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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06Q
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G06Q
管理番号 1388280
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-01-27 
確定日 2022-09-15 
事件の表示 特願2021− 9507「情報処理装置、プログラム、および情報処理方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 8月 4日出願公開、特開2022−113337、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、令和3年1月25日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和3年 6月11日 拒絶理由通知(起案日)
同年 8月13日 意見書、手続補正書の提出
同年10月26日 拒絶査定(原査定)(起案日)
令和4年 1月27日 審判請求書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和3年10月26日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1〜5、7及び8に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。
また、本願請求項1〜8に係る発明は、以下の引用文献1、2に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特開2020−47187号公報
引用文献2:特開2011−209890号公報

第3 審判請求時の補正について
令和4年1月27日に提出された手続補正書における手続補正(以下「本件補正」という。)は、補正前の請求項1の発明特定事項である「表示部」について「前記設定の受け付けの事前に前記登録が受け付けられた前記収支情報に基づき」との事項を付加するものであり、特許法第17条の2第3項及び同4項に違反するものではなく、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、当該事項は、当初明細書等に記載された事項であり、新規事項を追加するものではない。
そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1〜8に係る発明は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定される独立特許要件を満たすものである。

第4 本願発明
本願請求項1〜8に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」〜「本願発明8」という。)は、令和4年1月27日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1〜8に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
ユーザのユーザ端末から、対象者の生涯収支に関する収支情報の登録を受け付ける登録受付部と、
前記収支情報に基づいて、前記生涯収支を算出する算出部と、
前記ユーザ端末から、前記生涯収支を変動させる複数の変動要因の設定を受け付ける設定受付部であって、前記複数の変動要因それぞれに対して前記生涯収支の推移の図表に反映させるか否かの設定を受け付ける設定受付部と、
前記ユーザ端末に、前記設定の受け付けの事前に前記登録が受け付けられた前記収支情報に基づき前記算出部により算出された前記生涯収支の推移を図表で表示させる表示部であって、前記設定受付部が受け付けた前記複数の変動要因の設定に応じて、前記図表の表示を、前記複数の変動要因それぞれについて反映された状態の表示と反映されていない状態の表示とで切り替える表示部と、を備える、
情報処理装置。
【請求項2】
前記変動要因は、前記対象者における家族構成の変化、または収支に関するリスクの発生の少なくともいずれかを含む、
請求項1の情報処理装置。
【請求項3】
前記登録受付部は、前記対象者に関するライフイベントを示すライフイベント情報の登録を受け付け、
前記表示部は、前記ライフイベント情報にさらに基づいて、前記ユーザ端末に、前記生涯収支の推移の図表と前記ライフイベントの図表とを、時間軸を合わせて並べて表示させる、
請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記ライフイベントは、前記対象者の3親等内の家族のライフイベントを含む、
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記表示部は、前記ユーザ端末に、前記変動要因を前記ユーザが設定操作するため操作部を、前記生涯収支の推移の図表と同時に表示させる、
請求項1から4のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記登録受付部は、前記変動要因の発生に対して適用可能な保険に関する保険情報の登録を受け付け、
前記表示部は、前記保険情報にさらに基づいて、前記ユーザ端末に、前記生涯収支の推移を図表で表示させる、
請求項1から5のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
コンピュータに、
ユーザのユーザ端末から、対象者の生涯収支に関する収支情報の登録を受け付ける登録受付機能と、
前記収支情報に基づいて、前記生涯収支を算出する算出機能と、
前記ユーザ端末から、前記生涯収支を変動させる複数の変動要因の設定を受け付ける設定受付機能であって、前記複数の変動要因それぞれに対して前記生涯収支の推移の図表に反映させるか否かの設定を受け付ける設定受付機能と、
前記ユーザ端末に、前記設定の受け付けの事前に前記登録が受け付けられた前記収支情報に基づき前記算出機能により算出された前記生涯収支の推移を図表で表示させる表示部であって、前記設定受付機能が受け付けた前記複数の変動要因の設定に応じて、前記複数の変動要因それぞれについて反映された状態の表示と反映されていない状態の表示とで切り替える表示機能と、を実現させる、
プログラム。
【請求項8】
コンピュータが、
ユーザのユーザ端末から、対象者の生涯収支に関する収支情報の登録を受け付け、
前記収支情報に基づいて、前記生涯収支を算出し、
前記ユーザ端末に、前記算出された前記生涯収支の推移を図表で表示させ、
前記ユーザ端末から、前記生涯収支を変動させる複数の変動要因それぞれに対して前記生涯収支の推移の図表に反映させるか否かの設定を受け付け、
前記複数の変動要因の設定に応じて、前記設定の受け付けの事前に前記登録が受け付けられた前記収支情報に基づき算出された前記生涯収支の推移の図表の表示を、前記複数の変動要因それぞれについて反映された状態の表示と反映されていない状態の表示とで切り替える、
情報処理方法。」

