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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 E04F |
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管理番号 | 1388415 |
総通号数 | 9 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2022-09-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2022-04-18 |
確定日 | 2022-09-02 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第6985873号発明「床材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6985873号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6985873号の請求項1ないし6に係る特許についての出願は、平成29年9月26日に出願したものであって、令和3年11月30日にその特許権の設定登録がされ、令和3年12月22日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1ないし6に係る特許に対し、令和4年4月18日に特許異議申立人菅野慶樹(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。 第2 本件発明 特許第6985873号の請求項1ないし6の特許に係る発明(以下「本件発明1」等といい、全体の発明を「本件発明」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 ウレタンアクリレートとアクリレートを主成分として含む最表面層を有する床材であって、 前記最表面層は、 ウレタンアクリレートとアクリレートの合計100質量部に対して、無機粒子:0〜10質量部、樹脂ビーズ:1〜15質量部、表面調整剤:5〜20質量部、光重合開始剤:1〜8質量部をそれぞれ含み、 前記ウレタンアクリレートの樹脂量と前記アクリレートの樹脂量の質量割合(ウレタンアクリレートの樹脂量:アクリレートの樹脂量)が、40:60〜70:30であり、且つ、 前記最表面層の厚さが0.01〜0.03mmであり、 前記無機粒子および前記樹脂ビーズが前記最表面層内に分散しており、 前記表面調整剤がフッ素系紫外線硬化樹脂である床材。 【請求項2】 ウレタンアクリレートの官能基数が1〜4であり、且つアクリレートの官能基数が1または2である請求項1に記載の床材。 【請求項3】 前記最表面層のグロス値が20以下である請求項1または2に記載の床材。 【請求項4】 前記無機粒子がシリカ粒子であり、前記樹脂ビーズがウレタンビーズである請求項1〜3のいずれかに記載の床材。 【請求項5】 前記樹脂ビーズの含有量が前記無機粒子の含有量よりも多い、請求項1〜4のいずれかに記載の床材。 【請求項6】 前記最表面層は、ウレタンアクリレートとアクリレートの合計100質量部に対して、更に抗菌剤:0.1〜5質量部及び消臭剤:5〜15質量部を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の床材。」 第3 申立理由の概要 1 申立ての理由 特許異議申立書の記載によれば、申立人が主張する申立ての理由は、以下のとおりのものと認められる。 (1)特許法第29条第2項(進歩性欠如) 本件発明1ないし6は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された甲第1号証に記載された発明及び甲第2ないし6号証に記載された技術事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1ないし6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 本件発明1ないし6は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された甲第5号証に記載された発明及び甲第4、6号証に記載された技術事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1ないし6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 2 証拠 申立人が特許異議申立書に添付して提出した証拠(甲第1号証ないし甲第6号証。以下「甲1」ないし「甲6」という。)は、以下のとおりである。 甲1:特開2012−6384号公報 甲2:特開平2−144461号公報 甲3:特開平2−229359号公報 甲4:特開2012−72287号公報 甲5:特開2011−25690号公報 甲6:特開2012−215065号公報 第4 証拠の記載 1 甲1 (1)甲1には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同様。)。 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は、化粧シートに関する。 【背景技術】 ・・・ 【0004】 建築物の外装、内装、建具、家具、車両内装などの表面装飾に用いられる化粧シートにおいても、日常接触する機会の多い部分であり、特に抗アレルゲン性が望まれる。 ・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0008】 ・・・ 本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、耐ブロッキング性、耐傷性を有し、抗アレルゲン性を効率良く発現させることができる化粧シートを提供することを課題としている。」 