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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B29C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B29C
管理番号 1388796
総通号数 10 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-04-30 
確定日 2022-09-22 
事件の表示 特願2019−169304「複合容器およびその製造方法、複合プリフォーム、ならびにプラスチック製部材」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年12月12日出願公開、特開2019−209695〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 事案の概要
1 手続等の経緯
特願2019−169304号(以下「本件出願」という。)は、平成26年12月18日に出願された特願2014−256540号の一部を令和元年9月18日に新たな特許出願としたものであって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。

令和2年 9月 8日付け:拒絶理由通知書(特許法第50条の2の通知を伴う拒絶理由通知)
令和2年11月 4日提出:意見書
令和2年11月 4日提出:手続補正書
令和3年 1月26日付け:補正の却下の決定(令和2年11月4日にした手続補正を却下)
令和3年 1月26日付け:拒絶査定
令和3年 4月30日提出:審判請求書
令和3年 4月30日提出:手続補正書
令和3年 7月13日提出:上申書

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和3年4月30日にした手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
(1) 本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前である、令和2年11月4日にした手続補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
「複合容器の製造方法において、
プラスチック材料製のプリフォームを準備する工程と、
前記プリフォームの外側にプラスチック製部材を設ける工程と、
前記プリフォームおよび前記プラスチック製部材を加熱するとともにブロー成形金型内に挿入する工程と、
前記ブロー成形金型内で前記プリフォームおよび前記プラスチック製部材に対してブロー成形を施すことにより、前記プリフォームおよび前記プラスチック製部材を一体として膨張させる工程とを備え、
前記プラスチック部材が、多層からなる収縮チューブであることを特徴とする複合容器の製造方法。」

(2) 本件補正後の特許請求の範囲
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。なお、下線は補正箇所を示す。
「複合容器の製造方法において、
プラスチック材料製のプリフォームを準備する工程と、
前記プリフォームの外側にプラスチック製部材を設ける工程と、
前記プリフォームおよび前記プラスチック製部材を加熱するとともにブロー成形金型内に挿入する工程と、
前記ブロー成形金型内で前記プリフォームおよび前記プラスチック製部材に対してブロー成形を施すことにより、前記プリフォームおよび前記プラスチック製部材を一体として膨張させ、前記プリフォームに対応する容器本体と、前記容器本体の外側に設けられたプラスチック製部材とを作製する工程とを備え、
前記プラスチック製部材が、多層からなる収縮チューブであり、
前記プラスチック製部材は、前記容器本体の外面に接着されることなく取付けられており、
前記プリフォームおよび前記プラスチック製部材を加熱するとともにブロー成形金型内に挿入する工程において、前記プリフォームおよび前記プラスチック製部材を加熱することにより、前記プラスチック製部材が熱収縮し、前記プラスチック製部材の内面全体が前記プリフォームの外側に密着することを特徴とする複合容器の製造方法。」

(3) 本件補正について
ア 本件補正は、補正前の請求項1において、
(A)本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「前記プリフォームおよび前記プラスチック製部材を一体として膨張させる工程」を、「前記プリフォームおよび前記プラスチック製部材を一体として膨張させ」、「前記プリフォームに対応する容器本体と、前記容器本体の外側に設けられたプラスチック製部材とを作製する」「工程」に限定し、
(B)本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「プラスチック製部材」を、「前記容器本体の外面に接着されることなく取付けられて」いるものに限定し、
(C)本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「前記プリフォームおよび前記プラスチック製部材を加熱するとともにブロー成形金型内に挿入する工程」を、「前記プリフォームおよび前記プラスチック製部材を加熱することにより、前記プラスチック製部材が熱収縮し、前記プラスチック製部材の内面全体が前記プリフォームの外側に密着する」ものに限定する、補正事項を含むものであり、これは、本件出願の明細書の【0030】、【0041】〜【0043】、【0050】〜【0052】、【0072】〜【0073】、【0077】及び図3、図6等の記載に基づくものである。
ここで、本件補正前の請求項1に係る発明と、本件補正後の請求項1に係る発明の、産業上の利用分野及び解決しようとする課題は、同一である(本件出願の明細書の【0001】及び【0006】)。

イ また、本件補正は、補正前の請求項1において、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「前記プラスチック部材が、多層からなる収縮チューブである」における「前記プラスチック部材」を、既出の「プラスチック製部材」との記載に整合させる補正事項を含むものであり、これは、誤記の訂正を目的とするものである。

ウ してみると、本件補正は、特許法17条の2第3項の規定に適合するものであり、また、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)及び同第3号に掲げる事項(誤記の訂正)を目的とするものに該当する。

エ そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正後発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下検討する。

