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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G05B
審判 全部申し立て 2項進歩性  G05B
管理番号 1388326
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-09-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-08-11 
確定日 2022-07-12 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6647472号発明「数値制御装置および数値制御方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6647472号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔4−9〕について訂正することを認める。 特許第6647472号の請求項1−11に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6647472号の請求項1−11に係る特許についての出願は、2019年(平成31年)1月9日を国際出願日として出願され、令和2年1月16日にその特許権の設定登録がされ、同年2月14日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和2年8月11日に特許異議申立人 藤江 桂子(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされ、当審は、申立人に対して令和3年3月26日付で審尋し、同年5月27日に申立人から回答書が提出され、当審は、同年9月30日付けで取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である令和3年11月18日に当審と面接を行い、同年12月6日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)を行い、本件訂正請求に対して、当審は期間を指定して申立人に意見書を提出する機会を与えたが、応答がなかった。


第2 本件訂正請求による訂正の適否についての判断

1 請求項4−9に係る訂正

(1)訂正の内容

ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項4に
「前記第2の指令を受けると、前記ロボットに指令を送るロボットインタフェースにアクセスするアクセス部と、」
とあるのを、
「前記第2の指令を受けると、前記第2の指令を、前記ロボットを制御するロボットコントローラが実行する制御指令に変換し、前記ロボットに前記制御指令を送る前記ロボットコントローラのロボットインタフェースにアクセスするアクセス部と、」
に訂正する。
(請求項4を直接又は間接的に引用する請求項5−7、9についても同様に訂正する。)

イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項8に
「 を備えることを特徴とする数値制御装置。」
とあるのを、
「 を備え、
前記手動操作データ変換部は、前記ロボットを制御するロボットコントローラが実行する。前記第2の座標系へ変換された操作データを、前記ロボットコントローラへ送信する、
ことを特徴とする数値制御装置。」
に訂正する。
(請求項8を直接的に引用する請求項9についても同様に訂正する。)

上記訂正事項1−2は、請求項4、8についてのものであるところ、請求項4−8のいずれかの記載を請求項9が引用する引用関係にあるから、訂正事項1−2を含む本件訂正請求は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項〔4−9〕に対して請求されたものである。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否及び独立特許要件
本件特許異議申立ては、全ての請求項に対してされたものであるから、訂正事項1−2において、独立特許要件は課されない。

ア 訂正事項1

(ア)訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項4に係る特許発明の「アクセス部」に「前記第2の指令を、前記ロボットを制御するロボットコントローラが実行する制御指令に変換し、」なる事項を追加し、「アクセス部」のアクセス先である「ロボットインタフェース」について「前記制御指令を送る前記ロボットコントローラの」の下線を付した事項を追加して、その内容を減縮するものである。
同様に、訂正後の請求項5−7、9に係る特許発明は、訂正後の請求項4に係る特許発明の発明特定事項の記載を引用することにより、訂正前の請求項5−7、9に係る特許発明の内容を減縮するものである。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1において追加される事項は、願書に添付した明細書の段落【0137】、【0141】、【0148】及び【0156】の記載から、アクセス部(ロボッ卜IFアクセス部415)が、第2の指令(NCロボットプログラムの指令)を受けると、第2の指令を、ロボットを制御するロボットコントローラが実行する制御指令(ロボットIF510にアクセスする際に指定する関数)に変換し、ロボットに制御指令を送るロボットコントローラのロボットインタフェースにアクセスすることが記載されていると認められるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載されている。
よって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記(ア)に記載したとおり、訂正事項1は、訂正前の請求項4に係る特許発明の「アクセス部」の内容を減縮するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
同様に、訂正後の請求項5−7、9に係る特許発明は、訂正後の請求項4に係る特許発明の発明特定事項の記載を引用することにより、訂正前の請求項5−7、9に係る特許発明の内容を減縮するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

イ 訂正事項2

(ア)訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項8に係る特許発明の「手動操作データ変換部」について「前記手動操作データ変換部は、前記ロボットを制御するロボットコントローラが実行する、前記第2の座標系へ変換された操作データを、前記ロボットコントローラへ送信する」なる事項を追加して、その内容を減縮するものである。
同様に、訂正後の請求項9に係る特許発明は、訂正後の請求項8に係る特許発明の発明特定事項の記載を引用することにより、訂正前の請求項9に係る特許発明の内容を減縮するものである。
よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2において追加される事項は、願書に添付した明細書の段落【0018】及び【0201】に記載されている。
よって、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記(ア)に記載したとおり、訂正事項2は、訂正前の請求項8に係る特許発明の内容を減縮するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
同様に、訂正後の請求項9に係る特許発明は、訂正後の請求項8に係る特許発明の発明特定事項の記載を引用することにより、訂正前の請求項9に係る特許発明の内容を減縮するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

2 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔4−9〕について訂正することを認める。


第3 本件訂正請求による訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項4−9を含む請求項1−11に係る発明(以下、請求項1に係る発明を「本件発明1」、請求項2−11に係る発明を、各請求項の番号に対応させて、それぞれ「本件発明2」−「本件発明11」といい、請求項1−11に係る発明をまとめて「本件発明」ということがある。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1−11に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
【請求項1】
工作機械およびロボットを、第1の座標系で規定された数値制御プログラムを用いて制御する制御演算部を有し、
前記制御演算部は、
第1のプログラム言語で記述された前記工作機械への指令である第1の指令と前記第1のプログラム言語で記述された前記ロボットヘの指令である第2の指令とを含んだ前記数値制御プログラムを記憶する記憶部と、
前記第2の指令を、前記数値制御プログラムの実行中に、前記ロボットを制御する際に用いられるロボットプログラムである第3の指令に変換する変換部と、
を備え、
前記制御演算部は、前記第1の指令を用いて前記工作機械を制御し、前記第3の指令を用いて前記ロボットを制御する、
ことを特徴とする数値制御装置。
【請求項2】
前記制御演算部は、前記数値制御プログラムの実行中に、前記ロボットを制御するロボットコントローラに前記第3の指令を送信する、
ことを特徴とする請求項1に記載の数値制御装置。
【請求項3】
前記第1の指令および前記第2の指令は、前記第1の座標系で規定されており、
前記第3の指令は、第2の座標系で規定されるとともに第2のプログラム言語で記述されており、
前記変換部は、
前記第2の指令を、前記数値制御プログラムの実行中に、前記第1の座標系と前記第2の座標系との対応関係に基づいて前記第3の指令に変換する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の数値制御装置。
【請求項4】
工作機械およびロボットを、第1の座標系で規定された数値制御プログラムを用いて制御する制御演算部を有し、
前記制御演算部は、
第1のプログラム言語で記述された前記工作機械への指令である第1の指令と前記第1のプログラム言語で記述された前記ロボットヘの指令である第2の指令とを含んだ前記数値制御プログラムを記憶する記憶部と、
前記数値制御プログラムの実行中に、前記第2の指令を受けると、前記第2の指令を、前記ロボットを制御するロボットコントローラが実行する制御指令に変換し、前記ロボットに前記制御指令を送る前記ロボットコントローラのロボットインタフェースにアクセスするアクセス部と、
を備え、
前記制御演算部は、前記第1の指令に基づいて前記工作機械を制御し、前記アクセス部による前記ロボットインタフェースヘのアクセスによって前記ロボットを制御する、
ことを特徴とする数値制御装置。
【請求項5】
前記ロボットインタフェースは、第2の座標系で規定された関数および指令座標でアクセスされた場合に前記関数および前記指令座標に対応する処理を前記ロボットに実行し、
前記アクセス部は、前記数値制御プログラムの実行中に、前記ロボットインタフェースに対し、前記第1の座標系と前記第2の座標系との対応関係に基づいて、前記第2の指令に対応する関数および指令座標でアクセスする、
ことを特徴とする請求項4に記載の数値制御装置。
【請求項6】
前記数値制御プログラムは、前記工作機械と前記ロボットとの間の同期命令を含み、
前記制御演算部は、
前記第1の指令の実行中に前記第1の指令内に前記ロボットの動作を待つ第1の待機指令が現れると、前記第1の待機指令に対応する前記ロボットの動作が完了するまで前記工作機械の動作を待機させる第1の待ち合わせ部と、
前記第2の指令の実行中に前記第2の指令内に前記工作機械の動作を待つ第2の待機指令が現れると、前記第2の待機指令に対応する前記工作機械の動作が完了するまで前記ロボットの動作を待機させる第2の待ち合わせ部と、
をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1から5の何れか1つに記載の数値制御装置。
【請求項7】
前記数値制御プログラムを編集する際の編集画面、前記ロボットの状態を表示する状態表示画面を表示する表示部をさらに有する、
ことを特徴とする請求項1から6の何れか1つに記載の数値制御装置。
【請求項8】
第1の座標系で規定された工作機械への第1の手動操作および第2の座標系で規定されたロボットヘの第2の手動操作を、前記第1の座標系への操作として受け付ける手動操作部と、
前記手動操作部への操作による操作対象を切替る切替スイッチと、
前記工作機械および前記ロボットを制御する制御演算部と、
を有し、
前記制御演算部は、
前記切替スイッチの状態に基づいて、前記手動操作部が受け付けた操作に対応するデータである操作データを、前記第1の手動操作または前記第2の手動操作のいずれであるかを判定する制御信号処理部と、
前記第2の手動操作として判定された操作データを前記第2の座標系への操作データに変換する手動操作データ変換部と、
を備え、
前記手動操作データ変換部は、前記ロボットを制御するロボットコントローラが実行する、前記第2の座標系へ変換された操作データを、前記ロボットコントローラへ送信する、
ことを特徴とする数値制御装置。
【請求項9】
前記制御演算部は、前記ロボットの動作に対するオーバライドの指示を受け付けると、前記ロボットの動作に対してオーバライドをかける、
ことを特徴とする請求項1から8の何れか1つに記載の数値制御装置。
【請求項10】
工作機械およびロボットを、第1の座標系で規定された数値制御プログラムを用いて制御する制御演算ステップを有し、
前記制御演算ステップは、
第1のプログラム言語で記述された前記工作機械への指令である第1の指令と前記第1のプログラム言語で記述された前記ロボットヘの指令である第2の指令とを含んだ前記数値制御プログラムを記憶する記憶ステップと、
前記第2の指令を、前記数値制御プログラムの実行中に、前記ロボットを制御する際に用いられるロボットプログラムである第3の指令に変換する変換ステップと、
前記第1の指令を用いて前記工作機械を制御し、前記第3の指令を用いて前記ロボットを制御する制御ステップと、
を含むことを特徴とする数値制御方法。
【請求項11】
前記制御演算ステップでは、前記数値制御プログラムの実行中に、前記ロボットを制御するロボットコントローラに前記第3の指令を送信する、
ことを特徴とする請求項10に記載の数値制御方法。