イ 「【0014】 本発明の化粧シートは、基材シートの表面に単一層または複数層からなる機能層を備えており、機能層の最外表面を構成する層は、硬化性樹脂組成物を塗布、硬化して形成された厚さ5μm以上15μm以下の硬化物塗膜である。そして、硬化性樹脂組成物は、フェノール性水酸基を有する非水溶性高分子からなる抗アレルゲン剤と、平均粒径3μm以上10μm以下のシリカ微粒子とを含有する。さらに、平均粒径3μm以上15μm以下の樹脂ビーズおよび平均粒径3μm以上15μm以下のガラスビーズのうち少なくとも一方のビーズをも含有する。 ・・・ 【0030】 硬化性樹脂組成物に配合されるシリカ微粒子は、レーザー回折・散乱法によって測定した平均粒径が3μm以上10μm以下のものである。また、硬化性樹脂組成物に配合されるビーズは、レーザー回折・散乱法によって測定した平均粒径が3μm以上15μm以下のものである。このような平均粒径を有するシリカ微粒子とビーズを抗アレルゲン剤に組み合わせて配合することで、耐ブロッキング性と耐傷性が効果的に確保されるだけではなく、抗アレルゲン性能が向上する。抗アレルゲン性能が向上する理由は、定かではないが、シリカ微粒子とビーズを組み合わせることで、抗アレルゲン剤の分散性が向上し、抗アレルゲン剤の性能の効率化に寄与していると考えられる。なお、シリカ微粒子およびビーズのうちどちらか一方だけを用いて抗アレルゲン剤に組み合わせても、抗アレルゲン性能、耐ブロッキング性と耐傷性をすべて満足させることができない。 【0031】 シリカ微粒子は、硬化性樹脂組成物の抗アレルゲン性能を低下させずに、主に耐ブロッキング性を付与する目的で配合される。 【0032】 このようなシリカ微粒子は、レーザー回折・散乱法によって測定した平均粒径が3μm以上10μm以下のものが使用されるが、好ましくは、平均粒径4μm以上8μm以下のものが使用される。平均粒径が3μm以上10μm以下の範囲内であると、抗アレルゲン性能を低下させずに、耐ブロッキング性を付与することができる。平均粒径が3μmより小さい場合は、十分な抗アレルゲン性能と耐ブロッキング性能を発現することができない。また、平均粒径が10μmより大きい場合は、アレルゲンのシリカ微粒子への可逆的な吸着が大きくなり、安定した抗アレルゲン性能が発現しない。また、耐傷性も著しく低下する。 【0033】 樹脂ビーズ(樹脂を材質とするビーズ)は、例えば、従来知られている方法、すなわちホモポリマーを重合して製造する方法や、高分子量ポリマーを分解して製造する方法等により得ることができる。例えば、ウレタン樹脂系、アクリル樹脂系、ポリスチレン樹脂系、およびシリコン樹脂系の樹脂ビーズ等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、安価で耐汚染性が高いアクリル樹脂系の樹脂ビーズや、感触を重視する用途の場合には触感が優れるウレタン樹脂系の樹脂ビーズが好ましい。 ・・・ 【0035】 このような樹脂ビーズおよびガラスビーズは、レーザー回折・散乱法によって測定した平均粒径が3μm以上15μm以下のものが使用されるが、好ましくは、平均粒径4μm以上8μm以下のものが使用される。平均粒径が3μmより小さい場合は、ビーズが塗膜中に埋没するため、耐ブロッキング性や耐傷性に寄与しない。また、平均粒径が15μmより大きい場合は、耐ブロッキング性を確保することはできるが、ビーズの欠けが生じるなど耐傷性が発現しにくい。 【0036】 なお、シリカ微粒子やビーズは、平均粒径が上記した範囲内であれば、異なる平均粒径を持つものを組み合わせて用いてもよい。ビーズの平均粒径がシリカ微粒子の平均粒径と比較して小さいと、抗アレルゲン性能がより向上する傾向にある。逆に、ビーズの平均粒径がシリカ微粒子の平均粒径と比較して大きいと、耐ブロッキング性と耐傷性がより向上する傾向にある。このため、ビーズの平均粒径が、シリカ微粒子の平均粒径に対して大きなものと小さなものを組み合わせて用いることが好ましい。 ・・・ 【0038】 機能層の最外表面を構成する層は、硬化性樹脂組成物を架橋により硬化させて厚さ5μm以上15μm以下の塗膜で形成される。塗膜厚さは、好ましくは、7μm以上14μm以下である。塗膜厚さが5μm以上15μm以下であることにより、特に耐ブロッキング性と耐傷性が向上する。塗膜厚さが5μm未満では、抗アレルゲン剤、シリカ微粒子およびビーズを効率よく分散させることができず、また、安定に塗布することが困難となり、抗アレルゲン性能、耐ブロッキング性、耐傷性が低下する。塗膜厚さが15μmを超える場合には、塗膜割れを起こすなど耐ブロッキング性、耐傷性が低下する。 ・・・ 【0047】 反応性オリゴマーの配合量は、硬化性樹脂組成物全量に対して好ましくは10〜70質量%、より好ましくは20〜50質量%である。配合量を10質量%以上とすることで、十分な塗膜強度とすることができるので好ましい。配合量を70質量%以下とすることで、塗膜が硬くなり過ぎず、脆くなりにくくなるので好ましい。 ・・・ 【0053】 反応性モノマーの配合量は、抗アレルゲン性能を低下することなく硬化性樹脂組成物の低粘度化を実現するとともに、他の塗膜物性も確保する点からは、硬化性樹脂組成物全量に対して好ましくは3〜45質量%、より好ましくは5〜40質量%である。 ・・・ 【0059】 硬化性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内において、反応性オリゴマー、反応性モノマー、および光重合開始剤以外の他の添加剤を配合することができる。このような添加剤としては、例えば、ワックス、抗菌剤、防黴剤、非反応性希釈剤、重合禁止剤、艶消し剤、消泡剤、沈降防止剤、レベリング剤、分散剤、熱安定剤、紫外線吸収剤が挙げられる。」 ウ 「【実施例】 【0075】 実施例および比較例で用いた配合成分は以下の通りである。