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1) 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2020−47187号公報)には、以下のア〜ケの記載がある。下線は、当審において付与した。
ア 「【0025】
図1は、一実施形態に係るシミュレーションシステムの概要を示す機能ブロック図である。シミュレーションシステム1は、シミュレーションサーバ2(シミュレーション装置の一例)と、シミュレーションを行う為の情報を記憶するデータベースDBと、ユーザが操作し、シミュレーションの要求等に利用される1又は複数のユーザ端末3(3A、3B)と、を備えている。シミュレーションサーバ2及びユーザ端末3は、ネットワークNWを介して通信可能である。・・・
【0028】
図1の説明に戻る。シミュレーションサーバ2は、受付手段4と、表示手段5と、配置手段6と、算出手段7と、提案手段8と、を備えている。」

イ 「【0030】
受付手段4は、シミュレーションを実施するためのユーザ情報の入力を受け付ける。本実施形態では、受付手段4は、ユーザ端末3を介して、ユーザ情報の入力を受け付ける。」

ウ 「【0031】
表示手段5は、シミュレーション画面を表示処理し、ユーザ端末に対して送信可能にする。本実施形態では、表示手段5は、シミュレーション画面に加え、ユーザ情報の入力画面を表示処理する。ユーザ情報は、入力画面に含まれるチェックボックスやテキストボックス等を介して入力される情報と共に、シミュレーション画面に含まれるイベントオブジェクトをグラフ表示に配置することで入力される情報を含む。ユーザ情報は、例えば、資産残高のシミュレーションに用いられるパラメータを含む。ユーザ情報は、必須の項目並びに任意の項目を含んでいてよく、本実施形態では、必須の項目がすべて入力されることで、ライフプランのシミュレーションが実施される。」

エ 「【0034】
図4は、シミュレーション画面の画面表示例である。シミュレーション画面W2は、グラフ表示W21と、入力画面表示部W22と、イベントボックスW23と、イベント一覧表示W24と、シミュレーションを実行するボタンW25と、を備えている。
【0035】
グラフ表示W21では、時間軸並びに資産軸が定義されている。ユーザ情報が入力されることで、グラフ表示W21には、後述する収入グラフW21A及び支出グラフW21B(図5A参照)が、資産軸を基端として相対する方向に延びて表示され、併せて資産グラフW21Cが表示される。ユーザがユーザ情報の所定の項目(例えば、年収や年金額、居住住宅の維持費用など)を入力することで、収入グラフW21A及び支出グラフW21Bが表示、更新される。ユーザ情報が入力されることにより、グラフの値に加えて、グラフ表示に含まれる他の内容が変更又は更新され、表示処理されるように構成されても構わない。例えば、入力された収入に関するユーザ情報に応じて、資産軸の幅を変化させてもよい。
【0036】
グラフ表示W21の時間軸は、図示例ではユーザの年齢を値としてとっており、ユーザが入力画面W1で入力した「現在の年齢」を始点とする。年齢に替えて、又は加えて、例えば西暦や和暦等を値として、時間軸をとってもよい。入力画面表示部W22を選択すると、所定のユーザ情報を入力するための入力画面が表示される。受付手段4は、入力画面を介して入力されたユーザ情報を受け付ける。
【0037】
イベントボックスW23には、複数のイベントオブジェクトOB(図示例では、OB1〜OB6)が配置されており、ユーザは、配置手段6を介してイベントオブジェクトOBをグラフ表示W21に配置する。また、ユーザが入力画面から所定のユーザ情報を入力すると、新たなイベントオブジェクトOBが追加される構成としても構わない。例えば、入力画面において表示された「子供の有無」という質問に対して、「将来ほしい」とするユーザ情報の入力が受け付けられた場合、「出産」のイベントオブジェクトが新たに追加されてもよい。なお、イベントオブジェクトの追加は、イベントボックスW23等のグラフ表示W21以外の領域で行われてもよい。また、グラフ表示W21上にイベントオブジェクトが追加されてもよい。」

オ 「【0040】
配置手段6は、シミュレーション画面W2において、ユーザ端末3からの操作入力に基づいて、グラフ表示W21に対するイベントオブジェクトOBの配置処理を受け付ける。受付手段4は、配置処理によりグラフ表示W21に配置されたイベントオブジェクトOBの種別及び時間軸における位置に基づいて、ユーザ情報の一部の入力を受け付ける。例えば、イベントオブジェクトOB4(「退職金」に関するイベントオブジェクトOB)をグラフ表示W21に配置(例えばいわゆるドラッグ&ドロップ)することで、退職金の受け取り時期(本例では時間軸で適宜される「年齢」)について、受付手段4はユーザ情報の入力を受け付けることができる。」

