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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H04W
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04W
管理番号 1388254
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-01-04 
確定日 2022-09-06 
事件の表示 特願2019−113875「マルチ無線アクセス技術ワイヤレスシステムにおける無線リソース管理のための方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔令和元年10月10日出願公開、特開2019−176510、請求項の数(14)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2012年(平成24年)7月25日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2011年7月29日 米国(US))を国際出願日とする特願2014−523966号の一部を、平成27年7月13日に新たな特許出願とした特願2015−139570号のさらに一部を、平成29年6月21日に新たな特許出願とした特願2017−121488号のさらに一部を、令和元年6月19日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和元年7月19日 手続補正書の提出
令和2年9月 3日付け 拒絶理由通知書
令和3年2月 1日 手続補正書、意見書の提出
令和3年8月27日付け 拒絶査定
令和4年1月 4日 審判請求書、手続補正書の提出


第2 原査定の概要

原査定(令和3年8月27日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

2.(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
3.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
●理由2.1(特許法第36条第6項第2号)について
・請求項 1−14
請求項1記載の
(a)『第1の無線アクセス技術(RAT)を使用して、無線リソース制御(RRC)メッセージを通信する』の「無線リソース制御(RRC)メッセージ」
と、
(b)『前記第1のRATを使用して、第2のRATのための構成情報を含んでいるRRCメッセージを受信する』の「RRCメッセージ」
との関係が不明確である。
すなわち、
(i)上記(a)の「無線リソース制御(RRC)メッセージ」とは、上記(b)の「第2のRATのための構成情報を含んでいるRRCメッセージ」と同じなのか、それとも異なるのか?
(ii)異なるとすれば、上記(a)の「無線リソース制御(RRC)メッセージ」は、上記(b)の「第2のRATのための構成情報を含んでいるRRCメッセージ」とどのように異なるのか?
が、不明確である。
請求項8、及びこれらの請求項を引用する請求項2−7、9−14も、同様である。

●理由2.2(特許法第36条第6項第2号)について
・請求項 1−14
上記拒絶理由2.1で指摘したように、
(a)『第1の無線アクセス技術(RAT)を使用して、無線リソース制御(RRC)メッセージを通信する』の「無線リソース制御(RRC)メッセージ」
と、
(b)『前記第1のRATを使用して、第2のRATのための構成情報を含んでいるRRCメッセージを受信する』の「RRCメッセージ」
との関係が不明確なため、「無線リソース制御(RRC)メッセージを通信する手段」と「RRCメッセージを受信する手段」との関係も、不明確である。
なお、上記(a)の「無線リソース制御(RRC)メッセージ」と上記(b)の「RRCメッセージ」が同じものである場合、上記(a)の、「無線リソース制御(RRC)メッセージを通信する手段」と上記(b)の「RRCメッセージを受信する手段」も同じものであると思われる。
しかし用語の統一がされていないから、不明確である。
請求項8、及びこれらの請求項を引用する請求項2−7、9−14も、同様である。

●理由3(特許法第29条第2項)について
・請求項 1−14
・引用文献 1、2
<引用文献等一覧>
1.米国特許出願公開第2011/0134831号明細書
2.特開2005−269109号公報


