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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H02M |
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管理番号 | 1388267 |
総通号数 | 9 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2022-09-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2022-01-12 |
確定日 | 2022-08-30 |
事件の表示 | 特願2018− 4966「電力制御装置、太陽光発電システム、およびプログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 7月25日出願公開、特開2019−126171、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成30年1月16日の出願であって、令和3年6月30日付けで拒絶の理由が通知され、同年9月6日に意見書とともに手続補正書が提出され、同年10月4日付けで拒絶査定(謄本送達日同年10月12日。以下、「原査定」という。)がなされ、これに対して令和4年1月12日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされ、同年2月9日付けで審査官により特許法164条3項の規定に基づく報告がなされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(令和3年10月4日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 (進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 記 (引用文献等については引用文献等一覧参照) ・請求項 1、2、4、5 ・引用文献等 1、2 ・請求項 3 ・引用文献等 1−4 ・備考 <引用文献等一覧> 1.特開2013−004566号公報 2.特開2008−054473号公報 3.特開2008−301585号公報(周知技術を示す文献) 4.特開2011−229220号公報(周知技術を示す文献) 第3 審判請求時の補正について 審判請求時の補正(以下、「本件補正」という。)は、特許法17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。 本件補正によって、請求項1に「前記昇圧回路と」という事項を追加する補正は、本件補正前の「電力制御装置」が生成する、「接続を切断するための制御信号」における当該「切断」が、「当該太陽電池モジュール」に加え、「前記昇圧回路との接続」を「切断」するものであることを限定的に減縮するものと認められ、本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、「前記昇圧回路と」という事項は、当初明細書の段落【0021】に、「リレー105は、太陽電池モジュール10と昇圧回路101との間に配置された、オンオフを切り替え可能なスイッチである。リレー105は、切替制御部107から受信した制御信号に基づいて、太陽電池モジュール10との接続の有無を切り替えることができる。リレー105は、太陽電池モジュール10が発電を行っておらず、かつ蓄電装置20が系統電力網2との間で蓄電および放電のいずれかを行っているときに当該太陽電池モジュール10との接続を切断することが可能な構成であることが好適である。」(下線は当審で付加。以下同様。)と記載されているから、本件補正は新規事項を追加するものではない。 そして、以下、第4〜第6に示すように、補正後の請求項1〜5に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。 第4 本願発明 本願請求項1〜5に係る発明(以下、「本願発明1」〜「本願発明5」という。)は、令和4年1月12日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1〜5に記載された、次のとおりのものと認める。 「【請求項1】 フレームが接地している両面電極型太陽電池モジュール、電力の蓄電および放電を行う蓄電装置、および外部の系統電力網に接続され、当該太陽電池モジュールを含む太陽光発電システムにおける電力の入出力を制御する電力制御装置であって、 前記蓄電装置の出力電圧を入力とする双方向DC/DCコンバータと、前記太陽電池モジュールの出力電圧を入力とする非絶縁型の昇圧回路と、双方向インバータ回路と、を備えており、 前記昇圧回路および前記双方向DC/DCコンバータの出力端は並列接続され、前記双方向インバータ回路は、並列接続された前記出力端を直流入力としており、 前記蓄電装置が前記系統電力網との間で、前記双方向インバータ回路から前記双方向DC/DCコンバータを通した蓄電、及び、前記双方向DC/DCコンバータから前記双方向インバータ回路を通した放電のいずれかを行っており、かつ前記太陽電池モジュールにおける起電圧が所定の電圧を下回る場合、当該太陽電池モジュールと前記昇圧回路との接続を切断するための制御信号を生成することを特徴とする電力制御装置。 