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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A61F
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A61F
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61F
審判 全部申し立て 2項進歩性  A61F
管理番号 1388353
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-09-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-04-28 
確定日 2022-07-12 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6775048号発明「吸水性樹脂粒子、吸水性樹脂粒子の液体漏れ性の評価方法、及び吸水性樹脂粒子の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6775048号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1について訂正することを認める。 特許第6775048号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第6775048号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし3に係る特許についての出願は、2019年(平成31年)3月22日(優先権主張 平成30年12月12日)の出願であって、令和2年10月7日にその特許権の設定登録(請求項の数3)がされ、同年同月28日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、その特許に対し、令和3年4月28日に特許異議申立人 株式会社日本触媒(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされ、同年7月30日付けで取消理由が通知され、同年10月11日に特許権者 住友精化株式会社(以下、「特許権者」という。)より訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がなされるとともに意見書の提出がされ、同年同月15日付けで特許法第120条の5第5項に基づく訂正請求があった旨の通知を行ったところ、同年11月18日に特許異議申立人より意見書の提出がされ、令和4年1月27日付で取消理由(決定の予告)が通知されたところ、同年4月1日に特許権者より意見書が提出されたものである。

第2 訂正の適否についての判断

1 訂正の内容

本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。(下線は、訂正箇所について合議体が付したものである。)

(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「生理食塩水で30倍に膨潤させたときの波長425nmにおける光線透過率が、50%以上」
とあるのを、
「生理食塩水で30倍に膨潤させたときの波長425nmにおける光線透過率が、60%以上」
と訂正する。

(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に、
「中位粒子径が250〜600μm」
とあるのを、
「中位粒子径が250〜384μm」

と訂正する。

(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に、
「である、吸水性樹脂粒子。」
とあるのを、
「であり、
以下のi)、ii)、iii)、iv)及びv)の手順により測定される拡散距離Dが14cm以上でない、吸水性樹脂粒子。
i)長さ15cm、幅5cmの短冊状の粘着テープを粘着面が上になるよう実験台上に置き、その粘着面上に、前記吸水性樹脂粒子3.0gを均一に散布する。散布された前記吸水性樹脂粒子の上部に、ステンレス製ローラー(質量4.0kg、径10.5cm、幅6.0cm)を載せ、該ローラーを、前記粘着テープの長手方向における両端の間で3回往復させる。これにより、前記吸水性樹脂粒子からなる吸水層を前記粘着テープの前記粘着面上に形成する。
ii)前記粘着テープを垂直に立てて、余剰の前記吸水性樹脂粒子を吸水層から除く。再度、前記吸水層に前記ローラーを載せ、前記粘着テープの長手方向における両端の間で3回往復させる。
iii)温度25±2℃の室内において、長さ30cm、幅55cmの長方形の平坦な主面を有するアクリル樹脂板を、その幅方向が水平面に平行で、その主面と水平面とが30度をなすように固定する。固定された前記アクリル板の主面に、前記吸水層が形成された前記粘着テープを、前記吸水層が露出し、その長手方向が前記アクリル樹脂板の幅方向に対して垂直になる向きで貼り付ける。
iv)前記吸水層の上端から1cmの位置で表面から1cmの高さから、液温25℃の試験液0.25mLを、マイクロピペットを用いて、1秒以内に全て注入する。
v)試験液の注入開始から30秒後に、前記吸水層に注入された試験液の移動距離の最大値を読み取り、拡散距離Dとして記録する。」
と訂正する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否

・訂正事項1ないし3について
訂正事項1ないし3に係る請求項1の訂正は、吸収性樹脂粒子に関し、特定条件下における特定波長の光線透過率の範囲を減縮し、中位粒子径の範囲を減縮し、拡散距離試験における試験条件及び拡散距離の範囲を特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1ないし3に係る請求項1の訂正は、願書に添付した明細書の段落【0017】、【0087】及び【0104】の記載からみて、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであるから新規事項の追加に該当しない。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。

3 訂正の適否についてのまとめ

以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1について訂正することを認める。

第3 本件特許

上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし3に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明3」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する架橋重合体を含み、
(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体全量に対して70〜100モル%である、吸水性樹脂粒子であって、
生理食塩水で30倍に膨潤させたときの波長425nmにおける光透過率が、60%以上であり、
生理食塩水の保水量が30〜55g/gであり、
中位粒子径が250〜384μmであり、
以下のi)、ii)、iii)、iv)及びv)の手順により測定される拡散距離Dが14cm以上でない、吸水性樹脂粒子。
i)長さ15cm、幅5cmの短冊状の粘着テープを粘着面が上になるよう実験台上に置き、その粘着面上に、前記吸水性樹脂粒子3.0gを均一に散布する。散布された前記吸水性樹脂粒子の上部に、ステンレス製ローラー(質量4.0kg、径10.5cm、幅6.0cm)を載せ、該ローラーを、前記粘着テープの長手方向における両端の間で3回往復させる。これにより、前記吸水性樹脂粒子からなる吸水層を前記粘着テープの前記粘着面上に形成する。
ii)前記粘着テープを垂直に立てて、余剰の前記吸水性樹脂粒子を吸水層から除く。再度、前記吸水層に前記ローラーを載せ、前記粘着テープの長手方向における両端の間で3回往復させる。
iii)温度25±2℃の室内において、長さ30cm、幅55cmの長方形の平坦な主面を有するアクリル樹脂板を、その幅方向が水平面に平行で、その主面と水平面とが30度をなすように固定する。固定された前記アクリル板の主面に、前記吸水層が形成された前記粘着テープを、前記吸水層が露出し、その長手方向が前記アクリル樹脂板の幅方向に対して垂直になる向きで貼り付ける。
iv)前記吸水層の上端から1cmの位置で表面から1cmの高さから、液温25℃の試験液0.25mLを、マイクロピペットを用いて、1秒以内に全て注入する。
v)試験液の注入開始から30秒後に、前記吸水層に注入された試験液の移動距離の最大値を読み取り、拡散距離Dとして記録する。
【請求項2】
吸水性樹脂粒子の液体漏れ性を評価する方法であって、
前記吸水性樹脂粒子が、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する架橋重合体を含み、
(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体全量に対して70〜100モル%であり、
生理食塩水で30倍に膨潤させたときの前記吸水性樹脂粒子の波長425nmにおける光透過率が、50%以上である場合に、吸水性樹脂粒子の液体漏れ抑制の効果が大きいと評価する、方法。
【請求項3】
吸水性樹脂粒子の製造方法であって、
前記吸水性樹脂粒子が、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する架橋重合体を含み、
(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体全量に対して70〜100モル%であり、
生理食塩水で30倍に膨潤させたときの前記吸水性樹脂粒子の波長425nmにおける光透過率を測定する工程を備える、製造方法。」

第4 特許異議申立人が主張する特許異議申立理由について

特許異議申立人が特許異議申立書において、本件特許の請求項1ないし3に係る特許に対して申し立てた特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。

申立理由1(新規性) 本件特許の請求項1に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1ないし11号証にそれぞれ記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、その特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

申立理由2(進歩性) 本件特許の請求項1〜3に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1ないし11号証にそれぞれ記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

申立理由3(明確性要件) 本件特許の請求項1〜3についての特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

