• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1388262
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-01-07 
確定日 2022-09-13 
事件の表示 特願2019−236058「電子デバイスの音声制御方法、電子デバイスの音声制御装置、コンピュータ機器及び記憶媒体」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年12月10日出願公開、特開2020−198077、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続きの経緯

本願は、令和元年12月26日(パリ条約による優先権主張 2019年5月31日 中国)の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 3年 2月16日付け :拒絶理由通知
令和 3年 5月24日 :意見書、手続補正書の提出
令和 3年 8月30日付け :拒絶査定(原査定)
令和 4年 1月 7日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和 3年 8月30日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1−3,8−10,15−16に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の既定により、特許を受けることが出来ない。
また、本願請求項1−4,6−11,13−16に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明に基づいて、本願請求項5,12に係る発明は、以下の引用文献1−2に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.韓国公開特許第10−2018−0084392号公報
2.特表2015−509680号公報

第3 本願発明

本願請求項1−12に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」−「本願発明10」という。)は、令和 4年 1月 7日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1−12に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
電子デバイスの音声制御方法であって、
ユーザの第1の音声命令を受信し、該第1の音声命令に従って非チャットモードに入るステップと、
前記電子デバイスの全二重リスニング状態を開始するステップであって、前記全二重リスニング状態では、前記電子デバイスが第1のタイプのユーザ命令を認識し、前記第1のタイプのユーザ命令にはウェイクアップワードを有しないステップと、
前記全二重リスニング状態で、前記第1のタイプのユーザ命令を取得し、前記第1のタイプのユーザ命令を認識するステップと、
前記第1のタイプのユーザ命令が予め設定された命令である場合、前記第1のタイプのユーザ命令を実行するステップと、
前記第1のタイプのユーザ命令が前記予め設定された命令でない場合、前記第1のタイプのユーザ命令を実行しないステップとを含み、
前記第1のタイプのユーザ命令を認識するステップの後に、
前記電子デバイスのディスプレイスクリーンに前記第1のタイプのユーザ命令を表示するステップをさらに含み、
前記電子デバイスの前記ディスプレイスクリーンに前記第1のタイプのユーザ命令を表示するステップは、
前記第1のタイプのユーザ命令が前記非チャットモードに関する命令である場合、第1のフォント色で前記第1のタイプのユーザ命令を表示するステップと、
前記第1のタイプのユーザ命令が前記非チャットモードに関する命令でない場合、第2のフォント色で前記第1のタイプのユーザ命令を表示するステップとを含み、
前記第1のフォント色が前記第2のフォント色より濃い電子デバイスの音声制御方法。
【請求項2】
前記非チャットモードに入った後の所定の期間内に、前記電子デバイスの全二重リスニング状態を開始するステップと、
前記所定の期間後に、前記全二重リスニング状態を終了するステップとをさらに含む請求項1に記載の電子デバイスの音声制御方法。