第4 取消理由通知により通知した取消理由について
本件訂正請求による訂正前の請求項1−11に係る特許に対して、当審が令和3年9月30日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は以下のとおりである。

1 取消理由1(新規性

(1)請求項1−3に係る発明は、引用文献1に記載された発明であるから、請求項1−3に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。

(2)請求項4−5、7に係る発明は、引用文献1に記載された発明であるから、請求項4−5、7に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。


(3)請求項8に係る発明は、引用文献1に記載された発明であるから、請求項8に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。

(4)請求項10−11に係る発明は、引用文献1に記載された発明であるから、請求項10−11に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。

2 取消理由2(進歩性

(1)請求項6に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(2)請求項6を引用する請求項7に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項6を引用する請求項7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(3)請求項9に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献3−4にて例示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

◎取消理由通知で引用した文献
引用文献1:SINUMERIK Integrate Run MyRobot/Machining Application example for connection of a KUKA robot with KR C4 to a SINUMERIK 840D sl with NCU 7x0.3(09/2015)[甲第1号証]
引用文献2:特開2017−134722号公報[甲第2号証]
引用文献3:特開2014−18939号公報[甲第3号証]
引用文献4:特開2012−240142号公報[甲第4号証]


第5 引用文献の記載

◎ 引用文献1:SINUMERIK Integrate Run MyRobot/Machining Application example for connection of a KUKA robot with KR C4 to a SINUMERIK 840D sl with NCU 7x0.3(09/2015)[甲第1号証]

1 引用文献1の記載事項(下線は当審で付した。以下同様。また、日本語訳は申立人が異議申立書に添付したものである。)

(1) 「1.1 System requirements
The following hardware and software component are needed to Commission a6 axis robot with Run MyRobot/Machining. Figure 1-2 illustrate a typical system structure.」(第7ページ第1行−第4行)
(日本語訳)
「1.1システム要件
Run MyRobot/Machiningで6軸ロボットを使用するには、次のハードウエアおよびソフトウエア構成要素が必要である。図1−2は、一般的なシステム構造を示している。」


」(第7ページ Figure 1-2)

(2) 「

」(第9ページ)

(3) 「

」(第10ページ)

(4) 「4.4 PLC: Configuring blocks
A robot is created in the following example.
Some blocks in the base program need to be checked and possibly modified.」(第30ページ第1行−第3行)
(日本語訳)
「4.4 PLC :ブロックの構成
次の例ではロボットが作成される。
基本プログラムの一部のブロックは、チェックされ、場合によっては変更される必要がある。」

(5) 「4.4.3 FB210: FbSelJogMode
Because every robot operates in its own NC channel, the appropriate setting must be made. All three conceivable variants (machining, handling, robot-less NC channel) are now listed as examples. The behavior also depends on MD21106 and SD42650. If a channel is not used, all variables are set to CLR.」(第33ページ第1行−第5行)
(日本語訳)
「4.4.3 FB210: FbSelJogMode
すべてのロボットはNCのチャンネルとして動作するため、適切な設定を行う必要がある。全3種の設定(加工、ハンドリング、ロボットなし)が例に記載されている。動作はMD21106およびSD42650にも依存する。チャンネルを使用しない場合、すべての変数がCLRに設定される。」


」(第33ページ Figure 4-4)

(6) 「4.4.5 FC219: FcMcpHpu
This function evaluates whether on the HMI device the workpiece, base or tool coordinate system was selected, a traversal command is available (+/-/Rapid keys), shows the associated required keys on the HPU and generates the appropriate submenus from the configured axis groops (see FC230).
Furthermore, the switchover between Auto, Jog, Repos, Teach in and Homing is handled, and any available increment steps differentiated.
NC Start, NC stop, Reset are also evaluated, as are spindle and feed stop. Finally, the associated LEDs on the selected keys are activated and the outputs set. This block should be changed only by experienced users.」(第34ページ第1行−第10行)
(日本語訳)
「4.4.5 FC219 : FcMcpHpu
この関数は、HMIデバイスでワーク、ベース、またはツール座標系が選択されたかどうか、移動指令が利用可能かどうか(+ /-/ラピッドキー)を評価し、HPUに関連する必要なキーを表示し、構成された軸グループ(FC230を参照)から適切なサブメニューを生成する。
さらに、自動運転、ジョグ、リポジション、ティーチイン、ホーム位置復帰間 の切り替えが処理され、利用可能な増分ステップが区別される。
NCスタート、NCストップ、リセット、およびスピンドルとフィードストップも評価される。最後に、選択したキーに関連付けられているLEDがアクティブになり、出力が設定される。このブロックは、経験豊富なユーザーのみが変更する必要がある。」

(7) 「4.4.9 FC230: FcAxTable
The assignment between the selected axis on the HMI terminal and the associated machine/channel axis is made in the FC230. Because the number of keys on a machine control panel (MCP) is, however, limited physically, but for an HT8 terminal (MPU) with its virtual keys can be almost limitless, case differentiations must be made. Furthermore, both Cartesian traversals (e.g. travel in the X direction) and axial traversal commands (e.g. rotate axis 1 30° counterclockwise) should be possible.」(第35ページ第1行−第8行)
(日本語訳)
「4.4.9 FC230 : FcAxTable
HMI端子で選択した軸に対応する機械/チャンネル軸の割り当ては、FC230で行われる。ただし、マシンコントロールパネル(MCP)のキーの数は物理的に制限されているが、仮想キーを持つHT8端末(MPU)の場合はほとんど制限がないため、区別する必要がある。さらに、直交座標系上の移動(X方向の移動など)と軸移動指令(たとえば、軸1を反時計回りに30度回転)の両方が可能である必要がある。」


」(第35ページ Figure 4-5)

(8) 「7.2.2 CC RODI(RObot Drive Interface)
The following machine data are those applicable to the KUKA KR300 KR2500 Quantec robot type. The data are read from the KUKA KR C4 control system during the installation via CMC(Chapter 6).」(第67ページ第1行−第4行)
(日本語訳)
「7.2.2 CC RODI (RObot Drive Interface)
以下のマシンデータは、KUKA KR300 KR2500 Quantec ロボットタイプに適用可能なものである。 データは、CMCを介したインストール中にKUKA KR C4制御システムから読み取られる(第6章)。」

(9) 「9.2 Basic coordinate system
In the standard setting, the base coordinate system lies at the foot point of the robot (red coordinate system in Figure 9-2). Consequently, this produces an offset in the Z direction compared with the internal robot coordinate system. The example data applies to the KUKA KR300 R2500 Quantec Ultra robot.
Depending on the plant specification, the following machine data can be used to offset and rotate the base coordinate system compared with the internal robot coordinate system as required. It does not need to lie at the foot point of the robot. A detailed description of the ROBX robot transformation is available in the separate "ROBX transformation function documentation".」(第86ページ第1行−第10行)
(日本語訳)
「9.2基本座標系
標準設定では、ベース座標系はロボットの足元にある(図9-2の赤い座標系)。 その結果、これは内部ロボット座標系と比較してZ方向のオフセットを生成する。サンプルデータは、KUKA KR300 R2500 Quantec Ultra ロボットに適用される。
プラントの仕様に応じて、以下のマシンデータを使用して、必要に応じて内部ロボット座標系と比較してベース座標系をオフセットすることおよび回転することができる。ロボットの足元にある必要はない。ROBXロボット変換の詳細の記述については、別の「ROBX変換機能のドキュメント」を参照することができる。」


」(第86ページ Figure 9-2)


」(第87ページ Table 9-1)

(10) 「9.3.1 The flange coordinate system for single part tools
For single part tools, the reference point for the tool lengths (L1, L2, L3) and the tool rotations of the flange coordinate system is defined as in Chapter9.3. Figure9-4 and the following table show an example parameterization for a gripper tool.」(第88ページ第1−第4行)
(日本語訳)
「9.3.1単品ツールのフランジ座標系
単品工具の場合、工具長(L1、L2、L3)の基準点とフランジ座標系の工具回転は、9.3章のように定義される。図9-4および次の表は、グリッパーツール のパラメーター化の例を示している。」


」(第88ページ Figure 9-4)


」(第88ページ Table 9-3)

(11) 「10 Programming
The two most common methods of programming robots are described below. Further programming possibilities, such as orientation programming with the A3, B3 and C3 vectors, are described in the "SINUMERIK 840D sl / 828D fundamentals" programming manual.」(第91ページ第1行−第5行)
(日本語訳)
「10プログラミング
ロボットをプログラミングする最も一般的な2つの方法を以下に説明する。
A3、B3、C3ベクトルを使用した方向プログラミングなどのプログラミングの可能性については、「SINUMERIK 840D sl / 828D基本」プログラミングマニュアルで説明している。」

「10.1 Axial programming
The transformation must be deactivated for axial programming. This is done with the TRAFOOF model programming command. Finally an axial position can be entered. The axial position applies to the machine axes in the channel.」(第91ページ第6行−第9行)
(日本語訳)
「10.1軸プログラミング
軸単位のプログラミングでは、変換を無効にする必要がある。これは、モーダルプログラム指令TRAFOOFで行う。無効後、軸位置を入力できる。軸位置は、チャンネルの機械軸に適用される。」



」(第91ページ 10.1欄のExample)

「10.2 Cartesian programming with virtual rotary axis angles
The transformation must be activated for Cartesian programming. This is done with the TRAORI model programming command. Finally, a Cartesian position X, Y, Z, and an orientation A, B, C can be made.」(第91ページ第14行−第17行)
(日本語訳)
「10.2仮想回転軸を使用した直交座標系上のプログラミング
直交座標系上のプログラミングでは、変換を有効にする必要がある。これは、モーダルプログラム指令TRAORIで行う。有効後、直交座標位置X、Y、Z、および方向A、B、Cを作成できる。」



」(第91ページ 10.2欄のExample)

