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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61M
管理番号 1388657
総通号数 10 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-11-30 
確定日 2022-09-07 
事件の表示 特願2017−227252号「高分子精密濾過装置、その製造方法及び精密濾過装置の使用」拒絶査定不服審判事件〔平成30年5月24日出願公開、特開2018−79327号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2012年(平成24年)11月21日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年11月21日 米国(US)、2012年3月30日 米国(US)、2012年6月1日 米国(US))を国際出願日とする特願2014−543582号の一部を平成29年11月27日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は概略以下のとおりである。
平成30年 9月27日付け:拒絶理由通知
平成31年 3月 1日提出:意見書及び手続補正書
令和 元年 8月15日付け:拒絶理由通知(最後)
令和 2年 2月20日提出:意見書
令和 2年 7月22日付け:拒絶査定
令和 2年11月30日提出:審判請求書
令和 3年 6月30日付け:拒絶理由通知
令和 4年 1月 6日提出:意見書及び手続補正書

第2 本願発明
令和4年1月6日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「 【請求項1】
第1の容積を有する第1の空間と、前記第1の空間への第1の開口部と、を含む入口ユニットと、
ネガ型光画定可能な乾燥膜から形成された均一の厚さを有する単一のポリマーフィルタ層を含むフィルタ構造体であって、前記ポリマーフィルタ層は前記単一のポリマーフィルタ層を貫通して延在する複数のアパーチャを有するフィルタ構造体と、
その中に取り外し可能に構成された前記フィルタ構造体を収容するための第2の容積を有する第2の空間と、前記第2の空間への第2の開口部と、を含む出口ユニットと、を含み、
前記入口ユニットが前記出口ユニットに固定された場合、前記フィルタ構造体が、前記第1の開口部を通して前記第1の空間の中で、前記フィルタ構造体上に収集されたろ過された物質の観察または前記ろ過された物質の分析のために露出するように、前記第1の開口部と第2の開口部は反対側の端である、
フィルタホルダ。」

第3 拒絶の理由
令和3年6月30日付けで当審が通知した拒絶理由(以下、「拒絶理由」という。)のうち理由2は、概略次の拒絶理由を含むものである。
本願請求項1に係る発明は、その出願(優先日)前日本国内又は外国において頒布された下記引用文献1〜3に記載された発明に基いて、その出願(優先日)前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧:
1.特表平10−508699号公報(拒絶理由の引用文献1)
2.実願昭52−96706号(実開昭54−23139号)のマイクロフィルム(拒絶理由の引用文献4)
3.国際公開第2011/139445号(拒絶理由の引用文献5)

第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1について
(1)引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下、同様。)。
ア 「本発明は、収容器と、収容器内に配置した固形物捕集部材と、放射エネルギー源と固形物捕集部材との間の通路を提供する光学的チャンネルとを有する装置を包含する。
本発明は、捕集部位を有し、捕集部位を通して捕集固形物体の吸収パターンを決定し得る放射エネルギー源に曝す為の試料を調製する装置をも包含する。
本発明は生物学的、生理学的又は周囲環境的流体等の流体を捕集し、流体から遠心分離することなく所要の固形物体を取り出し、装置内で固形物体に放射エネルギーを当てることにより固形物体を診断し検査することをも包含する。」(8頁9〜16行)

イ 「本発明の好適な一実施例においては、捕集モジュールは所定の位置で所定の厚さで流体中の固形物体を捕集し濃厚化する。このようにして、捕集した固形物体を同定し定量化する目的の下に、固形物体を容易に且つ再現可能に電磁線に当てることができる。
ここに記した流体とは、流体中の一構成成分の同定又は存在を確立する目的の下に、流体中の一構成成分を捕集するのが望ましい全ての流体を意味する。流体中の構成成分は、粒状物体等の固形物体であるのが典型的である。例えば、流体は空気又はガス又は尿等の生理学的流体の場合があり、癌細胞の存在又は生理学的流体中の或る種の蛋白質の存在を決定するのが望ましい場合がある。他の例においては、エレクトロニクス産業で用いる超純水中の分子汚染物等の汚染物の性質を評価することが望ましい場合がある。他の例示的な流体は、血液、脊髄液、羊水等の他の体液、気管支洗浄液、唾液、細針吸出液、グラウンド水、工業的処理流体、電子的又は医学的透析流体等を含み、これ等は単に若干の例であり、これ等に限定されるものではない。本発明は処理される流体の種類によって限定されるべきではない。
ここに記した固形物体とは、放射エネルギー源を用いて捕集し評価し得る流体中の全ての物体を意味する。例示的な固形物体は、細胞又は細胞残片、蛋白質、分子、ポリマー、ゴム、安定剤、酸化防止剤、促進剤、シリコーン、アルキド、チオコール、パラフィン、熱可塑性物質、バクテリア、殺虫剤及び除草剤等を包含するが、これ等に限定されるものではない。特定の例示的なポリマー物体は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレングリコール、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリサルファイド、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ビスフェノールA(普通の環境汚染物)、エチルセルロース、ニトロセルロース、ポリウレタン及びナイロンを包含するが、これ等に限定されるものではない。特定の例示的な生理学的物体は、正常な癌細胞と転移癌細胞との識別を含む癌細胞、蛋白質、核酸、抗体又は類似物を包含する。本発明は処理される固形物体の種類によって限定されるべきではない。
ここに記した電磁線とは、固形物体により吸収され得る放射エネルギーを意味し、赤外線、近赤外線、可視スペクトル及び近紫外線を包含するが、これ等に限定されるものではない。例えば、電磁線は、構造、立体化学、添加剤種類、分解度、コポリマーの存在、鎖長さ、配向、結晶化度、炭素−水素延伸領域、不飽和炭素−水素吸収と飽和炭素−水素吸収との識別及び個々の分子の存在を決定するのに使用できる。電磁線は試料の組成、例えば特定の細胞、蛋白質、分子又はポリマーの組成を決定するのに使用することもできる。本発明は固形物体の同定及び/又は定量化に使用し得る全ての種類のエネルギーの使用を包含する。」(9頁3行〜10頁10行。)

