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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01M
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  H01M
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H01M
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01M
管理番号 1388393
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-09-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-10-13 
確定日 2022-06-17 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6857272号発明「リチウムイオン二次電池」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6857272号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−13〕について訂正することを認める。 特許第6857272号の請求項1ないし13に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第6857272号の請求項1ないし13に係る特許についての出願は、平成29年11月6日(優先権主張 平成28年11月18日)に出願した特願2017−213417号の一部を令和2年8月12日に新たな出願としたものであって、令和3年3月23日にその特許権の設定登録がなされ、同年4月14日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許に対して特許異議の申立てがなされたものであり、以降の本件特許異議の申立てに係る手続の概要は以下のとおりである。
令和3年10月13日 特許異議申立人 浜 俊彦による請求項1ない し13に係る特許に対する特許異議の申立て
令和4年 1月20日付け 取消理由通知
令和4年 3月25日 特許権者による訂正請求書・意見書の提出

なお、令和4年3月31日付けで特許異議申立人に対して訂正請求があった旨の通知をし、意見書を提出する機会を与えたが提出されなかった。

第2 訂正の適否

1.訂正の内容
令和4年3月25日の訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)は、特許第6857272号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1ないし13について訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は、以下の訂正事項のとおりである。(なお、下線は訂正箇所を示す。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「正極活物質有する正極を備え、
前記正極活物質は、第1の領域乃至第3の領域を有し、
前記第1の領域は、リチウム及びコバルトを有し、
前記第2の領域は、アルミニウムを有し、
前記第3の領域は、マグネシウム及びフッ素を有し、
前記第3の領域は、STEM−EDXの線分析で検出されるマグネシウムの濃度が、ピークの1/5以上の領域であり、
前記第2の領域は、前記第1の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第3の領域は、前記第2の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第3の領域は、前記第1の領域の内部にも存在するリチウムイオン二次電池。」
とあるのを、
「正極活物質を有する正極を備え、
前記正極活物質は、第1の領域乃至第3の領域を有し、
前記第1の領域は、リチウム、コバルトを含む複合酸化物を有し、
前記第2の領域は、リチウム、アルミニウム、コバルト及び酸素を有し、
前記第3の領域は、マグネシウム、フッ素及び酸素を有し、
前記第3の領域は、STEM−EDXの線分析で検出されるマグネシウムの濃度が、ピークの1/5以上の領域であり、
前記第2の領域は、前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように前記第1の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第3の領域は、前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように前記第2の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第3の領域は、前記第1の領域の内部にも存在するリチウムイオン二次電池。」
に訂正する。
請求項1の記載を引用する請求項12、13も同様に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に、
「正極活物質を有する正極を備え、
前記正極活物質は、第1の領域乃至第3の領域を有し、
前記第1の領域は、リチウム及びコバルトを有し、
前記第2の領域は、アルミニウムを有し、
前記第3の領域は、マグネシウム及びフッ素を有し、
前記第2の領域は、STEM−EDXの線分析で検出されるアルミニウムの濃度が、ピークの1/2以上の領域であり、
前記第2の領域は、前記第1の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第3の領域は、前記第2の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第2の領域は、前記第1の領域の内部にも存在するリチウムイオン二次電池。」
とあるのを、
「正極活物質を有する正極を備え、
前記正極活物質は、第1の領域乃至第3の領域を有し、
前記第1の領域は、リチウム、コバルトを含む複合酸化物を有し、
前記第2の領域は、リチウム、アルミニウム、コバルト及び酸素を有し、
前記第3の領域は、マグネシウム、フッ素及び酸素を有し、
前記第2の領域は、STEM−EDXの線分析で検出されるアルミニウムの濃度が、ピークの1/2以上の領域であり、
前記第2の領域は、前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように前記第1の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第3の領域は、前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように前記第2の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第2の領域は、前記第1の領域の内部にも存在するリチウムイオン二次電池。」
に訂正する。
請求項2の記載を引用する請求項12、13も同様に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に、
「正極活物質を有する正極を備え、
前記正極活物質は、第1の領域乃至第3の領域を有し、
前記第1の領域は、リチウム及びコバルトを有し、
前記第2の領域は、アルミニウムを有し、
前記第3の領域は、マグネシウム及びフッ素を有し、
前記第2の領域は、STEM−EDXの線分析で検出されるアルミニウムの濃度が、ピークの1/2以上の領域であり、
前記第3の領域は、STEM−EDXの線分析で検出されるマグネシウムの濃度が、ピークの1/5以上の領域であり、
前記第2の領域は、前記第1の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第3の領域は、前記第2の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第2の領域及び前記第3の領域は、前記第1の領域の内部にも存在するリチウムイオン二次電池。」
とあるのを、
「正極活物質を有する正極を備え、
前記正極活物質は、第1の領域乃至第3の領域を有し、
前記第1の領域は、リチウム、コバルトを含む複合酸化物を有し、
前記第2の領域は、リチウム、アルミニウム、コバルト及び酸素を有し、
前記第3の領域は、マグネシウム、フッ素及び酸素を有し、
前記第2の領域は、STEM−EDXの線分析で検出されるアルミニウムの濃度が、ピークの1/2以上の領域であり、
前記第3の領域は、STEM−EDXの線分析で検出されるマグネシウムの濃度が、ピークの1/5以上の領域であり、
前記第2の領域は、前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように前記第1の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第3の領域は、前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように前記第2の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第2の領域及び前記第3の領域は、前記第1の領域の内部にも存在するリチウムイオン二次電池。」
に訂正する。
請求項3の記載を引用する請求項12、13も同様に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に、
「正極活物質と、導電助剤と、を有する正極を備え、
前記正極活物質は、第1の領域乃至第3の領域を有し、
前記第1の領域は、リチウム及びコバルトを有し、
前記第2の領域は、アルミニウムを有し、
前記第3の領域は、マグネシウム及びフッ素を有し、
前記第3の領域は、STEM−EDXの線分析で検出されるマグネシウムの濃度が、ピークの1/5以上の領域であり、
前記第2の領域は、前記第1の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第3の領域は、前記第2の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第3の領域は、前記第1の領域の内部にも存在し、
前記導電助剤は、炭素繊維を有するリチウムイオン二次電池。」
とあるのを、
「正極活物質と、導電助剤と、を有する正極を備え、
前記正極活物質は、第1の領域乃至第3の領域を有し、
前記第1の領域は、リチウム、コバルトを含む複合酸化物を有し、
前記第2の領域は、リチウム、アルミニウム、コバルト及び酸素を有し、
前記第3の領域は、マグネシウム、フッ素及び酸素を有し、
前記第3の領域は、STEM−EDXの線分析で検出されるマグネシウムの濃度が、ピークの1/5以上の領域であり、
前記第2の領域は、前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように前記第1の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第3の領域は、前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように前記第2の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第3の領域は、前記第1の領域の内部にも存在し、
前記導電助剤は、炭素繊維を有するリチウムイオン二次電池。」
に訂正する。
請求項4の記載を引用する請求項10乃至13も同様に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に、
「正極活物質と、導電助剤と、を有する正極を備え、
前記正極活物質は、第1の領域乃至第3の領域を有し、
前記第1の領域は、リチウム及びコバルトを有し、
前記第2の領域は、アルミニウムを有し、
前記第3の領域は、マグネシウム及びフッ素を有し、
前記第2の領域は、STEM−EDXの線分析で検出されるアルミニウムの濃度が、ピークの1/2以上の領域であり、
前記第2の領域は、前記第1の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第3の領域は、前記第2の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第2の領域は、前記第1の領域の内部にも存在し、
前記導電助剤は、炭素繊維を有するリチウムイオン二次電池。」
とあるのを、
「正極活物質と、導電助剤と、を有する正極を備え、
前記正極活物質は、第1の領域乃至第3の領域を有し、
前記第1の領域は、リチウム、コバルトを含む複合酸化物を有し、
前記第2の領域は、リチウム、アルミニウム、コバルト及び酸素を有し、
前記第3の領域は、マグネシウム、フッ素及び酸素を有し、
前記第2の領域は、STEM−EDXの線分析で検出されるアルミニウムの濃度が、ピークの1/2以上の領域であり、
前記第2の領域は、前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように前記第1の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第3の領域は、前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように前記第2の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第2の領域は、前記第1の領域の内部にも存在し、
前記導電助剤は、炭素繊維を有するリチウムイオン二次電池。」
に訂正する。
請求項5の記載を引用する請求項10乃至13も同様に訂正する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に、
「正極活物質と、導電助剤と、を有する正極を備え、
前記正極活物質は、第1の領域乃至第3の領域を有し、
前記第1の領域は、リチウム及びコバルトを有し、
前記第2の領域は、アルミニウムを有し、
前記第3の領域は、マグネシウム及びフッ素を有し、
前記第2の領域は、STEM−EDXの線分析で検出されるアルミニウムの濃度が、ピークの1/2以上の領域であり、
前記第3の領域は、STEM−EDXの線分析で検出されるマグネシウムの濃度が、ピークの1/5以上の領域であり、
前記第2の領域は、前記第1の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第3の領域は、前記第2の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第2の領域及び前記第3の領域は、前記第1の領域の内部にも存在し、
前記導電助剤は、炭素繊維を有するリチウムイオン二次電池。」
とあるのを、
「正極活物質と、導電助剤と、を有する正極を備え、
前記正極活物質は、第1の領域乃至第3の領域を有し、
前記第1の領域は、リチウム、コバルトを含む複合酸化物を有し、
前記第2の領域は、リチウム、アルミニウム、コバルト及び酸素を有し、
前記第3の領域は、マグネシウム、フッ素及び酸素を有し、
前記第2の領域は、STEM−EDXの線分析で検出されるアルミニウムの濃度が、ピークの1/2以上の領域であり、
前記第3の領域は、STEM−EDXの線分析で検出されるマグネシウムの濃度が、ピークの1/5以上の領域であり、
前記第2の領域は、前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように前記第1の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第3の領域は、前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように前記第2の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第2の領域及び前記第3の領域は、前記第1の領域の内部にも存在し、
前記導電助剤は、炭素繊維を有するリチウムイオン二次電池。」
に訂正する。
請求項6の記載を引用する請求項10乃至13も同様に訂正する。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7に、
「正極活物質と、導電助剤と、を有する正極を備え、
前記正極活物質は、第1の領域乃至第3の領域を有し、
前記第1の領域は、リチウム及びコバルトを有し、
前記第2の領域は、アルミニウムを有し、
前記第3の領域は、マグネシウム及びフッ素を有し、
前記第3の領域は、STEM−EDXの線分析で検出されるマグネシウムの濃度が、ピークの1/5以上の領域であり、
前記第2の領域は、前記第1の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第3の領域は、前記第2の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第3の領域は、前記第1の領域の内部にも存在し、
前記導電助剤は、グラフェン又はマルチグラフェンであるリチウムイオン二次電池。」
とあるのを、
「正極活物質と、導電助剤と、を有する正極を備え、
前記正極活物質は、第1の領域乃至第3の領域を有し、
前記第1の領域は、リチウム、コバルトを含む複合酸化物を有し、
前記第2の領域は、リチウム、アルミニウム、コバルト及び酸素を有し、
前記第3の領域は、マグネシウム、フッ素及び酸素を有し、
前記第3の領域は、STEM−EDXの線分析で検出されるマグネシウムの濃度が、ピークの1/5以上の領域であり、
前記第2の領域は、前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように前記第1の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第3の領域は、前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように前記第2の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第3の領域は、前記第1の領域の内部にも存在し、
前記導電助剤は、グラフェン又はマルチグラフェンであるリチウムイオン二次電池。」
に訂正する。
請求項7の記載を引用する請求項11乃至13も同様に訂正する。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8に、
「正極活物質と、導電助剤と、を有する正極を備え、
前記正極活物質は、第1の領域乃至第3の領域を有し、
前記第1の領域は、リチウム及びコバルトを有し、
前記第2の領域は、アルミニウムを有し、
前記第3の領域は、マグネシウム及びフッ素を有し、
前記第2の領域は、STEM−EDXの線分析で検出されるアルミニウムの濃度が、ピークの1/2以上の領域であり、
前記第2の領域は、前記第1の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第3の領域は、前記第2の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第2の領域は、前記第1の領域の内部にも存在し、
前記導電助剤は、グラフェン又はマルチグラフェンであるリチウムイオン二次電池。」
とあるのを、
「正極活物質と、導電助剤と、を有する正極を備え、
前記正極活物質は、第1の領域乃至第3の領域を有し、
前記第1の領域は、リチウム、コバルトを含む複合酸化物を有し、
前記第2の領域は、リチウム、アルミニウム、コバルト及び酸素を有し、
前記第3の領域は、マグネシウム、フッ素及び酸素を有し、
前記第2の領域は、STEM−EDXの線分析で検出されるアルミニウムの濃度が、ピークの1/2以上の領域であり、
前記第2の領域は、前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように前記第1の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第3の領域は、前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように前記第2の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第2の領域は、前記第1の領域の内部にも存在し、
前記導電助剤は、グラフェン又はマルチグラフェンであるリチウムイオン二次電池。」
に訂正する。
請求項8の記載を引用する請求項11乃至13も同様に訂正する。