【請求項3】
前記全二重リスニング状態を終了するステップの後に、
前記ウェイクアップワードを有する第2のタイプのユーザ命令を取得し、該第2のタイプのユーザ命令を認識するステップと、
前記第2のタイプのユーザ命令を実行するステップとをさらに含む請求項2に記載の電子デバイスの音声制御方法。
【請求項4】
前記全二重リスニング状態で、前記第1のタイプのユーザ命令を取得するステップは、
ユーザの音声情報と現在再生中の音声情報とを含む現在の音声情報を収集するステップと、
前記電子デバイスの前記現在再生中の音声情報を取得するステップと、
前記現在再生中の音声情報に基づいて前記ユーザの音声情報を前記現在の音声情報から分離するステップと、
前記ユーザの音声情報を認識して前記第1のタイプのユーザ命令を取得するステップとを含む請求項1に記載の電子デバイスの音声制御方法。
【請求項5】
前記所定の期間が20秒〜40秒である請求項2に記載の電子デバイスの音声制御方法。
【請求項6】
電子デバイスの音声制御装置であって、
ユーザの第1の音声命令を受信し、該第1の音声命令に従って非チャットモードに入る受信モジュールと、
前記電子デバイスの全二重リスニング状態を開始する開始モジュールであって、前記全二重リスニング状態では、前記電子デバイスが第1のタイプのユーザ命令を認識し、前記第1のタイプのユーザ命令にはウェイクアップワードを有しない開始モジュールと、
前記全二重リスニング状態で、前記第1のタイプのユーザ命令を取得する取得モジュールと、
前記第1のタイプのユーザ命令を認識する認識モジュールと、
前記第1のタイプのユーザ命令が予め設定された命令である場合、前記第1のタイプのユーザ命令を実行し、前記第1のタイプのユーザ命令が前記予め設定された命令でない場合、前記第1のタイプのユーザ命令を実行しない処理モジュールとを備え、
前記電子デバイスのディスプレイスクリーンに前記第1のタイプのユーザ命令を表示する表示モジュールをさらに備え、
前記表示モジュールは、具体的には、
前記第1のタイプのユーザ命令が前記非チャットモードに関する命令である場合、第1のフォント色で前記第1のタイプのユーザ命令を表示し、
前記第1のタイプのユーザ命令が前記非チャットモードに関する命令でない場合、第2のフォント色で前記第1のタイプのユーザ命令を表示し、
前記第1のフォント色が前記第2のフォント色より濃い電子デバイスの音声制御装置。
【請求項7】
前記非チャットモードに入った後の所定の期間内に、前記電子デバイスの全二重リスニング状態を開始する開始モジュールと、
前記所定の期間後に、前記全二重リスニング状態を終了する終了モジュールとをさらに備える請求項6に記載の電子デバイスの音声制御装置。
【請求項8】
前記ウェイクアップワードを有する第2のタイプのユーザ命令を取得し、該第2のタイプのユーザ命令を認識する取得認識モジュールと、
前記第2のタイプのユーザ命令を実行する実行モジュールとをさらに備える請求項7に記載の電子デバイスの音声制御装置。
【請求項9】
前記取得モジュールは、具体的には、
ユーザの音声情報と現在再生中の音声情報とを含む現在の音声情報を収集し、
前記電子デバイスの前記現在再生中の音声情報を取得し、
前記現在再生中の音声情報に基づいて前記ユーザの音声情報を前記現在の音声情報から分離し、
前記ユーザの音声情報を認識して前記第1のタイプのユーザ命令を取得する請求項6に記載の電子デバイスの音声制御装置。
【請求項10】
前記所定の期間が20秒〜40秒である請求項7に記載の電子デバイスの音声制御装置。
【請求項11】
プロセッサとメモリとを備えるコンピュータ機器であって、
前記プロセッサが前記メモリに記憶されている実行可能なプログラムコードを読み出して前記実行可能なプログラムコードに対応するプログラムを実行することにより、請求項1から請求項5のいずれかに記載の電子デバイスの音声制御方法を実現するコンピュータ機器。
【請求項12】
コンピュータプログラムが記憶されている非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体であって、
前記コンピュータプログラムがプロセッサにより実行される場合に、請求項1から請求項5のいずれかに記載の電子デバイスの音声制御方法が実現される非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。」

