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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G06Q
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G06Q
審判 全部申し立て 2項進歩性  G06Q
審判 全部申し立て 6項4号請求の範囲の記載形式不備  G06Q
管理番号 1388432
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-09-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-06-08 
確定日 2022-08-29 
異議申立件数
事件の表示 特許第6976528号発明「情報管理装置及びコンピュータプログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6976528号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6976528号の請求項1〜5に係る特許についての出願は、平成29年12月22日に特許出願され、令和3年11月12日にその特許権の設定登録がされ、令和3年12月8日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和4年6月8日に、特許異議申立人 出川栄一郎(以下、申立人という。)により特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
特許第6976528号の請求項1〜5の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1〜5に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。(以下、それぞれ、本件発明1などという。1A〜5Nなどの符号は当審が付与した。)
【請求項1】
(1A)第1の特定個人に対応付けられるサービスである第1のサービスのコンテンツ情報を、前記第1の特定個人に閲覧可能にする第1の管理処理部と、
(1B)前記第1のサービスと関連付いた別のサービスであって前記第1の特定個人に対応付けられるサービスである第2のサービスのコンテンツ情報を、前記第1の特定個人に閲覧可能にする第2の管理処理部と、
(1C)所定の時期に、前記第1の特定個人と、前記第1のサービスに対応付けられる第2の特定個人と、を前記第2のサービスにおいてリンク付けるリンク部と、
(1D)を備え、
(1E)前記第2の管理処理部は、前記リンク部により前記第1の特定個人と前記第2の特定個人とがリンク付けられた場合に、前記第1の特定個人に紐付けられた、前記第2のサービスのコンテンツ情報を、前記第2の特定個人に対しても閲覧可能にし、
(1F)前記第1の特定個人は、母親であり、
(1G)前記第2の特定個人は、前記母親の子供であり、
(1H)前記第1のサービスは、健康管理サービスであり、
(1I)前記第2のサービスは、妊活・母子手帳サービスであり、
(1J)前記健康管理サービスは、ユーザの健康を管理するサービスであり、
(1K)前記妊活・母子手帳サービスは、ユーザの妊娠活動を支援するとともに、妊娠活動期の母親及び妊娠期以降の母子の状態を管理するサービスであり、
(1L)前記健康管理サービスのコンテンツ情報及び前記妊活・母子手帳サービスのコンテンツ情報には、ユーザの健康情報が含まれ、
(1M)前記健康管理サービスと前記妊活・母子手帳サービスとの間で前記健康情報が同期される、
(1N)情報管理装置。
【請求項2】
(2A)第1の特定個人に対応付けられるサービスである第1のサービスのコンテンツ情報を、前記第1の特定個人に閲覧可能にする第1の管理処理部と、
(2B)前記第1のサービスと関連付いた別のサービスであって前記第1の特定個人に対応付けられるサービスである第2のサービスのコンテンツ情報を、前記第1の特定個人に閲覧可能にする第2の管理処理部と、
(2C)所定の時期に、前記第1の特定個人と、前記第1のサービスに対応付けられる第2の特定個人と、を前記第2のサービスにおいてリンク付けるリンク部と、
(2D)を備え、
(2E)前記第2の管理処理部は、前記リンク部により前記第1の特定個人と前記第2の特定個人とがリンク付けられた場合に、前記第1の特定個人に紐付けられた、前記第2のサービスのコンテンツ情報を、前記第2の特定個人に対しても閲覧可能にし、
(2F)前記第1の特定個人は、母親であり、
(2G)前記第2の特定個人は、前記母親の子供であり、
(2H)前記第1のサービスは、健康管理サービスであり、
(2I)前記第2のサービスは、妊活・母子手帳サービスであり、
(2J)前記健康管理サービスは、ユーザの健康を管理するサービスであり、
(2K)前記妊活・母子手帳サービスは、ユーザの妊娠活動を支援するとともに、妊娠活動期の母親及び妊娠期以降の母子の状態を管理するサービスであり、
(2L)前記妊活・母子手帳サービスのコンテンツ情報には、前記子供の健診記録データが含まれ、
(2M)前記健診記録データは、定期健診、学校検診及び/又は歯科検診の予定及び/又は結果を示すデータである、
(2N)情報管理装置。
【請求項3】
(3A)請求項1又は請求項2に記載の情報管理装置であって、
(3B)前記第2の管理処理部は、前記第1の特定個人と前記第2の特定個人とで、異なる期間の前記コンテンツ情報を閲覧可能にする、情報管理装置。
【請求項4】
(4A)第1の特定個人に対応付けられるサービスである第1のサービスのコンテンツ情報を、前記第1の特定個人に閲覧可能にする第1の管理処理部と、
(4B)前記第1のサービスと関連付いた別のサービスであって前記第1の特定個人に対応付けられるサービスである第2のサービスのコンテンツ情報を、前記第1の特定個人に閲覧可能にする第2の管理処理部と、
(4C)所定の時期に、前記第1の特定個人と、前記第1のサービスに対応付けられる第2の特定個人と、を前記第2のサービスにおいてリンク付けるリンク部と、
(4D)を備え、
(4E)前記第2の管理処理部は、前記リンク部により前記第1の特定個人と前記第2の特定個人とがリンク付けられた場合に、前記第1の特定個人に紐付けられた、前記第2のサービスのコンテンツ情報を、前記第2の特定個人に対しても閲覧可能にし、
(4F)前記第1の特定個人は、母親であり、
(4G)前記第2の特定個人は、前記母親の子供であり、
(4H)前記第1のサービスは、健康管理サービスであり、
(4I)前記第2のサービスは、妊活・母子手帳サービスであり、
(4J)前記健康管理サービスは、ユーザの健康を管理するサービスであり、
(4K)前記妊活・母子手帳サービスは、ユーザの妊娠活動を支援するとともに、妊娠活動期の母親及び妊娠期以降の母子の状態を管理するサービスであり、
(4L) 前記健康管理サービスのコンテンツ情報及び前記妊活・母子手帳サービスのコンテンツ情報には、ユーザの健康情報が含まれ、
(4M)前記健康管理サービスと前記妊活・母子手帳サービスとの間で前記健康情報が同期される、
(4N)情報管理装置としてコンピュータを機能させるコンピュータプログラム。
【請求項5】
(5A)第1の特定個人に対応付けられるサービスである第1のサービスのコンテンツ情報を、前記第1の特定個人に閲覧可能にする第1の管理処理部と、
(5B)前記第1のサービスと関連付いた別のサービスであって前記第1の特定個人に対応付けられるサービスである第2のサービスのコンテンツ情報を、前記第1の特定個人に閲覧可能にする第2の管理処理部と、
(5C)所定の時期に、前記第1の特定個人と、前記第1のサービスに対応付けられる第2の特定個人と、を前記第2のサービスにおいてリンク付けるリンク部と、
(5D)を備え、
(5E)前記第2の管理処理部は、前記リンク部により前記第1の特定個人と前記第2の特定個人とがリンク付けられた場合に、前記第1の特定個人に紐付けられた、前記第2のサービスのコンテンツ情報を、前記第2の特定個人に対しても閲覧可能にし、
(5F)前記第1の特定個人は、母親であり、
(5G)前記第2の特定個人は、前記母親の子供であり、
(5H)前記第1のサービスは、健康管理サービスであり、
(5I)前記第2のサービスは、妊活・母子手帳サービスであり、
(5J)前記健康管理サービスは、ユーザの健康を管理するサービスであり、
(5K)前記妊活・母子手帳サービスは、ユーザの妊娠活動を支援するとともに、妊娠活動期の母親及び妊娠期以降の母子の状態を管理するサービスであり、
(5L)前記妊活・母子手帳サービスのコンテンツ情報には、前記子供の健診記録データが含まれ、
(5M)前記健診記録データは、定期健診、学校検診及び/又は歯科検診の予定及び/又は結果を示すデータである、
(5N)情報管理装置としてコンピュータを機能させるコンピュータプログラム。

第3 申立理由の概要
申立人は、概略以下のとおり主張している。
1.特許法第29条第1項第3号の規定に違反している旨の主張について 証拠として
・米国特許出願公開第2017/0364637明細書(2017年12月21日)(以下「甲1」という。)
を提出し、請求項1〜5に係る発明は、甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり、請求項1〜5に係る特許を取り消すべきものである旨の主張している。(以下、申立理由1という。)