カ 「【0047】
また、図5Aは、ユーザがグラフ表示W21にイベントオブジェクトOBを配置する際の画面表示例である。ユーザは、ユーザ端末3の入力部(マウスやタッチパネル等)を介して配置を所望するイベントオブジェクトOBを選択し、グラフ表示W21まで移動させて所望の位置に配置する。また、入力されたユーザ情報に基づいて、収入グラフW21A、支出グラフW21B及び資産グラフW21Cが表示、更新される。
【0048】
図5Bは、イベントオブジェクト配置と共に、ユーザがユーザ情報の入力を行う為の入力画面の画面表示例である。一部又は全部のイベントオブジェクトについては、シミュレーションサーバ2は、その配置と共に、ユーザ情報の入力画面を表示させ、当該イベントオブジェクトに関連したユーザ情報の入力を可能としている。本実施形態では、ユーザがイベントオブジェクトOBを配置し、当該イベントオブジェクトを選択(例えば、マウス操作によるクリックや、タッチパネルに対するタップ等の操作)した後に、当該イベントオブジェクトOBに関する追加のユーザ情報を入力するための入力画面が表示される。
【0049】
なお、ユーザ情報の入力画面の表示タイミングは、イベントオブジェクトの配置後に限られない。ユーザ情報の入力画面の表示タイミングは、イベントオブジェクトの配置前であってもよい。また、ユーザがイベントオブジェクトを選択する動作に起因して、シミュレーションサーバ2は、当該イベントオブジェクトに関連するユーザ情報の入力画面を表示させ、入力を受け付けてもよい。」

キ 「【0052】
算出手段7は、入力されたユーザ情報に基づいて、算出処理を実行する。本実施形態では、算出手段7は、入力画面での入力又はイベントオブジェクトOBの配置により入力されたユーザ情報を用いて、グラフ表示における収入グラフ、支出グラフ及び資産グラフに関する表示内容の算出処理を行う。表示手段5は、算出処理された表示内容に基づいて、シミュレーション画面におけるグラフ表示をリアルタイムで更新する表示処理を行う。」

ク 「【0056】
図8A〜図8Dは、「労働収入」の入力画面表示部W22を選択すると表示される労働収入に関するユーザ情報の入力画面W5の画面表示例である。図8Aに示すように、ユーザは入力部W51を介して、個人事業主・会社員・公務員を選択することができる。
【0057】
個人事業主を選択した場合には、図8Bに示すように入力部W52が表示され、会社員を選択した場合には、図8Cに示すように入力部W53が表示され、公務員を選択した場合には、図8Dに示すように入力部W54が表示さる。ユーザは、入力部W52〜W54の何れかを介して、労働収入に関するユーザ情報を入力する。・・・
【0058】
図9Aは、「資産運用」の入力画面表示部W22を選択すると表示される資産運用に関するユーザ情報の入力画面W6の画面表示例である。ユーザは入力部W61を介して、資産運用に関するユーザ情報を入力する。・・・
【0059】
図9Bは、「生活」の入力画面表示部W22を選択すると表示される生活に関するユーザ情報の入力画面W7の画面表示例である。ユーザは入力部W71を介して、生活に関するユーザ情報を入力する。
【0060】
図9Cは、「退職後の収入」のイベントオブジェクトOB3を選択すると表示される退職後の収入(年金以外の収入)に関するユーザ情報の入力画面W8の画面表示例である。ユーザは入力部W81を介して、退職後の収入に関するユーザ情報を入力する。
【0061】
図9Dは、「年金」のイベントオブジェクトOB2を選択すると表示される年金に関するユーザ情報の入力画面W9の画面表示例である。ユーザは入力部W91を介して、年金に関するユーザ情報を入力する。・・・
【0062】
図10AからDは、「居住住宅」のイベントオブジェクトOB5を選択すると表示される居住住宅に関するユーザ情報の入力画面W10AからDの画面表示例である。図10Aに示すように、ユーザは入力部W101を介して、一戸建て、マンション所有・賃貸住宅(今後購入予定あり)・賃貸住宅(購入予定なし)・居住費なしを選択することができる。・・・
【0063】
一戸建て、マンション所有を選択した場合には、図10Bに示すように入力部W102が表示され、賃貸住宅(今後購入予定あり)を選択した場合には、図10Dに示すように入力部W103が表示され、賃貸住宅(購入予定なし)を選択した場合には、図10Dに示すように入力部W104が表示される。ユーザは、入力部W102〜W104の何れかを介して、居住住宅に関するユーザ情報を入力する。ユーザは入力部W101を介して、居住費なしを選択した場合には、ユーザ情報の入力部のさらなる表示は行われない。また、図10Bの入力画面は、図示したものの他、「ボーナスによる年間返済額はいくらですか?(年2回の場合、合計金額)」、「残りの返済期間は何年ですか?」、「ローン金利は年何%ですか?」、「ローン残高」等の項目が含まれてもよい。・・・
【0064】
図11は、「老後の生活」のイベントオブジェクトOB6を選択すると表示される老後の生活に関するユーザ情報の入力画面W20の画面表示例である。ユーザは入力部W201を介して、老後の生活に関するユーザ情報を入力する。・・・」

