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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A24F
管理番号 1388867
総通号数 10 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-06-30 
確定日 2022-09-28 
事件の表示 特願2019− 69655「触覚的フィードバックを伴う電子喫煙物品」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 9月12日出願公開、特開2019−150028〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年7月16日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2013年7月19日 米国)を国際出願日とする特願2016−527076号の一部を、平成31年4月1日に新たな特許出願としたものであって、その後の手続の概要は以下のとおりである。
平成31年4月24日に手続補正書の提出
令和2年6月23日付けで拒絶理由通知
令和2年9月25日に意見書及び手続補正書の提出
令和3年2月22日付け(発送日:令和3年3月2日)で拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和3年6月30日に拒絶査定不服審判の請求

第2 本願発明
本願の請求項1ないし15に係る発明は、令和2年9月25日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲並びに願書に最初に添付された明細書及び図面の記載によれば、特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
制御本体筐体であって、
マイクロコントローラ、
センサ、
触覚的フィードバック構成要素、
前記マイクロコントローラ及び前記触覚的フィードバック構成要素と電気的に通信する触覚的ドライバ、
を含んだ、制御本体筐体と、
前記制御本体筐体への接続のために適合されるカートリッジ筐体と、を備え、前記カートリッジ筐体は、
エアロゾル化領域、
前記エアロゾル化領域の内部に配置された加熱器、
エアロゾル前駆体組成物を含有する貯留容器、および
前記貯留容器から、前記エアロゾル化領域内の前記加熱器へ、前記エアロゾル前駆体組成物を輸送するように構成された、液体輸送要素
を含んでおり、
前記マイクロコントローラは、入力を受けとり、振幅、周波数、及び持続時間の組み合わせによって変動する1つ以上の異なる波形を発生させるように前記触覚的フィードバック構成要素に命令を与えるように構成されており、前記触覚的ドライバは、前記触覚的フィードバック構成要素が1つ以上の異なる波形を発生させるように該触覚的フィードバック構成要素への命令を変換するように適合されている、
電子喫煙物品。」

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由(拒絶査定における理由)は、本願の請求項1ないし15に係る発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献に記載された発明に基いて、本願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。


<引用文献一覧>
1.特表2013−524835号公報
2.特表2013−511108号公報(周知技術を示す文献)
3.特開2012−108885号公報(周知技術を示す文献)
4.Olivier Bau, Ivan Poupyrev,REVEL: Tactile Feedback Technology for Augmented Reality,ACM Transactions on Graphics,2012年 8月 5日,vol. 31, No. 4, Article 89,URL,https://s3-us-west-1.amazonaws.com/disneyresearch/wp-content/uploads/20141222202845/REVEL.pdf(周知技術を示す文献)
5.特開平8−205413号公報(周知技術を示す文献)

第4 引用文献
1 引用文献について
(1)引用文献の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献であって、本願の優先日前に頒布された本願の優先日前に頒布された特表2013−524835号公報(以下、「引用文献」という。)には、「電子喫煙装置」に関して、以下の記載がある(なお、下線は理解の一助のために当審が付与した。また、「・・・」は記載の省略を示す。)。

「【0002】
本開示は、電子喫煙装置に関し、特に、使用上の機能および機能性を向上させた電子喫煙装置およびそれに関連するパッケージに関する。」

「【0006】
本開示の観点によれば、電子喫煙装置は、ユーザーの喫煙行為を検出する第1のセンサーと、給気口と、前記給気口から延長する送風路と、喫煙液を貯蔵する液体隔室と、前記液体隔室から前記喫煙液を選択的に分与するように構成された分与量制御装置と、前記液体隔室および前記送風路に連通する気化隔室と、前記気化隔室に配置された加熱器と、前記第1のセンサーによって前記ユーザーの喫煙行為が検出されると前記加熱器を作動させて前記液体隔室から分与された前記喫煙液を気化させるように構成されたコントローラーと、前記気化隔室に接続する煙出口とを含み、前記分与量制御装置によって分与された前記喫煙液の量は、気化隔室に流入する空気の量に対応する。」