2.特許法第29条第2項の規定に違反している旨の主張について
証拠として、甲1に加えて
・特開2008−59412号公報(平成20年3月13日)(以下「甲2」という。)
・ウェブニュース「神奈川県の「マイME−BYOカルテ」と連携する『母子モ』の施策が、第10回先進政策創造会議にて優秀政策に選ばれました!」(2017年10月27日)(以下「甲3」という。)
・ウェブニュース「電子母子健康手帳を活用した子育て世代を中心とした総合健康支援サービスの実証事業開始」(2014年2月6日)(以下「甲4」という。)
・ウェブアーカイブ「電子母子手帳」(2017年6月16日)(以下「甲5」という。)
を提出し、甲1に記載された発明に、甲2ないし甲5に記載された事項を適用すれば、請求項1ないし5に係る発明は当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜5に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、当該請求項に係る特許を取り消すべきものである旨の主張している。(以下、申立理由2という。)

3.特許法第36条第4項第1号並びに同法同条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない旨の主張について
「妊娠活動期の情報が子供に閲覧可能とされることについては、本件特許明細書中に記載が無い。そのため、妊娠活動期におけるコンテンツ情報をどのように子供に閲覧させるのか不明であるし、コンテンツ情報が何を指すのか不明である。」との旨を指摘して、本件特許が、特許法第36条第4項第1号並びに同法同条第6項第1号及び第2号の規定を満たしていない特許出願に対してなされた旨の主張をしている。(以下、申立理由3という。)

第4 各甲号証の記載
(1)甲1(米国特許出願公開第2017/0364637号明細書)には、以下のとおりの記載がある。

[0117]FIG. 1F depicts an exemplary embodiment of an exemplary system 192 illustrating an exemplary distributed user activity recording system for capturing user activity and/or personal health information of an exemplary user, whose computer system, and/or mobile device system 124 a is coupled to an exemplary cloud-based network and storage system 134 , itself coupled to exemplary remote storage 166 and/or, database 195 , and/or an exemplary database management (DBMS) application system 197 , an exemplary messaging system 199 , an exemplary management system 198 , and an exemplary analysis/viewing/reporting/alerts/notification system 196 , as could be used by another exemplary user device 194 to permit receipt, display, and review and communicate with member user devices 124 a, 124 b, according to an exemplary embodiment.
[0118]Various exemplary, but non-limiting High-Level Elements of an exemplary embodiment of the exemplary system 190 , according to an exemplary embodiment, are shown in FIG. 1B . The elements may include, in an exemplary embodiment an exemplary user data/information collection component 102 , an exemplary cloud/network 104 storage system facility 105 , an exemplary message processing system 106 , an exemplary database server 108 , an exemplary remote management system 110 and an exemplary Analysis/Viewing/Reporting/Alerts/Notifications system 112 . In an exemplary embodiment, an exemplary first user device 102 a may use an exemplary collection device such as, e.g., but not limited to, a personal computer (PC) or a mobile device, smartphone, communications device, computing device, etc., to capture information about the first user's personal health information, and may, according to example embodiments selectively share the personal health information with other second user devices 102 b. Examples of second users can include family, friends, relatives, children, guardians, parents, children, etc., providers such as, e.g., but not limited to, care providers, health care service providers, data content providers, advertisers, marketers and various other users can have access through the system, such as, e.g., but not limited to, via device 102 c. In an exemplary embodiment, an exemplary user 112 a may use an exemplary viewing device 112 a to access exemplary analyzed and stored interaction content at an exemplary other user level.

当審訳
[0117]図1Fは、取得したユーザアクティビティや例示的なユーザの個人の健康情報のための例示的な分散ユーザアクティビティ記録システムを示す例示的なシステム192の例示的な実施例の図である。ユーザのコンピュータシステムあるいは携帯システム124aは、例示的なクラウドベースネットワークストレージシステム134に結合され、クラウドベースネットワークストレージシステム134は、例示的なリモートストレージ166、データベース195、例示的なデータベースマネジメント (DBMS)アプリケーション197システム、例示的なメッセージングシステム199、例示的な管理システム198、例示的な分析/表示/レポート/アラート/通知システム196が接続されることからなり、この構成により、この例示的な実施例の構成によれば、別の例示的なユーザデバイス194を利用して、例示的な第1のユーザデバイス124a、124bと通信したり、受領、表示、およびレビューすることが可能となる。
[0118]種々の例示的な実施形態による、例示的なシステム190の例示的な実施の形態の非限定的な高レベル要素は図1Bに記載されている。例示的な実施の形態では、要素として、例示的なユーザデータ/情報収集コンポーネント102、例示的なクラウド/ネットワーク104、ストレージシステム設備105、例示的なメッセージ処理システム106、例示的なデータベースサーバー108、例示的な遠隔管理システム110、例示的な分析/閲覧/報告/警告/通知システム112を含む。例示的な実施の形態によれば、例示的な第1のユーザデバイス102aは、第1のユーザの個人の健康情報を取得するために例示的な収集装置を利用する。例えば、これらに限るわけではないが、パーソナルコンピュータ、携帯装置、通信装置、コンピューティング装置などである。そして、例示的な実施の形態によれば、個人の健康情報を他の第2のユーザデバイス102bと選択的に共有する。第2のユーザの例としては、家族、友人、親戚、子供、保護者、両親、子供などや、提供者、例えばこれに限るわけではないが、ケアプロバイダー、ヘルスケアサービスプロバイダー、データコンテンツプロバイダー、広告主、マーケターなどを含み、他の様々なユーザが、例えばこれに限るわけではないが、デバイス102cなどのシステムを介してアクセスできる。例示的な実施の形態では、例示的なユーザ112aは、例示的にはそのユーザレベルに応じて、例示的な表示装置112aを、例示的には、分析され保存されたインタラクションコンテンツにアクセスするために利用することができる。

[0197]Managed accounts, according to an exemplary embodiment, are created for a people who are not registered in an exemplary ICmed app. An exemplary user can, according to an exemplary embodiment, a) create a managed account for a minor, by using a create managed account instruction and/or user interface element, orb) create a managed account for the user's family member, e.g., father, who is deceased, etc. The living status of an exemplary user can be indicated on the user interface, according to an exemplary embodiment, by an exemplary color indication of the graphical user interface element, as discussed below, according to an exemplary embodiment. In one exemplary embodiment, a family member who is deceased can be indicated with a black color outlined circle, and/or a different color, and/or shading, and/or other GUI indication such as, e.g., but not limited to, highlighting, transparency, opacity, shading, graying out, etc.
[0198]An exemplary ICmed app system, according to an exemplary embodiment, can also have the feature to transfer a managed account to another user's control. (e.g., a child of a user, such as, a daughter, may be managed by the user until reaching an age of majority). When the child (daughter) reaches the minimum age for handling her own medical profile, then the user interface can provide instructions and/or a user interface element to enable transfer of management of the managed account from the first user, to her. An exemplary transfer can be provided electronically such as, e.g., but not limited to, an electronic mail invitation transmission and/or another electronic handoff of access of a database record associated with the user whose data management is being transferred. The child (the user's daughter) can receive the electronic invitation and can click on an electronic hypertext link such as, e.g., but not limited to, a hypertext transfer protocol (HTTP) universal resource location (URL) hypertext link, that may be delivered in the electronic transmission to the user to accept the invitation, and the child user can be then permitted access to initiate or start her account creation with the exemplary ICmed app system. All the previously captured and/or received personal health history data of the previously managed user, can be already transferred to the new account and the transferred child user can then be given full access to any, and/or all of the personal health and/or medical history of the child user, which was previously captured and/or received with respect to the child in the managed user's record of the user manager parent or guardian that was previously managing the user, prior to transfer, which may at that point be now associated with the child user's new record, where the previous manager user was the child user's parent, according to an exemplary embodiment.

