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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A23L
審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
管理番号 1388370
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-09-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-08-04 
確定日 2022-06-09 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6827874号発明「揚げ衣用ミックス、揚げ衣用バッター、揚げ物及び揚げ物の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6827874号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜7〕について訂正することを認める。 特許第6827874号の請求項1〜3及び5〜7に係る特許を維持する。 特許第6827874号の請求項4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6827874号(以下「本件特許」という。)の請求項1〜7に係る特許についての出願は、平成29年4月17日に出願され、令和3年1月22日に特許権の設定登録がされ、令和3年2月10日に特許掲載公報が発行され、その請求項1〜7に係る発明の特許に対し、令和3年8月4日に中嶋美奈子(以下「特許異議申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。
特許異議の申立て以後の手続の経緯は次のとおりである。
令和3年11月29日付け 取消理由通知
令和4年 1月26日 意見書・訂正請求書(特許権者)
同年 2月 7日付け 訂正請求があった旨の通知
同年 3月 9日 意見書(特許異議申立人)

第2 訂正の適否
1.訂正の内容
令和4年1月26日付けの訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の「請求の趣旨」は『特許第6827874号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1〜7について訂正することを求める。』というものであり、その内容は、以下の訂正事項1〜5からなるものである(なお、訂正箇所に下線を付す。)。

(1)訂正事項1
訂正前の請求項1の「加水焙煎ふすまの含有量が0質量%超70質量%以下である、揚げ衣用ミックス。」との記載を、
訂正後の請求項1の「ふすまに対して加熱前および/または加熱途中で水分を加えて加熱処理を行うことにより得られ、粉末状であり、メディアン径が20〜100μmである加水焙煎ふすまの含有量が0質量%超70質量%以下である、揚げ衣用ミックス。」との記載に訂正する(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2〜3及び5〜7も同様に訂正する。)。

(2)訂正事項2
訂正前の請求項4を削除する。

(3)訂正事項3
訂正前の請求項5の「請求項1〜4のいずれか一項に記載の揚げ衣用ミックス」との記載部分を、
訂正後の請求項5の「請求項1〜3のいずれか一項に記載の揚げ衣用ミックス」との記載に訂正する。

(4)訂正事項4
訂正前の請求項6の「請求項1〜4のいずれか一項に記載の揚げ衣用ミックス」との記載部分を、
訂正後の請求項6の「請求項1〜3のいずれか一項に記載の揚げ衣用ミックス」との記載に訂正する。

(5)訂正事項5
訂正前の請求項7の「請求項1〜4のいずれか一項に記載の揚げ衣用ミックス」との記載部分を、
訂正後の請求項7の「請求項1〜3のいずれか一項に記載の揚げ衣用ミックス」との記載に訂正する。

2.本件訂正による訂正の適否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、本件特許の請求項1について、訂正前の「加水焙煎ふすま」との記載部分を、本件特許明細書の段落0017の「該加水焙煎ふすまは、加熱前、および/または加熱途中で水分を加えて加熱処理を行うことにより得られ」との記載、及び訂正前の請求項4の「前記加水焙煎ふすまは、粉末状であり、メディアン径が20〜100μmである」等の記載を根拠に、訂正後の「ふすまに対して加熱前および/または加熱途中で水分を加えて加熱処理を行うことにより得られ、粉末状であり、メディアン径が20〜100μmである加水焙煎ふすま」との記載に改めることにより、加水焙煎ふすまを具体的に特定し、更に限定するものであるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内において「特許請求の範囲の減縮」を目的として訂正するものに該当する。
そして、訂正事項1は「特許請求の範囲の減縮」のみを目的とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当し、なおかつ、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
また、上記訂正事項1による請求項1の訂正によって、請求項1を引用する請求項2〜3及び5〜7についても、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正が行われている。

(2)訂正事項2〜5について
訂正事項2は、訂正前の請求項4を削除する訂正であり、訂正事項3〜5は、訂正前の請求項5〜7の択一的引用記載から請求項4を削除するものである。
してみると、訂正事項2〜5は、いずれも願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内において「特許請求の範囲の減縮」を目的として訂正するものに該当する。
そして、訂正事項2〜5は「特許請求の範囲の減縮」のみを目的とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
したがって、訂正事項2〜5は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当し、なおかつ、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(5)一群の請求項について
訂正事項1〜5に係る訂正前の請求項1〜7について、その請求項2〜7はいずれも直接又は間接的に請求項1を引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1〜7に対応する訂正後の請求項1〜7は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
したがって、訂正事項1〜5による本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対してなされたものである。

3.まとめ
以上総括するに、訂正事項1〜5による本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる事項を目的とするものであり、なおかつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1〜7〕について訂正を認める。

第3 本件発明
本件訂正により訂正された請求項1〜7に係る発明(以下「本1発明」〜「本7発明」ともいう。)は、その特許請求の範囲の請求項1〜7に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】ふすまに対して加熱前および/または加熱途中で水分を加えて加熱処理を行うことにより得られ、粉末状であり、メディアン径が20〜100μmである加水焙煎ふすまの含有量が0質量%超70質量%以下である、揚げ衣用ミックス。
【請求項2】前記加水焙煎ふすまは、α−アミラーゼ力価が150mU/g以下であり、中性プロテアーゼ力価が20U/g未満である、請求項1に記載の揚げ衣用ミックス。
【請求項3】前記加水焙煎ふすまは、L値が31以上である、請求項1又は2に記載の揚げ衣用ミックス。
【請求項4】(削除)
【請求項5】請求項1〜3のいずれか一項に記載の揚げ衣用ミックスを含む、揚げ衣用バッター。
【請求項6】衣を有し、請求項1〜3のいずれか一項に記載の揚げ衣用ミックス又は請求項5に記載の揚げ衣用バッターを前記衣に含む、揚げ物。
【請求項7】請求項1〜3のいずれか一項に記載の揚げ衣用ミックス又は請求項5に記載の揚げ衣用バッターを具材に付着させ、油ちょうする、揚げ物の製造方法。」

第4 取消理由通知の概要
令和3年11月29日付けの取消理由通知で通知された取消理由は、次の理由1及び2からなるものである。
「1.(明確性要件違反)
本件特許の請求項1〜7に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(1)請求項1〜4に記載される「加水焙煎ふすま」の示すものが明確でないので、請求項1〜4に係る発明及び請求項1〜4を引用する請求項5〜7に係る発明は明確でない。
(2)請求項1〜4に記載された「加水焙煎ふすま」は、製造に関して技術的な特徴や条件が付された記載がある場合に該当すると認められるため、請求項1〜6にはその物の製造方法が記載されているといえる。…しかしながら、本願明細書等には不可能・非実際的事情について何ら記載がなく、当業者にとって不可能・非実際的事情が明らかであるとも言えない。したがって、請求項1〜6に係る発明は明確でない。

2.(進歩性欠如)
本件特許の請求項1〜3、5〜7に係る発明は、本件特許出願前に日本国内において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1〜3、5〜7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
引用文献1:特開2016−149992号公報(甲第2号証)
引用文献2:特開2016−501556号公報(甲第3号証)
引用文献3:特開平11−313627号公報(甲第5号証)」

第5 当審の判断
1.理由1(明確性要件違反)について
(1)「加水焙煎ふすま」の明確性について
訂正後の請求項1に記載されている「加水焙煎ふすま」は、「ふすまに対して加熱前および/または加熱途中で水分を加えて加熱処理を行うことにより得られ」るものであり、訂正後の請求項1に記載される「加水焙煎ふすま」の示すものは明確である。
この点に関して、令和4年3月9日付けの意見書の第3〜5頁において、特許異議申立人は「まず、「加水焙煎」が、本願出願時に「ふすま」の状態を表す技術用語として確立していない…該「加水焙煎ふすま」が、従来公知の熱処理ふすまといかなる点で異なるのか、又は、いかなる点で異なることによって前記本件特許発明の課題の解決を可能にするのかを、当業者は認識することができない。」と主張する。
しかしながら、例えば、特開2017−12099号公報(参考例A)の段落0012の「該ふすまを焙煎処理することにより、ふすま臭を更に低減して、好ましい香ばしい香りを付与できると共に、微粉砕しやすくすることができ、…食品に添加したときの色調変化を軽減して外観を良好に保ち、食した際にざらつきの少ない滑らかな食感を付与することができる。」との記載にあるように、少なくとも「焙煎」が、本願出願時に「ふすま」の状態を表す技術用語として普通に使用されていたことは明らかである。
そして、本件特許明細書の段落0031の「加水後のふすまは、加熱によりその品温を90〜150℃の範囲で3分以上維持する。…ふすまの内部にまで早く均一に熱を加えて穀物臭やえぐ味を低減させる「蒸し」と、好ましい焙煎の風味を付与する「焙煎」とを両方行うことができる。「焙煎」とは、加熱によりふすまの水分をとばし、特有の風味を付すことをいう。」との記載からみて、本件特許の請求項1に記載された「加水焙煎ふすま」は、加水後の「焙煎」によって「特有の風味を付すこと」がなされたもので、例えば、甲第1号証(特開昭61−37059号公報)の第5頁左上欄第6〜7行の「送風乾燥機で100℃に3時間乾燥して水分8%のフスマ処理物を得た。」との記載にある水分量を減らすための「乾燥」や、甲第2号証(特2016−149992号公報)の段落0018の「食感や風味の点からは、さらに乾燥させることが望ましい。…80〜150℃程度で5〜30分間乾燥すればよい。」との記載にある「乾燥」という用語と、本1発明や参考例Aに記載の「焙煎」という用語は、後者の「焙煎」が“焙煎に特有の風味(好ましい香ばしい香り)を付与”するための処理を意味するのに対して、前者の「乾燥」は“焙煎に特有の風味(好ましい香ばしい香り)を付与”するための処理を意味しないという点において明確に区別されるものである。
また、発明の課題を解決できると認識できるか否かは、特許請求の範囲の記載が明確であるか否かに関係がない。
したがって、特許異議申立人の主張を斟酌しても、本1発明の「加水焙煎ふすま」の示すものが不明確であるとはいえないので、本件特許の請求項1及びその従属項の記載が、特許法第36条第6項第2号に適合しないとはいえない。