「【0026】
図1Aは、本開示の原理に従って構成された電子喫煙装置(electronic smoking device:ESD)100の構造の全体図である。前記ESDは使い捨てでもよく、または再使用可能であってもよい。前記ESD 100は、2若しくはそれ以上の本体を含むマルチボディ構造を有していてもよい。例えば、前記ESD 100は、特殊工具を一切使用せずに任意の時点で相互に容易に結合でき分離できる第1の本体部100Aおよび第2の本体部100Bなどを含む再使用可能なESDであってもよい。例えば、各本体部がねじ切り部位を含んでいてもよい。各本体部が異なるハウジングによって覆われていてもよい。前記第2の本体部100Bは、例えば喫煙液などの消耗材料を収納することができる。前記消耗材料が完全に消費されると、前記第2の本体部100Bを前記第1の本体部100Aから分離し、新しいものと取り替えることができる。また、前記第2の本体部100Bは、異なる風味、濃度、種類などの別のものと取り替えることもできる。あるいは、前記ESD 100は、図2Aに示すように単一の本体構造であってもよい。前記構造の種類に拘わらず、前記ESD100は、図2Aに示すように第1の端部102および第2の端部104を備えた細長い形状を有してもよく、即ち従来の紙巻タバコに似た形状であってもよい。その他の非従来的な紙巻タバコの形状も考えられる。例えば、前記ESD100は、喫煙パイプの形状などであってもよい。
【0027】
前記ESD 100は、給気口120と、送風路122と、気化室124と、煙出口126と、電源ユニット130と、センサー132と、容器140と、分与量制御装置141と、加熱器146と、などを含んでいてもよい。さらに、前記ESD 100は、例えばマイクロコントローラー、マイクロプロセッサー、カスタムアナログ回路、特定用途向けIC(application?specific integratedcircuit:ASIC)、プログラム可能論理回路(programmable logicdevice:PLD)(例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(field programmablegate array:FPGA)など)などのコントローラー、ならびに基本的なデジタル回路およびアナログ回路によるその等価物を含んでいてもよいが、これについては図1Bを参照しながら下記に説明する。前記給気口120は、例えば図2Aに示す前記ハウジング110の外表面から延長していてもよい。前記送風路122は、前記給気口120に接続し、前記気化室124まで延長していてもよい。前記煙出口126は、前記気化室124に接続していてもよい。前記煙出口126は、前記ESD100の前記第2の端部104に形成され、前記気化室124に接続していてもよい。ユーザーが前記ESD 100の前記第2の端部104を吸うと、図1に示す破線矢印によって表示されるように、前記給気口120の外側の空気を引き込み、前記送風路122を通って気化室124に移動させることができる。前記加熱器146は、図5に示す半導体ヒーターなどであってもよく、前記気化室124に位置してもよい。前記容器140は前記喫煙液を収納し、前記気化室124に接続していてもよい。前記容器140は、前記気化室124に連通する開口部を有していてもよい。前記容器140は単一の容器でもよく、または例えば容器140A、140Bなどのように相互に接続し、若しくは相互から分離した一群の容器であってもよい。
【0028】
前記分与量制御装置141は前記容器140に接続して、前記容器140から前記気化室124までの喫煙液の流れを制御してもよい。前記ユーザーが前記ESD 100を喫煙していない場合、前記分与量制御装置141は前記容器140からの喫煙液を分与できないが、これについては図3および4を参照しながら下記に詳述する。前記分与量制御装置141の動作には、例えば前記電源ユニット130などからの電力を一切必要としない場合もある。
・・・
【0030】
前記微細液体ろ過網141は、電力および制御信号を必要としない受動素子であってもよい。前記分与量制御装置141として、その他の受動的または能動的なろ過/遮蔽装置もまた考えられる。例えば、前記分与量制御装置は、例として電界が印加されない限り液体を通さない電界式透過膜などの半能動的な分与装置であってもよい。さらに、または別な方法として、前記容器140に能動的分与装置142を接続して、毎回一貫して実質的に同量の喫煙液を前記気化室124に分与してもよい。前記喫煙液を効率的に気化させるためには、図6に示すように前記分与量制御装置141と前記加熱器146との間に非常に小さな間隙をあけて両者を隣接配置してもよい。」