ウ 「図1は本発明の分析モジュールの典型的な一例を示すもので、各モジュールは図3に示すように収容器10と、送入部11と、排出部12と、捕集部材13とを有する。
図2〜4に示すように、分析モジュール又は固形物体捕集装置は、送入部11及び排出部12を有する収容器10を有する。収容器10は室18を画成し、送入部11及び排出部12は収容器10を通る少なくとも一本以上の流体流れ通路を画成する。固形物体を捕集するのに適合する捕集部位14を有する捕集部材13は、流体流れ通路を横断して、送入部11と連結する捕集部位14に配置することができる。固形物体捕集装置内部の捕集部材13は、第一及び第二の支管を有する流れ通路を画成するのに適合することが好ましく、第一の支管21は捕集部位14を通って延在し、第二の支管22は捕集部位14を迂回する。」(10頁下から5行〜11頁6行。)

エ 「本発明は好適な一実施例においては、固形物体の通過を防止するのに好適な第一の多孔質媒質23と、流体の通過を可能とするのに好適な第二の多孔質媒質24とを有する捕集部材13を含む。第二多孔質媒質24は流体から粒状固形物体を除去し得るもの又は除去し得ないものとすることができ、特定の装置の需要に応じて選択して設計することができる。好適な一実施例においては、第一多孔質媒質23は固形物体を捕獲又は捕集するのに好適であり、一つの均一な又は単独の層中に固形物体を捕獲又は捕集することがさらに好適でさえある。好適な一実施例においては、第一多孔質媒質23の支持体として好適な第二多孔質媒質をも有する。」(11頁7〜15行。)

オ 「捕集部材13は光学的チャンネル15bをも有し、光学的チャンネル15bは電磁線を第二多孔質媒質24に接触することなく第一多孔質媒質23に接触させる。光学的チャンネル15a、15b及び15cは、電磁線を固形物質に接触させるモジュール又は収容器を通る光学的通路であれば、如何なるものでも良い。図3に示す通り、光学的チャンネル15bはチャンネル、孔又は第二多孔質媒質24を通過する任意の形状、例えば中央に位置する環状孔のものである。 第一多孔質媒質23と第二多孔質媒質24は、ここに記すように機能する任意の様式で配置することができる。当業技術者が認識するであろうように、捕集部材13は特別の結果を達成する必要に応じて種々な外形構造とし、種々に配置することができる。例えば、第一多孔質媒質23と第二多孔質媒質24は分離した距離を置いて離間された媒質であって良く、二媒質が一緒に積層されたものであって良く、第一多孔質媒質が第二多孔質媒質と一体になったか除去可能に係合しているものであって良く、或いは捕集部材13は前述した第一多孔質媒質の機能を模倣する高密度の圏域と、前述した第二多孔質媒質の機能を模倣する低密度の圏域とを有することができる。これ等の種々の形状の選択は、充分に当業技術者の技術範囲内である。」(11頁16行〜12頁3行。)

カ 「本発明の好適な一実施例においては、第一多孔質媒質はポリカーボネート薄膜であり、第二多孔質媒質は深さフィルターである。
種々の種類の第一及び第二の多孔質媒質を使用し得ることは、注目すべきである。」(12頁4〜7行。)

キ 「分析モジュール収容器10は捕集部材13を通過又は横断する流体の流れを許す任意のデザインのもの、例えば一体の収容器とすることができる。図1〜7に示すように、分析モジュール収容器10は第一脱着部分16と第二脱着部分17とから成る二部材収容器とすることが好ましいが、捕集部材13への接近を提供する全ての収容器は好適である。」(13頁下から2行〜14頁3行。)