【請求項2】 前記太陽電池モジュールにおいて発電が行われない時間帯に関する情報に基づいて前記制御信号を生成することを特徴とする請求項1に記載の電力制御装置。 【請求項3】 前記制御信号によって、前記太陽電池モジュールの出力電圧の負極側との接続のみを切断することを特徴とする請求項1又は2に記載の電力制御装置。 【請求項4】 フレームが接地している両面電極型太陽電池モジュールと、 電力の蓄電および放電を行う蓄電装置と、 請求項1から3のいずれか1項に記載の電力制御装置と、を備えていることを特徴とする太陽光発電システム。 【請求項5】 請求項1に記載の電力制御装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム。」 第5 引用例 1 引用例1に記載された事項及び引用発明 (1)原査定の拒絶の理由において引用した、本願の出願前に既に公知である、特開2013−4566号公報(平成25年1月7日公開。以下、これを「引用例1」という。)には、関連する図面と共に、次の事項が記載されている。 A 「【0014】 実施の形態1. 以下、この発明の実施の形態1による太陽電池発電装置として、薄膜シリコン太陽電池を用いた太陽電池発電装置について図に基づいて説明する。図1は、この発明の実施の形態1による太陽電池発電装置の概略構成図である。 図1に示すように、太陽電池発電装置は、複数の太陽電池パネル1を直列または並列あるいは直並列で接続して成る太陽電池パネルアレイ2をアルミなど金属のフレーム3に収納して備える。また、DC/DCコンバータ4およびインバータ5を有して太陽電池パネルアレイ2が出力する直流電力を交流電力に変換する電力変換部6と、1次電池または燃料電池などから成り直流電圧を出力する直流電源7と、昇圧コンバータまたは昇降圧コンバータから成り、直流電源7の出力電圧を所望の電圧に変換する電圧変換部8と、切替回路部9とを備える。 【0015】 なお、2aは太陽電池パネルアレイ2の正電極に接続される出力線、2bは太陽電池パネルアレイ2の負電極に接続される出力線であり、これら出力線2a、2bを直流母線として電力変換部6が接続される。以後、出力線2aを太陽電池パネルアレイ2の正電極、出力線2bを太陽電池パネルアレイ2の負電極と称す。 切替回路部9は、太陽電池パネルアレイ2の正負電極2a、2bに接続され、太陽電池パネルアレイ2と電力変換部6との接続を遮断する遮断スイッチ部9aと、電圧変換部8の出力を太陽電池パネルアレイ2の負電極2bに接続する接続部9bとで構成される。遮断スイッチ部9aは、太陽電池パネルアレイ2と系統(系統電源)10との接続状態(接続/遮断)を切り替え、接続部9bは電圧変換部8の出力を負電極2bに接続する状態(接続/遮断)を切り替える。 【0016】 図2は太陽電池パネル1の構造を示した概略図である。太陽電池パネル1は、透明なガラス基板11に透明電極13a、薄膜シリコンから成る発電層12、裏面電極13bを太陽電池セル14として形成する。さらに太陽電池セル14の保護や電気的絶縁などを目的に、太陽電池セル14が形成された面を、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂(EVAシート)などによる透明封止膜16と防湿や絶縁のためにアルミやポリフッ化ビニル(PVF)、PETフィルムなどを積層したバックシート15とによって封止した構造をしている。 さらに太陽電池パネル1あるいは複数の太陽電池パネル1から成る太陽電池パネルアレイ2は、設置のために周縁部をゴムなど接合層17により封止し金属フレーム3で保持される。金属フレーム3は感電防止等のために対地に接地される。 また、複数の太陽電池パネル1から成る太陽電池パネルアレイ2としたが、太陽電池発電装置内の太陽電池パネル1は1枚でも良く、1以上の太陽電池パネル1から成る太陽電池パネルアレイ2を本願の太陽電池パネルとする。」 B 「【0017】 このように構成される太陽電池発電装置の動作について、以下に説明する。 太陽電池パネルアレイ2は光照射により発電し、発電中は遮断スイッチ部9aが閉状態で発電電力を電力変換部6へ接続する。このとき接続部9bは開状態で、直流電源7の電圧変換部8を介した直流電圧を遮断し、太陽電池パネルアレイ2の負電極2bへ接続しない。 電力変換部6において、コンバータ4は、太陽電池パネルアレイ2が発電した直流電圧をインバータ5の入力に適した電圧に変換し、インバータ5は所望の交流電圧に変換して系統10に接続する。太陽電池パネルアレイ2の出力の対地電圧はできるだけ小さくすることが望ましく、図3に示すように、電力変換部6は、太陽電池パネルアレイ2が発電した直流電圧の対地電圧が正電極側と負電極側で絶対値が等しく中間電位が0になるように制御する。これにより、太陽電池パネルアレイ2は中間電位が0になる電圧で直流電力を出力し、交流電力に変換されて系統10に出力される。 