(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項9に、
「正極活物質と、導電助剤と、を有する正極を備え、
前記正極活物質は、第1の領域乃至第3の領域を有し、
前記第1の領域は、リチウム及びコバルトを有し、
前記第2の領域は、アルミニウムを有し、
前記第3の領域は、マグネシウム及びフッ素を有し、
前記第2の領域は、STEM−EDXの線分析で検出されるアルミニウムの濃度が、ピークの1/2以上の領域であり、
前記第3の領域は、STEM−EDXの線分析で検出されるマグネシウムの濃度が、ピークの1/5以上の領域であり、
前記第2の領域は、前記第1の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第3の領域は、前記第2の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第2の領域及び前記第3の領域は、前記第1の領域の内部にも存在し、
前記導電助剤は、グラフェン又はマルチグラフェンであるリチウムイオン二次電池。」
とあるのを、
「正極活物質と、導電助剤と、を有する正極を備え、
前記正極活物質は、第1の領域乃至第3の領域を有し、
前記第1の領域は、リチウム、コバルトを含む複合酸化物を有し、
前記第2の領域は、リチウム、アルミニウム、コバルト及び酸素を有し、
前記第3の領域は、マグネシウム、フッ素及び酸素を有し、
前記第2の領域は、STEM−EDXの線分析で検出されるアルミニウムの濃度が、ピークの1/2以上の領域であり、
前記第3の領域は、STEM−EDXの線分析で検出されるマグネシウムの濃度が、ピークの1/5以上の領域であり、
前記第2の領域は、前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように前記第1の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第3の領域は、前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように前記第2の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第2の領域及び前記第3の領域は、前記第1の領域の内部にも存在し、
前記導電助剤は、グラフェン又はマルチグラフェンであるリチウムイオン二次電池。」
に訂正する。
請求項9の記載を引用する請求項11乃至13も同様に訂正する。

2.訂正の適否についての判断
(1)一群の請求項について
訂正前の請求項1ないし3、12、13は、請求項12、13が、訂正の対象である請求項1、2、3の記載を引用する関係にあるから、一群の請求項であり、これら訂正前の請求項1ないし3、12、13に対応する訂正後の請求項1ないし3、12、13も一群の請求項である。
訂正前の請求項4ないし6、10ないし13は、請求項10ないし13が、訂正の対象である請求項4、5、6の記載を引用する関係にあるから、一群の請求項であり、これら訂正前の請求項4ないし6、10ないし13に対応する訂正後の請求項4ないし6、10ないし13も一群の請求項である。
訂正前の請求項7ないし9、11ないし13は、請求項11ないし13が、訂正の対象である請求項7、8、9の記載を引用する関係にあるから、一群の請求項であり、これら訂正前の請求項7ないし9、11ないし13に対応する訂正後の請求項7ないし9、11ないし13も一群の請求項である。
そして、これら3つの一群の請求項は、請求項12、13を共通して有しているから組み合わされ、請求項1ないし13が一群の請求項となる。
したがって、本件訂正請求は、一群の請求項ごとにされたものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア.訂正事項1について
訂正事項1は、請求項1において、「正極活物質有する正極を備え」との記載が、請求項2や請求項3の記載のように「正極活物質を有する正極を備え」の誤記(「を」の脱字)であることから、これを訂正するものである。
また、訂正事項1は、請求項1に係る発明において、「第1の領域」について「複合酸化物」として有すること、「第2の領域」についてアルミニウムに加えて「リチウム」・「コバルト及び酸素」を有すること、「第3の領域」についてマグネシウム、フッ素に加えて「酸素」を有することの限定をそれぞれ付加するとともに、さらに、「第2の領域」について「前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように」前記第1の領域の少なくとも一部を被覆するものであること、「第3の領域」について「前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように」前記第2の領域の少なくとも一部を被覆するものであることの限定をそれぞれ付加するものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」、及び第2号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものである。

そして、「第1の領域」について「複合酸化物」として有することの限定に関して、本件明細書の段落【0037】〜【0038】に「第1の領域101は、リチウムと、遷移金属と、酸素と、を有する。第1の領域101はリチウムと遷移金属を含む複合酸化物を有するといってもよい。・・・第1の領域101が有する遷移金属としてコバルトのみを用いてもよいし、コバルトとマンガンの2種を用いてもよいし、コバルト、マンガン、ニッケルの3種を用いてもよい。」と記載され、「第2の領域」についてアルミニウムに加えて「リチウム」・「コバルト及び酸素」を有することの限定に関して、本件明細書の段落【0044】には「第2の領域102はリチウムと、アルミニウムと、遷移金属と、酸素と、を有する。・・・第2の領域102が有する遷移金属は、第1の領域101が有する遷移金属と同じ元素であることが好ましい。」と記載され、「第3の領域」についてマグネシウム、フッ素に加えて「酸素」を有することの限定に関して、本件明細書の段落【0050】〜【0051】に「第3の領域103は、マグネシウムと、酸素と、を有する。・・・さらに、第3の領域103は、フッ素を有していてもよい。」と記載されている。さらに、「第2の領域」について「前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように」前記第1の領域の少なくとも一部を被覆するものであることの限定に関して、本件明細書の段落【0047】には「しかしながら本発明の一態様の正極活物質100は、表層部にアルミニウムを有する第2の領域102を有するため、第1の領域101が有するリチウムと遷移金属を含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能である。」と記載され、「第3の領域」について「前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように」前記第2の領域の少なくとも一部を被覆するものであることの限定に関して、本件明細書の段落【0052】には「第3の領域103が有する酸化マグネシウムは電気化学的に安定な材料であるため、充放電を繰り返しても劣化が生じにくく被覆層として好適である。つまり正極活物質100は、表層部に第2の領域102に加えて第3の領域103を有することで、第1の領域101が有するリチウムと遷移金属を含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能である。」と記載されている。
したがってこれらの記載によれば、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるといえ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
また、上述のとおり訂正事項1は、誤記(「を」の脱字)を訂正するとともに、「第1の領域」、「第2の領域」及び「第3の領域」についての限定を付加することによって特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

イ.訂正事項2ないし9について
訂正事項2ないし9は、それぞれ請求項2ないし9に係る発明において、「第1の領域」について「複合酸化物」として有すること、「第2の領域」についてアルミニウムに加えて「リチウム」・「コバルト及び酸素」を有すること、「第3の領域」についてマグネシウム、フッ素に加えて「酸素」を有することの限定をそれぞれ付加するとともに、さらに、「第2の領域」について「前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように」前記第1の領域の少なくとも一部を被覆するものであること、「第3の領域」について「前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように」前記第2の領域の少なくとも一部を被覆するものであることの限定をそれぞれ付加するものである。
したがって、訂正事項2ないし9はいずれも、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

そして、「第1の領域」について「複合酸化物」として有することの限定に関して、本件明細書の段落【0037】〜【0038】に「第1の領域101は、リチウムと、遷移金属と、酸素と、を有する。第1の領域101はリチウムと遷移金属を含む複合酸化物を有するといってもよい。・・・第1の領域101が有する遷移金属としてコバルトのみを用いてもよいし、コバルトとマンガンの2種を用いてもよいし、コバルト、マンガン、ニッケルの3種を用いてもよい。」と記載され、「第2の領域」についてアルミニウムに加えて「リチウム」・「コバルト及び酸素」を有することの限定に関して、本件明細書の段落【0044】には「第2の領域102はリチウムと、アルミニウムと、遷移金属と、酸素と、を有する。・・・第2の領域102が有する遷移金属は、第1の領域101が有する遷移金属と同じ元素であることが好ましい。」と記載され、「第3の領域」についてマグネシウム、フッ素に加えて「酸素」を有することの限定に関して、本件明細書の段落【0050】〜【0051】に「第3の領域103は、マグネシウムと、酸素と、を有する。・・・さらに、第3の領域103は、フッ素を有していてもよい。」と記載されている。さらに、「第2の領域」について「前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように」前記第1の領域の少なくとも一部を被覆するものであることの限定に関して、本件明細書の段落【0047】には「しかしながら本発明の一態様の正極活物質100は、表層部にアルミニウムを有する第2の領域102を有するため、第1の領域101が有するリチウムと遷移金属を含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能である。」と記載され、「第3の領域」について「前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように」前記第2の領域の少なくとも一部を被覆するものであることの限定に関して、本件明細書の段落【0052】には「第3の領域103が有する酸化マグネシウムは電気化学的に安定な材料であるため、充放電を繰り返しても劣化が生じにくく被覆層として好適である。つまり正極活物質100は、表層部に第2の領域102に加えて第3の領域103を有することで、第1の領域101が有するリチウムと遷移金属を含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能である。」と記載されている。
したがってこれらの記載によれば、訂正事項2ないし9はいずれも、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるといえ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
また、上述のとおり訂正事項2ないし9はいずれも、「第1の領域」、「第2の領域」及び「第3の領域」についての限定を付加することによって特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(3)独立特許要件について
訂正事項1については「特許請求の範囲の減縮」及び「誤記又は誤訳の訂正」を目的とし、訂正事項2ないし9については「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであるが、本件においては、訂正前の請求項1ないし13の全請求項について特許異議の申立てがなされているので、訂正前の請求項1ないし13に係る訂正事項1ないし9に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

3.訂正の適否についてのむすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第2号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−13〕について訂正することを認める。