「10.3 Orientation programming
The orientation is programmed via virtual rotary axis angle A, B, C. In this manner, the TCS (Tool Coordinate System) is rotated relative to a reference coordinate system. The reference coordinate system can be either the machine coordinate system (MCS) or the workpiece coordinate system (WCS).」(第91ページ第22行−第26行)
(日本語訳)
「10.3オリエンテーションプログラミング
方向は、仮想回転軸A、B、Cを介してプログラムする。このようにして、TCS(ツール座標系)は規定座標系に対して回転する。規定座標系は、機械座標系(MCS)またはワーク座標系(WCS)のいずれかである。」

「10.3.1 ORIMKS/ORIWKS
The reference system active for the orientation programming is set with the ORIMKS. and ORIWKS programming commands.
ORIMKS : The reference system is the machine coordinate system
ORIWKS : The reference system is the workpiece coordinate system」(第91ページ第27行−最終行)
(日本語訳)
「10.3.1 ORIMKS / ORIWKS
オリエンテーションプログラミングの規定座標系はプログラム指令ORIMKSおよびORIWKSで設定される。
ORIMKS :規定座標系は機械座標系である
ORIWKS :規定座標系はワーク座標系である」

(12) 「

」(第93ページ Figure 10-2)

(13) 「10.4 Cartesian PTP travel
General Information about Cartesian PTP travel is contained in the "SINUMERIK 840D sl / 828D Function Manual Extended Functions" manual in Section 6.6 Cartesian PTP travel.
10.4.1 Function
This function allows a Cartesian position to be approached with a synchronous axis motion. It is particularly useful in case where, for example, the position of the joint is charged causing the axis to move through a singularity. When an axis passes through a singularity, the freed velocity would normally be reduced or the axis itself overloaded.
10.4.2 Activation
The function is activated by programming the PTP command. The function can be deactivated again with the CP command. Both these commands are contained in Group 49.
・ PTP command: The programmed Cartesian position is approached with a synchronized axis motion (PTP=point-to-point)
・ CP command: The programmed Cartesian position is approached with a path motion (default setting), (CP=continuous path)
・ PTPGO command: The programmed Cartesian PTP motion is performed automatically with each GO block. The CP command is then set again.」(第95ページ第4行−下から第4行)
(日本語訳)
「10.4直交座標系PTP移動
直交座標系上のPTP移動に関する一般情報は、セクション6.6直交座標系PTP移動の「SINUMERIK 840D sl / 828D機能仕様 拡張機能」マニュアルに含まれている。
10.4.1機能
この機能により、ロボットの軸を同期制御し、直交座標系上の位置にアプロー チできる。これは、たとえば、軸が特異点を通過する際の関節の位置が変化 するときに役に立ちます。軸が特異点を通過すると、通常、送り速度は減速されるか、軸自体に過負荷がかかる。
10.4.2有効化
この機能は、PTP指令をプログラミングすることで有効となる。この機能は、CP指令で再度無効にできる。これらの指令は両方ともグループ49に含まれている。
・ PTP指令:プログラムされた直交座標位置に軸を同期制御しアプローチする。(PTP=point-to-point)
・ CP指令:プログラムされた直交座標位置に軌跡運動(デフォルト設定)で 接近(CP=連続軌跡)
・ PTPG0指令:プログラムされた直交座標PTPモーションは、各G0ブロックで自動的に実行される。その後、CP指令が再度設定される。」

(14) 「10.5 Programming of the position with STAT(state)
A Cartesian position must be convertible into unique axis angles. For this reason, the position of the joints must be entered in the STAT address. The STAT address contains a bit for every possible setting as a binary value. Three different positions exist for the ROBX robot transformation. Their meaning follows:
Bit 0: Shoulder left/right
Bit 1: Elbow up/down
Bit 2: Handflip / no Handflip

The following program examples illustrate the use of the STAT command. The configuration from Section 9.3.2 is used.」(第95ページ下から第3行−第96ページ第7行)
(日本語訳)
「10.5 STAT (state)を使用した位置のプログラミング
直交座標位置は対応する固有の関節角度に変換できなければならない。 このため、関節の位置をSTATアドレスに入力する必要がある。STATアドレスには、可能なすべての設定のビットがバイナリ値として含まれている。ROBXロボット変換には3つの異なる位置がある。その意味は次のとおりである。
ビット0: ショルダー左/右
ピット1: 肘の上/下
ビット3: ハンドフリップ/ハンドフリップなし

次のプログラム例は、STAT指令の使用法を示している。 セクション9.3.2の 設定が使用される。」(当審注:日本語訳の下線で示す「ビット3」は「ビット2」の誤記と認める。)

(15) 「

」(第96ページ Table 10-4)

(16) 「10.6 Rotary axis sign bit TU(Turn)
In order to approach axis angles in excess of ± 180° without ambiguity, the information must be programmed in the TU(Turn) address. The TU address so represents the sign of the axis angle. This allows an axis angle of |θ|<360° to be traversed without ambiguity.

The TU variable contains a bit that indicates the traversing direction for every axis involved in the transformation.
・ TU bit = 0: 0°≦θ<360°
・ TU bit =1:360°≦θ<0°

The TU bit is set to 0 for linear axes. In the case of axes with a traversing range > ± 360°, the axis always moves across the shortest path because the axis position cannot be specified uniquely by the TU information. If no TU is programmed for a position, the axis always traverses via the shortest possible route. In the example in Figure 10-4, the shortest path is in thenegative direction.」(第98ページ第1行−最終行)
(日本語訳)
「10.6回転軸符号ビットTU (ターン)
あいまいさなしに±180°を超える軸角度にアプローチするには、情報をTU (Turn)アドレスにプログラムする必要がある。そのため、TUアドレスは軸角度の符号を表す。これにより、|θ|<360°の軸角度を明確に指令できる。

TU変数には、変換なしで関係するすべての軸の移動方向を示すビットが含まれている。
・ TU ビット=0:0°≦θ<360°
・ TU bit =1:360°≦θ<0°

線形軸のTUビットは0に設定される。移動範囲が±360°を超える軸の場合、軸位置はTU情報で一意に指定できないため、軸は常に最短経路を移動する。位置にTUがプログラムされていない場合、軸は常に最短ルートを移動する。図10-4の例では、最短経路は負の方向である。」(当審注:日本語訳の下線で示す「変換なしで」は「変換の際に」の誤記と認める。)



」(第98ページ Figure 10-4)

(17) 「10.7 Sample program
The following part program illustrates the commands explained in Chapter 7:」(第99ページ第1行−第2行)
(日本語訳)
「10.7サンプルプログラム
次のパートプログラムは、第7章で説明された指令を示している。」



」(第99ページ Sample program)

(18) 上記(1)−(17)からみて、引用文献1には以下の事項が記載されていると認められる。

(18.1) 引用文献1に記載されている事項(その1)

ア 制御演算部について
上記(1)、(9)、(11)、(12)、(14)及び(17)からみて、
「主軸(Spindle)や送り軸(Additional axes)を備えた工作機械」および「KUKA KR300 R2500」を、「機械座標系」で規定された「プログラム(program)」を用いて制御する制御演算部が記載されていると認められる。

イ 記憶部について
上記(17)及び技術常識からみて、
第99ページの「10.7 Sample program」等に記載されたような、「Gコード及びMコード」で記述された「主軸(Spindle)や送り軸(Additional axes)を備えた工作機械への指令」と「Gコード及びMコードで記述されたKUKA KR300 R2500への指令」とを含んだ「プログラム」を記憶する記憶部を備えることは記載されているに等しいと認められる。

ウ 変換部について
上記(1)、(2)、(3)、(17)からみて、
Gコード及びMコードで記述されたKUKA KR300 R2500への指令を、KUKA KR300 R2500を制御するために用いられるPLC信号に変換するFB310等が記載されていると認められる。

エ アクセス部について
上記(1)、(2)、(3)、(17)からみて、
Gコード及びMコードで記述されたKUKA KR300 R2500への指令を受けると、前記Gコード及びMコードで記述されたKUKA KR300 R2500への指令を、前記KUKA KR300 R2500を制御するロボットコントローラが実行するために用いられるPLC信号の指令に変換し、前記KUKA KR300 R2500に前記指令を送るロボットコントローラのIM151−3(上記(2)の図の右下に記載された装置)にアクセスするDB300等が記載されていると認められる。

オ 制御演算部による制御について
上記(1)−(17)からみて、
制御演算部は、「主軸(Spindle)や送り軸(Additional axes)を備えた工作機械への指令」を用いて「主軸(Spindle)や送り軸(Additional axes)を備えた工作機械」を制御し、「KUKA KR300 R2500を制御するために用いられる信号」を用いて「KUKA KR300 R2500」を制御する、ものであると認められる。

カ 数値制御装置について
上記(1)からみて、
SINUMERIK 840D slが記載されているものと認められる。

(18.2) 引用文献1に記載されている事項(その2)

ア 手動操作部について
上記(1)、(4)−(7)、(9)、(10)からみて、
機械座標系で規定された主軸(Spindle)や送り軸(Additional axes)を備えた工作機械への操作およびBCS(ベース座標系)とTCS(ツール座標系)で規定されたKUKA KR300 R2500への操作を、機械座標系への操作として受け付けるMCP 483 IE」及び「HT8」が記載されていると認められる。

イ 切替スイッチについて
上記(6)からみて、
「MCP 483 IE」及び「HT8」への操作による操作対象を切替るスイッチが記載されていると認められる。

ウ 制御演算部について
上記(18.1)アと同様である。

エ 制御信号処理部について
スイッチは手動操作による複数の操作対象の軸を切替えるものである以上、スイッチの状態に基づいて、手動操作に対応する操作データが、「機械座標系で規定された軸(Spindle)や送り軸(Additional axes)を備えた工作機械」と「KUKA KR300 R2500」のいずれへの手動操作に対応するものであるかを判定することなどは自明であることから、スイッチの状態に基づいて、「MCP 483 IE」及び「HT8」が受け付けた操作に対応するデータである操作データを、機械座標系で規定された軸(Spindle)や送り軸(Additional axes)を備えた工作機械への手動操作またはBCS(ベース座標系)とTCS(ツール座標系)で規定されたKUKA KR300 R2500への手動操作のいずれであるかを判定する制御信号処理部が記載されていると認められる。

オ 手動操作データ変換部について
上記(5)からみて、SINUMERIK 840D slにおいてKUKA KR300 R2500に割付けられたチャンネルの操作データによって、KUKA KR300 R2500の座標系として規定されているBCS(ベース座標系)とTCS(ツール座標系)上で手動操作が可能であると認められることから、BCS(ベース座標系)とTCS(ツール座標系)で規定されたKUKA KR300 R2500への手動操作として判定された操作データをPLC信号に変換する手動操作データ変換部が記載されていると認められる。