第4 引用文献、引用発明等

1.引用文献1について
令和 3年 8月30日付けの拒絶査定に引用された引用文献1(韓国公開特許第10−2018−0084392号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は、強調のため当審にて付与。以下同様。)


(当審訳:
[0001]本発明の多様な実施例は電子装置で音声認識サービスを処理する方法及び装置に関する。)


(当審訳:
[0154]動作705において、プロセッサ480は、第1の音声情報に基づいて、第1のタスクを処理することができる。一実施形態によると、プロセッサ480は、ウェイクアップ後、ユーザの発話に伴う第1の音声情報を認識し、第1の音声情報に対応する機能を実行することに関連する少なくとも1つの第1のタスクを処理することができる。例えば、ユーザの発話に応じて「ジャズ音楽再生」を認識する場合、プロセッサ480は、音楽アプリケーション実行及び音楽再生を処理することができる。他の例として、ユーザの発話に応じて再生中の音楽の「ボリュームアップ」を認識する場合、プロセッサ480は、音楽アプリケーションの音量値を設定された値に応じて増加させることができる。」







(当審訳:
[0260]図13は、本発明の多様な実施形態による電子装置において音声認識サービス活性化状態に対するフィードバックを提供する例示を説明するために図示した図面である。
[0261]図13に示すように、図13の例は、電子装置400がモバイル(またはスマートフォン)である場合の例を示す。図13では、電子装置400のウェイクアップワードが"Bixby"に設定されたことを例示する。様々な実施形態によれば、電子装置400は、マイクロホン(または音響センサ)を含むことができ、マイクロフォンを介してユーザの発話に伴うオーディオ入力を受信することができる。
[0262]図13を参照すると、動作1301において、ユーザ800は、電子装置400による音声認識サービスを開始するために、電子装置400に設定されたウェイクアップワード(例えば、Bixby)を発話することができる。一実施形態によると、ユーザ800は、ウェイクアップワードと命令(例えば、音声認識サービスによるタスク(機能)実行と関連した命令)(例えば、Send photo to my mom)を発声することができる。例えば、図13の例では、ユーザ800は、ウェイクアップワードとコマンドとを共に発声する場合の例を示すことができる。一実施形態によると、動作1301において、ユーザ800は、電子装置400の起動及び機能実行のために、「Bixby,Send photo to my mom」のように話し得る。ここで、"Bixby"がウェイクアップワードに該当することができ、"Send photo to my mom"が命令語に該当することができる。
[0263]多様な実施形態によれば、電子装置400は、マイクを介してユーザ800の発話によるオーディオの入力を受けることができる。様々な実施形態によれば、電子装置400は、動作1303において、ユーザ800のウェイクアップワード(例えば、Bixby)に応答してウェイクアップすることができる。
[0264]様々な実施形態によれば、電子装置400は、ウェイクアップに基づいて、ユーザ800のコマンド(例えば、Send photo to my mom)に対する音声認識を実行することができる。電子装置400は、認識する結果に関連するタスクを実行することができる。一実施形態によれば、動作1305において、電子デバイス400は、ギャラリーアプリケーションを実行し、写真リストの画面1320を表示することができる。
[0265]様々な実施形態によれば、電子装置400は、ウェイクアップに基づいて音声ユーザインタフェース1310を提供することができる。一実施形態によると、動作1303の例として、電子装置400は、音声認識の結果をユーザ800に提供するために、音声認識に従ったユーザ800の命令(例えば、Send photo to my mom)を表示することができる。一実施形態によると、電子装置400は、ユーザ800の命令を認識し、これを実行することを知らせる応答(またはフィードバック)(例えば、OK)をユーザ800に提供することができる。