第3 当審の判断

1.本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1ないし13に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明13」という。)は、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(なお、下線は訂正された箇所を示す。)
「【請求項1】
正極活物質を有する正極を備え、
前記正極活物質は、第1の領域乃至第3の領域を有し、
前記第1の領域は、リチウム、コバルトを含む複合酸化物を有し、
前記第2の領域は、リチウム、アルミニウム、コバルト及び酸素を有し、
前記第3の領域は、マグネシウム、フッ素及び酸素を有し、
前記第3の領域は、STEM−EDXの線分析で検出されるマグネシウムの濃度が、ピークの1/5以上の領域であり、
前記第2の領域は、前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように前記第1の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第3の領域は、前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように前記第2の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第3の領域は、前記第1の領域の内部にも存在するリチウムイオン二次電池。
【請求項2】
正極活物質を有する正極を備え、
前記正極活物質は、第1の領域乃至第3の領域を有し、
前記第1の領域は、リチウム、コバルトを含む複合酸化物を有し、
前記第2の領域は、リチウム、アルミニウム、コバルト及び酸素を有し、
前記第3の領域は、マグネシウム、フッ素及び酸素を有し、
前記第2の領域は、STEM−EDXの線分析で検出されるアルミニウムの濃度が、ピークの1/2以上の領域であり、
前記第2の領域は、前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように前記第1の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第3の領域は、前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように前記第2の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第2の領域は、前記第1の領域の内部にも存在するリチウムイオン二次電池。
【請求項3】
正極活物質を有する正極を備え、
前記正極活物質は、第1の領域乃至第3の領域を有し、
前記第1の領域は、リチウム、コバルトを含む複合酸化物を有し、
前記第2の領域は、リチウム、アルミニウム、コバルト及び酸素を有し、
前記第3の領域は、マグネシウム、フッ素及び酸素を有し、
前記第2の領域は、STEM−EDXの線分析で検出されるアルミニウムの濃度が、ピークの1/2以上の領域であり、
前記第3の領域は、STEM−EDXの線分析で検出されるマグネシウムの濃度が、ピークの1/5以上の領域であり、
前記第2の領域は、前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように前記第1の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第3の領域は、前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように前記第2の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第2の領域及び前記第3の領域は、前記第1の領域の内部にも存在するリチウムイオン二次電池。
【請求項4】
正極活物質と、導電助剤と、を有する正極を備え、
前記正極活物質は、第1の領域乃至第3の領域を有し、
前記第1の領域は、リチウム、コバルトを含む複合酸化物を有し、
前記第2の領域は、リチウム、アルミニウム、コバルト及び酸素を有し、
前記第3の領域は、マグネシウム、フッ素及び酸素を有し、
前記第3の領域は、STEM−EDXの線分析で検出されるマグネシウムの濃度が、ピークの1/5以上の領域であり、
前記第2の領域は、前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように前記第1の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第3の領域は、前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように前記第2の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第3の領域は、前記第1の領域の内部にも存在し、
前記導電助剤は、炭素繊維を有するリチウムイオン二次電池。
【請求項5】
正極活物質と、導電助剤と、を有する正極を備え、
前記正極活物質は、第1の領域乃至第3の領域を有し、
前記第1の領域は、リチウム、コバルトを含む複合酸化物を有し、
前記第2の領域は、リチウム、アルミニウム、コバルト及び酸素を有し、
前記第3の領域は、マグネシウム、フッ素及び酸素を有し、
前記第2の領域は、STEM−EDXの線分析で検出されるアルミニウムの濃度が、ピークの1/2以上の領域であり、
前記第2の領域は、前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように前記第1の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第3の領域は、前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように前記第2の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第2の領域は、前記第1の領域の内部にも存在し、
前記導電助剤は、炭素繊維を有するリチウムイオン二次電池。
【請求項6】
正極活物質と、導電助剤と、を有する正極を備え、
前記正極活物質は、第1の領域乃至第3の領域を有し、
前記第1の領域は、リチウム、コバルトを含む複合酸化物を有し、
前記第2の領域は、リチウム、アルミニウム、コバルト及び酸素を有し、
前記第3の領域は、マグネシウム、フッ素及び酸素を有し、
前記第2の領域は、STEM−EDXの線分析で検出されるアルミニウムの濃度が、ピークの1/2以上の領域であり、
前記第3の領域は、STEM−EDXの線分析で検出されるマグネシウムの濃度が、ピークの1/5以上の領域であり、
前記第2の領域は、前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように前記第1の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第3の領域は、前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように前記第2の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第2の領域及び前記第3の領域は、前記第1の領域の内部にも存在し、
前記導電助剤は、炭素繊維を有するリチウムイオン二次電池。
【請求項7】
正極活物質と、導電助剤と、を有する正極を備え、
前記正極活物質は、第1の領域乃至第3の領域を有し、
前記第1の領域は、リチウム、コバルトを含む複合酸化物を有し、
前記第2の領域は、リチウム、アルミニウム、コバルト及び酸素を有し、
前記第3の領域は、マグネシウム、フッ素及び酸素を有し、
前記第3の領域は、STEM−EDXの線分析で検出されるマグネシウムの濃度が、ピークの1/5以上の領域であり、
前記第2の領域は、前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように前記第1の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第3の領域は、前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように前記第2の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第3の領域は、前記第1の領域の内部にも存在し、
前記導電助剤は、グラフェン又はマルチグラフェンであるリチウムイオン二次電池。
【請求項8】
正極活物質と、導電助剤と、を有する正極を備え、
前記正極活物質は、第1の領域乃至第3の領域を有し、
前記第1の領域は、リチウム、コバルトを含む複合酸化物を有し、
前記第2の領域は、リチウム、アルミニウム、コバルト及び酸素を有し、
前記第3の領域は、マグネシウム、フッ素及び酸素を有し、
前記第2の領域は、STEM−EDXの線分析で検出されるアルミニウムの濃度が、ピークの1/2以上の領域であり、
前記第2の領域は、前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように前記第1の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第3の領域は、前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように前記第2の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第2の領域は、前記第1の領域の内部にも存在し、
前記導電助剤は、グラフェン又はマルチグラフェンであるリチウムイオン二次電池。
【請求項9】
正極活物質と、導電助剤と、を有する正極を備え、
前記正極活物質は、第1の領域乃至第3の領域を有し、
前記第1の領域は、リチウム、コバルトを含む複合酸化物を有し、
前記第2の領域は、リチウム、アルミニウム、コバルト及び酸素を有し、
前記第3の領域は、マグネシウム、フッ素及び酸素を有し、
前記第2の領域は、STEM−EDXの線分析で検出されるアルミニウムの濃度が、ピークの1/2以上の領域であり、
前記第3の領域は、STEM−EDXの線分析で検出されるマグネシウムの濃度が、ピークの1/5以上の領域であり、
前記第2の領域は、前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように前記第1の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第3の領域は、前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように前記第2の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第2の領域及び前記第3の領域は、前記第1の領域の内部にも存在し、
前記導電助剤は、グラフェン又はマルチグラフェンであるリチウムイオン二次電池。
【請求項10】
請求項4乃至請求項6のいずれか一において、
前記炭素繊維は、カーボンナノファイバーまたはカーボンナノチューブであるリチウムイオン二次電池。
【請求項11】
請求項4乃至請求項9のいずれか一において、
正極活物質層の総量に対する前記導電助剤の含有量は、1wt%以上10wt%以下であるリチウムイオン二次電池。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11のいずれか一において、
前記第1の領域は、ニッケル及びマンガンを有するリチウムイオン二次電池。
【請求項13】
請求項1乃至請求項12のいずれか一において、
前記正極活物質のメディアン径は、1μm以上40μm以下であるリチウムイオン二次電池。」

2.取消理由通知に記載した取消理由について
(1)取消理由の概要
令和4年1月20日付けで通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
(1−1)理由A(進歩性
下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の引用例に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

・請求項1ないし3、12、13に対して引用例1
・請求項4ないし6、10ないし13に対して引用例1ないし4
・請求項7ないし9、11ないし13に対して引用例1、3ないし6
<<引用例一覧>>
引用例1:特開2009−104805号公報(甲第2号証)
引用例2:特開平7−14582号公報(甲第3号証)
引用例3:特開2014−241193号公報(甲第4号証)
引用例4:特開2016−25077号公報(甲第5号証)
引用例5:特表2013−516037号公報(甲第6号証)
引用例6:特表2015−520109号公報(甲第7号証)

(1−2)理由B(サポート要件)
請求項1ないし13に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

ア.請求項1において「前記第1の領域は、リチウム及びコバルトを有し、前記第2の領域は、アルミニウムを有し、前記第3の領域は、マグネシウム及びフッ素を有し」と記載されている。
上記記載によれば、第1の領域としては単に「リチウム及びコバルト」を有することのみ特定され、例えばリチウム及びコバルトを含む複合酸化物以外の「酸素」を有しないようなものも含まれている。また、第2の領域としては単に「アルミニウム」を有することのみ特定され、例えば複合酸化物を構成する「リチウム」、「コバルト」、「酸素」を有しないものも含まれ、さらに、第3の領域としては単に「マグネシウム及びフッ素」を有することのみ特定され、「酸素」を有しないものも含まれている。
しかしながら、発明の詳細な説明には、第1の領域はリチウムと遷移金属(コバルト)と酸素を有すること、すなわちリチウムと遷移金属(コバルト)を含む複合酸化物であることが記載(段落【0037】〜【0039】、【0047】、【0052】、【0350】、【0354】等)されているのみであり、リチウム及びコバルトを含む複合酸化物以外の「酸素」を有しないようなものを含み得ることの記載はない。また、第2の領域はリチウムとアルミニウムと遷移金属(コバルト)と酸素を有することが記載(段落【0044】、【0046】、【0350】、【0354】等)されており、「リチウム」、「コバルト」、「酸素」(中でも「酸素」)を有しないものを含み得ることの記載はない。さらに、第3の領域はマグネシウムとフッ素のみでなく、酸素も有することが記載(段落【0050】〜【0052】、【0350】、【0354】等)されており、「酸素」を有しないものを含み得ることの記載はない。
以上のことを踏まえると、本件請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えているといえ、出願時の技術常識に照らしても、本件請求項1に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないから、本件請求項1に係る発明及び請求項1を引用する請求項12,13に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものとは認められない。

イ.上記「ア.」にも関連して「第1の領域」について、請求項1には「第1の領域は、リチウム及びコバルトを有し」とだけ記載され、第1の領域が所定の結晶構造を有することの特定はなされていない。
しかしながら、発明の詳細な説明の段落【0037】〜【0039】、【0043】、【0047】、【0052】等の記載によれば、本件の発明は、第1の領域がリチウムと遷移金属(コバルト)と酸素を有し、少なくともリチウムと遷移金属(コバルト)を含む複合酸化物の結晶構造を有することを前提とする発明であると解される。
したがって、かかる結晶構造に関する前提構成の特定がない請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えているといえ、出願時の技術常識に照らしても、本件請求項1に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないから、本件請求項1に係る発明及び請求項1を引用する請求項12,13に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものとは認められない。

ウ.請求項1において「前記第2の領域は、前記第1の領域の少なくとも一部を被覆し、前記第3の領域は、前記第2の領域の少なくとも一部を被覆し、」と記載されている。
上記記載によれば、下線を付した「少なくとも一部」の下限については特定がないから、第2の領域は第1の領域をごく僅かでも被覆していればよく、同様に、第3の領域は第2の領域をごく僅かでも被覆していればよいものと解される。
しかしながら、発明の詳細な説明には、第2の領域の役割について段落【0047】に「・・しかしながら本発明の一態様の正極活物質100は、表層部にアルミニウムを有する第2の領域102を有するため、第1の領域101が有するリチウムと遷移金属を含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能である。そのため正極活物質100を有する二次電池のサイクル特性を向上することができる。」と記載され、また、第3の領域の役割について段落【0052】に「第3の領域103が有する酸化マグネシウムは電気化学的に安定な材料であるため、充放電を繰り返しても劣化が生じにくく被覆層として好適である。つまり正極活物質100は、表層部に第2の領域102に加えて第3の領域103を有することで、第1の領域101が有するリチウムと遷移金属を含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能である。そのため正極活物質100を有する二次電池のサイクル特定を向上させることができる。・・」と記載されているところ、上述したように第2の領域が第1の領域のごく僅かな部分のみ被覆する場合や、第3の領域が第2の領域のごく僅かな部分のみ被覆する場合にあっても、第1の領域が有するリチウムと遷移金属を含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能であるとまでは解し得ない。
したがって、本件請求項1に係る発明は、発明の課題を解決するための手段が適切に反映されておらず、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求するものであるといえ、本件請求項1に係る発明及び請求項1を引用する請求項12,13に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものとは認められない。

エ.独立形式で記載された請求項2についても、上記「ア.」ないし「ウ.」と同様のことがいえる。
よって、請求項2に係る発明及び請求項2を引用する請求項12,13に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。

オ.独立形式で記載された請求項3についても、上記「ア.」ないし「ウ.」と同様のことがいえる。
よって、請求項3に係る発明及び請求項3を引用する請求項12,13に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。

