ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H01L |
---|---|
管理番号 | 1388821 |
総通号数 | 10 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2022-10-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-06-01 |
確定日 | 2022-09-22 |
事件の表示 | 特願2019−538212「パワーデバイスを並列接続するための低インダクタンスおよび高速スイッチングを有するハイパワー多層モジュール」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 7月19日国際公開、WO2018/132649、令和 2年 2月 6日国内公表、特表2020−504459〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2018年1月12日(優先権主張 2017年1月13日、米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和 2年 9月16日付け:拒絶理由通知 令和 2年12月21日 :意見書、手続補正書の提出 令和 3年 1月27日付け:拒絶査定 令和 3年 6月 1日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2 令和3年6月1日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和3年6月1日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 補正の概要 令和3年6月1日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)は、令和2年12月21日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された発明特定事項により特定される、 「【請求項1】 パワーモジュールであって、 少なくとも一つのパワー基板と、 前記少なくとも一つのパワー基板上に配置されたハウジングと、 前記少なくとも一つのパワー基板に電気的に接続された第一の端子であって、第一の高位(elevation)に位置する接触面を備える前記第一の端子と、 前記第一の高位とは異なる第二の高位に位置する接触面を備える第二の端子と、 前記少なくとも一つのパワー基板に電気的に接続された第三の端子と、 前記少なくとも一つのパワー基板に電気的に接続された複数のパワーデバイスと、 を備え、 前記第二の端子は前記複数のパワーデバイスのうち少なくとも一つに電気的に接続され、前記第二の端子は前記少なくとも一つのパワー基板を通じて前記複数のパワーデバイスのうち少なくとも別の一つに電気的に接続される、 パワーモジュール。」 との発明(以下、「本願発明」という。)を、 「【請求項1】 パワーモジュールであって、 少なくとも一つの導電性パワー基板と、 前記少なくとも一つの導電性パワー基板上に/かつそれにわたって配置されたハウジングと、 前記少なくとも一つの導電性パワー基板に電気的に接続された第一の端子であって、第一の高位(elevation)において前記ハウジング内および/または前記ハウジングよりも上に位置する接触面を備える前記第一の端子と、 前記第一の高位とは異なる第二の高位において前記ハウジング内および/または前記ハウジングよりも上に位置する接触面を備える第二の端子と、 前記少なくとも一つの導電性パワー基板に電気的に接続された第三の端子と、 前記少なくとも一つの導電性パワー基板上に配置され、かつそれに接続された複数のパワーデバイスと、 前記少なくとも一つの導電性パワー基板を通じて前記複数のパワーデバイスのうち少なくとも一つに電気的に接続された前記第三の端子と、 を備え、 前記第二の端子は前記少なくとも一つの導電性パワー基板と少なくとも部分的に重なり合い、前記第二の端子は前記複数のパワーデバイスのうち少なくとも一つに電気的に接続され、前記第二の端子は前記少なくとも一つの導電性パワー基板を通じて前記複数のパワーデバイスのうち少なくとも別の一つに電気的に接続される、 パワーモジュール。」(下線部は、補正箇所を示す。) との発明(以下、「本件補正発明」という。)とする補正を含むものである。 2 補正の適否 (1)補正の目的について 請求項1に係る本件補正は、以下の補正事項を含むものである。 ア 本件補正前の請求項1に記載された発明を特定する事項である「パワー基板」を電気特性について限定し、「導電性パワー基板」と補正する。 イ 本件補正前の請求項1に記載された発明を特定する事項である「パワー基板上に配置されたハウジング」を配置について限定し、「パワー基板上に/かつそれにわたって配置されたハウジング」と補正する。 ウ 本件補正前の請求項1に記載された発明を特定する事項である「第一の高位(elevation)に位置する接触面を備える前記第一の端子」を「ハウジング」との位置関係について限定し、「第一の高位(elevation)において前記ハウジング内および/または前記ハウジングよりも上に位置する接触面を備える前記第一の端子」と補正する。 エ 本件補正前の請求項1に記載された発明を特定する事項である「前記第一の高位とは異なる第二の高位に位置する接触面を備える第二の端子」を「ハウジング」との位置関係について限定し、「前記第一の高位とは異なる第二の高位において前記ハウジング内および/または前記ハウジングよりも上に位置する接触面を備える第二の端子」と補正する。 