ケ 「【0073】
2.第2実施形態
次いで、本発明の第2実施形態を説明する。この実施形態が上述した第1実施形態と異なる点は、シミュレーションサーバ2が行うシミュレーション画面の生成処理の内容が異なる点である。以下の説明では、上述した第1実施形態と同様の構成要素又は処理については、同じ符号を付してその説明を省略する。
・・・
【0078】
図16は、出力装置306に表示される画面の一例を示す図である。この例で、シミュレーション画面W301は、グラフが表示されるグラフ領域A301と、イベントオブジェクト(画像オブジェクトの一例)が表示されるイベント領域A302と、ライフイベントの一覧が表示される一覧領域A303と、を含む。グラフ領域A301には、ユーザの資産額の時間変化のシミュレーション結果を示すグラフが表示される。グラフ領域A301において、横軸は時間軸であり、縦軸は資産軸である。すなわち、グラフ領域A301には、シミュレーション結果を時間軸及び資産軸で定義される平面上に表したグラフが表示される。
【0079】
イベント領域A302には、1又は複数のイベントオブジェクトOB301〜OB313が表示される。イベントオブジェクトOB301〜OB313はそれぞれ、ライフイベントに対応する画像オブジェクトである。ライフイベントとは、ユーザの人生において発生する又は発生し得るイベント、特に、金銭の収入又は支出を伴うイベントをいう。具体的には、イベントオブジェクトOB301〜OB313はそれぞれ、ユーザの「現在年齢」、「生涯年齢」、「仕事」、「退職」、「世帯主名」、「家族」、「教育」、「資産」、「生活」、「居住住宅」、「老後の生活」、「年金」、「その他の収入」に対応するイベントオブジェクトである。この実施形態では、イベントオブジェクトの位置が変更されたり、イベントオブジェクトがダブルクリック等により選択されたりすることによって、ユーザ情報が入力される。
・・・
【0084】
図18は、本実施形態のシミュレーション処理のフローチャートである。ステップS21において、シミュレーションサーバ2はユーザによる入力を受け付ける。この実施形態では、シミュレーションサーバ2がユーザ端末3からユーザ情報(現在年齢、金融資産額等)を受信することにより、入力が受け付けられる。シミュレーションサーバ2は、ユーザによる入力を受け付けるまで待機し(ステップS21;NO)、ユーザ情報の入力を受け付けた場合(ステップS21;YES)、ステップS22の処理に進む。
【0085】
ステップS22において、シミュレーションサーバ2は、ユーザ情報を用いて得られるユーザの資産額の時間変化をシミュレーションし、シミュレーション結果を取得する。例えば、シミュレーションサーバ2は、イベントオブジェクトの位置を変更する指示を受け付けた場合、変更後の位置に応じてシミュレーションを更新し、更新されたシミュレーション結果を取得する。
・・・
【0088】
なお、「仕事」の入力画面は第1実施形態で示した図8A〜図8Dと同様である。「仕事」のユーザ情報が入力される場合、図8A〜図8Dに例示されるように、シミュレーションサーバ2は、ユーザ情報の入力をするためのウインドウをグラフに重ねて表示させ、このウインドウにおいてユーザ情報を変更する指示を受け付ける。「家族」、「教育」等の他のユーザ情報についても同様であり、各ユーザ情報に対応するイベントオブジェクトが選択されたことを契機として、そのユーザ情報の入力をするためのウインドウがグラフに重ねて表示される。シミュレーションサーバ2は、それらのウインドウにおいてユーザ情報を変更する指示を受け付けた場合、変更されたユーザ情報に応じて再度シミュレーションを行い、更新されたシミュレーション結果を取得する。
・・・
【0096】
図18の説明に戻る。シミュレーションサーバ2は、第1シミュレーション結果及び第2シミュレーション結果のいずれかの選択を受け付けるまで待機する(ステップS27;NO)。シミュレーションサーバ2は、いずれかの選択を受け付けた場合(ステップS27;YES)、ステップS28において、第1シミュレーション結果及び第2シミュレーション結果のうち、選択されなかったシミュレーション結果をグラフから消去した画面を表す画面データを生成し、ユーザ端末3に送信する。ユーザ端末3は、シミュレーションサーバ2から受信されるデータに従ってシミュレーション画面を出力装置206に表示させる。これにより、ユーザ端末3には、第1シミュレーション結果及び第2シミュレーション結果のうち、選択されなかったシミュレーション結果がグラフから消去された画面が表示される。
【0097】
ステップS28の処理を終えると、シミュレーションサーバ2は、ステップS24の処理に戻り、ユーザによる入力を待機する。ユーザにより再度ユーザ情報が入力されると、シミュレーションサーバ2は、ステップS25以降の処理を再度実行し、シミュレーション画面の更新を逐次行う。すなわち、ユーザによりユーザ情報が入力(又は更新)される毎に、更新前のシミュレーション結果と更新後のシミュレーション結果とが重畳して表示されると共に、それらのシミュレーション結果のうちのいずれかをユーザが選択することができる。
【0098】
この実施形態では、ユーザは、直前に入力したユーザ情報が反映されたシミュレーション結果(図20のG305、図21のG307)と、反映される前のシミュレーション結果(図20のG304、図21のG306)との差異を視覚的に把握し易い。更に、ユーザは、直前に入力したユーザ情報を必要に応じて取り消すことができる。このように、ユーザの資産額のシミュレーションを行う際に、ユーザが、ユーザ情報の入力、ユーザ情報の修正(更新)、及びユーザ情報を修正するか否か(更新を確定するか更新前に戻すか)の判断、を行い易い。」

