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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G01N
管理番号 1388366
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-09-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-07-09 
確定日 2022-06-24 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6812335号発明「腐食環境監視装置及びそれを備えた腐食環境監視システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6812335号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−3〕について訂正することを認める。 特許第6812335号の請求項1、2に係る特許を維持する。 特許第6812335号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続きの経緯
特許第6812335号の請求項1−3に係る特許についての出願は、平成29年12月20日に出願され、令和2年12月18日にその特許権の設定登録がされ、令和3年1月13日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、同年7月9日に特許異議申立人株式会社 シュリンクス(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、令和3年10月11日付けで取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である令和3年12月13日に意見書の提出及び訂正の請求(以下当該訂正の請求を「本件訂正請求」という。)を行い、令和4年2月2日付けで訂正拒絶理由が通知され、同年3月4日に手続補正書及び意見書の提出がされたものである。その訂正の請求に対して、申立人は、同年4月26日に意見書を提出した。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和4年3月4日に提出された補正書により補正された本件訂正請求(以下「補正後の本件訂正請求」という。)による訂正の内容は、以下の通りである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記測定データ及び前記解析データを監視データとして無線通信により外部に送信する送受信部」と記載されているのを、「前記測定データ及び前記解析データを監視データとして920MHz帯の無線伝送方式を用いた無線通信により外部に送信する送受信部」に訂正する。
そして、請求項1に係る発明を引用する請求項2も同様に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「前記監視データを無線通信により受信して収集処理する収集処理装置」と記載されているのを、「前記監視データを920MHz帯の無線伝送方式を用いた無線通信により受信して収集処理する収集処理装置」に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

なお、訂正前の請求項1〜3に関し、訂正前の請求項2及び3に係る発明は、いずれも訂正前の請求項1に係る発明を引用しているから、訂正前において一群の請求項に該当するものである。
したがって、上記訂正の請求は、一群の請求項ごとにされたものである。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)請求項1及び2に係る訂正について
請求項1及び2に係る訂正は、訂正前の請求項1に係る発明の「送受信部」が「外部に送信する」「無線通信」及び訂正前の請求項2に係る発明の「収集処理装置」が「受信して収集処理する」「無線通信」を、ともに「920MHz帯の無線伝送方式を用いた無線通信」に限定するものであって、本件特許の願書に添付した明細書の発明の詳細な説明の段落【0016】及び【0017】に、

「【0016】
複数の腐食環境監視装置1と収集処理装置2との間の無線通信では、920MHz帯の無線伝送方式を用いることが好ましい。こうした無線伝送方式を用いることで、両者の間の通信距離を最大500mまで離隔して設置することが可能となり、橋梁等の大型構造物や山間部等の遠隔地の場合でも腐食環境監視装置1を設置することで、以後のデータ収集を無線通信により効率よく行うことができる。
【0017】
920MHz帯の無線伝送方式では、多数のネットワークが併存して通信を行うことを想定して通信を長時間占有しないようにルールが規定されているため、通信時間を短く区切ることで低消費電力設計がしやすくなり、腐食環境監視装置1をバッテリにより長期間動作させることが可能となる。」

と、「複数の腐食環境監視装置1と収集処理装置2との間の無線通信」として、「920MHz帯の無線伝送方式を用いた無線通信」を用いる点が記載されていることから、請求項1及び2に係る訂正は、明細書に記載されており、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないと認められる。

(2)請求項3に係る訂正について
請求項3に係る訂正事項3は、特許請求の範囲の請求項3を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして、この訂正が、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。

3 小括
以上のとおりであるから、補正後の本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−3〕について訂正することを認める。

第3 訂正後の本件発明
補正後の本件訂正請求により訂正された請求項1―3に係る発明(以下「本件発明1−3」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1−3に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
ACMセンサ及び温湿度センサからなる腐食監視センサからの出力データに基づいて測定データを作成する測定データ作成部と、前記測定データのうち前記温湿度センサからの湿度データ及び前記ACMセンサからの電流データに基づいて腐食速度を評価する解析データを作成する処理部と、前記測定データ及び前記解析データを監視データとして920MHz帯の無線伝送方式を用いた無線通信により外部に送信する送受信部と、各部に電源を供給するバッテリを有する電源部とを備え、前記処理部は、 スリープ処理に移行した後の割り込み処理で測定処理を行う腐食環境監視装置。
【請求項2】
請求項1に記載の複数の腐食環境監視装置と、前記監視データを920MHz帯の無線伝送方式を用いた無線通信により受信して収集処理する収集処理装置とを備えている腐食環境監視システム。
【請求項3】 (削除) 」

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1−3に係る特許に対して、当審が令和3年10月11日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

請求項1−3に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2〜6に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に想到することができたものである。よって、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