ク 「流体が収容器10を通過するに伴い、流体は図5に示すように捕集部位14と捕集部材13を通って流れる。当業技術者が認識するであろうように、捕集しようとする固形物体の種類及び/又は寸法に応じて多孔質深さフィルター及び多孔質薄膜の孔径を調節すると、捕集部位14上に固形物体を捕集することができる。」(14頁13〜17行。)

ケ 「本発明の一方法においては、固形物体を電磁線に曝す光学的チャンネルを有する捕集部材上に固形物体を捕集する。固形物体を捕集した後、電磁線を光学的チャンネルに通し、次いで吸収の量及び/又は種類を測定することにより、固形物体を解析する。
例えば、流体を収容器10を通して捕集コップ31から引出し、流体中の固形物体を捕集部位14上に均一層又は単独粒子層として捕集することができる。所望ならば、収容器10を通して補足的流体を引出すか、或いは補足的流体を引出した後、捕集コップ31に戻し、次いで再度引出し、これを所要の回数だけ何回も繰り返すことができる。一旦固形物体を捕集した後、光学的チャンネルが赤外線ビーム等の電磁線ビーム中に正しく配置されるように収容器10を保持器内に置くことができる。電磁線ビームは光学的チャンネル15a、15b及び15cに沿って排出部12を通過する。電磁線ビームは捕集部位14上に捕集された固形物体と光学的チャンネル15b内で接触する。捕集された固形物体は電磁線の或る波長を吸収し、この吸収は吸収計を光学的チャンネル15cの通路内に置くことにより測定することができる。」(15頁19行〜16頁5行。)

コ 「図1



サ 「図2



シ 「図3



ス 「図4



セ 「図5



ソ 「図7



(2)引用発明1
ア 上記(1)ウ、キの下線部の記載及び(1)コ、サ、ス、ソの図面の記載からすれば、引用文献1記載の「第一脱着部分16」は、室18の送入部11側の部分及び流体流れ通路を画成するものであり、当該流体流れ通路は当該部分へと開口していることが看取できる。

イ 上記(1)ウ、エ、カ、クの下線部の記載からすれば、引用文献1記載の「捕集部位14」は、固形物体を捕集する多孔質のポリカーボネート薄膜として構成されており、捕集部材13は当該捕集部位14を含むものとして構成されている。

ウ 上記(1)ウ、キの下線部の記載及び(1)ス、セ、ソの図面の記載からすれば、引用文献1記載の「第二脱着部分17」は、捕集部材13を収容する室18の排出部12側の部分及び流体流れ通路を画成するものであり、当該流体流れ通路は当該部分へと開口していることが看取できる。

エ 上記(1)ウ、オ、カ、キ、ク、ケの下線部の記載及び(1)ス、ソの図面の記載からすれば、引用文献1の「第一脱着部分16」が「第二脱着部分17」に固定された場合、捕集部材13は、送入部11の流体流れ通路を通して室18の中で、捕集部位14上に捕集された固形物体の解析のため
電磁線ビームを接触させるように、送入部11の流体流れ通路と排出部12の流体流れ通路は反対側の端であることが看取できる。

オ 上記(1)ア〜ソの記載事項及び(2)ア〜エの認定事項からすれば、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。

「室18の送入部11側の部分と当該部分へ開口する流体流れ通路を画成する第一脱着部分16と、
固形物体を捕集する多孔質のポリカーボネート薄膜として構成された捕集部位14を含む捕集部材13と、
捕集部材13を収容する室18の排出部12側の部分へ開口する流体流れ通路を画成する第二脱着部分17と、
第一脱着部分16と第二脱着部分17が固定された場合、捕集部材13が、第一脱着部分16の流体流れ通路を通して室18の中で、捕集部位14上に捕集された固形物体の解析のため電磁線ビームを接触させるように、第一脱着部分16の流体流れ通路と第二脱着部分17の流体流れ通路は反対側の端である、
分析モジュール収容器10。」

2 引用文献2について
(1)引用文献2には、以下の事項が記載されている。
ア 「本考案は、吸引力を内在した濾(引用文献2のマイクロフィルムでは、さんずいに戸。以下同じ。)過器に関するものであり、その主な目的は、濾過膜を保持する濾過膜保持具の内部に貫通した中空針を、内部を真空または減圧状態にしたゴム栓施栓容器のゴム栓に刺針することにより、吸引器具を用いることなく、吸引濾過が容易に且つ効率良く実施でき、少量液の限外濾過・無菌濾過・微粒子除去,少量液からの微粒子・微生物・細胞の捕集・分離,気体からの微粒子・微生物の捕集・分離・除去等に適用することにある。」(明細書1頁12行〜2頁1行。)