(2)製造に関して技術的な特徴や条件が付された記載について
令和4年1月26日付けの意見書の第5〜6頁において、特許権者は「仮に、加水焙煎ふすまの穀物臭やえぐ味が、いかなる分析機器を用いても検出できない微量成分によって特徴づけられている場合、穀物臭やえぐ味を特徴づける成分を特定できないため、穀物臭やえぐ味が低減されているという特性を直接特定することは不可能です。」と釈明し、本件特許の請求項1及びその従属項の物の発明において「加水焙煎ふすま」と記載することについて、当業者にとって不可能・非実際的事情があると主張する。
これに対して、令和4年3月9日付けの意見書の第8頁において、特許異議申立人は「しかしながら、特許権者は、加水焙煎ふすまの成分が実際に分析機器で測定できないことを確認しているわけではないので、該加水焙煎ふすまの穀物臭やえぐ味を特徴づける成分が「いかなる分析機器を用いても検出できない微量成分によって特徴づけられている」という事情が真に存在することを確認することができない。」と主張する。
特許異議申立人の主張・立証を検討しても、加水焙煎ふすまの穀物臭やえぐ味を特徴づける成分を「いかなる分析機器を用いても検出できない」といえる具体的な証拠が見当たらないことをもって直ちに、特許権者の「不可能・非実際的事情」が存在することについての主張・立証の内容に疑義があるとの事情を認めることはできない。そして、食品の味覚を特徴付ける検出不能なレベルの微量成分の全てを特定することには「非実際的事情」があると認めざるを得ない。
したがって、本件特許の請求項1〜4の「揚げ衣用ミックス」、同請求項5の「揚げ衣用バッター」、及び同請求項6の「揚げ物」という「物」の発明を特定するための事項として「その物の製造方法」が記載されているとしても、特許権者が主張する「不可能・非実際的事情」の存在を否定すべき合理的な疑義が見当たらないので、本件特許の請求項1〜6の記載が、特許法第36条第6項第2号に適合しないとはいえない。

2.理由2(進歩性欠如)について
本件訂正により、訂正前の請求項1の記載に、訂正前の請求項4の要件が盛り込まれたところ、理由2は訂正前の請求項4に対して進歩性の取消理由を通知するものではない。
したがって、訂正後の請求項1〜3及び5〜7に係る発明について、理由2の取消理由は解消している。

3.取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)申立理由1(新規性)について
特許異議申立人が主張する申立理由1(新規性)は、本件特許の請求項1、6、7に係る発明は、甲第1号証に記載の発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号の規定を満たしていないというものである。
しかしながら、本件訂正により、訂正前の請求項1の記載に、訂正前の請求項4の要件が盛り込まれたので、申立理由1(新規性)について理由があるとはいえない。

(2)申立理由2(進歩性)について
ア 申立理由2の概要
特許異議申立人が主張する申立理由2(進歩性)は、本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1〜6号証のいずれかに記載の発明に基いて容易に発明可能であり、同請求項2に係る発明は、甲第1〜7号証に記載の発明に基いて容易に発明可能であり、同請求項3に係る発明は、甲第1〜6、8、9号証に記載の発明に基いて容易に発明可能であり、同請求項4〜7に係る発明は、甲第1〜6号証に記載の発明に基いて容易に発明可能であり、特許法第29条第2項の規定を満たしていないというものであり、甲第1〜9号証として次の刊行物を提示している。

甲第1号証:特開昭61−37059号公報
甲第2号証:特開2016−149992号公報
甲第3号証:特表2016−501556号公報
甲第4号証:特開2016−47054号公報
甲第5号証:特開平11−313627号公報
甲第6号証:特開昭54−14540号公報
甲第7号証:野口明徳、“エクストルージョン・クッキング”、化学と生物、株式会社 学会出版センター、昭和61年5月25日発行、Vol.24, No.5、342〜348頁
甲第8号証:特開2011−177101号公報
甲第9号証:特開2004−49145号公報

イ 甲第1〜9号証の記載事項
(ア)甲第1号証には、次の記載がある。
摘記1a:請求項1
「(1)フスマ、もしくはフスマに他に食用繊維質素材又は澱粉質素材を混合したものを100乃至350℃程度の温度および20乃至300気圧程度の圧力下に加熱処理したフスマ加工品を主材とする食物繊維強化剤。」

摘記1b:第3頁左下欄第2行〜右下欄第16行
「本発明では、上述のフスマ加工品を主材としたものを食物繊維強化剤としての用途に供するものであるが、それを添加する食品の種類に応じて圧扁してフレーク状にするか又は微粉砕もしくは顆粒状にして用いる。…
唐揚げ粉類では原料に5乃至95重量%程度添加し得る。」

摘記1c:第5頁左上欄第2行〜右上欄第2行
「実施例1
フスマ加工品の調製:
フスマに、10倍量の水で希釈した食酢の水溶液の3倍量を添加、混合して2時間放置した後、濾過し、水洗、脱水し、ついで送風乾燥機で100℃に3時間乾燥して水分8%のフスマ処理物を得た。
このフスマ処理物を2軸エクストルーダーに通して150℃の温度および80気圧の圧力下で処理した。
得られた製品は良好な食感と色調を示し、フスマ本来の臭がなく、フイチン酸も含有していなかつた。
食物繊維を強化した麺の製造:
準強力小麦粉4重量部に上述のようにして調製したフスマ加工品1重量部を添加、混合したものに水1.5重量部を加えて混合し、この混合物を常法により圧延、練圧、切出して麺を製造した。得られた製品はそば様の外観を呈し、フスマ特有の臭いやざらつきがなく、風味も良好である。」

(イ)甲第2号証には、次の記載がある。
摘記2a:請求項1及び5
「【請求項1】小麦ふすま80〜96質量%及びショ糖4〜12質量%を含有する原料粉をエクストルーダー処理することを含む、小麦ふすま含有組成物の製造方法。…
【請求項5】請求項1〜4のいずれか1項記載の方法で製造された小麦ふすま含有組成物を含有する食品。」

摘記2b:段落0016〜0018
「【0016】本発明の小麦ふすま含有組成物の製造方法においては、上記原料粉に水を添加する。添加する水としては、水道水、井戸水、蒸留水等の、通常食用に供される水を使用することができる。水の添加量は、原料粉100質量部に対して、好ましくは30〜100質量部、より好ましくは40〜80質量部である。好ましくは、水が添加された原料粉を混合し、水分が全体に満遍なく行き渡るようにする。
【0017】次いで、上記水が添加された原料粉をエクストルーダー処理する。エクストルーダー処理により、該原料粉が水の存在下で撹拌、混捏、加熱、剪断され、最終的にダイから押し出されて、本発明の小麦ふすま含有組成物が製造される。本発明に用いられるエクストルーダーは、1軸式及び2軸式のいずれであってもよい。該エクストルーダーのダイの径や、カッターの間隔を設定することで、本発明のふすま含有組成物を任意の大きさに製造することができる。
【0018】上記エクストルーダー処理で得られた本発明の小麦ふすま含有組成物は、そのまま使用してもよいが、食感や風味の点からは、さらに乾燥させることが望ましい。乾燥は、ベルト式乾燥機等を用いて行うことができる。例えば、上記エクストルーダー処理で得られた生成物を、80〜150℃程度で5〜30分間乾燥すればよい。乾燥後の本発明の小麦ふすま含有組成物は、水分含量が、好ましくは7質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。」

