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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06Q
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06Q
管理番号 1388842
総通号数 10 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-06-11 
確定日 2022-09-27 
事件の表示 特願2018−207956「肌状態測定分析情報管理システムおよび肌状態測定分析情報管理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 3月22日出願公開、特開2019− 46489、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)2月15日(優先権主張 2012年2月15日)を国際出願日とする特願2013−558762号の一部を、平成28年1月12日に新たな特許出願とした特願2016−3499号の一部を、平成29年7月6日に新たな特許出願とした特願2017−132567号の一部を、平成30年11月5日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和2年 1月 7日付け 拒絶理由通知書
令和2年 2月27日 意見書の提出
令和2年 9月 7日付け 拒絶理由通知書
令和2年10月 8日 意見書、手続補正書の提出
令和3年 4月13日付け 拒絶査定(原査定)
令和3年 6月11日 審判請求書の提出
令和4年 1月27日付け 拒絶理由通知書(以下、この拒絶理由通知書の拒絶理由を「当審拒絶理由1」という。)
令和4年 3月22日 意見書、手続補正書の提出
令和4年 6月16日付け 拒絶理由通知書(以下、この拒絶理由通知書の拒絶理由を「当審拒絶理由2」という。)
令和4年 7月29日 意見書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和3年4月13日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1〜4に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2〜6に記載された周知技術に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.特開2006−285451号公報
2.特開2009−129311号公報
3.特開2006−202069号公報
4.特開2011−186640号公報
5.特開2012−14695号公報
6.特開2003−85278号公報

第3 当審の拒絶理由通知の概要
1 当審拒絶理由1
当審拒絶理由通知(令和4年1月27日付け)の概要は次のとおりである。
本願請求項1〜4に係る発明は、以下の引用文献Aに記載された発明及び引用文献Bに記載された周知技術に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
A.中川 真紀、ライフログを用いた遠隔美肌カウンセリングシステム、情報処理学会論文誌[CD−ROM]、2011年4月15日、Vol.52 No.4、pp.1537−1551
B.特開2006−285451号公報(原査定の引用文献1と同じ文献)

2 当審拒絶理由2
当審拒絶理由通知(令和4年6月16日付け)の概要は次のとおりである。
理由1(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の請求項1〜4に係る発明が発明の詳細な説明に記載したものでなく、第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
理由2(明確性)この出願は、特許請求の範囲の請求項1〜4の記載が明確でなく、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

第4 本願発明
本願請求項1〜4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」〜「本願発明4」という。)は、令和4年7月29日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された事項により特定されるものであり、そのうち、本願発明1は以下のとおりである。

<本願発明1>
「【請求項1】
ユーザーにより使用される肌状態測定装置とデータの送信および/または受信を行うとともに、ネットワークを介してデータの送受信を行う送受信手段を備えた複数のユーザークライアントを備え、
前記ユーザークライアントは、
前記肌状態測定装置により測定された前記ユーザーの測定データが当該肌状態測定装置から入力された場合に、入力された前記測定データを、前記肌状態測定装置により測定されたデータを分析することにより得られる分析結果データとユーザーの化粧品の使用履歴を含むユーザーに関連する情報とを前記ユーザー毎に重複の無い一意の顧客IDに関連付けて記憶するデータ管理サーバにネットワークを介して送信する測定データ送信手段と、
前記データ管理サーバに記憶される前記化粧品の使用履歴を入力する操作を受け付ける入力手段と、
前記データ管理サーバから受信した前記分析結果データおよび前記化粧品の使用履歴を表示する表示手段と、を備え、
前記表示手段は、前記化粧品の使用履歴に係る、前記ユーザが使用する化粧品として新たに前記データ管理サーバに登録する化粧品の候補としての、複数の化粧品についての化粧品の情報を表示可能であり、
前記データ管理サーバに記憶される前記化粧品の使用履歴を入力する操作には、前記化粧品の使用履歴に係る、前記ユーザが使用する化粧品を新たに登録するための操作が含まれ、
前記表示手段が複数の化粧品についての前記化粧品の情報を表示している状態において、当該複数の化粧品から任意の化粧品を選択する操作が、前記化粧品の使用履歴に係る、前記ユーザが使用する化粧品を新たに登録するための操作として受け付けられることを特徴とする肌状態ケアシステム。」

本願発明2〜4は、本願発明1を減縮した発明である。

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献A(非特許文献「ライフログを用いた遠隔美肌カウンセリングシステム」)
当審拒絶理由通知1の拒絶の理由に引用された引用文献Aには、次の事項が記載されている。下線は、当審が付した。

「1.はじめに
女性の多くはいつまでも美しくありたいと願っている。なかでも美しい肌を保ちたいと願っている人は多い。しかし、多くの女性は美しい肌を保つことは難しいと感じており、自分の肌に何らかの悩みをかかえている。調査会社によるスキンケアアンケートによると、9割の女性が自分の肌に対して何らかの悩みをかかえており、そのうち8割の女性がスキンケアに興味を示している。
肌には、睡眠時間や食生活、女性はホルモンバランスの変化などの生活習慣が関係しているだけでなく、紫外線や湿度などの外的肌ストレス、ストレスや悩みなどの内的肌ストレス、また、化粧品に含まれる成分も肌に大きな影響を与えている。しかし、たくさんの要素の管理を毎日続けることは面倒で困難であり、努力が必要である。また、努力して管理を行ったとしても、適切なスキンケア方法の知識を持っている女性は少なく、満足できる美肌を保つことは難しい。
先のアンケートにおいても、実際にスキンケアを施しているのはスキンケアに興味のある女性のうちの6割程度になっている。美肌対策を講じない理由として、「正しいスキンケア方法が分からない」などがあげられていた。
こうした知識不足を補うために、デパートや専門店などの店舗に設置されている化粧品カウンタを利用し、肌状態の検査やスキンケアアドバイスを受けている女性も多く存在するが、店頭でのスキンケアアドバイスは場所や時間に制限がある。さらに、大手化粧品会社の調査によると、化粧品販売カウンタで対面でスキンケアカウンセリングを受けることに抵抗がある女性が多いことも分かっている。このように、美肌を保つことには手間がかかり、知識も必要であるため対策をとることは難しく、また、対面のカウンセリングに対して抵抗感があり、カウンタに出向くことができない人も多い。そのため、多くの女性は美肌を保つことに興味を持っているものの、自分の肌に満足できる人は少ないのが現状である。
そこで我々は「ライフログを用いた遠隔美肌カウンセリングシステム」を提案する。これはライフログの手法を用いて美肌に関係する要素のログを取得し、そのデータを美容の専門家と共有することで、家庭でも手軽に専門家のスキンケアカウンセリングを受けることができるシステムである。」