[0266]種々の実施形態によれば、電子デバイス400は、動作1303のような状態で、音声認識に対応する命令を実行(例えば、対応するドメインの機能を実行)して、ユーザ800に提供することができる。一実施形態によると、電子装置400は、動作1305におけるようにギャラリーアプリケーションを実行し、写真リストの画面1320を提供することができる。様々な実施形態によると、電子装置400は、コマンド処理のために特定アプリケーション(例えばギャラリーアプリケーション)へジャンプした後でも、音声ユーザインタフェース1310は完全に終了せず、バックグラウンドとして動作し、後続のコマンドを認識できるように設定することができる。
[0267]様々な実施形態によれば、電子デバイス400は、音声認識サービス(例えばウェイクアップまたはウェイクアップ)の命令を処理することに連続的または並列的に、音声認識サービス(例えば、後続の命令処理モード)の起動状態をユーザ800にフィードバックすることができる。一実施形態によれば、動作1305において、電子装置400は、LED発光1330を介して、音声認識サービスの起動状態をユーザ800に提供することができる。ユーザ800は、電子デバイス400のLED発光1330に基づいて、その後のコマンドが実行可能であることを認識することができる。
[0268]様々な実施形態によると、電子デバイス400は、ユーザ800が移動した画面上でコマンドを実行することができるか否かを提供するために、ディスプレイの一定領域またはポップアップウィンドウなどに基づいて、視覚(例えば、画面に表示された文字はコマンド可能である)またはUIコンポーネント数字(例:カウンター数字)を提供するか、視覚的キュー(Auditory Cue)(例えば、「You can say」などのTTSガイド)を提供することができる。種々の実施形態によれば、フィードバック出力は、後続の命令処理モードに設定された待ち時間の間維持され、次の命令処理モードの間、ユーザ800の発話感知に応答して延長され得る。
[0269]動作1307において、ユーザ800は、例えば音声認識サービスの起動に設定された待ち時間の間に、その後の命令が実行可能である間に、追加命令を発することができる。一実施形態によると、動作1307で、ユーザ800は、写真リストから特定写真(例えば、Camera Roll)を選択する「Camera Roll」を発話することができる。
[0270]様々な実施形態によると、電子デバイス400は、後続のコマンド処理モードにおいて、追加のユーザ800の発話が検出された場合に、その後のコマンド処理モードに従って待ち時間を延長することができる。一実施形態によると、電子装置400は、設定された待機時間を初期化して最初から再びカウントするか、またはカウント中の待機時間に追加時間を加算して待機時間を増加(延長)することができる。
[0271]様々な実施形態によれば、電子装置400は、動作1305のような状態で、次の命令処理モード中に入力され、音声認識された命令を実行し、ユーザ800に提供することができる。一実施形態によると、動作1307で、電子装置400は、"Camera Roll"の写真を実行して関連画面1340(例えば、写真の全体画面)を表示することができる。様々な実施形態によれば、フィードバック出力(例えば、LED発光1330)は、設定または変更された待ち時間の間、継続的に出力され得る。
[0272]種々の実施形態によれば、電子装置400は、待ち時間のタイムアウトを決定すると、フィードバック出力を停止することができる。一実施形態によれば、動作1311の例と同様に、電子デバイス400は、LEDをオフにして、LED発光1330によるフィードバックを停止することができる。様々な実施形態では、電子デバイス400は、待ち時間のタイムアウト時に、後続のコマンド処理モードを終了し、ボイスユーザインタフェースを非アクティブ化することができる。
[0273]様々な実施形態において、待ち時間のタイムアウト時に、電子デバイス400は、ユーザ800の発話の音声認識を実行しなくてもよい。一実施形態によると、動作1309の例示と同様に、ユーザ800が、例えば音声認識サービスの起動に設定された待ち時間がタイムアウトした後、次のコマンドが実行可能でない場合、電子デバイス400は、ユーザ800の発話に対する音声認識動作を実行しない。様々な実施形態によると、電子デバイス400は、音声認識が実行されないので、ユーザ800の発話を認識することができず、動作1311の実施例のように、動作1307の実行状態を維持することができる。例えば、電子装置400は、ユーザ800の発話(例えば、Next)に対するアクション遂行なしに、"Camera Roll"写真の画面1340表示状態を維持することができる。

