】 例えば、ユーザがコントロールしているグラフィカルな車両がゲームプレイ中に強い風を受けると、一つの触覚効果が生じて、それに関連する具体例の触覚イベントが振動であるに違いない。他の例では、ゲーム中にユーザのキャラクタにミサイルが衝突すると、触覚イベントが生じ、それによる前記触覚イベントに関連する具体的な触覚イベントは揺れ或いはパルスである。触覚イベントは、ゲームプレイには関係しないかもしれないが、ユーザがゲームをプレイしている間ユーザに大切なデバイス情報を提供する(例えば、テキストメッセージを受信したこと、歌のダウンロードが完了したこと、バッテリーレベルが低くなったことなど)ことがある。」 「【0030】 図4を再度参照すると、本システム及び方法は、対話が発生する間の時間長さにて連続する命令を動作するため複数のアクチュエータを使用する。複数のアクチュエータの時差のある出力が短い間隔にてアクチュエータの出力帯域を増加させ、さらに別の、ユーザに識別可能な不連続の触覚効果を作り出す。一つの具現化例にあって、一つの触覚効果が生じると(或いは一つの触覚領域が選択されると)、プロセッサ104は指定された電圧及び電流を示す入力コマンド信号をアクチュエータ112にスタート時刻にて、対応する触覚効果を出力するためアクチュエータ112に最大の大きさを加速させるように、供給する。その後、プロセッサ104は、アクチュエータ112が最大大きさからストップに減速するところの、ストップ時刻にて入力コマンド信号を終わらせる(メモリに格納された触覚効果のプログラムされたパラメータに応じるように)。プロセッサ104は、その後、それぞれのスタート時刻で指定された電圧及び電流を、前記第2のアクチュエータ114が対応する触覚効果を出力するために最大の指定された大きさに加速されるように、前記第2のアクチュエータ114に供給する。前記第2のアクチュエータ114用の入力コマンド信号のストップ時刻に達すると、プロセッサ104は、前記第2のアクチュエータ114にその最大の大きさからストップに向けて減速させるために、前記アクチュエータ112へのパルス信号を止める。プロセッサ104は、その後、触覚効果の出力をスタートして継続するため前記第1のアクチュエータ112に入力コマンド信号を再び送信する。 【0031】 この具現化例にあって、前記処理はアクチュエータ112、114の間で繰り返され、これによりアクチュエータ112、114は繰り返し、さらには連続的にそれぞれの触覚効果を出力できる。いくつかの具現化例にあって、特定のアクチュエータは、他のアクチュエータによる触覚効果出力がユーザによって認識可能なほどに知覚できないような少なくとも大きさ及び/又は周波数まで、動作を始めない。しかし、いくつかの具現化例にあって、特定のアクチュエータは、他のアクチュエータによる触覚効果出力が零の大きさ及び/又は零の周波数になるまで、動作を始めない。」 「【0034】 図6は、一具現化例に対応したシステムにおける二つのアクチュエータによって出力されるスケジュールされた触覚効果を例示するグラフを示す。図6に示すように、上のグラフ300は第1のアクチュエータ112によって出力されるパルス化された触覚効果を例示し、下のグラフ400は第2のアクチュエータ114によって出力されるパルス化された触覚効果を例示している。図6に示すように、発生する触覚効果或いは判断される触覚領域に応じてプロセッサ104はその命令信号をアクチュエータ112に、そのアクチュエータが動作をスタートする時刻t0にて送信する。この具現化例に示されるように、入力命令信号は、プロセッサ104がその命令信号を時刻tA1にて終わらせる矩形波信号である。その時刻tA1はt1の前に生じる。この具現化例にあって、前記プロセッサ104は、時刻tA1をメモリに格納されたアクチュエータパラメータに基づいて判断する。例えば、一具現化例にあって、前記プロセッサ104は、アクチュエータ112、114のために、一つのアクチュエータ信号が新しい信号がスタートされるまえに終わらせられた後、待つための最小の合計時間を判断するためにストップ時間のパーセンテージを判断する。 【0035】 具現化例にあって、前記プロセッサ104は、同一タイプの触覚効果をスタートする前に、アクチュエータ信号が終わらされる後、待つための合計時間を判断する。例えば、一具現化例にあって、一つのデバイスはERMアクチュエータ、DCモータ、ピエゾ電気アクチュエータ、LRAsなどのような複数の異なるタイプのアクチュエータを含んでもよい。そのような具現化例にあって、プロセッサは振動効果或いはねじれ効果に関係なく出力される手触り効果を引き起こしてもよい。