「【0031】
電源ユニット130は、電源バス160を介して、例えば前記センサー132、前記能動的分与装置142、前記加熱器146などの電力を必要とする1若しくはそれ以上の構成要素に接続してもよい。前記電源ユニット130は、例えば充電式電池、使い捨て電池などの電池(図示せず)を含んでいてもよい。前記電源ユニット130は、さらに、前記電池の充電、前記電池の充電状況の検出、節電動作の実行などを行う電源制御論理回路(図示せず)を含んでいてもよい。外部電源に物理的に接続せずに前記ESD100を充電できるように、前記電源ユニット130は非接触型誘導充電システムを含んでいてもよい。接触型充電システムもまた考えられる。」

「【0032】
前記センサー132を、前記ESD 100の第2の端部104からの吸引、前記ESD 100の特定部位への接触など、前記ユーザーの喫煙行為を検出するように構成してもよい。前記ユーザーの喫煙行為が検出されると、センサー132はデータバス144を介して他の構成要素に信号を送ることができる。例えば、前記センサー132は、前記加熱器146を作動させる信号を送ることができる。また、気化室124に喫煙液の所定量を分配するために、前記センサー132は能動的分与装置142(利用している場合)に信号を送って前記気化室124に所定量の前記喫煙液を分与できる。前記喫煙液が前記容器140から分与され、前記加熱器146が作動すると、前記喫煙液は前記送風路122からの空気と混じり合って、前記気化室124内の前記加熱器146からの熱によって気化することができる。図1内の実線矢印によって表示されるように、その結果として生じた蒸気(即ち煙)は、前記ユーザーの経口吸入のための前記排煙口126を通して気化室144から引き出すことができる。前記気化室144で生成された煙が前記給気口120の方へ流れるのを防ぐために、前記送風路122は逆流防止用の網またはフィルター138を含んでいてもよい。
【0033】
前記ユーザーの喫煙行為が中断されると、前記センサー132は別の信号を送って前記加熱器146、前記能動的分与装置142などを作動停止させ、前記喫煙液の気化および/または分与を直ちに停止することができる。代替の実施形態では、前記センサー132を前記電源ユニット130にのみ接続してもよい。前記ユーザーの喫煙行為が検出されると、前記センサー132は前記電源ユニット130に信号を送ることができる。前記信号に応じて、前記電源ユニット130は、例えば前記加熱器146などの他の構成要素を作動させて前記喫煙液を気化させることができる。
【0034】
ある実施形態において、前記センサー132は風量センサーであってもよい。例えば図1に示されるように、前記センサー132は前記給気口120、前記送風路122などに接続していてもよい。前記ユーザーが前記ESD 100の第2の端部104を吸うと、前記給気口120から引き入れられた空気のうちの一部は前記センサー132の方へ移動でき、前記センサー132によって検出することができる。さらに、または別の方法として、容量性センサー148を使用して前記ユーザーが前記ハウジング100の特定部位に触れるのを検出してもよい。例えば、前記容量性センサー148を前記ESD100の第2の端部104に形成してもよい。前記ESD 100が前記ユーザーの口に運ばれ、前記ユーザーの口唇が前記第2の端部104に触れると、前記容量性センサー148によって静電容量の変化を検出することができ、前記容量性センサー148が信号を送って前記加熱器146などを作動させることができる。前記ユーザーの喫煙行為の検出のために、例えば、音響センサー、圧力センサー、タッチセンサー、光センサー、ホール効果センサー、電磁界センサーなどを含む他の種類のセンサーもまた考えられる。」