カ 数値制御装置について
上記(18.1)カと同様である。

2 引用文献1に記載された発明

2−1 引用文献1に記載された第1発明
引用文献1には、上記1(18.1)ア−ウ及びオ−カからみて、以下の発明(以下、「引用文献1に記載された第1発明」という。)が記載されていると認められる。

「主軸(Spindle)や送り軸(Additional axes)を備えた工作機械およびKUKA KR300 R2500を、機械座標系で規定されたプログラムを用いて制御する制御演算部を有し、
制御演算部は、
Gコード及びMコードで記述された主軸(Spindle)や送り軸(Additional axes)を備えた工作機械への指令とGコード及びMコードで記述されたKUKA KR300 R2500への指令とを含んだプログラムを記憶する記憶部と、
Gコード及びMコードで記述されたKUKA KR300 R2500への指令を、KUKA KR300 R2500を制御するために用いられるPLC信号に変換するFB310等と、
を備え、
制御演算部は、主軸(Spindle)や送り軸(Additional axes)を備えた工作機械への指令を用いて主軸(Spindle)や送り軸(Additional axes)を備えた工作機械を制御し、KUKA KR300 R2500を制御するために用いられるPLC信号を用いてKUKA KR300 R2500を制御する、
SINUMERIK 840D sl。」

2−2 引用文献1に記載された第2発明
引用文献1には、上記1(18.1)ア−イ及びエ−カからみて、以下の発明(以下、「引用文献1に記載された第2発明」という。)が記載されていると認められる。

「主軸(Spindle)や送り軸(Additional axes)を備えた工作機械およびKUKA KR300 R2500を、機械座標系で規定されたプログラムを用いて制御する制御演算部を有し、
制御演算部は、
Gコード及びMコードで記述された主軸(Spindle)や送り軸(Additional axes)を備えた工作機械への指令とGコード及びMコードで記述されたKUKA KR300 R2500への指令とを含んだプログラムを記憶する記憶部と、
Gコード及びMコードで記述されたKUKA KR300 R2500への指令を受けると、前記Gコード及びMコードで記述されたKUKA KR300 R2500への指令を、前記KUKA KR300 R2500を制御するロボットコントローラが実行するために用いられるPLC信号に変換し、前記KUKA KR300 R2500に前記PLC信号を送る前記ロボットコントローラのIM151−3にアクセスするインターフェースDB300等と、
を備え、
制御演算部は、主軸(Spindle)や送り軸(Additional axes)を備えた工作機械への指令に基づいて主軸(Spindle)や送り軸(Additional axes)を備えた工作機械を制御し、DB300等によるIM151−3へのアクセスを経てKUKA KR300 R2500を制御する、
SINUMERIK 840D sl。)。」

2−3 引用文献1に記載された第3発明
引用文献1には、上記1(18.2)ア−カからみて、以下の発明(以下、「引用文献1に記載された第3発明」という。)が記載されていると認められる。

「機械座標系で規定された主軸(Spindle)や送り軸(Additional axes)を備えた工作機械への手動操作およびBCS(ベース座標系)とTCS(ツール座標系)で規定されたKUKA KR300 R2500への手動操作を、機械座標系への操作として受け付けるMCP 483 IE及びHT8と、
MCP 483 IE及びHT8への操作による操作対象を切替るスイッチと、
主軸(Spindle)や送り軸(Additional axes)を備えた工作機械およびKUKA KR300 R2500を制御する制御演算部と、
を有し、
制御演算部は、
スイッチの状態に基づいて、MCP 483 IE及びHT8が受け付けた操作に対応するデータである操作データを、機械座標系で規定された軸(Spindle)や送り軸(Additional axes)を備えた工作機械への手動操作またはBCS(ベース座標系)とTCS(ツール座標系)で規定されたKUKA KR300 R2500への手動操作のいずれであるかを判定する制御信号処理部と、
BCS(ベース座標系)とTCS(ツール座標系)で規定されたKUKA KR300 R2500への手動操作として判定された操作データをPLC信号に変換する手動操作データ変換部と、
を備え、
前記手動操作データ変換部は、前記KUKA KR300 R2500を制御するロボットコントローラが実行するために用いられる、PLC信号へ変換された操作データを、前記ロボットコントローラへ送信する、
SINUMERIK 840D sl。」


第6 当審の判断

1 取消理由1(新規性)について

(1)本件発明1について

ア 引用文献1に記載された発明との対比
本件発明1と引用文献1に記載された第1発明を対比する。

(ア)制御演算部について
引用文献1に記載された第1発明における「主軸(Spindle)や送り軸(Additional axes)を備えた工作機械」は、本件発明1における「工作機械」に相当し、同様に、「KUKA KR300 R2500」は「ロボット」に相当する。
また、引用文献1に記載された第1発明における「機械座標系」は、本件発明1における「第1の座標系」に相当し、同様に、「プログラム」は「数値制御プログラム」に相当する。
そうすると、引用文献1に記載された第1発明における「主軸(Spindle)や送り軸(Additional axes)を備えた工作機械およびKUKA KR300 R2500を、機械座標系で規定されたプログラムを用いて制御する制御演算部」は本件発明1における「工作機械およびロボットを、第1の座標系で規定された数値制御プログラムを用いて制御する制御演算部」に相当する。

(イ)記憶部について
引用文献1に記載された第1発明における「Gコード及びMコード」は、本件発明1における「第1のプログラム言語」に相当する。
また、引用文献1に記載された第1発明における「Gコード及びMコードで記述された主軸(Spindle)や送り軸(Additional axes)を備えた工作機械への指令」は、本件発明1における「第1のプログラム言語で記述された工作機械への指令である第1の指令」に相当する。
さらに、引用文献1に記載された第1発明における「Gコード及びMコードで記述されたKUKA KR300 R2500への指令」は、本件発明1における「第1のプログラム言語で記述されたロボットへの指令である第2の指令」に相当する。
そうすると、引用文献1に記載された第1発明における「Gコード及びMコードで記述された主軸(Spindle)や送り軸(Additional axes)を備えた工作機械への指令とGコード及びMコードで記述されたKUKA KR300 R2500への指令とを含んだプログラム」及びこの「プログラムを記憶する記憶部」は、本件発明1における「第1のプログラム言語で記述された工作機械への指令である第1の指令と第1のプログラム言語で記述されたロボットへの指令である第2の指令とを含んだ数値制御プログラム」及びこの「数値制御プログラムを記憶する記憶部」に相当する。

(ウ)変換部について
引用文献1に記載された第1発明における「Gコード及びMコードで記述されたKUKA KR300 R2500への指令を、KUKA KR300 R2500を制御するために用いられるPLC信号に変換するFB310等」は、「第2の指令を、ロボットを制御するために用いられる信号に変換する変換部」という限りにおいて、本件発明1における「第2の指令を、数値制御プログラムの実行中に、ロボットを制御する際にロボットプログラムである第3の指令に変換する変換部」に相当する。

(エ)制御演算部による制御について
引用文献1に記載された第1発明における「制御演算部は、主軸(Spindle)や送り軸(Additional axes)を備えた工作機械への指令を用いて主軸(Spindle)や送り軸(Additional axes)を備えた工作機械を制御し、KUKA KR300 R2500を制御するために用いられるPLC信号を用いてKUKA KR300 R2500を制御する」は、
「制御演算部は、第1の指令を用いて工作機械を制御し、ロボットを制御するために用いられる信号を用いてロボットを制御する」という限りにおいて、
本件発明1における「制御演算部は、第1の指令を用いて工作機械を制御し、第3の指令を用いてロボットを制御する」に相当する。

(オ)数値制御装置について
引用文献1に記載された第1発明における「SINUMERIK 840D sl」は、本件発明1における「数値制御装置」に相当する。

(カ)一致点、相違点
したがって、本件発明1と引用文献1に記載された第1発明とは、以下のaの点で一致し、bの点で相違する。

a 一致点
「工作機械およびロボットを、第1の座標系で規定された数値制御プログラムを用いて制御する制御演算部を有し、
制御演算部は、
第1のプログラム言語で記述された工作機械への指令である第1の指令と第1のプログラム言語で記述されたロボットへの指令である第2の指令とを含んだ数値制御プログラムを記憶する記憶部と、
第2の指令を、ロボットを制御するために用いられる信号に変換する変換部と、
を備え、
制御演算部は、第1の指令を用いて工作機械を制御し、ロボットを制御するために用いられる信号を用いてロボットを制御する、
数値制御装置。」

b 相違点

<相違点1−1>
「変換部」について、「第2の指令」を、ロボットを制御するために用いられる信号に変換するのを、本件発明1は、「数値制御プログラムの実行中」に、ロボットを制御する「際に」用いられる「ロボットプログラムである第3の指令」に変換するものであるのに対し、引用文献1に記載された第1発明は、本件発明1のように「数値制御プログラムの実行中」に変換するものではなく、また、KUKA KR300 R2500(ロボット)を制御するために用いられる「PLC信号」に変換するものであって、本件発明1のようにロボットを制御する「際に」用いられる「ロボットプログラムである第3の指令」に変換するものではない点。

イ 判断
相違点1−1について検討する。

(ア)引用文献1には、本件発明1のように「数値制御プログラムの実行中」に変換することについては、何ら記載ないし示唆が認められない。

(イ)また、引用文献1に記載された第1発明における「変換部」は、KUKA KR300 R2500(ロボット)を制御するために用いられる「PLC信号」に変換するものであることから、KUKA KR300 R2500(ロボット)において、「PLCインターフェース」の機能を有する「IM151−3」を介して受信した上記「PLC信号」を、「ロボットコントローラ」の内部でロボット制御指令に変換する必要があるものであり、やはり、本件発明1のように、数値制御装置において、ロボットを制御する「際に」用いられる「ロボットプログラムである第3の指令」に(直接)変換するものとは異なるものであると認められる。

(ウ)そうすると、引用文献1に記載された第1発明は、相違点1−1の点で本件発明1と相違しており、また、引用文献1には、その他に、相違点1−1に係る本件発明1の特定事項に相当するものは開示されていない。

ウ 小括
したがって、引用文献1に記載された第1発明は、相違点1−1に係る本件発明1の特定事項に相当する事項を備えていないため、本件発明1は、取消理由通知書に記載した取消理由1において引用した引用文献1に記載された発明ではない。