申立理由3は、概略次のとおりである。

甲12には光の透過性が高いと残存する気泡の量が低減されると記載されている(【0107】)。本件特許権者も2019年11月27日付け意見書において「一般的に、吸水性樹脂粒子では、膨潤したときに粒子間が他成分や空隙によって開くと、光の散乱が生じやすくなり、結果として、光透過性が低くなる傾向があります。」と答弁する。
本件明細書の【0016】、【0096】、【0097】には光透過率の測定法が記載され、光透過率の測定前に「回転数200rpmにて10分間脱泡」することが記載されている。
本件請求項1の光透過率について、甲12の記載や、本件出願人の答弁から、脱泡の有無や程度で光透過率が大きく変化すると考えられるところ、本件請求項1〜3での光透過率に脱泡の有無や脱泡方法が規定されていない。本件請求項1での光透過率の脱泡の有無や脱泡方法を規定しないと、本件請求項1での光透過率の値は定まらないのは自明である。ここで、光透過率の測定において「遠心分離機(例えば、株式会社コクサン製の品番H−36)を用いて、回転数200rpmにて10分間脱泡を行う。」と規定されたとしても、本件明細書からは脱泡の程度に影響を与える遠心加速度が開示されていない。具体的には、本件明細書には、遠心分離機のロータ(セルを設置する台)の型が記載されておらず、回転半径が記載されていない(【0016】)。また、仮にコクサン製の品番H−36のカタログ(甲14)を参照したとしても、ロータの種類によって回転半径が17.0〜6.4mmの範囲で選択できるため、与える遠心加速度(=半径*(角速度)2)が最大で2.7倍も異なる。よって、光透過性を測定するために用いる石英セルに与える遠心加速度が不明である。
吸水性樹脂粒子は、遠心加速度が大きいと、気泡が抜けやすくなり、ゲル粒子間の空隙がなくなるため、光透過度が上がると考えられる。
このため、本件発明1〜3は、光透過度の評価条件が明確でない。

申立理由4(サポート要件) 本件特許の請求項1〜3についての特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

申立理由4は、概略次のとおりである。

(申立理由4−1)
本件明細書に記載された「傾斜漏れ試験」には、「試験液の注入開始から30秒後に、吸水層に注入された試験液の移動距離の最大値を読み取り、拡散距離Dとして記録した」ことが記載されている(【0104】)。このことから本件特許の課題を解決するためには、30秒で液を吸収することが必要であると判断される。一方、光透過性と保水量は30分間吸水させたときに評価される物性である(【0096】、【0098】)。本件発明1〜3は、光透過率と保水量とが所定の要件を満たせば、如何なる場合であっても、30秒で液を吸収できているとは認めがたい。
すなわち、吸水速度を規定しない本件発明1〜3は、課題を解決し得ない範囲を包含しており、本件明細書の発明の詳細な説明の記載にまで、本件発明1〜3の範囲を拡張ないし一般化できるものではない。

(申立理由4−2)
一般的に、原料、及び製造条件が異なれば、製造物の物性が変化することは技術常識である。よって、製造条件が変化すれば、本件発明1に特定された光透過率、保水量、中位粒子径は変化することも、技術常識であると言える。しかしながら、本件明細書には実施例の限られた条件で、光透過率、保水量、中位粒子径の要件をすべて満たす、吸水性樹脂が製造できたことが記載されているにすぎない。すなわち、本願明細書には、如何なる組成、製造条件であれば、実施例以外において、光透過率、保水量、中位粒子径の要件すべてを満たす吸水性樹脂が製造できるかについて何ら記載がない。
従って、本件発明1〜3は実施例以外の条件において、その範囲を本件明細書に記載の発明にまで拡張ないし一般化できるものではない。

申立理由5(実施可能要件) 本件特許の請求項1〜3についての特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

申立理由5は、概略次のとおりである。

(申立理由5−1)
本件明細書には、遠心分離機のロータ(セルを設置する台)の型が記載されておらず、回転半径が記載されていない(【0016】)。また、仮にコクサン製の品番H−36のカタログ(甲14)を参照したとしても、ロータの種類によって回転半径が17.0〜6.4mmの範囲で選択できるため、与える遠心加速度(=半径*(角速度)2)が最大で2.7倍も異なる。よって、光透過性を測定するために用いる石英セルに与える遠心加速度が不明である。
吸水性樹脂粒子は、遠心加速度が大きいと、気泡が抜けやすくなり、ゲル粒子間の空隙がなくなるため、光透過度が上がると考えられる。従って、本件明細書は光透過度を規定する本件発明1〜3を、当業者が実施できるように十分かつ明確に記載されていない。

(申立理由5−2)
一般的に、原料、及び製造条件が異なれば、製造物の物性が変化することは技術常識である。よって、製造条件が変化すれば、本件発明1に特定された光透過率、保水量、中位粒子径は変化することも、技術常識であると言える。しかしながら、本件明細書には実施例の限られた条件で、光透過率、保水量、中位粒子径の要件をすべて満たす、吸水性樹脂が製造できたことが記載されているにすぎない。すなわち、本願明細書には、如何なる組成、製造条件であれば、実施例以外において、光透過率、保水量、中位粒子径の要件すべてを満たす吸水性樹脂が製造できるかについて何ら記載がない。
よって、本願明細書の実施例以外において、光透過率、保水量、中位粒子径の要件すべてを満たす吸水性樹脂を製造するために、当業者は過度な試行錯誤を要すると認められる。
従って、本件の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本願請求項1〜3に記載の発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。

(証拠方法)
甲第1号証:特開平11−071425号公報
甲第2号証:特開平11−080248号公報
甲第3号証:特開2001−098170号公報
甲第4号証:特開2018−187545号公報
甲第5号証:特開2000−302876号公報
甲第6号証:特開平02−191604号公報
甲第7号証:国際公開第2016/104374号
甲第8号証:特開平2−196802号公報
甲第9号証:特表2017−502094号公報
甲第10号証:特表2017−538008号公報
甲第11号証:特開平11−349687号公報
甲第12号証:特開2001−131210号公報
甲第13号証:国際公開第2014/208316号
甲第14号証:カタログ「卓上遠心機 H−36」株式会社コクサン 2015年発行
甲第15号証:実験成績証明書(甲第1号証の実施例5の追試)
甲第16号証:実験成績証明書(甲第2号証の実施例5の追試)
甲第17号証:実験成績証明書(甲第3号証の実施例6の追試)
甲第18号証:実験成績証明書(甲第3号証の実施例10の追試)
甲第19号証:実験成績証明書(甲第8号証の実施例5の追試)
なお、証拠の表記については、特許異議申立書における記載におおむね従った。

また、特許異議申立人は、令和3年11月18日に提出した意見書に添付して、次の参考試料1ないし3を提出している。
参考資料1:実験成績証明書(甲第1号証の実施例5の追試)
参考資料2:実験成績証明書(甲第3号証の実施例6の追試)
参考資料3:実験成績証明書(甲第3号証の実施例10の追試)

第5 令和4年1月27日付け取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由の概要

当審が令和4年1月27日付けで特許権者に通知した取消理由通知(決定の予告)における取消理由の概要は、次のとおりである。

取消理由4(実施可能要件) 本件特許の請求項1についての特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

取消理由5(明確性要件) 本件特許の請求項1についての特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

取消理由4及び5の具体的理由は次のとおりである。

本件特許の請求項1には、傾斜漏れ試験における拡散距離Dの測定に関し、
「i)長さ15cm、幅5cmの短冊状の粘着テープを粘着面が上になるよう実験台上に置き、その粘着面上に、前記吸水性樹脂粒子3.0gを均一に散布する。散布された前記吸水性樹脂粒子の上部に、ステンレス製ローラー(質量4.0kg、径10.5cm、幅6.0cm)を載せ、該ローラーを、前記粘着テープの長手方向における両端の間で3回往復させる。これにより、前記吸水性樹脂粒子からなる吸水層を前記粘着テープの前記粘着面上に形成する。
ii)前記粘着テープを垂直に立てて、余剰の前記吸水性樹脂粒子を吸水層から除く。再度、前記吸水層に前記ローラーを載せ、前記粘着テープの長手方向における両端の間で3回往復させる。
iii)温度25±2℃の室内において、長さ30cm、幅55cmの長方形の平坦な主面を有するアクリル樹脂板を、その幅方向が水平面に平行で、その主面と水平面とが30度をなすように固定する。固定された前記アクリル板の主面に、前記吸水層が形成された前記粘着テープを、前記吸水層が露出し、その長手方向が前記アクリル樹脂板の幅方向に対して垂直になる向きで貼り付ける。
iv)前記吸水層の上端から1cmの位置で表面から1cmの高さから、液温25℃の試験液0.25mLを、マイクロピペットを用いて、1秒以内に全て注入する。
v)試験液の注入開始から30秒後に、前記吸水層に注入された試験液の移動距離の最大値を読み取り、拡散距離Dとして記録する。」
と、手順(iv)において、「前記吸水層の上端から1cmの位置で表面から1cmの高さから、液温25℃の試験液0.25mLを、マイクロピペットを用いて、1秒以内に全て注入する」ものであることが特定される。
また、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の段落【0104】には同旨の記載があるものの、他には傾斜漏れ試験における拡散距離Dの測定方法に関する記載はない。