(配合表1、2参照) ・・・ (2)シリカ微粒子 ・富士シリシア社製「サイロホービック702」(平均粒径4.1μm) ・・・ (3) 樹脂ビーズ ・ガンツ化成社製「GM-0401S」(平均粒径4μm) ・・・ (4)オリゴマー樹脂 ・日本合成化学社製「UV−7550B」ウレタンアクリレート (5)反応性モノマー ・第一工業製薬社製「ME−3」メトキシトリエチレングリコールアクリレート ・第一工業製薬社製「L−C9A」2個のメタアクリロイル基を有する脂肪族炭化水素モノマー ・東亞合成社製「M−220」トリプロピレングリコールジアクリレート ・東亞合成社製「M−310」トリメチロールプロパンPO変性トリアクリレート (6)光重合開始剤 ・Ciba社製「ダロキュアMBF」メチロベンゾイルホルマート 上記の配合成分を表1および表2に示す配合量(質量部)で配合し、均一に混合することにより硬化性樹脂組成物を調整した。 【0076】 この硬化性樹脂組成物を用いて、次の方法により化粧シートを作製した。厚さ80μmのオレフィン樹脂系の基材シートに、木目柄のインキ絵柄層、接着剤層、透明樹脂層を順次設けた。次いで、最外表面にトップコート層として、上記を配合して調整した硬化性樹脂組成物をリバースロールコートにて塗工した。その後、紫外線照射もしくは電子線照射を行い硬化反応させた。 【0077】 紫外線照射は、空気中、120mW/cm、350mj/cm2で行った。電子線照射は、上記配合より、光重合開始剤を添加せずに配合を実施し、窒素雰囲気下中、150kv、50kGyで行った。」 エ 【0079】に記載された【表1】は次のものである。 「 ![]() 」 上記ウも参照すると、【表1】の「GM-0401」は「樹脂ビーズ」であることから、【0075】にて実施例に用いたと記載されている樹脂ビーズである「GM-0401S」と同じ物を指すと認められる。同様に、【表1】の「MBF」は「ダロキュアMBF」を指すものと認められる。そうすると、【表1】から「実施例5」について以下の点が看取される。 (ア)「硬化性樹脂組成物は、合計100.0質量部に対して、ウレタンアクリレートとしてUV−7550Bを24.0質量部含み、反応性モノマーとして、トリメチロールプロパンPO変性トリアクリレートであるM−310を12.8質量部、トリプロピレングリコールジアクリレートであるM−220を14.4質量部、2個のメタアクリロイル基を有する脂肪族炭化水素モノマーであるL−C9Aを14.4質量部、メトキシトリエチレングリコールアクリレートであるME−3を14.4質量部、それぞれ含み、シリカ微粒子としてサイロホービック702を4.0質量部含み、樹脂ビーズとしてGM-0401Sを4.0質量部含み、光重合開始剤としてダロキュアMBFを4.0質量部含み、塗膜厚さが14μmである」点。 (2)上記(1)からみて、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認める。 「建築物の内装の表面装飾に用いられる化粧シートであって、 化粧シートは、基材シートの表面に機能層を備えており、機能層の最外表面を構成する層は、硬化性樹脂組成物を塗布、硬化して形成された硬化物塗膜であり、 硬化性樹脂組成物は、合計100.0質量部に対して、ウレタンアクリレートとしてUV−7550Bを24.0質量部含み、反応性モノマーとして、トリメチロールプロパンPO変性トリアクリレートであるM−310を12.8質量部、トリプロピレングリコールジアクリレートであるM−220を14.4質量部、2個のメタアクリロイル基を有する脂肪族炭化水素モノマーであるL−C9Aを14.4質量部、メトキシトリエチレングリコールアクリレートであるME−3を14.4質量部、それぞれ含み、シリカ微粒子としてサイロホービック702を4.0質量部含み、樹脂ビーズとしてGM-0401Sを4.0質量部含み、光重合開始剤としてダロキュアMBFを4.0質量部含み、塗膜厚さが14μmであり、 硬化性樹脂組成物には、他の添加剤を配合することができ、このような添加剤としては、レベリング剤が挙げられる、 化粧シート。」 2 甲2 (1)甲2には、以下の事項が記載されている。 ア 「2.特許請求の範囲 1)基材の表面に、軟質合成樹脂に略球状の微細粒子を添加してなる塗膜を形成してなる床材。」(第1頁左下欄第5〜7行) イ 「〔作用〕 本発明にあっては、基材の表面に、軟質合成樹脂に略球状の微細粒子を添加してなる塗膜を形成してなるが故に、塗膜の上面は、微細粒子が軟質合成樹脂によって被覆された多数の凹凸が存在した状態となり、凹凸形状と軟質合成樹脂の摩擦抵抗による相乗的なノンスリップ機能が発揮されると共にざらつきもなく、しかも、微細粒子が略球状であるため、肌触り感が滑らかであると共に、塗料に添加されて塗装される際の問題も発生し難くて、生産性も向上されるものである。」(第2頁左上欄第18行〜右上欄第8行) ウ 「該上塗り処理によって形成された塗膜7において、前記軟質ウレタン塗料が軟質合成樹脂5として、前記ウレタンビーズが略球状の微細粒子6として存在するものであり、該塗膜7の上面は、微細粒子6に沿うように軟質合成樹脂5が被覆された多数の凹凸が存在した状態となり、凹凸形状と軟質合成樹脂の摩擦抵抗による相乗的なノンスリップ機能〔該実施例におけるノンスリップ機能としては、滑り抵抗係数0.4(最大系0.35〜0.45)が得られた〕が発揮されると共にざらつきもなく、しかも、微細粒子6が略球状であるため、肌触り感が滑らかであると共に、塗料に添加されて塗装される際の問題も発生し難くて、フローコーターによる塗布作業もスムーズになされ、生産性も向上されるものである。」(第2頁左下欄第12行〜右下欄第7行) エ 「〔発明の効果〕 上述の如く、本発明の床材においては、基材の表面に、軟質合成樹脂に略球状の微細粒子を添加してなる塗膜を形成してなるが故に、塗膜の上面は、微細粒子に沿うように軟質合成樹脂が被覆された多数の凹凸が存在した状態となり、凹凸形状と軟質合成樹脂の摩擦抵抗による相乗的なノンスリップ機能が発揮されると共にざらつきもなく、しかも、微細粒子が略球状であるため、肌触り感が滑らかであると共に、塗料に添加されて塗装される際の問題も発生し難くて、生産性も向上されるものである。 4.