引用文献1:特開2001−99777号公報(甲第1号証)
引用文献2:特許第6234636号公報(甲第2号証)
引用文献3:米国特許出願公開第2015/0268152号明細書
引用文献4:布施則一,外4名,“大気腐食モニタリングセンサを用いた送電鉄塔鋼管の腐食速度推定における精度向上”,電力中央研究所報告,電力中央研究所、平成28年4月,H15007,p.i−iv,1−27(甲第3号証)
引用文献5:中国実用新案第205262934号明細書
引用文献6:特開平11−344422号公報(甲第5号証)

2 引用文献の記載
(1)引用文献1について
ア 引用文献1に記載された事項
引用文献1には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審が付した。)。

(ア)「【0047】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の一実施例である腐食環境監視装置の構成図である。
【0048】該監視装置は、圧電素子を用いた腐食量計測部、温度湿度計測部、塵埃等の付着物量計測部からなる計測系(1,2,4〜9)と、シグナルスキャナ3,信号変換器10,周波数カウンタ11,デジタルマルチメータ12で構成される信号処理系、パーソナルコンピュータ13とディスプレイ14で構成される計測データ処理・記録系を備えている。」

(イ)「【0053】図1において、各水晶振動子センサ1を発振器2で発振させ、その信号をシグナルスキャナ3を介して周波数カウンタ11により周波数を連続測定した。
【0054】一方、白金測温抵抗体温度センサ4を温度計測器5に、高分子フィルム湿度センサ6を湿度計測器7に、付着物量計測センサ8を付着物量計測器9にそれぞれ接続し、これらの信号をシグナルスキャナ3を内蔵した信号変換器10により各信号を電圧変化に変換して、デジタルマルチメータ12により連続的に測定した。
【0055】この周波数カウンタ11とデジタルマルチメータ12のデータを、パーソナルコンピュータ13に転送,処理してアルミニウム,銀,銅,鉄,ニッケルの腐食速度,温度,湿度,付着物量,大気中の腐食性ガス成分の種類とその濃度に関する情報をディスプレイ14に表示させた。また、同時にそのデータをパーソナルコンピュータ13に接続されたハードディスク装置(図示省略)に記録した。」

(ウ)「【0061】図4は、図1で使用した付着物量計測センサ8と付着物量計測器9の他の例を示す模式構成図である。
【0062】絶縁基板16上に一対の電極15,15’が櫛歯状に形成されており、電極15,15’はリード線取り出しパッド17,17’により無抵抗電流計20に接続されている。
【0063】ここで電極15には測定対象となる金属を用いて電極を形成し、電極15’として測定対象となる金属よりも耐腐食性に優れた導電性材料を用い、電極間に生ずる微小電流を無抵抗電流計20により計測し、その電流値の変化から上記の付着物量と測定対象金属の腐食速度を求めた。
【0064】計測対象を配線材料に銅を用いたプリント基板の場合は、電極15を銅で形成し、電極15’を炭素で形成することで、基板上に付着した物質量と、銅の腐食速度を同時に計測することができる。また、電極材料を測定対象物に合わせて選択することにより、さらに高精度の計測が可能になる。」

(エ)「【0099】図10は環境センサを独立させ、センサ自身は被測定部に設置し、ケーブル等により監視装置に接続して、センサのアナログ出力をA/D変換しコンピュータなどの処理装置にデータを出力する形態の構成である。具体的には測定現場にセンサを設置する場合や可搬型のデータ取り込み装置として使用できる。」

(オ)「【0103】図14は、図10〜図13に示す監視装置の内部構成であり、計数回路部、データ処理部、および、外部送信制御部から構成されている。
【0104】計数回路部では、受信回路によりセンサの出力を取り込み、信号選択セレクタにより複数のセンサ出力から所望のものを選択し、A/D変換器によりアナログ信号をディジタル信号に変換する。なおこれらの動作は、周期的に行なわれるものと、データ処理部からの指示によって実行されるものとが有る。
【0105】データ処理部は、計数回路部のデータを一時的に蓄えておくメモリと、監視装置内部の制御やデータ送受信を行なう制御部とから構成され、外部からの指令情報を解読してデータを送受信したり、計数回路部を制御する機能を有する。
【0106】外部送信制御部は、受信回路部、送信回路部、および、通信制御部から構成され、コンピュータなどの処理装置とのデータ送受信を制御する。
【0107】図15は、センサ部、信号変換装置、データ収集装置から構成される監視装置と、環境監視システムを実行するためのコンピュータなどの処理装置(ホスト)との間の接続方法を示した図である。
・・・
【0110】3.無線方式では、監視装置とホストの間を無線通信手段にて接続する方式で、無線電話回線等の公衆回線を利用しての接続も含まれる。」