(2) 引用発明の認定
ア 引用文献1から把握できる事項
(ア) 上記(1)アによれば、シミュレーションシステム1は、シミュレーションサーバ2と、データベースDBと、1又は複数のユーザ端末3とを備えており、シミュレーションサーバ2は、受付手段4と、表示手段5と、配置手段6と、算出手段7とを備えている。
(イ) 上記(1)イによれば、受付手段4は、ユーザ端末3を介して、シミュレーションを実施するためのユーザ情報の入力を受け付けるものである。
(ウ) 上記(1)ウによれば、表示手段5は、シミュレーション画面やユーザ情報の入力画面を表示処理し、ユーザ端末に対して送信可能にするものである。
(エ) 上記(1)エによれば、シミュレーション画面W2は、グラフ表示W21と、入力画面表示部W22と、イベントボックスW23と、イベント一覧表示W24と、シミュレーションを実行するボタンW25とを備えている。
そして、入力画面表示部W22を選択すると、所定のユーザ情報を入力するための入力画面が表示され、ユーザ情報が入力されることで、グラフ表示W21には、収入グラフW21A及び支出グラフW21Bが、資産軸を基端として相対する方向に延びて表示される。
また、受付手段4は、入力画面を介して入力されたユーザ情報を受け付ける。
なお、イベントボックスW23には、複数のイベントオブジェクトOBが配置されているところ、ユーザが、配置手段6を介してイベントオブジェクトOBをグラフ表示W21に配置し、また、入力画面において表示された「子供の有無」という質問に対して、「将来ほしい」とするユーザ情報の入力が受け付けられた場合、「出産」のイベントオブジェクトが新たに追加されてもよい。
(オ) 上記(1)オによれば、配置手段6は、シミュレーション画面W2において、ユーザ端末3からの操作入力に基づいて、グラフ表示W21に対するイベントオブジェクトOBの配置処理を受け付けるものである。
そして、例えば、「退職金」に関するイベントオブジェクトOB4をグラフ表示W21にドラッグ&ドロップして配置することで、退職金の受け取り時期について、受付手段4はユーザ情報の入力を受け付けることができる。
(カ) 上記(1)カによれば、ユーザが、ユーザ端末3の入力部を介してイベントオブジェクトOBを選択し、グラフ表示W21まで移動させて所望の位置に配置すると、シミュレーションサーバ2は、その配置と共に、ユーザ情報の入力画面を表示させ、当該イベントオブジェクトに関連したユーザ情報の入力を可能とするものであり、入力されたユーザ情報に基づいて、収入グラフW21A、支出グラフW21B及び資産グラフW21Cが表示、更新される。
なお、ユーザ情報の入力画面の表示タイミングは、イベントオブジェクトの配置後に限られるものではなく、ユーザ情報の入力画面の表示タイミングは、イベントオブジェクトの配置前であってもよい。
(キ) 上記(1)キによれば、算出手段7は、入力画面での入力又はイベントオブジェクトOBの配置により入力されたユーザ情報を用いて、グラフ表示における収入グラフ、支出グラフ及び資産グラフに関する表示内容の算出処理を行うものである。
そして、表示手段5は、算出処理された表示内容に基づいて、シミュレーション画面におけるグラフ表示をリアルタイムで更新する表示処理を行う。
(ク) 上記(1)クによれば、入力されるユーザ情報は、労働収入に関する情報、資産運用に関する情報、生活に関する情報、退職後の収入に関する情報、年金に関する情報、居住住宅に関する情報及び老後の生活に関する情報等である。

イ 引用発明
上記アによれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「シミュレーションサーバ2と、データベースDBと、1又は複数のユーザ端末3からなるシミュレーションシステム1におけるシミュレーションサーバであって、
シミュレーションサーバ2は、受付手段4と、表示手段5と、配置手段6と、算出手段7とを備え、
受付手段4は、ユーザ端末3の入力画面を介して、シミュレーションを実施するためのユーザ情報の入力を受け付けるものであって、ユーザ情報は、労働収入に関する情報、資産運用に関する情報、生活に関する情報、退職後の収入に関する情報、年金に関する情報、居住住宅に関する情報及び老後の生活に関する情報等であり、
表示手段5は、シミュレーション画面やユーザ情報の入力画面を表示処理し、ユーザ端末に対して送信可能にするものであり、シミュレーション画面W2は、グラフ表示W21と、入力画面表示部W22と、イベントボックスW23と、イベント一覧表示W24と、シミュレーションを実行するボタンW25とを備え、
入力画面表示部W22が選択されると、所定のユーザ情報を入力するための入力画面が表示され、ユーザ情報が入力されることで、グラフ表示W21には、収入グラフW21A及び支出グラフW21Bが、資産軸を基端として相対する方向に延びて表示され、
イベントボックスW23には、複数のイベントオブジェクトOBが配置されているところ、ユーザが、配置手段6を介してイベントオブジェクトOBをグラフ表示W21に配置し、また、入力画面において表示された「子供の有無」という質問に対して、「将来ほしい」とするユーザ情報の入力が受け付けられた場合、「出産」のイベントオブジェクトが新たに追加されてもよく、
配置手段6は、シミュレーション画面W2において、ユーザ端末3からの操作入力に基づいて、グラフ表示W21に対するイベントオブジェクトOBの配置処理を受け付けるものであり、例えば、「退職金」に関するイベントオブジェクトOB4をグラフ表示W21にドラッグ&ドロップして配置することで、退職金の受け取り時期について、受付手段4はユーザ情報の入力を受け付けることができ、
ユーザが、ユーザ端末3の入力部を介してイベントオブジェクトOBを選択し、グラフ表示W21まで移動させて所望の位置に配置すると、その配置と共に、ユーザ情報の入力画面を表示させ、当該イベントオブジェクトに関連したユーザ情報の入力を可能とするものであり、入力されたユーザ情報に基づいて、収入グラフW21A、支出グラフW21B及び資産グラフW21Cが表示、更新されるところ、ユーザ情報の入力画面の表示タイミングは、イベントオブジェクトの配置後に限られるものではなく、ユーザ情報の入力画面の表示タイミングは、イベントオブジェクトの配置前であってもよく、
算出手段7は、入力画面での入力又はイベントオブジェクトOBの配置により入力されたユーザ情報を用いて、グラフ表示における収入グラフ、支出グラフ及び資産グラフに関する表示内容の算出処理を行うものであり、表示手段5は、算出処理された表示内容に基づいて、シミュレーション画面におけるグラフ表示をリアルタイムで更新する表示処理を行う、
シミュレーションサーバ2。」