(2)本件発明2−3について
本件発明2−3は、本件発明1を引用する発明であって、本件発明1の発明特定事項を備えるものであるから、上記(1)イに説示する理由と同様の理由により、本件発明2−3は、引用文献1に記載された第1発明ではない。

(3)本件発明4について

ア 引用文献1に記載された発明との対比
本件発明4と引用文献1に記載された第2発明を対比する。

(ア)制御演算部について
上記(1)ア(ア)と同様である。

(イ)記憶部について
上記(1)ア(イ)と同様である。

(ウ)アクセス部について
引用文献1に記載された第2発明における「Gコード及びMコードで記述されたKUKA KR300 R2500への指令を受けると、前記Gコード及びMコードで記述されたKUKA KR300 R2500への指令を、前記KUKA KR300 R2500を制御するロボットコントローラが実行するために用いられるPLC信号に変換し、前記KUKA KR300 R2500に前記PLC信号を送る前記ロボットコントローラのIM151−3にアクセスするインターフェースDB300等」は、
「第2の指令を受けると、第2の指令を、ロボットを制御するロボットコントローラが実行するために用いられる信号に変換し、ロボットに制御指令を送るロボットコントローラのロボットインタフェースにアクセスする要素」という限りにおいて、
本件発明4における「数値制御プログラムの実行中に、第2の指令を受けると、第2の指令を、ロボットを制御するロボットコントローラが実行する制御指令に変換し、ロボットに制御指令を送るロボットコントローラのロボットインタフェースにアクセスするアクセス部」に相当する。

(エ)制御演算部による制御について
引用文献1に記載された第2発明における「制御演算部は、主軸(Spindle)や送り軸(Additional axes)を備えた工作機械への指令に基づいて主軸(Spindle)や送り軸(Additional axes)を備えた工作機械を制御し、DB300等によるIM151−3へのアクセスを経てKUKA KR300 R2500を制御する」は、
「制御演算部は、第1の指令に基づいて工作機械を制御し、ロボットコントローラのロボットインタフェースにアクセスする要素によるロボットインタフェースへのアクセスを経てロボットを制御する」という限りにおいて、
本件発明4における「制御演算部は、第1の指令に基づいて工作機械を制御し、アクセス部によるロボットインタフェースへのアクセスによってロボットを制御する」に相当する。

(オ)数値制御装置について
上記(1)ア(オ)と同様である。

(カ)一致点、相違点
したがって、本件発明4と引用文献1に記載された第2発明とは、以下のaの点で一致し、bの点で相違する。

a 一致点
「工作機械およびロボットを、第1の座標系で規定された数値制御プログラムを用いて制御する制御演算部を有し、
制御演算部は、
第1のプログラム言語で記述された工作機械への指令である第1の指令と第1のプログラム言語で記述されたロボットへの指令である第2の指令とを含んだ数値制御プログラムを記憶する記憶部と、
第2の指令を受けると、第2の指令を、ロボットを制御するロボットコントローラが実行するために用いられる信号に変換し、ロボットに制御指令を送るロボットコントローラのロボットインタフェースにアクセスする要素と、
を備え、
制御演算部は、第1の指令に基づいて工作機械を制御し、ロボットコントローラのロボットインタフェースにアクセスする要素によるロボットインタフェースへのアクセスを経てロボットを制御する、
数値制御装置。」

b 相違点

<相違点2−1>
「ロボットインタフェースにアクセスする要素」について、「第2の指令」を、ロボットを制御するために用いられる信号に変換するのを、本件発明4は、「アクセス部」が「数値制御プログラムの実行中」に、「ロボットを制御するロボットコントローラが実行する制御指令」に変換するものであるのに対し、引用文献1に記載された第2発明の「インターフェースDB300等」は、本件発明4のように「数値制御プログラムの実行中」に変換するものではなく、また、KUKA KR300 R2500(ロボット)を制御するロボットコントローラが実行するために用いられる「PLC信号」に変換するものであって、本件発明4のようにロボットを制御するロボットコントローラが実行する制御指令」に変換するものではなく、さらに、本件発明4は「アクセス部による」ロボットインタフェースへのアクセス「によって」ロボットを制御するものであるのに対し、引用文献1に記載された第2発明では「DB300等による」IM151−3(ロボットインタフェース)へのアクセスを経てKUKA KR300 R2500(ロボット)を制御するものである点。

イ 判断
相違点2−1について検討する。

(ア)引用文献1には、本件発明4のように「数値制御プログラムの実行中」に変換することについては、何ら記載ないし示唆が認められない。

(イ)また、引用文献1に記載された第2発明における「インターフェースDB300等」は、KUKA KR300 R2500(ロボット)を制御するために用いられる「PLC信号」に変換するものであることから、KUKA KR300 R2500(ロボット)において、「PLCインターフェース」の機能を有する「IM151−3」を介して受信した上記「PLC信号」を、「ロボットコントローラ」の内部でロボットコントローラが実行する制御指令に変換する必要があるものであり、やはり、本件発明4のように、数値制御装置において、ロボットを制御する「ロボットコントローラが実行する制御指令」に(直接)変換するものとは異なるものであると認められる。

(ウ)そうすると、引用文献1に記載された第2発明は、相違点2−1の点で本件発明4と相違しており、また、引用文献1には、その他に、相違点2−1に係る本件発明4の特定事項に相当するものは開示されていない。

ウ 小括
したがって、引用文献1に記載された第2発明は、相違点2−1に係る本件発明4の特定事項に相当する事項を備えていないため、本件発明4は、取消理由通知書に記載した取消理由1において引用した引用文献1に記載された発明ではない。

(4)本件発明5について
本件発明5は、本件発明4を引用する発明であって、本件発明4の発明特定事項を備えるものであるから、上記(3)イに説示する理由と同様の理由により、本件発明5は、引用文献1に記載された第2発明ではない。

(5)本件発明7について
本件発明7は、本件発明1−6の何れか1つを引用する発明であって、本件発明1または4の発明特定事項を備えるものであるから、上記(1)イまたは(3)イに説示する理由と同様の理由により、本件発明7は、引用文献1に記載された第1発明または第2発明ではない。

(6)本件発明8について

ア 引用文献1に記載された発明との対比
本件発明8と引用文献1に記載された第3発明を対比する。

(ア)手動操作部について
引用文献1に記載された第3発明における「機械座標系」は、本件発明8における「第1の座標系」に相当し、同様に、「主軸(Spindle)や送り軸(Additional axes)を備えた工作機械」は「工作機械」に相当する。そして、引用文献1に記載された第3発明における「機械座標系で規定された主軸(Spindle)や送り軸(Additional axes)を備えた工作機械への手動操作」は、本件発明8における「第1の座標系で規定された工作機械への第1の手動操作」に相当する。
引用文献1に記載された第3発明における「BCS(ベース座標系)とTCS(ツール座標系)」は、本件発明8における「第2の座標系」に相当し、同様に、「KUKA KR300 R2500」は「ロボット」に相当する。そして、引用文献1に記載された第3発明における「BCS(ベース座標系)とTCS(ツール座標系)で規定されたKUKA KR300 R2500への手動操作」は、本件発明8における「第2の座標系で規定されたロボットへの第2の手動操作」に相当する。
そうすると、 引用文献1に記載された第3発明における「機械座標系で規定された主軸(Spindle)や送り軸(Additional axes)を備えた工作機械への手動操作およびBCS(ベース座標系)とTCS(ツール座標系)で規定されたKUKA KR300 R2500への手動操作を、機械座標系への操作として受け付けるMCP 483 IE及びHT8」は、本件発明8における「第1の座標系で規定された工作機械への第1の手動操作および第2の座標系で規定されたロボットへの第2の手動操作を、第1の座標系への操作として受け付ける手動操作部」に相当する。

(イ)切替スイッチについて
引用文献1に記載された第3発明における「MCP 483 IE及びHT8への操作による操作対象を切替るスイッチ」は、本件発明8における「手動操作部への操作による操作対象を切替る切替スイッチ」に相当する。

(ウ)制御演算部について
引用文献1に記載された第3発明における「主軸(Spindle)や送り軸(Additional axes)を備えた工作機械およびKUKA KR300 R2500を制御する制御演算部」は、本件発明8における「工作機械およびロボットを制御する制御演算部」に相当する。

(エ)制御信号処理部について
引用文献1に記載された第3発明における「スイッチの状態に基づいて、MCP 483 IE及びHT8が受け付けた操作に対応するデータである操作データを、機械座標系で規定された軸(Spindle)や送り軸(Additional axes)を備えた工作機械への手動操作またはBCS(ベース座標系)とTCS(ツール座標系)で規定されたKUKA KR300 R2500への手動操作のいずれであるかを判定する制御信号処理部」は、本件発明8における「切替スイッチの状態に基づいて、手動操作部が受け付けた操作に対応するデータである操作データを、第1の手動操作または第2の手動操作のいずれであるかを判定する制御信号処理部」に相当する。

(オ)手動操作データ変換部について
引用文献1に記載された第3発明における「BCS(ベース座標系)とTCS(ツール座標系)で規定されたKUKA KR300 R2500への手動操作として判定された操作データをPLC信号に変換する手動操作データ変換部」は、
「第2の手動操作として判定された操作データをロボットを制御するロボットコントローラが実行するために用いられる信号に変換する手動操作データ変換部」という限りにおいて、
本件発明8における「第2の手動操作として判定された操作データを第2の座標系への操作データに変換する手動操作データ変換部」に相当する。

引用文献1に記載された第3発明における「前記手動操作データ変換部は、前記KUKA KR300 R2500を制御するロボットコントローラが実行するために用いられる、PLC信号へ変換された操作データを、前記ロボットコントローラへ送信する」は、
「手動操作データ変換部は、ロボットを制御するロボットコントローラが実行するために用いられる、信号へ変換された操作データを、ロボットコントローラへ送信する」という限りにおいて、
本件発明8における「手動操作データ変換部は、ロボットを制御するロボットコントローラが実行する、第2の座標系へ変換された操作データを、ロボットコントローラへ送信する」に相当する。