当審訳
[0197]管理されたアカウントは、例示的か実施の形態によれば、例示的にはICmedアプリに登録されていない人々のために作成される。例示的なユーザは、例示的な実施の形態によれば、a)管理アカウントの作成指示及び/又はユーザインターフェース要素を利用することによって、未成年者のための管理アカウントを作成することができ、または、b)ユーザの家族、例えば亡くなったか父親のためにのために管理アカウントを作成することができる。例示的なユーザの生活状況は、以下で説明するように、例示的な実施形態によるグラフィカルユーザインターフェース要素の例示的な色表示によって、例示的な実施形態によるユーザインターフェース上に表示することができる。(中略)
[0198]例示的な実施の形態によれば、例示的なICmedアプリシステムは、すでに管理されているアカウントを他のユーザによる制御に転送する機能を有することもできる。(例えば、娘などのようなユーザの子供は、成年になるまで、ユーザにより管理されることもある。)子供(娘)が彼女自身で自分の医療プロファイルを管理可能な最低限の年齢に達すると、ユーザインターフェースは、管理アカウントの管理を、最初のユーザから彼女へ転送することを可能とするために、指示及び/又はユーザインターフェース要素を提供する。例示的な転送は、電子的に、例えば、これに限るわけではないが、電子メールによる招待メールを送信すること、及び/又はデータ管理が転送されているユーザに関連付けられたデータベースレコードのアクセスの別の電子的なハンドオフなどにより提供することができる。子供(ユーザの娘)は電子招待状を受け取ることができ、そして、例えば、これに限るわけではないが、ハイパーテキスト転送プロトコル(HTTP)、ユニバーサルリソースロケーション(URL)ハイパーテキストリンクが招待を受けるユーザに対して電子送信の中に含んで配信されるので、電子ハイパーリンクをクリックすることができる。そして、子供のユーザは、その後、開始するためのアクセスが許可がなされること、あるいは、例示的な ICmedアプリシステムに対して、彼女のアカウント作成を開始することが可能となる。全ての、以前に取得された及び/又は受け取った、以前にユーザにより管理された個人の健康履歴データは、新しいアカウントに転送することができる。そして、転送された子供ユーザは、その後、一部の及び/又は全ての、子供ユーザ個人の、健康及び/又は病歴に対するフルアクセス権が与えられる。例示的な実施の形態によれば、以前に取得及び/又は受け取った転送以前に管理していた親や保護者などのユーザマネージャーの、ユーザによって管理された子供に関する記録は、その時点で、子供ユーザの新たな記録となる。ここで、例示的な実施形態によれば、前のマネージャユーザは子ユーザの親である。

[0242]According to an exemplary embodiment, once content is added in and an exemplary schedule is created, the exemplary TEA audience can be selected. According to an exemplary embodiment, an exemplary TEA audience group can be created as new or selected from already existing presets, such as, e.g., but not limited to: Senior Citizens, Pregnant Wives, or Cancer Patients, etc.

当審訳
[0242]例示的な実施の形態によれば、コンテンツが追加され例示的なスケジュールが作成されると、例示的なTEAオーディエンスが選択可能となる。例示的な実施の形態によれば、例示的なTEAオーディエンスグループは、新規として作成されるか、予め用意されているプリセットから選択することができる。例えば、これに限るわけではないが、高齢者、妊婦、癌患者などである。

図1B


以上の記載によれば、甲1には以下の発明(以下、甲1発明)が記載されている。

要素として、ユーザデータ/情報収集コンポーネント102、クラウド/ネットワーク104、ストレージシステム設備105、メッセージ処理システム106、データベースサーバー108、遠隔管理システム110、分析/閲覧/報告/警告/通知システム112を含むシステムであって、(図1B、[0118])
第1のユーザデバイス102aは、第1のユーザの個人の健康情報を取得するためのパーソナルコンピュータであり、([0118])
第2のユーザの例として子供を含む他の第2のユーザが利用するデバイス102bを利用してシステムにアクセスし、個人の健康情報を選択的に共有可能であり、([0118])
すでに管理されているアカウントを他のユーザによる制御に転送する機能では、([0198])
ユーザの子供は、成人になるまで、ユーザにより管理され、([0198])
子供(娘)が彼女自身で自分の医療プロファイルを管理可能な最低限の年齢に達すると、ユーザインターフェースは、管理アカウントの管理を、最初のユーザから彼女へ転送することを可能とするために、例えば、電子メールによる招待メールを送信し、([0198])
子供(ユーザの娘)は電子招待状を受け取ることができ、([0198])
電子送信の中にユニバーサルリソースロケーション(URL)ハイパーテキストリンクなどを含んで配信されるので、電子ハイパーリンクをクリックすることができ、([0198])
子供のユーザは、その後、彼女のアカウント作成を開始することが可能となり、([0198])
以前にユーザにより管理された個人の健康履歴データは、新しいアカウントに転送することができ、([0198])
転送された子供ユーザは、その後、子供ユーザ個人の、健康及び/又は病歴に対するフルアクセス権が与えられ、([0198])
以前に取得及び/又は受け取った転送以前に管理していた親や保護者などのユーザマネージャーの、ユーザによって管理された子供に関する記録は、その時点で、子供ユーザの新たな記録となる、([0198])
システム。

(2)甲2(特開2008−59412号公報)には、以下のとおりの記載がある。
【0001】
本発明は、夫婦間またはパートナー間で情報が相互に送受信可能な健康管理システムに関する。

【0013】
<各種データ表示機能>
機能キー13を押すことで、表示部12に、図4(a)に示すような画面表示をさせる。カーソル移動キー13aで、「スケジュール」、「基礎体温グラフ」、「妊娠計画ナビ」、「胎児成長記録」、「乳児成長記録」、「パートナーの健康チェック」のうちいずれかを選択し、それぞれの項目を表示させることが可能である。カーソル移動キー13aにより「スケジュール」にカーソルを合せて選択すれば、図3(b)に示すカレンダー画面表示となり、■は、メモ入力があることを示す7月26日にカーソルキー13aを合せると、図3(d)のような予定画面が表示される。カーソル移動キー13aにより「基礎体温グラフ」にカーソルを合せて選択すれば、図4(c)に示す基礎体温のトレンドグラフが表示される。なお、基礎体温のトレンド値は記憶部19に記憶したものを表示するか、サーバー3に記憶されたトレンド値を、サーバー3に対して予め登録されたパスワード,ID番号を入力してアクセスし、女性側携帯端末装置100aにダウンロードするようにしてもよい。
【0014】
女性の妊娠が判明した場合、週ごとに妊婦が体重測定し、その値を入力キー11で入力・記憶し、標準値と比較してトレンド表示できるようにしている。図4(d)の例では、横軸が月、縦軸に体重変化を示すようにしている。また、女性が出産した後は、カーソル移動キー13aにより「スケジュール」にカーソルを合せて選択すれば、図4(e)に示す「乳児成長記録」のトレンドグラフが表示される。図4(e)の例では、横軸が月、縦軸に乳児の体重変化を標準値,90パーセンタイル,10パーセンタイルと比較表示可能にしている。「パートナーの健康チェック」では、男性の血圧(最高血圧/最低血圧)のトレンド変化,血糖値変化,体重変化,BMI等を、男性側携帯端末装置100bにアクセスするか、サーバー3に記憶されたこれらのトレンド値を、サーバー3に対して予め登録されたパスワード,ID番号を入力してアクセスし、女性側携帯端末装置100aにダウンロードして表示するようにしてもよい。
【0015】
<次回排卵日予測機能>
女性側携帯端末100aでは、トレンド記憶された基礎体温を基に次回排卵日の予測・表示を行う機能を備える。すなわち、起床前に測定された基礎体温を入力キー11または外部接続端子(不図示)を介して記憶部19かサーバー3にID番号とともにトレンド記憶する。このとき、図3(c)に示すような生理メモも入力しておく。記憶された基礎体温を基に次回排卵日の予測を行う機能を備えることで妊娠・避妊が計画的に行なえる。
【0016】
・次回排卵日の予測の一例次回排卵日は、所定期間(例えば3〜7日間)として導出される。例えば、予測処理を行っている当日が低温相の場合、”次回排卵日 = 最近の生理初日+低温相平均日数−1.5σ/2〜最近の生理初日+低温相平均日数+1.5σ/2”として導出される。ここで、σは、低温相の日数の分布が正規分布に従うと見なした際の標準偏差である。なお、予測結果は日単位で、小数点第1位で四捨五入とする。一方、予測処理を行っている当日が高温相の場合、”次回排卵日 = 最近の排卵日+月経周期平均日数−1.5σ/2〜最近の排卵日+月経周期平均日数+1.5σ/2”として導出される。ここで、σは、月経周期の日数の分布が正規分布に従うと見なした際の標準偏差である。なお、予測結果は日単位で、小数点第1位で四捨五入とする。このようにして導出された期間を表示する際には、表示する当日の条件に応じて次のように処理される。当日が導出された次回排卵日の期間に含まれない場合は導出された期間をそのまま表示する。一方、当日が導出された次回排卵日の期間に入っており、かつ、その期間の最後の日から所定日数(例えば3日)前以前の場合、表示される期間は”当日の日付〜導出された期間の最後の日”とする。すなわち、”当日〜最近の生理初日+低温相平均日数+1.5σ/2”、あるいは、”当日〜最近の排卵日+月経周期平均日数+1.5σ/2”となる。または、当日が導出された次回排卵日の期間に入っており、かつ、その期間の最後の日から所定日数(例えば3日)前以後の場合、表示される期間は”当日の日付〜当日の日付+3”とする。また、導出された期間が所定日数(例えば8日)以上にわたる場合、当日が高温相で排卵日からの日数が所定日数(例えば17日)以上の場合、月経周期平均日数または低温相平均日数が確定していない場合等の際は、精度の高い予測はできない。次回排卵日の予測処理は、所定回(例えば4回)の生理初日が確定し、月経周期平均日数および低温相平均日数の導出後になされる。こうして予測された次回排卵日の中心となる日は、図4に示すように□で表示される。次回排卵日の予測プログラムは、女性側携帯端末装置100aのROM17に記憶させておいても、サーバー3に記憶させておいてもよい。
【0017】
<男性側携帯端末装置の機能>
男性側携帯端末装置100bも基本的には、図4に示すものと同様の表示機能を有する。異なる点は、基礎体温の入力、トレンド表示ができないようになっている点である。また、「妊娠計画ナビ」画面では、次回排卵日予定日の中心の日、図5では20日に「お酒は控えましょう」等のメッセージが表示されるようになっている。また、胎児の成長記録、乳児の成長記録を表示画面で確認できるので、パートナー間の信頼が深まることになる。