イ 「本考案は、図面に示す如く、濾過膜(1)、濾過膜(1)を保持する濾過膜保持具(2)、濾過膜保持具(2)内に貫通した中空針(3)、及び内部を真空または減圧状態にしたゴム栓施栓容器(4)から成り、中空針(3)をゴム栓(5)に刺針することにより、濾過膜保持具内とゴム栓施栓容器内とを貫通させて吸引濾過することを特徴とする、濾過器である。
第1図及び第2図は、本考案の液体用濾過器の実施例に係わる図面であり、第1図はその斜視図、第2図はその縦断面図(中空針をゴム栓に刺針した時点における)である。即ち、濾過膜(1)を保持する濾過膜保持具(2)の内部に貫通した中空針(3)を、内部を真空または減圧状態にしたゴム栓施栓容器(4)のゴム栓(5)に刺針することにより、濾過膜保持具(2)内とゴム栓施栓容器(4)内とを貫通して、前以って濾過膜(1)上にピペット等により注下した所定量の液体(6)を吸引濾過する。」(明細書3頁9行〜4頁7行。)

ウ 「本考案に用いる濾過膜としては、多孔性の高分子膜または濾紙が好適であり、再生セルロース膜、酢酸セルロース膜、ニトロセルロース膜の如きセルロース膜、ポリカーボネート膜、ポリプロピレン膜、ポリ塩化ビニル膜、ポリスチレン膜、ポリアミド膜、ポリイミド膜、ポリスルホン膜、ポリビニルアセタール膜の如き合成高分子膜、セルロース濾紙、ガラス繊維濾紙、アスベスト濾紙、イオン交換濾紙の如き濾紙が挙げられ、濾過目的、使途に応じて濾過膜の種類、孔径、孔密度、膜厚、膜面状態等の諸条件を選定し、本考案の濾過器に使用する。」(明細書4頁下から5行〜5頁7行。)

エ 「本考案に用いる濾過膜保持具は、吸引洩れがない構造に作成されており、液体用濾過膜保持具においては、濾過膜上にある被濾過液留置部(11)、濾過膜保持部(12)、濾斗部(13)及び中空針連結部(14)から成り、気体用濾過膜保持具においては、吸引口は開放されており、濾過膜保持部(12)、濾斗部(13)及び中空針連結部(14)から成る。」(明細書5頁8〜14行)

オ 「本考案の濾過器を用いて吸引濾過する方法は、濾過膜を保持する濾過膜保持具の内部に貫通した中空針を、内部を真空または減圧状態にしたゴム栓施栓容器のゴム栓に刺針することにより、濾過膜保持具内とゴム栓施栓容器内とを貫通させて吸引濾過する。」(明細書7頁12〜17行。)

カ 「(ホ) 液体または気体を吸引濾過した後、濾過膜を直接検鏡することにより、容易に且つ効率良く異物検査ができる。」(明細書8頁15〜17行。)

キ 「第1図



ク 「第2図



(2)引用発明2
ア 上記(1)イ、エの下線部の記載及び(1)キ、クの図面の記載からすれば、引用文献2記載の「被濾過液留置部11」は、円筒状であり、濾過膜1及び濾過膜保持具2に対して開口しているから、容積を有する空間と当該空間への開口を有していることが看取できる。

イ 上記(1)ウの記載からすれば、引用文献2記載の「濾過膜1」は多孔性の高分子膜である。

ウ 上記(1)イ、エ、オの下線部の記載及び(1)キ、クの図面の記載からすれば、引用文献2記載の「濾斗部13」は、濾過膜1及び濾過膜保持具2を収容する容積を有する空間と当該空間へと開口する中空針3を含んでいることが看取できる。

エ 上記(1)オ、カの下線部の記載及び(1)キ、クの図面の記載からすれば、引用文献2の濾過器が組み立てられた場合、濾過膜は直接検鏡でき、被濾過液留置部11の上方の開口と中空針3は反対側の端であることが看取できる。

オ 上記(1)ア〜クの記載事項及び(2)ア〜エの認定事項からすれば、引用文献2には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。

「容積を有する空間と当該空間への開口を有する被濾過液留置部11と、
多孔性の高分子膜である濾過膜1と濾過膜保持具2と、
濾過膜1及びこれを保持する濾過膜保持具2を収容する容積を有する空間と当該空間へと開口する中空針3を含む濾斗部13と、
濾過器が組み立てられた場合、濾過膜を直接検鏡することができ、被濾過液留置部11の上方の開口と中空針3は反対側の端である、
濾過器。」

3 引用文献3について
(1)引用文献3には、以下の事項が記載されている。
ア 「Cells that are larger and/or less flexible than other cells present in a bodily fluid may be collected by filtering the bodily fluid. For example, targeted cells indicative of a condition may be collected by passing a bodily fluid through a filter having openings that are too small for the target cells to pass through, but large enough for other cells to pass through. Once collected, any number of analyses of the target cells may be performed. Such analyses may include, for example, identifying, counting, characterizing, and/or culturing the collected cells.」(段落[0004]。)
(訳:体液に存在する他の細胞より柔軟性が大きいおよび/または小さい細胞は、体液を濾過することで収集されてもよい。例えば、ある状態を示す標的細胞が、当該標的細胞が通過するには小さすぎるが他の細胞は通過できる大きさの開口を有するフィルタに、体液を通すことにより収集されてもよい。標的細胞は、収集されると、任意の回数の解析が実行されてもよい。このような解析は、例えば、収集細胞の同定、計数、特性調査および/または培養を含んでもよい。)