「【0037】
前記ESD 100は、さらに、例えばLEDユニット134、音発生装置(図示せず)、振動モーター(図示せず)などの1若しくはそれ以上のユーザーインターフェース装置を含んでいてもよい。前記LEDユニット134を、それぞれ前記電源バス160Aおよび前記データバス144Aを介して電源ユニット130に接続してもよい。前記ESD 100の動作中、前記LEDユニット134は視覚表示を提供してもよい。さらに、前記ESD 100の内に問題がある場合、前記センサー/コントローラー統合回路132は、前記LEDユニット134を制御して異なる視覚表示を生成することもできる。例えば、前記容器140がほとんど空か、前記電池の充電レベルが低い場合、前記LEDユニット134は、一定のパターンで(例えば、より長い間隔で30秒間)明滅してもよい。前記加熱器146が誤動作している場合、前記加熱器146を使用不能とし、LEDユニット134を制御して異なるパターンで(例えば、より短い間隔で1分間)明滅させてもよい。他のユーザーインターフェース装置を使用してテキスト、画像などを表示し、かつ/または音、振動などを発生させてもよい。
【0038】
図1Aに示す前記ESD 100において、前記センサー132単独では前記ユーザーインターフェース装置、前記通信ユニット136、前記センサー132および148などを制御できない場合がある。さらには、前記センサー132単独ではより複雑で精巧な動作を実行できない場合がある。したがって、上述のように、例えばマイクロコントローラー、マイクロプロセッサー、カスタムアナログ回路、特定用途向けIC(application?specific integratedcircuit:ASIC)、プログラマブル論理回路(programmable logicdevice:PLD)(例えば、フィールド・プログラマブル・ゲートアレイ(field programmable gate array:FPGA)など)のようなコントローラー、および基本的なデジタル回路およびアナログ回路によるその等価物を前記ESD 100に含めてもよい。例えば、図1Bは、本開示の原理に従って構成された別のESD100'の構造の全体図を示している。前記ESD100'は、コントローラー170と、信号発生装置172と、信号電力変換回路174と、電圧センサー176と、電流センサー178と、メモリー180と、などを含んでいてもよい。さらに、前記ESD100'は、図1Aに示す前記ESD 100の構成要素と同様の、電源インターフェース130A'と、充電/放電保護回路130B'と、電池130C'と、1若しくはそれ以上のセンサー(例えば、センサー132A、センサー132Bなど)と、ユーザーインターフェース134'と、通信インターフェース136'と、加熱器146'と、などを含んでいてもよい。2若しくはそれ以上の構成要素が、サイズを縮小し、製造原価を低減し、かつその製造工程を簡素化するために単一チップ、論理モジュール、PCBなどとして統合されていてもよい。例えば、前記コントローラー170およびセンサー132Aが単一半導体チップとして統合されていてもよい。
【0039】
前記コントローラー170は、例えば加熱器の校正、加熱パラメーターの調節/制御、用量制御、データ処理、有線通信/無線通信、より包括的なユーザーとの対話処理などの種々の動作を行うことができる。前記メモリー180は、前記ESD 100'を操作し、様々な基本的な動作および高度な動作を実行するためにコントローラー170によって実行される命令を格納できる。さらに、前記メモリー180は、例えば使用量データ、参照データ、診断データ、エラーデータのように前記コントローラー170によって蓄積されたデータを格納することができる。過充電、過放電、過剰電力による破損などから前記電池130C'を保護するために、前記充電/放電保護回路130B'を提供してもよい。電源インターフェース130A'が受け取った電力を、前記充電/放電保護回路130B'を介して前記電池130C'に提供することができる。あるいは、前記充電/放電保護回路130B'が利用可能でない場合は、前記コントローラー170が前記充電/放電保護動作を行なってもよい。この場合、前記電源インターフェース130A'が受け取った電力を前記コントローラー170を介して前記電池130C'に提供してもよい。
【0040】
前記信号発生装置172を、前記コントローラー170、前記電池130C'などに接続してもよく、例えば電流レベル信号、電圧レベル信号、パルス幅変調(pulse?width modulation:PWM)信号などの電力制御信号を生成して前記加熱器146'に供給される電源を制御するように構成してもよい。あるいは、前記電力制御信号を前記コントローラー170によって生成してもよい。前記コンバーター174を前記信号発生装置172または前記コントローラー170に接続して、前記信号発生装置172からの電力制御信号を前記加熱器146に提供する電力に変換してもよい。この構成では、前記電池130C'からの電力を、前記信号発生装置172を介して、または前記信号発生装置172および前記変換回路174を介して前記加熱器146'に転送できる。あるいは、前記電池130C'からの電力を前記コントローラー170を介して前記信号発生装置172に転送し、前記加熱器146に直接または前記信号電力変換回路174を介して転送してもよい。
【0041】
加熱器の校正、加熱パラメーター制御などのために、前記電圧センサー176および前記電流センサー178を提供し、前記加熱器146'の内部電圧および内部電流をそれぞれ検出してもよい。例えば、各加熱器146は、抵抗の小さな偏差によって生じるわずかに異なる加熱温度を有している場合がある。ユニット間でより一貫した加熱温度を出力するために、前記センサー/コントローラー統合回路132は、前記加熱器146の抵抗を測定し、加熱パラメーター(例えば、入力電流レベル、加熱持続時間、電圧レベルなど)を適宜調節できる。また、前記加熱器146の作動中に前記加熱器146の加熱温度が変化する場合もある。前記加熱器146の作動中、前記センサー132/コントローラー170統合回路が抵抗値変化を監視し、前記加熱温度を実質的に一定に保つためにリアルタイムで電流レベルを調節できる。さらに、前記センサー132/コントローラー170統合回路は、前記加熱器146が過熱状態にあるかどうか、および/または誤動作しているかどうかを監視し、前記加熱温度が所定の温度範囲よりも高い場合および/または前記加熱器146若しくはその他の構成要素が誤動作している場合には、安全のために前記加熱器146の動作を停止させることもできる。」