摘記2c:段落0021及び0023〜0024
「【0021】本発明の小麦ふすま含有組成物の形態は、例えば粉末、細粒、顆粒、ペレットなどが挙げられるが、特に限定されない。さらに、食しやすさや他の食品に添加する際の操作性等を考慮すると、本発明のふすま含有組成物の大きさは、乾燥後の大きさとして、最大長が、好ましくは0.8〜30mm程度、より好ましくは1〜20mm程度であり、最大径が、好ましくは0.5〜30mm程度、より好ましくは0.8〜18mm程度である。…
【0023】さらに、本発明の小麦ふすま含有組成物を食品に添加することによって、食物繊維を豊富に含み、かつ風味及び食感の良い食品を製造することができる。本発明の小麦ふすま含有組成物が添加され得る食品の種類は、特に限定されないが、例えば、パン類、クッキー等の焼菓子類、ケーキ類、スナック類、チョコレート菓子類、麺類、スープ類、フライ食品等の揚げ衣、グラノーラ等のシリアル類などを挙げることができる。このうち、風味の点からは、パン類及びクッキー等の焼菓子類が好ましい。
【0024】上記食品に本発明の小麦ふすま含有組成物を添加する方法としては、該食品の原材料に混ぜる方法、該食品の製造途中又は製造後にフィリングやトッピングとして添加する方法等が挙げられるが、これらに限定されない。該食品に添加される際の本発明の小麦ふすま含有組成物の形態は、粉末や細粒であっても、より大きな顆粒やペレット状であってもよいが、本発明の小麦ふすま含有組成物のサクサクした食感を味わう場合は、上記の最大長及び最大幅を有する程度の大きさであると好ましい。該食品への本発明の小麦ふすま含有組成物の添加量は、消費者の好みに応じて調整することができ、特に限定されない。例えば、該食品の元来の風味を維持したい場合には、本発明の小麦ふすま含有組成物を添加された食品の全重量の20%以内にすることが好ましい。一方、本発明の小麦ふすま含有組成物の風味やサクサクした食感をより味わいたい場合には、より多くの量を添加することが好ましい。」

摘記2d:段落0026、0029及び0031
「【0026】(実施例1〜3)
表1記載の量で小麦ふすまとショ糖を含む原料粉を調製した。該原料粉100質量部に対して60質量部の水を添加し、よく撹拌して全体に水分を馴染ませた後、2軸式エクストルーダー(済南大億膨化機械有限公司)に投入し、エクストルーダー処理に付した。エクストルーダーの出口ダイには直径2mmの円形ダイを用いた。ダイから押し出した処理物を3〜5mm程度の長さで切断し、乾燥させて小麦ふすま含有組成物を製造した。得られた小麦ふすま含有組成物は、若干の形状の違いはあるが、いずれも顆粒状の形態であった。…
【0029】(試験例1)
実施例1〜3、比較例1〜6の各小麦ふすま含有組成物をそのまま食したときの食感及び風味を、下記の基準に従って10名のパネラーにより評価した。評価では、実施例1の食感及び風味を5点満点とし、それを基準として他の例の点数をつけた後、10名による点数の平均点を求めた。…
評価基準
(食感)
5:非常にサクサクとしており非常に良好な食感
4:サクサクとしており良好な食感
3:サクサクした食感に物足りなさがありやや不良な食感
2:やや硬いか、ぼそぼそした繊維感があり不良な食感
1:硬すぎるか、繊維感が強すぎ、非常に不良な食感…
【0031】【表1】



(ウ)甲第3号証には、次の記載がある。
摘記3a:請求項1、19及び25
「【請求項1】挽きふすま及び胚芽成分の風味及び食感を改善するための方法であって、挽きふすま及び胚芽成分の重量に基いて、少なくとも50重量%のふすまと、約5重量%〜約25重量%含水量とを有する、ふすま及び胚芽を含む挽きふすま及び胚芽成分内の、揮発性の小麦風味の成分及び水分を揮発させ、バター、ナッツ、及びカラメルの風味を前記ふすま成分内に作り出して増やすために、該挽きふすま及び胚芽成分を運搬混合装置内で運搬し混合する間に、前記挽きふすま及び胚芽成分を約141℃〜約210℃(約285°F〜約410°F)の温度まで加熱することと;前記ふすま及び胚芽成分の含水量を、約30重量%〜約75重量%減少させ、含水量が約1.5重量%〜約10重量%である乾燥した挽きふすま成分を得るために、前記小麦風味の成分及び水分を、前記加熱の最中に、前記運搬混合装置から取り除くことと;前記乾燥した挽きふすま成分を前記運搬混合装置から取り出して、小麦臭くなく、ナッツとカラメルの風味があり、ザラザラした食感ではない、膨張していない挽きふすま及び胚芽成分を得ることと、を含む方法。…
【請求項19】請求項1に記載の方法により得られる、小麦臭くなく、ナッツとカラメルの風味があり、ザラザラした食感ではない、ふすま及び胚芽成分。…
【請求項25】請求項19に記載のふすま及び胚芽成分を含む焼成製品。」

摘記3b:段落0044及び0060
「【0044】…また、実施形態においては、挽きふすま及び胚芽成分又は画分が持ち得る粒径分布は、149ミクロン以下の粒径を持つものが少なくとも約65重量%、例えば少なくとも約75重量%、好ましくは少なくとも約85重量%、及び250ミクロンより大きな粒径を持つものが約15重量%以下、例えば約10重量%以下、好ましくは約5重量%以下、149ミクロンより大きく250ミクロン以下の粒径を持つものが最大約40重量%、例えば最大約25重量%となっている。…
【0060】…生産される焼成製品は、クラッカー又はクッキーであって、脂質をカットしていないものでも、減脂肪のものでも、低脂肪のものでも、脂質フリーのものでもよい。」

(エ)甲第4号証には、次の記載がある。
摘記4a:請求項1、4、5及び8
「【請求項1】穀類ふすま画分の保水力(WHC)を増大させるための方法であって、
a)微粒子状穀類ふすま画分に水を添加して、100%(w/w)未満の含水量を得るステップと、
b)水が添加された前記微粒子状穀類ふすま画分を、1つまたは複数の細胞壁修飾酵素により処理し、そして場合により、同時にまたは任意の順序で連続して、前記微粒子状穀類ふすま画分を1つまたは複数のさらなる酵素により処理するステップと
を含む方法。…
【請求項4】さらなる酵素活性を不活性化するため、そして/またはあらゆる残留デンプンをゼラチン化するため、そして/またはWHCをさらに増大させるために、前記穀類ふすま画分が、加熱処理においてしばらくの間さらに処理される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】前記穀類ふすま画分が、40〜300℃の範囲、例えば50〜150℃の範囲、例えば60〜120℃の範囲、例えば60〜90℃の範囲の温度で加熱処理される、請求項4に記載の方法。…
【請求項8】前記穀類ふすま画分が工業的な製粉プロセスから得られ、500μm未満、例えば400μm未満、例えば200μm未満の平均粒径を得るようにさらに製粉される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。」

摘記4b:請求項19、22及び24
「【請求項19】145%(w/w)よりも高いWHCを有する穀類ふすま画分。…
【請求項22】請求項19〜21のいずれか一項に記載の増大したWHCを有する穀類ふすま画分の、食料品の製造のための使用。…
【請求項24】前記食料品が、パン、朝食用シリアル、パスタ、ビスケット、クッキー、スナック、およびビールからなる群から選択される、請求項22または23に記載の使用。」

(オ)甲第5号証には、次の記載がある。
摘記5a:段落0011
「【0011】コロイドミル内で蒸煮され粉砕された混合物は、繊維状又は顆粒状の形状でミルの外部へ出てくる。このようにして得られたフスマ加工品は、このままでも使用することができるが、ベルト式乾燥機などにより乾燥することが望ましい。例えば80〜150℃程度で5〜30分間乾燥する。さらに篩や整粒機を通すことにより顆粒状のフスマ加工品とすることもできるし、また、簡単な粉砕処理をすることによって粉末状のフスマ加工品とすることができる。このようなフスマ加工品を食品に配合することによって、栄養価及び食物繊維に富んだ食品を製造することができる。フスマ加工品を配合する食品はいかなる食品でもよい。特にふさわしいのはパン、クッキー等焼菓子、麺、チョコレート菓子、粉末スープ、レトルト食品、フライ食品である。食品への配合方法としては、主要原料に対して前もって混合していく方法や製造工程の途中でまぶす方法等がある。配合量としては、食品全重量の20%以内にすることが好ましい。また、このフスマ加工品自身を、シリアルスナック様菓子として摂取することもできる。」

摘記5b:段落0013
「【0013】
【実施例】以下、実施例により本発明をより詳しく説明する。「%」及び「部」は特に示さない限り、各々、重量%及び重量部を表す。
【実施例1】日本製粉(株)製造の精良フスマ(小麦フスマ、水分含量13%、炭水化物含量18%)を使用した。この小麦フスマ100部に対し水30部を加え炭水化物含量が14%、及び水分含量が33%となるようにした。調整した混合物を、挽臼式粉砕機において回転数1500rpmで、1分間に1.5kgの処理量で処理した。処理後、出てきた繊維状物をベルト式乾燥機にて、110℃で約15分間乾燥し、フスマ加工品を得た。これをさらに、10メッシュ篩をもつ振動篩を通すことによって顆粒状のフスマ加工品を得た。このフスマ加工品はフスマ臭がなく、そのまま食したところサクサクした食感で食べやすかった。このフスマ加工品を通常の粉砕機で粉砕して得られた粉末状のフスマ加工品を、小麦粉100部に対して10部の割合で加え、パン及びクッキーを製造したところ、フスマ臭のしない美味しい製品となった。」