図面の簡単な説明 第1図は本発明の一実施例を示す要部拡大断面図、第2図は別の実施例を示す要部拡大断面図、第3図、第4図は本発明の従来例を示す要部拡大断面図である。 図において、1は基材、2は表面、3は粒状体、4は塗料被覆層、5は軟質合成樹脂、6は微細粒子、7は塗膜、8は合板、9は表面単板、10は塩化ビニル樹脂シートである。」(第3頁左上欄第20行〜右上欄第20行) オ 第1図及び第2図は次のものである。 「 ![]() 」 3 甲3 (1)甲3には、以下の事項が記載されている。 ア 「2.特許請求の範囲 (1) 床被覆層として、粒径1〜4mmの無発泡合成樹脂粒状体が合成樹脂塗料層中に分散されたものであることを特徴とするノンスリップ床構造。」(第1頁左下欄第5〜8行) イ 「〔問題点を解決するための手段〕 この発明では、床の摩擦抵抗を増す為の手段としては、散在する突起を設けるようにしている。突起を設ける為には、塗料組成物中に粒状物を含ませて一回で塗装したり、粒状物をサンドイッチにする形で最初塗料層を設け、生乾き状態の時に粒状物を散布し更に塗料をその上へ塗装するという方法がある。そして、得られる床構造自体は塗料層に覆われた粒状物による散在突起が床面に多数形成されたものである。この発明の特徴となる粒状物には、ポリエチレン,ポリプロピレン,ナイロン,ポリウレタン,ポリスチレン,ポリカーボネイト,アクリライト、ポリエステル,ポリ塩化ビニリデン,塩化ビニル樹脂,酢酸ビニル樹脂,ABS(アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂,AS(アクリルニトリル−スチレン)樹脂などおよびこれらの共重合物があげられる。」(第2頁左上欄第8行〜右上欄第4行) 4 甲4 (1)甲4には、以下の事項が記載されている。 ア 「【請求項1】 下記単量体(1)、単量体(2)及び単量体(3)で表される(メタ)アクリル酸エステルからなる含フッ素グラフト共重合体であって、枝ポリマーおよび幹ポリマーの少なくとも一方が下記単量体(1)で表される含フッ素モノマーからなる構成単位を含有するグラフト共重合体を含んでなる含フッ素表面調整剤。」 イ 「【技術分野】 【0001】 本発明は樹脂、光学材料、塗料等の分野で用いられる表面改質剤として有用な、パーフルオロアルケニル基を有する含フッ素グラフト共重合体に関する。」 ウ 「【発明の効果】 【0015】 本発明の含フッ素グラフト共重合体は、上記特殊なパーフルオロ部位が存在するため、塗工液の塗工工程におけるスジ、ハジキ、ムラ、ブツ、不濡れ等の抑制、すなわち塗工膜表面への平滑性が付与される。有機フッ素化合物はその分解性の低さから環境への負荷が問題となっているが、本発明によると表面平滑性に優れ、かつ低泡性の含フッ素表面調整剤を従来(ランダム共重合体)よりも少ないフッ素モノマー比率で製造できる。」 エ 「【0056】 本発明の含フッ素グラフト共重合体を塗工液に配合する場合、塗工液中にはこの他に硬化性モノマー成分、光重合開始剤、溶剤等を配合することができる。 【0057】 硬化性モノマー成分としては、塗工液に使用される通常の硬化性樹脂モノマー成分であれば特に限定されず、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリシクロデカンジメチロールジアクリレート、ビスフェノールF EO変性ジアクリレート、ビスフェノールA EO変性ジアクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、各種ウレタンアクリレートオリゴマー(日本合成化学工業株式会社製 紫光シリーズ、根上工業株式会社製 アートレジンシリーズ等)等が挙げられるが、特にこれらに限定するものではない。これらの硬化性樹脂モノマーは単独で使用しても良いし、2種以上を混合して使用してもよい。 ・・・ 【0064】 塗工方法は、特に制限されず、従来公知の塗工方法が採用でき、例えば、バーコーター等を使用すればよい。効果方法も紫外線、熱等のエネルギー等により硬化させる方法を採用できる。」 オ 「【産業上の利用可能性】 【0090】 含フッ素グラフト共重合体は、樹脂、工学材料、塗料等の分野で用いられる表面改質剤として有用であり、基材表面に平滑性、撥水撥油性を付与させることができる化合物として有用である。」 5 甲5 (1)甲5には、以下の事項が記載されている。 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は、ダニ、花粉やペット由来のアレルゲン物質を抑制することのできる、住宅用建材等に適用可能な木質板に関するものである。 ・・・ 【発明が解決しようとする課題】 ・・・ 【0015】 本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、耐傷性と耐摩耗性、および耐艶変化に優れ、ワックスによる補修をほとんど必要としない抗アレルゲン性を有する木質板を提供することを課題としている。」 イ 「【0020】 本発明の木質板は、板状の木質基材と、この木質基材の最表面に配設され単一層または複数層から形成された機能層とを備え、機能層の表面を構成する層が抗アレルゲン剤を含有している抗アレルゲン性を有する木質板である。そして、機能層の表面を構成する層が、抗アレルゲン剤、ウレタンアクリレート樹脂、および補強充填材として平均粒径3〜12μmのシリカ微粒子粉末および/または平均粒径3〜30μmの樹脂ビーズを含有する硬化性樹脂組成物を塗布、硬化して形成された厚さ5μm以上の塗膜であり、JIS K5400の標準方法による塗膜面の鉛筆硬度が2H以上である。 ・・・ 【0047】 硬化性樹脂組成物におけるウレタンアクリレート樹脂の含有量は、硬化性樹脂組成物全量に対して好ましくは10〜70質量%、より好ましくは20〜50質量%である。当該含有量が少な過ぎると、塗膜の耐傷性と耐摩耗性、および耐艶変化が不十分となる場合があり、また抗アレルゲン性が不十分となる場合がある。当該含有量が多過ぎると、塗膜が硬過ぎて密着性が低下する場合があり、またクラックが発生し易くなる。 ・・・ 【0057】 硬化性樹脂組成物における1個または2個の(メタ)アクリロイル基を有する脂肪族炭化水素モノマーの含有量は、抗アレルゲン性を低下することなく硬化性樹脂組成物の低粘度化を実現するとともに、他の塗膜物性も確保する点からは、硬化性樹脂組成物の固形分に対して好ましくは3〜45質量%、より好ましくは5〜40質量%である。 ・・・ 【0060】 抗アレルゲン剤を含有する層の形成に用いられる硬化性樹脂組成物には、補強充填材として平均粒径3〜12μmのシリカ微粒子粉末および/または平均粒径3〜30μmの樹脂ビーズが配合される。このような補強充填材を配合することで、抗アレルゲン性を低下させることなく、硬化性樹脂組成物による塗膜に耐傷性と耐摩耗性、および耐艶変化を容易に付与することができる。 【0061】 補強充填材としてのシリカ微粒子粉末は、その製法や形状に特に制限はない。シリカ微粒子粉末は表面処理の違いに関わらず良好な分散性で硬化性樹脂組成物に混合され、抗アレルゲン性を低下させることなしに、容易に耐傷性と耐摩耗性、および耐艶変化を発現することができる。なかでも、細孔容積の大きなシリカ微粒子粉末が好ましい。すなわち、細孔容積が大きいと硬化性樹脂組成物中の抗アレルゲン剤を表面に集め、塗膜の表面に効率よく配向させることが可能となる。 【0062】 シリカ微粒子粉末は、平均粒径(体積基準メジアン径:d50)が3〜12μmであり、その含有量は、補強充填材として樹脂ビーズを併用する場合も含めて、硬化性樹脂組成物全量に対して好ましくは1〜10質量%である。平均粒径と含有量を適切に制御することにより、上記したような鉛筆硬度を持った塗膜を、確実に形成することができるため、抗アレルゲン性を低下させることなく、耐傷性と耐摩耗性、および耐艶変化を良好なものとすることができ、さらに、硬化性樹脂組成物による塗膜の仕上がり外観および肌触り感を良好なものとすることができる。 【0063】 補強充填材としての樹脂ビーズは、例えば、従来より知られている方法、すなわちホモポリマーを重合して製造する方法や、高分子量ポリマーを分解して製造する方法等により得ることができる。 【0064】 樹脂ビーズとしては、例えば、ウレタン樹脂系、アクリル樹脂系、ポリスチレン樹脂系、およびシリコン樹脂系の樹脂ビーズ等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。 【0065】 なかでも、摩擦係数が小さいシリコン樹脂系の樹脂ビーズ好ましいが、抗アレルゲン材との親和性の点からは、アクリル樹脂系の樹脂ビーズがより好ましい。アクリル樹脂系の樹脂ビーズは、硬化性樹脂組成物中の抗アレルゲン材と親和性が高いため効果的に抗アレルゲン剤を集めて、表面に配向させることが可能と考えられる。そしてこの抗アレルゲン剤を表面に配向した樹脂ビーズが塗膜表面に配置されやすいため、他の樹脂ビーズと比較して抗アレルゲン性能が発現しやすくなる。ただし、アクリル樹脂系の樹脂ビーズの場合、摩擦係数が大きいため、スリップ止め効果により逆に傷が付き易くなる可能性がある。そのため、アクリル樹脂系の樹脂ビーズを用いる場合には、適宜、シリカやワックス添加剤等を加え、塗膜表面の摩擦係数を小さくすることが好ましい。 【0066】 本発明に用いられる樹脂ビーズは、平均粒径(体積基準メジアン径:d50)が3〜30μm、より好ましくは5〜20μmである。なお、樹脂ビーズの平均粒径がこの範囲内であれば、異なる平均粒径を持つ樹脂ビーズを組み合わせて用いてもよい。 【0067】 また、樹脂ビーズの含有量は、補強充填材としてシリカ微粒子粉末を併用する場合も含めて、硬化性樹脂組成物全量に対して好ましくは1〜50質量%、より好ましくは5〜40質量%である。平均粒径と含有量を適切に制御することにより、上記したような鉛筆硬度や光沢度変化を持った塗膜を、確実に形成することができるため、抗アレルゲン性を低下させることなく、耐傷性と耐摩耗性、および耐艶変化を付与することができ、さらに、硬化性樹脂組成物による塗膜の仕上がり外観および肌触り感を良好なものとすることができる。 【0068】 なお、補強充填材としてのシリカ微粒子粉末および樹脂ビーズは、球状であることが好ましい。補強充填材として角が尖った多角形状のものを用いた場合、ロールコーターやドクターブレードを摩耗させたり、傷つけたりして、製造上問題が生じる場合がある。さらに、補強充填材として硬質で角の尖った多角形状の粉末を添加した硬化性樹脂組成物による塗膜は、手触り感が悪く、感触を重視する用途には利用できない可能性がある。また、床材に用いた場合、履物等のように床材に直接接触する物を摩耗させる可能性も考えられる。 ・・・ 【0074】 本発明に用いられる硬化性樹脂組成物には、上記に例示した成分に加えて、本発明の効果を損なわない範囲内において、さらに他の添加剤を配合することができる。このような添加剤としては、例えば、ワックス、抗菌剤、防黴剤、非反応性希釈剤、重合禁止剤、艶消し材、消泡剤、沈降防止剤、レベリング剤、分散剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、有機溶剤等が挙げられる。有機溶剤としては、例えば、アルコール、ケトン、エステル類、アミン等が挙げられる。中でも、アルコール、ケトン、エステル類等の電子供与性の高い溶剤は、溶解し易く好適である。 【0075】 本発明では、以上に説明したような硬化性樹脂組成物を板状の木質基材またはこの木質基材面に予め形成した機能層を構成する層に塗布し、次いで塗膜を硬化することで、木質板を得ることができる。木質板としては、例えば、フローリング床等の床材、室内の壁材、階段、框、ドア、カウンター、家具の側面板・前面板等が挙げられる。」 ウ 「【実施例】 ・・・ 【0087】 実施例および比較例で用いた配合成分は以下の通りである。 ・・・ 2)ウレタンアクリレート樹脂(脂肪族ウレタンアクリレート樹脂、以下の官能数は(メタ)アクリロイル基の官能数) ・UA−6LPA、新中村化学工業(株)製、平均分子量(Mw)818、6官能 ・EBECRYL1290、ダイセル・サイテック(株)製、平均分子量(Mw)1000、6官能 ・UV−7550B、日本合成化学(株)製、平均分子量(Mw)2400、3官能 3)反応性モノマー ・L−C9A、第一工業製薬(株)製、脂肪族炭化水素モノマー ・アロニックスM−215、東亞合成(株)製、Tg100℃以上のモノマー ・ACMO、(株)興人製、Tg100℃以上のモノマー ・アロニックスM−309、東亞合成(株)製 ・アロニックスM−220、東亞合成(株)製 ・4−HBA、大阪有機化学工業(株)製 4)補強充填材 ・ガンツパールGM−0401、ガンツ化成(株)製、アクリル樹脂系の樹脂ビーズ、平均粒径4μm ・ガンツパールGM−1001、ガンツ化成(株)製、アクリル樹脂系の樹脂ビーズ、平均粒径10μm ・ガンツパールGB−2201、ガンツ化成(株)製、アクリル樹脂系の樹脂ビーズ、平均粒径22μm ・ガンツパールGB−4001、ガンツ化成(株)製、アクリル樹脂系の樹脂ビーズ、平均粒径40μm ・サイリシア420、富士シリシア化学(株)製、シリカ微粒子粉末、平均粒径3.1μm ・サイリシア450、富士シリシア化学(株)製、シリカ微粒子粉末、平均粒径8.0μm ・サイリシア470、富士シリシア化学(株)製、シリカ微粒子粉末、平均粒径14.1μm 5)艶消し材 ・サイロホービック702、富士シリシア化学(株)製、平均粒径4.1μm ・サイリシア440、富士シリシア化学(株)製、平均粒径6.2μm 6)光重合開始剤 ・IRGACURE500、Ciba社製 上記の配合成分を表1に示す配合量(質量部)で配合し、均一に混合することにより硬化性樹脂組成物を調整した。」 エ 【0092】に記載された【表1】は次のものである。 「 ![]() 」 上記ウも参照すると、【表1】の「M−215」は「反応性モノマー」であることから、【0087】にて実施例に用いたと記載されている反応性モノマーである「アロニックスM−215」と同じ物を指すと認められる。同様に、【表1】の「M−309」は「アロニックスM309」を、「M−220」は「アロニックスM−220」を、「GM0401」は「ガンツパールGM−0401」を指すものと認められる。そうすると、【表1】から「実施例4」について以下の点が看取される。 (ア)「硬化性樹脂組成物は、合計102.0質量部に対して、ウレタンアクリレート樹脂としてEBECRYL1290を26.1質量部含み、反応性モノマーとして、脂肪族炭化水素モノマーであるL−C9Aを14.9質量部、Tg100℃以上のモノマーであるアロニックスM−215を1.9質量部、Tg100℃以上のモノマーであるACMOを11.2質量部、アロニックスM−309を3.7質量部、アロニックスM−220を10.8質量部、4−HBAを6.0質量部それぞれ含み、補強充填材としてアクリル樹脂系の樹脂ビーズであるガンツパールGM−0401を7.5質量部含み、光重合開始剤としてIRGACURE500を5.6質量部含み、塗膜厚さが10μmである」点。 (2)上記(1)からみて、甲5には、次の発明(以下「甲5発明」という。)が記載されているものと認める。 「板状の木質基材と、この木質基材の最表面に配設された機能層とを備え、 機能層の表面を構成する層が、硬化性樹脂組成物を塗布、硬化して形成された塗膜であり、 硬化性樹脂組成物は、合計102.0質量部に対して、ウレタンアクリレート樹脂としてEBECRYL1290を26.1質量部含み、反応性モノマーとして、脂肪族炭化水素モノマーであるL−C9Aを14.9質量部、Tg100℃以上のモノマーであるアロニックスM−215を1.9質量部、Tg100℃以上のモノマーであるACMOを11.2質量部、アロニックスM−309を3.7質量部、アロニックスM−220を10.8質量部、4−HBAを6.0質量部それぞれ含み、補強充填材としてアクリル樹脂系の樹脂ビーズであるガンツパールGM−0401を7.5質量部含み、光重合開始剤としてIRGACURE500を5.6質量部含み、塗膜厚さが10μmであり、 硬化性樹脂組成物には、さらに他の添加剤を配合することができ、このような添加剤としては、レベリング剤が挙げられ、 木質板としては、床材が挙げられる、 木質板。」 6 甲6 (1)甲6には、以下の事項が記載されている。 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は、床用化粧シート及び床用化粧材に関する。」 イ 「【0067】 表面保護層は、必要に応じて、可塑剤、安定剤、充填剤、分散剤、染料、顔料等の着色剤、溶剤等を含んでもよい。また、本発明の効果を損なわない範囲において、耐候剤、抗菌剤、抗アレルゲン剤、消臭剤といった機能剤を含んでもよい。」 第5 当審の判断 1 特許法第29条第2項(進歩性欠如)について (1)本件発明1について(甲1発明に基づく検討) ア 対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 (ア)甲1発明において「ウレタンアクリレート」として含まれる「UV−7550B」は、本件発明1の「ウレタンアクリレート」に相当し、甲1発明において「反応性モノマー」として含まれる「トリメチロールプロパンPO変性トリアクリレートであるM−310」、「トリプロピレングリコールジアクリレートであるM−220」、「2個のメタアクリロイル基を有する脂肪族炭化水素モノマーであるL−C9A」及び「メトキシトリエチレングリコールアクリレートであるME−3」は、いずれも本件発明1の「アクリレート」に相当する。そして、甲1発明において「ウレタンアクリレート」と「反応性モノマー」の合計は、100.0質量部中の80.0質量部を占めるから、「ウレタンアクリレート」と「反応性モノマー」は「硬化性樹脂組成物」の「主成分」といえるものである。 そして、甲1発明の「機能層の最外表面を構成する層」は、本件発明1の「最表面層」に相当する。 