そのような具現化例にあって、プロセッサ104は、第1の触覚効果が出力されて実質的に同時に第2の触覚効果が、それら二つの触覚効果が干渉せずに、待ち時間がないことが要求されることを判断する。 【0036】 時刻tA1あたりで、アクチュエータ112はユーザが知覚できる認識可能な触覚効果がないような大きさに減速する。一具現化例にあって、アクチュエータ112は時刻tA1あたりで0の大きさに減速する。いくつかの具現化例にあって、異なる入力命令信号又はアクチュエータ信号が矩形波とは別のものを用いる。例えば、アクチュエータ信号は、2005年11月30日に提出された、「振動触覚効果を発生する共振デバイスを制御するシステム及び方法」という名称のその全体が本出願に参照として組み込まれている米国特許番号7,639,232に開示されているような高い忠実度の触覚効果を提供するためのアクチュエータを加速或いは減速するように発生される。 【0037】 時刻t1で、プロセッサ104は、アクチュエータ114がその動作をスタートし、さらに最大の大きさに加速させる入力命令信号をアクチュエータ114に送信する。この具現化例に示されるように、前記命令信号は矩形波信号であり、プロセッサ104が時刻tB1にてその矩形波信号を終わらせる前記命令信号であり、それによって時刻tB1は時刻t2の前に生じる。時刻tB1付近で、アクチュエータ114はプロセッサ104が次のアクチュエータが作動されるかもしれないことを判断するために充分減速する。例えば、この具現化例にあって、プロセッサ104は、メモリ内にアクチュエータ114のパラメータとして格納されるストップ時刻の一部を判断する。一具現化例にあって、アクチュエータ114は、時刻tB1あたりで完全にストップするか、ほとんどストップする。いくつかの具現化例にあって、プロセッサ104は、次のアクチュエータ112が作動する前に所定時間遅延する。その後、プロセッサ104は、アクチュエータ112に時刻t2で動作をスタートするように命令する。複数のアクチュエータからのこの交互の出力パターンは、以前の触覚効果からのパルスが次のパルスが知覚される前に充分に減衰される感覚をユーザに提供するための時差のある仕様にて動作するように前記アクチュエータがスケジュールされているので、ユーザによって知覚されるとき明瞭に認識される分離の触覚効果を発生することができる。いくつかの具現化例にあって、単一のアクチュエータは10Hzあたりよりも高い周波数でのこの結果を達成できないかもしれないと考えられているが、複数のアクチュエータのスケジューリングが高い周波数でその結果を達成する。 【0038】 他の具現化例にあって、QWERTYキーボードは、約6ミリメータ幅のキーを有する。プロセッサ104がユーザの指(或いはスタイラス)が特定のキーの一つの境界上に位置していることを示すセンサに応じて触覚効果を出力することを単一アクチュエータに命令する。別の具現化例にあって、ユーザの指が1秒に7キーというレートで、連続したキー(特に、キー「z」から「m」)を横切って走る。1秒に7キーというレートでは、アクチュエータは、1秒毎に約14キー境界(或いは境界毎に71.4ミリ秒)で伝達する、70ms毎に1キー境界のオーダで触覚効果を出力することが要求される。触覚領域のそれぞれのために、振動を出力するために仕事が課される単一のアクチュエータは、連続した、或いはほとんど連続した振動を発生するので、ユーザはキーの境界の間のいかなる区別も知覚しない。このため、単一のアクチュエータは、次のパルスが出力される前に完全にストップする時間を有しない。 【0039】 キー境界での明瞭な、はっきりしたさらには識別可能な触覚効果はもちろん、適切な触覚効果をトリガリングするのを保証するため、複数のアクチュエータがこの触知情報を提供するのに触覚効果を連続的に出力するために用いられる。センサ110が「shift」キー(図5参照)の左側境界202を越えるユーザの入力を検出すると、プロセッサ104は第1の命令信号をアクチュエータ112に供給する。つまり、センタ110が「shift」キーの右側境界204を越えるユーザの入力を検出すると、プロセッサ104は第2の命令信号をアクチュエータ114に供給する。同じように、センサ110がキー「z」の左側境界をユーザの指による入力が越えるのを感知すると、プロセッサ104は第3の命令信号をアクチュエータ112に供給する。複数のアクチュエータ112、114の間の交互のパターンは、ユーザによって区別されることができる限定的で明瞭な触覚効果を作りだす。 【0040】 単一のアクチュエータ(アクチュエータ112のような)は、トリガする触覚効果及び/又は触覚領域の間の時間の長さが、アクチュエータが完全なストップ或いは少なくともユーザに知覚されない大きさへの減速に達するのを要求される時間の長さより長いとき、複数の触覚効果を出力するために用いられてもよいのにも留意されたい。