以上の記載によれば、男性及び女性のパートナー間で、健康データを共有すること、また、共有するデータとして、、「スケジュール」、「基礎体温グラフ」、「妊娠計画ナビ」、「胎児成長記録」、「乳児成長記録」、「パートナーの健康チェック」などに関するデータが、共有可能であることが記載されているといえる。

(3)甲3(神奈川県の「マイME−BYOカルテ」と連携する『母子モ』の施策が、第10回先進政策創造会議にて優秀政策に選ばれました!)には、以下のとおりの記載がある。

(株)エムティーアイが企画・開発した母子手帳アプリ『母子モ』は、2016年9月より神奈川県の運用する健康管理アプリケーション「マイME-BYOカルテ」と連携しており、母子の健診結果や予防接種履歴などの健康情報の記録・管理から、県や市町村が配信する地域の情報配信や自治体が開催する母子向けイベントの予約機能など、ICTを活用し妊娠期から子育て期まで切れ目のない支援をサポートし、自治体と子育て世代をつなぐコミュニケーションツールとしても広く活用されています。
また、この『母子モ』と「マイME-BYOカルテ」をあわせて活用することで、予防接種履歴や健診結果の記録だけでなく普段飲んでいるお薬やアレルギー情報などの健康記録を一括で管理・閲覧することができます。
今回、全国知事会が実施する“第10回先進政策創造会議”の健康福祉部門にて、神奈川県の「マイME-BYOカルテと連携した電子母子手帳アプリの運用開始について」が、優秀政策に選ばれました。
今後も母子手帳アプリ『母子モ』は、若い世代が安心して妊娠・出産・子育てできる環境づくりに貢献し、子どもの健やかな成長に役立つ地域に根ざしたサービスとして発展し続けます。

以上の記載によれば、母子手帳アプリ『母子モ』、母子の健診結果や予防接種履歴などの健康情報の記録・管理をサポートし、『母子モ』と「マイME-BYOカルテ」をあわせて活用することで、予防接種履歴や健診結果の記録だけでなく普段飲んでいるお薬やアレルギー情報などの健康記録を一括で管理・閲覧することができることが開示されている。

(4)甲4(電子母子健康手帳を活用した子育て世代を中心とした総合健康支援サービスの実証事業開始)には、以下のとおりの記載がある。

■ 電子版母子健康手帳サービス「hahaco柏」の提供
・妊娠中の方や育児中のお母さんをサポートするスマートフォンを使ったサービス
・お母さんの身体の状態、赤ちゃんの成長をスマートフォンでいつでもどこでも簡単に記録可能
・予防接種記録や定期健診記録の管理も簡単、予防接種日を知らせる便利な通知機能も
・行政保有データと民間保有データを連携・活用する事で、サービスの向上を実現
・オンラインで柏市の保健師・栄養士からアドバイスを受けることも可能
・柏市からの最新情報が受信できる
・母子健康手帳にucodeタグを貼付し、スマートフォンアプリとの情報連携

以上の記載によれば、電子版母子健康手帳サービス「hahaco柏」では、「お母さんの身体の状態、赤ちゃんの成長をスマートフォンでいつでもどこでも簡単に記録可能」、「予防接種記録や定期健診記録の管理も簡単」であることが開示されているといえる。

(5)甲5(電子母子手帳)には、以下のとおりの記載がある。

「妊娠中や子どもの体重グラフは、値が自動でグラフ化されるので楽チン♪」
「夫婦間で子どもの成長やイベント予定を共有すれば、ママもパパも状況が分かってお互い楽チン♪
日記感覚で思い出を残せ、離れたところに住んでいるじぃじ&ばぁばにも、子どもの様子を簡単に共有できます。」

以上の記載によれば、「妊娠中や子どもの体重グラフ」の記録・管理が可能であること、登録したデータは、家族(両親・祖父母など)で共有可能であることが開示されているといえる。

第5 当審の判断
(I)申立理由3について
事案に鑑み、まず、申立理由3について検討する。
本件特許明細書には、以下のとおりの記載がある。

「【0027】
また、本実施形態では、記憶部42にはリンクデータが記憶されている。リンクデータは、母親とその子供とを妊活・母子手帳サービスにおいて対応付ける(リンク付ける)データである。すなわち、本実施形態では、母親とその子供(例えば成人年齢に達した子供)とが、妊活母子手帳サーバ4に記憶された共通の情報(本実施形態では母親が入力した情報)を妊活・母子手帳アプリを介して閲覧できる。つまり、子供が、自身の幼少期の健診記録データ等を閲覧できる。なお、リンクデータでは、母親の妊活・母子手帳サービスのユーザIDと、子供の健康管理サービスのユーザIDと、がリンク付けられる。そして、子供は、妊活・母子手帳アプリを起動し、自身の健康管理サービスのIDでアクセス要求することで、母親が入力した各種情報を閲覧できる。
【0028】
具体的には、リンクデータでは、図8に示すように、母親の妊活・母子手帳サービスのユーザID並びに子供の名前、誕生日、性別及び健康管理サービスのユーザIDが互いにリンク付けられる。
【0029】
なお、リンクデータは例えば次のようにして生成される。すなわち、母親である第1端末装置1のユーザは、自身の第1端末装置1から子供の第2端末装置2に対して招待リクエストを出す。招待リクエストを受けた第2端末装置2のユーザは、妊活・母子手帳サービスにおいて自身の健康管理サービスのIDを入力する。すると、母親である第1端末装置1のユーザによりあらかじめ入力された子供(第2端末装置2のユーザ)の名前、誕生日、性別と、母親である第1端末装置1のユーザの妊活・母子手帳サービスのユーザIDと、子供である第2端末装置2のユーザの健康管理サービスのユーザIDと、がリンク付けられ、リンクデータが生成される。これにより、子供である第2端末装置2のユーザは、自身の健康管理サービスのユーザIDを用いて、妊活母子手帳サーバ4に記憶された母親である第1端末装置1のユーザのユーザIDに紐付けられた各種情報を閲覧できる。」