第3 本願発明

本願の請求項1ないし14に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明14」という。)は、令和4年1月4日に提出された手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
無線送受信ユニット(WTRU)であって、
第1の無線アクセス技術(RAT)を使用して、無線リソース制御(RRC)メッセージを通信する手段と、
前記第1のRATの第1のシグナリング無線ベアラ(SRB)を通じて、第2のRATのための構成情報を含んでいる第1のRRCメッセージを受信する手段であって、前記第2のRATのための前記構成情報は、前記第2のRATのためのシステム情報(SI)情報要素を含み、前記第1のRATおよび前記第2のRATは異なるRATである、受信する手段と、
前記第1のRATおよび前記第2のRATの両方を使用して、同時に通信をする手段と
を備えたことを特徴とするWTRU。
【請求項2】
前記第1のRRCメッセージは、前記第2のRATのための無線ベアラ情報要素をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のWTRU。
【請求項3】
第1の媒体アクセス制御(MAC)エンティティが前記第1のRATに対して使用され、
前記第1のRRCメッセージに応答して、前記第2のRATのための第2のMACエンティティを確立する手段と、
前記第1のMACエンティティおよび前記第2のMACエンティティの両方を使用して、通信をする手段と
をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載のWTRU。
【請求項4】
単一のRRCインスタンスおよび単一のRRC状態マシーンが、前記第1のRATおよび前記第2のRATの両方に対して使用されることを特徴とする請求項1に記載のWTRU。
【請求項5】
前記第1のRATは、ロングタームエヴォル―ションであることを特徴とする請求項1に記載のWTRU。
【請求項6】
第1の識別が前記第1のRATと関連付けられ、第2の識別が前記第2のRATと関連付けられ、前記WTRUは、前記第1のRATを使用して通信するための前記第1の識別を、および、前記第2のRATを使用して通信するための前記第2の識別を使用することを特徴とする請求項1に記載のWTRU。
【請求項7】
前記構成情報は、コンテナの中に含まれることを特徴とする請求項1に記載のWTRU。
【請求項8】
無線送受信ユニット(WTRU)によって実施される方法において、
第1の無線アクセス技術(RAT)を使用して、無線リソース制御(RRC)メッセージを通信するステップと、
前記第1のRATの第1のシグナリング無線ベアラ(SRB)を通じて、第2のRATのための構成情報を含んでいる第1のRRCメッセージを受信するステップであって、前記第2のRATのための前記構成情報は、前記第2のRATのためのシステム情報(SI)情報要素を含み、前記第1のRATおよび前記第2のRATは異なるRATである、受信するステップと、
前記第1のRATおよび前記第2のRATの両方を使用して、同時に通信をするステップと
を備えることを特徴とする方法。
【請求項9】
前記第1のRRCメッセージは、前記第2のRATのための無線ベアラ情報要素をさらに含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
第1の媒体アクセス制御(MAC)エンティティが前記第1のRATに対して使用され、
前記第1のRRCメッセージに応答して、前記第2のRATのための第2のMACエンティティを確立するステップと、
前記第1のMACエンティティおよび前記第2のMACエンティティの両方を使用して、通信をするステップと
をさらに備えることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項11】
単一のRRCインスタンスおよび単一のRRC状態マシーンが、前記第1のRATおよび前記第2のRATの両方に対して使用されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記第1のRATは、ロングタームエヴォル―ションであることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項13】
第1の識別が前記第1のRATと関連付けられ、第2の識別が前記第2のRATと関連付けられ、前記WTRUは、前記第1のRATを使用して通信するための前記第1の識別を、および、前記第2のRATを使用して通信するための前記第2の識別を使用することを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記構成情報は、コンテナの中に含まれることを特徴とする請求項8に記載の方法。」


第4 引用文献、引用発明、及び技術的事項

1.引用文献1について
原査定の拒絶理由で引用された、米国特許出願公開第2011/0134831号明細書(以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付加した。)