オ 本件補正前の請求項1に記載された発明を特定する事項である「前記少なくとも一つのパワー基板に電気的に接続された複数のパワーデバイス」を、上記補正事項アと共に、「パワー基板」と「パワーデバイス」との位置関係について限定し、「前記少なくとも一つの導電性パワー基板上に配置され、かつそれに接続された複数のパワーデバイス」と補正する。 カ 本件補正前の請求項1に記載された発明を特定する事項である「第三の端子」について、上記補正事項アと共に、電気的な接続関係について限定し、「前記少なくとも一つの導電性パワー基板を通じて前記複数のパワーデバイスのうち少なくとも一つに電気的に接続された前記第三の端子と」を追加する。 キ 本件補正前の請求項1に記載された発明を特定する事項である「第二の端子」について、上記補正事項アと共に、「パワー基板」との位置関係を限定し「前記第二の端子は前記少なくとも一つの導電性パワー基板と少なくとも部分的に重なり合い、」を追加する。 上記補正事項アないしキは、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定する事項を限定するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、請求項1に係る本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 (2)独立特許要件について 上記「(1)」において検討したとおり、請求項1に係る本件補正は特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そこで、本件補正発明が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)否かについて以下に検討する。 ア 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)、特許法第36条第6項第2号(明確性要件)について 本件補正後の請求項1には「前記ハウジング内および/または前記ハウジングよりも上に位置する接触面を備える前記第一の端子」及び「前記ハウジング内および/または前記ハウジングよりも上に位置する接触面を備える第二の端子」と記載されている。そして、上記「前記ハウジング内および/または前記ハウジングよりも上に位置する接触面」は、「前記ハウジング内および」「前記ハウジングよりも上に位置する接触面」、並びに、「前記ハウジング内」に位置しないと共に「前記ハウジングよりも上に位置する接触面」を含む。 しかしながら、本願明細書には「ハウジング内」が意味する領域の範囲を具体的に説明する記載がなく、上記「ハウジング内」については、ハウジングに囲まれた範囲内の空間と、「パワー基板」上方からみてハウジングに囲まれた範囲内の領域との2通りの解釈ができる。 (ア)ここで、「ハウジング内」がハウジングに囲まれた範囲内の空間を意味する場合、「前記ハウジングよりも上に位置する」ことは、ハウジングに囲まれた範囲外の空間に位置することに他ならないから、請求項1に記載された「前記ハウジング内および」「前記ハウジングよりも上に位置する」は、ハウジングに囲まれた範囲内の空間に位置すると共にハウジングに囲まれた範囲外の空間に位置することを意味することになり、矛盾する。 したがって、本件補正発明は明確ではないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (イ)次に、「パワー基板」上方からみてハウジングに囲まれた範囲内の領域を意味する場合について検討する。 上記「前記ハウジング内」に位置しないと共に「前記ハウジングよりも上に位置する接触面」は、パワー基板上方からみてハウジングに囲まれた範囲外の領域かつハウジングよりも上に位置する「接触面」であるが、本願明細書及び本願図面にはそのような構成は記載されていない。そして、本願明細書及び本願図面には図4及び図5にパワー基板上方からみてハウジング側壁に囲まれた範囲内の領域かつハウジング側壁よりも上に位置する「接触面」が示されているのみである。 したがって、本件補正発明は発明の詳細な説明に記載したものではないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 イ 特許法第29条第1項第3号(新規性)について (ア)本件補正発明 本件補正発明は、上記「第2[理由]1」において本件補正後の請求項1に記載したとおりのものである。 (イ)引用文献及び引用発明 a 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2004−186504号公報(以下「引用文献1」という。)には、「半導体装置」に関して、図面と共に以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。 「【0023】 1はインバータ装置で、該インバータ装置1は、後述の金属ケース2、端子3,6,8、金属板4,5,7、MOSFET9,10、基板支持体12、制御回路基板14、放熱部材15等を含んで構成されている。また、インバータ装置1は、例えば後述の図6に示す3相交流式のインバータ回路20のうち、1相分の回路を搭載したパワーモジュールとして形成されているものである。 【0024】 2はインバータ装置1の外郭を構成する金属枠体としての金属ケースで、該金属ケース2は、例えば金属板等にプレス加工を施すことにより、図1ないし図5に示す如く、上向きに開口した箱形状のケースとして一体に形成されている。この場合、金属ケース2の材料としては、例えば銅、アルミニウム、鉄、モリブデン、タングステン、またはこれらの合金等を含めて熱伝導性が良好な金属材料が用いられている。 【0025】 そして、金属ケース2は、四角形の平板状に形成された底部2Aと、該底部2Aの周縁に沿って立設され、底部2Aを取囲む四角形の枠状体として形成された側壁部2Bとにより構成されている。