【0018】 切替回路部9は図示しない制御部にて制御され、遮断スイッチ部9aあるいはコンバータ4にて太陽電池パネルアレイ2からの電圧、電流のいずれか一方あるいは双方を計測し、計測値に基づいて制御部は発電電力の低下を検出して遮断スイッチ9aおよび接続部9bを制御する。 【0019】 夜間もしくは天候により太陽電池パネルアレイ2の発電電力が、予め設定された所定電力量より低下すると、遮断スイッチ部9aを開状態にして太陽電池パネルアレイ2とコンバータ4との接続を遮断分離する。さらに太陽電池パネルアレイ2とコンバータ4との絶縁を行う。遮断スイッチ部9aを開状態にすると、続いて接続部9bを閉状態にして直流電源7の電圧変換部8を介した直流電圧を太陽電池パネルアレイ2の負電極2bへ接続する。 電圧変換部8は直流電源7の直流電圧を太陽電池パネルアレイ2の負電極2bに印加する所望の電圧(以下、バイアス電圧と称す)に変換し、接地電位に対して正のバイアス電圧が太陽電池パネルアレイ2の負電極2bに印加される。これにより太陽電池パネルアレイ2の負電極2bを対地に対して正電位にすると共に、太陽電池パネルアレイ2の各太陽電池セル14の電位を正電位にする。」 C 「【0030】 実施の形態2. 次に、この発明の実施の形態2による太陽電池発電装置を図5に基づいて説明する。 図5に示すように、直流電源としての蓄電部7aと蓄電部7aを充電する充電回路としての充電部20とを備え、充電部20は太陽電池パネルアレイ2の正負電極2a、2bに接続される。その他の構成は上記実施の形態1と同様である。 蓄電部7aは、鉛蓄電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池あるいはコンデンサなど繰り返し充放電のできるものから成る。 【0031】 充電部20は、太陽電池パネルアレイ2が出力する直流電力で蓄電部7aを充電するように構成される。そして、遮断スイッチ部9aが閉状態で太陽電池パネルアレイ2の発電電力が電力変換部6を介して系統10へ出力されている間、発電電力の一部を取り出して蓄電部7aを充電する。この間、接続部9bは開状態で、電圧変換部8も停止させて蓄電部7aから電圧変換部8への入力を遮断している。 【0032】 太陽電池パネルアレイ2の発電電力が低下すると、遮断スイッチ部9aを開状態にして太陽電池パネルアレイ2と電力変換部6との接続を遮断分離し、続いて接続部9bを閉状態にして蓄電部7aの電圧変換部8を介した直流電圧を太陽電池パネルアレイ2の負電極2bへ接続する。電圧変換部8は蓄電部7aの直流電圧を所望の正電圧であるバイアス電圧に変換して、太陽電池パネルアレイ2の負電極2bを接地電位に対して正電位にする。 【0033】 この実施の形態2では、太陽電池パネルアレイ2の対地電圧の増大を抑えてガラス基板11中の物質の拡散による悪影響を抑制でき、上記実施の形態1と同様の効果が得られる。また、太陽電池パネルアレイ2の発電電力を利用して蓄電部7aを充電することにより、太陽電池パネルアレイ2の負電極2bに印加するバイアス電圧の為の電力を確保でき、外部から電力供給することなく繰り返し蓄電部7aを充電して使用できる。」 D 「 図1」 E 「 図5」 (2)引用発明 ア 上記記載事項Aの下線部の記載から、引用例1には、“太陽電池パネルアレイ2をアルミなど金属のフレーム3に収納して備え、DC/DCコンバータ4およびインバータ5を有して太陽電池パネルアレイ2が出力する直流電力を交流電力に変換する電力変換部6と、直流電圧を出力する直流電源と、昇圧コンバータまたは昇降圧コンバータから成り、直流電源の出力電圧を所望の電圧に変換する電圧変換部8と、切替回路部9とを備える太陽電池発電装置”(【0014】)、“切替回路部9は、太陽電池パネルアレイ2の正負電極2a、2bに接続され、太陽電池パネルアレイ2と電力変換部6との接続を遮断する遮断スイッチ部9aと、電圧変換部8の出力を太陽電池パネルアレイ2の負電極2bに接続する接続部9bとで構成され、遮断スイッチ部9aは、太陽電池パネルアレイ2と系統(系統電源)10との接続状態(接続/遮断)を切り替え、接続部9bは電圧変換部8の出力を負電極2bに接続する状態(接続/遮断)を切り替え”ること(【0015】)、及び、“太陽電池パネルアレイ2の金属フレーム3は対地に接地され”ること(【0016】)が記載されているといえる。 イ 上記記載事項Bの下線部の記載から、引用例1には、“電力変換部6において、DC/DCコンバータ4は、太陽電池パネルアレイ2が発電した直流電圧をインバータ5の入力に適した電圧に変換し、インバータ5は所望の交流電圧に変換して系統10に接続”すること(【0017】)、“切替回路部9は制御部にて制御され、遮断スイッチ部9aあるいはDC/DCコンバータ4にて太陽電池パネルアレイ2からの電圧を計測し、計測値に基づいて制御部は発電電力の低下を検出して遮断スイッチ9aおよび接続部9bを制御”すること(【0018】)、及び、“夜間もしくは天候により太陽電池パネルアレイ2の発電電力が、予め設定された所定電力量より低下すると、遮断スイッチ部9aを開状態にして太陽電池パネルアレイ2とDC/DCコンバータ4との接続を遮断分離し、電圧変換部8は直流電源の直流電圧を太陽電池パネルアレイ2の負電極2bに印加するバイアス電圧に変換し、接地電位に対して正のバイアス電圧が太陽電池パネルアレイ2の負電極2bに印加され”ること(【0019】)が記載されているといえる。 