「3. ライフログを用いた遠隔美肌カウンセリングシステム
本システムは図1に示すように、以下の3つの要素で構成されている。
・美肌台
・美肌チャーム
・スキンケアアドバイスシステム
美肌台は肌のキメの写真や顔の写真を撮影し、スキンケア化粧品の使用履歴を簡単に取得することができる化粧台である。美肌チャームは紫外線量と湿度を計測、記録するモバイル型のデバイスである。スキンケアアドバイスシステムは美肌台と美肌チャームで取得したデータを美容の専門家と共有し、そのデータをもとに専門家が最適なスキンケア方法やスキンケア化粧品のアドバイスを行うWebベースのシステムである。
写真データや化粧品の使用履歴など、毎日のスキンケアの際に安定した環境で取得するべきデータは美肌台で取得し、紫外線や湿度など、ユーザの生活環境で大きく変化するものは美肌チャームで取得している。
本システムを使うことで、ユーザは、家庭で手軽に取得した自分の肌状態のログから、専門家が判断した適切なスキンケアを行うことができる。そのため、対面式のスキンケアカウンセリングが苦手な女性でも、より手軽に専門家の意見を取り入れることができ、理想に近い美肌を手に入れることができると考えられる。
次にそれぞれのシステムについて詳しく紹介する。
4. 美肌台
美肌台のコンセプトはアドバイスに必要な顔やキメの写真を、違和感なく取得することである。調査の結果から美肌台では「肌のキメの写真」「顔全体の写真」「スキンケア化粧品の使用履歴」を取得する。これらのデータを違和感なく取得するために、スキンケアの際に多くの女性が使用している化粧台に着目した。化粧台にコンピュータやカメラ、ディスプレイを組み込むことで、コンピュータになじみのない人でもスキンケアの際に違和感なくシステムを利用できるように工夫した。
4.1 実装
美肌台の外観を図2に示す。美肌台にはUSB接続のマイクロスコープ(AnMoElectronics社:DinoLiteDigitalMicroscope)、USBカメラ(Logicool社:QcamProforNotebooks)、液晶ディスプレイ、RFIDリーダ(TexasInstruments社:S2000マイクロリーダ)、化粧品を置く台、プッシュスイッチを設置してある。棚にコンピュータを設置し、引き出しの中にRFIDリーダアンテナとLEDを制御するUSBパラレル変換機(秋月電子:FT245RLモジュール)を設置している。OSにはWindowsXPを用いた。さらに、鏡をくりぬいてディスプレイとカメラをはめ込み、配線を見えにくいように施すことで、化粧台の外観を損なわないように考慮した。
スキンケア化粧品を置くスペースには7cm×7cmのアクリル板を9枚並べた。これは、一般的なスキンケア化粧品が収まるサイズである。また、一般的に用いるスキンケア化粧品は、最大でも「化粧水」「美容液」「乳液」「マッサージクリーム」「収れん化粧水」「クリーム」の6種類程度と考えられることから、アクリル板を9枚用意することですべての化粧品を置くことができ、今後スキンケア化粧品の数が増えた場合にも対応できる。それぞれのアクリル板にはRFIDアンテナと白色LEDを配置しており、RFIDアンテナはPICマイコンにより切り替えられるアナログマルチブレクサを介して1台のRFIDリーダに接続されている。
4.2 操作
システムを違和感なく利用するために、一般的なスキンケアを行う場合と比べて、できるだけ特別な操作を増やさないよう考慮した。ユーザはマイクロスコープとUSBカメラを用いて、ディスプレイで確認しながら専用のプッシュスイッチを押すだけで、簡単にキメと顔全体の写真を撮ることができる。また、ユーザはあらかじめ登録しておいたRFIDタグを取り付けた化粧品をRFIDアンテナを取り付けたアクリル台の上に置いて保管する。コンピュータはRFIDアンテナでタグが読み取れなくなると、そのタグの識別番号を時間とともに記録する。これにより、スキンケア化粧品を台から取り上げて使用するだけで、利用履歴を記録することができる。
また、アクリル台に取り付けた白色LEDを用いて、スキンケア化粧品の使用順序を知らせる機能も取り付けた。専門家がお勧めするスキンケア化粧品の提示にも、このLEDを利用できると考えている。」

「6.スキンケアアドバイスシステム
スキンケアアドバイスのコンセプトは美肌台と美肌チャームで取得したデータを簡単にアップロードできることである。美肌チャームと美肌台を使用することで、データの取得は簡単に行うことができるようになると考えられる。しかし、取得したデータをまとめて専門家に送信することは手間がかかり継続することが難しい。本システムでは美肌チャームをUSB接続する、美肌台で写真を撮影する、だけで自動的にデータがアップロードされる仕組みを工夫する。
本システムの基本的な使い方を図4に示す。美肌台で取得したデータは自動でサーバにアップロードされ、美肌チャームで取得したデータは美肌台とUSB接続することでサーバにアップロードされる。ユーザはデータ入力画面で写真や化粧品のログを確認しながらコメントや肌の触り心地を記入しアップロードする。それらのデータはまとめて専門家に送信され、専門家はそのデータを見ながらアドバイスをアップロードする。サーバ上のプログラムの実装はRubyonRailsで行っている。」