また、側壁部2Bの端面には、後述の端子3,6,8が挿通される2箇所の端子挿通溝2Cが形成されている。 【0026】 また、金属ケース2内には、金属板4,5,7、MOSFET9,10、基板支持体12、制御回路基板14等の部品が収容されている。そして、金属ケース2は、後述の蓋板17により施蓋され、これらの部品を外部のダスト、水分、油分等から保護すると共に、電磁気的なノイズ等から遮断するものである。 【0027】 3は金属ケース2に設けられた低電圧端子で、該低電圧端子3は、例えば細長い金属板等をクランク状に屈曲させることにより形成されている。そして、低電圧端子3の基端側は金属ケース2内に配置され、例えば半田付け、溶接等の手段によって底部2Aの表面側に接続されている。 【0028】 また、低電圧端子3の先端側は、金属ケース2の端子挿通溝2Cから後述のシール材18を介して外部に引出され、側壁部2Bの外側に突出している。そして、低電圧端子3の突出端側は、後述する電源19の低電圧側(マイナス極側)に接続されるものである。 【0029】 4は金属ケース2の底部2Aに設けられた第1の金属板としてのベース金属板で、該ベース金属板4は、四角形の平板状に形成され、図1中の左,右方向(長さ方向)および前,後方向(幅方向)に延びている。この場合、ベース金属板4と後述の積層金属板5,7とは、例えば金属ケース2とほぼ同様の金属材料からなり、これらは互いにほぼ等しい熱膨張率を有している。 【0030】 そして、ベース金属板4は、例えば半田、導電性の接着剤等からなる接合材4Aを用いて、底部2Aの表面側に面接触状態で接合されている。これにより、ベース金属板4は、底部2Aに対して熱伝導性が良好な状態に保持されると共に、金属ケース2等を介して低電圧端子3と接続されている。 【0031】 5はベース金属板4の表面側に絶縁材5Aを介して積層された第2の金属板としての高電圧側の積層金属板で、該積層金属板5は、細長い四角形状の平板として形成され、ベース金属板4の幅方向に延びている。 【0032】 6は高電圧側の積層金属板5に設けられた高電圧端子で、該高電圧端子6は、低電圧端子3とほぼ同様に、クランク状に屈曲した金属板等からなり、その基端側は、積層金属板5の表面側に接続されている。また、高電圧端子6の先端側は、金属ケース2の端子挿通溝2Cからシール材18を介して外部に引出され、電源19の高電圧側(プラス極側)に接続されるものである。 【0033】 7は第3の金属板としての出力側の積層金属板で、該積層金属板7は、高電圧側の積層金属板5とほぼ同様に、ベース金属板4の表面側に絶縁材7Aを介して積層されている。この場合、積層金属板5,7は、ベース金属板4の長さ方向に離間して配置され、互いに絶縁状態に保持されると共に、ベース金属板4の幅方向に沿って互いに並行に延びている。 【0034】 8は出力側の積層金属板7に設けられた出力端子で、該出力端子8は、低電圧端子3とほぼ同様に、クランク状に屈曲した金属板等からなり、その基端側は、積層金属板7の表面側に接続されている。また、高電圧端子6の先端側は、金属ケース2の端子挿通溝2Cからシール材18を介して外部に引出され、後述の負荷21等に接続されるものである。 【0035】 9は高電圧側の積層金属板5に面実装された例えば2個の高電圧側素子としてのMOSFET(MOSトランジスタ)で、該各MOSFET9は、例えばベアチップ型の汎用的な半導体素子等からなり、積層金属板5の幅方向に間隔をもって並んでいる。 【0036】 そして、MOSFET9の表面側には、ソースSとゲートG(図6参照)とが設けられている。この場合、ソースSは、例えばワイヤボンディング等の手段により金属線9Aを用いて出力側の積層金属板7と接続され、ゲートGは後述の制御回路基板14と接続されている。また、MOSFET9の裏面側にはドレインDが設けられ、ドレインDは積層金属板5と接続されている。 【0037】 10は出力側の積層金属板7に面実装された例えば2個の低電圧側素子としてのMOSFETで、該各MOSFET10には、MOSFET9とほぼ同様に、その表面側にソースSとゲートGとが設けられ、その裏面側にドレインDが設けられている。そして、MOSFET10のソースSは金属線10Aを用いてベース金属板4と接続され、ドレインDは積層金属板7と接続されている。」 「【0039】 また、高電圧側と低電圧側のMOSFET9,10は、積層金属板5,7の幅方向(例えば、図1中の前,後方向)に沿って互いに並行な位置関係をもつように並べて配置されている。これにより、インバータ装置1の作動中に高電圧側の各MOSFET9等を介して積層金属板5,7の間に大電流が流れるとき、または低電圧側の各MOSFET10等を介してベース金属板4(金属ケース2)と積層金属板7との間に大電流が流れるときは、これらの電流経路が金属板4,5,7のほぼ全幅にわたって均等に形成された状態となる。従って、インバータ装置1は、高電圧側と低電圧側の電流経路を幅広に形成して寄生インダクタンスを低減でき、また大電流を個々のMOSFET9,10にほぼ均等に分散できる構成となっている。」 「【0041】 12は金属ケース2内に設けられた基板支持体で、該基板支持体12は、図4、図5に示す如く、例えば金属材料、樹脂材料等により四角形の枠状に形成され、金属ケース2の側壁部2Bの内側に嵌合されている。 【0042】 そして、基板支持体12は、例えば接着剤13等を用いて側壁部2Bの内側に固定された固定部12Aと、該固定部12Aから内側に突出し、制御回路基板14が取付けられる基板取付部12Bと、該基板取付部12Bよりも金属ケース2の底部2Aに近い位置で固定部12Aから内側に突出し、ベース金属板4の表面側に当接する枠状の金属板当接部12Cとを含んで構成されている。」 