(2)上記(1)から分かること
ア 上記(1)の段落0002及び0026並びに図1Aの記載によれば、引用文献には、第1の本体部100Aと第2の本体部100Bとを備えた電子喫煙装置100が記載されている。
また、同記載によれば、第2の本体部100Bは第1の本体部100Aと相互に結合できることが分かる。

イ 上記(1)の段落0027、0032〜0034及び0037〜0041並びに図1A及び図1Bの記載(特に、段落0038の記載)によれば、電子喫煙装置100の第1の本体部100Aは、ユーザーの喫煙行為を検出するセンサー132及びマイクロコントローラーからなるコントローラーが統合されたセンサー/コントローラー統合回路を含んでいることが分かる。

ウ 上記(1)の段落0026及び0037並びに図1Aの記載によれば、電子喫煙装置100の第1の本体部100Aは、LEDユニット134、音発生装置、振動モーターなどのユーザーインターフェース装置を含んでいることが分かる。

エ 上記(1)の段落0037及び図1Aの記載によれば、電子喫煙装置100の第2の本体部100Bは、気化室124、前記気化室124の内部に配置された加熱器146、喫煙液を収納する容器140を含んでいることが分かる。

オ 上記(1)の段落0006、0028、0030及び0032並びに図1Aの記載によれば、電子喫煙装置100の第2の本体部100Bは、容器140から、加熱器146が位置する気化室124に、喫煙液を分与するように構成された、分与量制御装置141を含んでいることが分かる。

カ 上記(1)の段落0037及び0038並びに図1Aの記載を上記イ及びウと合わせてみると、センサー/コントローラー統合回路は、前記容器140がほとんど空か、前記電池の充電レベルが低い場合、前記LEDユニット134を一定のパターンで明滅させ、前記加熱器146が誤動作している場合、前記LEDユニット134を異なるパターンで明滅させて異なる視覚表示を生成することができ、また、他のユーザーインターフェース装置である音発生装置、振動モーターなどを使用して音、振動などを発生させるように構成されていることが分かる。

(3)引用発明
上記(1)及び(2)を総合すると、引用文献には、次の事項からなる発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「第1の本体部100Aであって、
ユーザーの喫煙行為を検出するセンサー132及びマイクロコントローラーからなるコントローラーが統合されたセンサー/コントローラー統合回路、
LEDユニット134、音発生装置、振動モーターなどのユーザーインターフェース装置、
を含んだ、第1の本体部100Aと、
前記第1の本体部100Aと相互に結合できる第2の本体部100Bと、を備え、
前記第2の本体部100Bは、
気化室124、
前記気化室124の内部に配置された加熱器146、
喫煙液を収納する容器140、および
前記容器140から、前記加熱器146が位置する前記気化室124に、前記喫煙液を分与するように構成された、分与量制御装置141
を含んでおり、
前記センサー/コントローラー統合回路は、前記容器140がほとんど空か、前記電池の充電レベルが低い場合、前記LEDユニット134を一定のパターンで明滅させ、前記加熱器146が誤動作している場合、前記LEDユニット134を異なるパターンで明滅させて異なる視覚表示を生成することができ、また、他のユーザーインターフェース装置である音発生装置、振動モーターなどを使用して音、振動などを発生させるように構成されている、
電子喫煙装置100。」

第5 対比
本願発明と引用発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
・後者の「第1の本体部100A」は、前者の「制御本体筐体」に相当し、以下同様に、「第2の本体部100B」は「カートリッジ筐体」に、「気化室124」は「エアロゾル化領域」に、「加熱器146」は「加熱器」に、「喫煙液」は「エアロゾル前駆体組成物」に、「収納する」は「含有する」に、「容器140」は「貯留容器」に、「分与量制御装置141」は「液体輸送要素」に、「電子喫煙装置100」は「電子喫煙物品」に、それぞれ相当する。