2 独立特許要件(進歩性)についての判断
(1) 引用文献3の記載
原査定の拒絶の理由2(進歩性)において引用された特開昭61−206623号公報(以下「引用文献3」という。)は、本件出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物であるところ、そこには以下の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、引用発明の認定や判断等に活用した箇所を示す。
ア 「【特許請求の範囲】
(1)熱可塑性樹脂製パリソンの表面に熱収縮フィルムを被覆させたのち二軸延伸ブロー成形する多層容器の製造方法において熱収縮フィルムが環状インフレーションフィルムであることを特徴とする多層容器の製造方法。
(2)熱収縮フィルムがアクリロニトリルを主成分とする樹脂からなる熱収縮フィルムである特許請求の範囲第1項記載の多層容器の製造方法。
(3)熱可塑性樹脂が飽和ポリエステル樹脂またはポリプロピレンである特許請求の範囲第1項記載の多層容器の製造方法。」

イ 「【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
本発明は、新規な多層容器の製造方法に関するものである。更に詳しくは、熱収縮フィルムをパリソン表面に被覆したのち二軸延伸ブロー成形する多層容器の製造方法に関するものである。
〔従来の技術〕
近年、ジュース、炭酸飲料、ビール等の容器としてブロー成形されたプラスチック容器が広く使用される様になってきた。このプラスチック容器に要求される性質として透明性、衝撃強度、剛性、軽量性があるが、これらの性質については、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記する。)またはポリプロピレン(以下、PPと略記する。)を使用して、二軸延伸ブロー成形することによって良好な容器特性を示すようになり、消費者に受け入れられている。
しかし、内容物の保存性については、未だ十分でなく、炭酸飲料、ビール等の加圧炭酸ガスを含有する内容の場合、炭酸ガスが容器壁部を通過して散逸したり、逆に、外部から容器壁部を通して酸素が侵入することによって味が変質し、商品価値の低いものになってしまう。炭酸ガスを含まないジュース類についても、同様に、外部から容器壁部を通して侵入する酸素により内容物が酸化されて香味が損なわれる等の問題を生ずる。
・・・略・・・
〔発明が解決しようとする問題点〕
しかしながら、インサート形成により多層容器を成形する方法では、射出成形により多層パリソンを成形するため、射出成形機や射出金型が複数個必要であり、更に、容器本体を形成する樹脂とインサート成形する樹脂との間に接着層を設ける時には更に機構が複雑なものとなり、高価な装置を必要とする。
一方、あらかじめ延伸ブロー成形された容器に熱収縮フィルムをかぶせシュリンクトンネル内で熱収縮により定着させる方法では、延伸容器自体が熱収縮しやすく高温長時間の加熱をすることができない為、熱収縮フィルムを充分に収縮させる条件を選ぶことが難かしく、特に複雑な形状の容器の場合延伸容器との密着性が問題となる。
又、通常熱収縮フィルムをかぶせる場合、その熱収縮フィルムを熱又は接着剤でシールして使用する為、フィルムの継目が残り容器の外観に問題が生じるおそれがある。
本発明はこれらの問題点を解決し、複雑な装置を必要とせず安価で、本体樹脂層と被覆樹脂層との密着性に優れた多層容器の製造方法を提供するものである。
〔問題を解決するための手段〕
本発明は熱可塑性樹脂製パリソンの表面に熱収縮フィルムを被覆して成る多層パリソンを用いて二軸延伸ブロー成形する多層容器の製造方法において熱収縮フィルムがインフレーションフィルムである事を特徴とする多層容器の製造方法である。
即ち、本発明における多層化の手段は、熱可塑性樹脂製パリソン表面に、あらかじめインフレーション法で直接作られた環状熱収縮フィルムをかぶせ、熱によって収縮させてパリソンに密着させるものである。この多層化されたパリソンを用いて二軸延伸ブロー成形することにより多層容器を得るので、パリソン本体と被覆フィルムとがブローエアーによって賦形される際に金型に押しつけられ、強い密着性が付与される。被覆フィルムも二軸延伸される為に性能が向上し、ガスバリヤー性フィルムを用いる場合には更にガスバリヤー性が向上し、肉厚の薄いフィルムでもガスバリヤー性の優れた容器となるのである。
本発明において熱可塑性樹脂製パリソンに使用される樹脂としては、二軸延伸ブロー成形可能な樹脂であれば良いが、特に用途から考えて透明性の良い樹脂が適しており、例えばPETに代表される飽和ポリエステル樹脂・・・略・・・等が挙げられる。
・・・略・・・
本発明において熱収縮フィルムとして、炭酸ガス、酸素等のガスバリヤー性に優れた樹脂からなる熱収縮フィルムを用いれば、ガスバリヤー性に優れた容器が得られるので好ましい。ガスバリヤー性に優れた樹脂として例えば、アクリロニトリルを主成分とするアクリロニトリル系樹脂(以下AN系樹脂と略記する)・・・略・・・等が使用される。
AN系樹脂とは、アクリロニトリルを50重量%以上含む共重合体であって、その他の成分として、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ブタジエン、スチレン等を1種以上含むものを言う。
熱収縮フィルムは、インフレーション法によって製造されたものが使用される。インフレーション法による熱収縮フィルムの製造法は公知の方法によって製造され、例えば通常の製膜温度より低目の温度で熱可塑性樹脂を押出し、横方向に1.1〜4倍にブローする方法等によって得られる。
又、パリソン本体と熱収縮フィルムとの接着性を良くする為に必要に応じてパリソンの表面に接着剤を塗布するかコロナ放電処理又はフレーム処理をしたものが使用される。接着剤としては、例えば二液型ポリウレタン系接着剤、シリコン系接着剤が使用できる。
本発明において熱可塑性樹脂製パリソンの表面に熱収縮フィルムの被覆を行なうには、例えば次の方法によって行なわれる。
射出延伸ブロー成形のうち、いわゆるホットパリソン方式の成形方法では、射出成形→予備加熱→二軸延伸ブローが連続工程で行なわれるが、円筒状の熱収縮フィルムは射出成形されたホットパリソンに装着され、パリソンの保持する熱によって熱収縮して、パリソン表面を被覆する。この多層パリソンは引続き次の工程へ進んで予備加熱後、二軸延伸ブローされ多層容器が得られる。熱収縮フィルムのパリソンへの被覆は、二軸延伸ブローする前であれば他の工程で行なっても良い。
また、いわゆるコールドパリソン方式の射出延伸ブロー成形では、射出成形されたパリソンが一度冷却して得られ、これを次の工程で延伸に適した温度に再加熱してから延伸ブロー成形されるが、熱収縮フィルムの装着は延伸ブロー成形する前の工程であれば良く、再加熱の前に装着し再加熱の温度を利用してフィルムを熱収縮させる方法、再加熱されたパリソンに装着してパリソンの持つ熱によって収縮する方法、また再加熱工程の前に別途フィルムを装着し熱収縮させる方法など、いずれの方法でもかまわない。
このようにしてパリソンは上記いずれの場合も、パリソン全表面のうち口部直下から胴部周囲全面および底部の一部にかかる範囲で熱収縮フィルムで被覆される。
この多層パリソンを二軸延伸ブロー成形して得られる多層容器は、口部および底部の一部分は被覆フィルムで覆われない単層となる。いずれの部分も胴部に比較して肉厚があり実用上の問題を生じない。例えばガスバリヤー性についても、この部分は厚く、ガス透過性が低い為、胴部がガスバリヤーフィルムで覆われていれば、容器全体のガスバリヤー性は著しく向上する。」