「【0044】 14はMOSFET9,10の通電状態を制御する制御回路基板で、該制御回路基板14は、図2に示す如く、例えば接着等の手段によって基板支持体12の基板取付部12Bに固定され、MOSFET9,10等に対して金属板4等の厚さ方向に離れた位置に保持されている。また、制御回路基板14は、複数の配線14A等を介して各MOSFET9,10のゲートGに接続され、これらを流れる電流を一定のタイミングで通電,遮断することによって交流を発生するものである。」 「【0049】 まず、インバータ装置1の作動時には、各MOSFET9,10が制御回路基板14により所定のタイミングでON,OFFされると、高電圧端子6と出力端子8との間には、金属板5,7、各MOSFET9等を介して大電流が流れる。また、出力端子8と低電圧端子3との間には、金属ケース2、金属板4,7、各MOSFET10等を介して大電流が流れる。そして、これらの高電圧側と低電圧側の電流は、出力端子8から交流の駆動電流として負荷21に出力される。」 「【0062】 この場合、基板支持体12の固定部12Aを四角形の枠状に形成したので、その四辺を金属ケース2の側壁部2Bの内側にそれぞれ取付けることができ、その取付強度を高めることができる。そして、この状態で金属ケース2の底部2Aと制御回路基板14との間には、金属板4,5,7、MOSFET9,10等を配置するためのスペースを基板支持体12によって容易に確保することができる。」 「図1 」 「図2 」 「図4 」 「図5 」 「図6 」 b 上記「a」によれば、引用文献1には、次の技術的事項が記載されていると認められる。 (a)段落【0023】には「インバータ装置1は」「金属ケース2、端子3,6,8、金属板4,5,7、MOSFET9,10、基板支持体12」「を含んで構成されている」及び「インバータ装置1は」「パワーモジュールとして形成されている」と記載されている。 また、段落【0049】には「インバータ装置1の作動時には」「高電圧端子6と出力端子8との間には」「大電流が流れる。また、出力端子8と低電圧端子3との間には」「大電流が流れる」と記載され、段落【0033】には「積層金属板5,7は、ベース金属板4の長さ方向に離間して配置され」ることが記載されている。 よって、段落【0023】に記載された「端子3,6,8」は、段落【0049】に記載された「低電圧端子3」、「高電圧端子6」、「出力端子8」であり、同様に、段落【0023】に記載された「金属板4,5,7」は、段落【0033】に記載された「ベース金属板4」、「積層金属板5」、「積層金属板7」であるといえる。 以上のことから、インバータ装置1は金属ケース2、低電圧端子3、高電圧端子6、出力端子8、ベース金属板4、積層金属板5、積層金属板7、MOSFET9、MOSFET10、基板支持体12を含んで構成され、パワーモジュールとして形成されている。 (b)段落【0024】には「金属ケース2は」「上向きに開口した箱形状のケースとして一体に形成され」ることが記載されている。 また、段落【0025】には「そして、金属ケース2は、四角形の平板状に形成された底部2Aと、該底部2Aの周縁に沿って立設され、底部2Aを取囲む四角形の枠状体として形成された側壁部2Bとにより構成され」及び「側壁部2Bの端面には」「端子挿通溝2Cが形成されている」と記載されている。 よって、金属ケース2は、上向きに開口した箱形状のケースとして一体に形成されると共に、四角形の平板状に形成された底部2Aと、底部2Aの周縁に沿って立設され、底部2Aを取囲む四角形の枠状体として形成された側壁部2Bとにより構成され、側壁部2Bの端面には端子挿通溝2Cが形成されたものである。 (c)段落【0026】には「金属ケース2内には、金属板4,5,7、MOSFET9,10、基板支持体12」「等の部品が収容されている。」と記載されている。 そして、上記技術事項(a)を踏まえると、金属ケース2内には、ベース金属板4、積層金属板5、積層金属板7、MOSFET9、MOSFET10、基板支持体12が収容されることが記載されている。 (d)段落【0027】には「低電圧端子3は」「細長い金属板等をクランク状に屈曲させることにより形成され」ること、「低電圧端子3の基端側は」「半田付け、溶接等の手段によって底部2Aの表面側に接続され」ることが記載され、また、段落【0028】には「低電圧端子3の先端側は、金属ケース2の端子挿通溝2Cから」「外部に引出され、」「突出している」こと、「低電圧端子3の突出端側は」「電源19の低電圧側」「に接続される」ことが記載されている。 また、図1及び図2より、低電圧端子3の先端側が、基板支持体12よりも上に位置することが見てとれる。 よって、低電圧端子3は、細長い金属板をクランク状に屈曲させることにより形成され、低電圧端子3の基端側は半田付け又は溶接によって底部2Aの表面側に接続され、低電圧端子3の先端側は金属ケース2の端子挿通溝2Cから外部に引出されると共に、基板支持体12よりも上に位置し、電源19の低電圧側に接続されるものである。 (e)段落【0029】には「該ベース金属板4は、四角形の平板状に形成され」ること、及び、「ベース金属板4」は「金属材料からな」ることが記載されている。また、段落【0030】には「ベース金属板4は」「半田、導電性の接着剤等からなる接合材4Aを用いて、底部2Aの表面側に面接触状態で接合され」ることが記載されている。 よって、ベース金属板4は四角形の平板状に形成され、金属材料からなり、半田又は導電性の接着剤からなる接合材4Aを用いて底部2Aの表面側に面接触状態で接合されるものである。 (f)段落【0031】には「5はベース金属板4の表面側に絶縁材5Aを介して積層された」「積層金属板で」あることが記載されている。 よって、積層金属板5は、ベース金属板4の表面側に絶縁材5Aを介して積層される。 (g)段落【0032】には「高電圧端子6は」「クランク状に屈曲した金属板等からなり、その基端側は、積層金属板5の表面側に接続され」ること、「高電圧端子6の先端側は、金属ケース2の端子挿通溝2Cから」「外部に引出され、電源19の高電圧側」「に接続されるものである」ことが記載されている。 また、図1及び図2より、高電圧端子6の先端側が、基板支持体12よりも上で、かつ、低電圧端子3よりも上に位置することが見てとれる。 よって、高電圧端子6はクランク状に屈曲した金属板からなり、高電圧端子6の基端側は積層金属板5の表面側に接続され、高電圧端子6の先端側は金属ケース2の端子挿通溝2Cから外部に引出されると共に、基板支持体12よりも上で、かつ、低電圧端子3よりも上に位置し、電源19の高電圧側に接続されるものである。 (h)段落【0033】には「積層金属板7は」「ベース金属板4の表面側に絶縁材7Aを介して積層され」ることが記載されている。 よって、積層金属板7は、ベース金属板4の表面側に絶縁材7Aを介して積層される。 (i)段落【0034】には「出力端子8は」「クランク状に屈曲した金属板等からなり、その基端側は、積層金属板7の表面側に接続され」ることが記載されている。 よって、出力端子8は、クランク状に屈曲した金属板等からなり、その基端側は積層金属板7の表面側に接続されるものである。 (j)段落【0035】には「9は」「積層金属板5に面実装された」「MOSFET(MOSトランジスタ)で」あることが記載され、段落【0036】には「MOSFET9の表面側には、ソースSとゲートG」「が設けられている」こと、「ソースSは」「金属線9Aを用いて」「積層金属板7と接続され」ること、「MOSFET9の裏面側にはドレインDが設けられ、ドレインDは積層金属板5と接続され」ることが記載されている。 よって、MOSFET9は、表面側にソースS及びゲートGが設けられ、裏面側にドレインDが設けられ、積層金属板5に面実装され、MOSFET9のドレインDは積層金属板5と接続され、MOSFET9のソースSは金属線9Aを用いて積層金属板7と接続されるものである。 (k)段落【0037】には「10は」「積層金属板7に面実装された」「MOSFETで」「MOSFET10には」「その表面側にソースSとゲートGとが設けられ、その裏面側にドレインDが設けられ」ること、及び、「MOSFET10のソースSは金属線10Aを用いてベース金属板4と接続され、ドレインDは積層金属板7と接続され」ることが記載されている。 MOSFET10は、表面側にソースS及びゲートGが設けられ、裏面側にドレインDが設けられ、積層金属板7に面実装され、MOSFET10のドレインDは積層金属板7と接続され、MOSFET10のソースSは金属線10Aを用いてベース金属板4と接続されるものである。 (l)段落【0041】には、図4及び図5を参照して「該基板支持体12は」「樹脂材料等により四角形の枠状に形成され」ることが記載され、段落【0042】には「基板支持体12は」「接着剤13等を用いて側壁部2Bの内側に固定された固定部12Aと」、「固定部12Aから内側に突出し、ベース金属板4の表面側に当接する枠状の金属板当接部12Cとを含んで構成され」ることが記載され、段落【0062】には「金属板4,5,7、MOSFET9,10等を配置するためのスペースを」「確保する」と記載されている。 また、図4及び図5には、基板支持体12がベース金属板4の表面側かつその周囲に配置されることが見てとれる。 以上のことから、上記技術事項(a)を踏まえると、基板支持体12は樹脂材料により四角形の枠状に形成されると共に、金属ケース2の側壁部2Bの内側に嵌合され、接着剤13を用いて側壁部2Bの内側に固定された枠状の固定部12Aと、固定部12Aから内側に突出しベース金属板4の表面側に当接する枠状の金属板当接部12Cとを含んで構成されると共に、ベース金属板4の表面側かつその周囲に配置され、ベース金属板4、積層金属板5、積層金属板7、MOSFET9、MOSFET10を配置するためのスペースを確保するものである。 (m)段落【0049】には「高電圧端子6と出力端子8との間には、金属板5,7、MOSFET9を介して大電流が流れ」、「出力端子8と低電圧端子3との間には、金属ケース2、金属板4,7、MOSFET10を介して大電流が流れ」ることが記載されている。 そして、上記技術事項(a)を踏まえると、高電圧端子6と出力端子8との間には、積層金属板5、積層金属板7及びMOSFET9を介して大電流が流れ、出力端子8と低電圧端子3との間には、金属ケース2、ベース金属板4、積層金属板7及びMOSFET10を介して大電流が流れる。 c 上記技術事項(a)ないし(m)によれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「金属ケース2、低電圧端子3、高電圧端子6、出力端子8、ベース金属板4、積層金属板5、積層金属板7、MOSFET9、MOSFET10、基板支持体12を含んで構成され、パワーモジュールとして形成されているインバータ装置1であって、 金属ケース2は、上向きに開口した箱形状のケースとして一体に形成されると共に、四角形の平板状に形成された底部2Aと、底部2Aの周縁に沿って立設され、底部2Aを取囲む四角形の枠状体として形成された側壁部2Bとにより構成され、側壁部2Bの端面には端子挿通溝2Cが形成され、 金属ケース2内には、ベース金属板4、積層金属板5、積層金属板7、MOSFET9、MOSFET10、基板支持体12が収容され、 ベース金属板4は四角形の平板状に形成され、金属材料からなり、半田又は導電性の接着剤からなる接合材4Aを用いて底部2Aの表面側に面接触状態で接合され、 