(カ)数値制御装置について
上記(1)ア(オ)と同様である。

(キ)一致点、相違点
したがって、本件発明8と引用文献1に記載された第3発明とは、以下のaの点で一致し、bの点で相違する。

a 一致点
「第1の座標系で規定された工作機械への第1の手動操作および第2の座標系で規定されたロボットへの第2の手動操作を、第1の座標系への操作として受け付ける手動操作部と、
手動操作部への操作による操作対象を切替る切替スイッチと、
工作機械およびロボットを制御する制御演算部と、
を有し、
制御演算部は、
切替スイッチの状態に基づいて、手動操作部が受け付けた操作に対応するデータである操作データを、第1の手動操作または第2の手動操作のいずれであるかを判定する制御信号処理部と、
第2の手動操作として判定された操作データをロボットを制御するロボットコントローラが実行するために用いられる信号に変換する手動操作データ変換部と、
を備え、
手動操作データ変換部は、ロボットを制御するロボットコントローラが実行するために用いられる、信号へ変換された操作データを、ロボットコントローラへ送信する、
数値制御装置。」

b 相違点

<相違点3−1>
「手動操作データ変換部」について、「第2の手動操作として判定された操作データ」を、ロボットを制御するために用いられる、ロボットコントローラへ送信する操作データを、本件発明8は、「ロボットを制御するロボットコントローラが実行する、第2の座標系へ変換された操作データ」とするものであるのに対し、引用文献1に記載された第3発明は、KUKA KR300 R2500(ロボット)を制御するロボットコントローラが実行するために用いられる「PLC信号」とするものであって、本件発明8のように「ロボットを制御するロボットコントローラが実行する、第2の座標系へ変換された操作データ」とするものではない点。

イ 判断
相違点3−1について検討する。

(ア)引用文献1に記載された第3発明における「手動操作データ変換部」は、「BCS(ベース座標系)とTCS(ツール座標系)で規定されたKUKA KR300 R2500への手動操作(第2の手動操作)として判定された操作データ」を、KUKA KR300 R2500(ロボット)を制御するロボットコントローラが実行するために用いられる「PLC信号」に変換するものであることから、KUKA KR300 R2500(ロボット)において、「PLCインターフェース」の機能を有する「IM151−3」を介して受信した上記「PLC信号」を、「ロボットコントローラ」の内部でロボットコントローラが実行する、第2の座標系へ変換された操作データに変換する必要があるものであり、やはり、本件発明8のように、数値制御装置において、ロボットを制御する「ロボットコントローラが実行する、第2の座標系へ変換された操作データ」に(直接)変換するものとは異なるものであると認められる。

(イ)そうすると、引用文献1に記載された第3発明は、相違点3−1の点で本件発明8と相違しており、また、引用文献1には、その他に、相違点3−1に係る本件発明8の特定事項に相当するものは開示されていない。

ウ 小括
したがって、引用文献1に記載された第3発明は、相違点3−1に係る本件発明8の特定事項に相当する事項を備えていないため、本件発明8は、取消理由通知書に記載した取消理由1において引用した引用文献1に記載された発明ではない。

(7)本件発明9について
本件発明9は、本件発明1−8の何れか1つを引用する発明であって、本件発明1、4または8の発明特定事項を備えるものであるから、上記(1)イ、(3)イまたは(6)イに説示する理由と同様の理由により、本件発明9は、引用文献1に記載された第1発明、第2発明または第3発明ではない。

(8)本件発明10について
本件発明10は、本件発明1の「数値制御装置」による「数値制御方法」に対応する発明であると認められる。
また、引用文献1には、引用文献1に記載された第1発明(数値制御装置の発明)と同様に、引用文献1に記載された第1発明による数値制御方法の発明(以下「引用文献1に記載された第4発明」という。)も記載されているといえる。
そして、本件発明10と引用文献1に記載された第4発明は、相違点1−1と同様の点で相違し、上記(1)イに説示する理由と同様の理由により、本件発明10は、引用文献1に記載された第4発明ではない。

(9)本件発明11について
本件発明11は、本件発明10を引用する発明であって、本件発明10の発明特定事項を備えるものであるから、上記(8)に説示する理由と同様の理由により、本件発明11は、引用文献1に記載された第4発明ではない。

(10) まとめ
以上のとおりであるから、取消理由通知書により通知した取消理由1によっては、請求項1−11に係る特許を取り消すことはできない。

2 取消理由2(進歩性)について

(1)本件発明6について
本件発明6は、本件発明1から5の何れか1つを引用する発明であって、本件発明1又は4の発明特定事項を備えるものであるから、上記1(1)ア(カ)bの相違点1−1または上記1(3)ア(カ)bの相違点2−1で少なくとも相違しており、該各相違点については、上記1(1)イまたは上記1(3)イに説示する理由と同様の理由により、引用文献1に記載されたものではない。

そして、取消理由通知において本件発明6について引用した引用文献2には、段落【0069】及び【0074】−【0076】の記載からみて、本件発明の用語を用いて記載すると、以下の技術的事項(以下、「引用文献2に記載された技術的事項」という。)が記載されていると認められる。

「数値制御プログラムは、工作機械とロボットとの間の同期命令を含み、
制御演算部は、
第1の指令の実行中に第1の指令内にロボットの動作を待つ第1の待機指令が現れると、第1の待機指令に対応するロボットの動作が完了するまで工作機械の動作を待機させる第1の待ち合わせ部と、
第2の指令の実行中に第2の指令内に工作機械の動作を待つ第2の待機指令が現れると、第2の待機指令に対応する工作機械の動作が完了するまでロボットの動作を待機させる第2の待ち合わせ部と、
を備える数値制御装置。」

しかしながら、引用文献2に記載された技術的事項は、相違点1−1に係る本件発明1の発明特定事項または相違点2−1に係る本件発明4の発明特定事項に相当するものとは認められない。

したがって、引用文献2に記載された技術的事項を参酌しても、相違点1−1に係る本件発明1の特定事項または相違点2−1に係る本件発明6の発明特定事項には当業者が容易に想到し得るものではないことから、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明6は、取消理由通知の取消理由2において引用した引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件発明7について
本件発明6を引用する本件発明7は、本件発明1または4の発明特定事項を備えるものであるから、上記(1)に説示する理由と同様の理由により、本件発明7は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件発明9について
本件発明9は、本件発明1から8の何れか1つを引用する発明であって、本件発明1、4または8の発明特定事項を備えるものであるから、上記1(1)ア(カ)bの相違点1−1、上記1(3)ア(カ)bの相違点2−1または上記1(6)ア(キ)bの相違点3−1で少なくとも相違しており、該各相違点については、上記1(1)イ、上記1(3)イまたは上記1(6)イに説示する理由と同様の理由により、引用文献1に記載されたものではない。

そして、取消理由通知において本件発明9について引用した引用文献3−4には、引用文献3の段落【0001】−【0005】及び引用文献4の段落【0073】−【0075】の記載からみて、本件発明の用語を用いて記載すると、以下の周知の技術(以下、「周知技術」という。)が記載されていると認められる。

「ロボットの動作に対してオーバライドをかけること。」

しかしながら、該周知技術は、相違点1−1に係る本件発明1の発明特定事項、相違点2−1に係る本件発明4の発明特定事項または相違点3−1に係る本件発明8の発明特定事項に相当するものとは認められない。

したがって、引用文献3−4に示す周知技術を参照しても、相違点1−1に係る本件発明1の特定事項、相違点2−1に係る本件発明4の発明特定事項または相違点3−1に係る本件発明8の発明特定事項には当業者が容易に想到し得るものではないことから、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明9は、取消理由通知の取消理由2において引用した引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4) まとめ
以上のとおりであるから、異議申立書に記載された取消理由2によっては、請求項6、7、9に係る特許を取り消すことはできない。

3 取消理由として採用しなかった異議申立理由について

(1)取消理由として採用しなかった異議申立理由(進歩性)の概要
異議申立書に記載した特許異議申立理由のうち、本件訂正請求による訂正前の請求項1−11に係る特許に対して、当審が令和3年9月30日付けで特許権者に通知した取消理由として採用しなかった理由は以下のとおりである。

ア 請求項1−5、7、9−11に係る発明は、甲第5号証に記載された発明、甲第6号証に記載された技術的事項及び甲第7号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1−5、7、9−11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

イ 請求項6に係る発明は、甲第5号証に記載された発明、甲第6号証に記載された技術的事項、甲第7号証に記載された技術的事項及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

ウ 請求項8に係る発明は、甲第5号証に記載された発明、甲第6号証に記載された技術的事項、甲第7号証に記載された技術的事項及び甲第8号証に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

◎取消理由通知で引用しなかった文献
甲第5号証:特開平9−305213号公報
甲第6号証:特開平1−133111号公報
甲第7号証:特開2013−134786号公報
甲第8号証:特開平10−83211号公報

(2)上記(1)についての当審の判断

ア 本件発明1について

(ア)引用文献5の記載

a 引用文献5の記載事項

(a) 「【0001】
【発明の属する技術分野】切削加工やバリ取り作業を行うようにされた産業用ロボットにおいて、特にロボット言語に加えてNC言語を使用可能にしたロボット制御装置に関する。」

(b) 「【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。 図1は本発明の一実施形態のロボット制御装置における、内部の制御ブロック 図を示している。ツール交換やワークハンドリング等に代表される主にロボットアーム全体の動作制御を行うためのロボット言語プログラムは、メモリー1内のロボット言語プログラム格納部2に、またバリ取りや穿明けに代表される主に切削加工作業の動作制御を行うためのNC言語プログラムはメモリー1内のNC言語プログラム格納部3に、それぞれ予め格納するようにされている。通常、ロボット言語プログラムはティーチングにより、またNC言語プログラムはロボット制御装置に接続された図示しないキーボード等により入力できるようにされているが、ロボット言語プログラムに関してはキーボードによる入力も可能にされている。
【0011】プログラム切換部4は、言語プログラム切換指令に従いロボット言語プログラム格納部2に格納されたロボット言語プログラムまたはNC言語プログラム格納部3に格納されたNC言語プログラムのいずれか一方を選択入力し、プログラム実行処理部5へ出力するようにされている。言語プログ ラム切換指令はロボット言語とNC言語のそれぞれにおいてコマンド(指令語)の一つとして設定されており、コマンドの直後に付加されているプログラム番号にて指定されたプログラムを実行するようにされている。実際の処理では、ロボット言語プログラム実行中に言語プログラム切換指令がされたときは、ロボット言語プログラムの実行が中断されるとともに言語プログラム切換指令 の直後に付加されているプログラム番号にて指定されたNC言語プログラムが呼び出され実行され、一方、NC言語プログラム実行中に言語プログラム切 換指令がされたときは、NC言語プログラムの実行が中断されるとともに言語プログラム切換指令の直後に付加されているプログラム番号にて指定されたロボット言語プログラムが呼び出され実行されることになる。
【0012】プログラム実行処理部5は、プログラム切換部4から出力されたロボット言語プログラム及びNC言語プログラムを入力し、これらの言語プログラムをロボットを動作させるための座標データに変換した後、これを軌跡生成部6へ出力する。軌跡生成部6は入力された座標データに基づいてロボットの各軸を駆動するための角度データに変換した後、この角度データをロボットの各軸を駆動制御する図示しないサーボモータ等の制御装置へ出力するようにされている。」