ウ 「〔実施例〕
以下に本発明の実施例を示す。
実施例1
射出成形ブロー成形機である日精ASB機械(株)製ASB−50機を用いてPET製パリソンを射出成形した。使用したPETは三井ペット樹脂(株)製、商品名三井PET J135である。射出成形条件を以下に示す。
射出温度 280℃
射出時間 5.0秒
冷却時間 4.8秒
金型冷却温度 +5℃
このパリソンに、パリソン外径よりやや大き目の筒状のAN系樹脂からなるガスバリヤー性熱収縮フィルムを装着し、パリソンの保有する熱で同フィルムを概ね収縮させてパリソンに密着させ多層パリソンとした。
次いでこの多層パリソンを、延伸ブロー成形温度に温度調節するための予備加熱したのち、二軸延伸ブロー成形して、外径70mm、容積540ccの丸形ボトルを得た。
予備加熱および二軸延伸ブロー成形条件は、次の通りであった。
予備加熱温度 90〜130℃
時間 14秒
延伸倍率 縦 1.7倍
横 2.7倍
ブローエア圧力 10kg/cm2
ブロー時間 4.0秒
尚、AN系樹脂製熱収縮フィルムはAN系樹脂であるバレックス210(商標、ソハイオ・ケミカル社製)を、インフレーション法により押出成形したフィルムで樹脂温度180℃、ブローアップ比1.5の条件で製膜されたものである。得られたフィルムの厚みは約120μm、O2およびCO2透過速度はそれぞれ2.1ml/m2・24Hr・atm、4.6ml/m2・24Hr・atmであった。また100℃のオイルバスに10秒浸漬すると、横方向で30%の収縮が認められた。
得られたボトルは、ボトル口部直下より、底部の一部分を除いた全表面がAN系樹脂で覆われた多層ボトルで、外観的にも優れたボトルであった。またその胴部中央付近において、PET層の厚さが約300μm、AN系樹脂層の厚さが約30μmであった。このボトルについてガス透過速度を測定したところ、O2透過速度は0.12ml/24Hr・atm、CO2透過速度は0.27ml/24Hr・atmであった。」

エ 「〔発明の効果〕
通常二軸延伸ブロー成形に使用されるパリソンは、円筒状ないしはそれに類似する極簡単な形状をしているので、これに熱収縮フィルムを収縮させて密着させることは容易に且つ確実に行なわれ、外観上優れた容器を得ることができる。
更に、パリソンに被覆されたガスバリヤー性熱収縮フィルムも、容器の成形時に同時に二軸延伸されるので、このために、同フィルムのガスバリヤー性、透明性、表面光沢等の物性が向上する。又、使用する熱収縮フィルムがインフレーション法で製造されたものである為、元来円筒状で継目をもたず、シールする工程が省ける他、得られた多層容器もシール跡のない外観の良い容器となる。
したがって、本発明によって得られる多層容器は、ガスバリヤー性のみならず、外観光沢の優れたものとなり、ジュース、炭酸飲料、ビール等の容器として好適である。」