カ.独立形式で記載された請求項4についても、上記「ア.」ないし「ウ.」と同様のことがいえる。
よって、請求項4に係る発明及び請求項4を引用する請求項10ないし13に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。

キ.独立形式で記載された請求項5についても、上記「ア.」ないし「ウ.」と同様のことがいえる。
よって、請求項5に係る発明及び請求項5を引用する請求項10ないし13に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。

ク.独立形式で記載された請求項6についても、上記「ア.」ないし「ウ.」と同様のことがいえる。
よって、請求項6に係る発明及び請求項6を引用する請求項10ないし13に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。

ケ.独立形式で記載された請求項7についても、上記「ア.」ないし「ウ.」と同様のことがいえる。
よって、請求項7に係る発明及び請求項7を引用する請求項11ないし13に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。

コ.独立形式で記載された請求項8についても、上記「ア.」ないし「ウ.」)と同様のことがいえる。
よって、請求項8に係る発明及び請求項8を引用する請求項11ないし13に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。

サ.独立形式で記載された請求項9についても、上記「ア.」ないし「ウ.」と同様のことがいえる。
よって、請求項9に係る発明及び請求項9を引用する請求項11ないし13に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。

(2)引用例1の記載事項
取消理由通知において引用した引用例1(特開2009−104805号公報、甲第2号証)には、「非水電解質二次電池」について、以下の各記載がある。なお、下線は当審で付与した。
ア.「【請求項11】
正極活物質を有する正極と、負極と、セパレータと、電解質と
を備え、
上記正極は、
リチウムと、1または複数の遷移金属とを少なくとも含む複合酸化物粒子と、
上記複合酸化物粒子の少なくとも一部に設けられる被覆層と
を備え、
上記被覆層は、
上記複合酸化物粒子を構成する主要遷移金属元素とは異なり、2族〜16族から選ばれる少なくとも1種の元素Mと、
ハロゲン元素Xと
を含み、
上記被覆層において、上記元素Mと上記ハロゲン元素Xとが異なる分布を呈する活物質層を含む
ことを特徴とする非水電解質二次電池。」

イ.「【0041】
(1)第1の実施形態
(1−1)正極活物質
この発明の第1の実施形態の二次電池に用いる正極活物質は、母粒子となる複合酸化物粒子の少なくとも一部に、2族〜16族から選ばれ、複合酸化物粒子に含まれる主要遷移金属元素とは異なる少なくとも1種の元素Mと、ハロゲン元素Xとを含む被覆層が設けられ、この被覆層において元素Mとハロゲン元素Xとは異なる分布を呈するものである。
【0042】
[複合酸化物粒子]
母粒子となる複合酸化物粒子は、リチウム(Li)と、1または複数の遷移金属とを少なくとも含むリチウム含有遷移金属酸化物であり、リチウムを吸蔵および放出できるものであれば特に限定されないが、高容量化の点からは、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)など、層状岩塩型の構造を有するリチウム含有遷移金属酸化物が好ましい。
・・・・・(中 略)・・・・・
【0045】
なお、複合酸化物粒子を構成する主要遷移金属元素とは、複合酸化物粒子を構成する遷移金属のうち最も比率の大きい遷移金属を意味する。例えば、平均組成がLiCo0.98Al0.01Mg0.01O2の複合酸化物粒子の場合、主要遷移金属元素はコバルト(Co)を示す。
【0046】
[被覆層]
被覆層は、複合酸化物粒子の少なくとも一部に設けられ、複合酸化物粒子に含まれる遷移金属を実質的に構成する主要遷移金属元素とは異なり、2族〜16族から選ばれる少なくとも1種の元素Mと、ハロゲン元素Xとを含むものである。」

ウ.「【0049】
元素Mは、複合酸化物粒子表面にほぼ均一に分布して被覆層を形成することが好ましい。元素Mを含む被覆層が複合酸化物粒子の表面を被覆することにより、複合酸化物粒子に含まれる主要遷移金属元素の溶出を抑制したり、電解液との反応を抑制したりでき、電池特性の劣化を抑制することができるからである。
【0050】
このような元素Mとしては、正極活物質に用いられてきたコバルト酸リチウムに対して従来から置換、添加、被覆などが行われてきた2族〜16族の元素を用いることができる。
【0051】
また、元素Mとしては、マンガン(Mn)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、ビスマス(Bi)、モリブデン(Mo)およびイットリウム(Y)から選ばれる少なくとも1種の元素を含むことが好ましく、複合酸化物粒子および被覆層を備える正極活物質において、複合酸化物粒子に含まれる元素Mの元素組成は、0<M/(A+M)<0.1の関係を満たすことが好ましい。元素Mは活物質の安定化に寄与するが、その比率が0.1以上となると、電池容量に寄与しない元素Mが多くなり、正極活物質そのものの容量低下が大きくなってしまうからである。
【0052】
一方、ハロゲン元素Xは、複合酸化物粒子表面に点在するように分布して被覆層を形成することが好ましい。ハロゲン元素Xを含む被覆層によるリチウムの吸蔵放出の阻害を抑制することができるからである。なお、ハロゲン元素Xは、例えば複合酸化物粒子表面に偏在してもいいし、表面全体に複数点で点在してもよい。また、ハロゲン元素Xは、元素Mを含む被覆層の上に点在して分布してもよい。
【0053】
ハロゲン元素Xは、例えばLiFで代表されるようなM'aXbで表されるハロゲン化物の状態で表面に点在することが好ましい。これは、被覆材として用いたXが、複合酸化物粒子表面でM'aXbとして存在することで、複合酸化物粒子に存在する余剰な元素M'を安定化し、電池特性の向上を図ることができるからである。例えば、水酸化リチウム(LiOH)や炭酸リチウム(Li2CO3)といった余剰なリチウム(Li)化合物は、ガス発生を引き起こして電池特性を悪化させる原因となるため、ハロゲン化物として安定化させることで電池特性の向上を図ることができると考えられる。LiFで表されるようなハロゲン化物はリチウムイオン伝導性が低く、複合酸化物粒子表面を完全に被覆してしまうとリチウムの吸蔵および放出の妨げとなるが、上述のように複合酸化物粒子表面に点在するような状態で存在することにより、高容量化とガス発生の抑制とを両立することができる。なお、M'aXbで表される化合物は結晶性であることが好ましい。M'aXbを結晶化することで粒子表面への点在が促進されるからである。」

エ.「【0060】
正極活物質として、例えばコバルト酸リチウム(LiCoO2)やニッケル酸リチウム(LiNiO2)をはじめとする複合酸化物粒子を用い、適切に正極および負極比を設計した状態で、上限充電電圧が4.20V、好ましくは4.35V以上、より好ましくは4.40V以上になるように充電を行うことで、二次電池のエネルギー密度を向上させることが可能である。しかしながら、4.20V以上に充電した電池では、正極活物質は高い起電力を発生するため、正極活物質と接触する電解質が強い酸化環境にある。これにより、リチウム(Li)をより多く引き抜かれることによって不安定になった正極活物質から金属成分が溶出して正極活物質が劣化したり、正極活物質から溶出した金属成分が負極側に還元析出することにより負極表面が覆われ、リチウムの吸蔵放出が妨げられたりすると考えられる。また、正極活物質と電解液との界面での反応性が上がるため、界面での電解液の酸化分解が生じて電解質の劣化が加速したりすると考えられる。また、正極上で電解質が酸化分解してガスが発生したり、正極上に皮膜が生成することにより、電池が膨れたり、インピーダンスが上昇することが考えられる。このように、充電時に正極活物質や電解液の劣化が生じることにより、充放電サイクル特性の劣化や電池内部におけるガス発生が生じるものと推測される。
【0061】
これに対し、この発明の第1の実施形態の二次電池に用いる正極活物質では、複合酸化物粒子表面に元素Mを含む被覆層が設けられるため、複合酸化物粒子に含まれる主要遷移金属元素の溶出を抑制し、サイクル特性の劣化を抑制していると考えられる。また、被覆層にはハロゲン元素Xが含まれることから、ハロゲン元素Xが複合酸化物粒子表面の不純分(例えばLiOHやLi2CO3といった余剰なリチウム(Li)化合物)と反応して正極活物質を安定化させることなどによってガス発生を抑制すると共に、被覆層におけるハロゲン元素Xの分布が元素Mに比べて小さく、リチウムの吸蔵放出の妨げにならないため、高容量化とサイクル特性の向上の両立に寄与していると考えられる。」

オ.「【0062】
(1−2)二次電池の構成
図1は、この発明の第1の実施形態による二次電池の断面構造を表すものである。この二次電池は、例えば、非水電解質二次電池であり、電極反応物質としてリチウム(Li)を用い、負極の容量が、リチウム(Li)の吸蔵および放出による容量成分により表されるいわゆるリチウムイオン二次電池である。」

カ.「【0129】
<実施例1>
[正極の作製]
正極活物質の作製方法を以下に示す。まず、母粒子となる複合酸化物粒子として、レーザー散乱法により測定した平均粒子径が13μmのコバルト酸リチウム(LiCoO2)を用意した。次に、被覆材として、コバルト酸リチウム(LiCoO2)に対して原子比でコバルト(Co):マンガン(Mn)=100:2となるように炭酸マンガン(MnCO3)を秤量し、混合した。続いて、コバルト酸リチウム(LiCoO2)と炭酸マンガン(MnCO3)との混合粉末を、メカノケミカル装置を用いて1時間処理し、コバルト酸リチウム(LiCoO2)表面にMnCO3を被着させ、焼成前駆体を作製した。この焼成前駆体を毎分3℃の速度で昇温し、900℃で3時間熱処理した後に徐冷し、マンガン(Mn)がコバルト酸リチウム(LiCoO2)表面に均一に分布した粒子を得た。
【0130】
さらに、この粒子100重量部に対して原子比でコバルト(Co):フッ素(F)=100:2となるようにフッ化リチウム(LiF)を秤量、混合し、同様に800℃で熱処理することにより、正極活物質を得た。
【0131】
得られた正極活物質の粉末を、SEM/EDXにより観察した。図7Aは、実施例1の正極活物質粒子断面のコバルト(Co)の分布を示すSEM/EDX像である。図7Aにおいて、コバルト(Co)は白色の部分である。図7Bは、図7Aに示す正極活物質粒子断面のマンガン(Mn)の分布を示すSEM/EDX像である。図7Bにおいて、マンガン(Mn)は白色の部分である。また、図7Cは、図7Aに示す正極活物質粒子断面のフッ素(F)の分布を示すSEM/EDX像である。図7Cにおいて、フッ素(F)は白色の部分である。図7Aないし図7Cに示すように、マンガン(Mn)はコバルト(Co)を含む複合酸化物粒子の表面に均一に分布しており、フッ素(F)は複合酸化物粒子の表面に点在していることが確認された。
【0132】
また、この粉末について、長波長のCuKαを用いた粉末X線回折(XRD:X-ray diffraction)パターンを測定したところ、層状岩塩構造を有するLiCoO2に相当する回折ピークに加えてLiFの回折ピークが確認された。
【0133】
さらに、XPSにより正極活物質粒子表面の元素比率を測定したところ、元素Aはコバルト(Co)、元素MはCoを除く2〜16族の元素、元素M’はLi、ハロゲン元素XはFを示すものとして、A/(M+M’+X+A)=Co/(Mn+Li+F+Co)は0.26であった。
【0134】
以上のようにして得られた正極活物質を用い、以下に説明するようにして、正極を作製した。まず、上述の正極活物質98wt%と、導電剤としてアモルファス性炭素粉(ケッチェンブラック)0.8wt%と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)1.2wt%とを混合して正極合剤を調製した。この正極合剤をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に分散させて正極合剤スラリーを作製した後、この正極合剤スラリーを厚み20μmの帯状アルミニウム箔よりなる正極集電体の両面に均一に塗布した。得られた塗布物を温風乾燥した後、ロールプレス機で圧縮成型し、正極活物質層を形成した。その後、正極集電体の一端にアルミニウム製の正極リードを取り付けた。」