イ 「Aspects of the present invention are generally directed to a microfilter comprising a polymer layer formed from an epoxy-based photo-defmable dry film. The microfilter includes a plurality of apertures each extending through the polymer layer. In certain embodiments, the microfilter may be formed by exposing the dry film to energy through a mask and developing the exposed dry film. In some embodiments, the dry film may be exposed to energy in the form of ultraviolet (UV) light. In other embodiments, the dry film may be exposed to energy in the form of X-rays. In certain embodiments, the polymer layer has sufficient strength and flexibility to filter liquid. In some embodiments, the apertures are sized to allow passage of a first type of bodily fluid cell and to prevent passage of a second type of bodily fluid cell.」(段落[0032]。)
(訳:本発明の態様は、一般に、エポキシ系の光画定可能な乾燥膜から形成された高分子層を含むマイクロフィルタに関する。本マイクロフィルタは、高分子層をそれぞれ貫通して延在する複数の開口を含んでいる。ある実施形態において、マイクロフィルタは、マスクを通るエネルギーにより乾燥膜を露光し、露光された乾燥膜を現像することによって形成されてもよい。いくつかの実施形態において、乾燥膜は、紫外線(UV)光の形態のエネルギーにより露光されてもよい。他の実施形態において、乾燥膜は、X線の形態のエネルギーにより露光されてもよい。ある実施形態において、高分子層は、液体を濾過するのに十分な強度および柔軟性を有する。いくつかの実施形態において、開口は、第1のタイプの体液細胞を通し、第2のタイプの体液細胞は通さないサイズに形成される。)

ウ 「In the embodiment illustrated in FIGS. 1A-1E, dry film 100 is a negative resist. As used herein, a "negative resist" is a photo-defmable substance that becomes polymerized when exposed to certain kinds of energy, such as UV light or X-rays. Examples of negative resist epoxy-based photo-defmable dry films that may be used in accordance with embodiments of the present invention include the negative resist dry film included in PERMXTM series polymer film from DuPont, and the negative resist dry film included in SUEXTM sheets from DJ DevCorp, each of which includes a photo-defmable layer between two other polymer layers. The PERMXTM 3000 series is manufactured in rolls by Dupont in commercially available thicknesses of 10 μm, 14 μm, 25 μm, and 50 μm, although other thickness can also be obtained.
As shown in FIG. 1C, the portions of exposed dry film 110 that were exposed to UV light through mask 199 become polymerized, leaving portions 116 that are not polymerized. The polymerized and non-polymerized portions of exposed dry film 100 form a pattern 118 that is defined by optical mask 199. More particularly, pattern 118 of exposed dry film 110 is defined by a pattern 198 of optical mask 199, where pattern 198 is formed by material opaque to UV light. In certain embodiments, pattern 198 may be formed by a thin film of material opaque to UV light, such as a thin film of chromium.」(段落[0039]〜[0040]。)
(訳:図1A〜図1Eに示す実施形態において、乾燥膜100はネガ型レジストである。「ネガ型レジスト」とは、本明細書では、UV光やX線などのある種のエネルギーにより露光されると重合状態になる光画定可能な物質である。本発明の実施形態により使用されてもよいネガ型レジストエポキシ系の光画定可能な乾燥膜の例として、DuPontのPERMX(商標)シリーズの高分子膜に含まれるネガ型レジスト乾燥膜、およびDJ DevCorpのSUEX(商標)シートに含まれるネガ型レジスト乾燥膜があり、これらは、各々、2つの他の高分子層間に光画定可能な層を含む。PERMX(商標)3000シリーズは、Dupontによりロールで製造されており、市販されているものの厚さは、10μm、14μm、25μmおよび50μmであるが、他の厚さのものも得られる。
図1Cに示されているように、マスク199を通してUV光により露光された露光済み乾燥膜110の部分は重合状態になるが、部分116は非重合状態のままである。露光済み乾燥膜100の重合化部分および非重合化部分は、光学マスク199によって画定されたパターン118を形成する。特に、露光済み乾燥膜110のパターン118は、光学マスク199のパターン198によって画定され、パターン198は、UV光に対して不透明な材料によって形成される。ある実施形態において、パターン198は、クロム薄膜など、UV光に対して不透明な材料の薄膜によって形成されてもよい。)