(c) 「【0013】
【実施例】ここで、プログラム切換部4において実行される処理について、図2及び図3に示す2つの実施例により説明する。図2はNC言語プログラムの実行中にロボット言語プログラムに実行を切り換える処理を示す第1の実施例を示している。図2に示すNC言語プログラム(O0015)の実行中において、ロボット言語プログラムを呼び出すGコード指令(G301 P10)が記載されたブログラムブロックに到逹すると、図1に示したプログラム切換部4は該当するロボット言語プログラム(プログラム10)を呼び出す。ここで、「G301」はNC言語プログラムにおいて規定されているロボット言語プログラムへのプログラムの実行の切り換えを指令するコマンドすなわち言語プログラム切換指令であり、「G301」に続く「P**」(**は2桁の整数)はこの指令の直後に実行が開始されるロボット言語プログラムのプログラム番号を示すものであり、例えば「G301 P10」によりロボット言語プログラム中の複数のプログラムの中からプログラム10が指定される。そして切り換えられたロボット言語プログラムの実行中に、実行中のプログラムの最終ブロックを示す「END」が実行されると、ロボット言語プログラムの実行が終了し、再びNC言語プログラムに実行が移され、「G301 P10」の次のプログラムブロックが実行される。図2に示すNC言語プログラム中のGコード指令(G301 P20)及び(G301P11)についても同様である。」

(d) 「【0015】このように、NC言語プログラムの実行中にロボット言語プ ログラムを呼び出す命令(G301 P20)があると、該当するロボット言語プログラムをメモリー1のロボット言語プログラム格納部2から読み出し実行する。そして実行しているロボット言語プログラムの最後を示す命令(END)を実行すると、先に実行していたNC言語プログラムをNC言語プログラム格納部3から読み出し、ロボット言語プログラムを呼び出した命令(G301)の次のプログラムブロックから処理を続行する。同様に、ロボット言語プログラム の実行中にNC言語プログラムを呼び出す命令(CALLNC)があると、該当するNC言語プログラムをメモリー1のNC言語プログラム格納部3から読み出し実行する。そして実行しているNC言語プログラムの最後を示す命令(M30)を実行すると、先に実行していたロボット言語プログラムをロボッ卜言語プログラム格納部2から読み出し、NC言語プログラムを呼び出した命令(CALLNC)の次のプログラムブロックから処理を続行する。
【0016】本発明の処理手順をわかりやすく説明するために、上記の2つの実施例により、NC言語プログラムの実行中にロボット言語プログラムを呼び出す場合と、ロボット言語プログラムの実行中にNC言語プログラムを呼び出す場合とに分けて示したが、各言語プログラム切換指令すなわちNC言語プログラムの実行中にロボット言語プログラムを呼び出す命令(G301)及びロボット言語プログラムの実行中にNC言語プログラムを呼び出す命令(CALLNC)を一連のプログラム中に併存して使用するようにすれば、NC言語プ ログラムとロボット言語プログラムとの間で自由に言語プログラムの切り換えができるようになる。」

(e) 「【0018】
【発明の効果】本発明によれば、ロボット言語及びNC言語の両方を使用可能にされた産業用ロボットの制御装置において、ロボット言語プログラム実行中に言語プログラム切換指令がされたときは、ロボット言語プログラムの実行が中断されるとともに言語プログラム切換指令に基づくNC言語プログラムが呼び出され実行され、一方、NC言語プログラム実行中に言語プログラム切換指令がされたときは、NC言語プログラムの実行が中断されるとともに言語プログラム切換指令に基づくロボット言語プログラムが呼び出され実行されるようにしたので、NC言語が制御する動作とロボット言語が制御する動作との切り換えを、各言語プログラムにおいて規定したコマンド(指令語)により容易に実行できるようになった。」

(f) 「【図1】



(g) 「【図2】



b 引用文献5に記載された発明

上記aからみて、引用文献5には以下の発明(以下、「引用文献5に記載された発明」という。)が記載されていると認められる。(なお、括弧内に本件発明の対応する用語を付記する。)

「産業用ロボット(工作機械およびロボット)を、座標系(第1の座標系)で規定されたNC言語(第1のプログラム言語)プログラム及びロボット言語プログラム(ロボットプログラム)を用いて制御するプログラム実行処理部5(制御演算部)を有し、
プログラム実行処理部5(制御演算部)は、
NC言語プログラムで記述された産業用ロボット(工作機械)への指令とロボット言語プログラムで記述された産業用ロボット(ロボット)ヘの指令とを含んだNC言語プログラム及びロボット言語プログラムを記憶するメモリー1(記憶部)と、

を備え、
プログラム実行処理部5(制御演算部)は、NC言語(第1のプログラム言語)プログラムで記述された産業用ロボット(工作機械)への指令(第1の指令)を用いて産業用ロボット(工作機械)を制御し、ロボット言語プログラムで記述された産業用ロボットヘの指令(第3の指令)を用いて産業用ロボット(ロボット)を制御する、
ロボット制御装置(数値制御装置)。」

(イ)対比
本件発明1と甲第5号証に記載された発明とを対比すると、以下のaの点で一致し、bの点で相違する。

a 一致点
「工作機械およびロボットを、第1座標系で規定された数値制御プログラムを用いて制御する制御演算部を有し、
前記制御演算部は、
第1のプログラム言語で記述された前記工作機械への指令である第1の指令とロボットプログラムである第3の指令とを含んだ前記数値制御プログラムを記憶する記憶部と、
を備え、
前記制御演算部は、前記第1のプログラム言語で記述された前記工作機械への指令第1の指令を用いて前記工作機械を制御し、前記第3の指令を用いて前記ロボットを制御する、
数値制御装置。」

b 相違点

<相違点1−2>
「ロボットヘの指令」について、本件発明1においては、「第1のプログラム言語で記述されたロボットヘの指令である第2の指令」を、「前記数値制御プログラムの実行中に、前記ロボットを制御する際に用いられるロボットプログラムである第3の指令に変換する変換部」を備えるものであるのに対し、甲第5号証に記載された発明においては、「ロボットプログラムである第3の指令」であり、本件発明1のように「変換部」を備えるものではない点。

(ウ)判断
上記相違点1−2について検討する。

甲第5号証に記載された発明は、「ロボットへの指令」について、本件発明1のような「変換部」を備えるまでもなく、最初から本件発明1の「ロボットプログラムである第3の指令」に相当する指令を記憶しているものである。
そうすると、甲第5号証に記載された発明において、敢えて「ロボットプログラムである第3の指令」をいったん「NC言語」(第1のプログラム言語)で記述して、それをさらに「ロボットプログラムである第3の指令」に変換する、すなわち、甲第5号証に記載された発明において既に備わっている指令に戻す必要性に乏しく、このような改変を行う動機があるとは認められず、むしろ、そのような改変を行うことには阻害要因があるというべきである。
したがって、甲第6号証及び甲第7号証を検討するまでもなく、甲第5号証に記載された発明を主引用発明とすると、相違点1−2に係る本件発明1の発明特定事項には容易に想到し得るものとは認められない。

(エ)小括
よって、本件発明1は、甲第5号証に記載された発明、甲第6号証に記載された技術的事項及び甲第7号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件発明2−3について
本件発明2−3は、本件発明1の発明特定事項を備えるものであるから、上記アに説示する理由と同様の理由により、本件発明1は、甲第5号証に記載された発明、甲第6号証に記載された技術的事項及び甲第7号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件発明4について

(ア)対比
本件発明4と甲第5号証に記載された発明とを対比すると、以下のaの点で一致し、bの点で相違する。

a 一致点
「工作機械およびロボットを、第1座標系で規定された数値制御プログラムを用いて制御する制御演算部を有し、
前記制御演算部は、
第1のプログラム言語で記述された前記工作機械への指令である第1の指令とロボットを制御するロボットコントローラが実行する制御指令とを含んだ前記数値制御プログラムを記憶する記憶部と、
を備え、
前記制御演算部は、前記第1のプログラム言語で記述された前記工作機械への指令第1の指令を用いて前記工作機械を制御し、前記ロボットを制御するロボットコントローラが実行する制御指令を用いて前記ロボットを制御する、
数値制御装置。」

b 相違点

<相違点2−2>
「ロボットを制御する」にあたり、本件発明4においては、「第1のプログラム言語で記述されたロボットヘの指令である第2の指令」を、「前記数値制御プログラムの実行中に、前記第2の指令を受け取ると、前記第2の指令を、前記ロボットを制御するロボットコントローラが実行する制御指令に変換し、前記ロボットに前記制御指令を送る前記ロボットコントローラのロボットインタフェースにアクセスするアクセス部」を備えるものであるのに対し、甲第5号証に記載された発明においては、「ロボットを制御するロボットコントローラが実行する制御指令」を用いて産業用ロボット(ロボット)を制御するものであり、本件発明4のように「アクセス部」を備えるものではない点。

(ウ)判断
上記相違点2−2について検討する。

甲第5号証に記載された発明は、「ロボットを制御する」にあたり、本件発明4のような「アクセス部」を備えるまでもなく、最初から本件発明4の「ロボットを制御するロボットコントローラが実行する制御指令」と同様な指令を記憶しているものである。
そうすると、甲第5号証に記載された発明において、「ロボットを制御するロボットコントローラが実行する制御指令」を敢えて「NC言語」(第1のプログラム言語)で記述して、それをさらに「ロボットコントローラが実行する制御指令」に変換する必要性に乏しく、このような改変を行う動機があるとは認められず、むしろ、そのような改変を行うことには阻害要因があるというべきである。
したがって、甲第6号証及び甲第7号証を検討するまでもなく、甲第5号証に記載された発明を主引用発明とすると、相違点2−2に係る本件発明4の発明特定事項には容易に想到し得るものとは認められない。