ウ 上記記載事項Cの「この発明の実施の形態2による太陽電池発電装置を図5に基づいて説明する…中略…直流電源としての蓄電部7aと蓄電部7aを充電する充電回路としての充電部20とを備え…中略…その他の構成は上記実施の形態1と同様である」(【0030】)との記載、上記記載事項Aの「1次電池または燃料電池などから成り直流電圧を出力する直流電源7」(【0014】)、並びに、上記記載事項D(図1)及び上記記載事項E(図5)から、引用例1には、“直流電源としての蓄電部7aと蓄電部7aを充電する充電回路としての充電部20とを備え”ることが記載されているといえる。 エ 上記記載事項Cの下線部から、引用例1には、“充電部20は、太陽電池パネルアレイ2が出力する直流電力で蓄電部7aを充電するように構成され、遮断スイッチ部9aが閉状態で太陽電池パネルアレイ2の発電電力が電力変換部6を介して系統10へ出力されている間、発電電力の一部を取り出して蓄電部7aを充電”(【0031】)すること、“太陽電池パネルアレイ2の発電電力が低下すると、遮断スイッチ部9aを開状態にして太陽電池パネルアレイ2と電力変換部6との接続を遮断分離し、続いて接続部9bを閉状態にして蓄電部7aの電圧変換部8を介した直流電圧を太陽電池パネルアレイ2の負電極2bへ接続”すること(【0032】)、及び、“太陽電池パネルアレイ2の発電電力を利用して蓄電部7aを充電することにより、太陽電池パネルアレイ2の負電極2bに印加するバイアス電圧の為の電力を確保でき、外部から電力供給することなく繰り返し蓄電部7aを充電して使用できる”こと(【0033】)が記載されているといえる。 オ 以上、上記ア〜エより、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。 「太陽電池パネルアレイ2をアルミなど金属のフレーム3に収納して備え、DC/DCコンバータ4およびインバータ5を有して太陽電池パネルアレイ2が出力する直流電力を交流電力に変換する電力変換部6と、直流電圧を出力する直流電源と、昇圧コンバータまたは昇降圧コンバータから成り、直流電源の出力電圧を所望の電圧に変換する電圧変換部8と、切替回路部9とを備える太陽電池発電装置であって、 切替回路部9は、太陽電池パネルアレイ2の正負電極2a、2bに接続され、太陽電池パネルアレイ2と電力変換部6との接続を遮断する遮断スイッチ部9aと、電圧変換部8の出力を太陽電池パネルアレイ2の負電極2bに接続する接続部9bとで構成され、遮断スイッチ部9aは、太陽電池パネルアレイ2と系統(系統電源)10との接続状態(接続/遮断)を切り替え、接続部9bは電圧変換部8の出力を負電極2bに接続する状態(接続/遮断)を切り替え、 太陽電池パネルアレイ2の金属フレーム3は対地に接地され、 電力変換部6において、DC/DCコンバータ4は、太陽電池パネルアレイ2が発電した直流電圧をインバータ5の入力に適した電圧に変換し、インバータ5は所望の交流電圧に変換して系統10に接続され、 切替回路部9は制御部にて制御され、遮断スイッチ部9aあるいはDC/DCコンバータ4にて太陽電池パネルアレイ2からの電圧を計測し、計測値に基づいて制御部は発電電力の低下を検出して遮断スイッチ9aおよび接続部9bを制御し、 夜間もしくは天候により太陽電池パネルアレイ2の発電電力が、予め設定された所定電力量より低下すると、遮断スイッチ部9aを開状態にして太陽電池パネルアレイ2とDC/DCコンバータ4との接続を遮断分離し、電圧変換部8は直流電源の直流電圧を太陽電池パネルアレイ2の負電極2bに印加するバイアス電圧に変換し、接地電位に対して正のバイアス電圧が太陽電池パネルアレイ2の負電極2bに印加され、 直流電源としての蓄電部7aと蓄電部7aを充電する充電回路としての充電部20とを備え、 充電部20は、太陽電池パネルアレイ2が出力する直流電力で蓄電部7aを充電するように構成され、遮断スイッチ部9aが閉状態で太陽電池パネルアレイ2の発電電力が電力変換部6を介して系統10へ出力されている間、発電電力の一部を取り出して蓄電部7aを充電し、 太陽電池パネルアレイ2の発電電力が低下すると、遮断スイッチ部9aを開状態にして太陽電池パネルアレイ2と電力変換部6との接続を遮断分離し、続いて接続部9bを閉状態にして蓄電部7aの電圧変換部8を介した直流電圧を太陽電池パネルアレイ2の負電極2bへ接続し、 太陽電池パネルアレイ2の発電電力を利用して蓄電部7aを充電することにより、太陽電池パネルアレイ2の負電極2bに印加するバイアス電圧の為の電力を確保でき、外部から電力供給することなく繰り返し蓄電部7aを充電して使用できる 太陽電池発電装置。」 2 引用例2に記載された事項 原査定の拒絶の理由において引用した、本願の出願前に既に公知である、特開2008−54473号公報(平成20年3月6日公開。以下、これを「引用例2」という。)には、関連する図面と共に、次の事項が記載されている。 F 「【0009】 図1はこの発明による実施の形態を示すパワーコンディショナの概略構成図である。 