しかし、いくつかの具現化例にあって、プロセッサ104は、トリガする触覚効果及び/又は触覚領域の間の時間の長さがアクチュエータが完全なストップ或いは少なくともユーザに知覚されない大きさへの減速に達するのを要求される時間の長さより短いとき、複数のアクチュエータ(例えば、2、3、或いはそれよりも多い)を連続的に起動する。必要な時間長さは、動作するパラメータ、及びアクチュエータに供給される電流及び電圧量はもちろん、用いられるアクチュエータのタイプに基づいている。」 2 引用発明 上記1から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「携帯電話であって、 いくつかのアクチュエータ、プロセッサ、メモリ、センサを有し、 プロセッサは、情報をメモリに格納し、さらに検索することができ、 情報は、アクチュエータの特性、触覚効果の特性、触覚効果出力時刻シーケンス、アクチュエータに送るプログラムされた電圧、ゲームデータ、ソフトウェアデータなどを含み、 アクチュエータが、プロセッサからの入力コマンド信号を受信することで一つ以上の触覚効果を出力するように構成され、 複数のアクチュエータの時差のある出力が短い間隔にてアクチュエータの出力帯域を増加させ、ユーザに識別可能な不連続の触覚効果を作り出し、 発生する触覚効果或いは判断される触覚領域に応じてプロセッサはその命令信号をアクチュエータに、そのアクチュエータが動作をスタートする時刻にて送信し、 単一のアクチュエータは、トリガする触覚効果及び/又は触覚領域の間の時間の長さが、アクチュエータが完全なストップ或いは少なくともユーザに知覚されない大きさへの減速に達するのを要求される時間の長さより長いとき、複数の触覚効果を出力するために用いられてもよく、 トリガする触覚効果及び/又は触覚領域の間の時間の長さがアクチュエータが完全なストップ或いは少なくともユーザに知覚されない大きさへの減速に達するのを要求される時間の長さより短いとき、複数のアクチュエータ(例えば、2、3、或いはそれよりも多い)を連続的に起動する、 携帯電話。」 第5 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。 ア 引用発明における「携帯電話」は、「プロセッサ」、「メモリ」を有しており、「プロセッサは、情報をメモリに格納し、さらに検索することができ」るから、情報を処理しているといえ、本願発明1の「情報処理装置」に相当する。 イ 引用発明における「入力コマンド信号」は、「ユーザに識別可能な不連続の触覚効果」をもたらすものであるから、本願発明における「断続的な振動をアクチュエータに出力させるための振動情報」に相当する。 ウ 引用発明において、「アクチュエータに送るプログラムされた電圧」が「メモリに格納」されており、「アクチュエータが、プロセッサからの入力コマンド信号を受信することで一つ以上の触覚効果を出力」しているから、引用発明における「携帯電話」は、上記イを踏まえると、本願発明1における「断続的な振動をアクチュエータに出力させるための振動情報を取得する取得部」に相当する構成を備えるといえる。 エ 引用発明における、「単一のアクチュエータ」が「複数の触覚効果を出力するために用いられ」ることは、上記イを踏まえると、本願発明1における「前記振動情報に基づく断続的な振動の各々を同一のアクチュエータが連続して出力する第1のモード」に相当する。 オ 引用発明における、「複数のアクチュエータ(例えば、2、3、或いはそれよりも多い)を連続的に起動する」ことは、上記イを踏まえると、本願発明1における「前記振動情報に基づく断続的な振動の各々を同一のアクチュエータが非連続に出力しながら前記複数のアクチュエータで分担する第2の動作モード」に相当する。 カ 引用発明における「携帯電話」は、上記エ、オを踏まえると、本願発明1における「設定部」に相当する構成を備えるといえる。 したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 (一致点) 「断続的な振動をアクチュエータに出力させるための振動情報を取得する取得部と、 同一のユーザに対して前記振動情報に基づく振動を出力可能な複数のアクチュエータの動作モードを、前記振動情報に基づく断続的な振動の各々を同一のアクチュエータが連続して出力する第1の動作モード、又は前記振動情報に基づく断続的な振動の各々を同一のアクチュエータが非連続に出力しながら前記複数のアクチュエータで分担する第2の動作モードに設定する設定部と、 を備える、情報処理装置。」 (相違点) 本願発明1では、「前記振動情報と同期して前記ユーザに提供されるコンテンツが、前記アクチュエータにより出力される振動が断続的な振動として知覚され易いことを示している場合、前記動作モードを前記第1の動作モードに設定し、前記コンテンツが、前記アクチュエータにより出力される振動が一続きの振動として知覚され易いことを示している場合、前記動作モードを前記第2の動作モードに設定する」のに対し、引用発明では、「トリガする触覚効果及び/又は触覚領域の間の時間の長さが、アクチュエータが完全なストップ或いは少なくともユーザに知覚されない大きさへの減速に達するのを要求される時間の長さより長いとき」に、「単一のアクチュエータ」が、「複数の触覚効果を出力するために用いられてもよく」、「トリガする触覚効果及び/又は触覚領域の間の時間の長さがアクチュエータが完全なストップ或いは少なくともユーザに知覚されない大きさへの減速に達するのを要求される時間の長さより短いとき」に、「複数のアクチュエータ(例えば、2、3、或いはそれよりも多い)を連続的に起動する」点。 (2)相違点についての判断 上記相違点について検討すると、本願発明1は「動作モードの設定」を、「ユーザに提供されるコンテンツ」に応じて行うものということができる一方、引用発明は「トリガする触覚効果及び/又は触覚領域の間の時間の長さ」が、「アクチュエータが完全なストップ或いは少なくともユーザに知覚されない大きさへの減速に達するのを要求される時間の長さ」に対して長いかまたは短いかに応じて行うものということができ、当業者といえども、引用発明から、相違点1に係る本願発明1の「前記振動情報と同期して前記ユーザに提供されるコンテンツが、前記アクチュエータにより出力される振動が断続的な振動として知覚され易いことを示している場合、前記動作モードを前記第1の動作モードに設定し、前記コンテンツが、前記アクチュエータにより出力される振動が一続きの振動として知覚され易いことを示している場合、前記動作モードを前記第2の動作モードに設定する」という構成を容易に想到することはできない。 なお、令和3年4月23日付け拒絶理由通知では、「引用文献1には、ゲームプレイ中の触覚効果を発生させること(段落0021,0025,0028等)が記載されているから、補正後の請求項1に係る発明は引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たことである」としている。 しかしながら、上記記載を参酌しても、単に、引用発明において、ゲームプレイ中に触覚効果が発生し得る構成に到達するに留まり、本願発明1の「前記振動情報と同期して前記ユーザに提供されるコンテンツが、前記アクチュエータにより出力される振動が断続的な振動として知覚され易いことを示している場合、前記動作モードを前記第1の動作モードに設定し、前記コンテンツが、前記アクチュエータにより出力される振動が一続きの振動として知覚され易いことを示している場合、前記動作モードを前記第2の動作モードに設定する」構成には到達しない。 したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 2 本願発明2,3について 本願発明2,3は、それぞれ本願発明1に対応する方法の発明およびプログラムが記録された記録媒体の発明であり、本願発明1の「前記振動情報と同期して前記ユーザに提供されるコンテンツが、前記アクチュエータにより出力される振動が断続的な振動として知覚され易いことを示している場合、前記動作モードを前記第1の動作モードに設定し、前記コンテンツが、前記アクチュエータにより出力される振動が一続きの振動として知覚され易いことを示している場合、前記動作モードを前記第2の動作モードに設定する」に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明1−3は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2022-08-16 |
出願番号 | P2018-051227 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G06F)
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最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
▲吉▼田 耕一 |
特許庁審判官 |
石井 則之 野崎 大進 |
発明の名称 | 情報処理装置、情報処理方法及び記録媒体 |
代理人 | 特許業務法人酒井国際特許事務所 |