キ.「【0176】
<実施例11>
フッ化リチウム(LiF)に替えてフッ化マグネシウム(MgF2)を混合した以外は実施例1と同様にして正極活物質を得た。
【0177】
得られた正極活物質の粉末を、SEM/EDXにより観察したところ、マンガン(Mn)はコバルト(Co)を含む複合酸化物粒子の表面に均一に分布しており、フッ素(F)は複合酸化物粒子の表面に点在していることが確認された。
【0178】
また、この粉末について、長波長のCuKαを用いた粉末X線回折パターンを測定したところ、層状岩塩構造を有するLiCoO2に相当する回折ピークに加えてMgF2の回折ピークが確認された。
【0179】
さらに、XPSにより正極活物質粒子表面の元素比率を測定したところ、A/(M+M’+X+A)=Co/(Mn+Mg+F+Co)は0.28であった。
【0180】
以上のようにして得られた二次電池について、実施例1と同様にして(a)ないし(c)の電池特性を評価した。」

ク.「【0191】
<実施例14>
炭酸マンガン(MnCO3)に替えて水酸化アルミニウム(Al(OH)3)を混合した以外は実施例1と同様にして正極活物質を得た。
【0192】
得られた正極活物質の粉末を、SEM/EDXにより観察したところ、アルミニウム(Al)はコバルト(Co)を含む複合酸化物粒子の表面に均一に分布しており、フッ素(F)は複合酸化物粒子の表面に点在していることが確認された。
【0193】
また、この粉末について、長波長のCuKαを用いた粉末X線回折パターンを測定したところ、層状岩塩構造を有するLiCoO2に相当する回折ピークに加えてLiFの回折ピークが確認された。
【0194】
さらに、XPSにより正極活物質粒子表面の元素比率を測定したところ、A/(M+M’+X+A)=Co/(Al+Li+F+Co)は0.23であった。
【0195】
以上のようにして得られた二次電池について、実施例1と同様にして(a)ないし(c)の電池特性を評価した。」

ケ.「【0247】
以下の表1に、電池特性の評価を示す。



上記「ア.」ないし「ケ.」から以下のことがいえる。
・引用例1に記載の「非水電解質二次電池」は、上記「オ.」の記載によれば、いわゆるリチウムイオン二次電池であり、上記「ア.」、「イ.」の記載によれば、正極活物質を有する正極を備え、上記正極は、リチウムと、1または複数の遷移金属とを少なくとも含む複合酸化物粒子と、上記複合酸化物粒子の少なくとも一部に設けられる被覆層とを備え、上記被覆層は、上記複合酸化物粒子を構成する主要遷移金属元素とは異なり、2族〜16族から選ばれる少なくとも1種の元素Mと、ハロゲン元素Xとを含み、上記被覆層において、上記元素Mと上記ハロゲン元素Xとが異なる分布を呈してなるるものである。
・上記「ウ.」、「エ.」の記載によれば、複合酸化物粒子としてはコバルト酸リチウムであり、元素Mはマンガン、アルミニウムなどであり、複合酸化物粒子表面にほぼ均一に分布して被覆層を形成し、コバルト酸リチウムに含まれるコバルトが溶出して正極活物質が劣化したりするのを抑制してなるものである。また、ハロゲン元素Xはハロゲン化物の状態で複合酸化物粒子表面に点在するように分布して被覆層を形成し、複合酸化物粒子表面の不純物と反応して正極活物質を安定化させるとともに、リチウムの吸蔵放出の妨げにならないようにしてなるものである。
・上記「カ.」、「キ.」の記載、及び「ケ.」(【表1】)によれば、実施例11では、正極活物質を、母粒子であるコバルト酸リチウムの表面に炭酸マンガンを被着させた焼成前駆体を900℃で3時間熱処理することでコバルト酸リチウム表面に元素Mとしてマンガンがほぼ均一に分布した粒子を得て、さらに、当該コバルト酸リチウム表面にマンガンが均一に分布した粒子とフッ化マグネシウムを混合して800℃で熱処理することにより得てなり、元素Mはマンガンであり、ハロゲン元素Xはフッ素である。そして、フッ素はフッ化マグネシウムの状態でコバルト酸リチウム粒子の表面に点在してなるものである。さらに、上記「カ.」の段落【0134】の記載によれば、正極は、正極活物質の他、導電剤としてアモルファス性炭素紛(ケッチェンブラック)を有してなるものでる。

以上のことから、特に実施例11に係るものに着目し、上記記載事項を総合勘案すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「正極活物質と、導電剤と、を有する正極を備え、
前記正極活物質は、母粒子であるコバルト酸リチウムの表面に炭酸マンガンを被着させた焼成前駆体を900℃で3時間熱処理することでコバルト酸リチウム表面に元素Mとしてマンガンがほぼ均一に分布した粒子を得て、さらに、当該コバルト酸リチウム表面にマンガンがほぼ均一に分布した粒子とフッ化マグネシウムを混合して800℃で熱処理することにより得られるものであり、コバルト酸リチウムからなる複合酸化物粒子の表面に被覆層が設けられ、
前記被覆層は、マンガンがほぼ均一に分布することによりコバルト酸リチウムに含まれるコバルトが溶出して正極活物質が劣化したりするのを抑制し、また、フッ素がフッ化マグネシウムの状態で点在するように分布することによりコバルト酸リチウム粒子表面の不純物と反応して正極活物質を安定化させるとともに、リチウムの吸蔵放出の妨げにならないようにしてなるものであり、
前記導電剤は、アモルファス性炭素紛(ケッチェンブラック)である、リチウムイオン二次電池。」

(3)取消理由についての当審の判断
(3−1)理由A(進歩性)について
ア.本件発明1について
本件発明1と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明における「正極活物質」、「正極」は、それぞれ本件発明1でいう「正極活物質」、「正極」に相当し、本件発明1と引用発明とは「正極活物質を有する正極」を備えるものである点で一致する。

(イ)引用発明における「正極活物質」は、「コバルト酸リチウムからなる複合酸化物粒子の表面に被覆層が設けられ、前記被覆層は、マンガンがほぼ均一に分布することによりコバルト酸リチウムに含まれるコバルトが溶出して正極活物質が劣化したりするのを抑制し、また、フッ素がフッ化マグネシウムの状態で点在するように分布することによりコバルト酸リチウム粒子表面の不純物と反応して正極活物質を安定化させるとともに、リチウムの吸蔵放出の妨げにならないようにしてなる」ものであるところ、「コバルト酸リチウムからなる複合酸化物粒子」の部分はリチウム、コバルトを含む複合酸化物を有することは明らかであり、本件発明1でいう「第1の領域」に相当する。また、被覆層として「マンガンがほぼ均一に分布」する部分、「フッ素がフッ化マグネシウムの状態で点在するように分布」する部分は、それぞれ本件発明1でいう「第2の領域」、「第3の領域」に対応するとみることができる。
したがって、本件発明1と引用発明とは「前記正極活物質は、第1の領域乃至第3の領域を有し、前記第1の領域は、リチウム、コバルトを含む複合酸化物を有し、前記第3の領域は、マグネシウム、フッ素を有」する点で共通する。
ただし、第2の領域について、本件発明1では「リチウム、アルミニウム、コバルト及び酸素」を有することを特定するのに対し、引用発明では「マンガン」を有するものである点で相違する。
また、マグネシウム、フッ素を有する第3の領域について、本件発明1ではさらに「酸素」を有することを特定するのに対し、引用発明ではフッ素がフッ化マグネシウムの形態で点在するものであり、酸素を有していない点で相違する。

(ウ)本件明細書の段落【0047】の「一般的に、正極活物質は、充放電を繰り返すにつれ、コバルトやマンガン等の遷移金属が電解液に溶出する、酸素が離脱する、結晶構造が不安定になる、といった副反応が生じ、劣化が進んでゆく。しかしながら本発明の一態様の正極活物質100は、表層部にアルミニウムを有する第2の領域102を有するため、第1の領域101が有するリチウムと遷移金属を含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能である。」という記載を参照するに、本件発明1における「第2の領域」による第1の領域の少なくとも一部の被覆によって「前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能」となるのは、充放電の繰り返しで遷移金属(コバルト)が電解液に溶出するなどの副反応が生じ、正極活物質の劣化が進むのを抑制できるからであると解される。してみると、引用発明における「マンガンがほぼ均一に分布」する部分についても、コバルト酸リチウムからなる複合酸化物粒子の表面を覆う被覆層を構成するものであるところ、「コバルト酸リチウム粒子に含まれるコバルトが溶出して正極活物質が劣化したりするのを抑制」するものであるから、本件発明1の「第2の領域」と同様に、「前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能」なように被覆してなるものであるということができる。
したがって、本件発明1と引用発明とは「前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように前記第2の領域は、前記第1の領域の少なくとも一部を被覆」するものである点で一致するといえる。

(エ)本件発明1の「前記第3の領域は、STEM−EDXの線分析で検出されるマグネシウムの濃度が、ピークの1/5以上の領域」であるという特定事項について、本件明細書の段落【0061】に「本明細書等において、正極活物質100の表層部に存在する第3の領域103の範囲は、正極活物質100の表面から、マグネシウムの濃度がピークの1/5になるまでをいうこととする。」と記載されているように単にそのように定義しただけであり、当該定義に基づく第3の領域についてその深さ範囲を具体的に特定しているわけではないことを踏まえると、引用発明における被覆層として「フッ素がフッ化マグネシウムの形態で点在するように分布」する部分にあっても、本件発明1でいう「STEM−EDXの線分析で検出されるマグネシウムの濃度が、ピークの1/5以上の領域」すなわち「第3の領域」を含むことは明らかである。
したがって、本件発明1と引用発明とは「前記第3の領域は、STEM−EDXの線分析で検出されるマグネシウムの濃度が、ピークの1/5以上の領域」である点で一致するということができる。
ただし、第3の領域について、本件発明1では「前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように前記第2の領域の少なくとも一部を被覆」する旨特定するのに対し、引用発明ではコバルト酸リチウム粒子表面の不純物と反応して正極活物質を安定化させるとともに、リチウムの吸蔵放出の妨げにならないようにフッ素がフッ化マグネシウムの形態で点在するものである点で相違する。
さらに、第3の領域について、本件発明1では「前記第1の領域の内部にも存在する」ことを特定するのに対し、引用発明ではそのような特定がない点でも相違する。

(オ)そして、引用発明における「リチウムイオン二次電池」は、本件発明1における「リチウムイオン二次電池」に相当するものである。

よって上記(ア)ないし(オ)によれば、本件発明1と引用発明とは、
「正極活物質を有する正極を備え、
前記正極活物質は、第1の領域乃至第3の領域を有し、
前記第1の領域は、リチウム、コバルトを含む複合酸化物を有し、
前記第3の領域は、マグネシウム、フッ素を有し、
前記第3の領域は、STEM−EDXの線分析で検出されるマグネシウムの濃度が、ピークの1/5以上の領域であり、
前記第2の領域は、前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように前記第1の領域の少なくとも一部を被覆する、リチウムイオン二次電池。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
第2の領域について、本件発明1では「リチウム、アルミニウム、コバルト及び酸素」を有することを特定するのに対し、引用発明ではマンガンを有するものである点。
[相違点2]
マグネシウム、フッ素を有する第3の領域について、本件発明1ではさらに「酸素」を有することを特定するのに対し、引用発明ではフッ素がフッ化マグネシウムの状態で点在するものであり、酸素を有していない点。
[相違点3]
第3の領域について、本件発明1では「前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように前記第2の領域の少なくとも一部を被覆」する旨特定するのに対し、引用発明ではコバルト酸リチウム粒子表面の不純物と反応して正極活物質を安定化させるとともに、リチウムの吸蔵放出の妨げにならないようにフッ素がフッ化マグネシウムの状態で点在するものである点。
[相違点4]
第3の領域について、本件発明1では「前記第1の領域の内部にも存在する」ことを特定するのに対し、引用発明ではそのような特定がない点。