「【0048】
一方、制御部43は、前述したS303で要求元端末装置のユーザが子供であると判定した場合には、第2の期間(妊娠期及び育児期)の妊活母子手帳情報の中からユーザが閲覧を要求する情報を記憶部42から取得する。ここで、制御部43は、リンクデータにおいて要求元端末装置のユーザとリンク付けられたユーザのユーザIDに紐付けられた妊活母子手帳情報を記憶部42から取得する。例えば、S301で第2端末装置2からのアクセス要求が受信された場合、S305では第1端末装置1のユーザのユーザIDに紐付けられた妊活母子手帳情報が取得される。制御部43は、S305を実行すると、制御部43は、後述するS306へ移行する。
【0049】
続いて、S306で、制御部43は、S304又はS305で取得された妊活母子手帳情報を要求元端末装置に送信した後、図11の母子送信処理を終了する。これにより、要求元端末装置の表示画面上に妊活母子手帳情報が表示され、妊活母子手帳サーバ4上で管理された妊活母子手帳情報をユーザが閲覧可能になる。このように、本実施形態では要求元端末装置のユーザが母親である場合、ユーザは出産以前の妊娠活動期も含めた全期間の妊活母子手帳情報を閲覧できる。一方、要求元端末装置のユーザが子供である場合、ユーザは、妊娠期以降、すなわち、自身が生を受けてからの情報である産前及び産後母子手帳情報のみ閲覧できる。
【0050】
[3.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)本実施形態では、所定の時期に、母親とその子供とが妊活・母子手帳サービスにおいてリンク付けられる。そして、母親に紐付けられた妊活母子手帳情報が、その子供に対しても閲覧可能になる。したがって、新規なサービスの提供の仕方を提供できる。特に、母親にリンク付けられた子供は、自身が妊活・母子手帳サービスに登録された時よりも前に母親が入力した妊活母子手帳情報を閲覧できる。ひいては、登録された時よりも前の妊活母子手帳情報を子供が医療機関の受信時に医師に提示するなど、母親に紐付けられた妊活母子手帳情報を有効活用できる。加えて、健康サービスと妊活・母子手帳サービスとが互いに連携されるため、両サービスで蓄積されたデータを相互に利用するなど、サービス向上を図ることができる。
【0051】
(2)本実施形態では、制御部43は、第1の特定個人である母親と第2の特定個人である子供とで異なる期間の妊活母子手帳情報を閲覧可能にする。ユーザに提供されるサービス内容によっては第1の特定個人と第2の特定個人とで閲覧したい期間が異なる場合がある。例えば、本実施形態のような妊活・母子手帳サービスでは、母親であるユーザは妊娠活動期、妊娠期及び育児期の全期間の妊活母子手帳情報を閲覧したい一方、その子供であるユーザは自身に関連する妊娠期及び育児期の妊活母子手帳情報のみ閲覧したいと考える場合がある。そのような場合に、本実施形態の構成によれば、ユーザのニーズに合った期間の情報を提供することができる。
【0052】
(3)本実施形態では、母親と子供とがリンク付けられる。よって、妊活・母子手帳サービスのように母親及びその子供に関連するサービスにおいて、母親及びその子どもに共通の情報を閲覧させることができる。」

以上の記載によれば、具体的な実施例の構成として、【0049】には、子供ユーザは「妊娠期以降、すなわち、自身が生を受けてからの情報である産前及び産後母子手帳情報のみ閲覧できる。」ことが記載されていて、妊娠活動期の情報の閲覧の制限を行う旨が記載されていると一応いえる。
しかし、【0029】には、「招待リクエストを受けた第2端末装置2のユーザは、妊活・母子手帳サービスにおいて自身の健康管理サービスのIDを入力する。すると、母親である第1端末装置1のユーザによりあらかじめ入力された子供(第2端末装置2のユーザ)の名前、誕生日、性別と、母親である第1端末装置1のユーザの妊活・母子手帳サービスのユーザIDと、子供である第2端末装置2のユーザの健康管理サービスのユーザIDと、がリンク付けられ、リンクデータが生成される。これにより、子供である第2端末装置2のユーザは、自身の健康管理サービスのユーザIDを用いて、妊活母子手帳サーバ4に記憶された母親である第1端末装置1のユーザのユーザIDに紐付けられた各種情報を閲覧できる。」との記載があり、子供ユーザの健康管理サービスのユーザIDが、母親ユーザの妊活・母子手帳サービスのユーザIDとリンク付けられることにより、妊活母子手帳サーバ4に記憶された母親である第1端末装置1のユーザのユーザIDに紐付けられた各種情報を閲覧できることは記載されており、上記閲覧できる情報に【0049】に記載されるような閲覧の制限を設けることは、本件特許明細書全体の記載からみて格別必須の事項ということはできないし、閲覧の制限を設けないことが当業者が実施をすることができないということもできない。
また、妊娠活動期におけるコンテンツ情報は、例えば、本件特許明細書の【0024】に「妊活情報には、図5に示すように、ユーザの日々の健康状態を示す前述した日常データに加え、生理日の開始日/終了日、生理周期、次回生理予定日、排卵予定日、病院の診察履歴、次回の診察予定日等のデータが含まれる。ここで、生理周期、次回生理予定日及び排卵予定日を除く各データは、ユーザの端末装置1から送信されて記憶部42に記憶される。一方、生理周期、次回生理予定日、排卵予定日等は、ユーザの端末装置1から送信された各データに基づき母子手帳妊活サーバ4側で算出されて記憶部42に記憶される。」との記載があるから、「妊娠活動期におけるコンテンツ情報」が何を指すのか不明であるということもできない。
したがって、申立人が主張する「妊娠活動期の情報が子供に閲覧可能とされることについては、本件特許明細書中に記載が無い。そのため、妊娠活動期におけるコンテンツ情報をどのように子供に閲覧させるのか不明であるし、コンテンツ情報が何を指すのか不明である。」との主張は採用することができない。

よって、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が請求項に係る発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載したものであり、本件請求項1〜5に係る発明は明確であり、発明の詳細な説明に記載したものであるから、申立理由3は理由がない。