「図13



したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「音声認識サービスを処理する方法であって、
ユーザ800は、ウェイクアップワードとコマンドとを共に発声する場合、
電子装置400は、マイクを介してユーザ800の発話によるオーディオの入力を受け、
ユーザ800のコマンドに対する音声認識を実行し、
認識する結果に関連するギャラリーアプリケーションを実行し、
音声認識の結果をユーザ800に提供するために、音声認識に従ったユーザ800の命令を表示し、
ユーザ800の命令を認識し、これを実行することを知らせる応答をユーザ800に提供し、
コマンド処理のために特定アプリケーションへジャンプした後でも、音声ユーザインタフェース1310は完全に終了せず、バックグラウンドとして動作し、後続のコマンドを認識できるように設定し、
ユーザ800は、音声認識サービスの起動に設定された待ち時間の間に、その後の命令が実行可能である間に、追加命令を発することができ、
次の命令処理モード中に入力され、音声認識された命令を実行し、ユーザ800に提供することができる。
音声認識サービスを処理する方法。」

2.引用文献2について
令和 3年 8月30日付けの拒絶査定に引用された引用文献2(特表2015−509680号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(以下、「引用文献2記載の技術的事項」という。)。

「【0046】
図3は、本発明の実施形態による端末機の制御方法を示したフローチャートである。
図1及び図3を参照すれば、段階310で端末機はロック状態で音声コマンドが入力されたのか判断することができる。
【0047】
これは音声入力部112が入力される音声を認識して判断することができる。実施形態によって端末機で音声入力部112及び制御部150だけが作動する状態で音声認識が進行されることができる。他の実施形態によれば、端末機がロックされた状態でも音声入力部112を通じて音声入力を受けることができる。音声コマンドが入力された場合、絶えず端末機は作動状態を維持するようになる。ユーザは前記端末機がロックされた状態でも既存に設定された音声コマンドを入力することによって別に前記端末のロック状態を解除せず、直ちに音声コマンドを前記端末機に入力するのが可能である。
【0048】
音声コマンドが入力された場合、段階320で入力された音声コマンドと端末機に設定されたコマンドを比べることができる。前記設定されたコマンドはユーザが既存にコマンド設定段階を通じて設定することができる。また、実施形態によって端末機が基本的に設定されたコマンドを備えることができる。
【0049】
段階330で入力された音声コマンドが設定されたコマンドと一致するのかを比べることができる。設定されたコマンドはユーザの設定によって複数個があり得、段階330では入力されたコマンドと複数個の設定されたコマンドを比べることができる。例えば、端末は入力された音声コマンドとプレセットされたコマンドを比べることができる。前記比較結果、入力された音声コマンドと設定されたコマンドのうちに一致することがない場合、段階340でディスプレー部120に入力コマンドが設定されたコマンドと一致しないことを表示することができる。さらに、本発明の実施形態によれば、一致しないことを表示するメッセージは音声を認識することができないという内容又は該当するコマンドがないという内容を表示することができる。ディスプレー部120に一致しないことを表示した後に段階310に戻ってユーザの音声認識が入ることを待機する。しかし、本発明の実施形態において前記段階340は選択的に実施されることができ、入力された音声コマンドが設定されたコマンドと一致しない場合、ディスプレー部120に別途のユーザインターフェースを表示せず進行することができる。
【0050】
段階330で入力された音声コマンドが設定されたコマンドと一致する場合、段階350で一致する設定されたコマンドをディスプレー部120に表示することができる。さらに、前記コマンドと対応する端末機の作動をディスプレー部120にディスプレーできる。このようにコマンドをディスプレー部120に表示することによってユーザはコマンドが成功的に入力され、入力された音声コマンドによる端末機の作動を視覚的に確認することができる効果がある。実施形態によって前記音声入力により当該音声入力に対応する画面は、前記音声入力のコマンド内容又は前記コマンドに該当する端末機の作動であることができる。また、実施形態によって前記段階350は選択的に(optional)実施されることができ、前記端末機は別途のコマンドディスプレーをしないことがある。
【0051】
段階360で前記端末機はロック状態解除と共に前記設定されたコマンドに対応する作動を端末機が行うことができる。前記対応する作動はユーザがプレセットした作動であることができる。
【0052】
このように、端末機がロックされた状態で、ユーザの音声コマンドだけで端末機の作動を制御することによってユーザ便宜性が向上する。さらに、入力された音声による作動をユーザが組み合わせることができるのでユーザ操作性が向上することができる。」

「図3



第5 対比・判断

1.本願発明1について

(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア.引用発明における「電子装置400」は、本願発明1における「電子デバイス」に相当し、引用発明における「音声認識サービスを処理する方法」は、「電子装置400」において入力された音声を制御する方法であるから、後述する相違点を除いて、本願発明1における「電子デバイスの音声制御方法」に相当する。

イ.引用発明の「ウェイクアップワードとコマンド」は、「ユーザ800」が発声するものであり、音声による命令であるから、本願発明1における「ユーザの第1の音声命令」に相当する。また、引用発明の「マイクを介してユーザ800の発話によるオーディオの入力を受け」ることは、前記「ウェイクアップワードとコマンド」の入力を受けることであり、本願発明1における「ユーザの第1の音声命令を受信」することに相当する。」