事案に鑑み、まず上記相違点2について検討する。
第3の領域について、本件発明1ではマグネシウム、フッ素に加えてさらに「酸素」を有するするものであり、本件明細書の段落【0050】〜【0052】の記載を参照するに、基本的に酸化マグネシウムの状態で有している(ただし、その酸素の一部がフッ素で置換されている)と解されるものである。これに対して、引用発明はフッ化マグネシウムの状態で有することを前提とするものであるといえ、さらに「酸素」を有するようにすべき動機がない。
したがって、引用発明において、相違点2に係る構成を導き出すことはできない。

よって、他の相違点(相違点1、3、4)について検討までもなく、本件発明1は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ.本件発明2、3について
それぞれ独立形式で記載された請求項2、3に係る発明である本件発明2、3にあっても、本件発明1と同様に「前記第3の領域は、マグネシウム、フッ素及び酸素を有し」という発明特定事項を有することから、本件発明2、3と引用発明とは、少なくとも上記「ア.」で認定した[相違点2]と同じ相違点を有する。
したがって、上記「ア.」で検討した相違点2についての判断と同様の理由により、本件発明2、3は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ.本件発明4ないし6について
それぞれ独立形式で記載された請求項4ないし6に係る発明である本件発明4ないし6にあっても、本件発明1と同様に「前記第3の領域は、マグネシウム、フッ素及び酸素を有し」という発明特定事項を有することから、本件発明4ないし6と引用発明とは、少なくとも上記「ア.」で認定した[相違点2]と同じ相違点を有する。
ここで、取消理由通知において引用した引用例2(特に【請求項1】、段落【0011】)、引用例3(特に段落【0003】)、及び引用例4(特に【請求項1】、段落【0010】)には、リチウム二次電池の電極に添加される導電剤(導電助剤)としてカーボンナノチューブを用いるという周知の技術が記載されているにすぎない。
したがって、上記「ア.」で検討した相違点2についての判断と同様の理由により、本件発明4ないし6は、引用発明及び周知技術(引用例2ないし4に記載の技術)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ.本件発明7ないし9について
それぞれ独立形式で記載された請求項7ないし9に係る発明である本件発明7ないし9にあっても、本件発明1と同様に「前記第3の領域は、マグネシウム、フッ素及び酸素を有し」という発明特定事項を有することから、本件発明7ないし9と引用発明とは、少なくとも上記「ア.」で認定した[相違点2]と同じ相違点を有する。
ここで、取消理由通知において引用した引用例3(特に段落【0003】)、引用例4(特に【請求項1】、段落【0068】〜【0069】)、引用例5(特に【請求項1】、【請求項2】、段落【0002】)、及び引用例6(特に段落【0044】〜【0045】)には、リチウム二次電池の電極に添加される導電剤(導電助剤)としてグラフェンを用いるという周知の技術が記載されているにすぎない。
したがって、上記「ア.」で検討した相違点2についての判断と同様の理由により、本件発明7ないし9は、引用発明及び周知技術(引用例3ないし6に記載の技術)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

オ.本件発明10について
請求項10は、請求項4ないし6のいずれかを引用する請求項であり、本件発明10は、本件発明4ないし6のいずれかの発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記本件発明4ないし6についての判断と同様の理由により、本件発明10は、引用発明及び周知技術(引用例2ないし4に記載の技術)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

カ.本件発明11について
請求項11は、請求項4ないし9のいずれかを引用する請求項であり、本件発明11は、本件発明4ないし9のいずれかの発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記本件発明4ないし9についての判断と同様の理由により、本件発明11は、引用発明及び周知技術(引用例2ないし4に記載の技術あるいは引用例3ないし6に記載の技術)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

キ.本件発明12、13について
請求項12、13は、請求項1ないし9のいずれかを引用する請求項であり、本件発明12、13は、本件発明1ないし9のいずれかの発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記本件発明1ないし9についての判断と同様の理由により、本件発明12、13は、引用発明に基づいて、あるいは引用発明及び周知技術(引用例2ないし4に記載の技術あるいは引用例3ないし6に記載の技術)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3−2)理由B(サポート要件)について
上記(1−2)の「ア.」、「イ.」、「エ.」ないし「サ.」に記載したとおりの記載不備の指摘に対して、本件訂正請求による訂正により、請求項1ないし9のそれぞれにおいて、「第1の領域」はリチウム、コバルトを含む「複合酸化物」として有すること、「第2の領域」はアルミニウムに加えて「リチウム」・「コバルト及び酸素」を有すること、「第3の領域」はマグネシウム、フッ素に加えて「酸素」を有することが特定された。その結果、「第1の領域」についてはリチウム、コバルトを含む複合酸化物以外の「酸素」を含まないようなものは含まず、また、当該複合酸化物の結晶構造を有することも理解し得るものとなり、「第2の領域」についてはリチウム、コバルト及び酸素を有しないものは含まないものとなり、「第3の領域」については酸素を有しないものは含まないものとなり、本件請求項1ないし9に係る発明が、発明の詳細な説明において発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えているとはいえないものとなった。
また、上記(1−2)の「ウ.」、「エ.」ないし「サ.」に記載したとおりの記載不備の指摘に対して、本件訂正請求による訂正により、請求項1ないし9のそれぞれにおいて、「第2の領域」は「前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように」前記第1の領域の少なくとも一部を被覆するものであること、「第3の領域」は「前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように」前記第2の領域の少なくとも一部を被覆するものであることが特定された。その結果、「第2の領域」は第1の領域をごく僅かでも被覆していればよく、同様に、「第3の領域」は第2の領域をごく僅かでも被覆していればよいというものではなくなっており、本件請求項1ないし9に係る発明は、発明の課題を解決するための手段が適切に反映されておらず、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求するものであるとはいえないものとなった。

よって、取消理由で指摘した不備な点はすべて解消され、本件請求項1ないし9に係る発明、及びこれら請求項を引用する請求項10ないし13に係る発明は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。

(4)まとめ
以上のとおり、本件の請求項1ないし13に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、また、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものでもない。

3.取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)特許法第29条第1項第3号新規性)及び特許法第29条第2項進歩性
特許異議申立人は、原出願の出願当初明細書等には正極活物質として特定の複合酸化物を用いたリチウムイオン二次電池しか開示されていないところ、本件特許発明1ないし13には、例えば正極活物質として金属合金や複合酸化物以外の化合物(例えば硫化物)を用いたリチウムイオン二次電池が含まれ、本件特許は分割要件を満たさない。よって、本件特許に係る出願の出願日は原出願の出願日に遡及するものではなく、原出願の公開公報である甲第1号証(特開2020−202184号公報)は、本件特許出願に対する公知文献となるから、本件特許発明1ないし13は、甲第1号証に記載の発明に対して新規性及び進歩性を有しない旨を主張している。

そこで、特許異議申立人の上記主張を検討する。
まず、甲第1号証である特開2020−202184号公報は、本件特許に係る出願の公開公報であり、原出願の公開公報ではない(原出願の公開公報は特開2018−88400号公報である)。
さらに、そもそも分割時において本件の特許請求の範囲や明細書中に、正極活物質が有する第1の領域について金属合金や複合酸化物以外の例えば硫化物を含む得ることの記載が新たに追加されたわけではなく、そして、本件訂正請求による訂正により、「リチウム、コバルトを含む複合酸化物」であることが特定されているのであるから、分割要件を満たさないものではない。
よって、本件特許に係る出願の出願日は原出願の出願日に遡及し、原出願の公開公報は本件特許出願に対する公知文献とはならないから、特許異議申立人の上記主張はその前提を欠くものであり採用できない。

(2)特許法第29条第2項進歩性
特許異議申立人は、引用例1(甲第2号証)において、実施例11に着目した発明である引用発明に代えて、実施例14に着目した発明(以下、「引用発明’」という。)とした場合についても、特許法第29条第2項に関する主張をしているので、以下に検討しておく。
ア.引用発明’
引用例1の実施例14に関する段落【0191】〜【0195】の記載(上記「2.(2)ク.」を参照)によれば、引用発明における「炭酸マンガン」に替えて「水酸化アルミニウム」を用い、「フッ化マグネシウム」に替えて「フッ化リチウム」を用いていることを踏まえると、引用例1には、次の引用発明’が記載されていると認められる。
「正極活物質と、導電剤と、を有する正極を備え、
前記正極活物質は、母粒子であるコバルト酸リチウムの表面に水酸化アルミニウムを被着させた焼成前駆体を900℃で3時間熱処理することでコバルト酸リチウム表面に元素Mとしてアルミニウムがほぼ均一に分布した粒子を得て、さらに、当該コバルト酸リチウム表面にアルミニウムがほぼ均一に分布した粒子とフッ化リチウムを混合して800℃で熱処理することにより得られるものであり、コバルト酸リチウムからなる複合酸化物粒子の表面に被覆層が設けられ、
前記被覆層は、アルミニウムがほぼ均一に分布することによりコバルト酸リチウムに含まれるコバルトが溶出して正極活物質が劣化したりするのを抑制し、また、フッ素がフッ化リチウムの状態で点在するように分布することによりコバルト酸リチウム粒子表面の不純物と反応して正極活物質を安定化させるとともに、リチウムの吸蔵放出の妨げにならないようにしてなるものであり、
前記導電剤は、アモルファス性炭素紛(ケッチェンブラック)である、リチウムイオン二次電池。」

イ.対比・判断
(ア)本件発明1について
本件発明1と引用発明’とを対比する。
a.引用発明’における「正極活物質」、「正極」は、それぞれ本件発明1でいう「正極活物質」、「正極」に相当し、本件発明1と引用発明’とは「正極活物質を有する正極」を備えるものである点で一致する。

b.引用発明’における「正極活物質」は、「コバルト酸リチウムからなる複合酸化物粒子の表面に被覆層が設けられ、前記被覆層は、アルミニウムがほぼ均一に分布することによりコバルト酸リチウムに含まれるコバルトが溶出して正極活物質が劣化したりするのを抑制し、また、フッ素がフッ化リチウムの状態で点在するように分布することによりコバルト酸リチウム粒子表面の不純物と反応して正極活物質を安定化させるとともに、リチウムの吸蔵放出の妨げにならないようにしてなる」ものであるところ、「コバルト酸リチウムからなる複合酸化物粒子」の部分はリチウム、コバルトを含む複合酸化物を有することは明らかであり、本件発明1でいう「第1の領域」に相当する。また、被覆層として「アルミニウムがほぼ均一に分布」する部分、「フッ素がフッ化リチウムの形態で点在するように分布」する部分は、それぞれ本件発明1でいう「第2の領域」、「第3の領域」に対応するとみることができる。
したがって、本件発明1と引用発明’とは「前記正極活物質は、第1の領域乃至第3の領域を有し、前記第1の領域は、リチウム、コバルトを含む複合酸化物を有し、前記第2の領域は、アルミニウムを有し、前記第3の領域は、フッ素を有」する点で共通する。
ただしアルミニウムを有する第2の領域について、本件発明1ではさらに「リチウム」、「コバルト及び酸素」を有することを特定するのに対し、引用発明’ではそれらの元素を有していない点で相違する。
また、フッ素を有する第3の領域について、本件発明1ではさらに「マグネシウム」、「酸素」を有することを特定するのに対し、引用発明’ではフッ素がフッ化リチウムの状態で点在するものであり、マグネシウム及び酸素を有していない点で相違する。