(カ)甲第6号証には、次の記載がある(なお、摘記にある下線を付したカタカナ表記の「フスマ」は、原文において、左側に「麦」の旧字体(ばくにょう)と右側に「皮」を配した漢字表記で記載されている。)。
摘記6a:請求項1
「(1)フスマを蒸煮する工程と、フスマに酸及び糖を加えて加熱乾燥する工程とを組合せることを特徴とする食用に適したフスマの製造法。」

摘記6b:第2頁右上欄第14行〜左下欄第2行
「本発明の方法において原料として用いるフスマは一般にフスマとして流通しているものなら何でも使用できる。例えば種々の粒度のものが混合している通常のフスマも、また製粉工場で小フスマあるいは粉フスマと呼ばれている粒度の細かいものも好んで使用される。フスマの粒度が小さい程製品の口当たりは良好となるので、粗いフスマを多量に含む場合は、蒸し工程の前後に粉砕することが望ましい。なお粉砕は加熱乾燥後に行うとフスマが砕け易いので好ましい。」

(キ)甲第7号証には、次の記載がある。
摘記7a:第345頁左欄第14行〜右欄第1行
「原料入口から出口までの現象は図6に示すように様々であり,それぞれを組合せることで種々の応用展開が考えられる.たとえば,
…失活・・・・・リパーゼ,ウレアーゼ,アミラーゼ,リポキシゲナーゼ…
であり,いずれの応用例も食品製造と密接な関係があり,エクストルージョン・クッキングに関心が集まるのも無理からぬ話である.」

(ク)甲第8号証には、次の記載がある。
摘記8a:段落0023
「【0023】焙煎の効果について、本発明では、粗挽きふすまを焙煎したものを用いることをさらなる特徴の一つとするものである。粗挽きふすまを焙煎することにより、ふすまの有する特異臭(青臭いふすま臭)がなくなり、焙煎による風味が増強されるばかりでなく、焙煎による滅菌、害虫卵の死滅、含有水分の減少等により長期保存性が向上する。
焙煎の手段について、焙煎処理は、通常の焙煎機、ホットプレート、オーブン、フライパンなどで行うことができる。焙煎温度は150〜250℃で、水分が3〜7%程度になるまで焦がさないように行うのが好ましい。焙煎時間は、小麦の種類や季節または製粉時の小麦の皮離れ向上の為の加水量等により変動する焙煎前のふすまの水分含有量や、処理量、焙煎装置等によって異なってくるが、例えば、150〜250℃で家庭用フライパンで約100g処理する場合、60〜100秒程度である。焦げると食味に悪影響を及ぼすのでよく撹拌しながら焦がさないように行うことが必要である。本発明での焙煎粗挽きふすまを配合することで、軽い食感や、香ばしい風味を好む日本人に好適な食品が製造できる。」

(ケ)甲第9号証には、次の記載がある。
摘記9a:段落0039
「【0039】本発明においては、焙煎された麦の焙煎度L値が30〜50の範囲内特に35〜45の範囲内であることが好ましい。ここで、本発明でいう焙煎度L値とは、対象物を卓上の簡易粉砕ミル(例えばカリタ製ミル)により微粉砕し透明円形セルに所定量充填し、表面色を(株)日本電色の色差計にて測定した値である。この焙煎度L値は、焙煎工場等での品質管理指標として採用されているものである。」

ウ 甲第1〜6号証に記載された発明
(ア)甲1発明
摘記1cの「実施例1…フスマに、10倍量の水で希釈した食酢の水溶液の3倍量を添加、混合して2時間放置した後、濾過し、水洗、脱水し、ついで送風乾燥機で100℃に3時間乾燥して水分8%のフスマ処理物を得た。このフスマ処理物を2軸エクストルーダーに通して150℃の温度および80気圧の圧力下で処理した。得られた製品は良好な食感と色調を示し、フスマ本来の臭がなく、フイチン酸も含有していなかつた。…準強力小麦粉4重量部に上述のようにして調製したフスマ加工品1重量部を添加、混合したものに水1.5重量部を加えて混合し、この混合物を常法により圧延、練圧、切出して麺を製造した。」との記載からみて、甲第1号証には、
『フスマに、10倍量の水で希釈した食酢の水溶液の3倍量を添加、混合して2時間放置した後、濾過し、水洗、脱水し、ついで送風乾燥機で100℃に3時間乾燥して水分8%のフスマ処理物を得て、このフスマ処理物を2軸エクストルーダーに通して150℃の温度および80気圧の圧力下で処理し、得られたフスマ加工品1重量部に、準強力小麦粉4重量部を添加、混合したものに水1.5重量部を加えて混合し、この混合物を常法により圧延、練圧、切出して製造した麺。』についての発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。

(イ)甲2発明
摘記2aの「小麦ふすま80〜96質量%及びショ糖4〜12質量%を含有する原料粉をエクストルーダー処理することを含む、小麦ふすま含有組成物の製造方法…で製造された小麦ふすま含有組成物を含有する食品。」との記載、
摘記2cの「本発明の小麦ふすま含有組成物が添加され得る食品の種類は、…フライ食品等の揚げ衣…などを挙げることができる。…該食品への本発明の小麦ふすま含有組成物の添加量は、消費者の好みに応じて調整することができ、…本発明の小麦ふすま含有組成物を添加された食品の全重量の20%以内にすることが好ましい。」との記載、及び
摘記2dの「実施例1〜3…表1記載の量で小麦ふすまとショ糖を含む原料粉を調製した。該原料粉100質量部に対して60質量部の水を添加し、よく撹拌して全体に水分を馴染ませた後、2軸式エクストルーダー(…)に投入し、エクストルーダー処理に付した。エクストルーダーの出口ダイには直径2mmの円形ダイを用いた。ダイから押し出した処理物を3〜5mm程度の長さで切断し、乾燥させて小麦ふすま含有組成物を製造した。得られた小麦ふすま含有組成物は、若干の形状の違いはあるが、いずれも顆粒状の形態であった。…表1…原料粉組成(質量%)…実施例1…小麦ふすま…90.5…グラニュー糖…6.5…薄力小麦粉…3.0…食感…5.0」との記載からみて、甲第2号証には、
『小麦ふすま90.5質量%、グラニュー糖6.5質量%、及び薄力小麦粉3.0質量%からなる原料粉を調製し、該原料粉100質量部に対して60質量部の水を添加し、よく撹拌して全体に水分を馴染ませた後、エクストルーダー処理に付し、直径2mmの円形ダイから押し出した処理物を3〜5mm程度の長さで切断し、乾燥させて製造した顆粒状の形態の小麦ふすま含有組成物を、食品の全重量の20%以内で添加されたフライ食品等の揚げ衣などの食品。』についての発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているといえる。

(ウ)甲3発明
摘記3aの「挽きふすま及び胚芽成分の重量に基いて、少なくとも50重量%のふすまと、約5重量%〜約25重量%含水量とを有する、ふすま及び胚芽を含む挽きふすま及び胚芽成分内の、揮発性の小麦風味の成分及び水分を揮発させ、…前記挽きふすま及び胚芽成分を約141℃〜約210℃(…)の温度まで加熱することと;前記ふすま及び胚芽成分の含水量を、約30重量%〜約75重量%減少させ、含水量が約1.5重量%〜約10重量%である乾燥した挽きふすま成分を得るために、前記小麦風味の成分及び水分を、前記加熱の最中に、前記運搬混合装置から取り除くことと;…を含む方法…により得られる…ふすま及び胚芽成分を含む焼成製品。」との記載からみて、甲第3号証には、
『挽きふすま及び胚芽成分の重量に基いて、少なくとも50重量%のふすまと、約5重量%〜約25重量%含水量とを有する挽きふすまを、約141℃〜約210℃の温度まで加熱し、含水量を約1.5重量%〜約10重量%とした乾燥した挽きふすま成分を含む焼成製品。』についての発明(以下「甲3発明」という。)が記載されているといえる。

(エ)甲4発明
摘記4bの「145%(w/w)よりも高いWHCを有する穀類ふすま画分…の、食料品の製造のための使用。…前記食料品が、パン、朝食用シリアル、パスタ、ビスケット、クッキー、スナック、およびビールからなる群から選択される」との記載、及び
摘記4aの「穀類ふすま画分の保水力(WHC)を増大させるための方法であって、…微粒子状穀類ふすま画分に水を添加して、100%(w/w)未満の含水量を得るステップと、…水が添加された前記微粒子状穀類ふすま画分を、1つまたは複数の細胞壁修飾酵素により処理…するステップと…さらなる酵素活性を不活性化するため…前記穀類ふすま画分が、加熱処理においてしばらくの間さらに処理され…前記穀類ふすま画分が工業的な製粉プロセスから得られ、…例えば200μm未満の平均粒径を得るようにさらに製粉される…方法。」との記載からみて、甲第4号証には、
『穀類ふすま画分の保水力(WHC)を145%(w/w)よりも高くした穀類ふすま画分を含む、パン、朝食用シリアル、パスタ、ビスケット、クッキー、スナック、およびビールからなる群から選択される食品であって、前記穀類ふすま画分が、微粒子状穀類ふすま画分に水を添加するステップと、1つまたは複数の細胞壁修飾酵素により処理するステップと、加熱処理においてしばらくの間さらに処理されるステップと、工業的な製粉プロセスにより例えば200μm未満の平均粒径を得るようにさらに製粉されるステップからなる方法で製造される、前記食品。』についての発明(以下「甲4発明」という。)が記載されているといえる。