(2) 引用発明
ア 上記(1)イの記載より、上記(1)ウの実施例1の「パリソン外径よりやや大き目の筒状のAN系樹脂からなるガスバリヤー性熱収縮フィルム」における「AN系樹脂」は、「アクリロニトリル系樹脂」のことであると理解できる。

イ そうすると、上記(1)ウの実施例1の記載からみて、引用文献3には、「多層ボトルの製造方法」の発明として、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「 多層ボトルの製造方法であって、
射出成形ブロー成形機である日精ASB機械(株)製ASB−50機を用いてPET製パリソンを射出成形し、
使用したPETは三井ペット樹脂(株)製、商品名三井PET J135であり、射出成形条件は、射出温度 280℃、射出時間 5.0秒、冷却時間 4.8秒、金型冷却温度 +5℃であり、
このパリソンに、パリソン外径よりやや大き目の筒状のAN系樹脂(アクリロニトリル系樹脂)からなるガスバリヤー性熱収縮フィルムを装着し、パリソンの保有する熱で同フィルムを概ね収縮させてパリソンに密着させ多層パリソンとし、
次いでこの多層パリソンを、延伸ブロー成形温度に温度調節するための予備加熱温度 90〜130℃で予備加熱したのち、二軸延伸ブロー成形して、外径70mm、容積540ccの丸形ボトルを得る、多層ボトルの製造方法であって、
予備加熱および二軸延伸ブロー成形条件が、予備加熱温度 90〜130℃、時間 14秒、延伸倍率 縦 1.7倍、横 2.7倍、ブローエア圧力 10kg/cm2、ブロー時間 4.0秒であり、
AN系樹脂からなるガスバリヤー性熱収縮フィルムはAN系樹脂であるバレックス210(商標、ソハイオ・ケミカル社製)を、インフレーション法により押出成形したフィルムで樹脂温度180℃、ブローアップ比1.5の条件で製膜したものであり、得られたフィルムの厚みは約120μm、O2およびCO2透過速度はそれぞれ2.1ml/m2・24Hr・atm、4.6ml/m2・24Hr・atmであり、100℃のオイルバスに10秒浸漬すると、横方向で30%の収縮が認められ、
得られたボトルは、ボトル口部直下より、底部の一部分を除いた全表面がAN系樹脂で覆われた多層ボトルで、外観的にも優れたボトルであり、その胴部中央付近において、PET層の厚さが約300μm、AN系樹脂層の厚さが約30μmであり、ガス透過速度がO2透過速度は0.12ml/24Hr・atm、CO2透過速度は0.27ml/24Hr・atmである、
多層ボトルの製造方法。」
(当合議体注:引用発明においては、「AN系樹脂製熱収縮フィルム」を、「AN系樹脂からなるガスバリヤー性熱収縮フィルム」と表記して記載を統一している。)

(3) 対比
ア 対比
(ア) プラスチック材料製のプリフォームを準備する工程
引用発明の「多層ボトルの製造方法」は、「PET製パリソンを射出成形し」、この「PET製パリソン」に、「パリソン外径よりやや大き目の筒状のAN系樹脂」「からなるガスバリヤー性熱収縮フィルムを装着し、パリソンの保有する熱で同フィルムを概ね収縮させてパリソンに密着させ多層パリソンとし」、この「多層パリソン」を、「延伸ブロー成形温度に温度調節するための予備加熱温度 90〜130℃で予備加熱したのち、二軸延伸ブロー成形して、外径70mm、容積540ccの丸形ボトル」を得る工程を含むものである。
上記工程からみて、引用発明の「射出成形」された「PET製パリソン」は、PETからなる丸形ボトルとして再加熱により膨らませる前の段階の中間製品ということができる。また、引用発明の「PET製パリソン」は、「PET製」である。
してみると、引用発明の「射出成形」された「PET製パリソン」は、本件補正後発明において「プラスチック材料製の」とされる、「プリフォーム」に相当する。
また、引用発明の「多層ボトルの製造方法」は、「PET製パリソンを射出成形」する工程を有しているから、本件補正後発明の「プラスチック材料製のプリフォームを準備する工程」を具備する。

(イ) 前記プリフォームの外側にプラスチック製部材を設ける工程
引用発明の「AN系樹脂からなるガスバリヤー性熱収縮フィルム」は、「パリソンの保有する熱で同フィルムを概ね収縮させてパリソンに密着させ多層パリソン」とされる。
その材質及び機能からみて、引用発明の「ガスバリヤー性熱収縮フィルム」は、本件補正後発明の「プラスチック製部材」に相当する。また、引用発明は、上記「多層パリソン」を形成する工程を有するから、引用発明は、本件補正後発明の、「前記プリフォームの外側にプラスチック製部材を設ける工程」を具備する。
さらに、引用発明の「ガスバリヤー性熱収縮フィルム」は、「筒状」である。
そうすると、本件補正後発明と引用発明とは、「プラスチック製部材が」、「収縮チューブであり」との点において共通する。