(1) 「[0057] In accordance with the exemplary embodiments of this invention the foregoing problems are overcome and the goals are realized in accordance with several basic principles. These basic principles include at least the following.
A) The feature is preferably not visible to the CN (or only very minor additions needed to support control plane signaling if no interface exists between the eNB and the RNC).
B) The RRC connection is terminated in either E-UTRAN or UTRAN (eNB or RNC). The preference may be to terminate the RRC in E-UTRAN as this architecture would enable the use of the E-UTRAN RLC and PDCP layers. Ciphering on the PDCP would facilitate improved UL L2 processing in the UE 10 as ciphering is decoupled from RLC segmentation, and from the actual uplink data transmission based on the scheduled grant given by the network. One or both options may be supported by a standard.
C) The RRC, PDCP and RLC are located either in the eNB 12 or in the RNC (I-HSPA in NodeB), i.e., at the same location where the RRC connection is terminated. The RRC, PDCP and RLC operate based on E-UTRAN when terminated in the eNB 12, or as in UTRAN if terminated in the RNC 52. Security (ciphering and integrity protection) is terminated in the same location based on the terminating technology, i.e., either on the PDCP (LTE) or in the RLC (UTRAN). As the RRC is terminated in a single location the mobility management, radio resource management, connection configuration, handling of UE capabilities, and other RRC functions defined for controlling the UE 10 are handled in a centralized manner for both radio access technologies. As a single RLC protocol layer supports both radio access technologies (e.g., E-UTRAN, UTRAN) the RLC can support re-transmissions for complete data flow transmitted via either one or both radio technologies, the RLC can provide in-sequence delivery towards upper layers even though the two radio access technologies may have different RTTs (round trip times).
D) The E-UTRAN MAC operates on top of the LTE L1, routing data to/from the RLC.
E) The MAC-ehs operates between the WCDMA L1 and the RLC for HSPA DL operation, and the MAC-i/is located between the WCDMA L1 and the RLC in the UL.
F) The use of these exemplary embodiments further provides for maximum re-use of existing protocol layers and functions from both radio access technologies. Note that while it may be possible to define single MAC layer or radio protocol architecture that could support the required functions for both E-UTRAN and HSPA, such an approach would require a completely new design or re-design of the MAC or the complete protocol architecture, respectively. As such, problems would arise at least with respect to the already installed base of legacy UEs 10 and network components.」
(当審訳:[0057] この発明の例示的な実施形態に従って、前述の問題は克服され、いくつかの基本原則に従って目標が実現される。これらの基本原則は、少なくとも以下のものを含む。
A) その機能は、好ましくはCNから見えない(または、eNBとRNCとの間にインターフェースが存在しない場合、制御プレーンシグナリングをサポートするために必要な非常に小さな追加だけである)。
B) RRC接続は、E-UTRANまたはUTRAN(eNBまたはRNC)のいずれかで終端される。このアーキテクチャでは、E-UTRAN の RLC および PDCP 層を使用できるため、E-UTRAN で RRC を終端させることが望ましいと思われます。PDCP上での暗号化は、暗号化がRLCセグメント化から、およびネットワークによって与えられるスケジュールされた付与に基づく実際のアップリンクデータ送信から切り離されるため、UE 10におけるUL L2処理の改善を促進することになる。1つまたは両方のオプションは、規格によってサポートされ得る。
C) RRC、PDCPおよびRLCは、eNB 12またはRNC(I-HSPA in NodeB)、すなわちRRC接続が終端するのと同じ場所に配置される。RRC、PDCP、RLCは、eNB 12で終端した場合はE-UTRANに基づいて動作し、RNC52で終端した場合はUTRANに基づいて動作する。セキュリティ(暗号化および完全性保護)は、終端技術に基づいて同じ場所で終端され、すなわち、PDCP(LTE)上またはRLC(UTRAN)上のいずれかで終端される。RRC が単一の場所で終端されるため、モビリティ管理、無線リソース管理、接続設定、UE 機能の処理、および UE 10 を制御するために定義されたその他の RRC 機能は、両方の無線アクセス技術で集中的に処理されます。単一の RLC プロトコル層が両方の無線アクセス技術(例:E-UTRAN、UTRAN)をサポートするため、RLC はどちらか一方または両方の無線技術で送信された完全なデータフローの再送をサポートでき、RLC は 2 つの無線アクセス技術が異なる RTT(往復時間)を持つ場合でも、上位層に対してインシーケンス配信を提供することができ ます。
D) E-UTRAN MAC は LTE L1 の上で動作し、RLC との間でデータをルーティングします。
E) MAC-ehsは、HSPA DL動作のためにWCDMA L1とRLCの間で動作し、MAC-i/はULのWCDMA L1とRLCの間に配置される。
F) これらの例示的な実施形態の使用は、さらに、両方の無線アクセス技術からの既存のプロトコル層および機能の最大限の再利用を提供する。E-UTRANとHSPAの両方に必要な機能をサポートできる単一のMAC層または無線プロトコルアーキテクチャを定義することは可能かもしれないが、そのようなアプローチは、それぞれMACまたは完全なプロトコルアーキテクチャの完全に新しい設計または再設計を必要とすることに留意されたい。そのため、少なくともレガシーUE 10およびネットワークコンポーネントの既にインストールされているベースに関して問題が発生します。)