エ 「In the embodiment illustrated in FIGS. 1A-1E, exposed dry film 110 is developed to remove non-polymerized portions 116 to form microfilter 120 having pores 122. In certain embodiments, exposed dry film 110 is developed by applying a developer to dry film 110 to dissolve non-polymerized portions 116. In some embodiments, the developer is an aqueous solution that dissolves non-polymerized portions 116 when exposed dry film 110 is submerged in the developer. At block 280, microfilter 120 having pores 122 is removed from substrate 180 to form a free-standing microfilter 120, as shown in FIG. IE. In some embodiments, a microfilter is a structure of one or more polymer layers including one or more apertures extending between outer surfaces of the structure, wherein the structure has sufficient strength and flexibility to filter a liquid passed through the one or more apertures. In certain embodiments, a microfilter may include apertures having dimensions small enough to prevent one or more types of bodily fluid cells from passing through the apertures when a bodily fluid or liquid containing a bodily fluid is passed through the filter, wherein the dimensions of the apertures are also small enough to prevent one or more other types of bodily fluid cells from passing through the filter. As used herein, "bodily fluid cell" refers to any cell that may be found in a bodily fluid of a patient, such as red or white blood cells, rare cells, such as CTCs and fetal cells, etc. In some embodiments, a microfilter includes apertures sized to allow passage of a significant number of red blood cells and to prevent passage of a significant number of CTCs. In certain embodiments, a microfilter formed from one or more layers of epoxy-based photo-defmable dry film may be a polymeric microfilter. 」(段落[0043]。)
(訳:図1A〜図1Eに示す実施形態において、非重合化部分116を除去して、孔122を有するマイクロフィルタ120を形成するために、露光済み乾燥膜110が現像される。ある実施形態において、露光済み乾燥膜110は、乾燥膜110に現像剤を適用して非重合化部分116を溶解することによって現像される。いくつかの実施形態において、現像剤は、露光済み乾燥膜110が現像剤に浸漬されると、非重合化部分116を溶解する水溶液である。ブロック280において、孔122を有するマイクロフィルタ120は、図1Eに示すように、独立したマイクロフィルタ120を形成するように基板180から除去される。いくつかの実施形態において、マイクロフィルタは、構造体の外面間を延在する1つ以上の開口を含む1つ以上の高分子層の構造体であり、この構造体は、1つ以上の開口を通過する液体を濾過するのに十分な強度および柔軟性を有する。ある実施形態において、マイクロフィルタは、体液または体液を含む液体がフィルタを通過するとき、体液細胞の1つ以上のタイプが開口を通過できないような小さな寸法を有する開口を含んでいてもよく、開口の寸法はまた、体液細胞の1つ以上の他のタイプがフィルタを通過できないほど小さいものである。本明細書では、「体液細胞」とは、赤血球や白血球、あるいはCTCや胎児細胞などの希少細胞を含む、患者の体液中に見られる任意の細胞をさす。いくつかの実施形態において、マイクロフィルタは、多数の赤血球を通過させ、多数のCTCを通過させないサイズの開口を含む。ある実施形態において、エポキシ系の光画定可能な乾燥膜の1つ以上の層から形成されたマイクロフィルタは、高分子マイクロフィルタであってもよい。)

オ 「図1A〜E



(2)引用文献3に記載された技術事項
上記(1)ア〜エの特に下線部の記載及び(1)オの図面の記載からすれば、引用文献3には次の技術事項(以下、「引用文献3の技術事項」という。)が記載されているものと認められる。

「ネガ型光画定可能な乾燥膜から形成された均一の厚さを有する単一のポリマーフィルタ層からなるマイクロフィルタ。」

第5 対比・判断
1 引用発明1を主引用発明とする場合
(1)対比
ア 引用発明1の「分析モジュール収容器10」は、その機能及び構造からみて、本願発明の「フィルタホルダ」に相当する。

イ 引用発明1の第一脱着部分16の「流体流れ通路」は開口部として構成されており、第一脱着部分16の「室18の送入部11側の部分」は容積を有する空間を含んでおり、その機能及び構造からみて、引用発明1の「第一脱着部分16」及びその「流体流れ通路」は、それぞれ本願発明の「入口ユニット」及び「第1の開口部」に相当するから、引用発明1の「室18の送入部11側の部分と当該部分へ開口する流体流れ通路を画成する送入部11」は、本願発明の「第1の容積を有する第1の空間と、前記第1の空間への第1の開口部と、を含む入口ユニット」に相当する。

ウ 引用発明1の「ポリカーボネート薄膜」は多孔質であり、フィルターとして構成されたものであるから貫通して延在する複数のアパーチャを有するものと認められる。また、その機能及び構造からみて、引用発明1の「捕集部位14」及び「捕集部材13」は、それぞれ本願発明の「ポリマーフィルタ層」及び「フィルタ構造体」に相当する。
よって、引用発明1の「固形物体を捕集する多孔質のポリカーボネート薄膜として構成された捕集部位14を含む捕集部材13」は、本願発明の「ポリマーフィルタ層を含むフィルタ構造体であって、前記ポリマーフィルタ層は前記ポリマーフィルタ層を貫通して延在する複数のアパーチャを有するフィルタ構造体」に相当する。