(エ)小括
よって、本件発明4は、甲第5号証に記載された発明、甲第6号証に記載された技術的事項及び甲第7号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ 本件発明5について
本件発明5は、本件発明4の発明特定事項を備えるものであるから、上記ウに説示する理由と同様の理由により、本件発明5は、甲第5号証に記載された発明、甲第6号証に記載された技術的事項及び甲第7号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

オ 本件発明6について
本件発明6は、本件発明1または4の発明特定事項を備えるものであるから、上記アまたはウに説示する理由と同様の理由により、本件発明6は、甲第5号証に記載された発明、甲第6号証に記載された技術的事項、甲第7号証に記載された技術的事項及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

カ 本件発明7について
本件発明7は、本件発明1または4の発明特定事項を備えるものであるから、上記アまたはウに説示する理由と同様の理由により、本件発明7は、甲第5号証に記載された発明、甲第6号証に記載された技術的事項及び甲第7号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

キ 本件発明8について

(ア)対比
本件発明8と甲第5号証に記載された発明とを対比すると、以下のaの点で一致し、bの点で相違する。

a 一致点
「産業用ロボット(工作機械およびロボット)を、制御するプログラム実行処理部5(制御演算部)を有する、
ロボット制御装置(数値制御装置)。」

b 相違点

<相違点3−2>
本件発明8は、「手動操作部」と「切替えスイッチ」とを有し、「制御演算部」は「制御信号処理部」と「手動操作データ変換部」とを備えているのに対し、甲第5号証に記載された発明には、これらがいずれも備わっていない点。

(イ)判断
上記相違点3−2について検討する。

甲第5号証に記載された発明は、「産業用ロボット(工作機械およびロボット)を、座標系(第1の座標系)で規定されたNC言語プログラム及びロボット言語プログラム(ロボットプログラム)を用いて制御する」ものであり、甲第5号証には、本件発明8のような「手動操作部」に関する事項については記載されておらず、採用する契機となるものがあるとは認められない。

そして、甲第5号証に記載された発明は、「ロボット言語プログラムで記述された産業用ロボットヘの指令を用いて産業用ロボットを制御する」ものであるから、仮に「手動操作部」を採用してロボットを手動で操作するとしても、手動操作部が受け付ける操作データは、最初から、第2の座標系における操作データになると解するほかなく、本件発明8のような「手動操作データ変換部」を備えるように改変を行う動機があるとは認められず、むしろ、そのような改変には阻害要因があるというべきである。
したがって、甲第6号証ないし甲第8号証を検討するまでもなく、甲第5号証に記載された発明を主引用発明とすると、相違点3−2に係る本件発明8の発明特定事項には容易に想到し得るものとは認められない。

(ウ)小括
よって、本件発明8は、甲第5号証に記載された発明、甲第6号証に記載された技術的事項、甲第7号証に記載された技術的事項及び甲第8号証に記載された周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ク 本件発明9について
本件発明9は、本件発明1から8の何れか1つを引用する発明であって、本件発明1、4または8の発明特定事項を備えるものであるから、上記アの相違点1−2、上記ウの相違点2−2または上記キの相違点3−2で少なくとも相違しており、該各相違点については、上記ア、上記ウまたは上記キに説示する理由と同様の理由により、甲第5号証に記載された発明、甲第6号証に記載された技術的事項及び甲第7号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ケ 本件発明10について
本件発明10は、本件発明1の「数値制御装置」による「数値制御方法」に対応する発明であると認められる。
また、甲第5号証には、甲第5号証に記載された発明(数値制御装置の発明)と同様に、甲第5号証に記載された発明による数値制御方法の発明(以下「甲第5号証に記載された第2発明」という。)も記載されているといえる。
そして、本件発明10は、上記アに説示する理由と同様の理由により、甲第5号証に記載された第2発明、甲第6号証に記載された技術的事項及び甲第7号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

コ 本件発明11について
本件発明11は、本件発明10を引用する発明であって、本件発明10の発明特定事項を備えるものであるから、上記ケに説示する理由と同様の理由により、本件発明11は、甲第5号証に記載された第2発明、甲第6号証に記載された技術的事項及び甲第7号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

サ 本件発明1−11の容易想到性
したがって、取消理由として採用しなかった異議申立理由によって、本件発明1−11に係る特許を取り消すことはできない。


第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知書に記載した取消理由1−2及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、請求項1−11に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1−11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械およびロボットを、第1の座標系で規定された数値制御プログラムを用いて制御する制御演算部を有し、
前記制御演算部は、
第1のプログラム言語で記述された前記工作機械への指令である第1の指令と前記第1のプログラム言語で記述された前記ロボットへの指令である第2の指令とを含んだ前記数値制御プログラムを記憶する記憶部と、
前記第2の指令を、前記数値制御プログラムの実行中に、前記ロボットを制御する際に用いられるロボットプログラムである第3の指令に変換する変換部と、
を備え、
前記制御演算部は、前記第1の指令を用いて前記工作機械を制御し、前記第3の指令を用いて前記ロボットを制御する、
ことを特徴とする数値制御装置。
【請求項2】
前記制御演算部は、前記数値制御プログラムの実行中に、前記ロボットを制御するロボットコントローラに前記第3の指令を送信する、
ことを特徴とする請求項1に記載の数値制御装置。
【請求項3】
前記第1の指令および前記第2の指令は、前記第1の座標系で規定されており、
前記第3の指令は、第2の座標系で規定されるとともに第2のプログラム言語で記述されており、
前記変換部は、
前記第2の指令を、前記数値制御プログラムの実行中に、前記第1の座標系と前記第2の座標系との対応関係に基づいて前記第3の指令に変換する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の数値制御装置。
【請求項4】
工作機械およびロボットを、第1の座標系で規定された数値制御プログラムを用いて制御する制御演算部を有し、
前記制御演算部は、
第1のプログラム言語で記述された前記工作機械への指令である第1の指令と前記第1のプログラム言語で記述された前記ロボットへの指令である第2の指令とを含んだ前記数値制御プログラムを記憶する記憶部と、
前記数値制御プログラムの実行中に、前記第2の指令を受けると、前記第2の指令を、前記ロボットを制御するロボットコントローラが実行する制御指令に変換し、前記ロボットに前記制御指令を送る前記ロボットコントローラのロボットインタフェースにアクセスするアクセス部と、
を備え、
前記制御演算部は、前記第1の指令に基づいて前記工作機械を制御し、前記アクセス部による前記ロボットインタフェースへのアクセスによって前記ロボットを制御する、
ことを特徴とする数値制御装置。
【請求項5】
前記ロボットインタフェースは、第2の座標系で規定された関数および指令座標でアクセスされた場合に前記関数および前記指令座標に対応する処理を前記ロボットに実行し、
前記アクセス部は、前記数値制御プログラムの実行中に、前記ロボットインタフェースに対し、前記第1の座標系と前記第2の座標系との対応関係に基づいて、前記第2の指令に対応する関数および指令座標でアクセスする、
ことを特徴とする請求項4に記載の数値制御装置。
【請求項6】
前記数値制御プログラムは、前記工作機械と前記ロボットとの間の同期命令を含み、
前記制御演算部は、
前記第1の指令の実行中に前記第1の指令内に前記ロボットの動作を待つ第1の待機指令が現れると、前記第1の待機指令に対応する前記ロボットの動作が完了するまで前記工作機械の動作を待機させる第1の待ち合わせ部と、
前記第2の指令の実行中に前記第2の指令内に前記工作機械の動作を待つ第2の待機指令が現れると、前記第2の待機指令に対応する前記工作機械の動作が完了するまで前記ロボットの動作を待機させる第2の待ち合わせ部と、
をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1から5の何れか1つに記載の数値制御装置。
【請求項7】
前記数値制御プログラムを編集する際の編集画面、前記ロボットの状態を表示する状態表示画面を表示する表示部をさらに有する、
ことを特徴とする請求項1から6の何れか1つに記載の数値制御装置。
【請求項8】
第1の座標系で規定された工作機械への第1の手動操作および第2の座標系で規定されたロボットへの第2の手動操作を、前記第1の座標系への操作として受け付ける手動操作部と、
前記手動操作部への操作による操作対象を切替る切替スイッチと、
前記工作機械および前記ロボットを制御する制御演算部と、
を有し、
前記制御演算部は、
前記切替スイッチの状態に基づいて、前記手動操作部が受け付けた操作に対応するデータである操作データを、前記第1の手動操作または前記第2の手動操作のいずれであるかを判定する制御信号処理部と、
前記第2の手動操作として判定された操作データを前記第2の座標系への操作データに変換する手動操作データ変換部と、
を備え、
前記手動操作データ変換部は、前記ロボットを制御するロボットコントローラが実行する、前記第2の座標系へ変換された操作データを、前記ロボットコントローラへ送信する、
ことを特徴とする数値制御装置。
【請求項9】
前記制御演算部は、前記ロボットの動作に対するオーバライドの指示を受け付けると、前記ロボットの動作に対してオーバライドをかける、
ことを特徴とする請求項1から8の何れか1つに記載の数値制御装置。
【請求項10】
工作機械およびロボットを、第1の座標系で規定された数値制御プログラムを用いて制御する制御演算ステップを有し、
前記制御演算ステップは、
第1のプログラム言語で記述された前記工作機械への指令である第1の指令と前記第1のプログラム言語で記述された前記ロボットへの指令である第2の指令とを含んだ前記数値制御プログラムを記憶する記憶ステップと、
前記第2の指令を、前記数値制御プログラムの実行中に、前記ロボットを制御する際に用いられるロボットプログラムである第3の指令に変換する変換ステップと、
前記第1の指令を用いて前記工作機械を制御し、前記第3の指令を用いて前記ロボットを制御する制御ステップと、
を含むことを特徴とする数値制御方法。
【請求項11】
前記制御演算ステップでは、前記数値制御プログラムの実行中に、前記ロボットを制御するロボットコントローラに前記第3の指令を送信する、
ことを特徴とする請求項10に記載の数値制御方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-06-30 
出願番号 P2019-554952
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (G05B)
P 1 651・ 113- YAA (G05B)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 刈間 宏信
特許庁審判官 大山 健
河端 賢
登録日 2020-01-16 
登録番号 6647472
権利者 三菱電機株式会社
発明の名称 数値制御装置および数値制御方法  
代理人 高村 順  
代理人 高村 順  

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