(2) 「[0061] FIG. 7 illustrates an embodiment of signaling flow to initiate resource aggregation, assuming use of the RRC in E-UTRAN, in accordance with the embodiments depicted in FIGS. 4, 5 and 6.
[0062] Message 1: The UE 10 sends (the RRC layer sends) to the eNB 12 a measurement report that a detected UTRAN carrier exceeds some quality threshold suitable for reception or carrier aggregation. (utilization of the MAC layer could be anticipated).
[0063] Message 2: The eNB 12 makes a decision to initiate carrier aggregation between E-UTRAN and UTRAN and sends over the X2 or Iur or compatible interface a resource aggregation request to the UTRAN RNC. If a suitable interface does not exist the messaging via the CN 54 can be as in handover signaling between E-UTRAN and UTRAN (e.g., see 3GPP TS 36.300).
[0064] Message 3: Using NBAP signaling (see 3GPP TS 25.433) HS-DSCH and E-DCH setup with resource aggregation is performed between the RNC 52 and the Node B 50 (the Node B 50 from which the UE 10 detected the UTRAN carrier reported in Message 1).
[0065] Message 4: The Node B indicates that the setup is performed.
[0066] Message 5: Using X2 or Iur or some other compatible interface signaling the RNC 52 informs the eNB 12 that the resource aggregation is completed, and UTRAN RRC parameters are provided. If an interface does not exist the messaging via the CN 54 can be as in handover signaling between E-UTRAN and UTRAN (e.g., see 3GPP 36.300).
[0067] Message 6: The UE 10 is informed from the E-UTRAN RRC of the Radio Bearer (RB) reconfiguration regarding resource aggregation (with the UTRAN RRC parameters being provided to the UE 10). This is followed by L1 synchronization between the UE 10 and the UTRAN Node B 50.
[0068] Message 7: The UE 10 (RRC) informs the eNB 12 that RB reconfiguration is complete.
[0069] Having performed the radio bearer reconfiguration, UE-related data routing is performed between the eNB 12 and the Node B 50 (via the RNC 52 or directly between the eNB 12 and the Node B 50), HS-DSCH and E-DCH signaling takes place between the UE 10 and the Node B 50 to enable HSPA transmission operation together with E-UTRAN transmission reception. During this reconfiguration procedure the user plane (U-Plane) data transmission may be constantly ongoing between the UE 10 and the eNB 12 by using E-UTRAN TX/RX operation. After the reconfiguration procedure is completed the data is then transmitted between the UE 10 and the network via both UTRAN and E-UTRAN based on scheduling decisions made by the Node B 50 and the eNB 12. Further, if both Node B and eNB are implemented in a single physical base station device (i.e., the Node B 50 and eNB 12 are co-located) the utilization of single scheduler scheduling data transmission from both radio access technologies can be accomplished.