(オ)甲5発明
摘記5bの「以下、実施例により本発明をより詳しく説明する。「%」及び「部」は特に示さない限り、各々、重量%及び重量部を表す。…実施例1…日本製粉(株)製造の精良フスマ(小麦フスマ、水分含量13%、炭水化物含量18%)を使用した。この小麦フスマ100部に対し水30部を加え炭水化物含量が14%、及び水分含量が33%となるようにした。調整した混合物を、挽臼式粉砕機において回転数1500rpmで、1分間に1.5kgの処理量で処理した。処理後、出てきた繊維状物をベルト式乾燥機にて、110℃で約15分間乾燥し、フスマ加工品を得た。これをさらに、10メッシュ篩をもつ振動篩を通すことによって顆粒状のフスマ加工品を得た。このフスマ加工品はフスマ臭がなく、そのまま食したところサクサクした食感で食べやすかった。このフスマ加工品を通常の粉砕機で粉砕して得られた粉末状のフスマ加工品を、小麦粉100部に対して10部の割合で加え、パン及びクッキーを製造したところ、フスマ臭のしない美味しい製品となった。」との記載からみて、甲第5号証には、
『小麦フスマ100部に対し水30部を加え、挽臼式粉砕機において処理し、出てきた繊維状物をベルト式乾燥機にて、110℃で約15分間乾燥して得られたフスマ加工品を、10メッシュ篩をもつ振動篩を通すことによって顆粒状のフスマ加工品とし、このフスマ加工品を通常の粉砕機で粉砕して得られた粉末状のフスマ加工品を、小麦粉100部に対して10部の割合で加えて製造した、パン及びクッキー。』についての発明(以下「甲5発明」という。)が記載されているといえる。

(カ)甲6発明
摘記6aの「フスマを蒸煮する工程と、フスマに酸及び糖を加えて加熱乾燥する工程とを組合せることを特徴とする食用に適したフスマの製造法。」との記載からみて、甲第6号証には、
『フスマを蒸煮する工程と、フスマに酸及び糖を加えて加熱乾燥する工程とを組合せて製造した、食用に適したフスマ。』についての発明(以下「甲6発明」という。)が記載されているといえる。

エ 甲第1号証を主引用例とした場合の検討
(ア)対比
本1発明と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「フスマに、10倍量の水で希釈した食酢の水溶液の3倍量を添加、混合して2時間放置した後、濾過し、水洗、脱水し、ついで送風乾燥機で100℃に3時間乾燥して水分8%のフスマ処理物を得て、このフスマ処理物を2軸エクストルーダーに通して150℃の温度および80気圧の圧力下で処理し」は、本1発明の「ふすまに対して加熱前および/または加熱途中で水分を加えて加熱処理を行うことにより得られ」に相当する。
甲1発明の「得られたフスマ加工品1重量部に、準強力小麦粉4重量部を添加、混合したものに水1.5重量部を加えて混合し」は、1÷(1+4+1.5)×100=15.4%と計算されることから、本1発明の「ふすまの含有量が0質量%超70質量%以下である」に相当する。
甲1発明の「常法により圧延、練圧、切出して製造した麺」と、本1発明の「揚げ衣用ミックス」は、両者とも「食品」という点において共通する。

してみると、本1発明と甲1発明は『ふすまに対して加熱前および/または加熱途中で水分を加えて加熱処理を行うことにより得られたふすまの含有量が0質量%超70質量%以下である、食品。』という点において一致し、次の(1α)〜(1γ)の3つの点において相違する。

(1α)得られた「ふすま」の粒状・サイズが、本1発明は「粉末状であり、メディアン径が20〜100μmである」のに対して、甲1発明は、その粒状・サイズが不明な点

(1β)得られた「ふすま」が、本1発明は「加水焙煎ふすま」であるのに対して、甲1発明は「加水焙煎ふすま」ではない点

(1γ)食品の種類が、本1発明は「揚げ衣用ミックス」であるのに対して、甲1発明は「麺」である点(なお、甲第1号証の第3頁右下欄第15〜16行には「唐揚げ粉類」が例示されている。)

(イ)判断
a.上記(1α)の相違点について
(a)先ず、第1号証の第3頁左下欄(摘記1b)には「それを添加する食品の種類に応じて圧扁してフレーク状にするか又は微粉砕もしくは顆粒状にして用いる。」との記載があるものの、甲第1号証には、得られた「ふすま」のサイズを「メディアン径が20〜100μm」の範囲にすることを動機付ける記載も示唆もない。

(b)次に、甲第2号証の段落0021(摘記2c)には「食しやすさや他の食品に添加する際の操作性等を考慮すると、本発明のふすま含有組成物の大きさは、乾燥後の大きさとして、最大長が、…より好ましくは1〜20mm程度であり、最大径が、…より好ましくは0.8〜18mm程度である。」との記載があるところ、当該「最大長」及び「最大径」についての記載は、本1発明のサイズよりも大きなサイズを好ましいものとしているものであって、甲第2号証には、得られた「ふすま」のサイズを「メディアン径が20〜100μm」の範囲にすることを動機付ける記載も示唆もない。

(c)次に、甲第3号証の段落0044(摘記3b)には「挽きふすま及び胚芽成分又は画分が持ち得る粒径分布は、149ミクロン以下の粒径を持つものが少なくとも約65重量%、…250ミクロンより大きな粒径を持つものが約15重量%以下、…149ミクロンより大きく250ミクロン以下の粒径を持つものが最大約40重量%」との記載があるものの、甲第3号証には、250ミクロンより大きな粒径や、149ミクロンより大きい粒径のものが、一定の割合で存在すると記載されているので、甲第3号証の「149ミクロンより大きく250ミクロン以下の粒径を持つものが最大約40重量%」等の粒径サイズに関する記載を参酌したとしても、本1発明の「加水焙煎ふすま」のサイズを「メディアン径」で「20〜100μm」の範囲に設定するという構成を想到し、これにより「揚げ衣用ミックス」の喫食時の「口残り」や「口溶け」の点で優れた食感が得られるという本1発明の効果を予測することが、当業者にとって容易であるとはいえない。

(d)次に、甲第4号証の請求項8(摘記4a)には「前記穀類ふすま画分が工業的な製粉プロセスから得られ、500μm未満、例えば400μm未満、例えば200μm未満の平均粒径を得るようにさらに製粉される」との記載があり、その段落0137にも同様な記載があるものの、その請求項24(摘記2b)の「前記食料品が、パン、朝食用シリアル、パスタ、ビスケット、クッキー、スナック、およびビールからなる群から選択される」との記載にあるように、甲第4号証に記載の技術は、本1発明の「揚げ衣用ミックス」と異なる食品に関するものであるから、甲第4号証の「200μm未満の平均粒径」という「穀類ふすま画分」のサイズに関する記載を参酌したとしても、本1発明の「加水焙煎ふすま」のサイズを「メディアン径」で「20〜100μm」の範囲に設定するという構成を想到し、これにより「揚げ衣用ミックス」の喫食時の「口残り」や「口溶け」の点で優れた食感が得られるという本1発明の効果は、当業者の予測を超えた顕著なものである。

(e)次に、甲第5号証の段落0011(摘記5a)には「簡単な粉砕処理をすることによって粉末状のフスマ加工品とすることができる。」との記載があるものの、甲第5号証には、得られた「ふすま」のサイズを「メディアン径が20〜100μm」の範囲にすることを動機付ける記載も示唆もない。

(f)次に、甲第6号証の第2頁右上欄(摘記6b)には「フスマの粒度が小さい程製品の口当たりは良好となる」との記載があるものの、甲第6号証には、得られた「ふすま」のサイズを「メディアン径が20〜100μm」の範囲にすることを動機付ける記載も示唆もない。

(g)なお、甲第7号証には、エクストルージョン処理によって、原料中のアミラーゼなどの酵素が失活する現象が生じることが記載されているものの、加水焙煎ふすまの粒状やサイズについて記載がない。

(h)以上総括するに、甲第1〜7号証には、得られた「ふすま」のサイズを「メディアン径」で「20〜100μm」の範囲にすることについて記載も示唆もなく、これにより「揚げ衣用ミックス」の喫食時の「口残り」や「口溶け」の点で優れた食感が得られるという本1発明の効果も予測しえないものである。
したがって、上記(1α)の相違点に係る構成を想到し、この構成を具備することで得られる効果を予測することが、当業者にとって容易であるとはいえない。

b.上記(1β)の相違点について
甲1発明の「100℃に3時間乾燥」する工程の「乾燥」という用語の技術的な意味は、上記1.(1)に示したように、本1発明の「焙煎」という用語の意味と異なるものであるところ、甲第1〜7号証には、本1発明の「加水焙煎ふすま」の構成と、当該構成を具備することで得られる効果について示唆を含めて記載がない。
そして、本1発明は「加水焙煎」を施すことで、本件特許明細書の段落0031の「加水後のふすまは、加熱によりその品温を90〜150℃の範囲で3分以上維持する。…「焙煎」とは、加熱によりふすまの水分をとばし、特有の風味を付すことをいう。」との記載にある「ふすまの水分をとばし、特有の風味を付す」ことができるという効果を奏するものと認められる。
したがって、上記(1β)の相違点に係る構成を想到し、この構成を具備することで得られる効果を予測することが、当業者にとって容易であるとはいえない。

c.甲第1号証を主引用例とした場合の検討のまとめ
以上のとおりであるから、上記(1γ)の相違点について検討するまでもなく、本1発明は、甲第1〜7号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。