(ウ) 前記プリフォームおよび前記プラスチック製部材を加熱するとともにブロー成形金型内に挿入する工程
引用発明において、「多層パリソン」の「予備加熱」によって、「パリソン」及び「ガスバリヤー性熱収縮フィルム」の双方が加熱されることは明らかである。
また、引用発明は、「多層パリソン」を、「予備加熱したのち、二軸延伸ブロー成形」する。ここで、そもそも「二軸延伸ブロー成形」とは、射出成形によって得られたプリフォーム(半製品、中間製品)を再加熱し、ブロー金型内で内部に延伸ロッドを突き出し、高圧空気を吹き込んで膨張させて、中空品を成形する方法を意味することは技術常識である。そうすると、上記(ア)より、引用発明の「多層ボトルの製造方法」が、「多層パリソン」を、「外径70mm、容積540ccの丸形ボトル」が得られる「二軸延伸ブロー成形」金型に挿入する工程を具備することは明らかである。また、この点は、引用文献3の2頁左下欄6〜18行の記載からも確認できる事項である。
してみると、引用発明は、本件補正後発明の「前記プリフォームおよび前記プラスチック製部材を加熱するとともにブロー成形金型内に挿入する工程」を具備する。

(エ) プリフォームに対応する容器本体と、前記容器本体の外側に設けられたプラスチック製部材とを作製する工程
引用発明の「得られたボトルは、ボトル口部直下より、底部の一部分を除いた全表面がAN系樹脂で覆われた多層ボトルで、外観的にも優れたボトルであり、その胴部中央付近において、PET層の厚さが約300μm、AN系樹脂層の厚さが約30μmであ」る。
上記(ア)より、引用発明の「多層ボトル」における「AN系樹脂」を除いたパリソン部分は、本件補正後発明の、「前記プリフォームに対応する」とされる、「容器本体」に相当する。
上記(イ)より、引用発明の「多層ボトル」における「AN系樹脂」(「ガスバリヤー性熱収縮フィルム」)は、「前記容器本体の外側に設けられた」とされる、「プラスチック製部材」に相当する。
そうすると、上記(ア)及び(ウ)より、引用発明は、「二軸延伸ブロー成形」により、「二軸延伸ブロー成形」金型内で、「多層パリソン」、すなわち、「パリソン」および「熱収縮フィルム」に対して「ブロー成形」を施すことにより、「パリソン」および「熱収縮フィルム」を一体として膨張させ、「AN系樹脂で覆われた多層ボトル」を作製する工程を有するといえる。
してみると、引用発明は、本件補正後発明の「前記ブロー成形金型内で前記プリフォームおよび前記プラスチック製部材に対してブロー成形を施すことにより、前記プリフォームおよび前記プラスチック製部材を一体として膨張させ、前記プリフォームに対応する容器本体と、前記容器本体の外側に設けられたプラスチック製部材とを作製する工程」を具備するといえる。

(オ) プラスチック製部材と容器本体との関係
引用発明の「多層ボトル」は「ボトル口部直下より、底部の一部分を除いた全表面がAN系樹脂で覆われた」ものである。
そうすると、引用発明の「多層ボトル」における「AN系樹脂」を除いたパリソン部分の外側に、「AN系樹脂」(「ガスバリヤー性熱収縮フィルム」)が取り付けられているということができる。また、この点は、引用文献3の2頁左下欄6〜14行の記載からも確認できる事項である。
してみると、本件補正後発明の「プラスチック製部材」と、引用発明の「ガスバリヤー性熱収縮フィルム」とは、「前記プラスチック製部材は、前記容器本体の外面に」「取付けられて」いる点において共通する。

(カ) 上記(イ)の工程における、プラスチック製部材とプリフォームとの関係
引用発明においては、「パリソンに、パリソン外径よりやや大き目の筒状の」「ガスバリヤー性熱収縮フィルムを装着し、パリソンの保有する熱で同フィルムを概ね収縮させてパリソンに密着させ多層パリソンとし」ている。
してみると、引用発明においては、「ガスバリヤー性熱収縮フィルム」を加熱することにより、「ガスバリヤー性熱収縮フィルム」が熱収縮し、プラスチック製部材がプリフォームの外側に密着しているということができる。
上記の点及び上記(ア)〜(イ)の対比結果によれば、本件補正後発明と引用発明とは、「前記プラスチック製部材を加熱することにより、前記プラスチック製部材が熱収縮し、前記プラスチック製部材」「が前記プリフォームの外側に密着する」点で共通する。

(キ) 複合容器の製造方法
上記(ア)〜(カ)を総合すると、引用発明の「多層ボトル」は、本件補正後発明の「複合容器」に相当し、引用発明の「多層ボトルの製造方法」は、本件補正後発明の「複合容器の製造方法」に相当する。

イ 一致点及び相違点
(ア) 一致点
以上の対比結果を踏まえると、本件補正後発明と引用発明は、次の構成で一致する。
「複合容器の製造方法において、
プラスチック材料製のプリフォームを準備する工程と、
前記プリフォームの外側にプラスチック製部材を設ける工程と、
前記プリフォームおよび前記プラスチック製部材を加熱するとともにブロー成形金型内に挿入する工程と、
前記ブロー成形金型内で前記プリフォームおよび前記プラスチック製部材に対してブロー成形を施すことにより、前記プリフォームおよび前記プラスチック製部材を一体として膨張させ、前記プリフォームに対応する容器本体と、前記容器本体の外側に設けられたプラスチック製部材とを作製する工程とを備え、
前記プラスチック製部材が、収縮チューブであり、
前記プラスチック製部材は、前記容器本体の外面に取付けられており、
前記プラスチック製部材を加熱することにより、前記プラスチック製部材が熱収縮し、前記プラスチック製部材が前記プリフォームの外側に密着する、複合容器の製造方法。」

(イ) 本件補正後発明と引用発明とは、次の点で相違する。
(相違点1)
「収縮チューブ」が、本件補正後発明においては「多層からなる」のに対して、引用発明は、「多層からなる」ものではない点。

(相違点2)
本件補正後発明においては、「前記プラスチック製部材は、前記容器本体の外面に接着されることなく取付けられて」いるのに対して、引用発明は、この点が明らかでない点。

(相違点3)
「前記プラスチック製部材を加熱することにより、前記プラスチック製部材」を「熱収縮」させ、「前記プラスチック製部材」を「前記プリフォームの外側に密着」させることを、本件補正後発明においては、「前記プリフォームおよび前記プラスチック製部材を加熱するとともにブロー成形金型内に挿入する工程において、前記プリフォームおよび前記プラスチック製部材を加熱することにより」行い、「前記プラスチック製部材」「の内面全体」「が前記プリフォームの外側に密着」するようにしているのに対して、引用発明は、射出成形されたパリソンの保有する熱で、「AN系樹脂からなるガスバリヤー性熱収縮フィルム」を収縮させているにとどまり、また、「AN系樹脂からなるガスバリヤー性熱収縮フィルム」の内面全体がパリソンの外側に密着しているかどうかも明らかでない点。

(4) 判断
ア 相違点1について
(ア) 引用発明における「AN系樹脂からなるガスバリヤー性熱収縮フィルム」は、「AN系樹脂であるバレックス210(商標、ソハイオ・ケミカル社製)を、インフレーション法により押出成形したフィルムで樹脂温度180℃、ブローアップ比1.5の条件で製膜したものであ」る。
ここで、原査定の拒絶の理由2(進歩性)において引用文献4として引用された特開昭61−273927号公報(特許請求の範囲、第2頁左下欄第第12行〜第3頁左上欄第8行)に例示されているように、多層構造のフィルムからなるチューブをプリフォームに装着してブロー成形することは周知の技術である。また、特開2004−224863号公報の【0038】、特開2012−31339号公報の【0034】等に例示されるように、インフレーション成形により多層の熱収縮フィルムを製造することも普通のことである。そうすると、引用発明のAN系樹脂からなるガスバリヤー性熱収縮フィルムを、インフレーション法を用いて製造されたAN系樹脂を含む多層のガスバリヤー性熱収縮フィルムとすることは当業者が容易になし得たことである。

イ 相違点2及び相違点3について
事案に鑑み、相違点2及び相違点3をまとめて検討する。
(ア) 引用発明は、射出成形されたパリソンに、パリソン外径よりやや大き目の筒状のAN系樹脂からなるガスバリヤー性熱収縮フィルムを装着し、パリソンの保有する熱で同フィルムを概ね収縮させてパリソンに密着させ、多層パリソンとしている。
ここで、引用文献3の3頁左上欄最下行〜左下欄3行(上記(1)イ)には、PET製パリソンの表面に熱収縮フィルムの被覆を行なう方法として、射出成形されたパリソンが一度冷却して得られ、これを次の工程で延伸に適した温度に再加熱してから延伸ブロー成形されるコールドパリソン方式の射出延伸ブロー成形を採用して、再加熱の前にパリソンに熱収縮フィルムを装着し再加熱の温度を利用して熱収縮フィルムを熱収縮させてもかまわないことが記載されている。
してみると、少品種大量生産を指向する当業者においては、引用文献3の上記記載を参考に、引用発明において、PET製パリソンの表面に熱収縮フィルムの被覆を行なう方法として、コールドパリソン方式の射出延伸ブロー成形方法、すなわち、射出成形されたPET製パリソン及びガスバリヤー性熱収縮フィルムを再加熱するとともにブロー成形金型内に挿入する工程において、当該再加熱によりPET製パリソンおよび(再加熱の前にパリソンに装着された)ガスバリヤー性熱収縮フィルムを加熱することにより、ガスバリヤー性熱収縮フィルムを収縮させてパリソンに密着させる方法の採用を試みると考えられる。

(イ) また、引用発明が解決しようとする課題は、従来は、熱収縮フィルムを充分に収縮させる条件を選ぶことが難かしく、特に複雑な形状の容器の場合延伸容器との密着性が問題となるところ、これらの問題点を解決し、複雑な装置を必要とせず安価で、本体樹脂層と被覆樹脂層との密着性に優れた多層容器の製造方法を提供することである(2頁右上欄5〜19行)。さらに、引用文献3の4頁左下欄7〜12行には、発明の効果として、通常二軸延伸ブロー成形に使用されるパリソンは、円筒状ないしはそれに類似する極簡単な形状をしているので、これに熱収縮フィルムを収縮させて密着させることは容易に且つ確実に行なわれることが記載されている。
そうすると、引用発明の課題や効果の記載に基づき、PET製パリソンに熱収縮フィルムを収縮させて密着させることを確実に行い、(AN系樹脂を除く)ボトル部分とAN系樹脂との密着性に優れた多層容器を提供することができるよう、引用発明において、ガスバリヤー性熱収縮フィルムの熱収縮率を高めたり、あるいはパリソンを単純な円筒とすることにより、ガスバリヤー性熱収縮フィルムの内面全体がパリソンの外側に密着するよう構成することは、当業者が容易になし得たことである。

(ウ) さらに、引用発明に採用するコールドパリソン方式の射出延伸ブロー成形方法の二軸延伸ブロー成形のための再加熱温度は、予備加熱温度と同様、90〜130℃と考えられるところ、PET製パリソンの材料である「PET J135」の融点は253℃(例えば、特開2004−149219号公報の【0071】欄2〜3行を参照。)であり、ガスバリヤー性熱収縮フィルムの材料である「Barex210」の融点は193℃(例えば、特開昭50−143862号公報の3頁右上欄下から6行〜左下欄最下行を参照。)である。
そうすると、再加熱条件及び二軸延伸ブロー成形条件からみて、PET製パリソンの表面にガスバリヤー性熱収縮フィルムの被覆を行なう方法として、コールドパリソン方式の射出延伸ブロー成形方法を採用した引用発明で製造される、多層ボトルにおいては、AN系樹脂と(AN系樹脂を除く)ボトル部分は、接着されないといえる。

ウ 本件補正後発明の効果について
本件補正後発明の効果として、本件出願の明細書の【0023】には、(ア)「プリフォーム(容器本体)とプラスチック製部材とを別部材から構成することができ、プラスチック製部材の種類や形状を適宜選択することにより、複合容器に様々な機能や特性を付与することができる。」、(イ)「また、プラスチック製部材が収縮チューブであることにより、ブロー成形後において、容器本体とプラスチック製部材との間に入り込む空気が少なく、これらの密着性を高めることができる。」及び(ウ)「さらに、プラスチック製部材が多層からなるため、各層を構成する材料を変更することにより、さらに様々な機能や特性を複合容器に付与することができる。」との記載がある。
しかしながら、上記の本件補正後発明の効果は、例えば、(ア)については、引用文献3の2頁右下欄14〜17行の記載等、(イ)については、同2頁左下欄6〜14行、同4頁左下欄8〜12行の記載等から、(ウ)については、その多層構造からみて、本件出願時に本件補正後発明の構成が奏するものとして当業者が予測することができたものであり、当該構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものではない。

エ 審判請求書の主張について
請求人は、審判請求書の「4. 本願発明が特許されるべき理由」「(1)本願発明の要旨」において、本願発明の要旨のうちとりわけ主要な構成として、「(a)プリフォームおよびプラスチック製部材を加熱することにより、プラスチック製部材が熱収縮し、プラスチック製部材の内面全体がプリフォームの外側に密着すること」を特徴とする旨主張するとともに、「しかして本願発明によれば、上記特徴(a)により、複合容器に様々な機能や特性を付与することができる(段落[0023]参照)。とりわけ、上記特徴(a)により、プリフォームとプラスチック製部材との間に入り込む空気を少なくすることができる。このため、ブロー成形後において、容器本体とプラスチック製部材との間に入り込む空気が少なく、これらの密着性を高めることができる。」、「また、上記特徴(a)により、プラスチック製部材がプリフォームから取り外されてしまうことを抑制できる。このため、複合プリフォームを作製する一連の工程と、ブロー成形を行う一連の工程とを別々の場所(工場等)で容易に実施することもできる。」旨主張し、
「(2)引用文献との対比」において、引用文献3について、「引用文献3に記載されたものは、「多層容器の製造方法」であるが、引用文献3には上述した本願発明の特徴(a)について何も記載されていない。」、「すなわち、引用文献3において「このパリソンに、パリソン外径よりやや大き目の筒状のAN系樹脂からなるガスバリヤー性熱収縮フィルムを装着し、パリソンの保有する熱で同フィルムを概ね収縮させてパリソンに密着させ多層パリソンとした。」という記載がある(第3頁右下欄第8行−第12行参照)。」、「しかしながら、引用文献3には、ガスバリヤー性熱収縮フィルムの内面全体がパリソンの外側に密着することについての記載はなく、これを示唆する旨の記載もない。」旨主張する。
しかしながら、上記の構成(a)については、上記イで述べたとおりである。
また、プリフォームとプラスチック製部材との間に入り込む空気を少なくすることができる、このため、ブロー成形後において、容器本体とプラスチック製部材との間に入り込む空気が少なく、これらの密着性を高めることができる、プラスチック製部材がプリフォームから取り外されてしまうことを抑制できるため、複合プリフォームを作製する一連の工程と、ブロー成形を行う一連の工程とを別々の場所(工場等)で容易に実施することもできる、などの効果は、いずれも本件出願時に本件補正後発明の構成が奏するものとして当業者が予測することができたものであり、当該構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものではない。
よって、請求人の主張を採用することはできない。