基板支持体12は樹脂材料により四角形の枠状に形成され、接着剤13を用いて側壁部2Bの内側に固定された枠状の固定部12Aと、固定部12Aから内側に突出しベース金属板4の表面側に当接する枠状の金属板当接部12Cとを含んで構成されると共に、ベース金属板4の表面側かつその周囲に配置され、ベース金属板4、積層金属板5、積層金属板7、MOSFET9、MOSFET10を配置するためのスペースを確保するものであり、 積層金属板5は、ベース金属板4の表面側に絶縁材5Aを介して積層され、 積層金属板7は、ベース金属板4の表面側に絶縁材7Aを介して積層され、 MOSFET9は、表面側にソースS及びゲートGが設けられ、裏面側にドレインDが設けられ、積層金属板5に面実装され、MOSFET9のドレインDは積層金属板5と接続され、MOSFET9のソースSは金属線9Aを用いて積層金属板7と接続されるものであり、 MOSFET10は、表面側にソースS及びゲートGが設けられ、裏面側にドレインDが設けられ、積層金属板7に面実装され、MOSFET10のドレインDは積層金属板7と接続され、MOSFET10のソースSは金属線10Aを用いてベース金属板4と接続されるものであり、 低電圧端子3は、細長い金属板をクランク状に屈曲させることにより形成され、低電圧端子3の基端側は半田付け又は溶接によって底部2Aの表面側に接続され、低電圧端子3の先端側は金属ケース2の端子挿通溝2Cから外部に引出されると共に、基板支持体12よりも上に位置し、電源19の低電圧側に接続されるものであり、 高電圧端子6はクランク状に屈曲した金属板からなり、高電圧端子6の基端側は積層金属板5の表面側に接続され、高電圧端子6の先端側は金属ケース2の端子挿通溝2Cから外部に引出されると共に、基板支持体12よりも上で、かつ、低電圧端子3よりも上に位置し、電源19の高電圧側に接続されるものであり、 出力端子8は、クランク状に屈曲した金属板からなり、その基端側は積層金属板7の表面側に接続されるものであり、 高電圧端子6と出力端子8との間には、積層金属板5、積層金属板7及びMOSFET9を介して大電流が流れ、出力端子8と低電圧端子3との間には、金属ケース2、ベース金属板4、積層金属板7及びMOSFET10を介して大電流が流れる、 インバータ装置。」 (ウ)対比 本件補正発明と引用発明とを対比する。 a 本願明細書の段落【0018】には「『パワーデバイス(powerdevice)』という用語は高電圧および高電流用に設計された様々な形態のトランジスタおよびダイオードを指す」と記載されている。よって、本件補正発明の「パワーデバイス」は「高電圧および高電流用に設計された」「トランジスタ」を含むといえる。 引用発明は「高電圧端子6と出力端子8との間には」「MOSFET9を介して大電流が流れ、出力端子8と低電圧端子3との間には」「積層金属板7及びMOSFET10を介して大電流が流れる」ものであるから、「MOSFET9」及び「MOSFET10」は、「高電圧端子6」と「低電圧端子3」との間に接続され、大電流が流れるといえる。また、引用発明の「MOSFET9」及び「MOSFET10」に、大電流を流すための高電圧が印加されることは明らかである。よって、引用発明の「MOSFET9」及び「MOSFET10」は、高電圧及び高電流用に設計されたものといえる。 以上のことから、引用発明の「MOSFET9」及び「MOSFET10」は本件補正発明の「パワーデバイス」に相当する。 b 引用発明の「ベース金属板4、積層金属板5、積層金属板7」は「金属板」であるから、導電性を有するといえる。 また、引用発明の「MOSFET9は」「積層金属板5に面実装され」、「MOSFET10は」「積層金属板7に面実装され」、さらに、「積層金属板5は、ベース金属板4の表面側に」「積層され、積層金属板7は、ベース金属板4の表面側に」「積層され」るから、「ベース金属板4、積層金属板5、積層金属板7」は「MOSFET9」又は「MOSFET10」を支持する基板であるといえる。 そして、本願明細書の段落【0045】には「一つまたは複数のパワー基板606はパワーデバイス302に電気的な相互接続」「を提供し得る。」と記載されている。一方、引用発明において「MOSFET9のドレインDは積層金属板5と接続され、MOSFET9のソースSは」「積層金属板7と接続され」、「MOSFET10のドレインDは積層金属板7と接続され、MOSFET10のソースSは」「ベース金属板4と接続される」から、引用発明の「ベース金属板4、積層金属板5、積層金属板7」は、「MOSFET9」又は「MOSFET10」に電気的な相互接続を提供する点で、本件補正発明の「導電性パワー基板」と同様の機能を奏する。 以上の点と、上記「a」を踏まえると、引用発明の「ベース金属板4、積層金属板5、積層金属板7」は本件補正発明の「少なくとも一つの導電性パワー基板」に相当する。また、引用発明の「MOSFET9は」「積層金属板5に面実装され」、「MOSFET10は」「積層金属板7に面実装され」、さらに、「積層金属板5は、ベース金属板4の表面側に」「積層され、積層金属板7は、ベース金属板4の表面側に」「積層され」ることは、本件補正発明の「前記少なくとも一つの導電性パワー基板上に配置され、かつそれに接続された複数のパワーデバイス」に相当する。 c 本願明細書の段落【0042】、【0044】、【0050】ないし【0058】、【0070】及び【0073】に「ハウジング側壁612」及び「ハウジング蓋618」が記載されている。また、本願明細書に添付された図4、図5及び図10を参照すると、「第一の端子106」及び「第三の端子110」の接触面である「エッジパワーコンタクト608」が「ハウジング側壁612」及び「ハウジング蓋618」の外にあり、「ハウジング側壁612」の上かつ「ハウジング蓋618」の下にあることが見てとれる。そして、本件補正発明の「第一の端子」及び「第二の端子」の「接触面」は「前記ハウジング内および/または前記ハウジングよりも上に位置する」ものであるから、本願明細書に記載された「エッジパワーコンタクト608」よりも下に位置する「ハウジング側壁612」が本件補正発明の「ハウジング」に対応するものである。