・後者の「センサー/コントローラー統合回路」が「前記容器140がほとんど空か、前記電池の充電レベルが低い場合、前記LEDユニット134を一定のパターンで明滅させ、前記加熱器146が誤動作している場合、前記LEDユニット134を異なるパターンで明滅させて異なる視覚表示を生成する」にあたり、後者において、ユーザーの喫煙行為を検出するためのセンサー132に加え、容器140がほとんど空かを検出するためのセンサー、電池の充電レベルが低い場合を検出するためのセンサー及び加熱器146が誤動作している場合を検出するためのセンサーを備えていることは明らかであり、センサー132とこれらセンサーは前者の「センサ」に相当する。
そして、後者において、少なくともセンサー132と電池の充電レベルが低い場合を検出するためのセンサーは第1の本体部100Aに含まれるから、前者の「センサ」が「制御本体筐体」に含まれる態様に相当する構成を備えるものである。

・後者の「センサー/コントローラー統合回路」における「マイクロコントローラーからなるコントローラー」は、前者の「マイクロコントローラ」に相当する。
そして、後者において、「センサー/コントローラー統合回路」は第1の本体部100Aに含まれるから、前者の「マイクロコントローラ」が「制御本体筐体」に含まれる態様に相当する構成を備えるものである。

・後者の「LEDユニット134、音発生装置、振動モーターなどのユーザーインターフェース装置」は、その「振動モーター」が前者の「触覚的フィードバック構成要素」に相当する。
ここで、前者の「触覚的フィードバック構成要素」について、本願明細書には「触覚的フィードバック構成要素は、具体的には、力、振動、または動きを喫煙物品の使用者に印加するように適合されることができる。」(段落0066)という記載及び「本開示に従って提供される触覚的フィードバックは、具体的には、喫煙物品の状態を定義することができる。非限定的な例として、触覚的フィードバックは、例えば、エアロゾルを形成するための加熱器の加熱、デバイスの起動、またはデバイスの停止等の稼働状態を定義することができる。触覚的フィードバックは、例えば、低いエアロゾル前駆体組成物の貯留容器レベル、適切に機能するためのデバイスの故障、カートリッジへの制御構成要素の適切な接続等の、デバイスのさらなる状態を定義することができる。いくつかの実施形態では、触覚的フィードバックは、デバイス状態とは無関係であってもよい。」(段落0069)という記載があるところ、後者の「ユーザーインターフェース装置」における「振動モーター」は、振動を発生することにより、電子喫煙装置100からユーザーに触覚的フィードバックを行うものといえるから、前者の「触覚的フィードバック構成要素」に相当する。

・後者の「第2の本体部100B」が「前記第1の本体部100Aと相互に結合できる」態様は、前者の「カートリッジ筐体」が「前記制御本体筐体への接続のために適合される」態様に相当する。

・後者の「分与量制御装置141」が「前記容器140から、前記加熱器146が位置する前記気化室124に、前記喫煙液を分与するように構成された」態様は、加熱器146が位置する気化室124に喫煙液が分与されることにより、気化室124内の加熱器146へ喫煙液が輸送されることになるから、前者の「液体輸送要素」が「前記貯留容器から、前記エアロゾル化領域内の前記加熱器へ、前記エアロゾル前駆体組成物を輸送するように構成された」態様に相当する。

・後者の「前記センサー/コントローラー統合回路は、前記容器140がほとんど空か、前記電池の充電レベルが低い場合、前記LEDユニット134を一定のパターンで明滅させ、前記加熱器146が誤動作している場合、前記LEDユニット134を異なるパターンで明滅させて異なる視覚表示を生成することができ、また、他のユーザーインターフェース装置である音発生装置、振動モーターなどを使用して音、振動などを発生させるように構成されている」態様は、センサー/コントローラー統合回路が、受け取ったセンサー等からの入力に基づいて、振動モーターを作動させることは明らかであるから、前者の「前記マイクロコントローラは、入力を受けとり、振幅、周波数、及び持続時間の組み合わせによって変動する1つ以上の異なる波形を発生させるように前記触覚的フィードバック構成要素に命令を与えるように構成されて」いる態様に、「前記マイクロコントローラは、入力を受けとり、前記触覚的フィードバック構成要素に命令を与えるように構成されて」いるという点で一致する。

以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「制御本体筐体であって、
マイクロコントローラ、
センサ、
触覚的フィードバック構成要素、
を含んだ、制御本体筐体と、
前記制御本体筐体への接続のために適合されるカートリッジ筐体と、を備え、前記カートリッジ筐体は、
エアロゾル化領域、
前記エアロゾル化領域の内部に配置された加熱器、
エアロゾル前駆体組成物を含有する貯留容器、および
前記貯留容器から、前記エアロゾル化領域内の前記加熱器へ、前記エアロゾル前駆体組成物を輸送するように構成された、液体輸送要素
を含んでおり、
前記マイクロコントローラは、入力を受けとり、前記触覚的フィードバック構成要素に命令を与えるように構成されている、
電子喫煙物品。」

[相違点1]
本願発明では、「制御本体筐体」が「前記マイクロコントローラ及び前記触覚的フィードバック構成要素と電気的に通信する触覚的ドライバ」を含み、「前記触覚的ドライバは、前記触覚的フィードバック構成要素が1つ以上の異なる波形を発生させるように該触覚的フィードバック構成要素への命令を変換するように適合されている」のに対して、引用発明では、第1の本体部100Aがそのような触覚的ドライバを含んでいるかは不明である点。

[相違点2]
「マイクロコントローラ」に関し、本願発明では、「前記マイクロコントローラは、入力を受けとり、振幅、周波数、及び持続時間の組み合わせによって変動する1つ以上の異なる波形を発生させるように前記触覚的フィードバック構成要素に命令を与えるように構成されて」いるのに対して、引用発明では、「前記センサー/コントローラー統合回路は、前記容器140がほとんど空か、前記電池の充電レベルが低い場合、前記LEDユニット134を一定のパターンで明滅させ、前記加熱器146が誤動作している場合、前記LEDユニット134を異なるパターンで明滅させて異なる視覚表示を生成することができ、また、他のユーザーインターフェース装置である音発生装置、振動モーターなどを使用して音、振動などを発生させるように構成されて」おり、振動モータを使用してどのような振動を発生させるかは不明である点。

第6 判断
1 相違点の検討
事案に鑑み、相違点2から検討を行う。
[相違点2について]
引用発明において、「(喫煙液を収納する)前記容器140がほとんど空か、前記電池の充電レベルが低い場合、前記LEDユニット134を一定のパターンで明滅させ、前記加熱器146が誤動作している場合、前記LEDユニット134を異なるパターンで明滅させて異なる視覚表示を生成することができ」るところ、「(喫煙液を収納する)前記容器140がほとんど空か、前記電池の充電レベルが低い場合」や「前記加熱器146が誤動作している場合」は、電子喫煙装置の状態を表しており、電子喫煙装置の状態に応じてLEDユニット134を「一定のパターンで明滅」又は「異なるパターンで明滅」させることで、1つ以上の異なるパターンで明滅させて異なる視覚表示を生成するものであり、また、異なる視覚表示を生成することで、電子喫煙装置のユーザーに対して視覚的フィードバックを行うことになるから、LEDユニット134により1つ以上の異なるパターンで明滅する異なる視覚表示を生成して電子喫煙装置のユーザーに対して視覚的フィードバックを行うユーザーインターフェース(以下「LEDユニット134による視覚的フィードバックを行うユーザーインターフェース」という。)を備えるものといえる。
一方、入力に応じて複数の異なる波形の振動パターンを振動モータ等の振動発生手段によって発生して機器のユーザーに対して触覚的フィードバックを行うユーザーインターフェースは、例えば、特開2001−17626号公報(特に段落0026〜0031、0034及び0035)、特開2001−347227号公報(特に段落0029及び0037)、特開平11−196497号公報(特に段落0033〜0034)及び特開平11−76939号公報(特に段落0026)にみられるように、本願の優先日前にごく普通に用いられている(当該ユーザーインターフェースを以下「慣用の触覚的フィードバックを行うユーザーインターフェース」という。)。
そして、前記慣用の触覚的フィードバックを行うユーザーインターフェースは前記LEDユニット134による視覚的フィードバックを行うユーザーインターフェースとは、複数の異なるパターンの出力を発生して機器のユーザーに対してフィードバックを行うユーザーインターフェースの点で共通するものであり、また、引用発明において、振動モーター(触覚的フィードバック構成要素)を備えていることを考慮すると、前記LEDユニット134による視覚的フィードバックを行うユーザーインターフェースに代えて、又は、併用して、慣用の触覚的フィードバックを行うユーザーインターフェースを採用することは当業者にとって格別困難であるとは認められない。
その際、振動のパターンが振幅、周波数及び持続時間で特徴付けられることは、本願の優先日前に技術常識(例えば、特開平11−196497号公報の段落0008〜0024、図4、図9及び図10(特に段落0016、0020、0021及び0024並びに図9及び図10)を参照。)であるから、引用発明において、センサー/コントローラー統合回路を、センサーから入力を受け取り、「前記容器140がほとんど空か、前記電池の充電レベルが低い場合」と「前記加熱器146が誤動作している場合」とで、振幅、周波数、及び持続時間の組み合わせによって変動する1つ以上の異なる波形を発生させるように振動モーター(触覚的フィードバック構成要素)に信号(命令)を与えるようにし、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。