エ 引用発明1の第二脱着部分17の「室18の排出部12側の部分」は容積を有する空間を有しており、第二脱着部分17の「流体流れ通路」は当該空間へ開口している。そして、その機能及び構造からみて、引用発明1の「捕集部材13」、「第二脱着部分17」及びその「流体流れ通路」は、それぞれ本願発明の「フィルタ構造体」、「出口ユニット」及び「第2の開口部」に相当するから、引用発明1の「捕集部材13を収容する室18の排出部12側の部分へ開口する流体流れ通路を画成する第二脱着部分17」は、本願発明の「フィルタ構造体を収容するための第2の容積を有する第2の空間と、前記第2の空間への第2の開口部と、を含む出口ユニット」に相当する。

オ 引用発明1は、捕集部位14上に捕集された固形物体の解析のため電磁線ビームを接触させるのであるから、捕集部材13上に捕集された固形物体の分析のために露出しているものと認められる。
よって、引用発明1の「第一脱着部分16と第二脱着部分17が固定された場合、捕集部材13が、第一脱着部分16の流体流れ通路を通して室18の中で、捕集部位14上に捕集された固形物体の解析のため電磁線ビームを接触させるように、第一脱着部分16の流体流れ通路と第二脱着部分17の流体流れ通路は反対側の端である」点は、本願発明の「入口ユニットが出口ユニットに固定された場合、フィルタ構造体が、第1の開口部を通して第1の空間の中で、前記フィルタ構造体上に収集されたろ過された物質の観察または前記ろ過された物質の分析のために露出するように、前記第1の開口部と第2の開口部は反対側の端である」点に相当する。

上記ア〜オを踏まえると、本願発明と引用発明1は、以下の一致点及び相違点を有する。

【一致点】
第1の容積を有する第1の空間と、前記第1の空間への第1の開口部と、を含む入口ユニットと、
ポリマーフィルタ層を含むフィルタ構造体であって、前記ポリマーフィルタ層は前記ポリマーフィルタ層を貫通して延在する複数のアパーチャを有するフィルタ構造体と、
前記フィルタ構造体を収容するための第2の容積を有する第2の空間と、前記第2の空間への第2の開口部と、を含む出口ユニットと、を含み、
前記入口ユニットが前記出口ユニットに固定された場合、前記フィルタ構造体が、前記第1の開口部を通して前記第1の空間の中で、前記フィルタ構造体上に収集されたろ過された物質の観察または前記ろ過された物質の分析のために露出するように、前記第1の開口部と第2の開口部は反対側の端である、
フィルタホルダ。

【相違点】
(相違点1)ポリマーフィルタ層が、本願発明ではネガ型光画定可能な乾燥膜から形成された均一の厚さを有する単一のポリマーフィルタ層であるのに対し、引用発明1ではそのような特定がない点。

(相違点2)フィルタ構造体が、本願発明では出口ユニットの中に取り外し可能に収容されているのに対し、引用発明1の捕集部材13は第二着脱部分17の中に取り外し可能に収容されているのか明らかでない点。

(2)判断
ア 相違点1について
引用文献3には、上記第4の3(2)で認定した引用文献3の技術事項が記載されており、当該技術事項に係るマイクロフィルタは上記第4の3(1)アに記載されているように体液から標的細胞を濾過するものである。
そして、引用発明1の捕集部位14も、上記第4の1(1)イに記載されているように体液から細胞を濾過捕集するものであることからすれば、引用発明1の捕集部位14の具体的構成に、引用文献3の技術事項に係るマイクロフィルタを採用すること、すなわち、上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは当業者であれば容易になし得ることと認められる。

イ 相違点2について
上記第4の1(1)キ、サ、スの記載から、引用文献1は、第一脱着部材16と第二脱着部材17を螺合することにより、第二着脱部分17の中に捕集部材13を収容して分析モジュール収容器10を組み立てていることが看取できる。
そして、一般に螺合は脱着可能な組み立て手段であることからすれば、第二着脱部分17の中に捕集部材13を取り外し可能に収容することは当業者であれば容易に想到できることと認められる。

ウ 発明の効果について
本願発明の作用効果は、引用発明1及び引用文献3の技術事項から当業者が容易に予測し得る程度のものであって、格別のものとはいえない。

(3)小括
以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び引用文献3の技術事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものと認められる。

2 引用発明2を主引用発明とする場合
(1)対比
ア 引用発明2の「濾過器」は、その機能及び構造からみて、本願発明の「フィルタホルダ」に相当する。

イ 引用発明2の「被濾過液貯留部11」及びその「開口」は、その機能及び構造からみて、本願発明の「入口ユニット」及び「第1の開口部」に相当するから、引用発明2の「容積を有する空間と当該空間への開口を有する被濾過液留置部11」は、本願発明の「第1の容積を有する第1の空間と、前記第1の空間への第1の開口部と、を含む入口ユニット」に相当する。

ウ 引用発明2の「濾過膜1」は多孔性の高分子膜であり濾過を行うものであるから、「ポリマフィルタ層」を構成するものであり、貫通して延在する複数のアパーチャを有するものと認められる。また、引用発明2は、「濾過膜1」と「濾過膜保持具2」とで、フィルタ構造体を構成するものである。
よって、引用発明2の多孔性の高分子膜である濾過膜1とこれを保持する濾過膜保持具2は、本願発明1の「ポリマーフィルタ層を含むフィルタ構造体であって、前記ポリマーフィルタ層は前記ポリマーフィルタ層を貫通して延在する複数のアパーチャを有するフィルタ構造体」に相当する。