2 引用文献2について
(1) 引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2011−209890号公報)には、以下の記載がある。
「【0026】
(生涯資金収支解析プログラム110)
生涯資金収支解析プログラム110は、サブプログラムとして利用者情報設定プログラム111と、世帯収入推移試算プログラム112と、世帯支出推移試算プログラム113と、生涯収支推移表示プログラム118とを備えている。
【0027】
(利用者情報設定プログラム111)
図3は、利用者世帯に関する情報入力表の画面の一例を示す図である。生涯資金収支解析プログラム110が起動すると、初めに利用者情報設定プログラム111が起動され、図3(a)に示されるような家族情報に関する情報入力表の画面が表示部13に表示される。
【0028】
例えば、利用者の世帯構成情報として、世帯主、配偶者、子供のそれぞれの氏名、生年月日、現年齢、性別を所定の欄内に入力部14を介して入力することで、各情報が入力データ180として外部記憶部12に記憶される。また、現時点では家族の構成員ではないが将来構成員となる子供が誕生する予定がある場合に対応して、その予定される年をゼロ歳とした場合の現時点での仮想の年齢であるマイナス年齢を入力することで、誕生前の子供についての情報を入力できる。
【0029】
また、次のステップでは、図3(b)に示されるような世帯収入に関する情報入力表の画面が表示部13に表示される。
【0030】
例えば、現在の年収金額、ステージアップ(昇格)の予定年齢と昇給額、定年退職金額等が所定の欄内に入力できるように構成されている。また、給与所得以外にもその他の収入として、例えば不動産、株式配当及び資産贈与等の個人資産についても世帯会計(家計)に組み入れる場合には、その金額と取得時期とともに入力できる。
【0031】
また、次のステップでは、図3(c)示されるような現在有している積立等の金融資産残高に関する情報入力表の画面が表示部13に表示される。例えば、住宅準備資金、シニアライフ積立、学資準備積立等の金額が所定の欄内に入力できる。
【0032】
また、次のステップでは、図3(d)示されるような世帯支出に関する情報入力表の画面が表示部13に表示される。例えば、現在の年間の生活費、住宅関連費(賃貸の場合は家賃、管理費等、戸建の場合は修繕費等)、固定資産税、所得税、住民税、養育費・教育費、金融資産積立費、保険料(社会保険、生命保険、火災保険、自動車保険等)、レジャー費(趣味、旅行等)、自家用車維持費(自動車ローン、燃料費、車検費等)等の金額が所定の欄内に入力できる。
【0033】
これらの利用者情報の入力事項は、利用者が任意に選択できるが、現時点でわかっている事項をより多く正確に入力することで、より精度の高い生涯資金収支(ライフキャッシュフロー)を試算することができる。」

(2) 引用文献2に記載された技術的事項
上記(1)によれば、引用文献2には、次の技術的事項(以下、「引用文献2に記載された技術的事項」という。)が記載されている。
「将来子供が誕生する予定も含めた家族情報に関する情報を入力し、また、世帯収入、積立等の金融資産残高及び世帯支出に関する情報を入力することにより、生涯資金収支解析を行うこと。」

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1) 対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明の「ユーザ情報」は、「労働収入に関する情報、資産運用に関する情報、生活に関する情報、退職後の収入に関する情報、年金に関する情報、居住住宅に関する情報及び老後の生活に関する情報等」であり、これらの情報は、ユーザの現在や将来の収入・支出に関する情報であるから、本願発明1の「対象者の生涯収支に関する収支情報」に相当する。