「7. 評価実験
本研究の有用性を評価するために以下の3つの観点から評価実験を行った。
・システム自体の短期評価実験
・コンセプトの長期的評価実験
・美肌台と美肌チャームを用いた中期評価実験
1つ目はシステム自体の有用性の評価のための短期的な評価実験である。ここでは肌データを取得する美肌台に着目した。その理由は、(1)専門家にデータを送信してアドバイスを得る際に最も重要なデータは肌のキメと顔の写真である点、(2)普段のスキンケアに加えて写真撮影を行わなければならない美肌台の使用は、ユーザの負担が増える可能性があり、調査が必要である点である。そこで美肌台を利用した際のユーザの使用感や、美肌台で取得した写真データを用いて適切なスキンケアアドバイスが行えるかを評価する。
2つ目は本研究のコンセプトの有用性の評価である。ライフログを用いることで専門家はどの程度的確なスキンケアアドバイスを行えるのか、また、そのアドバイスによってユーザの肌にどのような効果が現れるのかを長期的に評価する。この実験は、現時点でプロトタイプを実際に家庭にインストールすることの難しさから美肌台と美肌チャームを用いず、被験者自身が手動でデータ取得を行う形式で行う。
3つ目は美肌台と美肌チャームを用いた中期評価実験である。本システムではこの2つのデバイスを用いて毎日データを取得することが必要である。提案した2つのデバイスを用いて継続的にスキンケアに必要なデータを取得できることを示すことで、本システムの有用性を評価する。
これら3つの実験を通して、システム全体の評価を行う。次にそれぞれについて詳しく述べる。」

「7.2 コンセプト評価実験
本実験の目的は、本システムのコンセプトである「ライフログを用いた遠隔スキンケアアドバイス」の有用性を検証することである。そのために以下の2点にフォーカスして実験を行った。
・専門家のアドバイスの長期的な有用性の確認
・被験者の行動や肌の変化の観察
第1点は専門家のアドバイスの長期的な有用性を確認することである。美肌台を用いた短期評価実験において、データとコメントのみを用いたアドバイスが有用であることは分かった。しかし本システムを実際に運用する場合、専門家はユーザの肌を直接見ることなく、「キメの写真」「顔の写真」「化粧品の使用履歴」「紫外線量」「湿度」の5つのデータと肌に関するコメントのみを用いて長期的にアドバイスを行うことになる。そのため、これらのデータとコメントに基づく長期的なアドバイスの有用性を評価する。
第2点は被験者の行動の変化や、肌の変化の観察である。ライフログを用いた遠隔スキンケアアドバイスを長期的に受けることで、肌がどのように変化するのか、被験者の意識がどのように変化するのかを検証する。
本実験の被験者は、女性1名(30歳、既婚、ディレクタ、報酬なし)と男性1名(27歳、未婚、デザイナ、報酬なし)の2名である。アドバイスを行う専門家には美肌台を用いた短期評価実験と同一人物に依頼した。実験期間は1カ月間であり、被験者と専門家に面識はなかった。また、実験期間中も被験者と専門家が直接会うことはなく、データのやりとりのみで実験を行った。本実験の内容を以下に示す。
・事前アンケート
・肌のキメの写真撮影
・顔の写真撮影
・紫外線量のログ
・湿度のログ
・肌や仕事、生活上の悩みなどについてのコメント
・1週間おきの専門家によるスキンケアアドバイス
事前アンケートでは、現在使用しているスキンケア化粧品の種類や名前、使用している順序、定期的に行っている特別なケア、スキンケア化粧品に対してこだわっている点など普段行っているスキンケアに関することや対面式のスキンケアカウンセリングに対して感じることを質問した。毎日の写真撮影は夜に化粧を落とした後、スキンケアの前に行ってもらい、紫外線や湿度のログは室内から屋外へ出たときなど周辺環境が大きく変わる際に紫外線量と湿度を手動で計測し、記録してもらった。写真や紫外線、湿度の記録は毎日の夜のスキンケアの際まとめてもらい、週に1回美容の専門家に送信してもらった。専門家のアドバイスには特にテンプレートを設けず、送信されたデータのみを用いたアドバイスを24時間以内に返信してもらった。本実験においては、プロトタイプを実際に家庭にインストールすることの難しさから美肌台や美肌チャームは用いず、被験者自身が手動でデータを取得する方法で行った。」

「7.2.5 議論
両被験者のアドバイス内容に関するコメントや肌状態の変化から、本実験においては専門家から被験者に対して有用なアドバイスがなされたといえる。つまり、専門家とユーザに直接の面識がなくても「紫外線量」「湿度」「顔の写真」「キメの写真」「スキンケア化粧品の使用履歴」の5つのライフログと「コメント」のデータを用いることで専門家は十分有用でユーザが満足できるスキンケアアドバイスを行うことができていた。女性被験者のスキンケアに対する行動変化からは、本システムを利用することで対面式のスキンケアカウンセリングを普段利用している人の美意識を向上させることができた。また、男性被験者のスキンケアに対する行動変化から、本システムはスキンケア初心者や男性など対面式のスキンケアカウンセリングに抵抗感を持っている人に、スキンケアを始めるきっかけを与えることも可能である。
また、実験後に感想を述べてもらった際、女性被験者から
・アドバイスのデータが残るので見直せて便利である
・忙しいときでもすぐに聞けて便利である
という意見が得られた。このことから、本システムは対面式のスキンケアカウンセリングに比べて手軽に利用でき、便利であることが分かる。
このように、本システムの「ライフログを用いたスキンケアカウンセリング」というコンセプトは長期的にみても有用であることが分かった。
一方で両被験者から
・紫外線や湿度を計測するのが面倒だった
・毎日PCを開いて写真を撮影することが面倒だった
という意見も聞かれた。本実験においては前述のように美肌台や美肌チャームを用いなかったが、美肌台の評価実験の結果から考察すると、本システムを利用することで写真撮影の面倒さや紫外線や湿度を継続的に計測/記録することの難しさは軽減されると考えられる。」

「7.3 システムの中期評価実験
本実験の目的は提案したシステムを用いることで、継続的に有用なデータが取得できるかどうかを評価することである。そこで以下の3点に着目し、提案したシステムを用いて2週間の実験を行った。
・2週間継続的にデータが取得できるかどうか。
・ユーザが継続的なデータ取得を負担と感じるかどうか。
・システムを用いて継続的に取得したデータは専門家がアドバイスを行う際に有用であるかどうか。
被験者として、男性1名(26歳、学生、ひげ剃り後の化粧水とクリームを日常的に利用、報酬なし)の協力を得た。これは、一般的に女性よりも肌状態の変化に敏感でないと考えられている男性であっても本システムを利用することで継続的にデータを取得することが可能であることが分かれば、より多くの女性にとって本システムがデータの継続取得に有効であるといえると考えたためである。また、データの有用性については上記の短期評価実験、長期実験と同一の専門家に評価してもらった。
被験者には美肌台にスキンケア化粧品を置き、使用することで「化粧品のログ」を取得しながらスキンケアを2週間行ってもらった。その際、美肌台のプッシュボタンを押すことで「肌のキメの写真」と「顔の写真」の撮影も行った。また、日常的に美肌チャームをかばんの外側に取り付けて持ち歩いてもらい、「紫外線量」と「湿度」の取得を2週間行ってもらった。
1週間に1回、取得したデータを専門家に送ってもらい、データの有用性を評価してもらった。実験後、被験者には美肌台や美肌チャームを継続的に使用した感想を、美容の専門家にはデータを閲覧した際に感じた印象などを、それぞれ自由記述で述べてもらった。
7.3.1 結果
被験者は14日間のうち実験開始後7日目以外の13日間ですべてのデータを取得していた。7日目には美肌チャームのデータは取得していたが、美肌台のデータは取得していなかった。その理由としては、疲れて帰ってきて、入浴もスキンケアもせずに寝てしまったためと述べていた。
以下に美肌台と美肌チャームのそれぞれに関する実験結果を示す。
美肌台
2週間美肌台を使用してもらった感想を以下に示す。
・美肌台は簡単に使用できたので、写真の撮影などをあまり負担には感じなかった。
・3日目あたりから口元にニキビがあることが気になり、写真を撮ってしっかり見るようになった。
・前日と当日の写真を見比べることができて便利だった。
このことから、美肌台を用いることで継続的に手軽に写真や化粧品の使用履歴を取得することができるといえる。
また、美肌台で取得したデータの有用性を専門家に評価してもらったところ、以下のような意見が得られた。
・顔と肌の写真は見やすく、肌状態の継続的な変化が分かるのでアドバイスに適していると思う。
・このシステム(美肌台)を使うと、化粧品を使用した順序だけでなく、1つ目の化粧品の後2つ目の化粧品を使用するまでの時間も分かって、とても参考になる。
これらの意見から、顔写真/肌のキメの写真については、WOZ形式で行った長期実験と同じように、スキンケアアドバイスに適したデータが得られたことが分かる。また、専門家の意見から、化粧品の使用履歴を記録する際に同時に記録される「使用した時間」の記録がアドバイスにおいて重要であることも分かった。専門家によると、肌状態に適切なスキンケア化粧品を正しい順序で使用していたとしても、化粧水から美容液、美容液から乳液などの間の時間があまりにも長いと、化粧品が効果的に働かない場合があるということであった。
たとえば化粧水は水分が多いため、化粧水を使用した後に長時間放置しておくと化粧水の水分が蒸発してしまい、そのときに同時に肌の水分の蒸発も促してしまうため、肌の乾燥の原因になってしまう場合がある。美肌台を用いることで、ユーザが正しい順序で適切な間隔で化粧品を使用しているかどうかが分かり、適切なスキンケアアドバイスにより有用であることが分かった。
このようなことから、美肌台を使用することでユーザは手軽に、継続的に有用なデータを取得することができるといえる。

美肌チャーム
2週間美肌チャームを使用してもらった感想を以下に示す。
・美肌チャームは取り付けて持ち歩くだけなので、特に意識せずに使用できた。
・充電は面倒ではあったが、1度の充電で2日間は動作するので、許容範囲だった。
美肌チャームの充電に関しては、現在の実装上の問題から充電時にケースを開閉する必要があるため面倒であったと考えられる。今後、データ転送と充電を同時に行えるように実装を工夫しなおすことで、この手間は軽減することができると考えている。また、本中期実験を行ったことで美肌チャームは1度の充電で2日間は十分に動作することが分かった。これらの感想から、美肌チャームを使用することで、ユーザは手軽に継続的に紫外線と湿度のデータを取得することができるといえる。
専門家にデータの有用性を評価してもらったところ、以下のような意見が得られた。
・ユーザがどのような環境にいたのかが分かり、アドバイスに有用であると感じた。
・紫外線量と湿度など、ユーザの生活や仕事の環境に関する情報は対面式のスキンケアカウンセリングでは分かりにくい情報なので、とても便利だと感じた。
専門家によると「自分はあまり紫外線を浴びていない」「私のいる部屋は乾燥していない」と思い込んでいる人は多いという。そのため、対面式のスキンケアカウンセリングの際も、そのことを考慮してアドバイスを行うことが多く、実際にどの程度紫外線や乾燥の影響を受けているかが分かることはとても有用であるという話であった。本実験においても、被験者自身は紫外線を浴びた、乾燥した部屋にいた、という意識はなかったと述べていた。 しかし実際に美肌チャームで取得したデータを見ると、実験開始から4日目には少なくとも40分以上UVindexが3である環境にいたことや、長時間にわたり湿度が40%以下とかなり低い環境にいたことが分かった(図9)。これらのことから、美肌チャームで継続的に取得したデータは、スキンケアアドバイスにおいて有用であったといえる。
このように、3つの評価実験の結果から、「ライフログを用いた遠隔美肌カウンセリングシステム」を用いることでユーザは専門家から継続的にそのときの肌に最適なアドバイスを受けられることが示唆された。」