イ 引用文献1の図面
引用文献1には、次の図面がある。

(ア)図1



(イ)図4


(ウ)図10


(エ)図14



(オ)図15


ウ 引用文献1の記載より自明な事項
(ア)上記「イ」「(ウ)」より、センサ部は外部電源に接続される電源装置を備えることが看取される。

(イ)上記「ア」「(ウ)」には、「付着物量計測センサ8」について、絶縁基板16上に一対の電極15,15’が櫛歯状に形成され、電極15,15’はリード線取り出しパッド17,17’により無抵抗電流計20に接続され、電極15には測定対象となる金属を用いて電極を形成し、電極15’として測定対象となる金属よりも耐腐食性に優れた導電性材料を用い、電極間に生ずる微小電流を無抵抗電流計20により計測し、その電流値の変化から測定対象金属の腐食速度を求めることが記載されており、また、上記「イ」の「(ウ)」及び「(エ)」には「ACMセンサ」が監視装置に接続されることが図示されているところ、上記「付着物量計測センサ8」は、その構造や電極間に生ずる微小電流から測定対象金属の腐食速度を求める点から、上記「イ」の「(ウ)」及び「(エ)」中の「ACMセンサ」に対応し、そして、上記「付着物量計測センサ8」は「ACM」センサであると認められる。

(ウ)上記「ア」「(オ)」には、「監視装置」の「データ処理部」について、「データ処理部は、計数回路部のデータを一時的に蓄えておくメモリと、監視装置内部の制御やデータ送受信を行なう制御部とから構成され、外部からの指令情報を解読してデータを送受信したり、計数回路部を制御する機能を有する。」(段落【0105】)と記載されているが、「計数回路部のデータ」に基づく演算処理を行うといったことは記載されておらず、また、「監視装置」は「環境監視システムを実行するためのコンピュータなどの処理装置(ホスト)」に接続されることが記載されていることから(段落【0106】、【0107】より。下線は当審が付した。)、上記「ア」「(オ)」の実施例において、「監視装置」の「外部送信制御部」は「処理装置」に「計数回路部のデータ」を送信し、「処理装置」は「計数回路部のデータ」に基づいて環境監視のための演算処理等を行っていると認められる。そして、上記「ア」「(ウ)」のとおり付着物量計測センサ8の電極間に生ずる微小電流を計測しその微少電流から付着物量と測定対象金属の腐食速度を求める際には、「監視装置」の「外部送信制御部」は「処理装置」に付着物量計測センサ8の電極間に生ずる微小電流のデータを送信し、「処理装置」はその微少電流から付着物量と測定対象金属の腐食速度を求めていると認められる。

エ 引用発明
上記「ウ」も踏まえると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「計数回路部、データ処理部、外部送信制御部及び外部電源と接続される電源装置から構成される腐食環境監視装置と、環境監視システムを実行するための処理装置とからなるシステムであって、
計数回路部は、受信回路によりセンサの出力を取り込み、信号選択セレクタにより複数のセンサ出力から所望のものを選択し、A/D変換器によりアナログ信号をディジタル信号に変換し、
データ処理部は、計数回路部のデータを一時的に蓄えておくメモリと、監視装置内部の制御やデータ送受信を行なう制御部とから構成され、計数回路部を制御する機能を有し、
外部送信制御部は、受信回路部、送信回路部、および、通信制御部から構成され、処理装置とのデータ送受信を制御し、処理装置に計数回路部のデータを送信し、
監視装置と処理装置との間は無線電話回線等の公衆回線を利用して無線通信手段にて接続され、
水晶振動子センサ1、白金測温抵抗体温度センサ4、高分子フィルム湿度センサ6及び付着物量計測センサ8がケーブル等により監視装置に接続され、
付着物量計測センサ8は、絶縁基板16上に一対の電極15,15’が櫛歯状に形成され、電極15,15’がリード線取り出しパッド17,17’により無抵抗電流計20に接続されたACMセンサであり、
処理装置は、付着物量計測センサ8の電極間に生ずる微小電流から付着物量と測定対象金属の腐食速度を求める、
システム。」

(2)引用文献2について
ア 引用文献2の記載事項
引用文献2には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審が付した。)。

(ア)「【0001】
本発明は、自動車の走行燃費を推定する燃費推定システム、燃費推定方法および燃費推定プログラムに関する。」

(イ)「【0124】
***構成の説明***
実施の形態1から3では、自動車と中央サーバのみで処理を行う構成であった。しかし、外乱情報の生成については、本来的にはリンク単位で計算することが可能であり、エッジコンピューティングでの処理が可能である。」

(ウ)「【0128】
・・・
情報蓄積サーバ260は、上記構成部に加えて、全国の道路の各リンクに対応した情報生成計算器250から送信される外乱補正係数である速度外乱補正係数と燃費外乱補正係数とを受信する個別補正係数受信部81を備える。」

(エ)「【0129】
図28を用いて、本実施の形態におけるハードウェア構成について説明する。
本実施の形態に係る燃費推定システム500cにおいて、自動車1cに搭載された自動車装置100cと、情報生成計算器250と、情報蓄積サーバ260との各々は、コンピュータである。このとき、情報生成計算器250は、全国にあるリンク毎に一つ保有する。また、情報蓄積サーバ260は、実体のあるデータサーバでもよいし、クラウド上で構成してもよい。」