直流電源1は、例えば、発電機あるいは風力発電機の交流出力を整流して得た直流電力や、太陽電池または燃料電池等により発生する直流電力を用いることができる。本実施の形態では太陽電池を用いることとする。蓄電手段2は、例えば、二次電池、電気二重層キャパシタあるいは超電導電力貯蔵等の直流電力貯蔵手段を用いることができるが、本実施の形態では二次電池を用いることとする。 一般住宅では、商用電力系統4に家庭内負荷11が接続され、直流電源1および蓄電手段2からパワーコンディショナ3を経由し、スイッチS1を介して出力された交流電力のうち、家庭内負荷11で消費されない余剰電力分が、商用電力系統4側に逆潮流される。 【0010】 上記パワーコンディショナ3は、主としてDC−DCコンバータ8、インバータ回路10、充放電回路5を備えて構成される。直流電源1の直流電力は、DC−DCコンバータ8によって昇圧され、インバータ回路10により、直流母線9の直流電力を商用周波数の交流電力に変換して、例えば単相200Vの商用電力系統4に出力する。蓄電手段2は充放電回路5によって充電または放電され、DC−DCコンバータ8と充放電回路5が接続された直流母線9に接続される。 商用電力系統4が停電した際に、パワーコンディショナ3が商用電力系統4とは独立した非常用電源として動作する自立運転モードの実現のために、スイッチS2を介して自立運転出力12をインバータ回路10の出力端子として備えていることが望ましい。 【0011】 DC−DCコンバータ8は、100〜300Vの太陽電池の直流電圧を約350Vまで昇圧する電圧変換回路である。該DC−DCコンバータとしては、例えば、図2(a)に示す昇圧チョッパまたは図2(b)に示す電流共振型絶縁コンバータなどの既知の回路が適用できる。 図2(a)に示すように、昇圧チョッパは、スイッチ素子16が約20kHzでPWM(パルス幅変調)駆動され、入力側よりも高い直流電圧を得ることができる一般的な回路である。 図2(b)の電流共振形絶縁コンバータは、メインスイッチ素子17aと補助スイッチ素子17bが交互にオンオフして、後段の高周波トランス18を駆動する。高周波トランス18は漏れインダクタンスを有するリーケージトランスよりなり、巻数比は1.5〜2倍の範囲としている。トランスの漏れインダクタンス成分と共振用コンデンサ19との電流共振を利用して、メインスイッチ素子17aおよび補助スイッチ素子17bのソフトスイッチングが達成される。スイッチ素子17aおよび17bは、15kHz〜70kHzの範囲で駆動周波数が可変するPFM(パルス周波数変調)方式で交互に駆動される。また、高周波トランス18の2次側には倍電圧整流回路20を備えているので、高周波トランス18で昇圧された二次巻線電圧のさらに2倍の電圧でコンデンサ21が充電され、約350Vの直流電圧に変換される。」 G 「 図1」 H 「 図2」 3 引用例3に記載された事項 原査定の拒絶の理由において引用した、本願の出願前に既に公知である、特開2008−301585号公報(平成20年12月11日公開。以下、これを「引用例3」という。)には、関連する図面と共に、次の事項が記載されている。 I 「【0020】 図1に示す本発明の第一実施形態に係る空気調和機は、室内機、室外機分離式インバータ型空気調和機であって、電源リレーMRY1及び端子板2を有する室内機100と、端子板3、ノイズフィルタ回路4A、全波整流回路5、平滑コンデンサC5、インバータ回路6、圧縮機7、スイッチング電源回路8、及びマイコン9を有する室外機201とによって構成されている。端子板2及び3のN端子同士、端子板2及び3のL端子同士はそれぞれ配線によって接続されている。」 J 「 図1」 4 引用例4に記載された事項 原査定の拒絶の理由において引用した、本願の出願前に既に公知である、特開2011−229220号公報(平成23年11月10日公開。以下、これを「引用例4」という。)には、関連する図面と共に、次の事項が記載されている。 K 「【0018】 以下、図面を参照しながら本実施形態の電源装置について説明する。図1に示すように、電動車両200に搭載される本実施形態の電源装置100は、第1の蓄電装置である充放電可能な二次電池18と、二次電池18の電力を昇圧してインバータ12に供給する第1の電圧変換器である昇圧コンバータ30と、昇圧コンバータ30とインバータ12のプラス側を接続する高圧電路である高圧側入出力線45と、マイナス側を接続する第1の基準電路である基準入出力線46と、高圧側入出力線45と基準入出力線46との間に接続される高圧コンデンサ13と、高圧コンデンサ13に昇圧コンバータ30と並列に接続される第2の電圧変換器である電圧変換器20と、電圧変換器20に接続される第2の蓄電装置であるキャパシタ19と、キャパシタ19に接続される太陽光発電装置である太陽電池70とを備えている。インバータ12には車両駆動用のモータジェネレータ11が接続されている。 【0019】 二次電池18のプラス側入出力線48は昇圧コンバータ30低圧側の低圧側入出力線47に接続され、二次電池18のマイナス側入出力線49は昇圧コンバータ、インバータ12の基準入出力線46に接続されている。