オ 甲第2号証を主引用例とした場合の検討
(ア)対比
本1発明と甲2発明とを対比する。
甲2発明の「小麦ふすま90.5質量%」を含む「原料粉100質量部」に対して「60質量部の水を添加」し「水分を馴染ませた後」に、エクストルーダー処理に付し、切断し「乾燥」する処理は、
当該「小麦ふすま90.5質量%」を含む「原料粉100質量部」に対して「60質量部の水を添加」する処理が、本件特許明細書の段落0027の「ふすま100質量部に対して10〜40質量部の水を加え、加熱により上記ふすまの品温を90〜150℃の範囲で3分以上維持する加水焙煎工程を含む」との記載(なお、下線は当審による。以下同じ。)にある下線部の「水を加え」に対応する本1発明の「ふすまに対して加熱前…水分を加えて」という処理に相当し、
当該「乾燥」する処理が、具体的には、甲第2号証の段落0018(摘記2b)の「エクストルーダー処理で得られた生成物を、80〜150℃程度で5〜30分間乾燥すればよい。」との記載にある「80〜150℃程度で5〜30分間」の条件での加熱処理に対応し、本件特許明細書の段落0027の上記下線部の「品温を90〜150℃の範囲で3分以上維持」に対応する本1発明の「加熱処理を行う」という処理に相当することから、
本1発明の「ふすまに対して加熱前および/または加熱途中で水分を加えて加熱処理を行うことにより得られ」に相当する。

甲2発明の「製造した顆粒状の形態の小麦ふすま含有組成物を、食品の全重量の20%以内で添加されたフライ食品等の揚げ衣などの食品」は、
当該「小麦ふすま含有組成物」が、加水し、乾燥(加熱)して得られているという点において、本1発明の「加水焙煎ふすま」と「加水熱処理ふすま」という点において共通すると共に、
当該「フライ食品等の揚げ衣などの食品」が、本1発明の「揚げ衣用ミックス」に相当するので、
本1発明の「加水焙煎ふすまの含有量が0質量%超70質量%以下である、揚げ衣用ミックス」との関係において、両者は「加水焙煎ふすまの含有量が0質量%超70質量%以下である、揚げ衣用ミックス」という点において共通する。

してみると、本1発明と甲2発明は「ふすまに対して加熱前および/または加熱途中で水分を加えて加熱処理を行うことにより得られる加水熱処理ふすまの含有量が0質量%超70質量%以下である、揚げ衣用ミックス。」という点において一致し、次の(2α)及び(2β)の点において相違する。

(2α)得られた「ふすま」の粒状・サイズが、本1発明は「粉末状であり、メディアン径が20〜100μmである」のに対して、甲2発明は「直径2mm」で「3〜5mm程度の長さ」に切断された「顆粒状」である点

(2β)得られた「ふすま」の熱処理が、本1発明は「焙煎」であるのに対して、甲2発明は「乾燥」である点

(イ)判断
a.相違点(2α)について
甲2発明は、その「小麦ふすま含有組成物」の粒状・サイズを「直径2mm」で「3〜5mm程度の長さ」に切断された「顆粒状」のものとすることで、甲第2号証の段落0029及び0031(摘記2d)に記載されるとおりの「5:非常にサクサクとしており非常に良好な食感」の評価を得ているものである。
そして、同段落0021(摘記2c)の「乾燥後の大きさ」として「最大径」が「0.8〜18mm程度」で「最大長」が「1〜20mm程度」がより好ましいという旨の記載をも斟酌するに、甲2発明は、本1発明のサイズよりも、かなり大きいサイズのものを好ましいとしているので、甲2発明のサイズを「メディアン径が20〜100μm」のものにすることに、動機付けがあるとはいえない。
してみると、上記(2α)の構成を導き出すことが、当業者にとって容易であるとはいえない。

b.相違点(2β)について
甲2発明は「乾燥」のために熱処理をするものであって、本1発明のような「焙煎」のために熱処理をするものではないので、この点は実質的な相違点である。
そして、甲第1〜7号証に記載の全ての技術事項を精査しても、ふすまの熱処理としての「焙煎」は、示唆を含めて記載がない。
してみると、上記(2β)の構成を導き出すことが、当業者にとって容易であるとはいえない。

c.本1発明の効果について
本件特許明細書の段落0065の表1及び同段落0069の表2には、メディアン径が103.42μmの製造例4の小麦ふすま処理品を用いた実施例4と、本1発明の具体例に相当する実施例1〜3及び5〜7の揚げ衣用ミックスが記載され、同段落0070には「実施例4は、実施例1〜3、及び5〜7と比較した場合、喫食時にふすまのざらつきが口残りとしてやや感じられ、口溶けが劣ったため、加水焙煎ふすまのメディアン径は20〜100μmが好ましいことが示唆された。」との記載がなされている。
そして、加水焙煎ふすまのメディアン径を「20〜100μm」の範囲にすることによって、喫食時の「ざらつき」や「口溶け」が優れたものになるという効果については、甲第1〜7号証に示唆を含めて記載がない。
してみると、本1発明の上記効果は、当業者にとって予測できない格別の効果であると認められる。

d.甲第2号証を主引用例とした場合の進歩性のまとめ
以上のとおりであるから、本1発明は、甲第1〜7号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。

カ 甲第3号証を主引用例とした場合の検討
(ア)対比
本1発明と甲3発明とを対比する。
甲3発明の「約5重量%〜約25重量%含水量とを有する挽きふすまを、約141℃〜約210℃の温度まで加熱し」は、本1発明の「ふすまに対して加熱前および/または加熱途中で水分を加えて加熱処理を行うことにより得られ」に相当する。
甲3発明の「挽きふすま成分を含む焼成製品」は、甲第3号証の段落0060(摘記3b)の「生産される焼成製品は、クラッカー又はクッキーであって」との記載からみて、当該「焼成製品」が「食品」の一種を意図しているといえるので、本1発明の「加水焙煎ふすまの含有量が0質量%超70質量%以下である、揚げ衣用ミックス」との関係に置いて、両者は「ふすまを含有する食品」という点において共通する。
してみると、本1発明と甲3発明は『ふすまに対して加熱前および/または加熱途中で水分を加えて加熱処理を行うことにより得られるふすまを含有する食品。』という点において一致し、次の(3α)〜(3δ)の4つの点において相違する。

(3α)得られた「ふすま」の粒状・サイズが、本1発明は「粉末状であり、メディアン径が20〜100μmである」のに対して、甲3発明は、その粒状・サイズが不明な点

(3β)得られた「ふすま」が、本1発明は「加水焙煎ふすま」であるのに対して、甲3発明は「加水焙煎ふすま」ではない点

(3γ)食品の種類が、本1発明は「揚げ衣用ミックス」であるのに対して、甲3発明は「焼成製品」である点(具体的には甲第3号証の段落0060に記載される「クラッカー又はクッキー」である点)

(3δ)食品に対するふすまの含有量が、本1発明においては「0質量%超70質量%以下」であるのに対して、甲3発明においては含有量が不明な点

(イ)判断
上記(3α)の相違点については、上記エ(イ)a.の(1α)の相違点についての検討と同様に、甲第1〜7号証には、得られた「ふすま」のサイズを「メディアン径」で「20〜100μm」の範囲にすることについて記載がなく、そのようなサイズにすることによって格別の効果が得られることの記載もないので、上記(3α)の相違点に係る構成を想到し、この構成を具備することで得られる効果を予測することが、当業者にとって容易であるとはいえない。
したがって、上記(3β)〜(3δ)の相違点について検討するまでもなく、本1発明は、甲第1〜7号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。

キ 甲第4号証を主引用例とした場合の検討
(ア)対比
本1発明と甲4発明とを対比する。
甲4発明の「微粒子状穀類ふすま画分に水を添加するステップ」と「加熱処理においてしばらくの間さらに処理されるステップ」は、本1発明の「ふすまに対して加熱前および/または加熱途中で水分を加えて加熱処理を行うことにより得られ」に相当する。
甲4発明の「パン、朝食用シリアル、パスタ、ビスケット、クッキー、スナック、およびビールからなる群から選択される食品」と、本1発明の「揚げ衣用ミックス」は、両者とも「食品」という点において共通する。
してみると、本1発明と甲4発明は『ふすまに対して加熱前および/または加熱途中で水分を加えて加熱処理を行うことにより得られ、粉末状であり、メディアン径が20〜100μmである加水焙煎ふすまの含有量が0質量%超70質量%以下である、揚げ衣用ミックス。』という点において一致し、次の(4α)〜(4δ)の4つの点において相違する。