(オ)「【0133】
以上のように、本実施の形態では、自動車走行燃費の推定処理は自動車側で行い、推定に必要な外乱補正係数は情報蓄積サーバ260から取得する構成をとる。また、リンク毎に処理計算器を保有し、外乱補正係数の生成処理はリンク毎に個別に処理する構成をとる。これにより、自動車走行燃費の推定精度向上に必要な外乱補正係数の生成処理と、自動車走行燃費の推定処理と、情報蓄積処理とを切り離し、処理負荷を軽減することが可能となる。」

イ 引用文献2の図面
引用文献2には次の図面がある。

(ア)図28


ウ 引用文献2に記載の技術事項
したがって、引用文献2には次の技術事項(以下「技術事項2」という。)が記載されていると認められる。

「自動車装置100c、情報生成計算器250、情報蓄積サーバ260からなる自動車の走行燃費を推定する燃費推定システム500cであって、
情報生成計算器250を全国にあるリンク毎に保有し、外乱補正係数の生成処理はリンク毎に個別に処理し、外乱補正係数を情報生成計算器250から情報蓄積サーバ260に送信して、外乱補正係数の生成処理と情報蓄積処理とを切り離し処理負荷を軽減する、燃費推定システム500c。」

(3)引用文献3について
ア 引用文献3の記載事項
引用文献3には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審が付した。)。

(ア)「[0050] FIG. 2A shows an example on-structure sensor network 10 including multiple sensor nodes 14 placed on or near different locations of a structure to be monitored and a sensor hub 12. Each sensor node 14 includes a suite of sensors, examples of which are described below. The sensor hub SH may be designed to communicate via wired or wireless network communications with off-system network user devices such as a PC or laptop, or handheld devices for corrosivity data off-loading and/or presentation. Although one sensor hub 12 is shown, multiple sensor hubs may be used. The sensor nodes 14 and the sensor hub 12 communicate over a wireless interface. The sensor hub 12 may communicate, again wirelessly, if desired with one or more user networks and/or user devices 16 such as a PC or laptop, or handheld devices for corrosivity data off-loading and/or presentation.」
(当審訳:[0050] 図2Aは監視すべき構造体の異なる位置上またはその近傍に配置された複数のセンサノード14とセンサハブ12とを含む例示的な構造体センサネットワーク10を示す。各センサノード14は一組のセンサを含み、その例は以下に記載される。センサハブSHは、腐食性データのオフロードおよび/または提示のために、PCまたはラップトップあるいはハンドヘルド・デバイスのようなシステム外のネットワークユーザデバイスと有線または無線ネットワーク通信を介して通信するように設計されてもよい。1つのセンサハブ12が示されているが、複数のセンサハブを使用することができる。センサノード14およびセンサハブ12は無線インターフェースを介して通信する。センサハブ12は、さらに無線により、必要に応じて、腐食性データのオフロードおよび/または提示のために、1つまたは複数のユーザネットワークおよび/またはPCまたはラップトップあるいはハンドヘルド・デバイスのようなユーザデバイス16と通信することができる。)

(イ)「[0061] FIG. 4B is a diagram illustrating a non-limiting example of a sensor node 14 and includes one or more sensors 42, corresponding analog-to-digital (A-D) converters 44 for converting analog signals provided by the sensors into digital signals, one or more data processor(s) 46 operatively connected to receive the digital sensor information from the A-D converters 44, memory 48, and radio circuitry 54. The memory 48 includes programs 50 and data 52 used by the one or more data processors 46 to perform various sensor node functions such as those described. A battery power source 40 powers the elements of the sensor node 14 including any sensor that needs external power to operate.・・・
[0062] FIG. 5A is a flowchart illustrating example, non-limiting procedures that may be carried out by a sensor node for determining corrosivity associated with a location near, on, or within of a structure exposed to an environment that can corrode the structure, where a sensor node is mounted at the location. The sensor node measures environmental sensor information using one or more environmental sensors and corrosion sensor information using one or more corrosion sensors (step S1). The environmental sensor information includes one or more of measured relative humidity, air temperature, surface temperature and conductivity parameters, and the corrosion sensor information includes a corrosion rate parameter. The environmental sensor information is processed to obtain for the sensing node a first atmospheric corrosivity category value in accordance with a corrosivity classification system (step S2). The corrosion sensor information is processed to obtain a second atmospheric corrosivity category value for the sensing node in accordance with the corrosivity classification system (step S3). One or more of the first and second atmospheric corrosivity category values is provided for use in determining a corrosion classification value for the location (step S4). The providing step may include sending information regarding one or both of the first and second atmospheric corrosivity categories to one or more other nodes such as the sensor hub 12 and/or another network or device.」
(当審訳:[0061] 図4Bは、センサノード14の非限定的な例を示す図であり、1つ又は複数のセンサ42、センサのアナログ信号をデジタル信号に変換するための対応するアナログ-デジタル(A-D)変換器44、A/D変換器44からのデジタルセンサ情報を受信するために接続された1又は複数のデータ・プロセッサ46、メモリ48、無線回路54を含んでいる。メモリ48は、上記のような様々なセンサノードの機能を実行するために1又は複数のデータ・プロセッサ46により使用されるプログラム50とデータ52とを含む。バッテリ電源40は動作に外部電源を必要とする任意のセンサを含むセンサノード14の構成要素に電力を供給する。・・・
[0062] 図5Aは、例示的で非限定的な、構造体を腐食させ得る環境に曝された構造体の付近、上または内部の位置に関連する腐食性を決定するためにセンサノードによって実行される手順を示すフローチャートであり、センサノードはその位置に設けられる。センサノードは、1つまたは複数の環境センサを用いて環境センサ情報を、1つまたは複数の腐食センサを用いて腐食センサ情報を、測定する(ステップS1)。環境センサ情報は測定した相対湿度、気温、表面温度及び導電率のパラメータのうちの1つ以上を含み、腐食センサ情報は腐食速度パラメータを含む。環境センサ情報は腐食性分類システムに従ってそのセンサノードの第1の大気腐食性カテゴリ値を得るために処理される(ステップS2)。腐食センサ情報は腐食性分類システムに従ってそのセンサノードの第2の大気腐食性カテゴリ値を得るために処理される(ステップS3)。第1および第2の大気腐食性カテゴリ値のうちの1以上はその位置の腐食性分類値の決定に使用するために提供される(ステップS4)。前記提供するステップは、第1および第2の環境腐食性カテゴリの1または両方に関する情報を1または複数のセンサハブ12および/または別のネットワークまたはデバイスのような他のノードに送信することを含むことができる。」