この傾斜漏れ試験における拡散距離Dの測定に関し、特許異議申立人が、令和3年11月18日に意見書とともに提出した参考資料1ないし3によれば、マイクロピペットを用いて所定の試験液の注入時間が、「1秒以内」であっても、0.3秒の場合と1.0秒の場合では拡散距離Dが大きく異なることが示されている。

(参考資料1ないし3を取りまとめた表)


この結果によると、「拡散距離D」の評価結果は、「1秒以内」であっても、試験液の注液時間により異なる(すなわち作業者の操作のばらつきにより大きく結果が変わる)ものであるといえる。
してみると、請求項1において特定される傾斜漏れ試験における拡散距離Dの測定方法は、定量的に「拡散距離D」を評価できる方法であるとはいえないから、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、当業者が本件発明1を実施できるように明確かつ十分に記載したものであるとはいえないし、また、本件発明1は明確であるともいえない。

第6 当審の判断

1 令和4年1月27日付けで特許権者に通知した取消理由通知(決定の予告)における取消理由についての判断

本件発明1は、「以下のi)、ii)、iii)、iv)及びv)の手順により測定される拡散距離Dが14cm以上でない」との特定事項を有し、手順iv)では「前記吸水層の上端から1cmの位置で表面から1cmの高さから、液温25℃の試験液0.25mLを、マイクロピペットを用いて、1秒以内に全て注入する」と規定されている。
ここで、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、「1秒以内に全て注入した」(【0104】)と記載されており、他の記載箇所をみても、全て注入するまでの時間が1秒以内のいずれか1点である場合に拡散距離Dが14cm以上でないことを満たせば、1秒以内のその他の点である場合に拡散距離Dが14cm以上でないことを満たさなくてもよいと理解できる記載は一切ないし、このように理解すべき技術常識もない。
してみると、「1秒以内に全て注入する」は、その文言どおり、1秒以内に全て注入されればよいものであり、手順iv)において、試験液0.25mLのマイクロピペッターによる注入時間が「1秒以内」であれば、何秒で試験液をすべて注入した場合でも拡散距離Dが14cm以上でないことを発明特定事項として含むものと当業者は当然理解するし、実施も可能である。
よって、取消理由4及び5は、その理由がない。

2 取消理由通知(決定の予告)で採用しなかった異議申立理由についての判断

(1)申立理由1(新規性)及び2(進歩性)について
ア 甲第1号証を根拠とする新規性進歩性について
(ア) 甲第1号証の記載事項
甲第1号証には、「吸水材の製造方法」に関し、次の記載がある。(なお、下線は当審で付したものである。以下同様。)

「【請求項1】 吸水性樹脂を親水化処理した後、前記吸水性樹脂の表面近傍を架橋処理する吸水剤の製造方法。
【請求項2】 前記吸水性樹脂が逆相懸濁重合により得られたものである請求項1記載の吸水剤の製造方法。
【請求項3】 前記親水化処理が、有機溶剤による処理である請求項1または2記載の吸水剤の製造方法。
【請求項4】 前記有機溶剤を加熱した状態で吸水性樹脂と接触させて親水化処理を行う請求項3記載の吸水剤の製造方法。
【請求項5】 前記架橋処理は、吸水性樹脂の有する官能基と反応しうる架橋剤が吸水性樹脂粉体に直接添加混合されるものである請求項1〜4のいずれかに記載の吸水剤の製造方法。」

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、吸水剤の製造方法に関する。さらに詳しくは、加圧下の吸収倍率が高く、かつ戻り量が少ない吸水剤の製造方法に関する。」

「【0006】
【発明が解決しようとする課題】したがって本発明の目的は、加圧下の吸収倍率が高く、かつ戻り量が少ない吸水剤の製造方法を提供することにある。」

「【0010】以下に、本発明について詳細に説明する。本発明に用いることのできる吸水性樹脂は、多量の水、生理食塩水、尿等を吸収膨潤して実質水不溶性のヒドロゲルを形成するものである。その典型的な例としては、アクリル酸またはその塩を主成分とする親水性単量体を重合して得られる架橋構造を有する親水性重合体である。このようなものは例えば、部分中和架橋ポリアクリル酸重合体、架橋され部分的に中和された澱粉−アクリル酸グラフトポリマー、イソブチレン−マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体のケン化物、アクリルアミド(共)重合体の加水分解物、アクリロニトリル重合体の加水分解物等に開示されている。中でも好ましいものはポリアクリル酸塩架橋重合体である。ポリアクリル酸塩架橋重合体としては、重合体中の酸基の50〜95モル%が中和されていることが好ましく、60〜90モル%が中和されていることがより好ましい。塩としてはアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩などを例示する事ができる。この中和は重合前の単量体で行っても良いし、重合中や重合後の含水ゲル状重合体で行っても良い。
【0011】本発明に用いられる吸水性樹脂は、単量体主成分として好ましく用いられる上記アクリル酸またはその塩以外の他の単量体を(共)重合させたものであってもよい。他の単量体の具体例としては、メタクリル酸、マレイン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸などのアニオン性不飽和単量体およびその塩;アクリルアミド、メタアクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、N−アクリロイルピペリジン、N−アクリロイルピロリジンなどのノニオン性の親水基含有不飽和単量体;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドおよびそれらの四級塩などのカチオン性不飽和単量体などを挙げることができる。これらのアクリル酸以外の他の単量体の使用量は通常全単量体中0〜50モル%未満、好ましくは0〜30モル%であるがこれに限定されるものではない。」

「【0027】
【実施例】以下に実施例によりさらに詳細に本発明を説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本発明において、吸水剤の諸性能は、以下の方法で測定した。
(a)吸収倍率
吸水剤0.2gを不織布製の袋(60mm×60mm)に均一に入れ、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)中に浸漬した。60分後に袋を引き上げ、遠心分離機を用いて250Gで3分間水切りを行った後、袋の重量W1(g)を測定した。また、同様の操作を吸水剤を用いないで行い、そのときの重量W0(g)を測定した。
そして、これら重量W1、W0から、次式、
吸収倍率(g/g)=(重量W1(g)−重量W0(g))/吸水剤の重量(g/g)
に従って吸収倍率(g/g)を算出した。
(b)加圧下の吸収倍率
先ず、加圧下の吸収倍率の測定に用いる測定装置について、図1を参照しながら、以下に簡単に説明する。
【0028】図1に示すように、測定装置は、天秤1と、この天秤1上に載置された所定容量の容器2と、外気吸入パイプ3と、導管4と、ガラスフィルタ6と、このガラスフィルタ6上に載置された測定部5とからなっている。上記の容器2は、その頂部に開口部2aを、その側面部に開口部2bをそれぞれ有しており、開口部2aに外気吸入パイプ3が嵌入される一方、開口部2bに導管4が取り付けられている。また、容器2には、所定量の人工尿11(組成;硫酸ナトリウム0.2重量%、塩化カリウム0.2重量%、塩化マグネシウム六水和物0.05重量%、塩化カルシウム二水和物0.025重量%、リン酸二水素アンモニウム0.085重量%、リン酸水素二アンモニウム0.015重量%の水溶液)が入っている。外気吸入パイプ3の下端部は、人工尿11中に没している。上記のガラスフィルタ6は直径70mmに形成されている。そして、容器2およびガラスフィルタ6は、導管4によって互いに連通している。また、ガラスフィルタ6の上部は、外気吸入パイプ3の下端に対してごく僅かに高い位置になるようにして固定されている。
【0029】上記の測定部5は、濾紙7と、支持円筒8と、この支持円筒8の底部に貼着された金網9と、重り10とを有している。そして、測定部5は、ガラスフィルタ6上に、濾紙7、支持円筒8(つまり、金網9)がこの順に載置されると共に、支持円筒8内部、即ち、金網9上に重り10が載置されてなっている。支持円筒8は、内径60mmに形成されている。金網9は、ステンレスからなり、400メッシュ(目の大きさ38μm)に形成されている。そして、金網9上に所定量の吸水剤が均一に撒布されるようになっている。重り10は、金網9、即ち、吸水剤に対して、50g/cm2の荷重を均一に加えることができるように、その重量が調整されている。
【0030】上記構成の測定装置を用いて加圧下の吸収倍率を測定した。測定方法について以下に説明する。先ず、容器2に所定量の人工尿11を入れる、容器2に外気吸入パイプ3を嵌入する、等の所定の準備動作を行った。次に、ガラスフィルタ6上に濾紙7を載置した。一方、これらの載置動作に並行して、支持円筒内部、即ち、金網9上に吸水剤0.9gを均一に撒布、この吸水剤上に重り10を載置した。
【0031】次いで、濾紙7上に、金網9、つまり、吸水剤および重り10を載置した上記支持円筒8を載置した。そして、濾紙7上に支持円筒8を載置した時点から、60分間にわたって吸水剤が吸収した人工尿11の重量W2(g)を、天秤1を用いて測定した。そして、上記の重量W2から、次式、
加圧下の吸収倍率(g/g)=重量W2(g)/吸水剤の重量(g)
に従って、吸収開始から60分後の加圧下の吸収倍率(g/g)を算出した。
(c)吸水速度
シャーレの中に吸水剤1.0gを散布し、そこに上記人工尿20gを加えた。樹脂が液を吸いきって、ゲル表面の液が無くなるまでの時間T1を測定し、次式に従って吸水速度を算出した。
【0032】吸水速度(g/g/sec)=20÷1.0÷T1
(d)戻り量
吸水剤50重量部と、木材パルプ50重量部とを、ミキサーを用いて乾式混合した。次いで、得られた混合物を、400メッシュ(目の大きさ38μm)に形成されたワイヤースクリーン上にバッチ型空気抄造装置を用いて空気抄造することにより、100mm×100mmの大きさのウェブに成形した。さらに、このウェブを圧力2kg/cm2で5秒間プレスすることにより、坪量が約360g/m2の吸収体を得た。この吸収体の重量は3.6gであった。」

「【0033】上記の吸収体に生理食塩水40gを加え1分後に、キッチンタオル10枚を4つ折りにしたものを上面トップシートの上に置き10kgの荷重を1分間かけることによりトップシートを通過しキッチンタオルへ移行する戻り量を調べた。
[参考例1]攪拌機、還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管および滴下ろうとを付した2000mlの四つ口セパラブルフラスコにシクロヘキサン800gを取り、分散剤としてソルビタンモノステアレート3.0gを加え溶解させ、窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を追い出した。
【0034】別に、フラスコ中で、アクリル酸ナトリウム141g、アクリル酸36g、およびポリエチレングリコールジアクリレート(n=8)0.478g、イオン交換水413gよりなる単量体水溶液を調製し、窒素ガスを吹き込んで水溶液内に溶存する溶存酸素を追い出した。次いで、このフラスコ内の単量体水溶液に過硫酸ナトリウムの10%水溶液1.0gを加えた後全量を上記セパラブルフラスコに加えて、230rpmで攪拌することにより分散させた。その後、浴温を60℃に昇温して重合反応を開始させ、2時間この温度に保持して重合を完了した。重合終了後共沸脱水により大部分の水を留去して、重合体のシクロヘキサン懸濁液を得、ろ過により含水率20%の樹脂を得た。さらに80℃で減圧乾燥を行うことにより含水率5%の吸水性樹脂(1)を得た。吸水性樹脂(1)の平均粒径は110μmであった。
[実施例1]上記吸水性樹脂(1)10gを60℃に加熱したメタノール500mlに加え、1時間攪拌した後ろ過、乾燥することにより親水化処理を行った。
【0035】上記親水化処理を行った吸水性樹脂100重量部に、プロピレングリコール1.0重量部と、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.05重量部と、水3重量部と、イソプロピルアルコール1重量部からなる表面架橋剤を混合した。上記の混合物を185℃で50分間加熱処理することにより本発明の吸水剤(1)を得た。この吸水剤(1)の吸収倍率、加圧下の吸収倍率、吸水速度、戻り量の結果を表1に記載した。
[実施例2]上記吸水性樹脂(1)10gを70℃に加熱したシクロヘキサン500mlに加え、1時間攪拌し親水化処理を行った後ろ過、乾燥した。
【0036】上記親水化処理を行った吸水性樹脂を用いて実施例1と同様の表面架橋処理を行い本発明の吸水剤(2)を得た。この吸水剤(2)の吸収倍率、加圧下の吸収倍率、吸水速度、戻り量の結果を表1に記載した。
[実施例3]上記吸水性樹脂(1)10gを20℃のメタノール500mlに加え、1時間攪拌し親水化処理を行った後ろ過した。
【0037】上記親水化処理を行った吸水性樹脂を用いて実施例1と同様の表面架橋処理を行い本発明の吸水剤(3)を得た。この吸水剤(3)の吸収倍率、加圧下の吸収倍率、吸水速度、戻り量の結果を表1に記載した。
[比較例1]親水化処理を行わない吸水性樹脂(1)を用いて実施例1と同様の表面架橋処理を行い比較用吸水剤(1)を得た。この比較用吸水剤(1)の吸収倍率、加圧下の吸収倍率、吸水速度、戻り量の結果を表1に記載した。
[参考例2]参考例1においてソルビタンモノステアレートに代えてショ糖脂肪酸エステル(HLB=6)を用いた他は同様の操作を行い含水率6%の吸水性樹脂(2)を得た。吸水性樹脂(2)の平均粒径は160μmであった。
[実施例4]上記吸水性樹脂(2)10gを60℃に加熱したメタノール500mlに加え、1時間攪拌した後ろ過、乾燥することにより親水化処理を行った。
【0038】上記親水化処理を行った吸水性樹脂100重量部に、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.1重量部と、水3重量部と、イソプロピルアルコール1重量部からなる表面架橋剤を混合した。上記の混合物を150℃で60分間加熱処理することにより本発明の吸水剤(4)を得た。この吸水剤(4)の吸収倍率、加圧下の吸収倍率、吸水速度、戻り量の結果を表1に記載した。
[比較例2]親水化処理を行わない吸水性樹脂(2)を用いて実施例4と同様の表面架橋処理を行い比較用吸水剤(2)を得た。この比較用吸水剤(2)の吸収倍率、加圧下の吸収倍率、吸水速度、戻り量の結果を表1に記載した。
[参考例3]参考例1においてソルビタンモノステアレートに代えてエチルセルロースを用いた他は同様の操作を行い含水率4%の吸水性樹脂(3)を得た。吸水性樹脂(3)の平均粒径は250μmであった。
[実施例5]上記吸水性樹脂(3)10gを70℃に加熱したシクロヘキサン500mlに加え、1時間攪拌した後ろ過、乾燥することにより親水化処理を行った。
【0039】上記親水化処理を行った吸水性樹脂100重量部に、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.1重量部と、水3重量部と、イソプロピルアルコール1重量部からなる表面架橋剤を混合した。上記の混合物を150℃で60分間加熱処理することにより本発明の吸水剤(5)を得た。この吸水剤(5)の吸収倍率、加圧下の吸収倍率、吸水速度、戻り量の結果を表1に記載した。
[比較例3]親水化処理を行わない吸水性樹脂(3)を用いて実施例4と同様の表面架橋処理を行い比較用吸水剤(3)を得た。この比較用吸水剤(3)の吸収倍率、加圧下の吸収倍率、吸水速度、戻り量の結果を表1に記載した。
[比較例4]実施例1で親水化処理を行っただけの吸水性樹脂を比較用吸水剤(4)としてこの比較用吸水剤(4)の吸収倍率、加圧下の吸収倍率、吸水速度、戻り量の結果を表1に記載した。」

「【0041】
【表1】



「【0043】
【発明の効果】本発明では表面架橋処理の前に親水化処理を行うので、表面架橋処理の効果(吸水剤の加圧下の吸収倍率を高め、戻り量を低減する)を高めることができる。また、吸水性樹脂の表面の親水性が高くなるため吸水速度も上昇する。したがって、本発明によると、加圧下の吸収倍率が高く、かつ戻り量が少なく、さらには吸水速度の速い吸水剤を得ることができる。」

(イ) 甲第1号証に記載された発明
上記(ア)の記載、特に実施例5に関する記載をまとめると、甲第1号証には次の発明が記載されていると認める。

「攪拌機、還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管および滴下ろうとを付した2000mlの四つ口セパラブルフラスコにシクロヘキサン800gを取り、分散剤としてエチルセルロースを加え溶解させ、窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を追い出すとともに、
別に、フラスコ中で、アクリル酸ナトリウム141g、アクリル酸36g、およびポリエチレングリコールジアクリレート(n=8)0.478g、イオン交換水413gよりなる単量体水溶液を調製し、窒素ガスを吹き込んで水溶液内に溶存する溶存酸素を追い出し、
次いで、このフラスコ内の単量体水溶液に過硫酸ナトリウムの10%水溶液1.0gを加えた後全量を上記セパラブルフラスコに加えて、230rpmで攪拌することにより分散させ、その後、浴温を60℃に昇温して重合反応を開始させ、2時間この温度に保持して重合を完了し、重合終了後共沸脱水により大部分の水を留去して、重合体のシクロヘキサン懸濁液を得、ろ過により含水率20%の樹脂を得、さらに80℃で減圧乾燥を行うことにより含水率4%の吸水性樹脂(3)を得、
上記吸水性樹脂(3)10gを70℃に加熱したシクロヘキサン500mlに加え、1時間攪拌した後ろ過、乾燥することにより親水化処理を行い、上記親水化処理を行った吸水性樹脂100重量部に、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.1重量部と、水3重量部と、イソプロピルアルコール1重量部からなる表面架橋剤を混合し、上記の混合物を150℃で60分間加熱処理することにより得られた吸水剤(5)。」(以下、「甲1吸水剤発明」という。)

(ウ) 対比・判断
A 本件発明1について
本件発明1と甲1吸水剤発明とを対比すると、甲1吸水剤発明の原料・製法から見て、両者は、
「(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する架橋重合体を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体全量に対して70〜100モル%である、吸水性樹脂粒子」である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1−1)
本件発明1の吸水性樹脂粒子は、「生理食塩水で30倍に膨潤させたときの波長425nmにおける光透過率が、60%以上であり、生理食塩水の保水量が30〜55g/gであり、中位粒子径が250〜384μmである」と特定されるのに対し、甲1吸水剤発明にはそのような特定がない点。

(相違点1−2)
本件発明1の吸水性樹脂粒子は、「i)、ii)、iii)、iv)及びv)の手順(手順の記載は省略する。以下同様。)により測定される拡散距離Dが14cm以上でない」ことを特定するのに対し、甲1吸水剤発明にはそのような特定がない点。

上記相違点について検討する。
まず、相違点1−1について検討するに、甲第15号証には、甲第1号証の実施例5(甲1吸水剤発明)を再現し、本件明細書の段落【0118】〜【0124】に記載の方法により測定した結果、生理食塩水で30倍に膨潤させたときの波長425nmにおける光透過率が55%、生理食塩水の保水量が40g/gであり、中位粒子径が283μmであったことが示されている。
すると、相違点1−1は実質的な相違点であるから、本件発明1は甲1吸水剤発明ではない。
また、甲第1号証には、吸水剤を生理食塩水で膨潤させたときの光透過率について何ら記載も示唆もなく、他の証拠を見ても、甲1吸水剤発明において、「生理食塩水で30倍に膨潤させたときの波長425nmにおける光透過率」を変更する動機付けがあるとはいえない。
してみれば、他の相違点については検討するまでもなく、本件発明1は甲1吸水剤発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

B 本件発明2及び3について
本件発明2は、吸水性樹脂の液体漏れ製を評価する方法において、「生理食塩水で30倍に膨潤させたときの前記吸水性樹脂粒子の波長425nmにおける光透過率が、50%以上である場合に、吸水性樹脂粒子の液体漏れ抑制の効果が大きいと評価する」ものであり、本件発明3は、吸水性樹脂の製造方法において、「生理食塩水で30倍に膨潤させたときの前記吸水性樹脂粒子の波長425nmにおける光透過率を測定する工程を備える」ものであるが、上記Aの検討のとおり、甲第1号証には、吸水剤を生理食塩水で膨潤させたときの光透過率について何ら記載も示唆もないし、また、他の証拠を見ても、「生理食塩水で30倍に膨潤させたときの波長425nmにおける光透過率」を測定し、あるいはその測定結果で評価する動機付けがあるともいえない。
してみれば、本件発明2及び本件発明3はともに、甲第1号証に記載された発明ではないし、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者容易に発明をすることができたものでもない。

C 甲第1号証を根拠とする新規性進歩性についてのまとめ
上記A及びBのとおりであるから、甲第1号証を根拠とする申立理由1及び申立理由2には、その理由がない。

イ 甲第2号証を根拠とする新規性進歩性について
(ア) 甲第2号証に記載された発明
甲第2号証の記載、特に実施例5についての記載をまとめると、甲第2号証には、次の発明が記載されていると認める。

「攪拌機、還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管および滴下ろうとを付した2000mlの四つ口セパラブルフラスコにシクロヘキサン800gを取り、分散剤としてエチルセルロースを加え溶解させ、窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を追い出すとともに、
別に、フラスコ中で、アクリル酸ナトリウム141g、アクリル酸36g、およびポリエチレングリコールジアクリレート(n=8)0.478g、イオン交換水413gよりなる単量体水溶液を調製し、窒素ガスを吹き込んで水溶液内に溶存する溶存酸素を追い出し、
次いで、このフラスコ内の単量体水溶液に過硫酸ナトリウムの10%水溶液1.0gを加えた後全量を上記セパラブルフラスコに加えて、230rpmで攪拌することにより分散させ、その後、浴温を60℃に昇温して重合反応を開始させ、2時間この温度に保持して重合を完了し、重合終了後共沸脱水により大部分の水を留去して、重合体のシクロヘキサン懸濁液を得、ろ過により含水率20%の樹脂を得、さらに80℃で減圧乾燥を行うことにより含水率4%、平均粒径は250μmの吸水性樹脂(3)を得、
上記吸水性樹脂(3)100重量部に、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.1重量部と、水3重量部と、イソプロピルアルコール1重量部からなる表面架橋剤を混合し、上記の混合物を150℃で60分間加熱処理し、その後得られた含水率1%の表面架橋された樹脂10gを70℃に加熱したシクロヘキサン500ml中に加え、1時間攪拌した後ろ過、乾燥することにより親水化処理を行い得られた吸収剤(5)。」(以下、「甲2吸水剤発明」という。)

(イ) 対比・判断
A 本件発明1について
本件発明1と甲2吸水剤発明とを対比すると、甲2吸水剤発明の原料・製法から見て、両者は、
「(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する架橋重合体を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体全量に対して70〜100モル%である、吸水性樹脂粒子」である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点2−1)
本件発明1の吸水性樹脂粒子は、「生理食塩水で30倍に膨潤させたときの波長425nmにおける光透過率が、60%以上であり、生理食塩水の保水量が30〜55g/gであり、中位粒子径が250〜384μmである」と特定されるのに対し、甲2吸水剤発明にはそのような特定がない点。

(相違点2−2)
本件発明1の吸水性樹脂粒子は、「i)、ii)、iii)、iv)及びv)の手順により測定される拡散距離Dが14cm以上でない」ことを特定するのに対し、甲2吸水剤発明にはそのような特定がない点。

上記相違点について検討する。
まず、相違点2−1について検討するに、甲第16号証には、甲第2号証の実施例5(甲2吸水剤発明)を再現し、本件明細書の段落【0118】〜【0124】に記載の方法により測定した結果、生理食塩水で30倍に膨潤させたときの波長425nmにおける光透過率が57%、生理食塩水の保水量が40g/gであり、中位粒子径が265μmであったことが示されている。
すると、相違点2−1は実質的な相違点であるから、本件発明1は甲2吸水剤発明ではない。
また、甲第2号証には、吸水剤を生理食塩水で膨潤させたときの光透過率について何ら記載も示唆もなく、他の証拠を見ても、甲2吸水剤発明において、「生理食塩水で30倍に膨潤させたときの波長425nmにおける光透過率」を変更する動機付けがあるとはいえない。
してみると、他の相違点については検討するまでもなく、本件発明1は甲2吸水剤発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

B 本件発明2及び3について
本件発明2は、吸水性樹脂の液体漏れ製を評価する方法において、「生理食塩水で30倍に膨潤させたときの前記吸水性樹脂粒子の波長425nmにおける光透過率が、50%以上である場合に、吸水性樹脂粒子の液体漏れ抑制の効果が大きいと評価する」ものであり、本件発明3は、吸水性樹脂の製造方法において、「生理食塩水で30倍に膨潤させたときの前記吸水性樹脂粒子の波長425nmにおける光透過率を測定する工程を備える」ものであるが、上記Aの検討のとおり、甲第2号証には、吸水剤を生理食塩水で膨潤させたときの光透過率について何ら記載も示唆もないし、また、他の証拠を見ても、「生理食塩水で30倍に膨潤させたときの波長425nmにおける光透過率」を測定し、あるいはその測定結果で評価する動機付けがあるともいえない。
してみれば、本件発明2及び本件発明3はともに、甲第2号証に記載された発明ではないし、甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者容易に発明をすることができたものでもない。

C 甲第2号証を根拠とする新規性進歩性についてのまとめ
上記A及びBのとおりであるから、甲第2号証を根拠とする申立理由1及び申立理由2には、その理由がない。

ウ 甲第3号証を根拠とする新規性進歩性について
(ア) 甲第3号証に記載された発明
甲第3号証の記載、特に実施例6、10についての記載をそれぞれまとめると、甲第3号証には、次の発明が記載されていると認める。

「中和率75モル%のアクリル酸ナトリウム(親水性不飽和単量体)37重量%水溶液5,500gに、内部架橋剤としてのポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数8)2.22gを溶解させて反応液とし、次に、この反応液を、窒素ガス雰囲気下で30分間脱気し、次いで、シグマ型羽根を2本有する内容積10Lのジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに蓋を取り付けて形成した反応器に、上記の反応液を供給し、反応液を25℃に保ちながら系を窒素ガス置換し、続いて、反応液を撹拌しながら、重合開始剤としての過硫酸ナトリウム2.4gおよびL−アスコルビン酸0.12gを添加し、25〜95℃で重合を行い、重合を開始してから40分後に反応を終了して含水ゲル状重合体を取り出し、得られた含水ゲル状重合体を50メッシュ(目開きの大きさ300μm)の金網上に広げ、170℃で70分間熱風乾燥し、次いで、乾燥物を振動ミルを用いて粉砕後、分級し、不定形破砕状の吸水性樹脂前駆体(a)を得、
得られた吸水性樹脂前駆体(a)100重量部に、プロピレングリコール0.8重量部と、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.03重量部、水2.5重量部、エチルアルコール0.8重量部とからなる表面架橋剤水溶液を混合し、上記の混合物を195℃で45分間加熱処理することにより得られた吸水性樹脂(a)。」(以下、「甲3実施例6吸水性樹脂発明」という。)

「中和率75モル%のアクリル酸ナトリウム(親水性不飽和単量体)33重量%水溶液5,500gに、内部架橋剤としてのポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数8)4.46gを溶解させて反応液とし、次に、この反応液を、窒素ガス雰囲気下で30分間脱気し、次いで,シグマ型羽根を2本有する内容積10Lのジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに蓋を取り付けて形成した反応器に、上記の反応液を供給し、反応液を25℃に保ちながら系を窒素ガス置換し、続いて、反応液を攪拌しながら、重合開始剤としての過硫酸アンモニウム2.4gおよびL−アスコルビン酸0.12gを添加し、25〜90℃で重合を行い、重合を開始してから40分後に反応を終了して含水ゲル状重合体を取り出し、得られた含水ゲル状重合体を50メッシュ(目開きの大きさ300μm)の金網上に広げ、170℃で70分間熱風乾燥し、次いで、乾燥物を振動ミルを用いて粉砕後、分級し、不定形破砕状の吸水性樹脂前駆体(b)を得、
得られた吸水性樹脂前駆体(b)100重量部に、プロピレングリコール0.7重量部と、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.02重量部、水2重量部、エチルアルコール0.7重量部とからなる表面架橋剤水溶液を混合し、上記の混合物を185℃で40分間加熱処理することにより得られた吸水性樹脂(b)。」(以下、「甲3実施例10吸水性樹脂発明」という。)

(イ) 対比・判断
A 本件発明1について
本件発明1と甲3実施例6吸水性樹脂発明とを対比すると、甲3実施例6吸水性樹脂発明の原料・製法から見て、両者は、
「(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する架橋重合体を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体全量に対して70〜100モル%である、吸水性樹脂粒子」である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点3−1)
本件発明1の吸水性樹脂粒子は、「生理食塩水で30倍に膨潤させたときの波長425nmにおける光透過率が、60%以上であり、生理食塩水の保水量が30〜55g/gであり、中位粒子径が250〜384μmである」と特定されるのに対し、甲3実施例6吸水性樹脂発明にはそのような特定がない点。

(相違点3−2)
本件発明1の吸水性樹脂粒子は、「i)、ii)、iii)、iv)及びv)の手順により測定される拡散距離Dが14cm以上でない」ことを特定するのに対し、甲3実施例6吸水性樹脂発明にはそのような特定がない点。

上記相違点について検討する。
まず、相違点3−1について検討するに、甲第17号証には、甲第3号証の実施例6(甲3実施例6吸水性樹脂発明)を再現し、本件明細書の段落【0118】〜【0124】に記載の方法により測定した結果、生理食塩水で30倍に膨潤させたときの波長425nmにおける光透過率が53%、生理食塩水の保水量が51.2g/gであり、中位粒子径が358μmであったことが示されている。
すると、相違点3−1は実質的な相違点であるから、本件発明1は甲3実施例6吸水性樹脂発明ではない。
また、甲第3号証には、吸水剤を生理食塩水で膨潤させたときの光透過率について何ら記載も示唆もなく、他の証拠を見ても、甲3実施例6吸水性樹脂発明において、「生理食塩水で30倍に膨潤させたときの波長425nmにおける光透過率」を変更する動機付けがあるとはいえない。
してみれば、他の相違点については検討するまでもなく、本件発明1は甲3実施例6吸水性樹脂発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

甲3実施例10吸水性樹脂発明についても、甲3実施例6吸水性樹脂発明と同様に判断される。

B 本件発明2及び3について
本件発明2は、吸水性樹脂の液体漏れ製を評価する方法において、「生理食塩水で30倍に膨潤させたときの前記吸水性樹脂粒子の波長425nmにおける光透過率が、50%以上である場合に、吸水性樹脂粒子の液体漏れ抑制の効果が大きいと評価する」ものであり、本件発明3は、吸水性樹脂の製造方法において、「生理食塩水で30倍に膨潤させたときの前記吸水性樹脂粒子の波長425nmにおける光透過率を測定する工程を備える」ものであるが、上記Aの検討のとおり、甲第3号証には、吸水剤を生理食塩水で膨潤させたときの光透過率について何ら記載も示唆もないし、また、他の証拠を見ても、「生理食塩水で30倍に膨潤させたときの波長425nmにおける光透過率」を測定し、あるいはその測定結果で評価する動機付けがあるともいえない。
してみれば、本件発明2及び本件発明3はともに、甲第3号証に記載された発明ではないし、甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者容易に発明をすることができたものでもない。

C 甲第3号証を根拠とする新規性進歩性についてのまとめ
上記A及びBのとおりであるから、甲第3号証を根拠とする申立理由1及び申立理由2には、その理由がない。

エ 甲第8号証を根拠とする新規性進歩性について
(ア) 甲第8号証に記載された発明
甲第8号証の記載、特に実施例5についての記載をまとめると、甲第8号証には、次の発明が記載されていると認める。

「撹拌機、還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管および滴下ロートを付した2Lの四つロセバラブルフラスコにシクロヘキサン1.0Lをとり、分散剤としてショ糖脂肪酸エステル(第一工業製薬(株)製、DK−エステルF−20)4.0gを加えて溶解させ、窒素ガスを吹きこんで溶存酸素を追い出し、
別にフラスコ中にアクリル酸ナトリウム65.8g、アクリル酸21.6gおよびポリエチレングリコールジアクリレート(n=14)0.076g及び増粘剤としてポリアクリル酸ナトリウム(日本触媒化学工業(株)製 アクアリックFH,25℃、1%水溶液の粘度2×104cps)1.0gをイオン交換水250gに溶解させ、粘度27cps のモノマー水溶液を調整し、次いで過硫酸ナトリウム0.12gを加えて溶解させた後、窒素ガスを吹きこんで水溶液内に溶存する酸素を追い出し、
次いでこのフラスコ内の単量体水溶液を上記セパラブルフラスコに加えて23rpm 撹拌することにより分散させ、その後、浴温を60℃に昇温しで重合反応を開始させた後、2時間この温度に保持して重合を完了し、重合終了後シクロヘキサンとの共沸脱水により含水ゲル中の水を留去した後、濾過し、80℃で減圧乾燥し重合体粉体[A05 ]を得、
得られた重合体粉体[A05 ]100部にグリセリンジグリシジルエーテル0.051m、水4部、エタノール0.8部からなる処理溶液をリボン型混合機で混合し、得られた混合物を流動床乾燥基中、100℃、1時間加熱することにより得られた吸水性樹脂[A15]。」(以下、「甲8吸水性樹脂発明」という。)

(イ) 対比・判断
A 本件発明1について
本件発明1と甲8吸水性樹脂発明とを対比すると、甲8吸水性樹脂発明の原料・製法から見て、両者は、
「(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する架橋重合体を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体全量に対して70〜100モル%である、吸水性樹脂粒子」である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点8−1)
本件発明1の吸水性樹脂粒子は、「生理食塩水で30倍に膨潤させたときの波長425nmにおける光透過率が、60%以上であり、生理食塩水の保水量が30〜55g/gであり、中位粒子径が250〜384μmである」と特定されるのに対し、甲8吸水性樹脂発明にはそのような特定がない点。

(相違点8−2)
本件発明1の吸水性樹脂粒子は、「i)、ii)、iii)、iv)及びv)の手順により測定される拡散距離Dが14cm以上でない」ことを特定するのに対し、甲8吸水剤発明にはそのような特定がない点。

上記相違点について検討する。
まず、相違点8−1について検討するに、甲第19号証には、甲第8号証の実施例5(甲8吸水性樹脂発明)を再現し、本件明細書の段落【0118】〜【0124】に記載の方法により測定した結果、生理食塩水で30倍に膨潤させたときの波長425nmにおける光透過率が57%、生理食塩水の保水量が41g/gであり、中位粒子径が357μmであったことが示されている。
すると、相違点8−1は実質的な相違点であるから、本件発明1は甲8吸水剤発明ではない。
また、甲第8号証には、吸水剤を生理食塩水で膨潤させたときの光透過率について何ら記載も示唆もなく、他の証拠を見ても、甲8吸水剤発明において、「生理食塩水で30倍に膨潤させたときの波長425nmにおける光透過率」を変更する動機付けがあるとはいえない。
してみれば、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲8吸水剤発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

B 本件発明2及び3について
本件発明2は、吸水性樹脂の液体漏れ製を評価する方法において、「生理食塩水で30倍に膨潤させたときの前記吸水性樹脂粒子の波長425nmにおける光透過率が、50%以上である場合に、吸水性樹脂粒子の液体漏れ抑制の効果が大きいと評価する」ものであり、本件発明3は、吸水性樹脂の製造方法において、「生理食塩水で30倍に膨潤させたときの前記吸水性樹脂粒子の波長425nmにおける光透過率を測定する工程を備える」ものであるが、上記Aの検討のとおり、甲第8号証には、吸水剤を生理食塩水で膨潤させたときの光透過率について何ら記載も示唆もないし、また、他の証拠を見ても、「生理食塩水で30倍に膨潤させたときの波長425nmにおける光透過率」を測定し、あるいはその測定結果で評価する動機付けがあるともいえない。
してみれば、本件発明2及び本件発明3はともに、甲第8号証に記載された発明ではないし、甲第8号証に記載された発明に基づいて当業者容易に発明をすることができたものでもない。

C 甲第8号証を根拠とする新規性進歩性についてのまとめ
上記A及びBのとおりであるから、甲第8号証を根拠とする申立理由1及び申立理由2には、その理由がない。

オ その他の証拠を根拠とする新規性進歩性について
特許異議申立人は、甲第4号証ないし甲第7号証及び甲第9号証ないし甲第11号証をあげつつ、各々の証拠を根拠として、本件発明1ないし3に対する新規性進歩性の理由を申し立てているが、いずれの証拠においても、「生理食塩水で30倍に膨潤させたときの波長425nmにおける光透過率」に着目し、測定し、評価することについて何ら記載も示唆もされておらず、さらには、生理食塩水の保水量、中位粒子径、特定条件下で測定される拡散距離Dについても、満たすものと考える理由もない。
したがって、本件発明1ないし本件発明3はいずれも、甲第4号証ないし甲第7号証及び甲第9号証ないし甲第11号証のいずれかに記載された発明ではなく、また、甲第4号証ないし甲第7号証及び甲第9号証ないし甲第11号証のいずれかに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
よって、甲第4号証ないし甲第7号証及び甲第9号証ないし甲第11号証を根拠とする申立理由1及び申立理由2には、その理由がない。