(4α)得られた「ふすま」の粒状・サイズが、本1発明は「粉末状であり、メディアン径が20〜100μmである」のに対して、甲4発明は「例えば200μm未満の平均粒径を得るようにさらに製粉される」ものである点

(4β)得られた「ふすま」が、本1発明は「加水焙煎ふすま」であるのに対して、甲4発明は「加水焙煎ふすま」ではない点

(4γ)食品の種類が、本1発明は「揚げ衣用ミックス」であるのに対して、甲4発明は「パン、朝食用シリアル、パスタ、ビスケット、クッキー、スナック、およびビールからなる群から選択される食品」である点

(4δ)食品に対するふすまの含有量が、本1発明においては「0質量%超70質量%以下」であるのに対して、甲3発明においては含有量が不明な点

(イ)判断
上記(4α)の相違点については、上記エ(イ)a.の(1α)の相違点についての検討と同様に、甲第1〜7号証には、得られた「ふすま」のサイズを「メディアン径」で「20〜100μm」の範囲にすることについて記載がなく、そのようなサイズにすることによって格別の効果が得られることの記載もないので、上記(4α)の相違点に係る構成を想到し、この構成を具備することで得られる効果を予測することが、当業者にとって容易であるとはいえない。
したがって、上記(4β)〜(4δ)の相違点について検討するまでもなく、本1発明は、甲第1〜7号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。

ク 甲第5号証を主引用例とした場合の検討
(ア)対比
本1発明と甲5発明とを対比する。
甲5発明の「小麦フスマ100部に対し水30部を加え、…110℃で約15分間乾燥して得られた」は、本1発明の「ふすまに対して加熱前および/または加熱途中で水分を加えて加熱処理を行うことにより得られ」に相当する。
甲5発明の「通常の粉砕機で粉砕して得られた粉末状のフスマ加工品」と、本1発明の「粉末状であり、メディアン径が20〜100μmである加水焙煎ふすま」は、両者とも「粉末状であるフスマ加工品」という点において共通する。
甲5発明の「粉末状のフスマ加工品を、小麦粉100部に対して10部の割合で加えて製造した、パン及びクッキー」と、本1発明の「加水焙煎ふすまの含有量が0質量%超70質量%以下である、揚げ衣用ミックス」は、両者とも「粉末状であるフスマ加工品の含有量が0質量%超70質量%以下である、食品。」という点において共通する。

してみると、本1発明と甲5発明は『ふすまに対して加熱前および/または加熱途中で水分を加えて加熱処理を行うことにより得られ、粉末状であるフスマ加工品の含有量が0質量%超70質量%以下である、食品。』という点において一致し、次の(5α)〜(5γ)の3つの点において相違する。

(5α)得られた「フスマ加工品」のサイズが、本1発明は「メディアン径が20〜100μmである」のに対して、甲5発明は、そのサイズが不明な点

(5β)得られた「フスマ加工品」が、本1発明は「加水焙煎ふすま」であるのに対して、甲5発明は「加水焙煎ふすま」ではない点

(5γ)食品の種類が、本1発明は「揚げ衣用ミックス」であるのに対して、甲5発明は「パン及びクッキー」である点(なお、段落0011には「フライ食品」が例示されている。)

(イ)判断
上記(5α)の相違点については、上記エ(イ)a.の(1α)の相違点についての検討と同様に、甲第1〜7号証には、調製された「ふすま」のサイズを「メディアン径」で「20〜100μm」の範囲にすることについて記載がなく、そのようなサイズにすることによって格別の効果が得られることの記載もないので、上記(5α)の相違点に係る構成を想到し、この構成を具備することで得られる効果を予測することが、当業者にとって容易であるとはいえない。
したがって、上記(5β)及び(5γ)の相違点について検討するまでもなく、本1発明は、甲第1〜7号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。

ケ 甲第6号証を主引用例とした場合の検討
(ア)対比
本1発明と甲6発明とを対比する。
甲6発明の「フスマを蒸煮する工程と、フスマに酸及び糖を加えて加熱乾燥する工程とを組合せて製造した」は、その「蒸煮する工程」において蒸すために「水分」が加えられていることが明らかであり、その「加熱乾燥する工程」が「加熱」を行う処理であることから、本1発明の「ふすまに対して加熱前および/または加熱途中で水分を加えて加熱処理を行うことにより得られ」に相当する。
甲6発明の「食用に適したフスマ」は、それ自体が「食品」であって、所定の工程を組合せて製造したフスマを100%配合した食品として解されることから、甲6発明の「食用に適したフスマ」と、本1発明の「加水焙煎ふすまの含有量が0質量%超70質量%以下である、揚げ衣用ミックス」は、両者とも「ふすまを含有する食品」という点において共通する。
してみると、本1発明と甲6発明は『ふすまに対して加熱前および/または加熱途中で水分を加えて加熱処理を行うことにより得られるふすまを含有する食品。』という点において一致し、次の(6α)〜(6δ)の4つの点において相違する。

(6α)得られた「ふすま」の粒状・サイズが、本1発明は「粉末状であり、メディアン径が20〜100μmである」のに対して、甲6発明は、その粒状・サイズが不明な点

(6β)得られた「ふすま」が、本1発明は「加水焙煎ふすま」であるのに対して、甲6発明は「加水焙煎ふすま」ではない点

(6γ)食品の種類が、本1発明は「揚げ衣用ミックス」であるのに対して、甲6発明は「食用に適したフスマ」である点

(6δ)食品に対するふすまの含有量が、本1発明においては「0質量%超70質量%以下」であるのに対して、甲6発明においては「100質量%」である点

(イ)判断
上記(6α)の相違点については、上記エ(イ)a.の(1α)の相違点についての検討と同様に、甲第1〜7号証には、得られた「ふすま」のサイズを「メディアン径」で「20〜100μm」の範囲にすることについて記載がなく、そのようなサイズにすることによって格別の効果が得られることの記載もないので、上記(6α)の相違点に係る構成を想到し、この構成を具備することで得られる効果を予測することが、当業者にとって容易であるとはいえない。
したがって、上記(6β)〜(6δ)の相違点について検討するまでもなく、本1発明は、甲第1〜7号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。

コ 本2発明〜本3発明及び本5発明〜本7発明について
本2発明〜本3発明及び本5発明〜本7発明は、本1発明を直接又は間接的に引用し、さらに限定したものであるから、上記エ〜ケに示したように、本1発明の進歩性が甲第1〜7号証に記載された発明よって否定できない以上、本2発明〜本3発明及び本5発明〜本7発明が、甲第1〜7号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。

(3)申立理由3(明確性要件)について
特許異議申立人が主張する申立理由3(明確性要件)は、請求項1〜7に係る発明の「加水焙煎ふすま」がいかなるものであるか不明確であり、請求項1には当該請求項に係る発明である物の製造方法が記載されているから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない(特許法第113条第4号)というものである(申立書の第5及び30〜31頁)。そして、これらの点は、上記第4の理由1において採用されているから、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由に該当しない。

(4)申立理由4(サポート要件)について
ア 申立理由4の概要
特許異議申立人が主張する申立理由4(サポート要件)は、請求項1〜7に係る発明は発明の課題を解決できない範囲を包含するものであるから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない(特許法第113条第4号)というものであり、その不備として次の点を主張している(申立書の第5及び31〜35頁)。
〔不備1〕加水焙煎処理の加熱の温度や時間、又は加水の量やタイミングなどの条件で特定されていない「加水焙煎ふすま」は、穀物臭やえぐ味が低減されておらず風味が悪い場合があると考えられるので、本1発明の「加水焙煎ふすま」を含有する揚げ衣用ミックスが、本願発明の課題を解決できるとは認められない。
〔不備2〕本件特許明細書の実施例に照らせば、「焙煎処理」後にさらに「加水焙煎処理」を施して得られた、α−アミラーゼ力価が86mU/g以下且つ中性プロテアーゼ力価が10U以下である加水焙煎ふすま以外の加水焙煎ふすまを含有する揚げ衣用ミックスが、本願発明の課題を解決できるとは認められない。

イ 明細書等の記載
本件特許の請求項1〜7の記載は、上記第3に示したとおりである。
本件特許の発明の詳細な説明には、次の記載がある。

摘示a:発明が解決しようとする課題について
「【0006】ふすまの生菌数を低減するためには加熱が有効と考えられる。しかしながら本発明者は、検討の結果、単純な熱処理ではふすまの穀物臭やえぐ味を十分に低減できないという知見を得た。
【0007】そこで、本発明は、ふすまを含有しつつ穀物臭やえぐ味が少ない揚げ衣用ミックスを提供することを主目的とする。」