そうすると、甲1発明の「建築物の内装の表面装飾に用いられる化粧シートであって、化粧シートは、基材シートの表面に機能層を備えており、機能層の最外表面を構成する層は、硬化性樹脂組成物を塗布、硬化して形成された硬化物塗膜であり、硬化性樹脂組成物は、合計100.0質量部に対して、ウレタンアクリレートとしてUV−7550Bを24.0質量部含み、反応性モノマーとして、トリメチロールプロパンPO変性トリアクリレートであるM−310を12.8質量部、トリプロピレングリコールジアクリレートであるM−220を14.4質量部、2個のメタアクリロイル基を有する脂肪族炭化水素モノマーであるL−C9Aを14.4質量部、メトキシトリエチレングリコールアクリレートであるME−3を14.4質量部、それぞれ含」む点と、本件発明1の「ウレタンアクリレートとアクリレートを主成分として含む最表面層を有する床材」とは、「ウレタンアクリレートとアクリレートを主成分として含む最表面層を有する建築物の内装材」の点で共通する。 (イ)甲1発明において「シリカ微粒子」として含まれる「サイロホービック702」は、本件発明1の「無機粒子」に相当し、甲1発明において「樹脂ビーズ」として含まれる「GM-0401S」は、本件発明1の「樹脂ビーズ」に相当し、甲1発明において「光重合開始剤」として含まれる「ダロキュアMBF」は、本件発明1の「光重合開始剤」に相当する。 そして、甲1発明では、「硬化性樹脂組成物」の「合計100.0質量部に対して」「シリカ微粒子としてサイロホービック702を4.0質量部含み、樹脂ビーズとしてGM-0401Sを4.0質量部含み、光重合開始剤としてダロキュアMBFを4.0質量部含」むものであるが、「ウレタンアクリレート」と「反応性モノマー」の合計である80.0質量部を100.0質量部に換算すると、いずれも4.0×100.0÷80.0=5.0質量部となる。 そうすると、甲1発明の「機能層の最外表面を構成する層は、硬化性樹脂組成物を塗布、硬化して形成された硬化物塗膜であり、硬化性樹脂組成物は、合計100.0質量部に対して、ウレタンアクリレートとしてUV−7550Bを24.0質量部含み、反応性モノマーとして、トリメチロールプロパンPO変性トリアクリレートであるM−310を12.8質量部、トリプロピレングリコールジアクリレートであるM−220を14.4質量部、2個のメタアクリロイル基を有する脂肪族炭化水素モノマーであるL−C9Aを14.4質量部、メトキシトリエチレングリコールアクリレートであるME−3を14.4質量部、それぞれ含み、シリカ微粒子としてサイロホービック702を4.0質量部含み、樹脂ビーズとしてGM-0401Sを4.0質量部含み、光重合開始剤としてダロキュアMBFを4.0質量部含」む点と、本件発明1の「前記最表面層は、ウレタンアクリレートとアクリレートの合計100質量部に対して、無機粒子:0〜10質量部、樹脂ビーズ:1〜15質量部、表面調整剤:5〜20質量部、光重合開始剤:1〜8質量部をそれぞれ含み」の点とは、「前記最表面層は、ウレタンアクリレートとアクリレートの合計100質量部に対して、無機粒子:0〜10質量部、樹脂ビーズ:1〜15質量部、光重合開始剤:1〜8質量部をそれぞれ含み」の点で共通する。 (ウ)甲1発明において、「機能層の最外表面を構成する層は、硬化性樹脂組成物を塗布、硬化して形成された硬化物塗膜であり」、「硬化性樹脂組成物」の「塗膜厚さが14μmであ」る点は、本件発明1の「前記最表面層の厚さが0.01〜0.03mmであり」の点に相当する。 (エ)以上のことから、本件発明1と甲1発明とは、 「ウレタンアクリレートとアクリレートを主成分として含む最表面層を有する建築物の内装材であって、 前記最表面層は、 ウレタンアクリレートとアクリレートの合計100質量部に対して、無機粒子:0〜10質量部、樹脂ビーズ:1〜15質量部、光重合開始剤:1〜8質量部をそれぞれ含み、 前記最表面層の厚さが0.01〜0.03mmである、 建築物の内装材。」 で一致するものの、以下の点で相違している。 〔相違点1〕本件発明1が「床材」であるのに対し、甲1発明はそのように特定されていない点。 〔相違点2〕本件発明1は、「前記最表面層は、ウレタンアクリレートとアクリレートの合計100質量部に対して」、「表面調整剤:5〜20質量部」を含むのに対し、甲1発明は、そのような構成を備えていない点。 〔相違点3〕本件発明1は、「前記ウレタンアクリレートの樹脂量と前記アクリレートの樹脂量の質量割合(ウレタンアクリレートの樹脂量:アクリレートの樹脂量)が、40:60〜70:30であ」るのに対し、甲1発明は、そのようになっていない点。 〔相違点4〕本件発明1は、「前記無機粒子および前記樹脂ビーズが前記最表面層内に分散して」いるのに対し、甲1発明は、そのような構成を備えるか明らかでない点。 〔相違点5〕本件発明1は、「前記表面調整剤がフッ素系紫外線硬化樹脂である」のに対し、甲1発明は、そのような構成を備えていない点。 イ 判断 事案に鑑み、まず上記相違点2について検討する。 (ア)本件特許出願の明細書の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。 「【0034】 表面調整剤は、耐汚染性を向上させるために含有させる。すなわち、表面調整剤は、最表面層を形成する際に、コーテイング剤に低い表面張力を与えるように作用し、コーティング剤に優れた均一塗布性を実現し、最表面層表面の平滑度を高めるため、床材の耐汚染性が優れたものとなる。 【0035】 床材の耐汚染性とは、例えば、最表面層に微細な凹凸が存在したり、微細な疵が存在したりすると、キャスターなどの黒色ゴムが付着しやすくなるのであるが、このような汚れがつきにくく、拭き掃除等の簡単なメンテナンスで汚れが落ちやすい特性を意味する。 【0036】 こうした効果を発揮させるためには、表面調整剤の含有量は、ウレタンアクリレートとアクリレートの合計100質量部に対して、5質量部以上とする必要がある。好ましくは7質量部以上である。しかしながら、表面調整剤の合有量が過剰になっても、最表面層の強度が低下して耐摩耗性が劣化するので、ウレタンアクリレートとアクリレートの合計100質量部に対して、20質量部以下とする必要がある。