ウ.引用発明の「ギャラリーアプリケーション」は、非チャットのモードであることから、本願発明1における「非チャットモード」に相当し、引用発明の「ユーザ800のコマンドに対する音声認識を実行し、認識する結果に関連するギャラリーアプリケーションを実行」することは、ユーザの音声コマンドに従ってギャラリーアプリケーションを実行していることから、上記イを参酌すると、本願発明1における「該第1の音声命令に従って非チャットモードに入るステップ」に相当する。

エ.引用発明の「後続のコマンド」は、ギャラリーアプリケーションを実行した後に行われるコマンドであり、本願発明1における「第1のタイプのユーザ命令」に相当し、ウェイクアップワードを含まないことから、本願発明1における「前記第1のタイプのユーザ命令にはウェイクアップワードを有しない」に相当する。よって、引用発明の「コマンド処理のために特定アプリケーションへジャンプした後でも、音声ユーザインタフェース1310は完全に終了せず、バックグラウンドとして動作し、後続のコマンドを認識できるように設定」することは、全二重状態であるかは不明であるものの、本願発明1における「前記電子デバイスの全二重リスニング状態を開始するステップであって、前記全二重リスニング状態では、前記電子デバイスが第1のタイプのユーザ命令を認識し、前記第1のタイプのユーザ命令にはウェイクアップワードを有しないステップ」とは、「前記電子デバイスのリスニング状態を開始するステップであって、前記リスニング状態では、前記電子デバイスが第1のタイプのユーザ命令を認識し、前記第1のタイプのユーザ命令にはウェイクアップワードを有しないステップ」という点で共通する。

オ.引用発明の「次の命令処理モード」は、ギャラリーアプリケーションを実行した後に、後続のコマンドを認識できるように待機しているモードであり、本願発明1における「全二重リスニング状態」とは、「リスニング状態」という点で共通し、引用発明の「次の命令処理モード中に入力され、音声認識された命令を実行」することは、上記エを参酌すると、本願発明1における「前記全二重リスニング状態で、前記第1のタイプのユーザ命令を取得し、前記第1のタイプのユーザ命令を認識するステップと、前記第1のタイプのユーザ命令が予め設定された命令である場合、前記第1のタイプのユーザ命令を実行するステップ」とは、「前記リスニング状態で、前記第1のタイプのユーザ命令を取得し、前記第1のタイプのユーザ命令を認識するステップと、前記第1のタイプのユーザ命令が予め設定された命令である場合、前記第1のタイプのユーザ命令を実行するステップ」という点で共通する。

カ.引用発明の「音声認識の結果をユーザ800に提供するために、音声認識に従ったユーザ800の命令を表示」することは、「ユーザ800のコマンドに対する音声認識を実行し、
認識する結果に関連するギャラリーアプリケーションを実行」することに伴うものであり、表示される「ユーザ800の命令」は、「ウェイクアップワードとコマンド」における「コマンド」であるから、本願発明1における「前記電子デバイスのディスプレイスクリーンに前記第1のタイプのユーザ命令を表示するステップ」とは、「前記電子デバイスのディスプレイスクリーンにユーザ命令を表示するステップ」という点で共通する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「電子デバイスの音声制御方法であって、
ユーザの第1の音声命令を受信し、該第1の音声命令に従って非チャットモードに入るステップと、
前記電子デバイスのリスニング状態を開始するステップであって、前記リスニング状態では、前記電子デバイスが第1のタイプのユーザ命令を認識し、前記第1のタイプのユーザ命令にはウェイクアップワードを有しないステップと、
前記リスニング状態で、前記第1のタイプのユーザ命令を取得し、前記第1のタイプのユーザ命令を認識するステップと、
前記第1のタイプのユーザ命令が予め設定された命令である場合、前記第1のタイプのユーザ命令を実行するステップと、
前記電子デバイスのディスプレイスクリーンにユーザ命令を表示するステップを含む
電子デバイスの音声制御方法。」