(ウ)「[0076] The sensor suite data is sampled at rates appropriate for corrosion processes ranging from minutes to tens of minutes.」
(当審訳:[0076] センサ組のデータは数分から数十分の範囲の腐食プロセスのために適切なレートでサンプリングされる。)

イ 引用文献3の図面
引用文献3には次の図面がある。

(ア)Figure 2A(図2A)


(イ)Figure 4B(図4B)


(ウ)Figure 5A(図5A)


ウ 引用文献3に記載の技術事項
したがって、引用文献3には次の技術事項(以下「技術事項3」という。)が記載されていると認められる。

「複数のセンサノード14とセンサハブ12とを含む構造体センサネットワーク10であって、
センサノード14およびセンサハブ12は無線インターフェースを介して通信し、センサハブ12は無線により腐食性データのオフロードおよび/または提示のためにユーザネットワークと通信し、
センサノード14は、1つ又は複数のセンサ42、アナログ-デジタル(A-D)変換器44、データ・プロセッサ46等を含み、バッテリ電源40がセンサノード14の構成要素に電力を供給し、
センサノードは、腐食センサを用いて腐食速度パラメータを含む腐食センサ情報を測定し、腐食センサ情報を第2の大気腐食性カテゴリ値を得るために処理し、第2の大気腐食性カテゴリ値をその位置の腐食性分類値の決定に使用するために別のネットワークに送信し、
センサ組のデータは数分から数十分の範囲の腐食プロセスのために適切なレートでサンプリングされる、
構造体センサネットワーク10。」

(4)引用文献4について
ア 引用文献4の記載事項
引用文献4には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審が付した。)。

(ア)「目的
個別鉄塔の部位別腐食評価を行うため,腐食速度推定の精度を向上させる手法を構築する。また,同法の有効性を検証する。」(第ii頁)

(イ)「主な成果
1. ACMと湿度センサによる腐食速度推定法の構築
ACMセンサ情報のみを参照して降雨を判定して腐食速度を推定する従来法に対し,この降雨判定にACM出力履歴と相対湿度を用いる方法を考案した(図1) 。同法は一連の解析として上記2種のデータから腐食の主要因となる海塩付着量を決定し,これをベースに降雨・濡れ時間評価を行い,最終的に腐食速度を推定するものである。」(第ii頁)

イ 引用文献4の図面
引用文献4には次の図面がある。

図1(第ii頁)


ウ 引用文献4に記載の技術事項
したがって、引用文献4には次の技術事項(以下「技術事項4」という。)が記載されていると認められる。

「ACM出力、湿度等のデータを10分ごとに取得し、
ACM出力履歴と相対湿度のデータから海塩付着量を決定し、これをベースに降雨・濡れ時間評価を行い、最終的に腐食速度を推定して、腐食速度推定の精度を向上させる、
ACMと湿度センサによる腐食速度推定法。」

(5)引用文献5について
ア 引用文献5の記載事項
引用文献5には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審が付した。)。

(ア)

(当審訳:[0024] 図1に示すように、この大気腐食モニタリングシステムは野外環境に設けられる腐食モニターデバイスと遠隔設定のデータ分析センターからなり、そのうち腐食モニターデバイスはデータ収集システム、センサシステム、電力供給システム、コミュニケーションシステムを含む;)

(イ)