c.本件明細書の段落【0047】の「一般的に、正極活物質は、充放電を繰り返すにつれ、コバルトやマンガン等の遷移金属が電解液に溶出する、酸素が離脱する、結晶構造が不安定になる、といった副反応が生じ、劣化が進んでゆく。しかしながら本発明の一態様の正極活物質100は、表層部にアルミニウムを有する第2の領域102を有するため、第1の領域101が有するリチウムと遷移金属を含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能である。」という記載を参照するに、本件発明1における「第2の領域」による第1の領域の少なくとも一部の被覆によって「前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能」となるのは、充放電の繰り返しで遷移金属(コバルト)が電解液に溶出するなどの副反応が生じ、正極活物質の劣化が進むのを抑制できるからであると解される。してみると、引用発明’における「アルミニウムがほぼ均一に分布」する部分についても、コバルト酸リチウムからなる複合酸化物粒子の表面を覆う被覆層を構成するものであるところ、「コバルト酸リチウムに含まれるコバルトが溶出して正極活物質が劣化したりするのを抑制」するものであるから、本件発明1の「第2の領域」と同様に、「前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能」なように被覆してなるものであるということができる。
したがって、本件発明1と引用発明’とは「前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように前記第2の領域は、前記第1の領域の少なくとも一部を被覆」するものである点で一致するといえる。

d.第3の領域について、本件発明1では「STEM−EDXの線分析で検出されるマグネシウムの濃度が、ピークの1/5以上の領域」であることを特定するのに対し、引用発明’ではそもそもマグネシウムを有していない点で相違する。
また、第3の領域について、本件発明1では「前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように前記第2の領域の少なくとも一部を被覆」する旨特定するのに対し、引用発明’ではコバルト酸リチウム粒子表面の不純物と反応して正極活物質を安定化させるとともに、リチウムの吸蔵放出の妨げにならないようにフッ素がフッ化リチウムの形態で点在するものである点で相違する。
さらに、第3の領域について、本件発明1では「前記第1の領域の内部にも存在する」ことを特定するのに対し、引用発明’ではそのような特定がない点でも相違する。

e.引用発明’における「リチウムイオン二次電池」は、本件発明1における「リチウムイオン二次電池」に相当するものである。

よって上記「a.」ないし「e.」によれば、本件発明1と引用発明’とは、
「正極活物質を有する正極を備え、
前記正極活物質は、第1の領域乃至第3の領域を有し、
前記第1の領域は、リチウム、コバルトを含む複合酸化物を有し、
前記第2の領域は、アルミニウムを有し、
前記第3の領域は、フッ素を有し、
前記第2の領域は、前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように前記第1の領域の少なくとも一部を被覆する、リチウムイオン二次電池。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
アルミニウムを有する第2の領域について、本件発明1ではさらに「リチウム」、「コバルト及び酸素」を有することを特定するのに対し、引用発明’ではそれらの元素を有していない点。
[相違点2]
フッ素を有する第3の領域について、本件発明1ではさらに「マグネシウム」、「酸素」を有することを特定するのに対し、引用発明’ではフッ素がフッ化マグネシウムの状態で点在するものであり、マグネシウム及び酸素を有していない点。
[相違点3]
第3の領域について、本件発明1では「STEM−EDXの線分析で検出されるマグネシウムの濃度が、ピークの1/5以上の領域」であることを特定するのに対し、引用発明’ではそもそもマグネシウムを有していない点。
[相違点4]
第3の領域について、本件発明1では「前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように前記第2の領域の少なくとも一部を被覆」する旨特定するのに対し、引用発明’ではコバルト酸リチウム粒子表面の不純物と反応して正極活物質を安定化させるとともに、リチウムの吸蔵放出の妨げにならないようにフッ素がフッ化リチウムの状態で点在するものである点。
[相違点5]
第3の領域について、本件発明1では「前記第1の領域の内部にも存在する」ことを特定するのに対し、引用発明’ではそのような特定がない点。

事案に鑑み、まず上記相違点2について検討する。
第3の領域について、本件発明1ではフッ素に加えてさらに「マグネシウム」、「酸素」を有するするものであり、本件明細書の段落【0050】〜【0052】の記載を参照するに、基本的に酸化マグネシウムの状態で有している(ただし、その酸素の一部がフッ素で置換されている)と解されるものである。これに対して、引用発明’はフッ化リチウムの状態で有することを前提とするものであり、たとえ引用例1の実施例11のように、フッ化リチウムに替えてフッ化マグネシウムの状態で有するものとしたとしても、さらに「酸素」を有するようにすべき動機がない。
したがって、引用発明’において、相違点2に係る構成を導き出すことはできない。

よって、他の相違点(相違点1、3ないし5)について検討までもなく、本件発明1は、引用発明’に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(イ)本件発明2、3について
それぞれ独立形式で記載された請求項2、3に係る発明である本件発明2、3にあっても、本件発明1と同様に「前記第3の領域は、マグネシウム、フッ素及び酸素を有し」という発明特定事項を有することから、本件発明2、3と引用発明’とは、少なくとも上記(ア)で認定した[相違点2]と同じ相違点を有する。
したがって、上記(ア)で検討した相違点2についての判断と同様の理由により、本件発明2、3は、引用発明’に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(ウ)本件発明4ないし6について
それぞれ独立形式で記載された請求項4ないし6に係る発明である本件発明4ないし6にあっても、本件発明1と同様に「前記第3の領域は、マグネシウム、フッ素及び酸素を有し」という発明特定事項を有することから、本件発明4ないし6と引用発明’とは、少なくとも上記(ア)で認定した[相違点2]と同じ相違点を有する。
ここで、取消理由通知において引用した引用例2(特に【請求項1】、段落【0011】)、引用例3(特に段落【0003】)、及び引用例4(特に【請求項1】、段落【0010】)には、リチウム二次電池の電極に添加される導電剤(導電助剤)としてカーボンナノチューブを用いるという周知の技術が記載されているにすぎない。
したがって、上記(ア)で検討した相違点2についての判断と同様の理由により、本件発明4ないし6は、引用発明’及び周知技術(引用例2ないし4に記載の技術)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(エ)本件発明7ないし9について
それぞれ独立形式で記載された請求項7ないし9に係る発明である本件発明7ないし9にあっても、本件発明1と同様に「前記第3の領域は、マグネシウム、フッ素及び酸素を有し」という発明特定事項を有することから、本件発明7ないし9と引用発明’とは、少なくとも上記(ア)で認定した[相違点2]と同じ相違点を有する。
ここで、取消理由通知において引用した引用例3(特に段落【0003】)、引用例4(特に【請求項1】、段落【0068】〜【0069】)、引用例5(特に【請求項1】、【請求項2】、段落【0002】)、及び引用例6(特に段落【0044】〜【0045】)には、リチウム二次電池の電極に添加される導電剤(導電助剤)としてグラフェンを用いるという周知の技術が記載されているにすぎない。
したがって、上記(ア)で検討した相違点2についての判断と同様の理由により、本件発明7ないし9は、引用発明’及び周知技術(引用例3ないし6に記載の技術)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(オ)本件発明10について
請求項10は、請求項4ないし6のいずれかを引用する請求項であり、本件発明10は、本件発明4ないし6のいずれかの発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記本件発明4ないし6についての判断と同様の理由により、本件発明10は、引用発明’及び周知技術(引用例2ないし4に記載の技術)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(カ)本件発明11について
請求項11は、請求項4ないし9のいずれかを引用する請求項であり、本件発明11は、本件発明4ないし9のいずれかの発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記本件発明4ないし9についての判断と同様の理由により、本件発明11は、引用発明’及び周知技術(引用例2ないし4に記載の技術あるいは引用例3ないし6に記載の技術)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(キ)本件発明12、13について
請求項12、13は、請求項1ないし9のいずれかを引用する請求項であり、本件発明12、13は、本件発明1ないし9のいずれかの発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記本件発明1ないし9についての判断と同様の理由により、本件発明12、13は、引用発明’に基づいて、あるいは引用発明’及び周知技術(引用例2ないし4に記載の技術あるいは引用例3ないし6に記載の技術)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)特許法第36条第4項第1号実施可能要件
特許異議申立人は、次のような実施可能要件違反の理由(不備)を主張しいる。
ア.本件特許発明1ないし13においては、正極活物質には第1〜3の領域が酸素を有しない金属合金及び複合酸化物以外の化合物(例えば硫化物)や、第2の領域がリチウム、遷移金属、及び酸素を有しないものが含まれるが、本件特許の発明の詳細な説明には、第1の領域が酸素を有しない態様、第2の領域がリチウム、遷移金属、及び酸素を有しない態様、並びに第3の領域が酸素を有しない態様は一切開示されていない。そのため、本件特許の発明の詳細な説明を参酌しても、どのようにして、このような正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池が得られるのか、当業者にとっても理解することができない。

イ.本件特許発明1,3,4,6,7,9ないし13において、「前記第3の領域は、前記第1の領域の内部にも存在する」こと、「前記第3の領域は、STEM−EDXの線分析で検出されるマグネシウムの濃度が、ピークの1/5以上の領域」であることが規定されているが、本件特許明細書の実施例では、マグネシウムの濃度がピークの1/5以上である第3の領域が第1の領域の内部にも存在することは確かめられていない。そのため、本件特許の発明の詳細な説明を参酌しても、どのようにして、マグネシウムの濃度がピークの1/5以上である第3の領域が第1の領域の内部にも存在する正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池が得られるのか、当業者にとっても理解することができない。

ウ.本件特許発明2,3,5,6,8ないし13において、「前記第2の領域は、前記第1の領域の内部にも存在する」こと、「前記第2の領域は、STEM−EDXの線分析で検出されるアルミニウムの濃度が、ピークの1/2以上の領域」であることが規定されているが、本件特許明細書の実施例では、アルミニウムの濃度がピークの1/2以上である第2の領域が第1の領域の内部にも存在することは確かめられていない。そのため、本件特許の発明の詳細な説明を参酌しても、どのようにして、アルミニウムの濃度がピークの1/2以上である第2の領域が第1の領域の内部にも存在する正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池が得られるのか、当業者にとっても理解することができない。

エ.本件特許発明1ないし13において、「前記第2の領域は、前記第1の領域の少なくとも一部を被覆し」、「前記第3の領域は、前記第2の領域の少なくとも一部を被覆し」ていることが規定されているが、本件特許の図26のSTEM−EDX線分析の結果からは、第2の領域が第1の領域を被覆していることや、第3の領域が第2の領域を被覆していることが確認できない。そのため、本件特許の発明の詳細な説明を参酌しても、どのようにして、「前記第2の領域は、前記第1の領域の少なくとも一部を被覆し」、「前記第3の領域は、前記第2の領域の少なくとも一部を被覆し」ている正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池を得ることができるのか、当業者にとっても理解することができない。

そこで、上記主張について検討する。
上記「ア.」について
本件訂正請求による訂正により、「第1の領域」はリチウム、コバルトを含む「複合酸化物」として有すること、「第2の領域」はアルミニウムに加えて「リチウム」・「コバルト及び酸素」を有すること、「第3の領域」はマグネシウム、フッ素に加えて「酸素」を有することが特定され、「第1の領域」が酸素を有しない態様、「第2の領域」がリチウム、遷移金属、及び酸素を有しない態様、並びに「第3の領域」が酸素を有しない態様は含まないものとなったことに加えて、本件特許明細書の特に段落【0084】〜【0103】にはリチウムイオン二次電池に用いる正極活物質の作製方法について、出発原料や混合した出発原料の焼成条件、第2の領域を被覆成形するための条件、第3の領域を偏析させるための加熱条件などが具体的に記載されており、これによれば、当業者であればその実施(その物の製造)をすることができるものと認められる。
したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明が、本件発明1ないし13について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものでないとはいえない。