摘示b:加水焙煎ふすまについて
「【0017】本実施形態で用いられる加水焙煎ふすまについて説明する。該加水焙煎ふすまは、加熱前、および/または加熱途中で水分を加えて加熱処理を行うことにより得られる。この加水焙煎ふすまは、α−アミラーゼ力価が150mU/g以下であることが好ましく、中性プロテアーゼ力価が20U/g未満であることが好ましい。「α−アミラーゼ力価」とは、α−アミラーゼの活性の程度を表す指標である。「中性プロテアーゼ力価」とは、中性プロテアーゼの活性の程度を表す指標であり、カゼイン(乳製)を基質とし、38℃、pH6.0において、反応初期の1分間に1μgのL−チロシンに相当する非たん白性のフェノール試薬呈色物質の増加をもたらす活性を1U(単位)とする。いずれも数値が低いほど活性が低いことを示す。加水焙煎ふすまに含まれる酵素の活性が低いということは、加水と加熱処理によって酵素が失活するほど内部まで十分に熱がかけられたことを意味すると考えられる。
【0018】上述の通り単純な熱処理では穀物臭やえぐ味を低減できなかったが、本発明者は、鋭意検討の結果、加水焙煎処理によってふすまの穀物臭やえぐ味を低減できることを見出した。また本発明者は、このように穀物臭やえぐ味を低減できたのは、加水焙煎処理によってふすまの内部にまで十分熱が行き渡ったことが要因であると考えた。そこで、本発明者は、ふすまが十分に加熱されたか否かを判断する指標として、酵素活性を用いることに着目した。その結果、α−アミラーゼ力価が150mU/g以下であり中性プロテアーゼ力価が20U/g未満の加水焙煎ふすまは、内部まで十分に加熱されており、穀物臭やえぐ味がより効果的に低減されることを見出した。」

摘示c:試験例1について
「【0055】<試験例1:から揚げ>
[小麦ふすま処理品の製造]
小麦ふすまを回転式焙煎機(クマノ厨房工業株式会社製)に投入し、品温110℃になるまで焙煎処理した後、小麦ふすま100質量部に対して15質量部の水を散水し、小麦ふすまの品温を100〜110℃の範囲で20分維持して加水焙煎処理を行った。その後、粉砕工程として、小麦ふすまを分級機を内蔵した衝撃型微粉砕機のACMパルベライザー(ホソカワミクロン株式会社製)で粉砕し、目開き500μmの篩にかけ、篩下の画分を分取し、製造例1の加水焙煎ふすまを得た。また、下記表1に示す条件で、製造例1と同様の手順により、異なる粒度の製造例2〜4の加水焙煎ふすまを得た。…
【0059】比較例1及び2の熱処理小麦ふすまは、小麦ふすまを回転式焙煎機に投入した後、加水せずに、小麦ふすまの品温を下記表1に示す条件で加熱した。その後、粉砕工程を製造例1と同様の手順で行い、比較例1及び2の熱処理小麦ふすまを製造した。…
【0065】【表1】

…【0068】から揚げ及びミックスの評価結果を下記表2に示す。
【0069】【表2】

【0070】加水焙煎ふすまを含むから揚げは、風味と歯切れが良好で、油っぽさがなくドライ感があった。小麦ふすま処理時に加水しなかった熱処理小麦ふすまを含む比較例3及び4のから揚げは、風味が悪く、ドライ感は得られなかった。これらの結果から、加水焙煎ふすまを含有することで、穀物臭やえぐ味が少なく、歯切れが良好で、ドライ感があり油っぽくないから揚げが得られることが確認された。また、実施例4は、実施例1〜3、及び5〜7と比較した場合、喫食時にふすまのざらつきが口残りとしてやや感じられ、口溶けが劣ったため、加水焙煎ふすまのメディアン径は20〜100μmが好ましいことが示唆された。」

ウ 解決しようとする課題
本件特許明細書の段落0007の記載を含む発明の詳細な説明の記載からみて、本1発明〜本3発明及び本5発明〜本7発明の解決しようとする課題は『ふすまを含有しつつ穀物臭やえぐ味が少ない揚げ衣用ミックスの提供』にあるものと認められる。

エ 検討
(ア)不備1(加熱の温度など)について
本件特許明細書の段落0018(摘示b)には「単純な熱処理では穀物臭やえぐ味を低減できなかったが、本発明者は、鋭意検討の結果、加水焙煎処理によってふすまの穀物臭やえぐ味を低減できることを見出した。」との記載があり、同段落0070(摘示c)には「加水焙煎ふすまを含むから揚げは、風味と歯切れが良好で、油っぽさがなくドライ感があった。小麦ふすま処理時に加水しなかった熱処理小麦ふすまを含む比較例3及び4のから揚げは、風味が悪く、ドライ感は得られなかった。これらの結果から、加水焙煎ふすまを含有することで、穀物臭やえぐ味が少なく、歯切れが良好で、ドライ感があり油っぽくないから揚げが得られることが確認された。」との記載があるところ、これらの「作用機序の説明」及び「試験結果の裏付け」の記載からみて、上記『ふすまを含有しつつ穀物臭やえぐ味が少ない揚げ衣用ミックスの提供』という課題は、単純な熱処理と異なる「加水焙煎処理」を採用することで専ら解決できると認識することができる。
そして、同段落0069(提示c)の表2の実施例5〜7のものは、製造例1〜4の加水焙煎ふすまと異なる加熱温度、加熱時間、水分量で調製した製造例5〜7の加水焙煎ふすまを用いたものであるところ、このような加熱温度、加熱時間、水分量の条件の違いによって、その風味の評価が、4.5(実施例5)〜5.0(実施例6及び7)の範囲で変動していることが示されているものの、この程度の変動によっては、加熱温度、加熱時間、水分量の条件の違いによって、上記『ふすまを含有しつつ穀物臭やえぐ味が少ない揚げ衣用ミックスの提供』という課題の成否が大きく左右されるとまでは認識するに至らない。このため、本件特許の特許請求の範囲の記載において、加水焙煎処理の加熱の温度や時間、又は加水の量やタイミングなどの条件を特定せずとも、上記課題を解決できると当業者が認識できる範囲にあるものと認められる。
したがって、特許異議申立人が主張する〔不備1〕の理由によっては、本件特許の特許請求の範囲の記載が、発明の詳細な説明において開示されている技術的事項の範囲を超えているとはいえない。

(イ)不備2(α−アミラーゼ力価など)について
本件特許明細書の段落0017(摘記b)には「加水と加熱処理によって酵素が失活する」との記載があり、例えば特開2015−181463号公報(参考例B)の段落0023の「湿熱処理は…澱粉に損傷を与えない範囲で、アミラーゼやプロテアーゼ等の各種酵素を失活させる」との記載をも参酌するに、加水と加熱処理によって酵素が失活し、これにより「穀物臭やえぐ味」が低減されることは、本願出願時の当業者の技術常識であったと認められる。そして、このような技術常識に照らせば、本2発明の「α−アミラーゼ力価が150mU/g以下であり、中性プロテアーゼ力価が20U/g未満である」との記載にある力価の上限値は、単に湿熱処理による酵素失活の程度の指標を示したものとして理解されるので、特許異議申立人が主張する「α−アミラーゼ力価が86mU/g以下且つ中性プロテアーゼ力価が10U以下」にまで上限値を限定して、これを本1発明の発明特定事項としなければ、上記『ふすまを含有しつつ穀物臭やえぐ味が少ない揚げ衣用ミックスの提供』という課題が解決できないとまでは認識できない。
したがって、特許異議申立人が主張する〔不備2〕の理由によっては、本件特許の特許請求の範囲の記載が、発明の詳細な説明において開示されている技術的事項の範囲を超えているとはいえない。

(ウ)サポート要件のまとめ
以上総括するに、本件特許の請求項1及びその従属項の記載が、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載されたものではないとはいえないので、本件特許の請求項1〜3及び5〜7の記載が、特許法第36条第6項第1号に適合しないとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由、並びに特許異議申立人が申し立てた理由及び証拠によっては、訂正後の請求項1〜3及び5〜7に係る発明の特許を取り消すことができない。
また、他に訂正後の請求項1〜3及び5〜7に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、訂正前の請求項4は削除されているので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により、請求項4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
よって、結論のとおり決定する
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ふすまに対して加熱前および/または加熱途中で水分を加えて加熱処理を行うことにより得られ、粉末状であり、メディアン径が20〜100mである加水焙煎ふすまの含有量が0質量%超70質量%以下である、揚げ衣用ミックス。
【請求項2】
前記加水焙煎ふすまは、α−アミラーゼカ価が150mU/g以下であり、中性プロテアーゼ力価が20U/g未満である、請求項1に記載の揚げ衣用ミックス。
【請求項3】
前記加水焙煎ふすまは、L値が31以上である、請求項1又は2に記載の揚げ衣用ミックス。
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の揚げ衣用ミックスを含む、揚げ衣用バッター。
【請求項6】
衣を有し、請求項1〜3のいずれか一項に記載の揚げ衣用ミックス又は請求項5に記載の揚げ衣用バッターを前記衣に含む、揚げ物。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の揚げ衣用ミックス又は請求項5に記載の揚げ衣用バッターを具材に付着させ、油ちょうする、揚げ物の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-05-27 
出願番号 P2017-081398
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (A23L)
P 1 651・ 537- YAA (A23L)
P 1 651・ 113- YAA (A23L)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 瀬良 聡機
特許庁審判官 齊藤 真由美
木村 敏康
登録日 2021-01-22 
登録番号 6827874
権利者 昭和産業株式会社
発明の名称 揚げ衣用ミックス、揚げ衣用バッター、揚げ物及び揚げ物の製造方法  
代理人 渡邊 薫  
代理人 渡邊 薫  

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