[0070] It can be noted with respect to FIG. 7 that Messages 2 and 5 may be routed via the UTRAN CN 54 if no interface exists between the E-UTRAN eNB 12 and the UTRAN RNC 52. The interface for this purpose may be the X2 or an Iur type (the logical connection that exists between any two RNCs within the UTRAN is referred to as the Iur interface).
[0071] It can be further noted with respect to FIG. 7 that Messages 5 and 6 may have a container to include any necessary other system parameters, or the LTE RRC may be extended to cover the necessary HSPA parameters to configure the Phy and MAC layers so that other carrier aggregation can be configured」
(当審訳:[0061] 図7は、図4、5および6に描かれた実施形態に従って、E-UTRANにおけるRRCの使用を想定した、リソースアグリゲーションを開始するためのシグナリングフローの一実施形態を示す図である。
[0062] メッセージ1:UE 10は、検出されたUTRANキャリアが受信またはキャリアアグリゲーションに適したある品質閾値を超えるという測定レポートをeNB 12に送信する(RRC層が送信する)。(MAC層の利用が予想され得る)。
[0063] メッセージ2:eNB 12は、E-UTRANとUTRANとの間でキャリアアグリゲーションを開始することを決定し、X2またはIurまたは互換インターフェースを介して、UTRAN RNCにリソースアグリゲーション要求を送信する。適切なインタフェースが存在しない場合、CN 54を介したメッセージングは、E-UTRANとUTRANとの間のハンドオーバー信号のようにすることができる(例えば、3GPP TS 36.300を参照のこと)。
[0064] メッセージ3:NBAPシグナリング(3GPP TS 25.433を参照のこと)を用いて、RNC 52とNode B 50(UE 10がメッセージ1で報告されたUTRANキャリアを検出したNode B 50)との間でリソースアグリゲーションを伴うHS-DSCHおよびE-DCHセットアップが実行される。)
[0065] メッセージ4:Node Bは、セットアップが実行されたことを示す。
[0066] メッセージ5:X2またはIurまたは他の互換性のあるインタフェースシグナリングを使用して、RNC 52は、リソースアグリゲーションが完了し、UTRAN RRCパラメータが提供されることをeNB 12に通知する。インターフェースが存在しない場合、CN54を介したメッセージングは、E-UTRANとUTRANとの間のハンドオーバシグナリングのようにすることができる(例えば、3GPP 36.300を参照のこと)。
[0067] メッセージ6:UE 10は、E-UTRAN RRCから、リソース・アグリゲーションに関する無線ベアラ(RB)の再構成を通知される(UTRAN RRCパラメータがUE 10に提供される)。これに続いて、UE 10とUTRANノードB 50の間でL1同期が行われる。
[0068] メッセージ7.UE 10(RRC)は、RB再構成が完了したことをeNB 12に通知する。
[0069] 無線ベアラの再構成を行ったことにより、eNB 12とNode B 50との間で(RNC 52を介して、またはeNB 12とNode B 50との間で直接)UE関連データのルーティングが行われ、UE 10とNode B 50との間でHS-DSCHおよびE-DCHシグナリングが行われ、E-UTRAN送信受信と共にHSPA送信動作が可能にされる。この再設定手順の間、UE 10とeNB 12との間では、E-UTRAN TX/RX動作によりユーザプレーン(U-Plane)データ伝送が常時進行していてもよい。再構成手順が完了した後、データは、ノードB 50及びeNB 12によって行われるスケジューリング決定に基づいて、UTRAN及びE-UTRANの両方を介してUE 10とネットワークとの間で送信される。さらに、Node BおよびeNBの両方が単一の物理基地局装置に実装される(すなわち、Node B 50およびeNB 12が併設される)場合、両方の無線アクセス技術からのデータ伝送をスケジューリングする単一スケジューラの利用が達成され得る。
[0070] 図7に関して、E-UTRAN eNB 12とUTRAN RNC 52との間にインターフェースが存在しない場合、メッセージ2および5がUTRAN CN 54を介してルーティングされてもよいことが留意され得る。この目的のためのインターフェースは、X2またはIurタイプであってもよい(UTRAN内の任意の2つのRNC間に存在する論理接続は、Iurインターフェースと称される)。
[0071] さらに、図7に関して、メッセージ5および6は、必要な他のシステムパラメータを含むためのコンテナを有することができ、またはLTE RRCは、他のキャリアアグリゲーションを構成できるようにPhyおよびMAC層を構成するために必要なHSPAパラメータをカバーするように拡張することができることを指摘することができる。