(当審訳:[0027] 電力供給システムは太陽電池パネル6、直流交流変換器7、バッテリ群8で構成され、日中太陽光照射の時は、太陽電池6のパネルは光エネルギーを電気エネルギーに変換してバッテリ群8に送って格納し、バッテリ群8とデータ収集システム、センサシステム、コミュニケーションシステムは接続する;)

イ 引用文献5の図面
引用文献5には次の図面がある。

図1



ウ 引用文献5に記載の技術事項
したがって、引用文献5には次の技術事項(以下「技術事項5」という。)が記載されていると認められる。

「腐食モニターデバイスと遠隔設定のデータ分析センターからなる大気腐食モニタリングシステムであって、
腐食モニターデバイスはデータ収集システム、センサシステム、電力供給システム、コミュニケーションシステムを含み、
電力供給システムは太陽電池パネル6、直流交流変換器7、バッテリ群8で構成され、
バッテリ群8とデータ収集システム、センサシステム、コミュニケーションシステムは接続する、
大気腐食モニタリングシステム。」

(6)引用文献6について
ア 引用文献6の記載事項
引用文献6には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審が付した。)。

「【請求項3】車両に搭載されたエンジンの状態を診断するエンジン診断ユニットと、
車両の現在位置を検出可能な位置検出ユニットと、
前記エンジン診断ユニットと通信ラインで接続されており、前記エンジン診断ユニットから得た診断結果を、外部の管理センタ側からの送信要求に応じて当該管理センタ側に送信する通信ユニットと、
車載エンジンの駆動によって充電されるバッテリと、
を備え、前記エンジン診断ユニット、位置検出ユニット及び通信ユニットは、前記バッテリから供給された電力によって動作するよう構成された車両用診断装置であって、
前記バッテリから前記通信ユニットへは通常動作に必要な電力が常時供給されるよう構成されており、一方、前記バッテリから前記エンジン診断ユニット及び位置検出ユニットへは、通常動作に必要な電力が供給される状態と供給されない状態とが切り替え可能に構成されていると共に、
前記バッテリから前記エンジン診断ユニットに対し、前記通常動作に必要な電力が供給される状態から供給されない状態へ移行した場合、その移行時点から所定期間は前記エンジン診断ユニットの通常動作に必要な電力が前記バッテリから供給されている状態を継続し、その後、通常動作に必要な電力が供給されない状態に切替設定する供給状態制御手段を備え、
前記エンジン診断ユニットは、
前記通常動作に必要な電力が供給される状態から供給されない状態へ移行した時点から所定期間において、前記位置検出ユニットから当該時点での現在位置情報を取得し、その取得した現在位置情報と共に前記診断結果をエンジン診断ユニット内メモリ部へ記憶しておき、
前記通常動作に必要な電力が供給されない状態である間は、前記通信ユニットから割込要求のみを受け付け可能なスリープ状態へ移行し、前記通信ユニットから割込要求があると、一時的にユニット全体を起動させて前記エンジン診断ユニット内メモリ部に記憶されている診断結果を、現在位置情報と共に前記通信ユニットへ出力した後、再度スリープ状態へ戻るよう構成されており、
・・・
を特徴とする車両用診断装置。」

イ 引用文献6に記載の技術事項
したがって、引用文献6には次の技術事項(以下「技術事項6」という。)が記載されていると認められる。

「エンジン診断ユニット、位置検出ユニット、通信ユニット、バッテリを備えた車両用診断装置であって、
エンジン診断ユニットは、通常動作に必要な電力が供給されない状態である間は通信ユニットから割込要求のみを受け付け可能なスリープ状態へ移行し、通信ユニットから割込要求があると一時的にユニット全体を起動させてエンジン診断ユニット内メモリ部に記憶されている診断結果を現在位置情報と共に通信ユニットへ出力する、車両用診断装置。」

3 当審の判断
(1)本件発明1について
ア 対比
(ア)本件発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
a 引用発明の「ACMセンサ」である「付着物量計測センサ8」、「白金測温抵抗体温度センサ4」及び「高分子フィルム湿度センサ6」は、それぞれ、本件発明1の「ACMセンサ」、「温湿度センサ」に相当し、そして、引用発明の「計数回路部」は本件発明1の「ACMセンサ及び温湿度センサからなる腐食監視センサからの出力データに基づいて測定データを作成する測定データ作成部」に相当する。

b 引用発明の「データ処理部」と、本件発明1の「前記測定データのうち前記温湿度センサからの湿度データ及び前記ACMセンサからの電流データに基づいて腐食速度を評価する解析データを作成する処理部」とは、「処理部」である点で共通している。

c 引用発明の「計数回路部のデータ」は、本件発明1の「測定データ」に相当し、また、引用発明の「外部送信制御部」は「受信回路部」と「送信回路部」とを有し「計数回路部のデータ」を無線通信により外部に送信しているから、引用発明の「外部送信制御部」と、本件発明1の「前記測定データ及び前記解析データを監視データとして無線通信により外部に送信する送受信部」とは、「前記測定データ」「を監視データとして無線通信により外部に送信する送受信部」である点で共通している。