好ましくは、15質量部以下である。上記のような作用を発揮する表面調整剤としては、代表的には、フッ素系紫外線硬化樹脂が挙げられる。」 (イ)上記(ア)より、本件発明1において、「表面調整剤」は「耐汚染性を向上させるため」に含有するものであり、「耐汚染性」向上の効果を発揮させつつ「耐摩耗性」が劣化しないように、「ウレタンアクリレートとアクリレートの合計100質量部に対して」「5〜20質量部」という配合量が実験的に決定されたものと認められる。 (ウ)甲1発明において、本件発明1の「表面調整剤」に相当する「レベリング剤」は、「硬化性樹脂組成物に」「配合することができ」ると示唆されているものの、上記第4の1(1)イの【0059】の記載のとおり、甲1においては多々ある一般的な添加剤の一つとして記載されているにすぎず、具体的な配合量は記載されていないから、当業者が甲1発明において「硬化性樹脂組成物に」「レベリング剤」を配合するとしても、その割合を「ウレタンアクリレートとアクリレートの合計100質量部に対して」「5〜20質量部」とすることは、当業者が容易に想到できたこととはいえない。 (エ)そして、本件発明1においては、上記(イ)のとおり、「表面調整剤」を「ウレタンアクリレートとアクリレートの合計100質量部に対して」、「5〜20質量部」配合することで、「耐汚染性」向上の効果を発揮させつつ「耐摩耗性」の劣化を防ぐという効果を得ることができるから、「5〜20質量部」という数値範囲が単なる設計事項ということはできない。 (オ)以上の検討は、甲2ないし甲6に記載の技術事項を併せみても同様である。 (カ)したがって、甲1発明において、甲2ないし甲6に記載の事項を適用することにより、上記相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。 ウ 小括 よって、その余の点を検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2ないし甲6に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明1について(甲5発明に基づく検討) ア 対比 事案に鑑み、本件発明1の上記相違点2に関する点につき、本件発明1と甲5発明とを対比すると、本件発明1と甲5発明とは、少なくとも以下の点で相違する。 〔相違点A〕本件発明1は、「前記最表面層は、ウレタンアクリレートとアクリレートの合計100質量部に対して」、「表面調整剤:5〜20質量部」を含むのに対し、甲5発明は、そのような構成を備えていない点。 イ 判断 上記相違点Aについて検討する。 (ア)甲5発明において、本件発明1の「表面調整剤」に相当する「レベリング剤」は、「硬化性樹脂組成物に」「配合することができ」ると示唆されているものの、上記第4の5(1)イの【0074】の記載のとおり、甲5においては多々ある一般的な添加剤の一つとして記載されているにすぎず、具体的な配合量は記載されていないから、当業者が甲5発明において「硬化性樹脂組成物に」「レベリング剤」を配合するとしても、その割合を「ウレタンアクリレートとアクリレートの合計100質量部に対して」「5〜20質量部」とすることは、当業者が容易に想到できたこととはいえない。 (イ)そして、本件発明1においては、上記(1)イ(イ)のとおり、「表面調整剤」を「ウレタンアクリレートとアクリレートの合計100質量部に対して」、「5〜20質量部」配合することで、「耐汚染性」向上の効果を発揮させつつ「耐摩耗性」の劣化を防ぐという効果を得ることができるから、「5〜20質量部」という数値範囲が単なる設計事項ということはできない。 (ウ)以上の検討は、甲1ないし甲4、甲6に記載の技術事項を併せみても同様である。 (エ)したがって、甲5発明において、甲1ないし甲4、甲6に記載の事項を適用することにより、上記相違点Aに係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。 ウ 小括 よって、その余の点を検討するまでもなく、本件発明1は、甲5発明及び甲1ないし甲4、甲6に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明2ないし6について 本件発明2ないし6は、本件発明1の構成を全て含み、さらに限定を付加する発明である。 したがって、本件発明2ないし6は、上記(1)に示した理由と同様の理由により、甲1発明、甲2ないし甲6に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 また、本件発明2ないし6は、上記(2)に示した理由と同様の理由により、甲5発明、甲1ないし甲4、甲6に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第6 むすび したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし6に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1ないし6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2022-08-22 |
出願番号 | P2017-185102 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(E04F)
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最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
住田 秀弘 |
特許庁審判官 |
奈良田 新一 西田 秀彦 |
登録日 | 2021-11-30 |
登録番号 | 6985873 |
権利者 | フクビ化学工業株式会社 |
発明の名称 | 床材 |
代理人 | 小谷 昌崇 |
代理人 | 小谷 悦司 |
代理人 | 宇佐美 綾 |