オ 令和3年7月13日付け上申書について
(ア) 請求人は、令和3年7月13日付け上申書において、以下の補正案を提示した。しかしながら、当該補正案によっても依然として拒絶の理由は解消しない。その理由は下記(イ)のとおりである。
(補正案)
「[請求項1]
複合容器の製造方法において、
プラスチック材料製のプリフォームを準備する工程と、
前記プリフォームの外側にプラスチック製部材を設ける工程と、
前記プリフォームおよび前記プラスチック製部材を加熱するとともにブロー成形金型内に挿入する工程と、
前記ブロー成形金型内で前記プリフォームおよび前記プラスチック製部材に対してブロー成形を施すことにより、前記プリフォームおよび前記プラスチック製部材を一体として膨張させ、前記プリフォームに対応する容器本体と、前記容器本体の外側に設けられたプラスチック製部材とを作製する工程とを備え、
前記プラスチック製部材が、多層からなる収縮チューブであり、
前記プラスチック製部材は、前記容器本体の外面に接着されることなく取付けられており、
前記プリフォームおよび前記プラスチック製部材を加熱するとともにブロー成形金型内に挿入する工程において、前記プリフォームおよび前記プラスチック製部材を加熱することにより、前記プラスチック製部材が熱収縮し、前記プラスチック製部材の内面全体が前記プリフォームの外側に密着し、
前記プラスチック製部材は、前記プリフォームの外面に接着されることなく取付けられており、前記プリフォームに対して移動又は回転しないほどに密着されていることを特徴とする複合容器の製造方法。」

(イ) 引用文献3で発明の解決しようとする課題及び効果は、上記イで述べたとおりである。上記課題及び効果に照らせば、多層パリソンにおけるPET製パリソンと熱収縮フィルムとの確実な密着性は当業者が当然考慮すべきことであって、熱収縮フィルムの熱収縮率を高めたりすることにより熱収縮フィルムとPET製パリソンとの密着性を高め、熱収縮フィルムがPET製パリソンに対して移動あるいは回転しない程度のものとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そうすると、上申書の補正案及び請求人の主張を採用することはできない。

(5) 小括
本件補正後発明は、引用文献3に記載された発明及び周知技術に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 補正の却下の決定のむすび
本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記[補正の却下の決定の結論]に記載のとおり、決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
以上のとおり、本件補正は却下されたので、本件出願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2」[理由]1(1)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、概略、理由2(進歩性)本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
(引用文献等一覧)
引用文献3:特開昭61−206623号公報
引用文献4:特開昭61−273927号公報(周知技術を示す文献)
(当合議体注:引用文献3は主引用例であり、引用文献4は、周知技術を示すために引用されたものである。)

3 理由2(特許法第29条第2項進歩性))について
(1) 引用文献3及び引用発明
引用文献3の記載及び引用発明は、前記「第2」[理由]2(1)及び(2)に記載したとおりである。

(2) 対比及び判断
本願発明は、前記「第2」[理由]2で検討した本件補正後発明から、同1(3)で述べた限定事項を除いたものである。また、本願発明の構成を全て具備し、これにさらに限定を付したものに相当する本件補正後発明は、前記「第2」[理由]2(4)で述べたとおり、引用文献3に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
そうしてみると、本願発明は、前記「第2」[理由]2(4)で述べた理由と同様の理由により、引用文献3に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
してみると、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-07-22 
結審通知日 2022-07-26 
審決日 2022-08-10 
出願番号 P2019-169304
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B29C)
P 1 8・ 575- Z (B29C)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 里村 利光
特許庁審判官 河原 正
石附 直弥
発明の名称 複合容器およびその製造方法、複合プリフォーム、ならびにプラスチック製部材  
代理人 宮嶋 学  
代理人 堀田 幸裕  
代理人 塙 和也  
代理人 中村 行孝  

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