d 引用発明の「電源装置」と、本件発明1の「各部に電源を供給するバッテリを有する電源部」とは、「電源部」である点で共通している。

e 引用発明において「データ処理部」は「計数回路部を制御する機能を有」するものであるところ、引用発明の「データ処理部」は「計数回路部を制御する機能を有」する点と、本件発明1の「前記処理部は、スリープ処理に移行した後の割り込み処理で測定処理を行う」とは、「前記処理部は」「測定処理を行う」点で共通している。

f 引用発明の「腐食環境監視装置」は、本件発明1の「腐食環境監視装置」に相当する。

g 引用発明の「測定対象金属の腐食速度」は、「付着物量計測センサ8の電極間に生ずる微小電流」から求められることから、解析により得られる解析データということができ、また、その値は腐食速度を評価するものに他ならないから、本件発明1の「腐食速度を評価する解析データ」に相当する。そして、引用発明の「付着物量計測センサ8の電極間に生ずる微小電流から」「測定対象金属の腐食速度を求める」点は、本件発明1の「前記測定データのうち前記温湿度センサからの湿度データ及び前記ACMセンサからの電流データに基づいて腐食速度を評価する解析データを作成する」と、「前記測定データのうち」「前記ACMセンサからの電流データに基づいて腐食速度を評価する解析データ」が「作成」される点で、一致する。

(イ)以上のことから、本件発明1と引用発明との一致点及び相違点は、次の通りである。
【一致点】
「ACMセンサ及び温湿度センサからなる腐食監視センサからの出力データに基づいて測定データを作成する測定データ作成部と、処理部と、前記測定データを監視データとして無線通信により外部に送信する送受信部と、電源部とを備え、前記処理部は測定処理を行い、前記測定データのうち前記ACMセンサからの電流データに基づいて腐食速度を評価する解析データが作成される、腐食環境監視装置。」

【相違点1】
本件発明1は、「処理部」が、「前記測定データのうち前記温湿度センサからの湿度データ及び前記ACMセンサからの電流データに基づいて腐食速度を評価する解析データを作成」し、「送受信部」が「前記測定データ及び前記解析データを監視データとして920MHz帯の無線伝送方式を用いた無線通信により外部に送信する」のに対し、
引用発明は、「処理装置」が、「付着物量計測センサ8の電極間に生ずる微小電流から」「測定対象金属の腐食速度を求める」が、「温湿度センサからの湿度データ」に基づいて求めているか不明であり、「外部送信制御部」は、「処理装置に計数回路部のデータを送信し」ているものの、「処理装置」が求めた「測定対象金属の腐食速度該解析データ」及び「計数回路部のデータ」を、「処理装置」より外部へ送信する旨の特定はない点。

【相違点2】
「電源部」は、
本件発明1は、「各部に電源を供給するバッテリを有する」のに対し、
引用発明は、外部電源と接続される点。

【相違点3】
「処理部」は、
本件発明1は、「スリープ処理に移行した後の割り込み処理で測定処理を行う」のに対し、
引用発明は、「測定処理を行う」が、それが「スリープ処理に移行した後の割り込み処理」によるかは不明である点。