また、二次電池18の入出力線48,49には二次電池18と昇圧コンバータ30とを遮断するシステムメインリレー17が設けられている。また、二次電池18のプラス側入出力線48には充電抵抗16が直列に挿入された充電抵抗ラインリレー15が設けられている。昇圧コンバータ30の低圧側入出力線47と基準入出力線46との間には低圧コンデンサ14が設けられている。 【0020】 昇圧コンバータ30は、上アームスイッチング素子31と、上アームスイッチング素子31と逆並列に接続された上アームダイオード32と、上アームスイッチング素子31と直列に接続された下アームスイッチング素子33と、下アームスイッチング素子33と逆並列に接続された下アームダイオード34と、上アームスイッチング素子31と下アームスイッチング素子33との間に接続された低圧側入出力線47と、低圧側入出力線47の中に設けられたリアクトル35と、上アームスイッチング素子31の低圧側入出力線47と反対側に接続される高圧側入出力線45とを含み、下アームスイッチング素子33は基準入出力線46に接続されている。昇圧コンバータ30の高圧側入出力線45と基準入出力線46とはそれぞれ、インバータ12のプラス側端、マイナス側端にそれぞれ接続されている。 【0021】 高圧コンデンサ13とインバータ12との間の昇圧コンバータ30の高圧側入出力線45には、スイッチング素子77が直列に挿入されており、スイッチング素子77には逆並列にダイオード78が接続されている。 【0022】 電圧変換器20は、二次側上アームスイッチング素子21と、二次側上アームスイッチング素子21と逆並列に接続された二次側上アームダイオード22と、二次側上アームスイッチング素子21と直列に接続された二次側下アームスイッチング素子23と、二次側下アームスイッチング素子23と逆並列に接続された二次側下アームダイオード24と、一次側上アームスイッチング素子26と、一次側上アームスイッチング素子26と逆並列に接続された一次側上アームダイオード27と、一次側上アームスイッチング素子26と直列に接続された一次側下アームスイッチング素子28と、一次側下アームスイッチング素子28と逆並列に接続された一次側下アームダイオード29と、二次側上アームスイッチング素子21と二次側下アームスイッチング素子23との間と一次側上アームスイッチング素子26と一次側下アームスイッチング素子28との間の接続線53aに接続されたリアクトル25と、二次側上アームスイッチング素子21の一端に接続された二次側入出力線51と、一次側上アームスイッチング素子26の一端に接続された一次側入出力線53と、各下アームスイッチング素子23,28の接続線53aと反対側に接続される基準入出力線52とを含んでいる。電圧変換器20の一次側入出力線53と基準入出力線52の一次側はそれぞれキャパシタ19のプラス側入出力線54、マイナス側入出力線55にそれぞれ接続されている。また、電圧変換器20の二次側入出力線51と基準入出力線52の二次側はそれぞれ接続点43,44に接続され、二次側入出力線51は昇圧コンバータ30、インバータ12の高圧側入出力線45に電気的に接続され、電圧変換器20の基準入出力線52の二次側は昇圧コンバータ30、インバータ12の基準入出力線46に接続されている。このため、電圧変換器20は高圧側入出力線45と基準入出力線46とを介して高圧コンデンサ13に昇圧コンバータ30と並列に接続されている。 【0023】 キャパシタ19のプラス側入出力線54にはプラス側充電線56が接続され、キャパシタ19のマイナス側入出力線55にはマイナス側充電線57が接続されている。プラス側充電線56にはプラス側充電線56を入り切りする太陽電池入力スイッチ60が設けられている。また、太陽電池入力スイッチ60とマイナス側充電線57の各一端には、太陽電池70のプラス側出力線71、マイナス側出力線72が接続される端子73,74が設けられている。」 L 「 図1」 第6 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「アルミなど金属のフレーム3に収納」される「太陽電池パネルアレイ2」は、「切替回路部9」に接続される「正負電極2a、2b」を有し、「電圧変換部8」が「直流電源の直流電圧を太陽電池パネルアレイ2の負電極2bに印加するバイアス電圧に変換し、接地電位に対して正のバイアス電圧が太陽電池パネルアレイ2の負電極2bに印加」するとともに、「太陽電池パネルアレイ2の金属フレーム3は対地に接地され」ることから、本願発明1の「フレームが接地している両面電極型太陽電池モジュール」に相当する。 イ 引用発明の「直流電源としての蓄電部7a」及び「系統10」は、それぞれ本願発明1の「電力の蓄電および放電を行う蓄電装置」及び「外部の系統電力網」に相当する。 