(3) 「

」(FIG.7)
(当審訳:
1)RRC:測定レポート−UTRANキャリアが品質閾値を超える
(略)
6)E−UTRAN RRC:無線ベアラ構成:以下を伴うリソースアグリゲーション
UTRAN RRC:コンテナ内の複数のパラメータ
(略)
図7)

引用文献1の上記記載、及び移動体通信分野における技術常識を考慮すると、次のことがいえる。

ア 上記(2)の段落0069には、「UE 10とeNB 12との間では、E-UTRAN TX/RX動作によりユーザプレーン(U-Plane)データ伝送が・・・進行していてもよい。」という記載があるから、引用文献1には、E−UTRAN TX/RX動作によりデータを伝送するUEが、記載されている。

イ 上記(2)の段落0062には、「メッセージ1:UE 10は、・・・eNB 12に送信する(RRC層が送信する)。」という記載があり、また、上記(3)からも、「1)」においてUE10がメッセージ1をE−NODE B12へ送信することが読み取れるから、引用文献1には、UEがメッセージ1をeNBに送信し、当該メッセージ1はRRC層が送信することが、記載されているといえる。

ウ 上記(1)には、「RRC・・・は、eNB 12で終端した場合はE-UTRANに基づいて動作・・・する。」という記載があるから、引用文献1には、RRCはeNBで終端した場合はE−UTRANに基づいて動作することが、記載されている。

エ 上記(2)の段落0067には、「メッセージ6:UE 10は、E-UTRAN RRCから、・・・通知される(UTRAN RRCパラメータがUE 10に提供される)。」という記載があり、また、同0071には、「メッセージ・・・6は、必要な他のシステムパラメータを含むためのコンテナを有することができ」という記載があり、さらに、上記(3)からも、「6)」においてUE10は、E−UTRAN RRCからメッセージ6を通知され、UTRAN RRCパラメータを提供されることが読み取れるから、引用文献1には、UEが、E−UTRAN RRCからメッセージ6を通知され、UTRAN RRCパラメータを提供され、メッセージ6は、必要な他のシステムパラメータを含むためのコンテナを有することが、記載されているといえる。

オ 上記(2)の段落0069には、「データは、・・・UTRAN及びE-UTRANの両方を介してUE 10とネットワークとの間で送信される。」という記載があり、また、上記(1)には、「両方の無線アクセス技術(例:E-UTRAN、UTRAN)」という記載があるから、引用文献1には、データは、無線アクセス技術であるUTRAN及びE−UTRANの両方を介してUEとネットワークとの間で送信されることが記載されている。

以上を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 E−UTRAN TX/RX動作によりデータを伝送するUEであって、
メッセージ1をeNBに送信し、当該メッセージ1はRRC層が送信し、
RRCはeNBで終端した場合はE−UTRANに基づいて動作し、
E−UTRAN RRCからメッセージ6を通知され、UTRAN RRCパラメータを提供され、メッセージ6は、必要な他のシステムパラメータを含むためのコンテナを有し、
データは、無線アクセス技術であるUTRAN及びE−UTRANの両方を介してUEとネットワークとの間で送信される
UE。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶理由で引用された、特開2005−269109号公報(以下、「引用文献2」という。)には、以下の記載がある。(下線は当審で付与した。)

「【0054】
図7に示すように、まず時間t1で制御部306は第一の無線部300に制御信号s12を出力し、第一の無線部300は制御信号s12に基づいて、IEEE802.11bの基地局101との通信を開始する。時間t2以降所定の時間基地局101との通信が続き、時間t3で第一の無線部300は基地局101から送信されたGSMに関するシステム情報を含むビーコンフレーム信号を受信した場合には、受信信号s7をシステム検出部302へ出力する。」

そうすると、引用文献2には、「IEEE802.11bの基地局から送信されたGSMに関するシステム情報を含む信号を受信」するという技術的事項が、記載されていると認められる。


第5 対比及び判断

1 本願発明1について
本願発明1と引用発明を対比する。

(1) 引用発明の「E−UTRAN TX/RX動作」とは、E−UTRANを利用した送信/受信動作を意味することが明らかであり、また、引用発明の「E−UTRAN」は「無線アクセス技術」であることは明らかである。
そうすると、引用発明の「E−UTRAN TX/RX動作によりデータを伝送するUE」は、無線アクセス技術であるE−UTRANを利用した送信/受信動作によりデータを伝送するUEであるから、本願発明1の「無線送受信ユニット(WTRU)」に含まれる。