イ 引用発明は、「ユーザが、ユーザ端末3の入力部を介してイベントオブジェクトOBを選択し、グラフ表示W21まで移動させて所望の位置に配置すると、シミュレーションサーバ2は、その配置と共に、ユーザ情報の入力画面を表示させ、当該イベントオブジェクトに関連したユーザ情報の入力を可能とするものであり、入力されたユーザ情報に基づいて、収入グラフW21A、支出グラフW21B及び資産グラフW21Cが表示、更新されるところ」、「「出産」のイベントオブジェクトが新たに追加されてもよく」、「「退職金」に関するイベントオブジェクトOB4をグラフ表示W21にドラッグ&ドロップして配置すること」ができるものである。
そうすると、引用発明では、「出産」のイベントオブジェクトや「退職金」に関するイベントオブジェクトに関連したユーザ情報に基づいて、収入グラフや支出グラフが表示・更新されるのであるから、引用発明の「出産」及び「退職金」に係るイベントは、本願発明1の「生涯収支を変動させる複数の変動要因」に相当する。

ウ 引用発明の「受付手段4」は、「ユーザ端末3の入力画面を介して、シミュレーションを実施するためのユーザ情報の入力を受け付けるもの」であるから、ユーザの「ユーザ端末3」から「ユーザ情報」の登録を受け付けているといえる。
そして、上記アのとおり、引用発明の「ユーザ情報」は、本願発明1の「対象者の生涯収支に関する収支情報」に相当する。
そうすると、引用発明の「ユーザ端末3の入力画面を介して、シミュレーションを実施するためのユーザ情報の入力を受け付ける」「受付手段4」は、本願発明1の「ユーザのユーザ端末から、対象者の生涯収支に関する収支情報の登録を受け付ける登録受付部」に相当する。

エ 引用発明の「算出手段7」は、「入力画面での入力又はイベントオブジェクトOBの配置により入力されたユーザ情報を用いて、グラフ表示における収入グラフ、支出グラフ及び資産グラフに関する表示内容の算出処理を行うもの」であるところ、上記アのとおり、引用発明の「ユーザ情報」は本願発明1の「収支情報」に相当する。
そうすると、引用発明の「入力画面での入力又はイベントオブジェクトOBの配置により入力されたユーザ情報を用いて、グラフ表示における収入グラフ、支出グラフ及び資産グラフに関する表示内容の算出処理を行う」「算出手段7」は、本願発明1の「前記収支情報に基づいて、前記生涯収支を算出する算出部」に相当する。

オ 引用発明の「配置手段6」は、「シミュレーション画面W2において、ユーザ端末3からの操作入力に基づいて、グラフ表示W21に対するイベントオブジェクトOBの配置処理を受け付ける」ものである。そして、上記イのとおり、引用発明では、「出産」のイベントオブジェクトや「退職金」に関するイベントオブジェクトに関連したユーザ情報に基づいて、収入グラフや支出グラフが表示・更新されるものであるから、引用発明の「出産」及び「退職金」に係るイベントは、本願発明1の「生涯収支を変動させる複数の変動要因」に相当するものである。
そうすると、引用発明の「配置手段6」は、本願発明1の「生涯収支を変動させる複数の変動要因」の設定を受け付けているといえ、また、それによって、収入グラフや支出グラフが表示・更新されるのであるから、「複数の変動要因それぞれに対して前記生涯収支の推移の図表に反映させる」ものであるといえる。
したがって、引用発明の「シミュレーション画面W2において、ユーザ端末3からの操作入力に基づいて、グラフ表示W21に対する」「「出産」のイベントオブジェクトや「退職金」に関するイベントオブジェクト」の「イベントオブジェクトOBの配置処理を受け付け」る「配置手段6」と、本願発明1の「前記ユーザ端末から、前記生涯収支を変動させる複数の変動要因の設定を受け付ける設定受付部であって、前記複数の変動要因それぞれに対して前記生涯収支の推移の図表に反映させるか否かの設定を受け付ける設定受付部」は、「前記ユーザ端末から、前記生涯収支を変動させる複数の変動要因の設定を受け付ける設定受付部であって、前記複数の変動要因それぞれに対して前記生涯収支の推移の図表に反映させる設定受付部」である点で共通する。

カ 引用発明の「表示手段5」は、「シミュレーション画面やユーザ情報の入力画面を表示処理し、ユーザ端末に対して送信可能にするもの」であるところ、上記エ及びオによれば、本願発明1の「前記ユーザ端末に」、「前記収支情報に基づき前記算出部により算出された前記生涯収支の推移を図表で表示させる表示部」であるといえる。
そして、引用発明は、イベントオブジェクトを「グラフ表示W21にドラッグ&ドロップして配置する」すると、「入力されたユーザ情報に基づいて、収入グラフW21A、支出グラフW21B及び資産グラフW21Cが表示、更新されるところ、ユーザ情報の入力画面の表示タイミングは、イベントオブジェクトの配置後に限られるものではなく、ユーザ情報の入力画面の表示タイミングは、イベントオブジェクトの配置前」であってもよいものである。
そうすると、引用発明では、「受付手段4」が事前に、イベントオブジェクトに対するユーザ情報(本願発明1の「対象者の生涯収支に関する収支情報」に相当する。)の入力を受け付けてから、イベントオブジェクトをドラッグ&ドロップして配置するものであるといえるから、引用発明の「ユーザ情報」は、本願発明1の「前記設定の受け付けの事前に前記登録が受け付けられた前記収支情報」であるということができる。
したがって、引用発明の「表示手段5」は、本願発明1の「前記ユーザ端末に、前記設定の受け付けの事前に前記登録が受け付けられた前記収支情報に基づき前記算出部により算出された前記生涯収支の推移を図表で表示させる表示部」に相当する。