引用発明の「DC/DCコンバータ4およびインバータ5を有して太陽電池パネルアレイ2が出力する直流電力を交流電力に変換する電力変換部6」は、「系統10に接続され」るとともに、「電力変換部6において、DC/DCコンバータ4は、太陽電池パネルアレイ2が発電した直流電圧をインバータ5の入力に適した電圧に変換し、インバータ5は所望の交流電圧に変換」することから、引用発明の「太陽電池パネルアレイ2をアルミなど金属のフレーム3に収納して備え、DC/DCコンバータ4およびインバータ5を有して太陽電池パネルアレイ2が出力する直流電力を交流電力に変換する電力変換部6と、直流電圧を出力する直流電源と、昇圧コンバータまたは昇降圧コンバータから成り、直流電源の出力電圧を所望の電圧に変換する電圧変換部8と、切替回路部9とを備える太陽電池発電装置」は、上記アの認定も踏まえれば、本願発明1の「フレームが接地している両面電極型太陽電池モジュール、電力の蓄電および放電を行う蓄電装置、および外部の系統電力網に接続され、当該太陽電池モジュールを含む太陽光発電システム」に相当する。 ウ 引用発明の「切替回路部9」は、「太陽電池パネルアレイ2の正負電極2a、2bに接続され、太陽電池パネルアレイ2と電力変換部6との接続を遮断」するとともに、「制御部にて制御され」るものであり、「太陽電池パネルアレイ2からの電圧を計測し、計測値に基づいて制御部は発電電力の低下を検出して遮断スイッチ9aおよび接続部9bを制御」するところ、当該「制御部」が、引用発明の「太陽電池発電装置」における電力の入出力を制御しているといえ、上記イの認定を踏まえると、引用発明と本願発明1とは、“フレームが接地している両面電極型太陽電池モジュール、電力の蓄電および放電を行う蓄電装置、および外部の系統電力網に接続され、当該太陽電池モジュールを含む太陽光発電システムにおける電力の入出力を制御する電力制御装置であ”る点で一致するといえる。 エ 引用発明の「電圧変換部8」は、「直流電源としての蓄電部7a」の「直流電圧を太陽電池パネルアレイ2の負電極2bに印加するバイアス電圧に変換」するところ、本願発明1の「前記蓄電装置の出力電圧を入力とする双方向DC/DCコンバータ」とは、下記の点(相違点1)で相違するものの、“前記蓄電装置の出力電圧を入力とするDC/DCコンバータ”である点で一致する。 オ 引用発明の「DC/DCコンバータ4」は、「太陽電池パネルアレイ2が発電した直流電圧をインバータ5の入力に適した電圧に変換」するものであるところ、本願発明1の「前記太陽電池モジュールの出力電圧を入力とする非絶縁型の昇圧回路」とは、下記の点(相違点2)で相違するものの、“前記太陽電池モジュールの出力電圧を入力とする昇圧回路”である点で一致する。 カ 引用発明の「インバータ5」は、下記の点(相違点3)で相違するものの、本願発明1の「双方向インバータ回路」と、“インバータ回路”である点で一致するといえるから、上記エ及びオの認定を踏まえれば、引用発明と本願発明1とは、“前記蓄電装置の出力電圧を入力とするDC/DCコンバータと、前記太陽電池モジュールの出力電圧を入力とする昇圧回路と、インバータ回路と、を備えて”いる点で一致する。 キ 引用発明は、「太陽電池パネルアレイ2の発電電力が低下すると、遮断スイッチ部9aを開状態にして太陽電池パネルアレイ2と電力変換部6との接続を遮断分離」するものであるところ、当該「電力変換部6」には「DC/DCコンバータ4」が含まれるから、引用発明の「太陽電池パネルアレイ2と電力変換部6との接続を遮断分離」は、上記オの認定を踏まえると、本願発明1の「太陽電池モジュールと前記昇圧回路との接続を切断」に相当するといえ、引用発明と本願発明1とは、“前記太陽電池モジュールにおける起電圧が所定の電圧を下回る場合、当該太陽電池モジュールと前記昇圧回路との接続を切断するための制御信号を生成する”点で一致する。 ク 以上、ア〜キの検討から、引用発明と本願発明1とは、次の一致点及び相違点を有する。 〈一致点〉 フレームが接地している両面電極型太陽電池モジュール、電力の蓄電および放電を行う蓄電装置、および外部の系統電力網に接続され、当該太陽電池モジュールを含む太陽光発電システムにおける電力の入出力を制御する電力制御装置であって、 前記蓄電装置の出力電圧を入力とするDC/DCコンバータと、前記太陽電池モジュールの出力電圧を入力とする昇圧回路と、インバータ回路と、を備えており、 前記太陽電池モジュールにおける起電圧が所定の電圧を下回る場合、当該太陽電池モジュールと前記昇圧回路との接続を切断するための制御信号を生成することを特徴とする電力制御装置。 〈相違点1〉 本願発明1の「DC/DCコンバータ」が、「双方向DC/DCコンバータ」であるのに対し、引用発明の「電圧変換部8」がどのようなものであるか特定されていない点。 〈相違点2〉 本願発明1の「昇圧回路」が「非絶縁型の」ものであるのに対し、引用発明の「DC/DCコンバータ4」がどのようなものであるか特定されていない点。 〈相違点3〉 本願発明1の「インバータ回路」が、「双方向インバータ回路」であるのに対し、引用発明の「インバータ5」がどのようなものであるか特定されていない点。 〈相違点4〉 本願発明1が、「前記昇圧回路および前記双方向DC/DCコンバータの出力端は並列接続され、前記双方向インバータ回路は、並列接続された前記出力端を直流入力として」いるのに対し、引用発明の「電圧変換部8」の出力端と「DC/DCコンバータ4」の出力端とが並列接続されておらず、「電力変換部6」の「インバータ5」は、「DC/DCコンバータ4」によって、「太陽電池パネルアレイ2が発電した直流電圧をインバータ5の入力に適した電圧に変換」されたものを直流入力としている点。 