図2 美肌台のプロトタイプ


図4 スキンケアアドバイスシステム



上記記載によれば、引用文献Aには、
「 多くの女性は美肌を保つことに興味を持っているものの、自分の肌に満足できる人は少ないのが現状との課題に対するシステムであり、肌のキメの写真や顔の写真を撮影し、スキンケア化粧品の使用履歴を簡単に取得することができる化粧台である美肌台と、紫外線量と湿度を計測、記録するモバイル型のデバイスである美肌チャームと、美肌台と美肌チャームで取得したデータを美容の専門家と共有し、そのデータをもとに専門家が最適なスキンケア方法やスキンケア化粧品のアドバイスを行うWebベースのシステムであるスキンケアアドバイスシステムと、からなり、家庭でも手軽に専門家のスキンケアカウンセリングを受けることができる、ライフログを用いた遠隔美肌カウンセリングシステムであって、
美肌台にはUSB接続のマイクロスコープが設置されており、専用のプッシュスイッチを押すことで肌のキメの写真を撮ることができ、
ユーザはあらかじめ登録しておいたRFIDタグを取り付けた化粧品をRFIDアンテナを取り付けたアクリル台の上に置いて保管し、美肌台のコンピュータはRFIDアンテナでタグが読み取れなくなると、そのタグの識別番号を時間とともに記録することで、スキンケア化粧品を台から取り上げて使用するだけで、使用履歴を記録し、
美肌台で取得した肌のキメの写真やスキンケア化粧品の使用履歴は自動でサーバにアップロードされ、
美肌台で取得したデータが自動でサーバにアップロードされた後、ユーザは、スキンケアアドバイスシステムの入力画面で写真や化粧品のログを確認しながらコメントや肌の触り心地を記入しアップロードを行い、
専門家は、美肌台で取得した肌のキメの写真やスキンケア化粧品の使用履歴、ユーザのコメントを見ながらアドバイスを記入してスキンケアアドバイスシステムへアップロードを行い、また、当該アドバイスは継続的になされ、
スキンケアアドバイスシステムのアドバイス閲覧ページでは、肌のキメの写真や顔の写真といった取得情報や専門家からのアドバイスを閲覧可能であり、美肌台はディスプレイを備えており、前日と当日の写真を見比べることができる、
ライフログを用いた遠隔美肌カウンセリングシステム。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

2 引用文献1(特開2006−285451号公報)
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(当審拒絶理由1に引用した引用文献B)には、次の事項が記載されている。下線は、当審が付した。

「【0050】
図4を参照すると、本実施例によるカウンセリングサーバ30は、通信手段31と、ユーザ登録手段32と、データ登録手段33と、肌状態解析手段34と、データ生成手段35と、情報生成手段36とデータベース37を備える。
【0051】
カウンセリングサーバ30は、化粧品カウンセリングシステムを管理するサーバであり、カウンセリング情報をユーザ端末10へ送信するデータ処理装置である。
【0052】
通信手段31は通信回線100に接続され、カウンセリングサーバ30へ送信された情報を受信する機能を有する。また、カウンセリングサーバ30から情報を送信する機能を有する。
【0053】
ユーザ登録手段32は、ユーザを登録するためのユーザ登録処理を行う。この処理では、ユーザを一意に識別するためのユーザ識別情報を生成し、ユーザ識別情報とユーザ情報を対応づけて、データベース37に格納する。」

「【0077】
ユーザ端末10の処理手段12は、カウンセリングサーバ30へ送信する肌状態データ及びその測定日時情報とユーザ識別情報を通信手段13へ提供し、通信手段13はこれらの情報をカウンセリングサーバ30へ送信する(ステップA9)。
【0078】
カウンセリングサーバ30は、これらの情報を受信すると、データ登録手段33により肌状態データ登録処理を実行する(ステップA10)。
【0079】
肌状態データ登録処理では、ユーザ端末10から受信したユーザ識別情報と肌状態データを対応づけて、肌状態データの測定日時情報と共にカウンセリングサーバ30に付属しているデータベース37に格納する。」

3 引用文献2(特開2009−129311号公報)
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、次の事項が記載されている。下線は、当審が付した。
「【0133】
本発明の管理システムは、当該実施例に限定されるものではなく、例えば化粧品などを販売する店舗などにおいて、管理対象者の化粧品の摂取状況を管理するものとして用いても良い。この場合、個人データが当該店舗が管理するデータベースに登録されている管理対象者による化粧品の使用状況や購入状況を管理するものであり、当該データベースに登録された管理対象者の健康に関する情報、例えば、肌のアレルギー状態に関する情報と、これまでの化粧品の使用状況(化粧品の使用履歴)に関する情報とから管理対象者の化粧品使用指導情報を携帯端末3を用いて提供するものに応用しても良い。」

4 引用文献3(特開2006−202069号公報)
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、次の事項が記載されている。
「【0021】
上記肌診断装置7は、どのようなものでもかまわないが、例えば、マイクロスコープなどを備えて、肌状態の画像データを取り込んだり、肌の水分や、皮脂などを測定したりする装置などである。そして、測定結果に、被検者の会員IDを対応付けて肌情報とし、それを送受信部5を介してセンター側システム11へ送信する。
なお、上記処理情報記憶部19には、上記処理部12が処理した情報や、各店舗側システム1からアクセス可能な店舗用ウエブサイトと、会員端末10からアクセス可能な会員用ウエブサイトとを生成するために必要なウエブサイト用データも記憶している。」

「【0027】
上記のような経営分析のほか、センター側システム11では、個々の会員の購入履歴を管理しているので、会員の購入履歴に基づいて、店舗側での会員サービスの向上を図ることができる。例えば、購入履歴から、その会員の化粧品の消費量など、化粧品の利用状況をより正確に推測することができる。従来ならば、店舗ごとに、自店での購入履歴のみを管理していたため、特定の化粧品を他店で購入した直後にも、同じ商品を勧めてしまうというようなこともあった。しかし、センター側システム11が保持している情報を、各店舗で共有できれば、会員の化粧品使用量を正確に推測できる。
また、肌情報に関しても、同様に、全ての店舗で収集した肌情報が会員IDに対応付けて管理されているので、店舗側では他店舗での診断結果を参考にすることもできる。
【0028】 省略
【0029】
なお、上記センター側システム11では、店舗用ウエブサイトと、会員用ウエブサイトとを作成して管理している。これらのウエブサイトは、上記のような分析結果や、顧客である会員の購買履歴、肌状況を、店舗ごとに把握できるように、店舗側システム1からアクセス可能な店舗用ウエブサイトと、各会員が、自分の購買履歴や肌情報を取得するために会員端末10からアクセス可能にしている。」

5 引用文献4(特開2011−186640号公報)
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には、次の事項が記載されている。下線は、当審が付した。
「【0025】
そして、上記第1紙葉1に表示された化粧品販売店の控えとなる商品推奨情報は、化粧品ブランドに基づいた複数の商品群の名称A〜Fが商品群情報として表示されるとともに、医師等の名前を記入する記入欄4を設けている。
このようにした第1紙葉1の商品群名A〜Fのいずれにチェックを入れるかは医療従事者が判断するが、特定のユーザーに対しては、医療従事者がする商品群名のチェック行為が、実質的な推奨となる。しかも、この第1紙葉1には医師等の署名がともなうので、そのチェックには医師等の責任と信用が表現されたものとなり、ユーザーの信頼感も増すことになる。」

「【0037】
上記のように化粧品販売店のカウンセリングあるいは商品説明がされた結果、ユーザーが勧められた化粧品を購入することもあるし、それを購入しないこともある。いずれにしても、その結果を購買情報として、化粧品販売店は販売店側コンピュータSCを介して管理コンピュータCCに入力しそれを記憶させる。
ユーザーが商品を購入したときには、上記購買情報として、購入日時、購入した商品名等々が含まれる。また、ユーザーが商品を購入しない場合にも、上記したカウンセリングの内容等は、管理コンピュータCCに記憶される。
【0038】 省略
【0039】
また、管理コンピュータCCは、ユーザー側コンピュータUCからユーザー名が入力されたとき、そのユーザー名に対応する情報を、そのユーザー名が入力されたコンピュータに送信できる。したがって、情報診断カードCAを基にして管理コンピュータCCに収集された情報は、ユーザー側コンピュータUCを用いていつでも確認できる。その結果、ユーザーは、これらの情報を確認しながら、以後も、継続的に安心して目的の化粧品を購入できる。」

6 引用文献5(特開2012−14695号公報)
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5には、次の事項が記載されている。下線は、当審が付した。
「【0064】
図6は、本発明の一実施形態において、移動速度情報または天気情報を用いるコンテンツ推薦システムの内部構成を説明するためのブロック図である。本実施形態に係るコンテンツ推薦システム600は、図1の第2実施形態に係るコンテンツ推薦システム120に対応してもよい。図6に示すように、コンテンツ推薦システム600は、情報受信部610、情報確認部620、コンテンツ選択部630、および推薦情報送信部640を備えてもよい。
【0065】
情報受信部610はモバイル端末の位置情報を受信する。ここで、モバイル端末は、図1の第2実施形態に係るモバイルシステム110に対応してもよい。また、位置情報は、モバイル端末の現在の位置に関する情報を含んでもよい。このようなモバイル端末の位置情報はモバイル端末から受信されてもよく、別途の位置追跡サーバを介して受信されてもよい。
【0066】
情報確認部620は、位置情報に基づいてモバイル端末の移動速度情報および位置情報に対応する地域の天気情報のうち少なくとも1つの情報を確認する。例えば、情報確認部620は、情報受信部610によって一定の時間の間隔で受信されたモバイル端末の位置情報によって確認できる距離、および時間を用いてモバイル端末の移動速度情報を算出してもよい。また、地域別の天気情報を提供する別途のサーバと連係してモバイル端末の位置情報に対応する地域の天気情報を獲得してもよい。」

7 引用文献6(特開2003−85278号公報)
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献6には、次の事項が記載されている。下線は、当審が付した。
「【0020】≪端末の構成≫次に端末Tについて説明する。この実施形態における端末Tは、これには限られないが、家庭用のコンピュータにより構成されている。この端末Tは、所定のディスプレイ装置T1、後述の問診データの入力などを行うための、キーボードやマウスなどによって構成される入力装置T2、及びデジタルカメラやマイクロスコープなどにより構成される撮像装置Cを備えている。
【0021】 省略
【0022】 省略
【0023】上述のプログラムの実行により、本発明の端末Tが内蔵するCPUは、以下の機能ブロックを形成する。つまり、図2に示したように、この端末は、画像データ受け付け部110、問診データ受け付け部120、制御部130、送受信部140、及びディスプレイ装置管理部150を備えて構成される。
【0024】画像データ受け付け部110は、撮像装置Cで撮像されることにより生成された所定の画像データを受け付けるものである。この実施形態における画像データ受け付け部110は、撮像装置Cと端末Tとを繋ぐケーブルを介してかかる画像データを受け付けるようになっている。もっとも、画像データ受け付け部110は、撮像装置Cで生成された画像データを受け付けるようになっていれば良く、メモリカードその他の外部記録媒体などを介して画像データを受け付けるように構成されていても構わない。問診データ受け付け部120は、入力装置を介して行われるユーザの入力に応じて、問診データを生成する。問診データとは、診断の内容に関する情報であり、且つ文字情報を含むものである。
【0025】例えば、ユーザの年齢、性別、自覚症状などについての情報や、画像データを生成した(撮像を行った)日時、生活リズムや生活パターンについての情報を含むものとすることができる。つまり、この問診データには、それが文字情報に関するものでありさえすれば、診断に必要な情報に関するどのようなものも含めることができる。また、問診データは、診断内容の種別に応じて適宜変更することができる。例えば、肌の性状についての診断を対象とする場合、この問診データには、使用している化粧品の種類についての情報を含めることができる。この問診データは、一般的には、入力装置T2を構成するキーボードから文字情報として入力される。例えば、問診データは、ユーザが自由に文字を打ち込むことによって生成されるようなものとすることができる。もっとも、上述のプログラムの実行により形成される制御部130に、行われる診断についての質問及びその質問に対する選択肢をユーザに提示し、ユーザがマウス等のポインティングデバイスによって所望の選択肢を選択することで、問診データの入力を行えるようにすることもできる。また、制御部130に、対象となる診断を行う際に必要となる情報についての複数の選択肢をディスプレイ装置T1に表示させる機能を持たせておき、ディスプレイ装置T1に表示された選択肢をユーザに選択させることによって、問診データを入力可能とすることもできる。
【0026】制御部130は、前述の画像データ受け付け部110及び問診データ受け付け部120と、後述の送受信部140及びディスプレイ装置管理部150の管理を行う。例えば、送受信部140から送信すべき画像データや問診データをユーザの入力内容に基づいて決定したり、ディスプレイ装置T1に表示される画像の決定を行ったりする。また、制御部130は、前述の入力装置T2などからの入力に基づいて、受け付けた画像データがいかなる診断のためのものであるかということを示すデータである対応情報を生成し、これを画像データに付加する機能も有している。
【0027】送受信部140は、この端末TとネットワークNとの間での通信を実行するものである。この送受信部140は、少なくとも、画像データ(及び付加された対応情報)と問診データとを、サーバSに対してネットワークNを経由して送信できるようになっている。尚、この実施形態における送受信部140は、サーバSが生成した後述の診断データ(場合により、診断データと処方データ、或いは処方データ)をネットワークNを介してサーバSから受け取れるようになっている。」

「【0055】この診断データは、処方データ生成部225へと送られる。処方データ生成部225は、この診断データに基づいて処方データを生成する。これら処方データの生成には、処方基準データ記録部224に記録された肌の性状についての処方基準データが用いられる。この基準データは、肌の性状の状態毎に適切、且つ有意な処方を行えるようなものであればどのようなものとしても良い。例えば、診断データが、『肌の状態良好』であることを示す場合には、化粧品aを使用すべきことを示すデータを生成し、診断データが、『肌がやや乾燥気味』、であることを示す場合には、化粧品bを使用すべきことを示すデータを生成し、診断データが『肌が乾燥している』ことを示す場合には、化粧品cを使用すると共に、専門家による判断を仰ぐべきことを提案するコメントを含むデータを生成することを可能にしておくことができる。また、例えば質問3でアレルギー症状がでているユーザに対しては、この問診データに基づき、アレルギー症状が進行しないように、皮膚に対する刺激の少ない化粧品dをすすめる処方データを生成する。あるいは、化粧品dに加えて、アレルギーを抑える薬の服用等を進めるように処方データを生成する。尚、判定部223にて判断が微妙なものは、医師その他の専門家の判断に委ねるべく、判定部223での判断を保留するようにすることもできる。この場合には、以下の処方データの生成も医師が行うようにすることができる。」

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明の「マイクロスコープ」は専用のプッシュスイッチを押すことで肌のキメの写真を撮るものであるから、本願発明1の「ユーザにより使用される肌状態測定装置」に相当する。
イ 引用発明の「美肌台」は「肌のキメ」の情報をUSB接続された「マイクロスコープ」から受信しており、その過程でデータの送信及び受信を行っていることは明らかである。
また、引用発明は「Webベース」のシステムであり、「美肌台で取得した肌のキメの写真やスキンケア化粧品の使用履歴は自動でサーバにアップロード」し、「ユーザは、スキンケアアドバイスシステムの入力画面で写真や化粧品のログを確認しながらコメントや肌の触り心地を記入しアップロードを行」い、「スキンケアアドバイスシステムのアドバイス閲覧ページでは、肌のキメの写真や顔の写真といった取得情報や専門家からのアドバイスを閲覧可能」であるから、Webベースの送受信手段を有していることは明らかである。
よって、引用発明の「美肌台」は「ユーザーにより使用される肌状態測定装置とデータの送信および/または受信を行うとともに、ネットワークを介してデータの送受信を行う送受信手段を備え」る点で、本願発明1の「ユーザークライアント」に相当する。
ウ 上記アに記載したとおり、引用発明の「マイクロスコープ」は、本願発明1の「ユーザにより使用される肌状態測定装置」に相当し、また、引用発明の「マイクロスコープ」により撮った「肌のキメの写真」は、マイクロスコープによって測定されたものであるから、引用発明の「肌のキメの写真」は、本願発明1の「肌状態測定装置により測定された前記ユーザーの測定データ」に相当する。
エ 引用発明において、専門家は、美肌台で取得した肌のキメの写真などを見ながらアドバイスを行っているから、引用発明の「アドバイス」は、本願発明1の「肌状態測定装置により測定されたデータを分析することにより得られる分析結果データ」に相当する。
オ 引用発明の「スキンケア化粧品の使用履歴」はユーザがスキンケア化粧品を台から取り上げて使用することで取得されるものであり、「ユーザーに関連する情報」であることは明らかであるから、本願発明1の「ユーザーの化粧品の使用履歴を含むユーザーに関する情報」に相当する。
カ 引用発明では、ユーザは「スキンケアアドバイスシステム」の「アドバイス閲覧ページ」により、専門家のアドバイスを閲覧するものといえるから、「スキンケアアドバイスシステム」の「サーバ」が、専門家からアップロードされた「アドバイス」をアドバイス閲覧ページ等のために管理・記憶しているものと認められる。同様に、「美肌台」からアップロードされた「スキンケア化粧品の使用履歴」についても、管理・記憶しているものと認められる。
よって、引用発明の「サーバ」は「ユーザー毎に重複の無い一意の顧客IDに関連付けて」はいないものの、「データの管理」を行うものであり、「前記肌状態測定装置により測定されたデータを分析することにより得られる分析結果データとユーザーの化粧品の使用履歴を含むユーザーに関連する情報とを」記憶する点で、本願発明1の「データ管理サーバ」と共通する。
キ 上記ウに記載したとおり、引用発明の「肌のキメの写真」は、本願発明1の「肌状態測定装置により測定された前記ユーザーの測定データ」に相当する。引用発明は、Webベースのシステムであり、「肌のキメの写真」を「自動でサーバにアップロード」しているから、本願発明1と引用発明とは、「肌状態測定装置により測定された前記ユーザーの測定データが当該肌状態測定装置から入力された場合に、入力された前記測定データをデータ管理サーバにネットワークを介して送信する」点で共通する。また、引用発明の「美肌台」がそのための「測定データ送信手段」を有していることは明らかである。
ク 引用発明では、「あらかじめ登録しておいたRFIDタグを取り付けた化粧品をRFIDアンテナを取り付けたアクリル台の上に置いて保管し、美肌台のコンピュータはRFIDアンテナでタグが読み取れなくなると、そのタグの識別番号を時間とともに記録することで、スキンケア化粧品を台から取り上げて使用するだけで、使用履歴を記録」しているから、引用発明の「RFIDアンテナ」、「美肌台のコンピュータ」は、「スキンケア化粧品の使用履歴」を「入力する操作を受け付ける」ものである。
そして、上記カに記載したとおり、引用発明では「スキンケア化粧品の使用履歴」は「サーバ」で管理・記憶されるものであるから、引用発明の「美肌台」が備える「RFIDアンテナ」、「コンピュータ」は、本願発明1の「データ管理サーバに記憶される前記化粧品の使用履歴を入力する操作を受け付ける入力手段」に相当する。
ケ 上記カに記載したとおり、引用発明では、「アドバイス」は「サーバ」によって管理・記憶されており、ユーザがアドバイスを閲覧するにあたって、サーバから受信して表示する必要があることは明らかである。
引用発明では「アドバイス閲覧ページ」を「美肌台」の「ディスプレイ」で表示しているのかどうか明記されていないものの、本願発明1と引用発明とは「データ管理サーバから受信した前記分析結果データ」を「表示」する点で共通する。
コ 引用発明では、「美肌台で取得したデータが自動でサーバにアップロードされた後、ユーザは、スキンケアアドバイスシステムの入力画面で写真や化粧品のログを確認しながらコメントや肌の触り心地を記入しアップロード」しており、ここでいう「化粧品のログ」は、「化粧品の使用状況」であることは明らかであるから、スキンケア化粧品の使用状況を「美肌台」の「ディスプレイ」で表示しているのかどうか明記されていないものの、本願発明1と引用発明とは「化粧品の使用を表示」する点で共通する。
サ 引用発明の「ライフログを用いた遠隔美肌カウンセリングシステム」は、「美肌台と美肌チャームで取得したデータを美容の専門家と共有し、そのデータをもとに専門家が最適なスキンケア方法やスキンケア化粧品のアドバイス」を得るためのシステムであり、肌状態をケアするためのシステムであるから、本願発明1の「肌状態ケアシステム」に対応する。
シ 以上、ア〜サによると、本願発明1と引用発明とは、次の一致点、相違点を有する。

[一致点]
ユーザーにより使用される肌状態測定装置とデータの送信および/または受信を行うとともに、ネットワークを介してデータの送受信を行う送受信手段を備えたユーザークライアントを備え、
前記ユーザークライアントは、
前記肌状態測定装置により測定された前記ユーザーの測定データが当該肌状態測定装置から入力された場合に、入力された前記測定データを、前記肌状態測定装置により測定されたデータを分析することにより得られる分析結果データとユーザーの化粧品の使用履歴を含むユーザーに関連する情報とを記憶するデータ管理サーバにネットワークを介して送信する測定データ送信手段と、
前記データ管理サーバに記憶される前記化粧品の使用履歴を入力する操作を受け付ける入力手段と、を備え、
前記データ管理サーバから受信した前記分析結果データおよび前記化粧品の使用を表示することを特徴とする肌状態ケアシステム。

[相違点]
(相違点1)
本願発明1は複数のユーザークライアントを備えるのに対し、引用発明ではそのような構成とすることが特定されていない点。
(相違点2)
「分析結果データとユーザーの化粧品の使用履歴を含むユーザーに関連する情報とを」記憶するにあたり、本願発明1の「データ管理サーバ」は「ユーザー毎に重複の無い一意の顧客IDに関連付けて」記憶するのに対し、引用発明ではそのような構成とすることが特定されていない点。
(相違点3)
「データ管理サーバから受信した前記分析結果データおよび化粧品の使用を表示する」にあたり、本願発明1では「ユーザークライアント」が有する「表示手段」で表示するのに対し、引用発明では「美肌台」が有する「ディスプレイ」で表示しているのかどうか特定されていない点。
(相違点4)
「ディスプレイ」に表示される「化粧品の使用」が、本願発明1では、「使用履歴」であるのに対し、引用発明は、1日分のアップロードした「化粧品のログ」であり、「使用履歴」とは特定されていない点。
(相違点5)
本願発明1では、「表示手段は、前記化粧品の使用履歴に係る、前記ユーザが使用する化粧品として新たに前記データ管理サーバに登録する化粧品の候補としての、複数の化粧品についての化粧品の情報を表示可能であり、
前記データ管理サーバに記憶される前記化粧品の使用履歴を入力する操作には、前記化粧品の使用履歴に係る、前記ユーザが使用する化粧品を新たに登録するための操作が含まれ、
前記表示手段が複数の化粧品についての前記化粧品の情報を表示している状態において、当該複数の化粧品から任意の化粧品を選択する操作が、前記化粧品の使用履歴に係る、前記ユーザが使用する化粧品を新たに登録するための操作として受け付けられる」のに対し、引用発明では、そのような構成が特定されていない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み、上記(相違点5)について検討する。
(相違点5)に係る本願発明1の「表示手段は、前記化粧品の使用履歴に係る、前記ユーザが使用する化粧品として新たに前記データ管理サーバに登録する化粧品の候補としての、複数の化粧品についての化粧品の情報を表示可能であり、前記データ管理サーバに記憶される前記化粧品の使用履歴を入力する操作には、前記化粧品の使用履歴に係る、前記ユーザが使用する化粧品を新たに登録するための操作が含まれ、前記表示手段が複数の化粧品についての前記化粧品の情報を表示している状態において、当該複数の化粧品から任意の化粧品を選択する操作が、前記化粧品の使用履歴に係る、前記ユーザが使用する化粧品を新たに登録するための操作として受け付けられる」点は、引用文献1〜6にも記載されておらず、本願の出願前において周知技術であるともいえない。
そして、本願発明1は(相違点5)に係る特定事項を備えることによって、「使用している化粧品のデータの入力に際し、データ入力が容易になる」(段落【0072】)という、明細書記載の格別の効果を奏するものである。
したがって、本願発明1は、その他の相違点である(相違点1)〜(相違点4)について判断するまでもなく、引用発明、引用文献1〜6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたとはいえない。

2 本願発明2〜4について
本願発明2〜4は本願発明1を減縮した発明であり、上記相違点5に係る構成を備えるものであるから、本願発明1と同様に、当業者であっても、引用発明、引用文献1〜6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたとはいえない。

第7 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由1
上記第6に示したとおり本願発明1〜4は、当業者であっても、引用発明、引用文献B(引用文献1)に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたとはいえない。
2 当審拒絶理由2
令和4年7月29日になされた手続補正によって、本願特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項1号及び同2号に規定する要件を満たすものとなった。

第8 原査定について
令和4年7月29日になされた手続補正により、本願発明1〜4は上記第6 1(1)で示した(相違点5)に係る構成を有するものとなっており、当業者であっても、原査定における引用文献1〜6に記載された事項に基づいて、容易に発明をすることができたとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第9 むすび
以上のとおり、本願発明1〜4は、当業者が引用発明、引用文献1〜6に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由及び当審拒絶理由1、2によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-09-14 
出願番号 P2018-207956
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G06Q)
P 1 8・ 121- WY (G06Q)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 高瀬 勤
特許庁審判官 古川 哲也
関口 明紀
発明の名称 肌状態測定分析情報管理システムおよび肌状態測定分析情報管理方法  
代理人 栗林 三男  

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