• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1388875
総通号数 10 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-07-05 
確定日 2022-09-01 
事件の表示 特願2018−216777「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 6月 4日出願公開、特開2020− 81098〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成30年11月19日の出願であって、令和2年11月12日付けで拒絶の理由が通知され、令和3年1月15日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年3月31日付けで拒絶査定(原査定)がなされ(原査定の謄本の送達日:同年4月6日)、これに対し、同年7月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 令和3年7月5日に提出された手続補正書による補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和3年7月5日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の概要
本件補正は、特許請求の範囲についてする補正を含むものであって、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1及び請求項2は、
(補正前:令和3年1月15日に提出された手続補正書)
「【請求項1】
第一の始動口または第二の始動口への遊技球の入賞に基づいて図柄変動を実行可能であり、図柄変動ごとに大当りに当選するか否かを判定する当否判定を実行し、前記第一の始動口に係る図柄変動と前記第二の始動口に係る図柄変動とを並行して実行可能であり、前記大当りに当選した図柄変動の終了後に該大当りに係る大当り遊技の開始を待機させ、該大当り遊技の待機中に所定領域に遊技球が入球又は通過をしたことに基づいて該大当り遊技を開始させる遊技機であって、
第一の遊技状態及び前記第一の遊技状態よりも有利な第二の遊技状態を含む複数の遊技状態の中から一の遊技状態を設定する遊技状態制御手段と、
点灯することによって、前記所定領域が設けられている方向への遊技球の打ち出しが推奨される状態であることを示す点灯手段と、
前記点灯手段を制御する点灯制御手段と、
演出手段と、
前記演出手段を制御する演出制御手段と、備え、
前記第一の遊技状態は、前記第一の遊技状態における前記当否判定によって当選する前記大当りのうちの前記第一の始動口に係る図柄変動での前記当否判定によって当選する前記大当りが占める割合が、前記第一の遊技状態における前記当否判定によって当選する前記大当りのうちの前記第二の始動口に係る図柄変動での前記当否判定によって当選する前記大当りが占める割合よりも高くなる遊技状態であり、
前記第一の遊技状態に設定され、前記第一の始動口に係る図柄変動が停止し且つ前記第一の始動口に係る図柄変動が保留されていないときに、前記第二の始動口に遊技球が入賞して前記大当りに当選し、該大当りに基づく図柄の組合せが停止表示して該大当りに係る前記大当り遊技を待機している特定の場合において電断が発生し、当該電断後に復電した場合の少なくとも一部において、
前記演出制御手段は、当該電断の発生前に前記所定領域への遊技球の打ち出し又は前記所定領域が設けられている方向への遊技球の打ち出しを遊技者に促す第一演出を実行させず、当該電断後の復電後に前記第一演出を実行させ、
前記点灯制御手段は、当該電断の発生前にも当該電断後の復電後にも、前記点灯手段を点灯させる遊技機。
【請求項2】
前記演出制御手段は、
前記特定の場合において、前記第一の始動口への遊技球の入賞が発生すると前記第一演出を実行させ、更に、
前記特定の場合において、一般入賞口への遊技球の入賞、アウト口の遊技球の通過、又は所定の遊技操作の検知のうち少なくとも一つが発生しても前記第一演出を実行させる請求項1に記載の遊技機。」
から、
(補正後:令和3年7月5日に提出された手続補正書)
「【請求項1】
第一の始動口または第二の始動口への遊技球の入賞に基づいて図柄変動を実行可能であり、図柄変動ごとに大当りに当選するか否かを判定する当否判定を実行し、前記第一の始動口に係る図柄変動と前記第二の始動口に係る図柄変動とを並行して実行可能であり、前記大当りに当選した図柄変動の終了後に該大当りに係る大当り遊技の開始を待機させ、該大当り遊技の待機中に所定領域に遊技球が入球又は通過をしたことに基づいて該大当り遊技を開始させる遊技機であって、
第一の遊技状態及び前記第一の遊技状態よりも有利な第二の遊技状態を含む複数の遊技状態の中から一の遊技状態を設定する遊技状態制御手段と、
点灯することによって、前記所定領域が設けられている方向への遊技球の打ち出しが推奨される状態であることを示す点灯手段と、
前記点灯手段を制御する点灯制御手段と、
演出手段と、
前記演出手段を制御する演出制御手段と、を備え、
前記第一の遊技状態は、前記第一の遊技状態における前記当否判定によって当選する前記大当りのうちの前記第一の始動口に係る図柄変動での前記当否判定によって当選する前記大当りが占める割合が、前記第一の遊技状態における前記当否判定によって当選する前記大当りのうちの前記第二の始動口に係る図柄変動での前記当否判定によって当選する前記大当りが占める割合よりも高くなる遊技状態であり、
前記第一の遊技状態に設定され、前記第一の始動口に係る図柄変動が停止し且つ前記第一の始動口に係る図柄変動が保留されていないときに、前記第二の始動口に遊技球が入賞して前記大当りに当選し、該大当りに基づく図柄の組合せが停止表示して該大当りに係る前記大当り遊技を待機している特定の場合において電断が発生し、当該電断後に復電した場合の少なくとも一部において、
前記演出制御手段は、
当該電断の発生前において前記第一の始動口への遊技球の入賞が発生しない場合、前記所定領域への遊技球の打ち出し又は前記所定領域が設けられている方向への遊技球の打ち出しを遊技者に促す右打ち表示を表示させず、
当該電断の発生前において前記第一の始動口への遊技球の入賞が発生した場合、前記右打ち表示を表示させ、
当該電断の発生前において前記第一の始動口への遊技球の入賞が発生しない場合において、図柄変動の停止中に実行させうる待機デモ演出を実行した場合、前記待機デモ演出の実行期間において前記右打ち表示を表示させず、
当該電断時に前記待機デモ演出が実行されているか否かに関わらず、当該電断後の復電後において、前記第一の始動口への遊技球の入賞が発生しなくても前記右打ち表示を表示させ、
前記点灯制御手段は、当該電断の発生前に前記点灯手段を点灯させ、更に、当該電断時に前記待機デモ演出が実行されているか否かに関わらず、当該電断後の復電後に前記点灯手段を点灯させる遊技機。
【請求項2】
前記演出制御手段は、前記特定の場合において、一般入賞口への遊技球の入賞、アウト口の遊技球の通過、又は所定の遊技操作の検知のうち少なくとも一つが発生しても前記右打ち表示を表示させる請求項1に記載の遊技機。」へと補正された(下線は、補正箇所を明示するために当審で付した。)。

2 本件補正の適否
(1)補正事項
本件補正は、補正前の請求項1及び請求項2について、次の補正事項からなるものである。

ア 発明を特定するために必要な事項である、「当該電断の発生前に前記所定領域への遊技球の打ち出し又は前記所定領域が設けられている方向への遊技球の打ち出しを遊技者に促す」ことについて、補正前の「第一演出を実行させ」ないとの記載を補正後の「右打ち表示を表示させ」ないとするとともに、その条件に関して「前記第一の始動口への遊技球の入賞が発生しない場合、」との限定を加えるとともに、

イ 発明を特定するために必要な事項である、「当該電断の発生前に」おける他の条件として、「前記第一の始動口への遊技球の入賞が発生した場合、」との限定を加えるとともに、これを満たした場合の動作に関して「前記右打ち表示を表示させ」る、との限定を加えるとともに、

ウ 発明を特定するために必要な事項である、「当該電断の発生前に」おけるさらなる他の条件として、「前記第一の始動口への遊技球の入賞が発生しない場合において、図柄変動の停止中に実行させうる待機デモ演出を実行した場合、」との限定を加えるとともに、これを満たした場合の動作に関して「前記待機デモ演出の実行期間において前記右打ち表示を前記演出表示手段に表示させず、」との限定を加えるとともに、

エ 発明を特定するために必要な事項である、「当該電断後の復電後に前記第一演出を実行させ、」について、補正前の「第一演出を実行させ、」を補正後の「右打ち表示を表示させ、」と限定するとともに、その条件に関して「当該電断時に前記待機デモ演出が実行されているか否かに関わらず、」及び「前記第一の始動口への遊技球の入賞が発生しなくても」との限定を加えるとともに、

オ 発明を特定するために必要な事項である、「当該電断後の復電後にも、前記点灯手段を点灯させる」について、「当該電断時に前記待機デモ演出が実行されているか否かに関わらず、」との限定を加えるものである。

また本件補正は、補正前の請求項2について、

カ 発明を特定するために必要な事項である、「前記特定の場合において、前記第一の始動口への遊技球の入賞が発生すると前記第一演出を実行させ、」ることについて、補正後の請求項1に上記「イ」に係る限定を加えたことに伴い、これを削除するとともに、補正前の「第一演出を実行させる」を補正後の「右打ち表示を表示させる」とするものである。

(2)補正目的
上記(1)の補正事項ア〜カは、補正前の発明特定事項に限定を加えるものであって、補正後の請求項1及び2に係る発明は、補正前の請求項1及び2に係る発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1及び2についてする補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当する。

(3)新規事項
本件補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面の【0232】〜【0256】、図21〜図27の記載からみて新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。

3 独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明1」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下検討する。

(1)本願補正発明1
本願補正発明1を再掲すると、次のとおりのものである。なお、記号A等は、分説するために合議体が付した。
「【請求項1】
A 第一の始動口または第二の始動口への遊技球の入賞に基づいて図柄変動を実行可能であり、図柄変動ごとに大当りに当選するか否かを判定する当否判定を実行し、前記第一の始動口に係る図柄変動と前記第二の始動口に係る図柄変動とを並行して実行可能であり、前記大当りに当選した図柄変動の終了後に該大当りに係る大当り遊技の開始を待機させ、該大当り遊技の待機中に所定領域に遊技球が入球又は通過をしたことに基づいて該大当り遊技を開始させる遊技機であって、
B 第一の遊技状態及び前記第一の遊技状態よりも有利な第二の遊技状態を含む複数の遊技状態の中から一の遊技状態を設定する遊技状態制御手段と、
C 点灯することによって、前記所定領域が設けられている方向への遊技球の打ち出しが推奨される状態であることを示す点灯手段と、
D 前記点灯手段を制御する点灯制御手段と、
E 演出手段と、
F 前記演出手段を制御する演出制御手段と、を備え、
G 前記第一の遊技状態は、前記第一の遊技状態における前記当否判定によって当選する前記大当りのうちの前記第一の始動口に係る図柄変動での前記当否判定によって当選する前記大当りが占める割合が、前記第一の遊技状態における前記当否判定によって当選する前記大当りのうちの前記第二の始動口に係る図柄変動での前記当否判定によって当選する前記大当りが占める割合よりも高くなる遊技状態であり、
H 前記第一の遊技状態に設定され、前記第一の始動口に係る図柄変動が停止し且つ前記第一の始動口に係る図柄変動が保留されていないときに、前記第二の始動口に遊技球が入賞して前記大当りに当選し、該大当りに基づく図柄の組合せが停止表示して該大当りに係る前記大当り遊技を待機している特定の場合において電断が発生し、当該電断後に復電した場合の少なくとも一部において、
I 前記演出制御手段は、
J 当該電断の発生前において前記第一の始動口への遊技球の入賞が発生しない場合、前記所定領域への遊技球の打ち出し又は前記所定領域が設けられている方向への遊技球の打ち出しを遊技者に促す右打ち表示を表示させず、
K 当該電断の発生前において前記第一の始動口への遊技球の入賞が発生した場合、前記右打ち表示を表示させ、
L 当該電断の発生前において前記第一の始動口への遊技球の入賞が発生しない場合において、図柄変動の停止中に実行させうる待機デモ演出を実行した場合、前記待機デモ演出の実行期間において前記右打ち表示を表示させず、
M 当該電断時に前記待機デモ演出が実行されているか否かに関わらず、当該電断後の復電後において、前記第一の始動口への遊技球の入賞が発生しなくても前記右打ち表示を表示させ、
N 前記点灯制御手段は、当該電断の発生前に前記点灯手段を点灯させ、更に、当該電断時に前記待機デモ演出が実行されているか否かに関わらず、当該電断後の復電後に前記点灯手段を点灯させる遊技機。」

(2)引用文献1、引用発明
ア 記載事項
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用され、本願出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2018−86157号公報(平成30年6月7日出願公開、以下「引用文献1」という。)には、には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審判合議体にて付した。以下同じ。)。

(ア)「【0016】
第1始動口21は、左打ちされた遊技球が流下する経路の途上に位置するように遊技領域20の中央領域に配置され、役連作動ゲート25、第2始動口22、第1大入賞口23、および第2大入賞口51は、右打ちされた遊技球が流下する経路の途上に位置するように遊技領域20の右領域に配置されている。また、遊技くぎや仕切り板等の規制部材(不図示)により、遊技球の流下可能な経路は規制されており、左打ちされた遊技球は、役連作動ゲート25、第2始動口22、第1大入賞口23、および第2大入賞口51へ入賞できないように規制されており、右打ちされた遊技球は、第1始動口21へ入賞できないように規制されている。このため、遊技者は、目的に応じて、第1始動口21へ遊技球を入賞させるときには左打ちを行い、第2始動口22、第1大入賞口23、第2大入賞口51へ遊技球を入賞させるときには右打ちを行うことになる。
・・・
【0030】
第1特別図柄表示器4aは、第1始動口21に遊技球が入賞することに対応して表示図柄が変動して表示される。例えば、第1特別図柄表示器4aは、7セグ表示装置で構成され、第1始動口21に遊技球が入賞した場合、第1特別図柄抽選に基づいて特別図柄を変動表示した後に停止表示してその抽選結果を表示する。また、第2特別図柄表示器4bは、第2始動口22に遊技球が入賞することに対応して表示図柄が変動して表示される。例えば、第2特別図柄表示器4bも同様に、7セグ表示装置で構成され、第2始動口22に遊技球が入賞した場合、第2特別図柄抽選に基づいて特別図柄を変動表示した後に停止表示してその抽選結果を表示する。普通図柄表示器4eは、役連作動ゲート25を遊技球が通過することに対応して表示図柄が変動して表示される。例えば、普通図柄表示器4eは、LED表示装置で構成され、遊技球が役連作動ゲート25を通過した場合、普通図柄を変動表示した後に停止表示してその抽選結果を表示する。なお、以下の説明では、第1特別図柄表示器4aにより変動表示される特別図柄(つまり、第1特別図柄抽選に基づいて変動表示される特別図柄)を第1特別図柄と称し、あるいは特1と略称し、第2特別図柄表示器4aにより変動表示される特別図柄(つまり、第2特別図柄抽選に基づいて変動表示される特別図柄)を第2特別図柄と称し、あるいは特2と略称することがある。
・・・
【0032】
遊技状態表示器4gは、例えばLED表示装置で構成され、遊技機1の電源投入時点における遊技状態(時短状態等)を表示する。右打ち表示器4hは、例えばLED表示装置で構成され、大当り遊技が行われているときや、後述する高確状態のときのように、上記した右打ちを行うと有利なときに点灯し、右打ちを行っても有利ではないとき(左打ちを行うべきとき)には消灯することで、右打ちを行うべきときを示す。」

(イ)「【0037】
図4において、遊技機1の制御装置は、メイン制御部100、発射制御部200、払出制御部300、演出制御部400、画像音響制御部500、およびランプ制御部600等を備えている。
・・・
【0039】
メイン制御部100は、第1始動口21または第2始動口22に遊技球が入賞すると特別図柄抽選(大当り抽選)を行い、特別図柄抽選で当選したか否かを示す判定結果データを演出制御部400に送る。
・・・
【0043】
メイン制御部100は、遊技の進行に応じて遊技状態を変化させ、又、遊技の進行に応じて、特別図柄抽選の当選確率、特別図柄抽選の実行間隔(特別図柄が表示器4に変動表示されて停止表示される時間と言ってもよい)、電動チューリップ27の開閉動作等を変化させる。」

(ウ)「【0055】
画像音響制御部500は、演出制御部400から送られたコマンドに基づいて、第1画像表示部6aおよび第2画像表示部6bに表示する画像およびスピーカ35から出力する音響を制御する。具体的には、画像音響制御部500のROM502には、特別図柄抽選結果を報知等するための装飾図柄等の画像(後述する装飾図柄DIや小図柄SIの画像)、予告演出や先読み予告演出を表示するためのキャラクタやアイテム等の画像、特別図柄抽選が保留されていることを示す保留画像、および各種背景画像等を、第1画像表示部6aおよび第2画像表示部6bに表示するための画像データが記憶されている。また、画像音響制御部500のROM502には、第1画像表示部6aおよび第2画像表示部6bに表示される画像と同期させて、または表示される画像とは独立に、スピーカ35から出力させる楽曲や音声等の各種音響データが記憶されている。画像音響制御部500のCPU501は、ROM502に記憶された画像データや音響データの中から、演出制御部400から送られたコマンドに対応したものを選択して読み出す。そして、CPU501は、読み出した画像データを用いて、背景画像表示、装飾図柄画像表示、およびキャラクタ/アイテム表示等のための画像処理を行って、演出制御部400から送られたコマンドに対応した各種演出表示を行う。そして、CPU501は、画像処理された画像データが示す画像を第1画像表示部6aおよび第2画像表示部6bに表示する。また、CPU501は、読み出した音響データを用いて音声処理を行い、音声処理された音響データが示す音響をスピーカ35から出力する。」

(エ)「【0060】
[本実施形態における遊技状態の概要]
次に、本実施形態における遊技機1の遊技状態について説明する。遊技機1の遊技状態としては、低確状態(通常状態)、高確状態、大当り遊技状態、小当り遊技状態が少なくとも存在する。低確状態(通常状態)は、特別図柄抽選の当選確率が通常の低確率(例えば1/150)に設定されている遊技状態であり、高確状態は、特別図柄抽選の当選確率が、低確状態よりも高確率(例えば1/70)に設定されている遊技状態である。大当り遊技状態とは、特別図柄抽選に当選して(大当りして)第2大入賞口51が開放される大当り遊技が実行されている遊技状態である。小当り遊技状態とは、特別図柄抽選において小当りに当選して第1大入賞口23が開放される小当り遊技が実行されている遊技状態である。なお、本実施形態では、低確状態であっても高確状態であっても、普通図柄抽選の実行時間(普通図柄の変動時間;例えば2.0秒)や普通図柄抽選の当選確率(例えば9/10)は同じであり、普通図柄抽選に当選した場合の電動チューリップ27の開放時間および開放回数(例えば、1.0秒間を1回)も同じである。つまり、本実施形態における遊技機1は、電動チューリップ27を備えるものの、電動チューリップ27に係る第2始動口22への遊技球入賞が容易となる、いわゆる電サポ(電チューサポート)状態を設けていない。このため、通常状態であっても高確状態であっても第2始動口22への入賞確率は変わらない。」

(オ)「【0063】
まず、図6の(1)を用いて、大当りAに当選した場合の大当り遊技について説明する。特別図柄抽選に当選して大当り遊技を実行する権利が獲得され、大当り遊技のオープニングが行われているときに、役連作動ゲート25を遊技球が通過すると、第2大入賞口51が閉状態から開状態にされて1ラウンド(以下単に「R」と記載する場合がある)目のラウンド遊技が開始される。1R目のラウンド遊技において、第2大入賞口51に遊技球が8個入賞するか開放時間が29.5秒経過すると、第2大入賞口51が開状態から閉状態にされて1R目のラウンド遊技が終了される。その後、ラウンドとラウンドとの間のインターバル期間(例えば2秒間)が設けられた後に、1R目と同様に第2大入賞口51が開放されてから2R目のラウンド遊技が開始され、第2大入賞口51が閉鎖されて2R目のラウンド遊技が終了する。同様に、インターバル期間(2秒間)を挟んで第2大入賞口51の開閉によって3R目のラウンド遊技が実行される。そして、3R目のラウンド遊技の終了後、インターバル期間(例えば、それまでの2秒間よりも長い5秒間)が設けられた後に、第2大入賞口51が閉状態から開状態にされて4R目のラウンド遊技が開始される。4R目のラウンド遊技において、第2大入賞口51に遊技球が8個入賞するか開放時間が29.5秒経過すると、第2大入賞口51が開状態から閉状態にされて4R目のラウンド遊技が終了される。ここで、V領域53は、4R目のラウンド遊技において第2大入賞口51が開状態にされてから3秒後に閉状態から開状態にされ、第2大入賞口51が閉鎖されてから所定時間経過後(例えば1秒後)に閉状態に戻る。このことから、大当り遊技の4R目のラウンド遊技において、第2大入賞口51に入った遊技球が1つ以上V領域53を通過することが可能となる。そして、V領域53を遊技球が通過することを条件に、大当り遊技後の遊技状態が高確状態に制御され、より具体的には、大当り遊技が終了してから70回転終了するまで(つまり、特別図柄抽選が70回実行されて表示器4に特別図柄が70回変動されてから停止表示されるまで)の間高確状態に制御され、その後通常状態(低確状態)に制御されることとなる。なお、4R目のラウンド遊技において遊技球の打ち出しを行わなかった等の理由により、V領域53に1つも遊技球が通過しなかった場合には、大当り遊技後の遊技状態は低確状態に制御される。4R目のラウンド遊技が終了されると、所定のエンディング時間が経過することにより大当り遊技が終了し、その後、前述したように、4R目においてV領域53を遊技球が通過したことに基づいて高確状態に制御される。」

(カ)「【0070】
[本実施形態における遊技システムの概要]
ここで、本実施形態における遊技システムの概要について説明する。前述したように、本実施形態では、電サポ状態が設けられていないため、高確状態であっても通常状態であっても同じ条件で第2始動口22へ遊技球を入賞させる(つまり、第2特別図柄抽選を始動させる)ことが可能である。しかし、詳細は後述の説明によって明らかとなるが、本実施形態では、第2特別図柄抽選に基づく変動時間(第2特別図柄の変動時間)が、通常状態のときには高確状態のときに比べて極めて長い時間(例えば、10分間)に設定されている。このため、通常状態において右打ちを行うことによって第2特別図柄抽選を始動させても、当該抽選が終了するまでに極めて長い時間を要し、遊技効率が極めて低下する。したがって、通常状態においては、遊技者は左打ちを行うことによって第1特別図柄抽選を始動させることが推奨される。このため、通常状態においては、右打ちを行うべきではない(左打ちを行うべき)ときであることを示すように、右打ち表示器4hが消灯表示される。通常状態において第1特別図柄抽選を始動させて、大当りBに当選した場合には、大当り遊技後には再度通常状態で制御される一方、大当りAに当選すると、大当り遊技後には高確状態で制御される。高確状態においては、第2特別図柄抽選に基づく変動時間は、通常状態における第1特別図柄抽選に基づく変動時間と同等である(またはより短い)ため、遊技者が右打ちを行うことによって第2特別図柄抽選を始動させても、遊技効率が低下するということはない。また、前述したように、第2特別図柄抽選に当選した場合の利益度合は、第1特別図柄抽選に当選した場合の利益度合よりも大きくなっており、かつ、第1特別図柄抽選では小当りは設けられていないのに対して、第2特別図柄抽選では小当りが頻発するように、小当り確率が高確率(1/1.6)に設定されている。このため、第2特別図柄抽選を始動させる方が遊技者にとって有利であり、したがって、高確状態においては、遊技者は右打ちを行うことによって第2特別図柄抽選を始動させることが推奨される。このため、高確状態においては、右打ちを行うべきときであることを示すように、右打ち表示器4hが点灯表示される。また、上記したように、原則として、高確状態において右打ちが行われているとき(右打ちを行うべきとき)に小当りが発生し、詳細は後述するが、小当り遊技中においては、遊技状態(高確状態)は切り替わらない。このため、小当り遊技が行われるときには、高確状態であることに基づいて、右打ち表示器4hが継続して点灯表示されることにより、右打ちを行うべきときであることが示される。高確状態において第2特別図柄抽選を始動させて大当りAまたは大当りCに当選すると、大当り遊技後には再度高確状態に制御される一方、規定の70回転の高確状態において大当りしなかった場合には、低確状態に制御されることで再び左打ちを行うことが推奨される。なお、規定の70回転の高確状態において大当りしなかった場合でも、小当りに当選することが多く、小当りに伴って規定期間(1.0秒間×1回)開放される第1大入賞口23に遊技球を入賞させることによって賞球を獲得可能であるため、遊技球を増加させることが可能となる。以上が、本実施形態における原則的な遊技システムである。」

(キ)「【0094】
[メイン制御部100による復旧処理]
図9は、図7のステップS909における復旧処理の詳細フローチャートである。まず、図9のステップS9091において、CPU101は、復旧時におけるRAM103の作業領域を設定し、処理はステップS9092に移る。
【0095】
ステップS9092において、CPU101は、RAM103の情報を参照して、電源遮断時における遊技状態や特別図柄抽選の保留数に関する情報を確認し、当該情報を含めた復旧通知コマンドを演出制御部400に対して送信する。このように、CPU101は、パチンコ遊技機1に対する電源供給が復旧したことを通知するために、電源遮断時の状態を示す復旧通知コマンドを演出制御部400へ送信する。このステップS9092の処理により、演出制御部400は、電源遮断前の遊技状態等を確認することができる。
【0096】
ステップS9093において、CPU101は、周辺部の設定を行い、処理はステップS9094に移る。」

(ク)「【0130】
なお、以上に説明した特別図柄ゲームの一連の制御時間を1つのタイマ機能を用いて計測する構成において、大当り遊技(または小当り遊技)の制御において大入賞口有効期間の直後に第1大入賞口23または第2大入賞口51への入賞を有効とみなさない大入賞口休止期間を設けてもよい。
また、第1特別図柄抽選による特別図柄変動表示および特別図柄停止表示と、第2特別図柄抽選による特別図柄変動表示および特別図柄停止表示とを並行して実行可能な制御構成にして、例えば、第1特別図柄抽選による特別図柄変動表示および特別図柄停止表示の
制御時間と、第1特別図柄抽選の当選による大当り遊技に関する制御時間とを、1つのタイマ機能を用いて計測し、一方で、第2特別図柄抽選による特別図柄変動表示および特別図柄停止表示の制御時間と、第2特別図柄抽選の当選による大当り遊技に関する制御時間とを、1つの他のタイマ機能を用いて計測してもよい。
また、特別図柄ゲームおよび普通図柄ゲームの一連の制御時間をそれぞれ1つのタイマ機能を用いて計測する際に、計測対象時間の経過を、「減算」処理ではなく、「加算」処理によって計測する構成としてもよい。この場合、例えば、特別図柄ゲーム側のタイマ(11A)の値が、計測対象時間(例えば、特別図柄停止表示の時間0.5秒)を示す時間データの値「125」に到達したか否かを判定する制御となる。
また、上記したように図12の加算変動時間の部分のテーブルにおいて同じ時間データ値を重複して記憶せずに1つだけ記憶することに加えて、図12の基本変動時間の部分のテーブルにおいても同じ時間データ値を重複して記憶せずに1つだけ記憶する構成にして、使用メモリ領域抑制の効果を更に高めてもよい。
また、以上に説明した方法により、演出制御部400等によって実行される各種演出の実行時間を計測してもよい。」

(ケ)「【0207】
[停止中処理]
ここで、図22を参照して、ステップS414における停止中処理について説明する。図22は、図14のステップS414の停止中処理の一例を示す詳細フローチャートである。
・・・
【0210】
ステップS4143において、CPU101は、遊技状態を設定する。具体的には、CPU101は、RAM103に格納された高確フラグを「OFF」に設定し、大当り遊技フラグを「ON」に設定する。ここで、大当り遊技フラグは、「ON」に設定されることにより大当り遊技中であることが示され、後述する図24のステップS627の処理により「OFF」に設定されることにより大当り遊技の終了が示される。また、CPU101は、右打ち表示器4hを点灯させる。なお、このステップS4143の処理において、上記した各種フラグの設定は、ステップS414の停止中処理が開始されてから(ステップS413の処理が終了してから)、規定の確定時間(0.5秒)が経過することで実行される。これにより、大当りを示す特別図柄が確定停止(既定の確定時間停止)すると、遊技状態が大当り遊技状態で制御される。一方、右打ち表示器4hの点灯は、ステップS414の停止中処理が開始されてから(ステップS413の処理が終了してから)、規定の確定時間(0.5秒)が経過し、さらに所定の準備期間(例えば3.0秒間)が経過することで実行される。なお、この所定の準備期間は、遊技者に、第2大入賞口51が開放される契機となる役連作動ゲート25へ遊技球を通過させるための準備となる期間であり、この準備期間が経過するまでは役連作動ゲート25を遊技球が通過しても有効な通過情報とはみなされず、第2大入賞口51は開放されない。一方、準備期間が経過するとゲート有効期間が開始され、このゲート有効期間において、役連作動ゲート25を遊技球が通過すると、有効な通過情報とみなされて、第2大入賞口51が開放される。したがって、ゲート有効期間が開始されるときに、右打ちを行うべきときである(右打ちを行うと有利である)ことが示されることになる。その後、処理はステップS4144に移る。」

(コ)「【0334】
ステップS134において、CPU401は、ステップS133で受信した客待ちコマンドおよび遊技状態通知コマンドに基づいて、画像音響制御部500等に指示して、客待ち処理を開始させる。なお、画像音響制御部500等への指示は、コマンドをRAM403にセットすることで行われる。そして、コマンド受信処理は終了し、処理は図27のステップS12に移る。なお、客待ち処理は、いわゆる客待ち状態になることを契機に開始される処理であり、客待ち処理の開始を指示された画像音響制御部500のCPU501は、例えば、報知演出の開始指示を受けるまで、この客待ち処理を実行し、報知演出の開始指示を受けることで、この客待ち処理を終了する。具体的には、CPU501は、客待ち処理の開始を指示されると、遊技状態に応じた所定の停止演出(例えば、装飾図柄が停止表示された演出)を第1画像表示部6aに表示し、この停止演出を開始してから所定時間(例えば90秒)が経過したときにCPU401から他の演出の指示を受けない場合に客待ち演出を開始する。ここで、客待ち演出(デモ演出)とは、例えば、遊技機1の題材となったコンテンツ(アニメや物語等)に関する映像を第1画像表示部6aに表示させる演出や、例えば、遊技中に実行される所定の演出(例えばリーチ演出)の一部を第1画像表示部6aに表示させる演出であり、この客待ち演出(デモ演出)によって、遊技が中断又は終了していることが示唆されるとともに、第1画像表示部6aに静止画像の焼き付き(ゴーストイメージ)が発生することが防止される。また、CPU501は、客待ち状態において役連作動ゲート25を遊技球が通過したことを示す情報や、普通入賞口に遊技球が入賞したことを示す情報を通知された場合には、客待ち処理を終了せずに継続する。」

(サ)「【0387】
[本実施形態における報知演出の画面構成例]
まず、図41を参照して、本実施形態において特別図柄の変動表示が行われるとき(報知演出がおこなわれるとき)に表示される第1画像表示部6aおよび第2画像表示部6bの演出画面の画面構成例について説明する。なお、以下の説明においては第1画像表示部6b(審決注:「6a」の誤記)をメイン画面と称し、第2画像表示部6bをサブ画面と称する。図41の(1)は、通常状態(低確状態)におけるメイン画面およびサブ画面の演出画面の画面構成例を示し、図41の(2)は、高確状態におけるメイン画面およびサブ画面の演出画面の画面構成例を示す。」

(シ)「【0439】
[通常状態において第2特別図柄抽選で大当りした場合の演出概要]
次に、図51〜図57を参照して、本実施形態において、通常状態において第2特別図柄抽選で大当りした場合に行われる演出の概要について説明する。なお、前述したように、本実施形態では、通常状態においては、左打ちを行うことによって第1特別図柄抽選を始動させることが推奨されるため、通常状態において第2特別図柄抽選で大当りするのは極めてまれであるが、このときには、第2特別図柄抽選の大当りに対する変動パターンとして図17に示す「低確特殊当り(60.0秒)」が設定される。そして、「低確特殊当り」の変動パターンに対する演出パターンとしては、特1激熱対象保留がない場合には「無報知演出パターン」が設定され、特1激熱対象保留がある場合には「入替演出パターン」が設定される(図32参照)。したがって、最初に図51〜図55を参照して、第2特別図柄抽選で大当りしたときの演出パターンが「無報知演出パターン」である(特1激熱対象保留がない)場合に行われる演出の概要について説明し、次に図56、図57を参照して、第2特別図柄抽選で大当りしたときの演出パターンが「入替演出パターン」である(特1激熱対象保留がある)場合に行われる演出の概要について説明する。なお、以下では、通常状態において大当りと判定された第2特別図柄抽選に基づく第2特別図柄の変動表示を、単に特2大当り変動といい、第1特別図柄の変動表示を、単に特1変動ということがある。
・・・
【0441】
[特2大当り変動開始時に特1変動が行われていない場合]
まず、図51を参照して、特2大当り変動開始時に特1変動が行われていない場合について説明する。図51の(1)は、特2大当り変動の変動開始から変動終了(変動停止)まで、特1変動が行われない例を示し、図51の(2)は、特2大当り変動の変動開始時および変動終了時には特1変動が行われないが、特2大当り変動の変動中に特1変動が行われる例を示し、図51の(3)は、特2大当り変動の変動中から特2大当り変動の変動終了まで特1変動が行われる例を示す。また、以下では、演出例として、適宜、図53、図54を参照して説明する。
【0442】
図51の(1)に示す例では、特1変動が行われていないとき(いわゆる客待ち状態のとき;図53の(1)参照)に、特2大当り変動が開始されても、特1変動に対応した装飾図柄DIは変動表示されないため、メイン画面において装飾図柄DIは停止表示されたまま(客待ち状態と同じ)となり、特2大当り変動の演出パターン「無報知演出パターン」に応じて報知演出は行われない(図53の(2)参照)。また、特1変動が行われていないときに特2大当り変動の変動開始および変動停止が行われるため、サブ画面においても特2大当り変動に対応した小図柄SI2は表示されない(図53の(2)参照)。そして、特2大当り変動が終了すると、役連作動ゲート25へ遊技球を通過させるための準備となる準備期間(例えば3.0秒間)が開始されるが、メイン画面においては、役連作動ゲート25へ遊技球を通過させることを促す準備演出は表示されない。なお、準備期間が経過してゲート有効期間が開始されると、右打ち表示器4hは点灯表示される。また、本実施形態では、役連作動ゲート25を遊技球が通過しない限りラウンド遊技が開始されず、また外端情報も送信されないため、大当りに当選しても、役連作動ゲート25を遊技球が通過するまでは、例えば外部カウンタ表示器による大当り表示も実行されない。そして、準備期間が経過するとゲート有効期間が開始されるが、メイン画面やサブ画面にはなんら報知演出が実行されていない(つまり、客待ち状態と同じ演出が行われている)ため、客待ち中と認識した遊技者が左打ちを行うことによって第1始動口21に遊技球が入賞すると、当該入賞を契機にメイン画面において、大当り遊技演出を開始するための準備演出が開始される(図53の(4)参照)。したがって、遊技者に対しては、第1始動口21への遊技球が入賞したことで即座に大当りしたような印象を与えることができる。そして、準備演出が実行された後には、準備演出の指示にしたがって右打ちが行われて、ゲート有効期間において遊技球が役連作動ゲート25を通過することで、オープニング期間が開始されて、その後、ラウンド遊技が開始されるとともに、メイン画面においては、オープニング演出が開始されて、その後、ラウンド演出が開始され、また、例えば外部カウンタ表示器による大当り表示が実行される。なお、ゲート有効期間が開始されてメイン画面やサブ画面にはなんら報知演出が実行されていないときに、例えば、右打ち表示器4hを認識した遊技者等が左打ちを行うことなく右打ちを行うことにより遊技球が役連作動ゲート25を通過した場合には、メイン画面においては、準備演出が行われることなくオープニング演出が開始される。
・・・
【0444】
図51の(3)に示す例では、図51の(2)に示す例と同様に、特2大当り変動の変動中に特1変動(ハズレ変動)が行われるため、特1変動が行われている間は、メイン画面において、特1変動(変動A)に対応した装飾図柄DIが変動表示される報知演出(変動演出)が行われる(図54の(1)参照)。そして、この変動Aに対応した報知演出は、変動時間が長いことにより特2大当り変動の変動終了まで行われるが、特2大当り変動の変動終了とともにハズレ図柄で強制停止される(図54の(2)参照)。また、特1変動が行われているときに特2大当り変動の変動停止が行われるため、サブ画面においては、特2大当り変動に対応した小図柄SI2が表示される(図54の(2)参照)。また、特1変動(変動A)は、特2大当り変動の変動終了に伴って強制的に変動終了されるため、強制的に終了されたことを示唆するために、サブ画面においては、特1変動(変動A)に対応した小図柄SI1も表示される(図54の(2)参照)。そして、特2大当り変動および特1変動(変動A)が終了すると、準備期間が開始されるとともに、メイン画面において大当り遊技演出を開始するための準備演出が開始される(図54の(3)参照)。つまり、この場合には、特2大当り変動の変動終了を契機に準備演出が開始される。したがって、遊技者に対しては、変動Aがハズレであったのにあたかも復活当りしたかのような印象を与えることができる。なお、準備期間が経過してゲート有効期間が開始されると、右打ち表示器4hは点灯表示され、ゲート有効期間において、遊技球が役連作動ゲート25を通過した後のオープニング演出およびラウンド演出は、図51の(1)に示す例と同様である。」

イ 認定事項
(ア)認定事項ア、イ
上記「ア 記載事項」「(ア)」の【0016】には、「役連作動ゲート25」が「第2始動口22、第1大入賞口23、および第2大入賞口51」とともに「右打ちされた遊技球が流下する経路の途上に位置するように遊技領域20の右領域に配置されている」こと、及び、「第2始動口22、第1大入賞口23、第2大入賞口51へ遊技球を入賞させるときには右打ちを行う」ことが記載されている。
これに対して、上記「ア 記載事項」「(シ)」の【0442】には、「役連作動ゲート25へ遊技球を通過させることを促す準備演出」との記載があり、これを併せてみると「遊技領域20の右領域に配置されている」「役連作動ゲート25」へ「遊技球を通過させる」ためには、「第2始動口22、第1大入賞口23、第2大入賞口51へ遊技球を入賞させるとき」と同様に「右打ちを行う」ことは明らかである。
してみると、上記【0442】の「準備演出」は、「遊技領域20の右領域に配置されている役連作動ゲート25へ遊技球を通過させる」ために「右打ちを」「促す」ものであるといえるから、引用文献1には「遊技領域20の右領域に配置されている役連作動ゲート25へ遊技球を通過させる右打ちを促す準備演出」が記載されていると認められる(認定事項ア)。
さらに、以上のことからみて、「ア 記載事項」「(ア)」の【0032】における、「右打ちを行うと有利なとき」すなわち「右打ちを行うべきとき」には、「遊技領域20の右領域に配置されて」いる「役連作動ゲート25」へ「遊技球を通過させる」ために「右打ち」を行うときが含まれると解されるから、引用文献1には、「遊技領域20の右領域に配置されている役連作動ゲート25へ遊技球を通過させる、右打ちを行うべきときを示す右打ち表示器4h」が記載されていると認められる(認定事項イ)。

(イ)認定事項ウ
上記「ア 記載事項」「(ケ)」の【0210】には、「停止中処理」に関し、「大当りを示す特別図柄が確定停止」「すると、遊技状態が大当り遊技状態で制御される。」との記載があるから、上記「ア 記載事項」「(シ)」の【0442】における、「特2大当り変動が終了すると」、「役連作動ゲート25へ遊技球を通過させるための準備となる準備期間(例えば3.0秒間)が開始される」とともに、「遊技状態が大当り遊技状態で制御される」と解される。
したがって、引用文献1には、「特2大当り変動が終了すると、遊技状態が大当り遊技状態で制御され」ることが記載されていると認められる(認定事項ウ)。

ウ 引用発明
上記「ア 記載事項」及び「イ 認定事項」によると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(符号a〜nは、本願補正発明1の構成A〜Nに対応させて合議体により付与したものである。)。

「a メイン制御部100は、第1始動口21または第2始動口22に遊技球が入賞すると特別図柄抽選(大当り抽選)を行い、第1または第2特別図柄抽選に基づいて特別図柄を変動表示した後に停止表示してその抽選結果を表示し、第1特別図柄抽選による特別図柄変動表示および特別図柄停止表示と、第2特別図柄抽選による特別図柄変動表示および特別図柄停止表示とを並行して実行可能であり(【0030】、【0039】、【0130】)、特別図柄抽選に当選して大当り遊技を実行する権利が獲得され、役連作動ゲート25へ遊技球を通過させると第2大入賞口51が閉状態から開状態にされて、1ラウンド目のラウンド遊技が開始される(【0063】)遊技機1(【0037】)であって、
b 低確状態(通常状態)、特別図柄抽選の当選確率が低確状態よりも高確率に設定されている高確状態、大当り遊技状態、小当り遊技状態が存在し、遊技の進行に応じて遊技状態を変化させるメイン制御部100(【0043】、【0060】)と、
c 右打ちを行うと有利なときに点灯し、遊技領域20の右領域に配置されている役連作動ゲート25へ遊技球を通過させる、右打ちを行うべきときを示す右打ち表示器4h(【0016】、【0032】、認定事項イ)と、
d 右打ち表示器4hを点灯させるCPU101(【0210】)と、
e、f、i 第1画像表示部6aおよび第2画像表示部6bに表示する画像およびスピーカ35から出力する音響を制御するコマンドを送る演出制御部400(【0055】)と、
g 第2特別図柄抽選に基づく変動時間が、通常状態のときには高確状態のときに比べて極めて長い時間に設定され、遊技者は左打ちを行うことによって第1特別図柄抽選を始動させることが推奨され(【0070】)、
h 通常状態において第2特別図柄抽選で大当りした場合、第1特別図柄の変動表示、すなわち、特1変動が行われていない客待ち状態のとき、第2特別図柄の変動表示、すなわち、特2大当り変動の変動開始および変動停止が行われ、停止表示し、役連作動ゲート25へ遊技球を通過させるための準備となる準備期間(例えば3.0秒間)が開始され、準備期間が経過してゲート有効期間が開始され、ゲート有効期間において、役連作動ゲート25を遊技球が通過しない限りラウンド遊技が開始されず(【0030】、【0439】、【0442】)、電源遮断時に復旧処理を行い(【0094】、【0095】)、
j、k、l 特1変動が行われていない客待ち状態のとき、特2大当り変動が終了すると、役連作動ゲート25へ遊技球を通過させるための準備となる準備期間(例えば3.0秒間)が開始され、遊技領域20の右領域に配置されている役連作動ゲート25へ遊技球を通過させる右打ちを促す準備演出は第1画像表示部6aにおいて表示されず(【0016】、【0387】、【0442】、認定事項ア)、客待ち処理が開始してから所定時間が経過したときに第1画像表示部6aにおいて客待ち状態と同じ演出が行われ(【0334】、【0442】)、特2大当り変動が終了すると、遊技状態が大当り遊技状態で制御され(【0210】、【0442】、認定事項ウ)、客待ち中と認識した遊技者が左打ちを行うことによって第1始動口21に遊技球が入賞すると、当該入賞を契機に第1画像表示部6aにおいて、遊技領域20の右領域に配置されている役連作動ゲート25へ遊技球を通過させる右打ちを促す準備演出が開始され(【0016】、【0387】、【0442】、認定事項ア)、特2大当り変動の変動中に特1変動が行われ、特2大当り変動および特1変動が終了すると、準備期間が開始されるとともに、特2大当り変動の変動終了を契機に、第1画像表示部6aにおいて大当り遊技演出を開始するための準備演出が開始され(【0387】、【0444】)、
m 復旧処理において、CPU101は、電源遮断時における遊技状態や特別図柄抽選の保留数に関する情報を確認し、当該情報を含めた復旧通知コマンドを演出制御部400に対して送信し、電源供給が復旧したことを通知し、周辺部の設定を行い(【0094】、【0095】、【0096】)、
n 特2大当り変動が終了すると、遊技領域20の右領域に配置されている役連作動ゲート25へ遊技球を通過させるための準備となる準備期間(例えば3.0秒間)が開始され、準備期間が経過してゲート有効期間が開始されると、CPU101は右打ち表示器4hを点灯表示する(【0016】、【0210】、【0442】)遊技機1(【0037】)。」

(3)引用文献2
ア 記載事項
原査定の拒絶の理由に引用文献2として引用され、本願出願前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2014−54334号公報(平成26年3月27日出願公開、以下「引用文献2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(ア)「【0027】
第1特別図柄または第2特別図柄の変動表示は、変動表示の実行条件である第1始動条件または第2始動条件が成立(たとえば、遊技球が第1始動入賞口13または第2始動入賞口14に入賞したこと)した後、変動表示の開始条件(たとえば、保留記憶数が0でない場合であって、第1特別図柄および第2特別図柄の変動表示が実行されていない状態であり、かつ、大当り図柄の導出表示から大当り遊技状態の終了までの期間内ではないこと)が成立したことに基づいて開始され、変動表示時間(変動時間)が経過すると表示結果(停止図柄)を導出表示する。なお、入賞とは、入賞口等の予め入賞領域として定められている領域を遊技球が通過したこと(遊技球が進入したこと)である。また、表示結果を導出表示するとは、図柄(識別情報の例)を最終的に停止表示させることである。」

(イ)「【0129】
また、RAM55は、その一部または全部が電源基板において作成されるバックアップ電源によってバックアップされている不揮発性記憶手段としてのバックアップRAMである。すなわち、遊技機に対する電力供給が停止しても、所定期間(バックアップ電源としてのコンデンサが放電してバックアップ電源が電力供給不能になるまで)は、RAM55の一部または全部の内容は保存される。特に、少なくとも、遊技状態すなわち遊技制御用マイクロコンピュータ560の制御状態に応じたデータ(特別図柄の可変表示状況を示す特別図柄プロセスフラグや各保留記憶数カウンタの値等)と未払出賞球数を示すデータは、バックアップRAMに保存される。遊技制御用マイクロコンピュータ560の制御状態に応じたデータとは、停電等が生じた後に復旧した場合に、そのデータに基づいて、制御状態を停電等の発生前に復旧させるために必要なデータである。本実施の形態の場合、このようにバックアップRAMに保存される遊技制御用マイクロコンピュータ560の制御状態に応じたデータ(バックアップデータ)には、大当り図柄が導出表示されてから権利発生状態が終了するまで(大当り遊技状態が開始されるまで)セットされる停止フラグ、権利発生状態に制御されているときにセットされる権利発生フラグ、大当り遊技状態に制御されているときにセットされる大当り開始フラグ、および、確変状態に制御されているときにセットされる確変フラグに関するデータが含まれている。停止フラグとは、特別図柄の表示結果として大当り図柄が導出表示されたこと、即ち所定条件が成立していることを示すフラグである。権利発生フラグとは、特別図柄の変動表示の結果大当り図柄が導出された後、所定のゲート無効期間(例えば5秒)が経過して、遊技状態を大当り遊技状態とする権利が発生したことを示すフラグである。また、制御状態に応じたデータと未払出賞球数を示すデータとを遊技の進行状態を示すデータと定義する。なお、この実施の形態では、RAM55の全部が、電源バックアップされているとする。
【0130】
従って、遊技制御用マイクロコンピュータ560は、電力供給時に実行されるメイン処理において、停止フラグを参照することにより、前回電力供給が停止したときに大当り図柄が導出表示されていたが大当り遊技状態が開始されていなかったことを確認可能である。また、権利発生フラグを参照することにより、前回電力供給が停止したときに権利発生状態であったか否かを確認することができる。また、大当り開始フラグを参照することにより、前回電力供給が停止したときに大当り遊技状態であったか否かを確認することができる。また、遊技制御用マイクロコンピュータ560は、電力供給時に実行されるメイン処理において、停止フラグがセットされているが権利発生フラグがセットされていないときには、前回電力供給が停止したときに権利発生前状態であったことを特定することができる。」

(ウ)「【0192】
次に、本実施の形態における停止フラグ、ゲート無効タイマ、権利発生フラグ、進入管理タイマ及び大当り開始フラグの管理例を、図12を参照して説明する。特別図柄の変動において大当り図柄が停止するまでの期間(期間A)は、停止フラグ、権利発生フラグ、大当り開始フラグはOFF(未セット)であり、ゲート無効タイマと進入管理タイマは0である。大当り図柄が停止すると、ゲート無効タイマが所定時間(T1)にセットされ、停止フラグがONとなる。そして、ゲート無効タイマが0となるまでの期間(期間B)は第1〜第3特別領域スイッチは無効であり、この間に遊技球が特定領域に侵入してもなにも起こらない(ゲート無効期間)。
【0193】
ここで本実施形態におけるゲート無効期間は、遊技球が送出領域スイッチ33により検出されてから、第1特定領域61、第2特定領域62、および第3特定領域63のいずれかを通過するまでに要する時間よりも長い時間(送出領域スイッチ33により検出された遊技球がいずれかの特定領域を通過したことが確定できるような時間であり、例えば5秒)に設定されているため、少なくとも大当り図柄が導出表示されたときに送出領域スイッチ33により検出されていた遊技球が、第1特定領域61、第2特定領域62、または第3特定領域63を通過したとしても、第1特定領域スイッチ61a、第2特定領域スイッチ62a、または第3特定領域スイッチ63aによる遊技球の検出は無効化されることになる。
【0194】
このように、大当り図柄が導出表示されている状態であっても(停止フラグがセットされている状態であっても)、権利発生状態でなければ大当り開始フラグがセットされず特定遊技状態には制御されない。これにより、大当り図柄の導出表示直後に、特定領域部60付近に到達していた遊技球が第1特定領域61、第2特定領域62、および第3特定領域63のいずれかを通過して直ちに大当り遊技状態に制御されてしまうことを防止することができる。本実施形態のような遊技機では、大当り図柄の導出表示後に、遊技球が特定領域を通過すること(即ち、大当り遊技状態に制御されるタイミング)を見届けるという2段階の制御によって遊技性を高めるようにしており、大当り図柄の導出表示直後に、遊技球がいずれかの特定領域を通過して大当り遊技状態に制御されてしまうことで、このような遊技性が損なわれることになる。これに対して、本実施形態では、大当り図柄の導出表示後(停止フラグがセットされてから)、所定のゲート無効期間(例えば5秒)を経た後に権利発生状態となるため、大当り図柄の導出表示直後に、遊技球がいずれかの特定領域を通過して大当り遊技状態に制御されてしまうことを防止することができる。
【0195】
なお、上記ゲート無効期間は、遊技球が発射されてから、第1特定領域61、第2特定領域62、および第3特定領域63のいずれかを通過するまでに要する時間よりも長い時間(発射された遊技球がいずれかの特定領域を通過したことが確定できるような時間であり、例えば8秒)に設定するようにしても良い。このようにすることで、遊技者が大当り図柄の導出表示を見届けてから特定領域部60へ向けて発射した遊技球、すなわち、第1特定領域61、第2特定領域62、および第3特定領域63のいずれかを通過させようと意図して発射した遊技球が、いずれの特定領域を通過するかを見届けることが可能になり、遊技性がより高められることになる。
【0196】
そして、ゲート無効期間が経過すると、権利発生フラグがセットされ、第1〜第3特別領域スイッチが有効となる(期間C)。この期間Cは、遊技球が特定領域に侵入して第1〜第3特別領域スイッチがONとなることを待ち受ける期間である。期間Cにおいて玉送出装置70の送出領域スイッチ33がONとなると(遊技球が検出されると)、遊技球を1個ずつ特定領域部60に送出するため進入管理タイマが所定時間(T2、ここでは5秒)に相当する値にセットされる。進入管理タイマが0となるまで(閉期間、図12の一点鎖線矢印)は、遮蔽部材75は閉状態となり、遊技球は玉送出装置70に進入できない。そして、遊技球が第1〜第3特定領域の何れかを通過すると、大当り開始フラグがセットされ、大当り遊技状態が開始される。
【0197】
ここで、大当り図柄が導出表示されてから大当り遊技状態に制御されるまで(特定領域を遊技球が通過するまで)の区間B又は区間Cにおいて、パチンコ遊技機1への電源供給が停止された場合には、電源供給の再開時に、停電復旧コマンドが演出制御用マイクロコンピュータ100に送信されることになる。このとき、本実施形態では、停電復旧コマンドの送信に伴い、停止フラグのセット状況を示すコマンドも送信される。区間B又は区間Cで電源供給が停止されていた場合には、停止フラグがセットされている。
【0198】
演出制御用CPU101では、受信した停止フラグのセット状況を示すコマンドを解析し、停止フラグがセットされていることを示している場合には、演出表示装置9に、例えば「クルーンを狙え!!」の文字を表示するようにして、遊技者に特定領域部60を狙って遊技球を発射させるように促す報知を実行する。このようにすることで、電源供給が再開されたときに、大当り図柄が導出表示されているが大当り遊技状態には制御されていないことを遊技者に把握させると共に、特定領域に遊技球を通過させるよう促すことで混乱を防止することができる。
【0199】
このように、遊技制御用マイクロコンピュータ560が、電力供給復旧時の初期化コマンドとしての停電復旧指定コマンドを送信する際に、停止フラグのセット状況に応じたコマンドも送信することにより、演出制御用マイクロコンピュータ100側で、電力供給が停止されたときに停止フラグがセットされていたか否か(大当り図柄は導出表示されていたが大当り遊技状態には制御されていない状態であったか否か)を把握可能であり、停止フラグがセットされていたことに基づいて、遊技者に右打ちを示唆する報知(「クルーンを狙え!!」の表示)を行うことが可能である。
【0200】
なお、この実施の形態では、ゲート無効期間は、送出領域スイッチ33により検出された遊技球がいずれかの特定領域を通過したことが確定できるような時間であり、これにより、少なくとも大当り図柄が導出表示されたときに送出領域スイッチ33により検出されていた遊技球が、いずれかの特定領域を通過したとしても、特定領域スイッチ61a〜63aによる当該遊技球の検出は無効化される例について説明したが、これに限らず、大当り図柄が導出表示されたときに送出領域スイッチ33により遊技球が検出されていた場合に、該検出されたタイミングをゲート無効期間の開始時点とするようにしても良い。このようにしても、大当り図柄が導出表示されたときに送出スイッチ33により検出されていた遊技球が、いずれかの特定領域を通過したとしても、特定領域スイッチ61a〜63aによる当該遊技球の検出は無効化される。」

(エ)「【図12】



イ 認定事項
上記「ア 記載事項」「(イ)」の【0192】には、「特別図柄の変動において大当り図柄が停止するまでの期間(期間A)」及び「ゲート無効タイマが0となるまでの期間(期間B)」と、また、【0196】には、「ゲート無効期間が経過すると、権利発生フラグがセットされ、第1〜第3特別領域スイッチが有効となる(期間C)」との記載があるが、当該「期間B」及び「期間C」に対応して、【図12】には「大当たり図柄停止」から「ゲート(特定領域)有効」の間を「期間B(ゲート無効)」と、「ゲート(特定領域)有効」から「ゲート(特定領域)に遊技球進入」の間を「期間C(検出待ち)」とすることが記載されている。
これに対して、【0197】には、「大当り図柄が導出表示されてから大当り遊技状態に制御されるまで(特定領域を遊技球が通過するまで)の区間B又は区間C」との記載があるが、区間Bと区間Cとの間の境界が示されてはいないものの、両区間を併せてみるとその始期は「大当り図柄が導出表示され」る時点であり、その終期は「特定領域を遊技球が通過」した時点であるから、それぞれ上記「期間B」の始期である「大当たり図柄停止」と、「期間C」の終期である「ゲート(特定領域)に遊技球進入」に対応しているといえる。
また、所定の時間の区切りを示す用語として、他に符号「B」及び「C」を用いていないことからみて、「区間B」は「期間B」に、「区間C」は「期間C」に、用語は異なるものの、それぞれ対応するものであるといえる。
以上のことから、「区間B」は「特定領域の無効区間」、「区間C」は「特定領域の検出待ち区間」であると認められる。
さらに、【0129】には、「停止フラグ」がセットされている期間が、「大当り図柄が導出表示されてから権利発生状態が終了するまで(大当り遊技状態が開始されるまで)」の間であることが記載されているが、【0197】の「大当り図柄が導出表示されてから大当り遊技状態に制御されるまで(特定領域を遊技球が通過するまで)の区間B又は区間C」との記載からみて、同期間の始期は「大当り図柄が導出表示され」た時点、すなわち「区間B」の始期に一致し、終期は「権利発生状態が終了」し「大当り遊技状態が開始され」た時点、すなわち「大当り遊技状態に制御されるまで」の「区間C」の終期に一致するということができる。
してみると、【0129】の「大当り図柄が導出表示されてから権利発生状態が終了するまで(大当り遊技状態が開始されるまで)」の期間は、「区間B」すなわち上記「特定領域の無効区間」、及び、「区間C」すなわち上記「特定領域の検出待ち区間」を併せた区間と同じものであると認められる。

ウ 上記「ア 記載事項」及び「イ 認定事項」からみて、引用文献2には、次の事項(以下「引用文献2記載の技術事項」という。)が記載されていると認められる。

「大当り図柄が導出表示されてから、特定領域を遊技球が通過し、大当り遊技状態に制御されるパチンコ遊技機1において(【0197】)、第1特別図柄または第2特別図柄の変動表示は、遊技球が第1始動入賞口13または第2始動入賞口14に入賞した後、保留記憶数が0でない場合であって、第1特別図柄および第2特別図柄の変動表示が実行されていない状態であり、かつ、大当り図柄の導出表示から大当り遊技状態の終了までの期間内ではないことに基づいて変動表示が開始され(【0027】)、電源供給が停止された場合に、電源供給の再開時に、電力供給時に実行されるメイン処理において、大当り図柄が導出表示されてから権利発生状態が終了するまで(大当り遊技状態が開始されるまで)の特定領域の無効区間又は特定領域の検出待ち区間でセットされる停止フラグを参照することにより、前回電力供給が停止したときに大当り図柄が導出表示されていたが大当り遊技状態が開始されていなかったことを確認し(【0129】、【0130】、【0197】、認定事項)、停止フラグがセットされている場合には、演出表示装置9に、遊技者に右打ちを示唆する報知(例えば「クルーンを狙え!!」の文字)を表示して、遊技者に特定領域部60を狙って遊技球を発射させるように促す報知を実行するパチンコ遊技機1(【0197】、【0198】、【0199】)。」

(4)対比
本願補正発明1と引用発明とを対比する。

ア 構成Aについて
引用発明の構成aの「第1始動口21」、「第2始動口22」、「遊技球が入賞すると」、「特別図柄を変動表示」、「役連作動ゲート25へ遊技球を通過させる」こと、「遊技機1」は、それぞれ本願補正発明1の構成Aの「第一の始動口」、「第二の始動口」、「遊技球の入賞に基づいて」、「図柄変動」、「所定領域に遊技球が入球又は通過をしたこと」、「遊技機」に相当する。
また、引用発明の構成aにおいて、「第1始動口21または第2始動口22に遊技球が入賞する」と、「特別図柄抽選(大当り抽選)を行い、第1または第2特別図柄抽選に基づいて特別図柄を変動表示」しているから、「遊技球の入賞」に伴う「特別図柄抽選(大当り抽選)」に対応して「特別図柄を変動表示」するので、引用発明の構成aの「特別図柄抽選(大当り抽選)を行い、第1または第2特別図柄抽選に基づいて特別図柄を変動表示」することは、本願補正発明1の構成Aの「図柄変動ごとに大当りに当選するか否かを判定する当否判定を実行」することに相当する。
さらに、引用発明の構成aの「第1特別図柄抽選による特別図柄変動表示および特別図柄停止表示と、第2特別図柄抽選による特別図柄変動表示および特別図柄停止表示とを並行して実行可能であ」ることは、本願補正発明1の構成Aの「前記第一の始動口に係る図柄変動と前記第二の始動口に係る図柄変動とを並行して実行可能であ」ることに相当する。
そして、引用発明の構成aの「特別図柄抽選に当選して大当り遊技を実行する権利が獲得され、役連作動ゲート25へ遊技球を通過させると第2大入賞口51が開放し、1ラウンド目のラウンド遊技が開始される」ことは、それにより「役連作動ゲート25」への「遊技球」の「通過」が発生するまでの間大当たり遊技が開始されないことも意味するから、本願補正発明1の構成Aの「前記大当りに当選した図柄変動の終了後に該大当りに係る大当り遊技の開始を待機させ」ること、及び、「該大当り遊技の待機中に所定領域に遊技球が入球又は通過をしたことに基づいて該大当り遊技を開始させ」ることのいずれにも相当するといえる。
したがって、引用発明の構成aは、本願補正発明1の構成Aに相当する構成を備えている。

イ 構成Bについて
引用発明の構成bの「低確状態(通常状態)」は、本願補正発明1の構成Bの「第一の遊技状態」に相当し、引用発明の構成bの「特別図柄抽選の当選確率が低確状態よりも高確率に設定されている高確状態」、「大当り遊技状態」及び「小当り遊技状態」を併せたものは、本願補正発明1の構成Bの「第一の遊技状態よりも有利な第二の遊技状態」に相当する。
また、引用発明の構成bの「遊技の進行に応じて遊技状態を変化させる」こと、「メイン制御部100」は、それぞれ本願補正発明1の構成Bの「複数の遊技状態の中から一の遊技状態を設定する」こと、「遊技状態制御手段」に相当する。
したがって、引用発明の構成bは、本願補正発明1の構成Bに相当する構成を備えている。

ウ 構成C、Dについて
引用発明の構成c、dの「点灯し」、「遊技領域20の右領域に配置されている役連作動ゲート25へ遊技球を通過させる、右打ちを行うべきとき」、「右打ち表示器4h」、「右打ち表示器4hを点灯させるCPU101」は、それぞれ本願補正発明1の構成C、Dの「点灯する」、「所定領域が設けられている方向への遊技球の打ち出しが推奨される状態」、「点灯手段」、「点灯制御手段」に相当する。
したがって、引用発明の構成c、dは、本願補正発明1の構成C、Dに相当する構成を備えている。

エ 構成E、F、Iについて
引用発明の構成e、f、iの「第1画像表示部6aおよび第2画像表示部6b」及び「スピーカ35」、「演出制御部400」は、それぞれ本願補正発明1の構成E、F、Iの「演出手段」、「演出制御手段」に相当する。
したがって、引用発明の構成e、f、iは、本願補正発明1の構成E、F、Iに相当する構成を備えている。

オ 構成Gについて
引用発明の構成gの、「通常状態」、「第1特別図柄抽選」、「第2特別図柄抽選」は、それぞれ本願補正発明1の構成Gの「第一の遊技状態」、「第一の始動口に係る図柄変動での前記当否判定」、「第二の始動口に係る図柄変動での前記当否判定」に相当する。
また、引用発明の構成gにおいて、「第2特別図柄抽選に基づく変動時間が、通常状態のときには高確状態のときに比べて極めて長い時間に設定され」、「第2特別図柄抽選」の機会が極めて少ないことから、「通常状態」においては、「第1特別図柄抽選」による大当たりの当選が「第2特別図柄抽選」による当選に比べて頻度が高くなると解される。
してみると、引用発明の構成gは、本願補正発明1の構成Gに相当する構成を備えているといえる。

カ 構成Hについて
引用発明の構成hの「通常状態」であること、「第1変動が行われていない客待ち状態」、「第2特別図柄抽選で大当り」すること、「特2大当り変動の変動開始および変動停止が行われ、停止表示」することは、それぞれ本願補正発明1の構成Hの「第一の状態に設定され」ること、「前記第一の始動口に係る図柄変動が停止し且つ前記第一の始動口に係る図柄変動が保留されていないとき」、「前記第二の始動口に遊技球が入賞して前記大当りに当選」すること、「該大当りに基づく図柄の組合せが停止表示」することに相当する。
さらに、引用発明の「準備期間」にある状態及び「ゲート有効期間において」「役連作動ゲート25を遊技球が通過しない限りラウンド遊技が開始され」ない状態において、いずれも「ラウンド遊技が開始され」ないから、本願補正発明1の構成Hの「該大当りに係る前記大当り遊技を待機」する状態に相当し、これらの構成の相当関係からみて、引用発明の構成hは、本願補正発明1の構成Hの「特定の場合」を有するといえる。
また、引用発明の構成hの「通常状態において第2特別図柄抽選で大当りした場合、特1変動が行われていない客待ち状態のとき、特2大当り変動の変動開始および変動停止が行われ」、「役連作動ゲート25へ遊技球を通過させるための準備となる準備期間(例えば3.0秒間)が開始され」た状態、及び、「準備期間が経過してゲート有効期間が開始され、ゲート有効期間において、役連作動ゲート25を遊技球が通過しない限りラウンド遊技が開始され」ない状態において、「電源遮断後に復旧処理を行」うことは、本願補正発明1の構成Hの「特定の場合」において「電断が発生し、当該電断後に復電した場合の少なくとも一部」に相当する。
してみると、引用発明の構成hは、本願補正発明1の構成Hに相当する構成を備えているといえる。

キ 構成Jについて
引用発明の構成j、k、lの「第1変動が行われていない客待ち状態のとき」、「遊技領域20の右領域に配置されている役連作動ゲート25へ遊技球を通過させる右打ちを促す準備演出」が「表示され」ないことは、それぞれ本願補正発明1の構成Jの「第一の始動口への遊技球の入賞が発生しない場合」、「所定領域への遊技球の打ち出し又は前記所定領域が設けられている方向への遊技球の打ち出しを遊技者に促す右打ち表示」を「表示させ」ないことに相当する。
また、引用発明の構成j、k、lは、電源遮断のない状態における動作に係ることが明らかであるから、本願補正発明1の構成Jの「当該電断の発生前にお」けるものであるといえる。
したがって、引用発明の構成j、k、lは、本願補正発明1の構成Jに相当する構成を備えている。

ク 構成Kについて
(ア)上記「キ」で検討したことに加え、引用発明の構成j、k、lの「第1始動口21に遊技球が入賞する」ことは、本願補正発明1の構成Kの「第一の始動口への遊技球の入賞が発生した」ことに相当し、引用発明の構成j、k、lの「遊技領域20の右領域に配置されている役連作動ゲート25へ遊技球を通過させる右打ちを促す準備演出が開始され」ることは、本願補正発明1の構成Kの「右打ち表示を表示させ」ることに相当する。

(イ)一方、引用発明の構成nにおいて、「右打ち表示器4h」は「ゲート有効期間が開始されると」「点灯表示」されるものであるのに対して、引用発明の構成j、k、lでは「第一の始動口への遊技球の入賞」を契機とする「準備演出」の開始は、「ゲート有効期間」の開始を契機とすることは特定されていない。
また、引用発明の構成j、k、lは、「特2大当り変動の変動中に特1変動が行われ、特2大当り変動および特1変動が終了した」場合をみると、「準備期間が開始されるとともに」「準備演出が開始され」るものであって、「準備期間」において「準備演出」の開始が妨げられていない。
これらのことからみて、「ゲート有効期間」のみならず、これに先立つ「遊技状態が大当り遊技状態で制御され」る「準備期間」においても、「第一の始動口への遊技球の入賞」があった場合においても、これを契機として「準備演出」が開始され得ると解することができる。
すなわち、引用発明の構成j、k、lにおいて、「準備期間」と「ゲート有効期間」のいずれにあっても、「第1始動口21に遊技球が入賞する」と「準備演出が開始され」るものであるから、引用発明の構成j、k、lは、本願補正発明1の構成Kの「前記第一の始動口への遊技球の入賞が発生した場合、前記右打ち表示を表示させ」るという構成を有しているといえる。

(ウ)さらに、仮に引用発明の構成j、k、lが、「準備期間」において「準備演出」が実行され得ないものであるとしても、少なくとも「準備期間」の満了後における「ゲート有効期間」において「準備演出」が開始されるものであることには変わりがない。
また、本願補正発明1の構成Kの「前記第一の始動口への遊技球の入賞が発生した場合、前記右打ち表示を表示させ」るという構成において、「第一の始動口への遊技球の入賞が発生」することと、「右打ち表示を表示させ」ることとの間には因果関係があるが、当該「発生」から「表示」の実行までに、所定の時間が置かれる場合を含み得るものである。
してみると、上記のように解したとしても、引用発明の構成j、k、lにおいて、「第1始動口21に遊技球が入賞する」と、「遊技領域20の右領域に配置されている役連作動ゲート25へ遊技球を通過させる右打ちを促す準備演出が開始され」ることは、本願補正発明1の構成Kの「前記第一の始動口への遊技球の入賞が発生した場合、前記右打ち表示を表示させ」という構成に相当するといえる。

(エ)したがって、引用発明の構成j、k、lは、本願補正発明1の構成Kに相当する構成を備えている。

ケ 構成Lについて
上記「キ」で検討したことに加えて、引用発明の構成j、k、lの「客待ち処理が開始してから所定時間が経過したときに」「客待ち状態と同じ演出が行われ」ることは、本願補正発明1の構成Lの「図柄変動の停止中に実行させうる待機デモ演出を実行した場合」に相当し、引用発明の構成j、k、lの「客待ち状態と同じ演出が行われ」ており、「遊技領域20の右領域に配置されている役連作動ゲート25へ遊技球を通過させる右打ちを促す準備演出は表示され」ないことは、本願補正発明1の構成Lの「前記待機デモ演出の実行期間において前記右打ち表示を前記演出表示手段に表示させ」ないことに相当する。
したがって、引用発明の構成j、k、lは、本願補正発明1の構成Lに相当する構成を備えているといえる。

コ 構成Nについて
上記「キ」で検討したことに加えて、引用発明の構成nの「CPU101」、「右打ち表示器4h」、「点灯表示する」こと、「遊技機1」は、それぞれ本願補正発明1の構成Nの「点灯制御手段」、「点灯手段」、「点灯させ」ること、「遊技機」に相当する。
したがって、引用発明の構成nと、本願補正発明1の構成Nとは、「前記点灯制御手段は、当該電断の発生前に前記点灯手段を点灯させる遊技機」である点において共通する。

(5)一致点及び相違点について
以上のとおりであるから、本願補正発明1と引用発明とは、
「A 第一の始動口または第二の始動口への遊技球の入賞に基づいて図柄変動を実行可能であり、図柄変動ごとに大当りに当選するか否かを判定する当否判定を実行し、前記第一の始動口に係る図柄変動と前記第二の始動口に係る図柄変動とを並行して実行可能であり、前記大当りに当選した図柄変動の終了後に該大当りに係る大当り遊技の開始を待機させ、該大当り遊技の待機中に所定領域に遊技球が入球又は通過をしたことに基づいて該大当り遊技を開始させる遊技機であって、
B 第一の遊技状態及び前記第一の遊技状態よりも有利な第二の遊技状態を含む複数の遊技状態の中から一の遊技状態を設定する遊技状態制御手段と、
C 点灯することによって、前記所定領域が設けられている方向への遊技球の打ち出しが推奨される状態であることを示す点灯手段と、
D 前記点灯手段を制御する点灯制御手段と、
E 演出表示手段を少なくとも含む演出手段と、
F 前記演出手段を制御する演出制御手段と、を備え、
G 前記第一の遊技状態は、前記第一の遊技状態における前記当否判定によって当選する前記大当りのうちの前記第一の始動口に係る図柄変動での前記当否判定によって当選する前記大当りが占める割合が、前記第一の遊技状態における前記当否判定によって当選する前記大当りのうちの前記第二の始動口に係る図柄変動での前記当否判定によって当選する前記大当りが占める割合よりも高くなる遊技状態であり、
H 前記第一の遊技状態に設定され、前記第一の始動口に係る図柄変動が停止し且つ前記第一の始動口に係る図柄変動が保留されていないときに、前記第二の始動口に遊技球が入賞して前記大当りに当選し、該大当りに基づく図柄の組合せが停止表示して該大当りに係る前記大当り遊技を待機している特定の場合において電断が発生し、当該電断後に復電した場合の少なくとも一部において、
I 前記演出制御手段は、
J 当該電断の発生前において前記第一の始動口への遊技球の入賞が発生しない場合、前記所定領域への遊技球の打ち出し又は前記所定領域が設けられている方向への遊技球の打ち出しを遊技者に促す右打ち表示を表示させず、
K 当該電断の発生前において前記第一の始動口への遊技球の入賞が発生した場合、前記右打ち表示を表示させ、
L 当該電断の発生前において前記第一の始動口への遊技球の入賞が発生しない場合において、図柄変動の停止中に実行させうる待機デモ演出を実行した場合、前記待機デモ演出の実行期間において前記右打ち表示を表示させず、
N’ 前記点灯制御手段は、当該電断の発生前に前記点灯手段を点灯させる遊技機。」である点において一致し、以下の点で相違する。

[相違点1](構成M)
電断時の復電後の右打ち表示に関して、本願補正発明1は、「当該電断時に前記待機デモ演出が実行されているか否かに関わらず、当該電断後の復電後において、前記第一の始動口への遊技球の入賞が発生しなくても前記右打ち表示を表示させ」るものであるのに対して、引用発明では、「電源遮断時に復旧処理を行」うものの、復旧処理後に、「役連作動ゲート25へ遊技球を通過させることを促す準備演出が開始され」ることは、特定されていない点。

[相違点2](構成N)
電断後の復電後の点灯表示手段に関して、本願補正発明1は、「当該電断の発生前に前記点灯手段を点灯させ、更に」、「当該電断時に前記待機デモ演出が実行されているか否かに関わらず、当該電断後の復電後に前記点灯手段を点灯させ」るものであるのに対して、引用発明は、電源遮断のない状態において「準備期間が経過してゲート有効期間が開始されると、CPU101は右打ち表示器4hを点灯表示する」が、「電源遮断時に復旧処理を行」うものの、「右打ち表示器4hを点灯表示する」ことは、特定されていない点。

(6)判断
上記相違点1及び2について検討する。

ア 相違点1について
引用文献2記載の技術事項における、「電源供給の再開時」、「遊技者に右打ちを示唆する報知を表示」することは、それぞれ本願補正発明1の「当該電断後の復電後」、「右打ち表示を表示する」ことに相当する。
また、引用文献2記載の技術事項において、「大当り図柄が導出表示されてから」「大当り遊技状態が開始されるまで」の間において、「特定領域の無効区間」あるいは「特定領域の検出待ち区間」のいずれであるかに関らず、「停止フラグを参照」し「前回電力供給が停止したときに大当り図柄が導出表示されていたが大当り遊技状態が開始されていなかったことを確認」するものであるから、「特定領域」における遊技球進入の「検出」がなくとも、「遊技者に右打ちを示唆する報知を実行する」ものであり、本願補正発明1の「第一の始動口への遊技球の入賞が発生しなくても」「右打ち表示を表示させ」ることに相当する構成を備えているといえる。
そして、引用発明と引用文献2記載の技術事項とは、大当たり図柄が導出表示された際に遊技者が右打ちを行うことで、大当り遊技状態が開始される遊技を含む遊技機である点において共通する。
また、引用文献2の【0198】には、同文献記載の技術事項である「遊技者に右打ちを示唆する報知」に関連し、「電源供給が再開されたときに、大当り図柄が導出表示されているが大当り遊技状態には制御されていないことを遊技者に把握させると共に、特定領域に遊技球を通過させるよう促すことで混乱を防止することができる。」との解決する課題についての記載があるが、引用発明においても、引用文献2記載の技術事項と同様に、上記の解決する課題を内在するものと解されるから、引用発明に引用文献2記載の技術事項を適用することに十分な動機付けがあるといえる。
してみると、引用発明における「電源遮断時に復旧処理を行」うに際しての制御として、上記の「電源供給の再開時」に「遊技者に右打ちを示唆する報知を実行」するという、引用文献2記載の技術事項を適用することは、当業者が容易に想到し得ることである。
さらに、引用文献2記載の技術事項は、「電源供給の再開時に」「停止フラグ」により「右打ち表示を表示させ」るものであり、かつ、当該停止フラグが「特定領域の無効区間又は特定領域の検出待ち区間」、すなわち「大当り図柄が導出表示されてから」「大当り遊技状態が開始されるまで」の間においてセットされ得るものである。
そうすると、引用発明における「待ち処理が開始してから所定時間が経過したときに第1画像表示部6aにおいて客待ち状態と同じ演出が行われ」ていたとしても、「ゲート有効期間」において「役連作動ゲート25を遊技球が通過」するまでの間に「右打ち表示」の表示が実行されることに変わりはない。
したがって、当該「客待ち状態と同じ演出が行われ」ている場合であって、「電源遮断時に復旧処理を行」うにあたっても、「停止フラグ」により「右打ち表示を表示させ」ることは当業者であれば容易に想到し得ることである。

イ 相違点2について
引用発明は、電源遮断時に遊技状態を確認し、当該情報を含めた復旧通知コマンドを演出制御部400に対して送信して周辺部の設定を行うものであるから、「電源遮断時に復旧処理を行」うに際して、「右打ち表示器4h」は、電源遮断時に準備期間中であれば同期間の満了後に点灯表示される状態に、ゲート有効期間中であれば点灯表示された状態に復旧すると解される。
したがって、引用発明の「右打ち表示器4h」は、電源遮断時の状態が準備期間中とゲート有効期間中とのいずれであっても、復旧処理「後」(電断後の復電後)に点灯表示するものであるといえる。
また、引用発明の「右打ち表示器4h」は、「ゲート有効期間が開始される」ことを条件に、「CPU101」が点灯表示するものであるから、「客待ち状態と同じ演出」とは独立して実行されると解され、電源復旧時においても、「客待ち状態と同じ演出」(待機デモ演出)の実行とは関係なく復旧処理「後」の点灯表示がなされるとみることができる。
よって、相違点2は実質的に相違点ではない。
仮に、相違点2が実質的な相違点だとしても、引用発明において、相違点2に係る本願補正発明1の構成となすことは当業者が適宜なしえたことである。

ウ 請求人の主張について
請求人は、令和3年7月5日付けの審判請求書において、次の点について主張をする。

(ア)「特定の場合において電断が発生し、当該電断後に復電した場合の少なくとも一部において、電断時に待機デモ演出が実行されているか否かに関わらず、復電後に第一の始動口への遊技球の入賞が発生しなくても「右打ち表示」が表示され、且つ、「点灯手段」が点灯される点について、請求項1に特定されているのに対して、引用文献1には開示も示唆もない。」(上記審判請求書の「3−2.」)

(イ)「引用文献2には、「大当り図柄が導出表示されてから大当り遊技状態に制御されるまで(特定領域を遊技球が通過するまで)」の期間において電断復電した場合にセットされる停止フラグに基づいて特定領域を狙うことを促す演出を実行することについては言及されているものの、引用文献2の当該期間において引用文献1に記載されている「客待ち状態」になり得ることは全く開示されておらず、これらを組み合わせたとしても、相違点1で述べたように、当該期間において電断復電した場合に「電断時に待機デモ演出が実行されているか否かに関わらず」当該演出を行うように論理付けするには、一定の飛躍があるものと思料いたします。」(上記審判請求書の「3−3.」)

(ウ)「更に、引用文献1において、電断前に第一の始動口への遊技球の入賞が発生すると準備演出(請求項1における「右打ち表示」に相当)が実行されるとする条件を、相違点1で述べたように、復電後には第一の始動口への遊技球の入賞が発生しなくても実行するように変更することの動機付けについて、引用文献2には開示も示唆もございません。」(上記審判請求書の「3−3.」)

まず、請求人の主張(ア)について検討する。
上記「(6)ア」において「準備演出」の「開始」について検討したとおり、引用発明における「電源遮断時に復旧処理を行」うに際して、引用文献2記載の技術事項を適用して「電源供給の再開時」に「遊技者に右打ちを示唆する報知を実行」するようになすこと、及び、「電源遮断時に復旧処理を行」うに際して、「客待ち状態と同じ演出が行われ」ている場合においても「右打ち表示を表示させ」ることは、当業者が容易に想到し得ることである。
また、上記「(6)イ」において「右打ち表示器4hを点灯表示する」ことについて検討したように、引用発明において、電源復旧時においても、「客待ち状態と同じ演出」(待機デモ演出)の実行とは関係なく復旧処理「後」の点灯表示がなされるものである。

次に、請求人の主張(イ)について検討する。
引用発明における「特1変動が行われていない客待ち状態」及び「客待ち状態と同じ演出が行われ」ている状態は、いずれも「通常状態において第2特別図柄抽選で大当りした場合、第1特別図柄の変動表示、すなわち、特1変動が行われていない」こと、及び、「第2特別図柄の変動表示、すなわち、特2大当り変動の変動開始および変動停止が行われ」、「停止表示し、ゲート有効期間において、役連作動ゲート25を遊技球が通過しない限りラウンド遊技が開始され」ないことを前提とするものである。
一方、引用文献2記載の技術事項は、「大当り図柄が導出表示されて」いるが、「特定領域を遊技球が通過」していない状態における、「大当り遊技状態が開始されるまで」の間の遊技機の制御に係るものであるが、同技術事項が「第1特別図柄または第2特別図柄の変動表示」を備え、かつ、「大当り図柄の導出表示から大当り遊技状態の終了までの期間内ではない」ことを変動表示の開始の条件のうちの一つとしていることからみて(【0027】)、上記の「「大当り図柄が導出表示されて」いるが、「特定領域を遊技球が通過」していない状態」は、引用発明のように「客待ち状態」とはされていないものの、新たな変動表示が行われず遊技が進行していない点において引用発明と軌を一にするものであるといえる。
また、引用文献2には明記されていないものの、遊技が進行していない状態が所定時間継続した場合に、「客待ち状態と同じ演出」が行われることは、遊技機の技術分野においては例示するまでもなく技術常識でもある。
してみると、引用文献2記載の技術事項において、「「大当り図柄が導出表示されて」いるが、「特定領域を遊技球が通過」していない状態」においては、引用発明の「客待ち状態」あるいは「客待ち状態と同じ演出」が行われる状態に相当する状態となると解されるから、「「客待ち状態」になり得ることは全く開示されて」いないとしても、そのことが引用発明に引用文献2記載の技術事項を適用することの妨げにはならない。

さらに、請求人の主張(ウ)について検討する。
引用文献2の【0198】には、同文献記載の技術事項である「遊技者に右打ちを示唆する報知」に関連し、「電源供給が再開されたときに、大当り図柄が導出表示されているが大当り遊技状態には制御されていないことを遊技者に把握させると共に、特定領域に遊技球を通過させるよう促すことで混乱を防止することができる。」との解決する課題についての記載がある。
また、上記「(6)ア」において「準備演出」の「開始」について検討したとおり、引用発明と引用文献2記載の技術事項とは、大当たり図柄が導出表示された際に遊技者が右打ちを行うことで、大当り遊技状態が開始される遊技を含む遊技機である点において共通するものである。
さらに、引用発明の「役連作動ゲート25へ遊技球を通過させることを促す準備演出」と、引用文献2記載の技術事項の「遊技者に右打ちを示唆する報知」とは、前者が電断時の発生を想定するものではなく、後者は電断時の制御に係るものであるとはいえ、いずれも遊技者に対し要時に同様の操作を促す表示を実行するものである。
してみると、引用発明においても、引用文献2記載の技術事項と同様に、上記の「電源供給が再開されたときに、大当り図柄が導出表示されているが大当り遊技状態には制御されていないことを遊技者に把握させると共に、特定領域に遊技球を通過させるよう促す」という課題を内在するものと解することができるから、引用発明に引用文献2記載の技術事項を適用することに十分な動機付けがある。

したがって、請求人の上記主張(ア)〜(ウ)は、いずれも採用することができない。

エ 小括
本願補正発明1により奏される効果は、当業者が、引用発明及び引用文献2記載の技術事項から予測し得た効果の範囲内のものであって、格別なものではない。
よって、本願補正発明1は、引用発明及び引用文献2記載の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

(7)まとめ
上記(1)〜(6)より、本願補正発明1は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものであるから、本願補正発明2について検討するまでもなく、本件補正は、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たさないものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明1及び本願発明2
本件補正は、上記のとおり却下されることとなったので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)、及び、本願の請求項2に係る発明(以下「本願発明2」という。)は、令和3年1月15日付け手続補正書の請求項1に記載された、次のとおりのものであると認める。なお、記号A等は、分説するために合議体が付した。

「【請求項1】
A 第一の始動口または第二の始動口への遊技球の入賞に基づいて図柄変動を実行可能であり、図柄変動ごとに大当りに当選するか否かを判定する当否判定を実行し、前記第一の始動口に係る図柄変動と前記第二の始動口に係る図柄変動とを並行して実行可能であり、前記大当りに当選した図柄変動の終了後に該大当りに係る大当り遊技の開始を待機させ、該大当り遊技の待機中に所定領域に遊技球が入球又は通過をしたことに基づいて該大当り遊技を開始させる遊技機であって、
B 第一の遊技状態及び前記第一の遊技状態よりも有利な第二の遊技状態を含む複数の遊技状態の中から一の遊技状態を設定する遊技状態制御手段と、
C 点灯することによって、前記所定領域が設けられている方向への遊技球の打ち出しが推奨される状態であることを示す点灯手段と、
D 前記点灯手段を制御する点灯制御手段と、
E 演出手段と、
F 前記演出手段を制御する演出制御手段と、備え、
G 前記第一の遊技状態は、前記第一の遊技状態における前記当否判定によって当選する前記大当りのうちの前記第一の始動口に係る図柄変動での前記当否判定によって当選する前記大当りが占める割合が、前記第一の遊技状態における前記当否判定によって当選する前記大当りのうちの前記第二の始動口に係る図柄変動での前記当否判定によって当選する前記大当りが占める割合よりも高くなる遊技状態であり、
H 前記第一の遊技状態に設定され、前記第一の始動口に係る図柄変動が停止し且つ前記第一の始動口に係る図柄変動が保留されていないときに、前記第二の始動口に遊技球が入賞して前記大当りに当選し、該大当りに基づく図柄の組合せが停止表示して該大当りに係る前記大当り遊技を待機している特定の場合において電断が発生し、当該電断後に復電した場合の少なくとも一部において、
J 前記演出制御手段は、当該電断の発生前に前記所定領域への遊技球の打ち出し又は前記所定領域が設けられている方向への遊技球の打ち出しを遊技者に促す第一演出を実行させず、当該電断後の復電後に前記第一演出を実行させ、
N 前記点灯制御手段は、当該電断の発生前にも当該電断後の復電後にも、前記点灯手段を点灯させる遊技機。
【請求項2】
I 前記演出制御手段は、
K 前記特定の場合において、前記第一の始動口への遊技球の入賞が発生すると前記第一演出を実行させ、更に、
P 前記特定の場合において、一般入賞口への遊技球の入賞、アウト口の遊技球の通過、又は所定の遊技操作の検知のうち少なくとも一つが発生しても前記第一演出を実行させる請求項1に記載の遊技機。」

2 原査定の拒絶の理由の概要

進歩性)この出願の請求項1、2に係る発明は、その出願前に日本国内において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特開2018−86157号公報
2.特開2014−54334号公報
3.特開2018−175328号公報

3 引用例に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1の記載事項、引用発明の認定、及び、引用文献2記載の技術事項の認定については、前記「第2[理由] 3(2)」及び同「3(3)」に記載したとおりである。

4 対比・判断
(1)本願発明1と本願補正発明1について
ア 本願発明1は、前記「第2[理由] 3(1)」で検討した本願補正発明1の「演出制御手段」及びそれによる「表示」に関し、

「I 前記演出制御手段は、
J 当該電断の発生前において前記第一の始動口への遊技球の入賞が発生しない場合、前記所定領域への遊技球の打ち出し又は前記所定領域が設けられている方向への遊技球の打ち出しを遊技者に促す右打ち表示を表示させず、
K 当該電断の発生前において前記第一の始動口への遊技球の入賞が発生した場合、前記右打ち表示を表示させ、
L 当該電断の発生前において前記第一の始動口への遊技球の入賞が発生しない場合において、図柄変動の停止中に実行させうる待機デモ演出を実行した場合、前記待機デモ演出の実行期間において前記右打ち表示を表示させず、
M 当該電断時に前記待機デモ演出が実行されているか否かに関わらず、当該電断後の復電後において、前記第一の始動口への遊技球の入賞が発生しなくても前記右打ち表示を表示させ、」と限定されていたものを、

「J 前記演出制御手段は、当該電断の発生前に前記所定領域への遊技球の打ち出し又は前記所定領域が設けられている方向への遊技球の打ち出しを遊技者に促す第一演出を実行させず、当該電断後の復電後に前記第一演出を実行させ、」と、その限定を省略するとともに、

イ 「点灯制御手段」に関し、
「当該電断の発生前に前記点灯手段を点灯させ、更に、当該電断時に前記待機デモ演出が実行されているか否かに関わらず、当該電断後の復電後に前記点灯手段を点灯させる」と限定されていたものを、

「前記点灯制御手段は、当該電断の発生前にも当該電断後の復電後にも、前記点灯手段を点灯させる」と、その限定を省くものである。

(2)構成Jについて
ここで、本願発明1の構成Jと引用発明の構成e、f、i及び構成j、k、lとを対比する。
引用発明の構成e、f、iの「演出制御部400」は、本願発明1の構成Jの「演出制御手段」に相当する。
また、引用発明の構成j、k、lの「役連作動ゲート25へ遊技球を通過させることを促す準備演出」は、本願発明1の構成Jの「所定領域への遊技球の打ち出し又は」「所定領域が設けられている方向への遊技球の打ち出しを遊技者に促す第一演出」に相当する。
さらに、引用発明の構成j、k、lにおいて、「役連作動ゲート25へ遊技球を通過させることを促す準備演出」が「第1画像表示部6aにおいて表示され」ないことは、本願発明1の構成Jにおいて、「所定領域への遊技球の打ち出し又は」「所定領域が設けられている方向への遊技球の打ち出しを遊技者に促す第一演出」を「実行させ」ないことに相当する。
さらに、引用発明の構成j、k、lは電源遮断のない状態における動作に係るものであるから、本願発明1の構成Jの「当該電断の発生前にお」けるものであるといえる。
したがって、引用発明の構成e、f、i及び構成j、k、lは、本願発明1の構成Jと「前記演出制御手段は、当該電断の発生前に前記所定領域への遊技球の打ち出し又は前記所定領域が設けられている方向への遊技球の打ち出しを遊技者に促す第一演出を実行させ」ない点において共通する。

(3)構成Nについて
上記(2)で検討したことに加えて、引用発明の構成nの「CPU101」、「右打ち表示器4h」、「点灯表示する」こと、「遊技機1」は、それぞれ本願発明1の構成Nの「点灯制御手段」、「点灯手段」、「点灯させ」ること、「遊技機」に相当する。
したがって、引用発明の構成nと、本願発明1の構成Nとは、「前記点灯制御手段は、当該電断の発生前に」「点灯手段を点灯させる遊技機」である点において共通する。

(4)一致点及び相違点について
以上のとおりであるから、本願発明1と引用発明とは、
「A 第一の始動口または第二の始動口への遊技球の入賞に基づいて図柄変動を実行可能であり、図柄変動ごとに大当りに当選するか否かを判定する当否判定を実行し、前記第一の始動口に係る図柄変動と前記第二の始動口に係る図柄変動とを並行して実行可能であり、前記大当りに当選した図柄変動の終了後に該大当りに係る大当り遊技の開始を待機させ、該大当り遊技の待機中に所定領域に遊技球が入球又は通過をしたことに基づいて該大当り遊技を開始させる遊技機であって、
B 第一の遊技状態及び前記第一の遊技状態よりも有利な第二の遊技状態を含む複数の遊技状態の中から一の遊技状態を設定する遊技状態制御手段と、
C 点灯することによって、前記所定領域が設けられている方向への遊技球の打ち出しが推奨される状態であることを示す点灯手段と、
D 前記点灯手段を制御する点灯制御手段と、
E 演出手段と、
F 前記演出手段を制御する演出制御手段と、備え、
G 前記第一の遊技状態は、前記第一の遊技状態における前記当否判定によって当選する前記大当りのうちの前記第一の始動口に係る図柄変動での前記当否判定によって当選する前記大当りが占める割合が、前記第一の遊技状態における前記当否判定によって当選する前記大当りのうちの前記第二の始動口に係る図柄変動での前記当否判定によって当選する前記大当りが占める割合よりも高くなる遊技状態であり、
H 前記第一の遊技状態に設定され、前記第一の始動口に係る図柄変動が停止し且つ前記第一の始動口に係る図柄変動が保留されていないときに、前記第二の始動口に遊技球が入賞して前記大当りに当選し、該大当りに基づく図柄の組合せが停止表示して該大当りに係る前記大当り遊技を待機している特定の場合において電断が発生し、当該電断後に復電した場合の少なくとも一部において、
J’ 前記演出制御手段は、当該電断の発生前に前記所定領域への遊技球の打ち出し又は前記所定領域が設けられている方向への遊技球の打ち出しを遊技者に促す第一演出を実行させず、
N’ 前記点灯制御手段は、当該電断の発生前に、前記点灯手段を点灯させる遊技機。」である点において一致し、以下の点で相違する。

[相違点1](構成J)
電断時の復電後の第一演出の実行に関して、本願発明1は、「当該電断後の復電後に前記第一演出を実行させ、」るものであるのに対して、引用発明では、「電源遮断時に復旧処理を行」うものの、復旧処理後に、「役連作動ゲート25へ遊技球を通過させることを促す準備演出が開始され」ることは、特定されていない点。

[相違点2](構成N)
電断後の復電後の点灯表示手段に関して、本願発明1は、「当該電断後の復電後にも、」「前記点灯手段を点灯させ」るものであるのに対して、引用発明は、「電源遮断時に復旧処理を行」うものの、「右打ち表示器4hを点灯表示する」ことは、特定されていない点。

(5)判断
上記相違点1及び2について検討する。

ア 相違点1について
引用文献2記載の技術事項における、「電源供給の再開時」、「遊技者に右打ちを示唆する報知を実行」することは、それぞれ本願発明1の「当該電断後の復電後」、「第一演出を実行させ」ることに相当する。
そして、引用発明と引用文献2記載の技術事項とは、大当たり図柄が導出表示された際に遊技者が右打ちを行うことで、大当り遊技状態が開始される遊技を含む遊技機である点において共通するから、引用発明における「電源遮断時に復旧処理を行」うに際しての制御として、上記の「電源供給の再開時」に「遊技者に右打ちを示唆する報知を実行」するという、引用文献2記載の技術事項を適用して相違点1に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

イ 相違点2について
引用発明は、電源遮断時に遊技状態を確認し、当該情報を含めた復旧通知コマンドを演出制御部400に対して送信して周辺部の設定を行うものであるから、「電源遮断時に復旧処理を行」うに際して、「右打ち表示器4h」は、電源遮断時に準備期間中であれば同期間の満了後に点灯表示される状態に、ゲート有効期間中であれば点灯表示された状態に復旧すると解される。
したがって、引用発明の「右打ち表示器4h」は、電源遮断時の状態が準備期間中とゲート有効期間中とのいずれであっても、復旧処理「後」(電断後の復電後)にも点灯表示するものであるといえる。
よって、相違点2は実質的に相違点ではない。
仮に、相違点2が実質的な相違点だとしても、引用発明において、相違点2に係る本願補正発明1の構成となすことは当業者が適宜なしえたことである。

5 むすび
上記1〜4より、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定に基いて特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-06-29 
結審通知日 2022-07-05 
審決日 2022-07-20 
出願番号 P2018-216777
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 鉄 豊郎
特許庁審判官 蔵野 いづみ
古屋野 浩志
発明の名称 遊技機  
代理人 右田 俊介  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