〈相違点5〉 本願発明1が「前記蓄電装置が前記系統電力網との間で、前記双方向インバータ回路から前記双方向DC/DCコンバータを通した蓄電、及び、前記双方向DC/DCコンバータから前記双方向インバータ回路を通した放電のいずれかを行っており、かつ前記太陽電池モジュールにおける起電圧が所定の電圧を下回る場合、当該太陽電池モジュールと前記昇圧回路との接続を切断するための制御信号を生成する」のに対し、引用発明は、「充電部20」が「太陽電池パネルアレイ2が出力する直流電力で蓄電部7aを充電するように構成され」ていて、「蓄電部7a」からは、「系統(系統電源)10」に対して「インバータ5」を介した放電が行われることはない点。 (2)相違点についての判断 事案に鑑み、先に相違点4及び5について先に検討する。 本願発明1は、「蓄電装置」が「系統電力網との間で、前記双方向インバータ回路から前記双方向DC/DCコンバータを通した蓄電、及び、前記双方向DC/DCコンバータから前記双方向インバータ回路を通した放電のいずれかを行」うものである一方、引用発明は、「直流電源としての蓄電部7aと蓄電部7aを充電する充電回路としての充電部20とを備え、」当該「充電部20は、太陽電池パネルアレイ2が出力する直流電力で蓄電部7aを充電するように構成され、遮断スイッチ部9aが閉状態で太陽電池パネルアレイ2の発電電力が電力変換部6を介して系統10へ出力されている間、発電電力の一部を取り出して蓄電部7aを充電」するものであることから、当該「蓄電部7a」には、「太陽電池パネルアレイ2の発電電力」の「一部」が「取り出」されて「充電」されることはあっても、当該「直流電源としての蓄電部7a」から、「系統10」へ放電が行われることはないものである。 加えて、引用発明は、「電圧変換部8は直流電源の直流電圧を太陽電池パネルアレイ2の負電極2bに印加するバイアス電圧に変換し」た上で、「太陽電池パネルアレイ2の発電電力が低下すると、遮断スイッチ部9aを開状態にして太陽電池パネルアレイ2と電力変換部6との接続を遮断分離し、続いて接続部9bを閉状態にして蓄電部7aの電圧変換部8を介した直流電圧を太陽電池パネルアレイ2の負電極2bへ接続」するに過ぎず、また、「太陽電池パネルアレイ2の発電電力を利用して蓄電部7aを充電することにより、太陽電池パネルアレイ2の負電極2bに印加するバイアス電圧の為の電力を確保でき、外部から電力供給することなく繰り返し蓄電部7aを充電して使用できる」ものであるから、引用発明の「電圧変換部8」(本願発明1の「双方向DC/DCコンバータ」に対応(上記(1)エ参照)。)の出力端と「DC/DCコンバータ4」(本願発明1の「昇圧回路」に対応(上記(1)オ参照)。)の出力端を並列接続する動機付けとなるものを引用発明に見いだすことはできず、したがって、当業者といえども、引用発明において、「DC/DCコンバータ4」および「電圧変換部8」の出力端を並列接続して、前記出力端を「インバータ5」の直流入力とするとともに、「蓄電装置7a」と「系統10」との間で、蓄電、及び、放電のいずれかを行うよう構成することが容易であったとまではいうことができない。 そして、上記相違点4及び5に係る構成は、その他引用例2〜4にも記載がなく、また当該技術分野における周知技術ともいえないことから、上記その余の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明、及び引用例2〜4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 2 本願発明2〜5について 本願発明2〜5は、本願発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、及び引用例2〜4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 第7 原査定について <特許法第29条第2項について> 本件補正により、本願発明1〜5は上記第4に示すとおりのものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1〜4(上記引用例1〜4)に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。 第8 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2022-08-18 |
出願番号 | P2018-004966 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H02M)
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最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
篠原 功一 |
特許庁審判官 |
児玉 崇晶 山崎 慎一 |
発明の名称 | 電力制御装置、太陽光発電システム、およびプログラム |
代理人 | 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK |