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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A61F
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A61F
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A61F
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61F
管理番号 1388354
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-09-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-04-28 
確定日 2022-07-12 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6775050号発明「吸収性物品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6775050号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1−7]について訂正することを認める。 特許第6775050号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第6775050号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし7に係る特許についての出願は、平成31年3月22日(優先権主張 同年1月30日)の出願であって、令和2年10月7日にその特許権の設定登録(請求項の数7)がされ、同年同月28日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、その特許に対し、令和3年4月28日に特許異議申立人 株式会社日本触媒(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされ、同年8月6日付けで取消理由が通知され、同年10月11日に特許権者 住友精化株式会社(以下、「特許権者」という。)より訂正の請求がなされるとともに意見書の提出がされ、同年同月15日付けで特許法第120条の5第5項に基づく訂正請求があった旨の通知を行ったところ、同年11月18日に特許異議申立人より意見書の提出がされ、令和4年1月27日付で取消理由(決定の予告)が通知され、同年4月1日に特許権者より訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がなされるとともに意見書の提出がされたものである。
なお、令和3年10月11日にされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
また、特許異議申立人には、すでに意見書の提出の機会が与えられており、令和4年4月1日にされた訂正の請求によって、特許請求の範囲が相当程度減縮され、本件特許異議申立事件において提出された全ての証拠や意見等を踏まえてさらに審理を進めたとしても、下記第6のとおり、特許を維持すべきとの結論になると合議体は判断したため、本件訂正請求に対し、特許法第120条の5第5項ただし書における特別の事情と認め、特許異議申立人に対して同法同条第5項の通知を行っていない。

第2 訂正の適否についての判断

1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。(下線は、訂正箇所について合議体が付したものである。)

(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「生理食塩水で30倍に膨潤させたときの前記吸水性樹脂粒子の波長425nmにおける光線透過率が、50%以上」
とあるのを、
「生理食塩水で30倍に膨潤させたときの前記吸水性樹脂粒子の波長425nmにおける光線透過率が、55.9%以上」
と訂正する。
請求項1を直接または間接的に引用する請求項2ないし7も同様に訂正する。

(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に、
「中位粒子径が250〜600μm」
とあるのを、
「中位粒子径が250〜384μm」
と訂正する。
請求項1を直接または間接的に引用する請求項2ないし7も同様に訂正する。

(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に、
「である、吸収性物品。」
とあるのを、
「であり、
前記吸水性樹脂粒子の生理食塩水の吸水速度が30〜40秒である、吸収性物品。」
と訂正する。
請求項1を直接または間接的に引用する請求項2ないし7も同様に訂正する。

(4) 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項2に、
「前記液体透過性シートが、サーマルボンド不織布、エアスルー不織布、レジンボンド不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、エアレイド不織布、スパンレース不織布、ポイントボンド不織布、又は、これらから選ばれる2種以上の不織布の積層体を含む」
とあるのを、
「前記吸収性樹脂粒子の生理食塩水の吸水速度が30〜38秒であり、
前記液体透過性シートが、サーマルボンド不織布、エアスルー不織布、レジンボンド不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、エアレイド不織布、スパンレース不織布、ポイントボンド不織布、又は、これらから選ばれる2種以上の不織布の積層体を含む」
と訂正する。
請求項2を直接または間接的に引用する請求項3ないし7も同様に訂正する。

(5) 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項7に、
「前記吸水性樹脂粒子の生理食塩水の吸水速度が30〜70秒」
とあるのを、
「前記吸水性樹脂粒子の生理食塩水の吸水速度が30〜38秒」
と訂正する。

(6) 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項7に、
「である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の吸収性物品。」
とあるのを、
「であり、
以下の勾配吸収試験によって測定される漏れ発生までの吸収量が389gより大きい、請求項1〜6のいずれか一項に記載の吸収性物品。
勾配吸収試験:
気流型混合装置を用いて前記吸水性樹脂粒子10g、及び粉砕パルプ9.5gを空気抄造によって均一混合することにより、12cm×32cmの大きさのシート状の試験用吸収体を作製する。前記試験用吸水体を坪量16g/m2のティッシュペーパー上に配置し、前記試験用吸収体上に、ティッシュペーパー、及び短繊維不織布であるエアスルー不織布をこの順に積層して積層体を作製する。前記積層体に対して、588kPaの荷重を30秒間加える。12cm×32cmの大きさのポリエチレン製液体不透過性シートを、前記積層体の前記エアスルー不織布とは反対側の面に貼り付けて、試験用吸収性物品を作製する。前記エアスルー不織布の目付量は、17g/m2とする。前記試験用吸収性物品において、前記吸水性樹脂粒子の坪量は、280g/m2、粉砕パルプの坪量は260g/m2とする。
平坦な主面を有する長さ45cmの支持板を、水平面に対して45±2度に傾斜した状態で架台によって固定する。温度25±2℃の室内において、固定された前記支持板の傾斜面上に、前記試験用吸収性物品を、その長手方向が支持板の長手方向に沿う向きで貼り付ける。次いで、前記試験用吸収性物品中の前記試験用吸収体の中央から8cm上方の位置に向けて、前記試験用吸収性物品の鉛直上方に配置された滴下ロートから、25±1℃に調整した人工尿を試験液として滴下する。1回あたり80mLの前記試験液を、8mL/秒の速度で滴下する。前記滴下ロートの先端と前記試験用吸収性物品との距離は10±1mmである。1回目の前記試験液投入開始から10分間隔で、同様の条件で試験液を繰り返し投入し、前記試験液は漏れが観測されるまで投入する。前記試験用吸収性物品に吸収されなかった試験液が前記支持板の下部から漏れ出た場合、漏れ出た前記試験液を前記支持板の下方に配置された金属製トレイ内に回収する。回収された前記試験液の重量(g)を天秤によって測定し、その値を漏れ量として記録する。前記試験液の全投入量から前記漏れ量を差し引くことにより、漏れ発生までの吸収量を算出する。」
と訂正する。

なお、請求項1ないし7について、請求項2ないし7はそれぞれ請求項1を直接または間接的に引用するものであるから、請求項1ないし7は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1) 訂正事項1ないし3について
訂正事項1ないし3に係る請求項1の訂正は、吸水性樹脂粒子に関し、特定条件下における特定波長の光線透過率の範囲を減縮し、中位粒子径の範囲を減縮し、生理食塩水の吸水速度を特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1ないし3に係る請求項1の訂正は、願書に添付した明細書の段落【0025】、【0106】、【0114】及び【0117】の記載からみて、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであるから新規事項の追加に該当しない。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
請求項1を直接または間接的に引用する請求項2ないし7についても同様である。

(2) 訂正事項4について
訂正事項4に係る請求項2の訂正は、吸収性樹脂粒子に関し、生理食塩水の吸水速度を特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としている。
そして、訂正事項4に係る請求項2の訂正は、願書に添付した明細書の段落【0025】及び【0117】の記載からみて、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであるから新規事項の追加に該当しない。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
請求項2を直接または間接的に引用する請求項3ないし7についても同様である。

(3) 訂正事項5及び6について
訂正事項5及び6に係る請求項7の訂正は、吸水性樹脂粒子に関し、生理食塩水の吸水速度を特定するものであって、さらに、吸収性物品が特定の勾配吸収試験によって測定される漏れ発生までの吸収量を特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としている。
そして、訂正事項5に係る請求項7の訂正は、願書に添付した明細書の段落【0025】及び【0117】の記載、訂正事項6に係る請求項7の訂正は、願書に添付した明細書の段落【0113】、【0116】、【0127】及び【0128】の記載からみて、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであるから新規事項の追加に該当しない。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。

3 訂正の適否についてのまとめ

以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1−7]について訂正することを認める。

第3 本件特許

上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明7」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
液体不透過性シート、吸収体、及び液体透過性シートを備え、前記液体不透過性シート、前記吸収体及び前記液体透過性シートがこの順に配置されている、吸収性物品であって、
前記吸収体が、吸水性樹脂粒子を含み、
前記吸水性樹脂粒子が、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する架橋重合体を含み、
(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体全量に対して70〜100モル%であり、
生理食塩水で30倍に膨潤させたときの前記吸水性樹脂粒子の波長425nmにおける光透過率が、55.9%以上であり、
生理食塩水の保水量が30〜55g/gであり、
前記吸水性樹脂粒子の中位粒子径が250〜384μmであり、
前記吸水性樹脂粒子の生理食塩水の吸水速度が30〜40秒である、吸収性物品。
【請求項2】
前記吸収性樹脂粒子の生理食塩水の吸水速度が30〜38秒であり、
前記液体透過性シートが、サーマルボンド不織布、エアスルー不織布、レジンボンド不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、エアレイド不織布、スパンレース不織布、ポイントボンド不織布、又は、これらから選ばれる2種以上の不織布の積層体を含む、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記吸収体が、繊維状物を更に含む、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記吸収体の前記液体透過性シートと接する面側を少なくとも覆うコアラップを更に備える、請求項1〜3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記コアラップが、前記液体透過性シートに接着されている、請求項4に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記吸収体が、前記液体透過性シートと接するように配置されており、
前記吸収体が、前記液体透過性シートに接着されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記吸水性樹脂粒子の生理食塩水の吸水速度が30〜38秒であり、
以下の勾配吸収試験によって測定される漏れ発生までの吸収量が389gより大きい、請求項1〜6のいずれか一項に記載の吸収性物品。
勾配吸収試験:
気流型混合装置を用いて前記吸水性樹脂粒子10g、及び粉砕パルプ9.5gを空気抄造によって均一混合することにより、12cm×32cmの大きさのシート状の試験用吸収体を作製する。前記試験用吸水体を坪量16g/m2のティッシュペーパー上に配置し、前記試験用吸収体上に、ティッシュペーパー、及び短繊維不織布であるエアスルー不織布をこの順に積層して積層体を作製する。前記積層体に対して、588kPaの荷重を30秒間加える。12cm×32cmの大きさのポリエチレン製液体不透過性シートを、前記積層体の前記エアスルー不織布とは反対側の面に貼り付けて、試験用吸収性物品を作製する。前記エアスルー不織布の目付量は、17g/m2とする。前記試験用吸収性物品において、前記吸水性樹脂粒子の坪量は、280g/m2、粉砕パルプの坪量は260g/m2とする。
平坦な主面を有する長さ45cmの支持板を、水平面に対して45±2度に傾斜した状態で架台によって固定する。温度25±2℃の室内において、固定された前記支持板の傾斜面上に、前記試験用吸収性物品を、その長手方向が支持板の長手方向に沿う向きで貼り付ける。次いで、前記試験用吸収性物品中の前記試験用吸収体の中央から8cm上方の位置に向けて、前記試験用吸収性物品の鉛直上方に配置された滴下ロートから、25±1℃に調整した人工尿を試験液として滴下する。1回あたり80mLの前記試験液を、8mL/秒の速度で滴下する。前記滴下ロートの先端と前記試験用吸収性物品との距離は10±1mmである。1回目の前記試験液投入開始から10分間隔で、同様の条件で試験液を繰り返し投入し、前記試験液は漏れが観測されるまで投入する。前記試験用吸収性物品に吸収されなかった試験液が前記支持板の下部から漏れ出た場合、漏れ出た前記試験液を前記支持板の下方に配置された金属製トレイ内に回収する。回収された前記試験液の重量(g)を天秤によって測定し、その値を漏れ量として記録する。前記試験液の全投入量から前記漏れ量を差し引くことにより、漏れ発生までの吸収量を算出する。」

第4 特許異議申立人が主張する特許異議申立理由について

特許異議申立人が特許異議申立書において、本件特許の請求項1ないし7に係る特許に対して申し立てた特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。

申立理由1(新規性) 本件特許の請求項1及び3ないし7に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1ないし8及び10ないし12号証にそれぞれ記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

申立理由2(進歩性) 本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1ないし8及び10ないし12号証にそれぞれ記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

申立理由3(サポート要件) 本件特許の請求項1ないし7についての特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

申立理由3は、概略次のとおりである。

(申立理由3−1)
一般的に、原料、及び製造条件が異なれば、製造物の物性が変化することは技術常識である。よって、組成、及び製造条件が変化すれば、本件発明1に特定された光透過率、保水量、中位粒子径は変化することも、技術常識であると言える。しかしながら、本件明細書には実施例の限られた条件で、光透過率、保水量、中位粒子径、吸水速度の要件すべてを満たす、吸水性樹脂を含む吸水性物品を製造できたことが記載されているにすぎない。すなわち、本願明細書には、如何なる組成、製造条件であれば、実施例以外において、光透過率、保水量、中位粒子径の要件すべてを満たす吸水性樹脂が製造できるかについて何ら記載がない。
従って、本件発明1〜7は実施例以外の条件において、その範囲を本件明細書に記載の発明にまで拡張ないし一般化できるものではない。

(申立理由3−2)
本件明細書に記載された「勾配吸収試験」は、45±2度に傾斜した支持板の上で吸収体に人工尿を吸収させる評価である。傾斜しているため短時間で人工尿を吸収できなければ、液が下方に流れて漏れてしまうことは自明である。このことから本件特許の課題を解決するためには、短時間で液を吸収する必要があると判断される。一方、光透過性と保水量は30分間吸水させたときに評価された物性である(【0118】〜【0121】)。本件発明1〜6は、光透過率と保水量とが所定の要件を満たせば、如何なる場合であっても、短時間で液を吸収できているとは認めがたい。
すなわち、吸水速度を規定しない本件発明1〜6は、課題を解決し得ない範囲を包含しており、本件明細書の発明の詳細な説明の記載にまで、本件発明1〜6の範囲を拡張ないし一般化できるものではない。

申立理由4(実施可能要件) 本件特許の請求項1ないし7についての特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

申立理由4は、概略次のとおりである。

(申立理由4−1)
一般的に、原料、及び製造条件が異なれば、製造物の物性が変化することは技術常識である。よって、製造条件が変化すれば、本件発明1に特定された光透過率、保水量、中位粒子径、吸水速度は変化することも、技術常識であると言える。しかしながら、本件明細書には実施例の限られた条件で、光透過率、保水量、中位粒子径、吸水速度の要件をすべて満たす、吸水性樹脂が製造できたことが記載されているにすぎない。すなわち、本願明細書には、如何なる組成、製造条件であれば、実施例以外において、光透過率、保水量、中位粒子径、吸水速度の要件すべてを満たす吸水性樹脂が製造できるかについて何ら記載がない。
よって、本願明細書の実施例以外において、光透過率、保水量、中位粒子径の要件すべてを満たす吸水性樹脂を製造するために、当業者は過度な試行錯誤を要すると認められる。
従って、本件の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本願請求項1〜7に記載の発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。

(申立理由4−2)
本件明細書には、遠心分離機のロータ(セルを設置する台)の型が記載されておらず、回転半径が記載されていない(【0016】)。また、仮にコクサン製の品番H−36のカタログ(甲16)を参照したとしても、ロータの種類によって回転半径が17.0〜6.4mmの範囲で選択できるため、与える遠心加速度(=半径*(角速度)2)が最大で2.7倍も異なる。よって、光透過性を測定するために用いる石英セルに与える遠心加速度が不明である。
吸水性樹脂粒子は、遠心加速度が大きいと、気泡が抜けやすくなり、ゲル粒子間の空隙がなくなるため、光透過度が上がると考えられる。従って、本件明細書は光透過度を規定する本件発明1〜7を、当業者が実施できるように十分かつ明確に記載されていない。

申立理由5(明確性要件) 本件特許の請求項1〜7についての特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

申立理由5は、概略次のとおりである。

甲12には光の透過性が高いと残存する気泡の量が低減されると記載されている(【0107】)。本件特許権者も2019年11月27日付け意見書において「一般的に、吸水性樹脂粒子では、膨潤したときに粒子間が他成分や空隙によって開くと、光の散乱が生じやすくなり、結果として、光透過性が低くなる傾向があります。」と答弁する。
本件明細書の【0016】、【0096】、【0097】には光透過率の測定法が記載され、光透過率の測定前に「回転数200rpmにて10分間脱泡」することが記載されている。
本件請求項1の光透過率について、甲12の記載や、本件出願人の答弁から、脱泡の有無や程度で光透過率が大きく変化すると考えられるところ、本件請求項1〜3での光透過率に脱泡の有無や脱泡方法が規定されていない。本件請求項1での光透過率の脱泡の有無や脱泡方法を規定しないと、本件請求項1での光透過率の値は定まらないのは自明である。ここで、光透過率の測定において「遠心分離機(例えば、株式会社コクサン製の品番H−36)を用いて、回転数200rpmにて10分間脱泡を行う。」と規定されたとしても、本件明細書からは脱泡の程度に影響を与える遠心加速度が開示されていない。具体的には、本件明細書には、遠心分離機のロータ(セルを設置する台)の型が記載されておらず、回転半径が記載されていない(【0016】)。また、仮にコクサン製の品番H−36のカタログ(甲14)を参照したとしても、ロータの種類によって回転半径が17.0〜6.4mmの範囲で選択できるため、与える遠心加速度(=半径*(角速度)2)が最大で2.7倍も異なる。よって、光透過性を測定するために用いる石英セルに与える遠心加速度が不明である。
吸水性樹脂粒子は、遠心加速度が大きいと、気泡が抜けやすくなり、ゲル粒子間の空隙がなくなるため、光透過度が上がると考えられる。
このため、本件発明1〜7は、光透過度の評価条件が明確でない。

(証拠方法)
甲第1号証:特開2001−098170号公報
甲第2号証:特開平11−071425号公報
甲第3号証:特開平11−080248号公報
甲第4号証:特開2018−187545号公報
甲第5号証:特開2000−302876号公報
甲第6号証:国際公開第2016/104374号
甲第7号証:特開平02−191604号公報
甲第8号証:特開平2−196802号公報
甲第9号証:特開2016−32588号公報
甲第10号証:特表2017−502094号公報
甲第11号証:特表2017−538008号公報
甲第12号証:特開平11−349687号公報
甲第13号証:Modern Superabsorbent Polymer Technology ( 1998 ) p.69-74,p.251-257および抄訳
甲第14号証:特開2014−039684号公報
甲第15号証:特開2001−131210号公報
甲第16号証:カタログ 卓上遠心機 H−36 ( 2015 )
甲第17号証:実験成績証明書(甲第1号証の実施例6の追試)
甲第18号証:実験成績証明書(甲第1号証の実施例10の追試)
甲第19号証:実験成績証明書(甲第2号証の実施例5の追試)
甲第20号証:実験成績証明書(甲第3号証の実施例5の追試)
甲第21号証:実験成績証明書(甲第8号証の実施例5の追試)
なお、証拠の表記については、特許異議申立書における記載におおむね従った。

また、特許異議申立人は、令和3年11月18日に提出した意見書とあわせて、次の参考試料1を提出している。
参考資料1:国際公開第2011/086843号

第5 令和4年1月27日付け取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由の概要

当審が令和4年1月27日付けで特許権者に通知した取消理由通知(決定の予告)における取消理由の概要は、次のとおりである。なお、申立理由のうち申立理由3−2は、該取消理由に包含される。

取消理由3(サポート要件) 本件特許の請求項1ないし7についての特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

なお、取消理由3の具体的理由は次のとおり。

本件発明1は、「液体漏れが抑制可能された吸水性物品を提供すること」(段落【0005】)を課題とするものである。
そして、本件明細書の発明の詳細な説明には、「本発明者らは、液体漏れの低減を鋭意検討した結果、吸水性樹脂粒子に、生理食塩水で30倍に膨潤させたときの波長425nmにおける光透過率が20%以上である吸水性樹脂粒子を用いた場合に、液体の漏れが効果的に抑制されることを見出した。」(段落【0007】)、「吸水性樹脂粒子の生理食塩水の保水量は、30〜55g/gであってよい。」(段落【0010】)との記載があり、実施例や比較例では、「吸水性樹脂粒子を生理食塩水で30倍に膨潤させたときの波長425nmにおける光透過率」(測定方法は段落【0119】)、「生理食塩水の保水量」(測定方法は段落【0120】)及び「勾配吸収試験」(測定方法は段落【0127】)で評価することが記載されており、実施例1及び2は、「吸水性樹脂粒子を生理食塩水で30倍に膨潤させたときの波長425nmにおける光透過率」、「生理食塩水の保水量」の点で、本件発明1の特定事項を満たすものであり、「勾配吸収試験」の点で、比較例に比して有利な結果が示されている。
しかしながら、「吸水性樹脂粒子を生理食塩水で30倍に膨潤させたときの波長425nmにおける光透過率」、「生理食塩水の保水量」の測定条件(時間)は30分(段落【0119】、【0120】)であるのに対し、勾配吸収試験の測定条件(時間)は「1回あたり80mLの試験液を、8mL/秒の速度で滴下」(段落【0127】)とされる。
吸水性樹脂粒子における吸水速度は、吸水初期とその後では当然異なるものであり、かつ、吸水性樹脂粒子の性状に応じて初期吸水量が大きいもの、小さいものなど様々なものが存在しうる。
この点について、訂正(合議体注:令和3年10月11日における訂正請求のことである。)により、請求項1において、「吸水性樹脂粒子の生理食塩水の吸水速度が30〜50秒」であることが特定されたが、参考資料1の実施例及び比較例の結果から見ても、「吸水性樹脂粒子の生理食塩水の吸水速度が30〜50秒」であれば、勾配吸収試験において、一様に同じ傾向を示すということもできない。
してみると、「吸水性樹脂粒子を生理食塩水で30倍に膨潤させたときの波長425nmにおける光透過率」(測定方法は段落【0097】)、「生理食塩水の保水量」(測定方法は段落【0098】)、「生理食塩水の吸収速度」(測定方法は段落【0121】)の点で、本件発明1の特定事項を満たすものであるとしても、吸水性樹脂の初期吸水速度が小さいものであるならば、「1回あたり80mLの試験液を、8mL/秒の速度で滴下」することでの評価である「勾配吸収試験」において、必ずしも有利な結果が得られるものであるとは言えないことになる。
以上の点をふまえると、「勾配吸収試験」の点について何ら特定されているものではない本件発明1は、課題を解決できると認識できないものを含むものであるといわざるを得ない。
同様のことが、本件発明2ないし7についても言える。

第6 当審の判断

1 令和4年1月27日付けで特許権者に通知した取消理由通知(決定の予告)における取消理由についての判断

本件特許の請求項1ないし7において、吸水樹脂粒子の生理食塩水の吸水速度が「30〜40秒」あるいは「30〜38秒」に訂正された。
これにより、本件発明1ないし7は、参考資料1の実施例および比較例の結果から見て、勾配吸収試験で一様に同じ傾向を示すと認識できる範囲のものとなった。
よって、取消理由3はその理由がない。

2 取消理由通知(決定の予告)で採用しなかった異議申立理由についての判断

(1) 申立理由1(新規性)及び2(進歩性)について
ア 甲第1号証を根拠とする新規性進歩性について
(ア) 甲第1号証の記載事項
甲第1号証には、「吸水剤組成物およびその用途」に関し、次の記載がある。(なお、下線は当審で付したものである。以下同様。)

「【請求項1】架橋重合体の表面近傍がさらに架橋されてなる吸水性樹脂と過通液緩衝剤とを含む吸水剤組成物であって、該吸水剤組成物は、その通液緩衝指数が0.4以上、加圧下吸収体内吸収倍率が25g/g以上であり、かつ、その平均粒径が200μm〜600μm、粒径106μm未満の粒子の割合が5重量%以下であることを特徴とする、吸水剤組成物。
【請求項2】吸水剤組成物の無加圧下吸収倍率が35g/g以上である、請求項1に記載の吸水剤組成物。
【請求項3】吸水剤組成物の通液緩衝指数が0.5以上である、請求項1または2に記載の吸水剤組成物。
【請求項4】吸水剤組成物の加圧下吸収体内吸収倍率が30g/g以上である、請求項1から3までのいずれかに記載の吸水剤組成物。
【請求項5】吸水性樹脂は、無加圧下吸収倍率が37g/g以上、加圧下吸収倍率が32g/g以上である、請求項1から4までのいずれかに記載の吸水剤組成物。
【請求項6】吸水性樹脂100重量部に対して過通液緩衝剤が0.001〜20重量部である、請求項1から5までのいずれかに記載の吸水剤組成物。
【請求項7】過通液緩衝剤は、その平均粒径が吸水性樹脂の平均粒径の1/5以下である、請求項1から6までのいずれかに記載の吸水剤組成物。
【請求項8】請求項1から7までのいずれかに記載の吸水剤組成物を含んでなる吸収物品。」

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は吸水剤組成物およびその用途に関するものである。」

「【0002】
【従来の技術】近年、大量の水を吸収させることを目的として、紙おむつや生理用ナプキン、失禁パット等の衛生材料を構成する材料の一つに吸水性樹脂等の吸水剤が幅広く利用されている。また衛生材料以外にも、土壌保水剤ならびに食品等のドリップシート等、吸水、保水を目的として吸水性樹脂等の吸水剤が広範囲に利用されている。上記の吸水剤としては、例えば、ポリアクリル酸部分中和架橋体、デンプン?アクリル酸グラフト重合体の中和物、酢酸ビニル?アクリル酸エステル共重合体のケン化物、アクリロニトリル共重合体もしくはアクリルアミド共重合体の加水分解物またはこれらの架橋体、カチオン性モノマーの架橋重合体等が知られている。
【0003】そして、上記衛生材料等に上記吸水剤を用いるためには、体液等の水性液体に接した際の高い吸収倍率や吸収速度、加圧下での高い吸収倍率や通液性等の特性(吸収特性)を備えていることが望まれている。そして従来より、これら吸収特性の中から種々の特性を併せ持ち、衛生材料に用いられた場合に、優れた性能を示す吸水剤が種々提案されている。さらに、これらの吸水剤とパルプ等の親水性繊維からなる吸収物品も、吸水剤と同様に、体液等の水性液体が吸収体に注入された際の高い吸収量、加圧下での高い吸収量、吸収体全体に広がる拡散性に優れていることが望まれている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】吸収体全体への体液等の水性液体の拡散性は、親水性繊維の毛管現象が大きく関わっている。即ち、主に吸水剤と親水性繊維とからなる吸収物品における吸水剤の濃度(以下、樹脂濃度と称する)は、従来、20〜50重量%程度であり、この範囲の吸水剤を有する吸収物品の水性液体拡散性は、親水性繊維の毛管現象による拡散が支配的である。そのため、上記のような衛生材料中の吸収体は、一度に吸収体に注入される水性液体が多いと、吸収体中の水性液体の拡散速度に吸水剤の吸水速度が追いつかず、吸収物品端部から漏れてしまうという問題を有している。
【0005】よって本発明の課題は、吸水剤組成物と親水性繊維を含んでなる吸収物品中において、該吸水剤組成物を高濃度に含んでなる部分が過通液緩衝効果を発現する吸水剤組成物およびその用途を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記問題点を解決すべく本発明者が種々検討した結果、吸水剤組成物の坪量(樹脂濃度)が高く、且つ、外力によって吸水剤組成物の粒子同士が密着している状態において、吸水剤組成物が水性液体と接した際の水性液体の拡散を制御(過通液緩衝)することが重要であることを見出した。上記の水性液体の拡散制御(過通液緩衝)は、通液緩衝指数という新規な物性値を導入することにより評価することができる。そして、以下の様な特性を示す吸水剤組成物により上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。即ち、
(1)吸水剤組成物と親水性繊維からなる吸収物品中で、吸水剤組成物は優れた吸水特性を示す。
【0007】(2)吸水剤組成物は通液緩衝指数が高く、高樹脂濃度では水性液体の拡散を適切に制御し、抑える(過通液緩衝)ことができる。
(3)上記(1)に記載の吸収物品の周辺部に、高樹脂濃度含有部分を配置することにより、一度に多量の水性液体が吸収物品に注入された際の吸収物品端部からの漏れを防ぐことができる。
従って本発明は、架橋重合体の表面近傍がさらに架橋された吸水性樹脂と過通液緩衝剤を含んでなり、吸水剤組成物の通液緩衝指数が0.4以上であり、且つ、吸水剤組成物の加圧下吸収体内吸収倍率が25g/g以上であることを特徴とする吸水剤組成物に関するものである。また本発明は、該吸水剤組成物を含んでなる吸収物品に関する。」

「【0009】
【発明の実施形態】以下に本発明を詳しく説明する。
・・・(略)・・・
【0019】この操作によって得られた吸水剤組成物の加圧下吸収体内吸収倍率は、本発明の吸水剤組成物を吸水物品中に用いた場合の実際の吸収倍率の程度を表す。
(c)無加圧下吸収倍率
吸水剤組成物(あるいは吸水性樹脂)0.2gを不織布製の袋(60mm×60mm)に均一に入れ、生理食塩水中に室温で浸漬した。30分後に袋を引き上げ、遠心分離機を用いて250G(250cm/s2)で3分間水切りを行った後、袋の重量W4(g)を測定した。また、同様の操作を吸水剤組成物(あるいは吸水性樹脂)を用いないで行い、そのときの重量W5(g)を測定した。そして、これら重量W4、W5から、次式
無加圧下吸収倍率(g/g)=(重量W4(g)−重量W5(g))/吸水剤組成物(あるいは吸水性樹脂)の重量(g)に従って無加圧下吸収倍率(g/g)を算出した。
【0020】(d)吸水性樹脂の加圧下吸収倍率
前記通液緩衝指数の測定において、吸収剤組成物に代えて吸水性樹脂を用いる以外は同じ操作を行ない、生理食塩水11の重量W6(g)を、天秤1の測定値から求めた。そして、上記重量W6(g)と吸水性樹脂の重量(0.9g)から次式
吸水性樹脂の加圧下吸収倍率(g/g)=重量W6(g)/吸水性樹脂の重量(g)
に従って、吸水開始から60分後の加圧下吸収倍率を算出した。
【0021】(e)平均粒径
吸水剤組成物、吸水性樹脂および吸水性樹脂前駆体の粒度分布を、目開きがそれぞれ850μm、600μm、500μm、425μm、300μm、150μm、106μm、および受け皿からなるJIS標準篩を用いて測定した。そして、その粒度分布と篩目開きの値から、対数正規分布線図を用いて平均粒径D50を求めた。また、粒子が狭い単粒度(例えば500μm〜425μmに分級した粒度)で、粒子の上下限の間に複数のJIS標準篩が存在しない場合、その上下限の平均値(上記例示では463μm)を平均粒径とした。
【0022】本発明にかかる吸水剤組成物を得る手段としては、特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜設定可能であるが、具体的には、親水性不飽和単量体を重合して得られる架橋重合体の表面近傍をさらに架橋して吸水性樹脂を得た後、得られた吸水性樹脂に過通液緩衝剤を混合することによって得られる。ここでいう架橋重合体とは、すなわち吸水性樹脂前駆体である。本発明の吸水剤組成物を構成する吸水性樹脂としては、例えば、カルボキシル基を含有する親水性架橋重合体が好ましい。該親水性架橋重合体は、例えば、アクリル酸および/またはその塩を主成分とする親水性不飽和単量体を(共)重合(以下、単に重合と記す)させることによって得られる。そして、該親水性架橋重合体のうち、ポリアクリル酸塩の架橋重合体がさらに好ましい。また、ポリアクリル酸塩の架橋重合体は、該架橋重合体中の酸基のうち、50〜90モル%が、例えば、アルカリ金属塩やアンモニウム塩、アミン塩等によって中和されていることがより好ましい。この酸基の中和は、該架橋重合体を得る前の親水性不飽和単量体を調製する段階で予め中和しておいてから重合反応を開始してもよく、また、重合中あるいは重合反応終了後に得られた該架橋重合体の酸基を中和してもよい。
【0023】上記の親水性不飽和単量体は、必要に応じて、アクリル酸およびその塩以外の不飽和単量体(以下、他の単量体と記す)を含有していてもよい。他の単量体としては、具体的には、例えば、メタクリル酸、マレイン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸等の、アニオン性不飽和単量体およびその塩;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、N−アクリロイルピペリジン、N−アクリロイルピロリジン等の、ノニオン性の親水基含有不飽和単量体;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、および、これらの四級塩等の、カチオン性不飽和単量体;等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら他の単量体を併用する場合の使用量は、親水性不飽和単量体全体の30モル%以下が好ましく、10モル%以下がより好ましい。」

「【0049】
【実施例】以下、実施例および比較例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)中和率75モル%のアクリル酸ナトリウム(親水性不飽和単量体)35.5重量%水溶液5,500gに、内部架橋剤としてのポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシド平均付加モル数8)5.91gを溶解させて反応液とした。次に、この反応液を窒素ガス雰囲気下で30分間脱気した(この反応液に窒素ガスを30分間吹き込むことによって該反応液中の溶存酸素を追い出した)。次いで、シグマ型羽根を2本有する内容積10Lのジャケット付ステンレス製双腕型ニーダーに蓋を取り付けて形成した反応器に、上記の反応液を供給し、反応液を30℃に保ちながら系を窒素ガスに置換した。
【0050】続いて、反応液を攪拌しながら、重合開始剤としての過硫酸ナトリウム2.87gおよびL−アスコルビン酸0.011gを添加したところ、およそ1分後に重合が開始した。そして、20〜80℃で重合を行い、重合を開始してから60分後に反応を終了して含水ゲル状重合体を取り出した。得られた含水ゲル状重合体は、その径が約5mmに細分化されていた。この細分化された含水ゲル状重合体を50メッシュ(目開きの大きさ300μm)の金網上に広げ、170℃で65分間熱風乾燥した。次いで、乾燥物を振動ミルを用いて粉砕し、目開きの大きさが500μmと425μmの金網で分級することにより、500μm〜425μmの粒径の吸水性樹脂前駆体を得た。
【0051】得られた吸水性樹脂前駆体100重量部にエチレングリコールジグリシジルエーテル0.03重量部と、プロピレングリコール1重量部と、水3重量部と、イソプロピルアルコール1重量部とからなる表面架橋剤水溶液を混合した。上記の混合物を205℃で40分間加熱処理することにより、吸水性樹脂を得た。得られた吸水性樹脂は500μm〜425μmの粒径であった。上記の吸水性樹脂100重量部に過通液緩衝剤として架橋型アクリル酸ポリマー(商品名・カーボポール934P;B.F.GoodrichCompany製;1重量%水溶液粘度40,000cP(1cP=10-3Pa・s)〔1重量%水溶液粘度40Pa・s〕)2.5重量部をドライブレンドすることにより、本発明にかかる吸水剤組成物を得た。
【0052】吸水剤組成物の無加圧下吸収倍率は36g/g、通液緩衝指数は0.5、吸水剤組成物の加圧下吸収体内吸収倍率は31g/gであった。また、得られた吸水剤組成物の粒径は表1に示す。
(実施例2)実施例1において架橋型アクリル酸ポリマー(商品名・カーボポール934P;B.F.Goodrich Company製;1重量%水溶液粘度40,000cP〔1重量%水溶液粘度40Pa・s〕)を5重量部添加した他は、同様の操作を行った。得られた吸水剤組成物の無加圧下吸収倍率は36g/g、通液緩衝指数は0.8、吸水剤組成物の加圧下吸収体内吸収倍率は30g/gであった。また、得られた吸水剤組成物の粒径は表1に示す。
【0053】(実施例3)実施例1において過通液緩衝剤として架橋型アクリル酸ポリマー(商品名・ジュンロンPW−150;日本純薬株式会社製;1重量%水溶液粘度95,000cP〔1重量%水溶液粘度95Pa・s〕)を2重量部添加した他は、同様の操作を行った。得られた吸水剤組成物の無加圧下吸収倍率は37g/g、通液緩衝指数は0.5、吸水剤組成物の加圧下吸収体内吸収倍率は32g/gであった。また、得られた吸水剤組成物の粒径は表1に示す。
(実施例4)実施例3において過通液緩衝剤として架橋型アクリル酸ポリマー(商品名・ジュンロンPW−150;日本純薬株式会社製;1重量%水溶液粘度95,000cP〔1重量%水溶液粘度95Pa・s〕)を5重量部添加した他は、同様の操作を行った。吸水剤組成物の無加圧下吸収倍率は38g/g、通液緩衝指数は1、吸水剤組成物の加圧下吸収体内吸収倍率は30g/gであった。また、得られた吸水剤組成物の粒径は表1に示す。
【0054】(実施例5)実施例1で得た吸水性樹脂100重量部に過通液緩衝剤として架橋型アクリル酸ポリマー(商品名・カーボポール934P;B.F.GoodrichCompany製;1重量%水溶液粘度40,000cP〔1重量%水溶液粘度40Pa・s〕)5重量部を添加・混合し、次いで、水3重量部とイソプロピルアルコール3重量部とからなる水溶液を混合し水造粒した。更に、この混合物を80℃で30分間硬化させ、600μmのふるいを通過させることにより、本発明の吸水剤組成物を得た。吸水剤組成物の無加圧下吸収倍率は38g/g、通液緩衝指数は0.5、吸水剤組成物の加圧下吸収体内吸収倍率は31g/gであった。また、得られた吸水剤組成物の粒径は表1に示す。
【0055】(比較例1)上記の実施例1で得られた吸水性樹脂を、比較用の吸水剤(比較用吸水剤(1))とした。上記比較用吸水剤の諸性能を上記の方法によって測定した。その結果、吸水剤(比較用吸水剤(1))の無加圧下吸収倍率は37g/g、通液緩衝指数は0.3、吸水剤の加圧下吸収体内吸収倍率は32g/gであった。
(実施例6)中和率75モル%のアクリル酸ナトリウム(親水性不飽和単量体)37重量%水溶液5,500gに、内部架橋剤としてのポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数8)2.22gを溶解させて反応液とした。次に、この反応液を、窒素ガス雰囲気下で30分間脱気した(この反応液に窒素ガスを30分間吹き込むことによって該反応液中の溶存酸素を追い出した)。次いで、シグマ型羽根を2本有する内容積10Lのジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに蓋を取り付けて形成した反応器に、上記の反応液を供給し、反応液を25℃に保ちながら系を窒素ガス置換した。
【0056】続いて、反応液を撹拌しながら、重合開始剤としての過硫酸ナトリウム2.4gおよびL−アスコルビン酸0.12gを添加したところ、およそ1分後に重合が開始した。そして、25〜95℃で重合を行い、重合を開始してから40分後に反応を終了して含水ゲル状重合体を取り出した。得られた含水ゲル状重合体は、その径が約5mmに細分化されていた。この細分化された含水ゲル状重合体を50メッシュ(目開きの大きさ300μm)の金網上に広げ、170℃で70分間熱風乾燥した。次いで、乾燥物を振動ミルを用いて粉砕後、分級し、不定形破砕状の吸水性樹脂前駆体(a)を得た。
【0057】得られた吸水性樹脂前駆体(a)100重量部に、プロピレングリコール0.8重量部と、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.03重量部、水2.5重量部、エチルアルコール0.8重量部とからなる表面架橋剤水溶液を混合した。上記の混合物を195℃で45分間加熱処理することにより吸水性樹脂(a)を得た。得られた吸水性樹脂(a)の無加圧下吸収倍率は46g/g、加圧下吸収倍率は36g/g、平均粒径は350μmであり、粒径が106μm未満の粒子の割合は1重量%であった。次に、上記の吸水性樹脂(a)100gに、過通液緩衝剤としての微粒子状の親水性二酸化ケイ素(商品名・アエロジル200(1次粒子の平均粒径約12nm);日本アエロジル株式会社製)0.3gを添加・混合(ドライブレンド)することにより、本発明にかかる吸水剤組成物(6)を得た。得られた吸水剤組成物(6)の粒径は、吸水性樹脂(a)に対してほとんど変化せず、平均粒径は350μm、粒径が106μm未満の粒子の割合は1重量%であった。
【0058】そして、上記吸水剤組成物の諸性能を上記の方法によって測定した。その結果を表1に示す。
(実施例7)上記の実施例6で得られた吸水性樹脂(a)100gに、過通液緩衝剤としての微粒子状の疎水性二酸化ケイ素(商品名・アエロジルR972(1次粒子の平均粒径約16nm);日本アエロジル株式会社製)0.1gを添加・混合(ドライブレンド)することにより、本発明にかかる吸水剤組成物(7)を得た。得られた吸水剤組成物(7)の粒径は、吸水性樹脂(a)に対してほとんど変化せず、平均粒径は350μm、粒径が106μm未満の粒子の割合は1重量%であった。
【0059】そして、上記吸水剤組成物の諸性能を上記の方法によって測定した。その結果を表1に示す。(実施例8)上記の実施例6で得られた吸水性樹脂(a)100gに、過通液緩衝剤としての微粒子状のカチオン性を有する疎水性二酸化ケイ素(商品名・アエロジルRA200HS;日本アエロジル株式会社製)0.2gを添加・混合(ドライブレンド)することにより、本発明にかかる吸水剤組成物(8)を得た。得られた吸水剤組成物(8)の粒径は、吸水性樹脂(a)に対してほとんど変化せず、平均粒径は350μm、粒径が106μm未満の粒子の割合は1重量%であった。
【0060】そして、上記吸水剤組成物の諸性能を上記の方法によって測定した。その結果を表1に示す。
(実施例9)上記の実施例6で得られた吸水性樹脂(a)100gに、過通液緩衝剤としての重量平均分子量10,000のポリエチレンイミン(商品名・エポミンSP−200;株式会社日本触媒製)1.5gを添加・混合することにより、本発明にかかる吸水剤組成物(9)を得た。得られた吸水剤組成物(9)の平均粒径は380μm、粒径が106μm未満の粒子の割合は1重量%であった。
【0061】そして、上記吸水剤組成物の諸性能を上記の方法によって測定した。その結果を表1に示す。
(実施例10)中和率75モル%のアクリル酸ナトリウム(親水性不飽和単量体)33重量%水溶液5,500gに、内部架橋剤としてのポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数8)4.46gを溶解させて反応液とした。次に、この反応液を、窒素ガス雰囲気下で30分間脱気した(この反応液に窒素ガスを30分間吹き込むことによって該反応液中の溶存酸素を追い出した)。次いで、シグマ型羽根を2本有する内容積10Lのジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに蓋を取り付けて形成した反応器に、上記の反応液を供給し、反応液を25℃に保ちながら系を窒素ガス置換した。
【0062】続いて、反応液を攪拌しながら、重合開始剤としての過硫酸アンモニウム2.4gおよびL−アスコルビン酸0.12gを添加したところ、およそ1分後に重合が開始した。そして、25〜90℃で重合を行い、重合を開始してから40分後に反応を終了して含水ゲル状重合体を取り出した。得られた含水ゲル状重合体は、その径が約5mmに細分化されていた。この細分化された含水ゲル状重合体を50メッシュ(目開きの大きさ300μm)の金網上に広げ、170℃で70分間熱風乾燥した。次いで、乾燥物を振動ミルを用いて粉砕後、分級し、不定形破砕状の吸水性樹脂前駆体(b)を得た。
【0063】得られた吸水性樹脂前駆体(b)100重量部に、プロピレングリコール0.7重量部と、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.02重量部、水2重量部、エチルアルコール0.7重量部とからなる表面架橋剤水溶液を混合した。上記の混合物を185℃で40分間加熱処理することにより吸水性樹脂(b)を得た。得られた吸水性樹脂(b)の無加圧下吸収倍率は43g/g、加圧下吸収倍率は32g/g、平均粒径は430μmであり、粒径が106μm未満の粒子の割合は3重量%であった。次に、上記の吸水性樹脂(b)100g200(1次粒子の平均粒径約12nm);日本アエロジル株式会社製)0.3gを添加・混合(ドライブレンド)することにより、本発明にかかる吸水剤組成物(10)を得た。得られた吸水剤組成物(10)の粒径は、吸水性樹脂(b)に対してほとんど変化せず、平均粒径は430μm、粒径が106μm未満の粒子の割合は3重量%であった。
【0064】そして、上記吸水剤組成物の諸性能を上記の方法によって測定した。その結果を表1に示す。
(比較例2)中和率75モル%のアクリル酸ナトリウム(親水性不飽和単量体)37重量%水溶液4,400gに、内部架橋剤としてのトリメチロールプロパントリアクリレート2.72gを溶解させて反応液とした。次に、この反応液を、窒素ガス雰囲気下で30分間脱気した(この反応液に窒素ガスを吹き込むことによって該反応液中の溶存酸素を追い出した)。次いで、実施例6の反応器と同様の反応器に、上記の反応液を供給し、反応液を30℃に保ちながら系を窒素ガス置換した。」

「【0067】・・・。
(実施例11)実施例1で得られた吸水剤組成物と通常紙おむつ等の衛生材料に用いられる木材粉砕パルプを用いて吸収体を作製した。該吸収体は、120mm×400mmの吸収体であって、幅1cmの外周部分は吸水剤組成物濃度75重量%であり、100mm×380mmの中央部分は吸水剤組成物濃度50重量%であった。具体的には、外周部分は吸水剤組成物75重量部と、親水性繊維としての木材粉砕パルプ25重量部とをミキサーで乾式混合し、得られた混合物を120mm×400mmの吸収体のうちの、幅1cmを持った外周部とすることで、該外周部分は坪量約0.094g/cm2のウェブとした。さらに、中央部分は吸水剤組成物50重量部と、親水性繊維としての木材粉砕パルプ50重量部とをミキサーで乾式混合し、得られた混合物を120mm×400mmの吸収体のうちの、100mm×380mmの中央部分とすることで、該中央部分は坪量約0.047g/cm2のウェブとした。このウェブを圧力2kg/cm2(約196kPa)で1分間プレスすることにより、吸収体を得た。
【0068】続いて、液不透過性のポリプロピレンからなり、いわゆるレッグギャザーを有するバックシート(液不透過性シート)、上記の吸収体、液透過性のポリプロピレンからなるトップシート(液透過性シート)を、両面テープを用いてこの順に粘着すると共に、この粘着物に2つのいわゆるテープファスナーを取り付けることにより、吸収物品(つまり、紙おむつ)(1)を得た。この吸収物品(1)の重量は51gであった。上記の吸収物品を、いわゆるキューピー人形(身長55cm、重量5kg)に装着し、該人形をうつ伏せ状態にした後、吸収物品と人形との間にチューブを差し込み、人体において排尿を行なう位置に相当する位置に、1回当たり50mlの生理食塩水を、20分間隔で順次注入した。
そして注入した生理食塩水が吸収物品に吸収されなくなって漏れ出した時点で、上記の注入動作を終了し、注入回数を記録した。
【0069】その結果、注入回数は6回(総注入量300ml)であった。
(実施例12)実施例11において、実施例1で得られた吸水剤組成物に代えて、実施例6で得られた吸水剤組成物(6)を用いた以外は、実施例11と同様にして吸収物品(2)を得た。この吸収物品(2)の重量は51gであった。上記の吸収物品を用いて実施例11と同様の測定を繰り返した後、注入回数を記録した。その結果、注入回数は6回(総注入量300ml)であった。
(比較例3)実施例11において、実施例1で得られた吸水剤組成物に代えて、比較例1で得られた比較用の吸水剤(比較用吸水剤(1))を用いた以外は、実施例11と同様にして比較用吸収物品(1)を得た。この比較用吸収物品(1)の重量は51gであった。
【0070】上記の比較用吸収物品(1)を用いて実施例11と同様の測定を繰り返した後、注入回数を記録した。その結果、注入回数は5回(総注入量250ml)であった。」

「【0072】
【表1】



(イ) 甲第1号証に記載された発明

上記(ア)の記載、特に実施例6で得られた吸水剤組成物を用いた実施例12についての記載をまとめると、甲第1号証には、次の発明が記載されていると認める。

「中和率75モル%のアクリル酸ナトリウム(親水性不飽和単量体)37重量%水溶液5,500gに、内部架橋剤としてのポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数8)2.22gを溶解させて反応液とし、次に、この反応液を、窒素ガス雰囲気下で30分間脱気し、次いで、シグマ型羽根を2本有する内容積10Lのジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに蓋を取り付けて形成した反応器に、上記の反応液を供給し、反応液を25℃に保ちながら系を窒素ガス置換し、続いて、反応液を撹拌しながら、重合開始剤としての過硫酸ナトリウム2.4gおよびL−アスコルビン酸0.12gを添加し、25〜95℃で重合を行い、重合を開始してから40分後に反応を終了して含水ゲル状重合体を取り出し、得られた含水ゲル状重合体を50メッシュ(目開きの大きさ300μm)の金網上に広げ、170℃で70分間熱風乾燥し、次いで、乾燥物を振動ミルを用いて粉砕後、分級し、不定形破砕状の吸水性樹脂前駆体(a)を得、
得られた吸水性樹脂前駆体(a)100重量部に、プロピレングリコール0.8重量部と、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.03重量部、水2.5重量部、エチルアルコール0.8重量部とからなる表面架橋剤水溶液を混合し、上記の混合物を195℃で45分間加熱処理することにより得られた吸水性樹脂(a)と通常紙おむつ等の衛生材料に用いられる木材粉砕パルプを用いて吸収体を作製し、続いて、液不透過性のポリプロピレンからなり、いわゆるレッグギャザーを有するバックシート(液不透過性シート)、上記の吸収体、液透過性のポリプロピレンからなるトップシート(液透過性シート)を、両面テープを用いてこの順に粘着すると共に、この粘着物に2つのいわゆるテープファスナーを取り付けることにより得た、吸収物品。」(以下、「甲1実施例12吸水物品発明」という。)

また、上記(ア)の記載、特に実施例10で得られた吸水剤組成物についてその用途も加味した上で記載をまとめると、甲第1号証には、次の発明が記載されていると認める。

「中和率75モル%のアクリル酸ナトリウム(親水性不飽和単量体)33重量%水溶液5,500gに、内部架橋剤としてのポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数8)4.46gを溶解させて反応液とし、次に、この反応液を、窒素ガス雰囲気下で30分間脱気し、次いで,シグマ型羽根を2本有する内容積10Lのジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに蓋を取り付けて形成した反応器に、上記の反応液を供給し、反応液を25℃に保ちながら系を窒素ガス置換し、続いて、反応液を攪拌しながら、重合開始剤としての過硫酸アンモニウム2.4gおよびL−アスコルビン酸0.12gを添加し、25〜90℃で重合を行い、重合を開始してから40分後に反応を終了して含水ゲル状重合体を取り出し、得られた含水ゲル状重合体を50メッシュ(目開きの大きさ300μm)の金網上に広げ、170℃で70分間熱風乾燥し、次いで、乾燥物を振動ミルを用いて粉砕後、分級し、不定形破砕状の吸水性樹脂前駆体(b)を得、
得られた吸水性樹脂前駆体(b)100重量部に、プロピレングリコール0.7重量部と、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.02重量部、水2重量部、エチルアルコール0.7重量部とからなる表面架橋剤水溶液を混合し、上記の混合物を185℃で40分間加熱処理することにより得られた吸水性樹脂(b)を用いた吸収物品。」(以下、「甲1実施例10吸水性樹脂利用吸収物品発明」という。)

(ウ) 対比・判断
A 本件発明1について
(A) 甲1実施例12吸水物品発明との対比
本件発明1と甲1実施例12吸水物品発明とを対比すると、甲1実施例12吸水物品発明の原料・製法から見て、両者は、
「液体不透過性シート、吸収体、及び液体透過性シートを備え、前記液体不透過性シート、前記吸収体及び前記液体透過性シートがこの順に配置されている、吸収性物品であって、
前記吸収体が、吸水性樹脂粒子を含み、
前記吸収性樹脂粒子が、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する架橋重合体を含み、
(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体全量に対して70〜100モル%である、吸水性物品」である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1−1)
本件発明1の吸水性物品で用いられる吸水性樹脂粒子は、「生理食塩水で30倍に膨潤させたときの波長425nmにおける光透過率が、55.9%以上であり、生理食塩水の保水量が30〜55g/gであり、中位粒子径が250〜384μmであり、前記吸水性樹脂粒子の生理食塩水の吸水速度が30〜40秒である」と特定されるのに対し、甲1実施例12吸水物品発明にはそのような特定がない点

上記相違点1−1について検討する。
甲第17号証には、甲第1号証の実施例12(甲1実施例12吸水物品発明)で用いている実施例6の吸水性樹脂粒子を再現し、本件明細書の段落【0118】〜【0124】に記載の方法により測定した結果、生理食塩水で30倍に膨潤させたときの波長425nmにおける光透過率が53%、生理食塩水の保水量が51.2g/gであり、中位粒子径が358μmであったことが示されている。
すると、相違点1−1は実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲1実施例12吸水物品発明ではない。
また、甲第1号証には、吸収物品に含まれる吸水性樹脂について、生理食塩水で膨潤させたときの光透過率について何ら記載も示唆もなく、他の証拠を見ても、甲1実施例12吸水物品発明において、「生理食塩水で30倍に膨潤させたときの波長425nmにおける光透過率」を変更する動機付けがあるとはいえない。
したがって、甲1実施例12吸水物品発明において、相違点1−1に係る本件発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易に想到し得たものではない。
してみれば、本件発明1は甲1実施例12吸水物品発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(B) 甲1実施例10吸水性樹脂利用吸収物品発明との対比
本件発明1と甲1実施例10吸水性樹脂利用吸収物品発明とを対比すると、甲1実施例10吸水性樹脂利用吸水物品発明の原料・製法から見て、両者は、
「吸収性物品であって、
前記吸収体が、吸水性樹脂粒子を含み、
前記吸収性樹脂粒子が、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する架橋重合体を含み、
(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体全量に対して70〜100モル%である、吸水性物品」である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1−2)
本件発明1の吸水性物品は、「液体不透過性シート、吸収体、及び液体透過性シートを備え、前記液体不透過性シート、前記吸収体及び前記液体透過性シートがこの順に配置されている」ものであることが特定されるのに対して、甲1実施例10吸水性樹脂粒子利用吸収物品発明には、そのような特定がない点

(相違点1−3)
本件発明1の吸水性物品で用いられる吸水性樹脂粒子は、「生理食塩水で30倍に膨潤させたときの波長425nmにおける光透過率が、55.9%以上であり、生理食塩水の保水量が30〜55g/gであり、中位粒子径が250〜384μmであり、前記吸水性樹脂粒子の生理食塩水の吸水速度が30〜40秒である」と特定されるのに対し、甲1実施例10吸収性樹脂粒子利用吸水物品発明にはそのような特定がない点

事案に鑑み、まず、相違点1−3について検討する。
甲第18号証には、甲第1号証の実施例10の吸水性樹脂粒子を再現し、本件明細書の段落【0118】〜【0124】に記載の方法により測定した結果、生理食塩水で30倍に膨潤させたときの波長425nmにおける光透過率が60%、生理食塩水の保水量が46.9g/gであり、中位粒子径が436μmであったことが示されている。
すると、相違点1−3は実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲1実施例10吸収性樹脂粒子利用吸水物品発明ではない。
また、甲第1号証には、吸収物品に含まれる吸水性樹脂の中位粒子径について何ら記載も示唆もなく、他の証拠を見ても、甲1実施例10吸収性樹脂粒子利用吸水物品発明において、「中位粒子径」を変更する動機付けがあるとはいえない。
したがって、甲1実施例10吸水性樹脂粒子利用吸水物品発明において、相違点1−3に係る本件発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易に想到し得たものではない。
してみれば、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲1実施例10吸収性樹脂粒子利用吸水物品発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

以下、「甲1実施例12吸水物品発明」と「甲1実施例10吸収性樹脂粒子利用吸水物品発明」を総称し、「甲1発明」という。

B 本件発明2ないし7について
本件発明2ないし7はいずれも、請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものである。
そして、上記Aで検討のとおり、本件発明1は甲1発明ではなく、また、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件発明1の全ての特定事項を含む本件発明2ないし7についても同様に、甲1発明ではなく、また、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

C 甲第1号証を根拠とする新規性進歩性についてのまとめ
上記A及びBのとおりであるから、甲第1号証を根拠とする申立理由1及び2には、その理由がない。

イ 甲第2号証を根拠とする新規性進歩性について
(ア) 甲第2号証に記載された発明
甲第2号証の記載、特に実施例5に関する記載についてその用途も加味した上でまとめると、甲第2号証には次の発明が記載されていると認める。

「攪拌機、還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管および滴下ろうとを付した2000mlの四つ口セパラブルフラスコにシクロヘキサン800gを取り、分散剤としてエチルセルロースを加え溶解させ、窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を追い出すとともに、
別に、フラスコ中で、アクリル酸ナトリウム141g、アクリル酸36g、およびポリエチレングリコールジアクリレート(n=8)0.478g、イオン交換水413gよりなる単量体水溶液を調製し、窒素ガスを吹き込んで水溶液内に溶存する溶存酸素を追い出し、
次いで、このフラスコ内の単量体水溶液に過硫酸ナトリウムの10%水溶液1.0gを加えた後全量を上記セパラブルフラスコに加えて、230rpmで攪拌することにより分散させ、その後、浴温を60℃に昇温して重合反応を開始させ、2時間この温度に保持して重合を完了し、重合終了後共沸脱水により大部分の水を留去して、重合体のシクロヘキサン懸濁液を得、ろ過により含水率20%の樹脂を得、さらに80℃で減圧乾燥を行うことにより含水率4%の吸水性樹脂(3)を得、
上記吸水性樹脂(3)10gを70℃に加熱したシクロヘキサン500mlに加え、1時間攪拌した後ろ過、乾燥することにより親水化処理を行い、上記親水化処理を行った吸水性樹脂100重量部に、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.1重量部と、水3重量部と、イソプロピルアルコール1重量部からなる表面架橋剤を混合し、上記の混合物を150℃で60分間加熱処理することにより得られた吸水剤(5)を用いた吸収性物品。」(以下、「甲2吸水剤利用吸収性物品発明」という。)

(イ) 対比・判断
A 本件発明1について
本件発明1と甲2吸水剤利用吸収性物品発明とを対比すると、甲2吸水剤利用吸収性物品発明の原料・製法から見て、両者は、
「吸収性物品であって、
前記吸収体が、吸水性樹脂粒子を含み、
前記吸収性樹脂粒子が、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する架橋重合体を含み、
(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体全量に対して70〜100モル%である、吸水性物品」である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点2−1)
本件発明1の吸水性物品は、「液体不透過性シート、吸収体、及び液体透過性シートを備え、前記液体不透過性シート、前記吸収体及び前記液体透過性シートがこの順に配置されている」ものであることが特定されるのに対して、甲2吸水剤利用吸収性物品発明には、そのような特定がない点

(相違点2−2)
本件発明1の吸水性物品で用いられる吸水性樹脂粒子は、「生理食塩水で30倍に膨潤させたときの波長425nmにおける光透過率が、55.9%以上であり、生理食塩水の保水量が30〜55g/gであり、中位粒子径が250〜384μmであり、前記吸水性樹脂粒子の生理食塩水の吸水速度が30〜40秒である」と特定されるのに対し、甲2吸水剤利用吸収性物品発明にはそのような特定がない点

事案に鑑み、まず、相違点2−2について検討する。
甲第19号証には、甲第2号証の実施例5の吸水性樹脂粒子を再現し、本件明細書の段落【0118】〜【0124】に記載の方法により測定した結果、生理食塩水で30倍に膨潤させたときの波長425nmにおける光透過率が55%、生理食塩水の保水量が40g/gであり、中位粒子径が283μmであったことが示されている。
すると、相違点2−2は実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲2吸水剤利用吸収性物品発明ではない。
また、甲第2号証には、吸収性物品に含まれる吸水剤について、生理食塩水で膨潤させたときの光透過率について何ら記載も示唆もなく、他の証拠を見ても、甲2吸水剤利用吸収性物品発明において、「生理食塩水で30倍に膨潤させたときの波長425nmにおける光透過率」を変更する動機付けがあるとはいえない。
したがって、甲2吸水剤利用吸収性物品発明において、相違点2−2に係る本件発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易に想到し得たものではない。
してみれば、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲2吸水剤利用吸収性物品発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

B 本件発明2ないし7について
本件発明2ないし7はいずれも、請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものである。
そして、上記Aで検討のとおり、本件発明1は甲2吸水剤利用吸収性物品発明ではなく、また、甲2吸水剤利用吸収性物品発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件発明1の全ての特定事項を含む本件発明2ないし7についても同様に、甲2吸水剤利用吸収性物品発明ではなく、また、甲2吸水剤利用吸収性物品発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

C 甲第2号証を根拠とする新規性進歩性についてのまとめ
上記A及びBのとおりであるから、甲第2号証を根拠とする申立理由1及び2には、その理由がない。

ウ 甲第3号証を根拠とする新規性進歩性について
(ア) 甲第3号証に記載された発明
甲第3号証の記載、特に実施例5についての記載をその用途も加味した上でまとめると、甲第3号証には、次の発明が記載されていると認める。

「攪拌機、還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管および滴下ろうとを付した2000mlの四つ口セパラブルフラスコにシクロヘキサン800gを取り、分散剤としてエチルセルロースを加え溶解させ、窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を追い出すとともに、
別に、フラスコ中で、アクリル酸ナトリウム141g、アクリル酸36g、およびポリエチレングリコールジアクリレート(n=8)0.478g、イオン交換水413gよりなる単量体水溶液を調製し、窒素ガスを吹き込んで水溶液内に溶存する溶存酸素を追い出し、
次いで、このフラスコ内の単量体水溶液に過硫酸ナトリウムの10%水溶液1.0gを加えた後全量を上記セパラブルフラスコに加えて、230rpmで攪拌することにより分散させ、その後、浴温を60℃に昇温して重合反応を開始させ、2時間この温度に保持して重合を完了し、重合終了後共沸脱水により大部分の水を留去して、重合体のシクロヘキサン懸濁液を得、ろ過により含水率20%の樹脂を得、さらに80℃で減圧乾燥を行うことにより含水率4%、平均粒径は250μmの吸水性樹脂(3)を得、
上記吸水性樹脂(3)100重量部に、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.1重量部と、水3重量部と、イソプロピルアルコール1重量部からなる表面架橋剤を混合し、上記の混合物を150℃で60分間加熱処理し、その後得られた含水率1%の表面架橋された樹脂10gを70℃に加熱したシクロヘキサン500ml中に加え、1時間攪拌した後ろ過、乾燥することにより親水化処理を行い得られた吸収剤(5)を用いた吸収性物品。」(以下、「甲3吸水剤利用吸収性物品発明」という。)

(イ) 対比・判断
A 本件発明1について
本件発明1と甲3吸水剤利用吸収性物品発明とを対比すると、甲3吸水剤利用吸収性物品発明の原料・製法から見て、両者は、
「吸収性物品であって、
前記吸収体が、吸水性樹脂粒子を含み、
前記吸収性樹脂粒子が、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する架橋重合体を含み、
(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体全量に対して70〜100モル%である、吸水性物品」である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点3−1)
本件発明1の吸水性物品は、「液体不透過性シート、吸収体、及び液体透過性シートを備え、前記液体不透過性シート、前記吸収体及び前記液体透過性シートがこの順に配置されている」ものであることが特定されるのに対して、甲3吸水剤利用吸収性物品発明には、そのような特定がない点

(相違点3−2)
本件発明1の吸水性物品で用いられる吸水性樹脂粒子は、「生理食塩水で30倍に膨潤させたときの波長425nmにおける光透過率が、55.9%以上であり、生理食塩水の保水量が30〜55g/gであり、中位粒子径が250〜384μmであり、前記吸水性樹脂粒子の生理食塩水の吸水速度が30〜40秒である」と特定されるのに対し、甲3吸水剤利用吸収性物品発明にはそのような特定がない点

事案に鑑み、まず、相違点3−2について検討する。
甲第20号証には、甲第3号証の実施例5の吸水性樹脂粒子を再現し、本件明細書の段落【0118】〜【0124】に記載の方法により測定した結果、生理食塩水で30倍に膨潤させたときの波長425nmにおける光透過率が57%、生理食塩水の保水量が40g/g、中位粒子径が265μm、生理食塩水の吸水速度が55秒であったことが示されている。
すると、相違点3−2は実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲3吸水剤利用吸収性物品発明ではない。
また、甲第3号証には、吸収性物品に含まれる吸水剤を構成する吸水性樹脂粒子の生理食塩水の吸水速度について何ら記載も示唆もなく、他の証拠を見ても、甲3吸水剤利用吸収性物品発明において、「生理食塩水の吸水速度」を変更する動機付けがあるとはいえない。
したがって、甲3吸水剤利用吸収性物品発明において、相違点3−2に係る本件発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易に想到し得たものではない。
してみれば、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲3吸水剤利用吸収性物品発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

B 本件発明2ないし7について
本件発明2ないし7はいずれも、請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものである。
そして、上記Aで検討のとおり、本件発明1は甲3吸水剤利用吸収性物品発明ではなく、また、甲3吸水剤利用吸収性物品発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件発明1の全ての特定事項を含む本件発明2ないし7についても同様に、甲3吸水剤利用吸収性物品発明ではなく、また、甲3吸水剤利用吸収性物品発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

C 甲第3号証を根拠とする新規性進歩性についてのまとめ
上記A及びBのとおりであるから、甲第3号証を根拠とする申立理由1及び2には、その理由がない。

エ 甲第8号証を根拠とする新規性進歩性について
(ア) 甲第8号証に記載された発明
甲第8号証、特に実施例5についての記載を用途も加味した上でまとめると、甲第8号証には、次の発明が記載されていると認める。

「撹拌機、還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管および滴下ロートを付した2Lの四つロセバラブルフラスコにシクロヘキサン1.0Lをとり、分散剤としてショ糖脂肪酸エステル(第一工業製薬(株)製、DK−エステルF−20)4.0gを加えて溶解させ、窒素ガスを吹きこんで溶存酸素を追い出し、
別にフラスコ中にアクリル酸ナトリウム65.8g、アクリル酸21.6gおよびポリエチレングリコールジアクリレート(n=14)0.076g及び増粘剤としてポリアクリル酸ナトリウム(日本触媒化学工業(株)製 アクアリックFH,25℃、1%水溶液の粘度2×104cps)1.0gをイオン交換水250gに溶解させ、粘度27cps のモノマー水溶液を調整し、次いで過硫酸ナトリウム0.12gを加えて溶解させた後、窒素ガスを吹きこんで水溶液内に溶存する酸素を追い出し、
次いでこのフラスコ内の単量体水溶液を上記セパラブルフラスコに加えて23rpm 撹拌することにより分散させ、その後、浴温を60℃に昇温しで重合反応を開始させた後、2時間この温度に保持して重合を完了し、重合終了後シクロヘキサンとの共沸脱水により含水ゲル中の水を留去した後、濾過し、80℃で減圧乾燥し重合体粉体[A05 ]を得、
得られた重合体粉体[A05 ]100部にグリセリンジグリシジルエーテル0.051m、水4部、エタノール0.8部からなる処理溶液をリボン型混合機で混合し、得られた混合物を流動床乾燥基中、100℃、1時間加熱することにより得られた吸水性樹脂[A15]を用いた衛生材料の吸収体。」(以下、「甲8吸水性樹脂利用吸収体発明」という。)

(イ) 対比・判断
A 本件発明1について
本件発明1と甲8吸水性樹脂利用吸収体発明とを対比すると、甲8吸水性樹脂利用吸収体発明の原料・製法から見て、両者は、
「吸収性物品であって、
前記吸収体が、吸水性樹脂粒子を含み、
前記吸収性樹脂粒子が、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する架橋重合体を含み、
(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体全量に対して70〜100モル%である、吸水性物品」である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点8−1)
本件発明1の吸水性物品は、「液体不透過性シート、吸収体、及び液体透過性シートを備え、前記液体不透過性シート、前記吸収体及び前記液体透過性シートがこの順に配置されている」ものであることが特定されるのに対して、甲8吸水性樹脂利用吸収体発明には、そのような特定がない点

(相違点8−2)
本件発明1の吸水性物品で用いられる吸水性樹脂粒子は、「生理食塩水で30倍に膨潤させたときの波長425nmにおける光透過率が、55.9%以上であり、生理食塩水の保水量が30〜55g/gであり、中位粒子径が250〜384μmであり、前記吸水性樹脂粒子の生理食塩水の吸水速度が30〜40秒である」と特定されるのに対し、甲8吸水性樹脂利用吸収体発明にはそのような特定がない点

事案に鑑み、まず、相違点8−2について検討する。
甲第21号証には、甲第8号証の実施例5の吸水性樹脂を再現し、本件明細書の段落【0118】〜【0124】に記載の方法により測定した結果、生理食塩水で30倍に膨潤させたときの波長425nmにおける光透過率が57%、生理食塩水の保水量が41g/g、中位粒子径が357μm、生理食塩水の吸水速度が65秒であったことが示されている。
すると、相違点8−2は実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲8吸水性樹脂利用吸収体発明ではない。
また、甲第8号証には、吸収性物品に含まれる吸水剤を構成する吸水性樹脂粒子の生理食塩水の吸水速度について何ら記載も示唆もなく、他の証拠を見ても、甲8吸水性樹脂利用吸収体発明において、「生理食塩水の吸水速度」を変更する動機付けがあるとはいえない。
したがって、甲8吸水性樹脂利用吸収体発明において、相違点8−2に係る本件発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易に想到し得たものではない。
してみれば、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲8吸水性樹脂利用吸収体発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

B 本件発明2ないし7について
本件発明2ないし7はいずれも、請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものである。
そして、上記Aで検討のとおり、本件発明1は甲8吸水性樹脂利用吸収体発明ではなく、また、甲8吸水性樹脂利用吸収体発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件発明1の全ての特定事項を含む本件発明2ないし7についても同様に、甲8吸水性樹脂利用吸収体発明ではなく、また、甲8吸水性樹脂利用吸収体発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

C 甲第8号証を根拠とする新規性進歩性についてのまとめ
上記A及びBのとおりであるから、甲第8号証を根拠とする申立理由1及び2には、その理由がない。

オ その他の証拠を根拠とする新規性進歩性について
特許異議申立人は、甲第4号証ないし甲第7号証及び甲第10号証ないし甲第12号証をあげつつ、各々の証拠を根拠として、本件発明1ないし7に対する新規性進歩性の理由を申し立てているが、いずれの証拠にも、「生理食塩水で30倍に膨潤させたときの波長425nmにおける光透過率が55.9%以上」という事項は記載されておらず、また、「生理食塩水で30倍に膨潤させたときの波長425nmにおける光透過率」に着目することについても何ら記載も示唆もされておらず、さらには、生理食塩水の保水量、中位粒子径、吸水性樹脂粒子の吸水速度についても、満たすものと考える理由もない。
したがって、本件発明1ないし7はいずれも、甲第4号証ないし甲第7号証及び甲第10号証ないし甲第12号証のいずれかに記載された発明ではなく、また、甲第4号証ないし甲第7号証及び甲第10号証ないし甲第12号証のいずれかに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
よって、甲第4号証ないし甲第7号証及び甲第10号証ないし甲第12号証を根拠とする申立理由1及び2には、その理由がない。

(2) 申立理由3(サポート要件)について
・申立理由3−1について
本件特許の明細書の【0005】の記載からみて、本件発明1ないし7は、「液体漏れが抑制された吸収性物品を提供すること」を発明の課題とするものである。そして、本件特許の明細書の【0021】ないし【0026】及び実施例の記載からは、吸水性樹脂粒子が、「生理食塩水で30倍に膨潤させたときの前記吸水性樹脂粒子の波長425nmにおける光透過率が、20%以上」であって、「生理食塩水の保水量が20〜60g/g」、「生理食塩水の吸水速度が30〜70秒」、「中位粒子径が250〜850μm」との特定事項を満たすことにより、液体漏れが抑制された吸収性物品を得ることができることが理解できる。
そして、本件発明1ないし7は、吸収性物品に用いる吸水性樹脂粒子が、「生理食塩水で30倍に膨潤させたときの前記吸水性樹脂粒子の波長425nmにおける光透過率が、55.9%以上」であり、「生理食塩水の保水量が30〜55g/g」、「中位粒子径が250〜384μm」、「生理食塩水の吸水速度が30〜40秒(あるいは30〜38秒)」であること、すなわち、上記特定事項を満たすものであるから、本件発明1ないし7は、発明の課題を解決するものであるといえる。
なお、特許異議申立人は、本件特許の明細書には、如何なる組成、製造条件であれば、実施例以外において、光透過率、保水量、中位粒子径、吸水速度の要件を全て満たす吸水性樹脂粒子が製造できるかについて何ら記載がないから、実施例以外の条件において、その範囲を本件特許の明細書に記載の発明にまで拡張ないし一般化できるものではない旨主張するが、当該主張は、上記の判断に何ら影響するものではない。
よって、申立理由3−1は、その理由がない。

(3) 申立理由4(実施可能要件)について
本件発明1ないし7に関し、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、吸収性物品の構造(【0016】、【0017】)、吸水性樹脂粒子の材質及び重合法、評価方法(【0021】ないし【0070】)の記載、さらには、実施例の具体的な記載もある。
してみれば、本件特許の明細書には、本件発明1ないし7について当業者が実施できる程度に記載されているものといえる。
なお、特許異議申立人は、実施例以外において、光透過率、保水量、中位粒子径の要件すべてを満たす吸水性樹脂を製造するために、当業者は過度な試行錯誤を要すること(申立理由4−2)、遠心分離機のロータの型の記載がないこと(申立理由4−1)、との主張をするが、いずれも、本件特許の明細書には、吸水性樹脂粒子の材質及び重合方法について好適なものの記載があること、具体的な遠心分離機の機器名が明記されていることを鑑みれば、本件発明1ないし7を実施するにあたり、当業者ならば適宜調整しつつ実施しうる程度の記載があるものであって、過度の試行錯誤を要するものということはできない。
よって、申立理由4は、その理由がない。

(4) 申立理由5(明確性要件)について
本件発明1ないし7における「生理食塩水で30倍に膨潤させたときの前記吸水性樹脂粒子の波長425nmにおける光透過率が、55.9%以上」との特定事項は、「生理食塩水で30倍に膨潤させたときの前記吸水性樹脂粒子の波長425nmにおける光透過率」を測定した結果を特定するものであり、当該特定事項自体、明確である。
なお、特許異議申立人は、測定に際しての条件の特定がなされていないため、明確ではない旨主張するが、本件特許の明細書の【0118】及び【0119】の記載に従って測定すればよいことは明らかである。
よって、申立理由5は、その理由がない。

第7 結語

以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由、及び、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1ないし7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体不透過性シート、吸収体、及び液体透過性シートを備え、前記液体不透過性シート、前記吸収体及び前記液体透過性シートがこの順に配置されている、吸収性物品であって、
前記吸収体が、吸水性樹脂粒子を含み、
前記吸水性樹脂粒子が、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する架橋重合体を含み、
(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体全量に対して70〜100モル%であり、
生理食塩水で30倍に膨潤させたときの前記吸水性樹脂粒子の波長425nmにおける光透過率が、55.9%以上であり、
生理食塩水の保水量が30〜55g/gであり、
前記吸水性樹脂粒子の中位粒子径が250〜384μmであり、
前記吸水性樹脂粒子の生理食塩水の吸水速度が30〜40秒である、吸収性物品。
【請求項2】
前記吸水性樹脂粒子の生理食塩水の吸水速度が30〜38秒であり、
前記液体透過性シートが、サーマルボンド不織布、エアスルー不織布、レジンボンド不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、エアレイド不織布、スパンレース不織布、ポイントボンド不織布、又は、これらから選ばれる2種以上の不織布の積層体を含む、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記吸収体が、繊維状物を更に含む、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記吸収体の前記液体透過性シートと接する面側を少なくとも覆うコアラップを更に備える、請求項1〜3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記コアラップが、前記液体透過性シートに接着されている、請求項4に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記吸収体が、前記液体透過性シートと接するように配置されており、
前記吸収体が、前記液体透過性シートに接着されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記吸水性樹脂粒子の生理食塩水の吸水速度が30〜38秒であり、
以下の勾配吸収試験によって測定される漏れ発生までの吸収量が389より大きい、請求項1〜6のいずれか一項に記載の吸収性物品。
勾配吸収試験:
気流型混合装置を用いて前記吸水性樹脂粒子10、及び粉砕パルプ9.5を空気抄造によって均一混合することにより、12cm×32cmの大きさのシート状の試験用吸収体を作製する。前記試験用吸収体を坪量16/m2のティッシュペーパー上に配置し、 前記試験用吸収体上に、ティッシュペーパー、及び短繊維不織布であるエアスルー不織布をこの順に積層して積層体を作製する。前記積層体に対して、588kPaの荷重を30秒間加える。12cm×32cmの大きさのポリエチレン製液体不透過性シートを、前記積層体の前記エアスルー不織布とは反対側の面に貼り付けて、試験用吸収性物品を作製する。前記エアスルー不織布の目付量は、17/m2とする。前記試験用吸収性物品において、前記吸水性樹脂粒子の坪量は、280/m2、粉砕パルプの坪量は260/m2とする。
平坦な主面を有する長さ45cmの支持板を、水平面に対して45±2度に傾斜した状態で架台によって固定する。温度25±2℃の室内において、固定された前記支持板の傾斜面上に、前記試験用吸収性物品を、その長手方向が前記支持板の長手方向に沿う向きで貼り付ける。次いで、前記試験用吸収性物品中の前記試験用吸収体の中央から8cm上方の位置に向けて、前記試験用吸収性物品の鉛直上方に配置された滴下ロートから、25±1℃に調整した人工尿を試験液として滴下する。1回あたり80mLの前記試験液を、8mL/秒の速度で滴下する。前記滴下ロートの先端と前記試験用吸収性物品との距離は10±1mmである。1回目の前記試験液投入開始から10分間隔で、同様の条件で前記試験液を繰り返し投入し、前記試験液は漏れが観測されるまで投入する。前記試験用吸収性物品に吸収されなかった前記試験液が前記支持板の下部から漏れ出た場合、漏れ出た前記試験液を前記支持板の下方に配置された金属製トレイ内に回収する。回収された前記試験液の重量(g)を天秤によって測定し、その値を漏れ量として記録する。前記試験液の全投入量から前記漏れ量を差し引くことにより、漏れ発生までの吸収量を算出する。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-06-27 
出願番号 P2019-055311
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (A61F)
P 1 651・ 121- YAA (A61F)
P 1 651・ 536- YAA (A61F)
P 1 651・ 113- YAA (A61F)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 加藤 友也
特許庁審判官 植前 充司
細井 龍史
登録日 2020-10-07 
登録番号 6775050
権利者 住友精化株式会社
発明の名称 吸収性物品  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 清水 義憲  
代理人 沖田 英樹  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  
代理人 福島 直樹  
代理人 吉住 和之  
代理人 福島 直樹  
代理人 沖田 英樹  
代理人 清水 義憲  
代理人 吉住 和之  
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