エ 引用発明2の中空針3は、濾斗部13から液体を吸引するものであり、濾斗部13内の空間へ開口しているから、引用発明2の「濾過膜1及びこれを保持する濾過膜保護具2」、「中空針3」及び「濾斗部13」は、その機能及び構造からみて、それぞれ本願発明の「フィルタ構造体」、「第2の開口部」及び「出口ユニット」に相当するものと認められる。
よって、引用発明2の「濾過膜1及びこれを保持する濾過膜保持具2を収容する容積を有する空間と当該空間へと開口する中空針3を含む漏斗部13」は、本願発明の「フィルタ構造体を収容するための第2の容積を有する第2の空間と、前記第2の空間への第2の開口部と、を含む出口ユニット」に相当する。

オ 引用発明2は、濾過膜を直接検鏡することができるのであるから、濾過膜1は、濾過膜1上に収集されたろ過された物質のために露出しているものと認められる。
よって、引用発明2の「濾過器が組み立てられた場合、濾過膜は直接検鏡でき、被濾過液留置部の上方の開口と中空針3は反対側の端である」点は、本願発明の「入口ユニットが出口ユニットに固定された場合、フィルタ構造体が、第1の開口部を通して第1の空間の中で、前記フィルタ構造体上に収集されたろ過された物質の観察または前記濾過された物質の分析のために露出するように、前記第1の開口部と第2の開口部は反対側の端である」点に相当する。

上記ア〜オを踏まえると、本願発明と引用発明2は、以下の一致点及び相違点を有する。

【一致点】
第1の容積を有する第1の空間と、前記第1の空間への第1の開口部と、を含む入口ユニットと、
ポリマーフィルタ層を含むフィルタ構造体であって、前記ポリマーフィルタ層は前記ポリマーフィルタ層を貫通して延在する複数のアパーチャを有するフィルタ構造体と、
前記フィルタ構造体を収容するための第2の容積を有する第2の空間と、前記第2の空間への第2の開口部と、を含む出口ユニットと、を含み、
前記入口ユニットが前記出口ユニットに固定された場合、前記フィルタ構造体が、前記第1の開口部を通して前記第1の空間の中で、前記フィルタ構造体上に収集されたろ過された物質の観察または前記ろ過された物質の分析のために露出するように、前記第1の開口部と第2の開口部は反対側の端である、
フィルタホルダ。

【相違点】
(相違点1)ポリマーフィルタ層が、本願発明ではネガ型光画定可能な乾燥膜から形成された均一の厚さを有する単一のポリマーフィルタ層であるのに対し、引用発明2ではそのような特定がない点。

(相違点2)フィルタ構造体が、本願発明では出口ユニットの中に取り外し可能に構成されているのに対し、引用発明2では濾過膜1及びこれを保持する濾過保護具2は被濾過液留置部11の中に取り外し可能に収容されているのか明らかでない点。

(2)判断
ア 相違点1について
引用文献3には、上記第4の3(2)で認定した引用文献3の技術事項が記載されており、当該技術事項に係るマイクロフィルタは上記第4の3(1)アに記載されているように体液から標的細胞を濾過するものである。
そして、引用発明2の濾過膜1も、上記第4の2(1)アに記載されているように少量液から細胞を濾過捕集するものであることからすれば、引用発明2の濾過膜1の具体的構成に、引用文献3の技術事項に係るマイクロフィルタを採用すること、すなわち、上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは当業者であれば容易になし得ることと認められる。

イ 相違点2について
上記第4の2(1)イ、エ、クに記載されているように引用発明2の濾斗部13、濾過膜1及びこれを保持する濾過膜保持具2並びに被濾過液留置部11は順次積み重ねられて構成されるものであるから、これらを容易に取り扱えるように取り外し可能に組み立てるようなものとし、当該濾過膜1及びこれを保持する濾過膜保持具2を濾斗13の中に取り外し可能に収容する程度のことは当業者であれば適宜容易になし得ることと認められる。

ウ 発明の効果について
本願発明の作用効果は、引用発明2及び引用文献3の技術事項から当業者が容易に予測しうる程度のものであって、格別のものとはいえない。

(3)小括
以上のとおり、本願発明は、引用発明2、引用文献3の技術事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものと認められる。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1または引用発明2並びに引用文献3の技術事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。

審判長 千壽 哲郎
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
 
審理終結日 2022-03-23 
結審通知日 2022-03-29 
審決日 2022-04-13 
出願番号 P2017-227252
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61M)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 千壽 哲郎
特許庁審判官 井上 哲男
倉橋 紀夫
発明の名称 高分子精密濾過装置、その製造方法及び精密濾過装置の使用  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  

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