一方、引用発明の「基板支持体12」「は四角形の枠状に形成され」、「ベース金属板4、積層金属板5、積層金属板7、MOSFET9、MOSFET10を配置するためのスペースを確保する」から、側壁を構成するものである。 また、本願明細書の段落【0050】には「ハウジング側壁612は」「構造的なサポート、およびキャビティを提供し得る」と記載されている。一方、引用発明の「基板支持体12」は、「ベース金属板4、積層金属板5、積層金属板7、MOSFET9、MOSFET10を配置するためのスペースを確保するもの」であるから、構造的なサポートと、スペースすなわちキャビティを提供するといえる。 さらに、引用発明の「基板支持体12」が「ベース金属板4の表面側かつその周囲に配置され」ることは、本件補正発明の「パワー基板上に/かつそれにわたって配置され」る構成に対応する。 以上のことから、引用発明の「基板支持体12」は本件補正発明の「ハウジング」に相当する。そして、引用発明の「基板支持体12」が「四角形の枠状に形成され」、「ベース金属板4の表面側かつその周囲に配置され、ベース金属板4、積層金属板5、積層金属板7」「を配置するためのスペースを確保する」ことは、本件補正発明の「前記少なくとも一つの導電性パワー基板上に/かつそれにわたって配置されたハウジング」に相当する。 d 引用発明は「低電圧端子3の基端側は半田付け又は溶接によって底部2Aの表面側に接続され」、「ベース金属板4は」「導電性の接着剤からなる接合材4Aを用いて底部2Aの表面側に面接触状態で接合され」るから、「低電圧端子3」は「ベース金属板4」に電気的に接続されるといえる。 よって、上記「(b)」を踏まえると、引用発明の「低電圧端子3」は、「低電圧端子3」は「ベース金属板4」に電気的に接続される点で、本件補正発明の「前記少なくとも一つの導電性パワー基板に電気的に接続された第一の端子」に相当する。 また、引用発明の「低電圧端子3の先端側」は「電源19の低電圧側に接続される」から、本件補正発明の「第一の端子」が備える「接触面」に相当する。そして、引用発明の「低電圧端子3の先端側は」「基板支持体12よりも上に位置」することは、本件補正発明の「第一の高位(elevation)において」「前記ハウジングよりも上に位置する接触面を備える前記第一の端子」に相当する。 以上のことより、「低電圧端子3は」、「低電圧端子3の基端側は半田付け又は溶接によって底部2Aの表面側に接続され、低電圧端子3の先端側は」「基板支持体12よりも上に位置し、電源19の低電圧側に接続されるものであ」ることは、本件補正発明の「前記少なくとも一つの導電性パワー基板に電気的に接続された第一の端子であって、第一の高位(elevation)において前記ハウジング内および/または前記ハウジングよりも上に位置する接触面を備える前記第一の端子」に相当する。 e 引用発明の「高電圧端子」は、本件補正発明の「第二の端子」に相当する。 また、引用発明の「高電圧端子の先端側」は「電源19の高電圧側に接続される」から、本件補正発明の「第二の端子」が備える「接触面」に相当する。 そして、引用発明の「高電圧端子の先端側」が「基板支持体12よりも上で、かつ、低電圧端子3よりも上に位置」することは、「前記第一の高位とは異なる第二の高位において」「前記ハウジングよりも上に位置する接触面を備える第二の端子」に相当する。 以上のことより、「高電圧端子の先端側は」「基板支持体12よりも上で、かつ、低電圧端子3よりも上に位置し、電源19の高電圧側に接続される」ことは、本件補正発明の「前記第一の高位とは異なる第二の高位において前記ハウジング内および/または前記ハウジングよりも上に位置する接触面を備える第二の端子」に相当する。 f 引用発明の「出力端子8」は「その基端側は積層金属板7の表面側に接続される」点で、本件補正発明の「前記少なくとも一つの導電性パワー基板に電気的に接続された第三の端子」に相当する。 (1行空け:この注は消します) g 引用発明は「出力端子8」は、「その基端側は積層金属板7の表面側に接続され」、「MOSFET10のドレインDは積層金属板7と接続され」るものであるから、「積層金属板7」を通じて「MOSFET10」に接続されるといえる。 よって、引用発明の「出力端子8」は、「積層金属板7」を通じて「MOSFET10」に接続される点で、本件補正発明の「前記少なくとも一つの導電性パワー基板を通じて前記複数のパワーデバイスのうち少なくとも一つに電気的に接続された前記第三の端子」に相当する。 h 引用発明の「高電圧端子6の基端側は積層金属板5の表面側に接続され」ることは、本件補正発明の「前記第二の端子は前記少なくとも一つの導電性パワー基板と少なくとも部分的に重なり合」う構成に相当する。 そして、引用発明は「MOSFET9のドレインDは積層金属板5と接続され」るものであるから、「高電圧端子6」は「積層金属板5」を介して「MOSFET9」と接続されるといえる。よって、引用発明の「高電圧端子6の基端側は積層金属板5の表面側に接続され」、「MOSFET9のドレインDは積層金属板5と接続され」ることは、本件補正発明の「前記第二の端子は前記複数のパワーデバイスのうち少なくとも一つに電気的に接続され」る構成に相当する。 さらに、引用発明は「MOSFET9のソースSは金属線9Aを用いて積層金属板7と接続され」、「MOSFET10のドレインDは積層金属板7と接続され」るものであるから、「高電圧端子6」は、「積層金属板5」、「MOSFET9」及び「積層金属板7」を介して「MOSFET10」と電気的に接続されるといえる。