(II)申立理由1、2について
(1)本件発明1について
《対比》
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(a)甲1発明では、「第2のユーザの例として子供を含む他の第2のユーザ」、「親や保護者などのユーザマネージャーの、ユーザによって管理された子供に関する記録」、「子供(ユーザの娘)は電子招待状を受け取ることができ」などの特定事項をみると、第1のユーザは親であり、第2のユーザは子供であることを想定しており、親は当然母親も含むといえる。
一方、本件発明1の特定事項(1F)、(1G)をみると、「第1の特定個人は、母親であり」、「第2の特定個人は、前記母親の子供であり」、とあるから、甲1発明の「第1のユーザ」、「第2のユーザ」は、それぞれ、本件発明1の「第1の特定個人」、「第2の特定個人」に相当するといえる。
(b)甲1発明において、「ユーザデータ/情報収集コンポーネント102、クラウド/ネットワーク104、ストレージシステム設備105、メッセージ処理システム106、データベースサーバー108、遠隔管理システム110、分析/閲覧/報告/警告/通知システム112を含むシステム」は、「ユーザデータ/情報収集コンポーネント102」でユーザデータを収集し、「分析/閲覧/報告/警告/通知システム112」にて、上記収集した、ユーザデータをユーザに、「分析/閲覧/報告/警告/通知」という形で提供していることは明らかであって、上記提供される「分析/閲覧/報告/警告/通知」などに係る情報は「第1のサービスのコンテンツ情報」といいうるものであるから、甲1発明は、「第1の特定個人に対応付けられるサービスである第1のサービスのコンテンツ情報を、前記第1の特定個人に閲覧可能にする第1の管理処理部」を備えているといえる。
(c)甲1発明では、転送前の管理ユーザである親は、親子間のデータの共有を実現するために、すでに(親により)管理されているアカウントを他のユーザ(子供)による制御に転送する機能を利用しており、上記転送前に親により管理されていたアカウントは、自身の健康情報を管理するアカウントとは異なっていることは明らかであり、上記転送前のアカウントに関連して記憶される情報は、転送後は子供が管理し閲覧する情報であるから、子供の健康に関する情報であり、当該子供の健康情報は親の健康情報とは異なるから第2のコンテンツ情報ということができる。
そして、当該第2のコンテンツ情報を親が閲覧可能であることも明らかであるから「第2のコンテンツ情報を、前記第1の特定個人に閲覧可能にする管理処理部」を有しているということができる。
もっとも、甲1発明は、「レベル要素は図1Bに記載されている。例示的な実施の形態では、要素として、例示的なユーザデータ/情報収集コンポーネント102、例示的なクラウド/ネットワーク104、ストレージシステム設備105、例示的なメッセージ処理システム106、例示的なデータベースサーバー108、例示的な遠隔管理システム110、例示的な分析/閲覧/報告/警告/通知システム112」などが一体となって、親自身の健康情報の管理・閲覧等のサービスや子供の健康情報の管理・閲覧等のサービスをまとめて提供しているから、上記第2のコンテンツ情報に係るサービスが「前記第1のサービスと関連付いた別のサービスであって前記第1の特定個人に対応付けられるサービスである第2のサービス(のコンテンツ情報)」ということはできず、また、管理処理部も上記(b)で認定した「管理処理部」とは異なる「第2の管理処理部」であるかは明らかではない点で、本件発明1とは異なる。
(d)甲1発明は、
「子供(娘)が彼女自身で自分の医療プロファイルを管理可能な最低限の年齢に達すると、ユーザインターフェースは、管理アカウントの管理を、最初のユーザから彼女へ転送することを可能とするために、例えば、電子メールによる招待メールを送信し、([0198])
子供(ユーザの娘)は電子招待状を受け取ることができ、([0198])
電子送信の中にユニバーサルリソースロケーション(URL)ハイパーテキストリンクなどを含んで配信されるので、電子ハイパーリンクをクリックすることができ、([0198])
子供のユーザは、その後、彼女のアカウント作成を開始することが可能となり、([0198])
以前にユーザにより管理された個人の健康履歴データは、新しいアカウントに転送することができ、([0198])
転送された子供ユーザは、その後、子供ユーザ個人の、健康及び/又は病歴に対するフルアクセス権が与えられ、([0198])
以前に取得及び/又は受け取った転送以前に管理していた親や保護者などのユーザマネージャーの、ユーザによって管理された子供に関する記録は、その時点で、子供ユーザの新たな記録となる、([0198])」
という一連の処理を行っているが、上記「子供(娘)が彼女自身で自分の医療プロファイルを管理可能な最低限の年齢に達すると」は、本件発明1の所定の時期といえる。
そして、上記一連の処理を行うことで、健康情報に関するサービスに関して子供が利用するアカウントで、それ以前は親が管理していた子供の健康情報を子供が利用可能になるから、親のアカウントと子供のアカウントとがこの時点では一応リンク付けられるといえる。
したがって、甲1発明は、「所定の時期に、前記第1の特定個人と、前記第1のサービスに対応付けられる第2の特定個人と、をリンク付けるリンク部と」を備えているといえる。
もっとも、上記(c)で検討したように、甲1発明では、第1のサービスと第2のサービスのような異なるサービスを実現しているということはできないから、「前記第1の特定個人と、前記第1のサービスに対応付けられる第2の特定個人と、を前記第2のサービスにおいてリンク付ける」ことは行っていない点で相違する。
(e)甲1発明では、上記(d)で検討したように、管理処理部にて、前記第1の特定個人と前記第2の特定個人とがリンク付けられると、親が管理している子供の健康情報について、子供も閲覧することができるということはできるから、「管理処理部は、前記リンク部により前記第1の特定個人と前記第2の特定個人とがリンク付けられた場合に、前記第1の特定個人に紐付けられた、前記第2のコンテンツ情報を、前記第2の特定個人に対しても閲覧可能にし」ているということができる。
もっとも、上記(c)で検討したように、甲1発明は、「管理処理部」が、「第1の管理処理部」、「第2の管理処理部」のように分けられておらず、そのサービスが「第1のサービス」、「第2のサービス」のように分けられていないから、上記「管理処理部」、「第2のコンテンツ情報」が、それぞれ、本件発明1では、「第2の管理処理部」、「第2のサービスのコンテンツ情報」である点で相違する。
(f)甲1発明では、利用者に対して、当該利用者の健康情報についての総合的な「分析/閲覧/報告/警告/通知」のサービスを提供しているということができ、これらは、「健康管理サービス」といいうるものであり、甲1発明は「健康管理サービス」を提供している点で本件発明1と共通する。
また、甲1発明は、子供の健康情報について親が管理するサービスは提供されており、この点で、母子手帳サービスに対応するサービスも提供しているといえる。ここで、上記子供の健康情報について親が管理するサービスが、本件発明1の「妊活・母子手帳サービス」といえるか否かについて検討すると、まず、甲1発明では、親ユーザが管理する子供の健康情報は、子供の医療プロファイルであるが、子供の医療プロファイルは、子供が生まれた後の情報しか想定しておらず、妊活に関する情報は含んでいるということはできない。また、母子手帳サービスは日本特有のサービスであること、及び、甲1発明が外国におけるサービスを想定していることを考慮すれば、甲1が想定するサービスとして「母子手帳サービス」を含んでいるということもできない。
以上まとめると、甲1発明は、「健康管理サービス」、「子供の健康について親が管理するサービス」をそれぞれ提供している点で、本件発明1と共通するといえる。
もっとも、本件発明1は、「前記第1のサービスは、健康管理サービスであり」、「前記第2のサービスは、妊活・母子手帳サービスであり」とサービスの内容を分けているのに対し、甲1発明では「健康管理サービス」、「子供の健康について親が管理するサービス」を、サービスを分けずにそれぞれ提供している点、及び、「子供の健康について親が管理するサービス」が、本件発明1では「妊活・母子手帳サービス」であるのに対し、甲1発明では「妊活・母子手帳サービス」までは想定していない点で相違する。
(g)甲1発明では、その提供するサービスとして、ユーザの健康に関して「報告/警告」なども行っているから、「ユーザの健康を管理するサービス」を提供しているといえる。
(h)甲1発明の「子供の健康について親が管理するサービス」では、上記(f)で検討したように、子供が生まれた後の情報しか想定していないことは明らかであり、「ユーザの妊娠活動を支援するとともに、妊娠活動期の母親及び妊娠期以降の母子の状態を管理するサービス」を想定しているということはできない。
したがって、甲1発明は「前記妊活・母子手帳サービスは、ユーザの妊娠活動を支援するとともに、妊娠活動期の母親及び妊娠期以降の母子の状態を管理するサービスであり」の本件発明1の特定事項を備えていない。
(i)甲1発明では、ユーザに対する健康管理サービスのコンテンツには、ユーザの健康情報が含まれることは明白である。
一方、「子供の健康について親が管理するサービス」では、上記(f)で検討したように、子供が生まれた後の子供の健康に関する情報しか想定していないことは明らかであり、これに、親(ユーザ)の健康情報を含むことは想定していない。
したがって、甲1発明は「前記健康管理サービスのコンテンツ情報には、ユーザの健康情報が含まれ」ている点で本件発明1と共通するといえる。
もっとも、「妊活・母子手帳サービス」に対応する甲1発明の「子供の健康について親が管理するサービス」のコンテンツ情報にはユーザの健康情報を含まないことは明白であり、この点で、本件発明1と甲1発明とは相違する。
(j)甲1発明では、「健康管理サービス」、「子供の健康について親が管理するサービス」とは、それぞれ提供されるから、これらの間で健康情報が同期されるか否か明らかでない点で本件発明1と相違する。
また、提供されるサービスが、本件発明1では「健康管理サービス」、「妊活・母子手帳サービス」であるのに対し、甲1発明では、「健康管理サービス」、「子供の健康について親が管理するサービス」である点で相違する。
(k)甲1発明のシステムは、まとめて「情報管理装置」と称してもよいことは明らかである。
(l)まとめ(一致点・相違点)
以上まとめると、本件発明1と甲1発明とは、以下の一致点で一致し相違点で相違する。