(2) 引用発明では「RRCはeNBで終端した場合はE−UTRANに基づいて動作」することから、RRCはE−UTRANを使用する、といえる。
そして、引用発明では、「メッセージ1はRRC層が送信」することから、E−UTRANを使用して、メッセージ1を通信する、といえる。
また、引用発明の「E−UTRAN」は、「無線アクセス技術」であることは明らかであり、次の(3)で説示するとおり、本願発明1の「第1の無線アクセス技術(RAT)」に含まれるといえる。
さらに、引用発明の「メッセージ1」は、「RRC層」すなわちRRC、が送信するメッセージであるから、本願発明1の「無線リソース制御(RRC)メッセージ」に含まれる。
そうすると、引用発明は、E−UTRANを使用して、メッセージ1を通信するから、「第1の無線アクセス技術(RAT)を使用して、無線リソース制御(RRC)メッセージを通信する」手段を備えていることが明らかであり、本願発明1と引用発明は、「第1の無線アクセス技術(RAT)を使用して、無線リソース制御(RRC)メッセージを通信する手段」を備えた点で共通する。

(3) 引用発明の「メッセージ6」は、「E−UTRAN RRCから」通知されるからRRCメッセージであり、本願発明1の「第1のRRCメッセージ」に含まれる。
また、引用発明が、当該メッセージ6を受信する手段を備えることは明らかであるから、引用発明は、本願発明1と同様に、「第1のRRCメッセージを受信する手段」を備えるといえる。

ここで、引用発明では、「E−UTRAN RRCからメッセージ6を通知され、UTRAN RRCパラメータを提供され」るから、引用発明のUEは、「E−UTRAN」を通じて、「UTRAN」のための情報を含んでいる「メッセージ6」を受信するといえる。
そして、引用発明の「UTRAN及びE−UTRAN」は両方とも「無線アクセス技術」であることが明らかであるから、引用発明の「E−UTRAN」は、本願発明1と同様に「第1のRAT」に含まれ、また、引用発明の「UTRAN」は、本願発明1と同様に「第2のRAT」に含まれるといえる。

さらに、引用発明において、「データは、無線アクセス技術であるUTRAN及びE−UTRANの両方を介してUEとネットワークとの間で送信される」から、引用発明の「E−UTRAN」および「UTRAN」は異なるRATであることが明らかである。

したがって、本願発明1と引用発明は、「第1のRRCメッセージを受信する手段であって、前記第1のRATおよび第2のRATは異なるRATである、受信する手段」を備えた点で共通する。

(4) 引用発明において、「データは、無線アクセス技術であるUTRAN及びE−UTRANの両方を介してUEとネットワークとの間で送信される」から、引用発明のUEは、E−UTRANおよびUTRANの両方を使用して、同時に通信をする手段を備えていることが、明らかである。
また、上記(3)で説示したとおり、引用発明の「E−UTRAN」及び「UTRAN」は、それぞれ本願発明1の「第1のRAT」及び「第2のRAT」に含まれる。
したがって、本願発明と引用発明は、「前記第1のRATおよび前記第2のRATの両方を使用して、同時に通信をする手段」を備えた点で、共通する。

以上のことから、本願発明1と引用発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。

(一致点)
「 無線送受信ユニット(WTRU)であって、
第1の無線アクセス技術(RAT)を使用して、無線リソース制御(RRC)メッセージを通信する手段と、
第1のRRCメッセージを受信する手段であって、前記第1のRATおよび第2のRATは異なるRATである、受信する手段と、
前記第1のRATおよび前記第2のRATの両方を使用して、同時に通信をする手段と
を備えたWTRU。」

(相違点)
本願発明1では、「第1のRRCメッセージ」が「前記第1のRATの第1のシグナリング無線ベアラ(SRB)を通じて」受信されるとともに「第2のRATのための構成情報を含んで」おり、また、「前記第2のRATのための前記構成情報は、前記第2のRATのためのシステム情報(SI)情報要素を含」む、という発明特定事項を含むのに対して、引用発明では、当該発明特定事項が特定されていない点。

上記相違点について検討すると、「WTRU」である引用発明の「UE」が受信する、「第1のRRCメッセージ」である引用発明の「メッセージ6」について、「前記第1のRATの第1のシグナリング無線ベアラ(SRB)を通じて」受信されるとともに「第2のRATのための構成情報を含んで」おり、また、「前記第2のRATのための前記構成情報は、前記第2のRATのためのシステム情報(SI)情報要素を含」むように構成することは、引用文献2に記載されておらず、また周知技術であるともいえない。
そうすると、引用発明に基いて、上記相違点に係る発明特定事項を含むように構成することは、当業者であっても、引用発明、及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて、容易になし得たこととはいえない。

したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明、及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて、容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 本願発明2ないし7について
本願発明2ないし7は、本願発明1の発明特定事項を全て含むから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて、容易に発明をすることができたものとはいえない。

3 本願発明8ないし14について
本願発明8は、「WTRU」の発明である本願発明1を、「無線送受信ユニット(WTRU)によって実施される方法」の発明としたものである。
そして、本願発明8は、上記「1 本願発明1について」で検討した上記相違点に係る発明特定事項と同じ、「第1のRRCメッセージ」が「前記第1のRATの第1のシグナリング無線ベアラ(SRB)を通じて」受信されるとともに「第2のRATのための構成情報を含んで」おり、また、「前記第2のRATのための前記構成情報は、前記第2のRATのためのシステム情報(SI)情報要素を含」む、という発明特定事項を含むから、本願発明8は、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて、容易に発明をすることができたものとはいえない。
そして、本願発明9ないし14は、本願発明8の発明特定事項を全て含むから、本願発明8と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて、容易に発明をすることができたものとはいえない。


第6 原査定についての判断

1 理由2.1(特許法第36条第6項第2号)について
請求項1の第3段落に記載された「第1のRRCメッセージ」は、「第2のRATのための構成情報を含んで」おり、また、「前記第2のRATのための前記構成情報は、前記第2のRATのためのシステム情報(SI)情報要素を含」むものである。
一方、請求項1には、その第2段落に記載された「無線リソース制御(RRC)メッセージ」が何を含むのかを特定する記載はない。
そうすると、前記第3段落の「第1のRRCメッセージ」は、前記第3段落で特定された内容を含む特定のRRCメッセージであるのに対して、前記第2段落の「無線リソース制御(RRC)メッセージ」は、前記「第1のRRCメッセージ」を含む上位概念であると解される。
したがって、請求項1には、前記第2段落の「無線リソース制御(RRC)メッセージ」と、前記第3段落の「第1のRRCメッセージ」が異なる概念であること及びその相違が、明確に記載されている。

2 理由2.2(特許法第36条第6項第2号)について
請求項1の第3段落に記載された「第1のRRCメッセージを受信する手段」は、「第1のRATの第1のシグナリング無線ベアラ(SRB)を通じて」、上記「1 理由2.1(特許法第36条第6項第2号)について」で検討した「第1のRRCメッセージ」を、「受信」する手段である。
一方、同第2段落に記載された「無線リソース制御(RRC)メッセージを通信する手段」は、「第1のRATの第1のシグナリング無線ベアラ(SRB)を通じて」受信するとは特定されていない。
また、一般に「通信する」とは、受信することと送信することを含むことが明らかであるから、前記第2段落の「第1の無線アクセス技術(RAT)を使用して、無線リソース制御(RRC)メッセージを通信する手段」は、前記第3段落の「第1のRRCメッセージ」以外の「無線リソース制御(RRC)メッセージ」についても受信及び送信することが可能な手段であると解される。
したがって、請求項1には、前記第2段落の「無線リソース制御(RRC)メッセージを通信する手段」と前記第3段落の「第1のRRCメッセージを受信する手段」は異なる手段であることが、明確に記載されている。

3.理由3(特許法第29条第2項)について
本願発明1ないし14は、上記「第5」の「1 本願発明1について」ないし「3 本願発明8ないし14について」のとおり、当業者であっても、引用発明、及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて、容易に発明をすることができたものとはいえない。

4.まとめ
したがって、原査定の理由2及び3は、いずれも維持することができない。


第7 むすび

以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-08-23 
出願番号 P2019-113875
審決分類 P 1 8・ 537- WY (H04W)
P 1 8・ 121- WY (H04W)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 中木 努
特許庁審判官 圓道 浩史
横田 有光
発明の名称 マルチ無線アクセス技術ワイヤレスシステムにおける無線リソース管理のための方法および装置  
代理人 弁理士法人谷・阿部特許事務所  

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