(2) 申立理由3(明確性要件)について
本件発明1における「生理食塩水で30倍に膨潤させたときの前記吸水性樹脂粒子の波長425nmにおける光透過率が、60%以上」、本件発明2及び3における「生理食塩水で30倍に膨潤させたときの吸水性樹脂粒子の波長425nmにおける光透過率が、50%以上」との特定事項は、「生理食塩水で30倍に膨潤させたときの吸水性樹脂粒子の波長425nmにおける光透過率」を測定した結果を特定するものであり、当該特定事項自体、明確である。
なお、特許異議申立人は、測定に際しての条件の特定がなされていないため、明確ではない旨主張するが、本件特許の明細書の【0016】の記載にしたがって測定すればよいことも明らかである。
よって、申立理由3は、その理由がない。

(3) 申立理由4(サポート要件)について
ア 申立理由4−1について
(本件発明1について)
訂正により、本件発明1において、拡散距離Dの条件が特定された。
よって、本件発明1に対する申立理由4−1は、その理由がない。
(本件発明2及び本件発明3について)
本件特許の明細書の【0005】の記載からみて、本件発明2は、液体漏れを抑制可能な吸水性樹脂粒子を評価するのに好適な評価方法を提供すること、本件発明3は、液体漏れを抑制可能な吸水性樹脂粒子を製造するのに好適な製造方法を提供することを課題とするものといえるところ、「生理食塩水で30倍に膨潤させたときの吸水性樹脂粒子の波長425nmにおける光透過率」を測定し、評価するものであるから、評価方法あるいは製造方法として、課題を解決するものと認識できる。
よって、本件発明2及び本件発明3に対する申立理由4−1は、その理由がない。

イ 申立理由4−2について
本件特許の明細書の【0005】の記載からみて、本件発明1は、「液体漏れを抑制可能な吸水性樹脂粒子を提供すること」を、本件発明2は、「液体漏れを抑制可能な吸水性樹脂粒子」であるか評価すること、本件発明3は、「液体漏れを抑制可能な吸水性樹脂粒子を提供(製造)すること」を発明の課題とするものである。
そして、本件特許の明細書の【0015】ないし【0017】、【0060】及び実施例の記載からは、「生理食塩水で30倍に膨潤させたときの吸水性樹脂粒子の波長425nmにおける光透過率が20%以上であること(選別することも含む)」との特定事項を満たすことにより、吸収性物品の液体漏れを抑制できる吸水性樹脂粒子をより安定して製造することができることが理解できる。
そして、本件発明1は、「生理食塩水で30倍に膨潤させたときの吸水性樹脂粒子の波長425nmにおける光透過率が60%以上」であること、すなわち、上記特定事項を満たすものであるし、本件発明2及び3は、「生理食塩水で30倍に膨潤させたときの吸水性樹脂粒子の波長425nmにおける光透過率」で評価し、あるいは製造するものであるから、本件発明1ないし本件発明3は、発明の課題を解決するものであるといえる。
なお、特許異議申立人は、本件特許の明細書には、如何なる組成、製造条件であれば、実施例以外において、光透過率、保水量、中位粒子径の要件すべてを満たす吸水性樹脂が製造できるかについて何ら記載がないから、実施例以外の条件において、その範囲を本件特許の明細書に記載の発明にまで拡張ないし一般化できるものではない旨主張するが、当該主張は、上記の判断に何ら影響するものではない。
よって、申立理由4−2は、その理由がない。

(4) 申立理由5(実施可能要件)について
本件発明1ないし3に関し、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、光透過率の測定方法(【0016】ないし【0017】)、吸水性樹脂粒子の材質及び重合方法、製造方法(【0022】ないし【0075】)の記載、さらには、実施例の具体的な記載もある。
してみれば、本件特許の明細書には、本件発明1ないし3について当業者が実施できる程度に記載されているものといえる。
なお、特許異議申立人は、遠心分離機のロータの型の記載がないこと(申立理由5−1)、実施例以外のもので、光透過率、保水量、中位粒子径の要件すべてを満たす吸水性樹脂を製造するために、当業者は過度な試行錯誤を要すること(申立理由5−2)、との主張をするが、いずれも、具体的な遠心分離機の機器名や、吸水性樹脂粒子の材質及び重合方法、製造方法について好適なものの記載があることを鑑みれば、本件発明1ないし3を実施するにあたり、当業者ならば適宜調整しつつ実施しうる程度の記載があるものであって、過度の試行錯誤を要するものということはできない。
よって、申立理由5は、いずれもその理由がない。

第7 結語

以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由、及び、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1ないし3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する架橋重合体を含み、
(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体全量に対して70〜100モル%である、吸水性樹脂粒子であって、
生理食塩水で30倍に膨潤させたときの波長425nmにおける光透過率が、60%以上であり、
生理食塩水の保水量が30〜55g/gであり、
中位粒子径が250〜384μmであり、
以下のi)、ii)、iii)、iv)及びv)の手順により測定される拡散距離Dが14cm以上でない、吸水性樹脂粒子。
i)長さ15cm、幅5cmの短冊状の粘着テープを粘着面が上になるよう実験台上に置き、その粘着面上に、前記吸水性樹脂粒子3.0を均一に散布する。散布された前記吸水性樹脂粒子の上部に、ステンレス製ローラー(質量4.0kg、径10.5cm、幅6.0cm)を載せ、該ローラーを、前記粘着テープの長手方向における両端の間で3回往復させる。これにより、前記吸水性樹脂粒子からなる吸水層を前記粘着テープの前記粘着面上に形成する。
ii)前記粘着テープを垂直に立てて、余剰の前記吸水性樹脂粒子を吸水層から除く。再度、前記吸水層に前記ローラーを載せ、前記粘着テープの長手方向における両端の間で3回往復させる。
iii)温度25±2℃の室内において、長さ30cm、幅55cmの長方形の平坦な主面を有するアクリル樹脂板を、その幅方向が水平面に平行で、その主面と水平面とが30度をなすように固定する。固定された前記アクリル板の主面に、前記吸水層が形成された前記粘着テープを、前記吸水層が露出し、その長手方向が前記アクリル樹脂板の幅方向に対して垂直になる向きで貼り付ける。
iv)前記吸水層の上端から1cmの位置で表面から1cmの高さから、液温25℃の試験液0.25mLを、マイクロピペットを用いて、1秒以内に全て注入する。
v)試験液の注入開始から30秒後に、前記吸水層に注入された試験液の移動距離の最大値を読み取り、拡散距離Dとして記録する。
【請求項2】
吸水性樹脂粒子の液体漏れ性を評価する方法であって、
前記吸水性樹脂粒子が、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する架橋重合体を含み、
(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体全量に対して70〜100モル%であり、
生理食塩水で30倍に膨潤させたときの前記吸水性樹脂粒子の波長425nmにおける光透過率が、50%以上である場合に、吸水性樹脂粒子の液体漏れ抑制の効果が大きいと評価する、方法。
【請求項3】
吸水性樹脂粒子の製造方法であって、
前記吸水性樹脂粒子が、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する架橋重合体を含み、
(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体全量に対して70〜100モル%であり、
生理食塩水で30倍に膨潤させたときの前記吸水性樹脂粒子の波長425nmにおける光透過率を測定する工程を備える、製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-06-30 
出願番号 P2019-055262
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (A61F)
P 1 651・ 121- YAA (A61F)
P 1 651・ 536- YAA (A61F)
P 1 651・ 113- YAA (A61F)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 加藤 友也
特許庁審判官 植前 充司
細井 龍史
登録日 2020-10-07 
登録番号 6775048
権利者 住友精化株式会社
発明の名称 吸水性樹脂粒子、吸水性樹脂粒子の液体漏れ性の評価方法、及び吸水性樹脂粒子の製造方法  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 清水 義憲  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  
代理人 沖田 英樹  
代理人 吉住 和之  
代理人 福島 直樹  
代理人 吉住 和之  
代理人 福島 直樹  
代理人 沖田 英樹  
代理人 清水 義憲  
代理人 長谷川 芳樹  
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