<一致点>
第1の特定個人に対応付けられるサービスである第1のサービスのコンテンツ情報を、前記第1の特定個人に閲覧可能にする管理処理部と、
第2のコンテンツ情報を、前記第1の特定個人に閲覧可能にする管理処理部と、
所定の時期に、前記第1の特定個人と、前記第1のサービスに対応付けられる第2の特定個人と、をリンク付けるリンク部と、
を備え、
前記管理処理部は、前記リンク部により前記第1の特定個人と前記第2の特定個人とがリンク付けられた場合に、前記第1の特定個人に紐付けられた、前記第2のコンテンツ情報を、前記第2の特定個人に対しても閲覧可能にし、
前記第1の特定個人は、母親であり、
前記第2の特定個人は、前記母親の子供であり、
健康管理サービスと、
子供の健康について親が管理するサービスとを含み、
前記健康管理サービスは、ユーザの健康を管理するサービスであり、
前記健康管理サービスのコンテンツ情報には、ユーザの健康情報が含まれる、
情報管理装置。

<相違点>
相違点1
本件発明1は、「第1の特定個人に対応付けられるサービスである第1のサービスのコンテンツ情報」、「前記第1のサービスと関連付いた別のサービスであって前記第1の特定個人に対応付けられるサービスである第2のサービスのコンテンツ情報」のように、サービスを「第1のサービス」、「第2のサービス」と分けて、コンテンツ情報を「第1のサービスのコンテンツ情報」、「第2のサービスのコンテンツ情報」とし、管理処理部を上記サービスに対応した「第1の管理処理部」、「第2の管理処理部」としているのに対し、甲1発明では、提供されるサービスについて、システムが一元的に提供しているから、上記第2のコンテンツ情報に係るサービスが「前記第1のサービスと関連付いた別のサービスであって前記第1の特定個人に対応付けられるサービスである第2のサービス(のコンテンツ情報)」ということはできず、また、管理処理部も「(第1のサービスのコンテンツ情報を、前記第1の特定個人に閲覧可能にする第1の)管理処理部」とは異なる「第2の管理処理部」であるかは明らかではない点
相違点2
サービスのリンクにおいて、本件発明1では「前記第1の特定個人と、前記第1のサービスに対応付けられる第2の特定個人と、を前記第2のサービスにおいてリンク付ける」のに対し、甲1発明では、「第1のサービス」、「第2のサービス」の区別がないから、「第2のサービスにおいてリンク付け」ていない点
相違点3
本件発明1は、「前記第1のサービスは、健康管理サービスであり」、「前記第2のサービスは、妊活・母子手帳サービスであり」とサービスの内容を分けているのに対し、甲1発明では「健康管理サービス」、「子供の健康について親が管理するサービス」を、サービスを分けずにそれぞれ提供している点、及び、「子供の健康について親が管理するサービス」が、本件発明1では「妊活・母子手帳サービス」であるのに対し、甲1発明では「妊活・母子手帳サービス」までは想定していない点
相違点4
甲1発明は「前記妊活・母子手帳サービスは、ユーザの妊娠活動を支援するとともに、妊娠活動期の母親及び妊娠期以降の母子の状態を管理するサービスであり」の本件発明1の特定事項を備えていない点
相違点5
本件発明1では「前記健康管理サービスのコンテンツ情報及び前記妊活・母子手帳サービスのコンテンツ情報には、ユーザの健康情報が含まれ」ているのに対し、甲1発明では、「妊活・母子手帳サービス」が「子供の健康について親が管理するサービス」であって、上記子供の健康について親が管理するサービスのコンテンツ情報にはユーザの健康情報を含まない点
相違点6
甲1発明は、本件発明1の「前記健康管理サービスと前記妊活・母子手帳サービスとの間で前記健康情報が同期される」構成を有していない点

<判断>
まず、上記のとおり相違点があるので、本件発明1は甲1発明であるということはできず、本件発明1は、甲1に記載された発明であるという申立人の主張は誤りである。(申立理由1に理由はない。)

次に事案に鑑み、相違点1、相違点3、相違点4について検討する。
上記相違点は、まとめると、本件発明1では、ユーザに対するサービスを、「第1のサービス」、これとは異なる「第2のサービス」と分け、「第2のサービスは、妊活・母子手帳サービスであり」、「妊活・母子手帳サービスは、ユーザの妊娠活動を支援するとともに、妊娠活動期の母親及び妊娠期以降の母子の状態を管理するサービスであ」るのに対し、甲1発明では、ユーザに対するサービスが、「第1のサービス」、これとは異なる「第2のサービス」と分けられておらず、「妊活・母子手帳サービス」に対応するサービスは、「子供の健康について親が管理するサービス」であって、「ユーザの妊娠活動を支援するとともに、妊娠活動期の母親及び妊娠期以降の母子の状態を管理するサービス」ではない点であるといえる。
本件発明1では、「第1の特定個人に対応付けられるサービスである第2のサービスのコンテンツ情報」は、「前記第2の管理処理部は、前記リンク部により前記第1の特定個人と前記第2の特定個人とがリンク付けられた場合」に(すなわち、上記リンク付けの後であっても)、前記第1の特定個人に紐付けられた、前記第2のサービスのコンテンツ情報を、前記第2の特定個人に対しても閲覧可能にしているのみであるから、「第1の特定個人に対応付けられるサービスである第2のサービスのコンテンツ情報」であることに変わりはない。
一方、甲1発明では、「子供の健康について親が管理するサービス」にて管理されるコンテンツは、「所定の時期に、前記第1の特定個人と、前記第1のサービスに対応付けられる第2の特定個人とをリンク付け」た後(すなわち、子供(ユーザの娘)が電子招待状を受け取り、電子ハイパーリンクをクリックし、以前にユーザにより管理された個人の健康履歴データにアクセスした後)は、「以前にユーザにより管理された個人の健康履歴データは、新しいアカウントに転送することができ」、「転送された子供ユーザは、その後、子供ユーザ個人の、健康及び/又は病歴に対するフルアクセス権が与えられ」、「以前に取得及び/又は受け取った転送以前に管理していた親や保護者などのユーザマネージャーの、ユーザによって管理された子供に関する記録は、その時点で、子供ユーザの新たな記録となる」のであるから、「子供(第2の特定個人)に対応付けられるサービスのコンテンツ情報」となり、もはや、「第1の特定個人に対応付けられるサービスである第2のサービスのコンテンツ情報」ではなくなるのであって、この点で、本件発明1とは、前提となる構成が異なるのである。
そして、上記前提となる構成が異なるため、甲1発明では、「子供の健康について親が管理するサービス」に係るコンテンツは、子供生まれた後の子供の健康情報しか想定していないのに対し、本件発明1では、これ以外の母親の健康管理に係る「妊活・母子手帳サービス」のコンテンツも含むことを可能としているのである。
すなわち、子供の健康について親が管理するサービスにて管理されるコンテンツについて、本件発明1では、「妊活・母子手帳サービス」のコンテンツとして一貫して親の健康に関するデータとして管理される発明であるのに対し、甲1発明では、本来は子供が管理すべきであるところ、子供(娘)が彼女自身で自分の医療プロファイルを管理可能でない間は、親に管理させ、子供(娘)が彼女自身で自分の医療プロファイルを管理可能となったとき以降は、子供の健康に関するデータとして子供に管理させるという技術思想に基づいた発明である点で、そもそもの技術思想が異なるといえる。
したがって、甲1発明を前提として、上記相違点1、相違点3、相違点4に係る本件発明1の構成とすることは、本件発明1と甲1発明とがそもそもの技術思想で異なるのであるから、仮に甲2ないし甲5に記載された技術事項を参酌したとしても想定することもできない。
よって、本件発明1は、甲1発明及び甲2ないし甲5に記載された技術事項に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
なお、申立人は、甲1([0242]段落)にも妊婦の健康情報について共有する技術思想が開示されている旨主張しているが、当該段落は、「TEAオーディエンスグループ」に関する構成についての実施例に関するものであり、当該段落の記載事項を、甲1発明にどのように適用するかは明らかではなく、当該記載をみても、甲1発明に基づき、本件発明1が容易に為し得たものであるということはできない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2ないし甲5記載の事項に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできず、申立人の主張する申立理由2は、その理由がない。