(相違点1)
本願発明1は、「全二重リスニング状態」を含むのに対して、引用発明は「リスニング状態」であって、「全二重」であるかは不明である点。

(相違点2)
本願発明1は、「前記第1のタイプのユーザ命令が前記予め設定された命令でない場合、前記第1のタイプのユーザ命令を実行しないステップ」を含むものであるのに対して、引用発明はそれを含むものではない点。

(相違点3)
本願発明1は、「電子デバイスの前記ディスプレイスクリーンに前記第1のタイプのユーザ命令を表示する」ものであるのに対して、引用発明は「第1のタイプのユーザ命令」を表示するものではない点。

(相違点4)
本願発明1は、「前記第1のタイプのユーザ命令が前記非チャットモードに関する命令である場合、第1のフォント色で前記第1のタイプのユーザ命令を表示するステップと、前記第1のタイプのユーザ命令が前記非チャットモードに関する命令でない場合、第2のフォント色で前記第1のタイプのユーザ命令を表示するステップとを含み、前記第1のフォント色が前記第2のフォント色より濃い」ものであるのに対して、引用発明はそれを含むものではない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み、まず、「第1のタイプのユーザ命令」の表示態様に関するものである点で互いに関連する相違点3及び4についてまとめて検討すると、引用文献2記載の技術的事項には、入力された音声コマンドが設定された音声コマンドと一致するか否かを判断し、一致する場合は、一致する設定されたコマンドをディスプレイ部に表示し、一致しない場合は、一致しないことを表示することが記載されているものの、一致する場合としない場合とでフォント色を変更することは記載されていないから、仮に引用発明に引用文献2記載の技術的事項を加味したとしても、ユーザ命令が非チャットモードに関する命令か否かでフォント色を変更させる構成とはならない。
また、当該相違点3及び4に係る構成は本願の出願日前において周知技術であるともいえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、及び引用文献2記載の技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2−5,11−12について

本願発明2−5,11−12は、いずれも,本願発明1と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により、当業者であっても引用発明、及び引用文献2記載の技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

3.本願発明6について

本願発明6は、「方法」である本願発明1とカテゴリー違いで実質的に同様内容の「装置」に係る発明であるので、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても引用発明、及び引用文献2記載の技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

4.本願発明7−10について

本願発明7−10は、本願発明6と同一の構成を備えるものであるから,本願発明6と同じ理由により、当業者であっても引用発明、及び引用文献記載の技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

第6 原査定について

審判請求時の補正により、本願発明1−12は、本願発明1の上記(相違点1)に係る、「前記第1のタイプのユーザ命令を認識するステップの後に、前記電子デバイスのディスプレイスクリーンに前記第1のタイプのユーザ命令を表示するステップをさらに含み、前記電子デバイスの前記ディスプレイスクリーンに前記第1のタイプのユーザ命令を表示するステップは、前記第1のタイプのユーザ命令が前記非チャットモードに関する命令である場合、第1のフォント色で前記第1のタイプのユーザ命令を表示するステップと、前記第1のタイプのユーザ命令が前記非チャットモードに関する命令でない場合、第2のフォント色で前記第1のタイプのユーザ命令を表示するステップとを含み、前記第1のフォント色が前記第2のフォント色より濃い」という技術的事項を有するものとなった。当該技術的事項は、原査定における引用文献1−2には記載されておらず、周知技術でもないので、本願発明1−12は、当業者であっても原査定における引用文献1−2に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。

第7 むすび

以上のとおり、本願発明1−12は、当業者が引用発明、及び引用文献2記載の技術的事項に基づいて、容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-08-30 
出願番号 P2019-236058
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
P 1 8・ 113- WY (G06F)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 稲葉 和生
特許庁審判官 野崎 大進
▲高▼瀬 健太郎
発明の名称 電子デバイスの音声制御方法、電子デバイスの音声制御装置、コンピュータ機器及び記憶媒体  
代理人 上田 邦生  
代理人 上田 邦生  
代理人 柳 順一郎  
代理人 柳 順一郎  
代理人 竹内 邦彦  
代理人 竹内 邦彦  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