よって、引用発明の「高電圧端子6の基端側は積層金属板5の表面側に接続され」、「MOSFET9のドレインDは積層金属板5と接続され」、「MOSFET9のソースSは金属線9Aを用いて積層金属板7と接続され」、「MOSFET10のドレインDは積層金属板7と接続され」ることは、本件補正発明の「前記第二の端子は前記少なくとも一つの導電性パワー基板を通じて前記複数のパワーデバイスのうち少なくとも別の一つに電気的に接続される」構成に相当する。 i 引用発明の「インバータ装置1」は「低電圧端子3、高電圧端子6、出力端子8、ベース金属板4、積層金属板5、積層金属板7、MOSFET9、MOSFET10、基板支持体12を含んで構成され、パワーモジュールとして形成されている」点で、「導電性パワー基板」、「ハウジング」、「第一の端子」、「第二の端子」、「第三の端子」及び「パワーデバイス」を備えた「パワーモジュール」に相当する。 上記「a」ないし「i」において検討したとおりであるから、本件補正発明と引用発明とは、 「パワーモジュールであって、 少なくとも一つの導電性パワー基板と、 前記少なくとも一つの導電性パワー基板上に/かつそれにわたって配置されたハウジングと、 前記少なくとも一つの導電性パワー基板に電気的に接続された第一の端子であって、第一の高位(elevation)において前記ハウジング内および/または前記ハウジングよりも上に位置する接触面を備える前記第一の端子と、 前記第一の高位とは異なる第二の高位において前記ハウジング内および/または前記ハウジングよりも上に位置する接触面を備える第二の端子と、 前記少なくとも一つの導電性パワー基板に電気的に接続された第三の端子と、 前記少なくとも一つの導電性パワー基板上に配置され、かつそれに接続された複数のパワーデバイスと、 前記少なくとも一つの導電性パワー基板を通じて前記複数のパワーデバイスのうち少なくとも一つに電気的に接続された前記第三の端子と、 を備え、 前記第二の端子は前記少なくとも一つの導電性パワー基板と少なくとも部分的に重なり合い、前記第二の端子は前記複数のパワーデバイスのうち少なくとも一つに電気的に接続され、前記第二の端子は前記少なくとも一つの導電性パワー基板を通じて前記複数のパワーデバイスのうち少なくとも別の一つに電気的に接続される、 パワーモジュール。」 である点で一致し、相違するところがない。 (エ)むすび 以上のとおり、本件補正発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 本件補正についてのむすび したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たさないものでもあるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし26に係る発明は、令和2年12月21日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし26に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明は、上記「第2[理由]1」に「本願発明」として記載したとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定(令和3年1月27日付け拒絶査定)の拒絶の理由は、概略次のとおりである。 A.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 B.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 (引用文献等については引用文献等一覧参照) ●理由A(特許法第29条第1項第3号)及び理由B(特許法第29条第2項)について ・請求項1−26 ・引用文献等1−3 <引用文献等一覧> 1.特開2004−186504号公報 2.米国特許出願公開第2013/0105961号明細書 3.特開2010−110065号公報 3 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項は、前記「第2[理由]2(2)イ(イ)」に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、本件補正発明から上記「第2[理由]2(1)アないしキ」で検討した限定事項を削除したものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「第2[理由]2(2)イ」で検討したとおり、引用文献1に記載された発明であるから、本願発明も引用文献1に記載された発明である。 第4 むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法29条1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。 審判長 酒井 朋広 出訴期間として在外者に対し90日を附加する。 |
審理終結日 | 2022-04-21 |
結審通知日 | 2022-04-25 |
審決日 | 2022-05-10 |
出願番号 | P2019-538212 |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(H01L)
P 1 8・ 537- Z (H01L) P 1 8・ 575- Z (H01L) |
最終処分 | 02 不成立 |
特許庁審判長 |
酒井 朋広 |
特許庁審判官 |
木下 直哉 棚田 一也 |
発明の名称 | パワーデバイスを並列接続するための低インダクタンスおよび高速スイッチングを有するハイパワー多層モジュール |
代理人 | 那須 威夫 |
代理人 | 上杉 浩 |
代理人 | 田中 伸一郎 |
代理人 | 近藤 直樹 |
代理人 | 須田 洋之 |
代理人 | 大塚 文昭 |
代理人 | 西島 孝喜 |
代理人 | ▲吉▼田 和彦 |