(2)本件発明2について
《対比》
本件発明2と甲1発明とを対比する。
(a)まず、本件発明1と本件発明2とを比べると、本件発明1の構成要件(1A)〜(1K)、(1N)と本件発明2の(2A)〜(2K)、(2N)とは、相違がないから、上記(1)の対比を援用する。
(b)本件発明2は「前記妊活・母子手帳サービスのコンテンツ情報には、前記子供の健診記録データが含まれ」ている。
この点、甲1発明は、子供の健康についての情報を含んでいるから、「コンテンツ情報には、前記子供の健診記録データが含まれ」ているということはできる。
もっとも、本件発明2では、「前記妊活・母子手帳サービスのコンテンツ情報には、前記子供の健診記録データが含まれ」ているのに対し、甲1発明では、子供の健診記録データが含まれるのは、(母子手帳サービスに対応する)子供の健康について親が管理するサービスのコンテンツ情報である点で相違する。
(c)甲1には、検診記録データが、「定期健診、学校検診及び/又は歯科検診の予定及び/又は結果を示すデータ」であることを示す直接的な記載あるいはこれを示唆する記載はないから、甲1発明は、「前記健診記録データは、定期健診、学校検診及び/又は歯科検診の予定及び/又は結果を示すデータである」なる構成を有していない。
(d)まとめ(一致点・相違点)
<一致点>
第1の特定個人に対応付けられるサービスである第1のサービスのコンテンツ情報を、前記第1の特定個人に閲覧可能にする管理処理部と、
第2のコンテンツ情報を、前記第1の特定個人に閲覧可能にする管理処理部と、
所定の時期に、前記第1の特定個人と、前記第1のサービスに対応付けられる第2の特定個人と、をリンク付けるリンク部と、
を備え、
前記管理処理部は、前記リンク部により前記第1の特定個人と前記第2の特定個人とがリンク付けられた場合に、前記第1の特定個人に紐付けられた、前記第2のコンテンツ情報を、前記第2の特定個人に対しても閲覧可能にし、
前記第1の特定個人は、母親であり、
前記第2の特定個人は、前記母親の子供であり、
健康管理サービスと、
子供の健康について親が管理するサービスとを含み、
前記健康管理サービスは、ユーザの健康を管理するサービスであり、
前記健康管理サービスのコンテンツ情報には、ユーザの健康情報が含まれ、
コンテンツ情報には、前記子供の健診記録データが含まれる、
情報管理装置。

<相違点>
相違点1
本件発明2は、「第1の特定個人に対応付けられるサービスである第1のサービスのコンテンツ情報」、「前記第1のサービスと関連付いた別のサービスであって前記第1の特定個人に対応付けられるサービスである第2のサービスのコンテンツ情報」のように、サービスを「第1のサービス」、「第2のサービス」と分けて、コンテンツ情報を「第1のサービスのコンテンツ情報」、「第2のサービスのコンテンツ情報」とし、管理処理部を上記サービスに対応した「第1の管理処理部」、「第2の管理処理部」としているのに対し、甲1発明では、提供されるサービスについて、システムが一元的に提供しているから、上記第2のコンテンツ情報に係るサービスが「前記第1のサービスと関連付いた別のサービスであって前記第1の特定個人に対応付けられるサービスである第2のサービス(のコンテンツ情報)」ということはできず、また、管理処理部も「(第1のサービスのコンテンツ情報を、前記第1の特定個人に閲覧可能にする第1の)管理処理部」とは異なる「第2の管理処理部」であるかは明らかではない点
相違点2
サービスのリンクにおいて、本件発明2では「前記第1の特定個人と、前記第1のサービスに対応付けられる第2の特定個人と、を前記第2のサービスにおいてリンク付ける」のに対し、甲1発明では、「第1のサービス」、「第2のサービス」の区別がないから、「第2のサービスにおいてリンク付け」ていない点
相違点3
本件発明2は、「前記第1のサービスは、健康管理サービスであり」、「前記第2のサービスは、妊活・母子手帳サービスであり」とサービスの内容を分けているのに対し、甲1発明では「健康管理サービス」、「子供の健康について親が管理するサービス」を、サービスを分けずにそれぞれ提供している点、及び、「子供の健康について親が管理するサービス」が、本件発明2では「妊活・母子手帳サービス」であるのに対し、甲1発明では「妊活・母子手帳サービス」までは想定していない点
相違点4
甲1発明は「前記妊活・母子手帳サービスは、ユーザの妊娠活動を支援するとともに、妊娠活動期の母親及び妊娠期以降の母子の状態を管理するサービスであり」の本件発明2の特定事項を備えていない点
相違点5
本件発明2では、「前記妊活・母子手帳サービスのコンテンツ情報には、前記子供の健診記録データが含まれ」ているのに対し、甲1発明では、子供の健診記録データが含まれるのは、(母子手帳サービスに対応する)子供の健康について親が管理するサービスのコンテンツ情報である点
相違点6
甲1発明は、本件発明2の「前記健診記録データは、定期健診、学校検診及び/又は歯科検診の予定及び/又は結果を示すデータである」の特定事項を有していない点

<判断>
まず、上記のとおり相違点があるので、本件発明2は甲1発明であるということはできず、本件発明2は、甲1に記載された発明であるという申立人の主張は誤りである。(申立理由1に理由はない。)
また、本件発明2と甲1発明とには上記(1)で検討した相違点1、相違点3、相違点4に相当する相違点が存在し、当該相違点は、甲1発明及び甲2ないし甲5に記載された技術事項に基づき当業者が容易に想到することができたものであるということはできないことは先に検討したとおりである。
したがって、本件発明2は、甲1発明及び甲2ないし甲5に記載された事項に基づき当業者が容易に発明をすることができたものではない。(申立理由2に理由はない。)

(3)本件発明3について
本件発明3は、本件発明1、本件発明2の記載をそれぞれ引用し、更に限定する構成を付加したものである。
したがって、上記(1)、(2)で検討したとおりの相違点が存在しているから本件発明3は甲1に記載された発明ではない。(申立理由1に理由はない。)
また、当該相違点の構成は、甲1発明および甲2ないし甲5の記載に基づき当業者が容易に想到することができたものであるということはできないから、本件発明3は、甲1発明及び甲2ないし甲5の記載に基づき当業者が容易に発明をすることができたものではない。(申立理由2に理由はない。)

(4)本件発明4について
本件発明4は、本件発明1の「情報管理装置」を「情報管理装置としてコンピュータを機能させるコンピュータプログラム」と、そのカテゴリを変えただけの発明である。
したがって、本件発明4と甲1発明とは、上記(1)で検討したとおりの相違点が存在しているから本件発明4は甲1に記載された発明ではない。(申立理由1に理由はない。)
また、当該対応する相違点は、上記(1)で検討したとおり、甲1発明及び甲2ないし甲5の記載に基づき当業者が容易に想到することができたものであるということはできない。
したがって、本件発明4は、甲1発明及び甲2ないし甲5に記載された事項に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。(申立理由2に理由はない。)

(5)本件発明5について
本件発明5は、本件発明2の「情報管理装置」を「情報管理装置としてコンピュータを機能させるコンピュータプログラム」と、そのカテゴリを変えただけの発明である。
したがって、本件発明5と甲1発明とは、上記(2)で検討した相違点に対応する各相違点が存在しているから本件発明5は甲1に記載された発明ではない。(申立理由1に理由はない。)
また、当該対応する相違点は、上記(2)で検討したとおり、甲1発明及び甲2ないし甲5の記載に基づき当業者が容易に想到することができたものであるということはできない。
したがって、本件発明5は、甲1発明及び甲2ないし甲5に記載された事項に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。(申立理由2に理由はない。)

(6)小括
以上のとおり、申立理由1、申立理由2は、理由がない。

第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1〜5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1〜5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2022-08-18 
出願番号 P2017-246829
審決分類 P 1 651・ 121- Y (G06Q)
P 1 651・ 538- Y (G06Q)
P 1 651・ 113- Y (G06Q)
P 1 651・ 537- Y (G06Q)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 高瀬 勤
特許庁審判官 相崎 裕恒
渡邊 聡
登録日 2021-11-12 
登録番号 6976528
権利者 勤次郎株式会社
発明の名称 情報管理装置及びコンピュータプログラム  
代理人 名古屋国際特許業務法人  

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