[相違点1について]
モータ等のアクチュエータの駆動のために、プロセッサなどの制御装置及びアクチュエータと電気的に接続した(電気的に通信する)ドライバを設け、該ドライバによりアクチュエータへの制御信号(命令)をアクチュエータの駆動信号に変換することは、本願の優先日前に周知技術(例えば、特開2013−80483号公報(特に段落0025及び図1)におけるアクチュエータインターフェース116、特開2011−210272号公報(特に段落0063、図27)におけるドライバ2702、特開2001−347227号公報(特に段落0028〜0030)におけるコイル4に接続される図示しない駆動装置、及び特開平11−196497号公報(特に段落0020及び図4)における増幅器36を参照。以下「周知技術」という。)であるから、周知技術に基づいて引用発明におけるセンサー/コントローラー統合回路(コントローラー)から振動モーターへの信号(触覚的フィードバック構成要素への命令)を振動モーターの駆動信号に変換するドライバ(触覚的ドライバ)を第1の本体部100A(制御本体筐体)に設けることは、当業者にとって格別困難であるとは認められない。
そして、引用発明において、上記相違点2に係る本願発明の構成とすることに伴い、ドライバ(触覚的ドライバ)は、振動モータ(触覚的フィードバック構成要素)が1つ以上の異なる波形を発生させるように該振動モータへの制御信号(命令)を変換するように適合されたものとなる。
そうすると、引用発明において、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは当業者が容易になし得たことである。

2 効果について
そして、本願発明は、全体としてみても、引用発明及び周知技術から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

3 請求人の主張について
請求人は、令和3年6月30日に提出された審判請求書2〜9ページの【特許法第29条第2項違背(理由1)について】において、引用文献1は、装置が単一の振動を生成することができることを述べているに過ぎず(5ページ下から3行〜下から2行)、単純な振動モーターの使用のみを想定しており(8ページ14〜22行)、触覚的ドライバが存在しないことを示すものとして解釈されるのが合理的である旨を主張する。
しかしながら、上記1で述べたとおり、引用発明において、センサー/コントローラー統合回路を、センサーから入力を受け取り、振幅、周波数、及び持続時間の組み合わせによって変動する1つ以上の異なる波形を発生させるように振動モーター(触覚的フィードバック構成要素)に信号(命令)を与えるように構成すること、及び周知技術に基づいてセンサー/コントローラー統合回路(コントローラー)から振動モーターへの信号(触覚的フィードバック構成要素への命令)を振動モーターの駆動信号に変換するドライバ(触覚的ドライバ)を第1の本体部100A(制御本体筐体)に設けることは、当業者が容易になし得たことであるから、請求人の上記主張は採用することができない。

4 まとめ
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。

審判長 松下 聡
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
 
審理終結日 2022-04-13 
結審通知日 2022-04-19 
審決日 2022-05-11 
出願番号 P2019-069655
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A24F)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 松下 聡
特許庁審判官 槙原 進
林 茂樹
発明の名称 触覚的フィードバックを伴う電子喫煙物品  
代理人 特許業務法人川口國際特許事務所  

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