以上によれば、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点がある。

(一致点)
「ユーザのユーザ端末から、対象者の生涯収支に関する収支情報の登録を受け付ける登録受付部と、
前記収支情報に基づいて、前記生涯収支を算出する算出部と、
前記ユーザ端末から、前記生涯収支を変動させる複数の変動要因の設定を受け付ける設定受付部であって、前記複数の変動要因それぞれに対して前記生涯収支の推移の図表に反映させる設定受付部と、
前記ユーザ端末に、前記設定の受け付けの事前に前記登録が受け付けられた前記収支情報に基づき前記算出部により算出された前記生涯収支の推移を図表で表示させる表示部と、を備える、
情報処理装置。」

(相違点1)
設定受付部が、本願発明1は、「前記複数の変動要因それぞれに対して前記生涯収支の推移の図表に反映させるか否かの設定を受け付ける」のに対し、引用発明は、それぞれのイベントオブジェクトをドラッグ&ドロップして配置することにより反映させるものであり、反映させるか否かの設定を受け付けるものではない点。
(相違点2)
表示部について、本願発明1は、「前記設定受付部が受け付けた前記複数の変動要因の設定に応じて、前記図表の表示を、前記複数の変動要因それぞれについて反映された状態の表示と反映されていない状態の表示とで切り替える」のに対し、引用発明は、そのような構成を備えていない点。

(2) 判断
ア 特許法第29条第1項第3号について
上記(1)のとおり、本願発明1と引用発明との間には相違点がある。
したがって、本願発明1は引用発明であるとはいえない。

イ 特許法第29条第2項について
(ア) (相違点1)について
引用文献2には、設定受付部が、「前記複数の変動要因それぞれに対して前記生涯収支の推移の図表に反映させるか否かの設定を受け付ける」ことは記載も示唆もされていないから、引用発明に引用文献2に記載された技術的事項を適用したとしても、相違点1に係る構成は得られない。そして、相違点1に係る構成が本願出願時において周知技術であったともいえない。
これに対し、本願発明1は、上記相違点1に係る構成を備えることによって、例えば、本願明細書の【0077】段落に記載されているように、「表示部114は、長生きが反映された状態の収支グラフの表示と長生きが反映されていない状態の収支グラフの表示とを簡単な操作で切り替えることができる」ものであり、本願明細書の【0009】段落に記載されているように、「生涯で発生しうる事象が対象者の収支にどのように影響するかを可視化することができる」という効果を奏するものである。

(イ) (相違点2)について
上記「(相違点1)について」の判断と同様、引用文献2には、表示部が、「前記設定受付部が受け付けた前記複数の変動要因の設定に応じて、前記図表の表示を、前記複数の変動要因それぞれについて反映された状態の表示と反映されていない状態の表示とで切り替える」ことについても記載も示唆もされていないから、引用発明に引用文献2に記載された技術的事項を適用したとしても、相違点2に係る構成は得られない。そして、相違点2に係る構成が本願出願時において周知技術であったともいえない。
なお、引用文献1には、上記第5の1(1)ケのとおり、ユーザによってユーザ情報が入力される毎に、ユーザ情報が反映されたシミュレーション結果と、反映される前のシミュレーション結果とを重畳して表示し、その後、ユーザの選択により、いずれかのシミュレーション結果を消去する第2実施形態が記載されているが、この実施形態も、上記相違点2に係る構成のように、表示を切り替えるものではない。

(ウ) したがって、本願発明1は、当業者が、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2〜6について
本願発明2〜6は、本願発明1の「情報処理装置」について、さらに限定する構成を付加し、本願発明1を減縮する発明であるから、本願発明1の上記相違点に係る構成を有する。
したがって、本願発明2〜5は、上記1の本願発明1についての対比・判断と同様、引用発明であるとはいえない。また、本願発明2〜6は、当業者が、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるともいえない。

3 本願発明7及び8について
本願発明7及び8は、それぞれ、本願発明1の「情報処理装置」に対応する「プログラム」及び「情報処理方法」の発明であって、発明のカテゴリーが相違するのみであるから、本願発明1の上記相違点に係る構成に対応する構成を有する。
したがって、本願発明7及び8は、上記1の本願発明1についての対比・判断と同様、引用文献1に記載された発明であるとはいえないし、当業者が、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるともいえない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1〜5、7及び8は、引用文献1に記載された発明であるとはいえない。また、本願発明1〜8に係る発明は、当業者が、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるともいえない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-09-05 
出願番号 P2021-009507
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06Q)
P 1 8・ 113- WY (G06Q)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 高瀬 勤
特許庁審判官 相崎 裕恒
梶尾 誠哉
発明の名称 情報処理装置、プログラム、および情報処理方法  
代理人 江口 昭彦  
代理人 大貫 敏史  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 内藤 和彦  

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