イ 判断
相違点1について検討する。
上記技術事項2及び3に見られるように、ノード(技術事項2の情報生成計算器250、技術事項3のセンサノード)においてデータの処理を行い、処理されたデータを当該ノードに接続された処理装置に送信することは周知の技術である。
また、920MHz帯の無線伝送方式を用いた無線通信も引用文献を示すまでもなく周知技術であるといえる。
そして、技術事項4はACMセンサのデータと湿度データから海塩付着量を決定し、これをベースに降雨・濡れ時間評価を行い、最終的に腐食速度を推定するものである。
しかしながら、引用文献1の段落【0053】に「各水晶振動子センサ1を発振器2で発振させ、その信号をシグナルスキャナ3を介して周波数カウンタ11により周波数を連続測定した。」と、段落【0054】に「・・・付着物量計測センサ8を付着物量計測器9に・・・接続し、これらの信号をシグナルスキャナ3を内蔵した信号変換器10により各信号を電圧変化に変換して、デジタルマルチメータ12により連続的に測定した。」と、段落【0055】に「周波数カウンタ11とデジタルマルチメータ12のデータを、パーソナルコンピュータ13に転送,処理してアルミニウム,銀,銅,鉄,ニッケルの腐食速度,温度,湿度,付着物量,大気中の腐食性ガス成分の種類とその濃度に関する情報をディスプレイ14に表示させた。」とそれぞれ記載されていることから、引用発明の「処理装置」は、外部に腐食速度,温度,湿度,付着物量,大気中の腐食性ガス成分の種類とその濃度に関する情報を送信していない。また、引用発明の「処理装置」は、「水晶振動子センサ1、・・・及び付着物量計測センサ8」のデータを、処理して腐食速度を求め、求めた情報をディスプレイ14に表示させるものでああるから、個々のセンサのデータ処理部である「周波数カウンタ11」や「デジタルマルチメータ12」は、「水晶振動子センサ1、・・・及び付着物量計測センサ8」の一部のデータしか受信していないから腐食速度を求めることはできない。
そうすると、上記のとおり、ノードにおいてデータの処理を行い、処理されたデータを当該ノードに接続された処理装置に送信することが周知の技術であることから、引用発明の個々のセンサのデータ処理部にデータ処理を行わせたとしても、該データ処理部において腐食速度を求めることはできないから、920MHz帯の無線伝送方式を用いた無線通信に関する周知技術や技術事項4を参酌したとしても、上記相違点1に係る構成は、当業者といえども容易に想到し得たことではない。
そして、技術事項5及び6には、ACMセンサを用いて腐食速度を評価する解析データを作成し、該解析データを前記測定データとともに外部に送信する旨の構成は記載されていないし、該構成が、当該技術分野において周知の技術であるともいえない。
したがって、本件発明1は、他の相違点について検討するまでもなく、引用文献2〜6に記載された技術事項や周知技術を参酌したとしても、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の「複数の腐食環境監視装置と、前記監視データを920MHz帯の無線伝送方式を用いた無線通信により受信して収集処理する収集処理装置とを備えている腐食環境監視システム」であり、本件発明1の「腐食環境監視装置」を備えていることから、引用発明と対比すると、相違点として上記相違点1を含んでいるといえる。
そうすると、上記(1)で検討したとおり、相違点1に係る構成は、当業者といえども容易に想到し得たことではないから、本件発明2の上記(1)と同様の理由により、引用文献2〜6に記載された技術事項や周知技術を参酌したとしても、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)申立人の意見について
申立人は、訂正の請求により追加された「920MHz帯の無線伝送方式を用いた無線通信」なる事項は、周知の技術であって、「各部に電源を供給するバッテリを有する電源部」及び「スリープ処理に移行した後の割り込み処理」も周知の技術であるから、本件発明1及び2は当業者が容易に想到できたものであると主張する。
しかしながら、上記(1)で検討したとおり、引用発明の「処理装置」は、「水晶振動子センサ1、・・・及び付着物量計測センサ8」のデータを、処理して腐食速度を求め、求めた情報をディスプレイ14に表示させるものであって、外部に腐食速度,温度,湿度,付着物量,大気中の腐食性ガス成分の種類とその濃度に関する情報を送信していないし、個々のセンサのデータ処理部である「周波数カウンタ11」及び「デジタルマルチメータ12」は、「水晶振動子センサ1、・・・及び付着物量計測センサ8」からのすべてのデータを受信しているわけではないから、「周波数カウンタ11」及び「デジタルマルチメータ12」が腐食速度を求めることはできないから、本件発明1の「処理部」が、「前記測定データのうち前記温湿度センサからの湿度データ及び前記ACMセンサからの電流データに基づいて腐食速度を評価する解析データを作成」し、「送受信部」が「前記測定データ及び前記解析データを監視データとして920MHz帯の無線伝送方式を用いた無線通信により外部に送信する」構成は、引用発明に基づいて当業者が容易に想到できたものであるとはいえない。
そうすると、「920MHz帯の無線伝送方式を用いた無線通信」なる事項、「各部に電源を供給するバッテリを有する電源部」及び「スリ プ処理に移行した後の割り込み処理」等が周知の技術であったとしても、本件発明1及び2は、引用発明から、当業者が容易に想到し得るものとはいえない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項3に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項3に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ACMセンサ及び温湿度センサからなる腐食監視センサからの出力データに基づいて測定データを作成する測定データ作成部と、前記測定データのうち前記温湿度センサからの湿度データ及び前記ACMセンサからの電流データに基づいて腐食速度を評価する解析データを作成する処理部と、前記測定データ及び前記解析データを監視データとして920MHz帯の無線伝送方式を用いた無線通信により外部に送信する送受信部と、各部に電源を供給するバッテリを有する電源部とを備え、前記処理部は、スリープ処理に移行した後の割り込み処理で測定処理を行う腐食環境監視装置。
【請求項2】
請求項1に記載の複数の腐食環境監視装置と、前記監視データを920MHz帯の無線伝送方式を用いた無線通信により受信して収集処理する収集処理装置とを備えている腐食環境監視システム。
【請求項3】(削除)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-06-14 
出願番号 P2017-243450
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (G01N)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 石井 哲
特許庁審判官 井上 香緒梨
福島 浩司
登録日 2020-12-18 
登録番号 6812335
権利者 植田工業株式会社
発明の名称 腐食環境監視装置及びそれを備えた腐食環境監視システム  
代理人 鶴若 俊雄  
代理人 弁理士法人大手門国際特許事務所  
代理人 川崎 好昭  
代理人 弁理士法人大手門国際特許事務所  
代理人 川崎 好昭  

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