上記「イ.」について
本件特許明細書の段落【0031】や【0079】の記載によれば、第3の領域が存在する「第1の領域の内部」とは、具体的には第1の領域が多結晶であるときの粒界近傍や結晶欠陥近傍であるところ、本件特許明細書の特に段落【0084】〜【0103】にはリチウムイオン二次電池に用いる正極活物質の作製方法について、出発原料や混合した出発原料の焼成条件、第2の領域を被覆成形するための条件、第3の領域を偏析させるための加熱条件などが具体的に記載されており、混合した出発原料の焼成条件(より好ましくは900℃以上1000℃以下、2時間以上20時間以下)や第3の領域を偏析させるための加熱条件(より好ましくは700℃以上1000℃以下、より好ましくは1時間以上10時間以下)により、作製後の正極活物質における第1の領域である複合酸化物(コバルト酸リチウム)には結晶欠陥の部分や多結晶の部分が当然存在し、かかる焼成条件や加熱条件によってはそのような結晶欠陥や多結晶の部分にマグネシウムなどが多少なりとも拡散により存在し得ることは当業者であれば理解できることである。
したがって、本件特許明細書において、マグネシウムの濃度がピークの1/5以上である第3の領域が第1の領域の内部にも存在することが何らかの分析手段などによって確かめられていないとしても、本件特許明細書の発明の詳細な説明が、本件発明1,3,4,6,7,9ないし13について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものでないとまではいえない。

上記「ウ.」について
本件特許明細書の段落【0032】の記載によれば、第2の領域が存在する「第1の領域の内部」とは、具体的には第1の領域が多結晶であるときの粒界近傍や結晶欠陥近傍であるところ、本件特許明細書の特に段落【0084】〜【0103】にはリチウムイオン二次電池に用いる正極活物質の作製方法について、出発原料や混合した出発原料の焼成条件、第2の領域を被覆成形するための条件、第3の領域を偏析させるための加熱条件などが具体的に記載されており、混合した出発原料の焼成条件(より好ましくは900℃以上1000℃以下、2時間以上20時間以下)や第3の領域を偏析させるための加熱条件(より好ましくは700℃以上1000℃以下、より好ましくは1時間以上10時間以下)により、作製後の正極活物質における第1の領域である複合酸化物(コバルト酸リチウム)には結晶欠陥の部分や多結晶の部分が当然存在し、かかる焼成条件や加熱条件によってはそのような結晶欠陥や多結晶の部分にアルミニウムなどが多少なりとも拡散により存在し得ることは当業者であれば理解できることである。
したがって、本件特許明細書において、アルミニウムの濃度がピークの1/2以上である第2の領域が第1の領域の内部にも存在することが何らかの分析手段などによって確かめられていないとしても、本件特許明細書の発明の詳細な説明が、本件発明2,3,5,6,8ないし13について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものでないとまではいえない。

上記「エ.」について
本件特許明細書の段落【0349】には「図26(C)に示すように、サンプル1の正極活物質の表面近傍にはマグネシウムとアルミニウムが存在し、マグネシウムの分布の方が、アルミニウムの分布よりも表面に近いことが明らかとなった。またマグネシウムのピークの方が、アルミニウムのピークよりも表面に近いことが明らかとなった。」と記載され、本件の図26(C)からも、マグネシウムのピークが表面からおよそ7.5nm〜11nmにあり、アルミニウムのピークが表面からおよそ8.5nm〜20nmにあることが見て取れることや、本件特許明細書の特に段落【0084】〜【0103】に記載されたリチウムイオン二次電池に用いる正極活物質の具体的な作製方法を踏まえると、第2の領域が第1の領域を被覆していることや、第3の領域が第2の領域を被覆していることは推測し得ることである。
したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明が、本件発明1ないし13について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものでないとまではいえない。

よって、特許異議申立人の上記主張はいずれも採用することはできず、本件請求項1ないし13に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。

(4)まとめ
以上のとおりであるから、本件の請求項1ないし13に係る発明に関して、特許異議申立人による特許法第29条第1項第3号、同法第29条第2項、及び同法第36条第4項第1号についての申立理由はいずれも理由がない。

第4 むすび

以上のとおり、本件請求項1ないし13に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由、及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし13に係る特許を取り消すべき理由も発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質を有する正極を備え、
前記正極活物質は、第1の領域乃至第3の領域を有し、
前記第1の領域は、リチウム、コバルトを含む複合酸化物を有し、
前記第2の領域は、リチウム、アルミニウム、コバルト及び酸素を有し、
前記第3の領域は、マグネシウム、フッ素及び酸素を有し、
前記第3の領域は、STEM−EDXの線分析で検出されるマグネシウムの濃度が、ピークの1/5以上の領域であり、
前記第2の領域は、前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように前記第1の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第3の領域は、前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように前記第2の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第3の領域は、前記第1の領域の内部にも存在するリチウムイオン二次電池。
【請求項2】
正極活物質を有する正極を備え、
前記正極活物質は、第1の領域乃至第3の領域を有し、
前記第1の領域は、リチウム、コバルトを含む複合酸化物を有し、
前記第2の領域は、リチウム、アルミニウム、コバルト及び酸素を有し、
前記第3の領域は、マグネシウム、フッ素及び酸素を有し、
前記第2の領域は、STEM−EDXの線分析で検出されるアルミニウムの濃度が、ピークの1/2以上の領域であり、
前記第2の領域は、前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように前記第1の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第3の領域は、前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように前記第2の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第2の領域は、前記第1の領域の内部にも存在するリチウムイオン二次電池。
【請求項3】
正極活物質を有する正極を備え、
前記正極活物質は、第1の領域乃至第3の領域を有し、
前記第1の領域は、リチウム、コバルトを含む複合酸化物を有し、
前記第2の領域は、リチウム、アルミニウム、コバルト及び酸素を有し、
前記第3の領域は、マグネシウム、フッ素及び酸素を有し、
前記第2の領域は、STEM−EDXの線分析で検出されるアルミニウムの濃度が、ピークの1/2以上の領域であり、
前記第3の領域は、STEM−EDXの線分析で検出されるマグネシウムの濃度が、ピークの1/5以上の領域であり、
前記第2の領域は、前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように前記第1の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第3の領域は、前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように前記第2の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第2の領域及び前記第3の領域は、前記第1の領域の内部にも存在するリチウムイオン二次電池。
【請求項4】
正極活物質と、導電助剤と、を有する正極を備え、
前記正極活物質は、第1の領域乃至第3の領域を有し、
前記第1の領域は、リチウム、コバルトを含む複合酸化物を有し、
前記第2の領域は、リチウム、アルミニウム、コバルト及び酸素を有し、
前記第3の領域は、マグネシウム、フッ素及び酸素を有し、
前記第3の領域は、STEM−EDXの線分析で検出されるマグネシウムの濃度が、ピークの1/5以上の領域であり、
前記第2の領域は、前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように前記第1の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第3の領域は、前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように前記第2の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第3の領域は、前記第1の領域の内部にも存在し、
前記導電助剤は、炭素繊維を有するリチウムイオン二次電池。
【請求項5】
正極活物質と、導電助剤と、を有する正極を備え、
前記正極活物質は、第1の領域乃至第3の領域を有し、
前記第1の領域は、リチウム、コバルトを含む複合酸化物を有し、
前記第2の領域は、リチウム、アルミニウム、コバルト及び酸素を有し、
前記第3の領域は、マグネシウム、フッ素及び酸素を有し、
前記第2の領域は、STEM−EDXの線分析で検出されるアルミニウムの濃度が、ピークの1/2以上の領域であり、
前記第2の領域は、前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように前記第1の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第3の領域は、前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように前記第2の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第2の領域は、前記第1の領域の内部にも存在し、
前記導電助剤は、炭素繊維を有するリチウムイオン二次電池。
【請求項6】
正極活物質と、導電助剤と、を有する正極を備え、
前記正極活物質は、第1の領域乃至第3の領域を有し、
前記第1の領域は、リチウム、コバルトを含む複合酸化物を有し、
前記第2の領域は、リチウム、アルミニウム、コバルト及び酸素を有し、
前記第3の領域は、マグネシウム、フッ素及び酸素を有し、
前記第2の領域は、STEM−EDXの線分析で検出されるアルミニウムの濃度が、ピークの1/2以上の領域であり、
前記第3の領域は、STEM−EDXの線分析で検出されるマグネシウムの濃度が、ピークの1/5以上の領域であり、
前記第2の領域は、前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように前記第1の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第3の領域は、前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように前記第2の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第2の領域及び前記第3の領域は、前記第1の領域の内部にも存在し、
前記導電助剤は、炭素繊維を有するリチウムイオン二次電池。
【請求項7】
正極活物質と、導電助剤と、を有する正極を備え、
前記正極活物質は、第1の領域乃至第3の領域を有し、
前記第1の領域は、リチウム、コバルトを含む複合酸化物を有し、
前記第2の領域は、リチウム、アルミニウム、コバルト及び酸素を有し、
前記第3の領域は、マグネシウム、フッ素及び酸素を有し、
前記第3の領域は、STEM−EDXの線分析で検出されるマグネシウムの濃度が、ピークの1/5以上の領域であり、
前記第2の領域は、前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように前記第1の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第3の領域は、前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように前記第2の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第3の領域は、前記第1の領域の内部にも存在し、
前記導電助剤は、グラフェン又はマルチグラフェンであるリチウムイオン二次電池。
【請求項8】
正極活物質と、導電助剤と、を有する正極を備え、
前記正極活物質は、第1の領域乃至第3の領域を有し、
前記第1の領域は、リチウム、コバルトを含む複合酸化物を有し、
前記第2の領域は、リチウム、アルミニウム、コバルト及び酸素を有し、
前記第3の領域は、マグネシウム、フッ素及び酸素を有し、
前記第2の領域は、STEM−EDXの線分析で検出されるアルミニウムの濃度が、ピークの1/2以上の領域であり、
前記第2の領域は、前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように前記第1の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第3の領域は、前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように前記第2の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第2の領域は、前記第1の領域の内部にも存在し、
前記導電助剤は、グラフェン又はマルチグラフェンであるリチウムイオン二次電池。
【請求項9】
正極活物質と、導電助剤と、を有する正極を備え、
前記正極活物質は、第1の領域乃至第3の領域を有し、
前記第1の領域は、リチウム、コバルトを含む複合酸化物を有し、
前記第2の領域は、リチウム、アルミニウム、コバルト及び酸素を有し、
前記第3の領域は、マグネシウム、フッ素及び酸素を有し、
前記第2の領域は、STEM−EDXの線分析で検出されるアルミニウムの濃度が、ピークの1/2以上の領域であり、
前記第3の領域は、STEM−EDXの線分析で検出されるマグネシウムの濃度が、ピークの1/5以上の領域であり、
前記第2の領域は、前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように前記第1の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第3の領域は、前記第1の領域が有するリチウムとコバルトを含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能なように前記第2の領域の少なくとも一部を被覆し、
前記第2の領域及び前記第3の領域は、前記第1の領域の内部にも存在し、
前記導電助剤は、グラフェン又はマルチグラフェンであるリチウムイオン二次電池。
【請求項10】
請求項4乃至請求項6のいずれか一において、
前記炭素繊維は、カーボンナノファイバーまたはカーボンナノチューブであるリチウムイオン二次電池。
【請求項11】
請求項4乃至請求項9のいずれか一において、
正極活物質層の総量に対する前記導電助剤の含有量は、1wt%以上10wt%以下であるリチウムイオン二次電池。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11のいずれか一において、
前記第1の領域は、ニッケル及びマンガンを有するリチウムイオン二次電池。
【請求項13】
請求項1乃至請求項12のいずれか一において、
前記正極活物質のメディアン径は、1μm以上40μm以下であるリチウムイオン二次電池。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-06-03 
出願番号 P2020-136138
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (H01M)
P 1 651・ 113- YAA (H01M)
P 1 651・ 121- YAA (H01M)
P 1 651・ 536- YAA (H01M)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 山田 正文
特許庁審判官 井上 信一
山本 章裕
登録日 2021-03-23 
登録番号 6857272
権利者 株式会社半導体エネルギー研究所
発明の名称 リチウムイオン二次電池  
代理人 蟹田 昌之  
代理人 蟹田 昌之  
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