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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H05K
管理番号 1388876
総通号数 10 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-07-05 
確定日 2022-09-01 
事件の表示 特願2020−145961「電子機器及び電磁波シールド性放熱シート」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 1月14日出願公開、特開2021− 5715〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2019年5月24日(優先権主張 2018年5月29日 日本国)を国際出願日として出願した特願2020−511834号の一部を令和2年8月31日に新たな出願としたものであって、同年11月20日付け拒絶理由通知に対する応答時、令和3年1月28日に意見書が提出されたが、同年4月1日付けで拒絶査定がなされた。これに対して、同年7月5日に拒絶査定不服審判の請求及び手続補正がなされ、当審による令和4年3月24日付け拒絶理由通知に対する応答時、同年5月27日に手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1ないし5に係る発明は、令和4年5月27日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】 第1の熱伝導性樹脂層と、導電層と、第2の熱伝導性樹脂層とをこの順に備え、
前記第1の熱伝導性樹脂層及び前記第2の熱伝導性樹脂層は、それぞれ、 少なくとも末端又は側鎖にビニル基を有するオルガノポリシロキサン、及び、少なくとも末端又は側鎖に2個以上のH−Si基を有するオルガノポリシロキサンを含むシリコーン樹脂成分の硬化物と、
熱伝導性フィラーと、
を含み、
前記シリコーン樹脂成分の25℃での粘度は、100mPa・s以上430mPa・s以下であり、
前記熱伝導性フィラーは、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、及び炭化珪素からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
前記熱伝導性フィラーの含有量が、前記第1の熱伝導性樹脂層及び前記第2の熱伝導性樹脂層のそれぞれに対して40〜85体積%である、電磁波シールド性放熱シート。」

3.拒絶の理由の概要
本願の請求項1に対して令和4年3月24日付けで当審が通知した拒絶理由の概要は次のとおりである。
本件出願の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載の技術事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2003−249781号公報
引用文献2:特開平9−296114号公報

4.引用文献の記載及び引用発明
(1)当審による拒絶の理由に引用された上記引用文献1(特開2003−249781号公報)には、「電磁波シールド性を有する熱伝導性シート状積層体」について、以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した)。
ア.「【請求項1】 金属で被覆処理した繊維基材シートの少なくとも片面に、熱伝導性充填材を含有した軟質樹脂層を積層した構造を有することを特徴とする電磁波シールド性のある熱伝導性シート状積層体。
・・・・(中 略)・・・・
【請求項3】 熱伝導性充填材を含有する軟質樹脂層がアクリル系重合体またはシリコーン系重合体である請求項1に記載の熱伝導性シート状積層体。」

イ.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、凹凸面への追従性がよく、各種電子機器部品からの発熱を効率よく放熱体へ伝導し、かつ良好な電磁波遮蔽特性(電磁波シールド特性)を有する熱伝導性シート状積層体に関する。」

ウ.「【0012】
【課題を解決するための手段】したがって、本発明の基本的態様に関る請求項1に記載の発明は、金属で被覆処理した繊維基材シートの少なくとも片面に、熱伝導性充填材を含有した軟質樹脂層を積層した構造を有することを特徴とする電磁波シールド性のある熱伝導性シート状積層体である。
【0013】上記の発明によれば、軟質樹脂層の存在により、対象物体(発熱体およびヒートシンク)に十分熱伝導性シート状積層体を密着させることができる。金属で被覆処理した繊維基材シートの片面のみに、熱伝導性充填材含有の軟質樹脂層を積層した熱伝導性シート状積層体の場合、繊維基材シートのメッシュ部に空気が混入するかもしれないが、繊維基材シートが対象物体に密着するので繊維基材シートの被覆金属を介して良好に熱が伝導される。また、両面に熱伝導性充填材含有の軟質樹脂層を積層した場合には、対象物体への密着性がより向上される。」

エ.「【0023】繊維基材シートへの金属の被覆方法としては、化学メッキ法(無電解メッキ法)、化学メッキ法−電解メッキ法との組み合わせ、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、導電性塗料塗布法により、金属を繊維表面に付着させることにより行われる。このなかでも、特に簡便な装置、金属の付着厚み、および生産性の点で、化学メッキ法または化学メッキ法−電解メッキ法との組み合わせによる方法が好適に用いられる。
【0024】該メッキ方により付着される金属としては、銅(Cu)、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、錫(Sn)、クロム(Cr)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)などが用いられ、これらを混合させ付着させることも何ら問題はない。このなかでも加工性、熱伝導性の点で、銅(Cu)が特に好適に使用できる。」

オ.「【0025】一方、熱伝導性充填材を含有した軟質樹脂層を構成する軟質樹脂としては、軟質樹脂をマトリックスとし、熱伝導性充填剤をフィラーとして樹脂中に均質に混入させたものであり、そのものだけでもあっても熱伝導性シートとなりうるものである。そのような樹脂としては、シリコーン系重合体、アクリル系重合体、ウレタン系重合体、エチレン−プロピレン系重合体、スチレン系重合体、イミド系重合体から選択される重合体を挙げることができる。そのなかでも加工性、性能の点で、特にアクリル系重合体、あるいはシリコーン系重合体が好適に使用される。
【0026】シリコーン系重合体としては、一分子中にビニル基とH−Si基の両方を有する一液性のシリコーン、N末端あるいは側鎖にビニル基を有するオルガノポリシロキサンと末端あるいは側鎖に2個以上のH−Si基を有するオルガノポリシロキサンとの架橋物である二液性シリコーン、あるいは熱可塑性樹脂と同様の加工が可能なミラブル型シリコーンを用いることができる。」

カ.「【0035】これらの軟質樹脂に含有される熱伝導性充填材としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、水酸化アルミニウム、アルミニウム、鉄、銀、銅等が用いられ、これらを単独あるいは複数組み合わせて使用することができる。」

キ.「【0044】以上のようにして提供される本発明の熱伝導性シート状積層体は、所定の形状に打抜裁断され、電気機器部品あるいは電子機器部品の発熱体と放熱体(シートシンク)の間に装着され、発熱体からの熱を放熱体(シートシンク)へ、効率よく伝導させ、放熱を行うことが可能となる。また、電磁波シールド特性を発揮することとなる。この場合における本発明の熱伝導性シート状積層体の装着は、軟質樹脂層側をなるべく平坦な面に装着し、次いである一定の押圧により他方の面に圧着させることにより、凹凸面に柔軟に馴染みさせ(追従させ)、その結果、有効に熱伝導性特性を発揮し得ることとなる。」

(2)上記「ア.」ないし「キ.」から以下のことがいえる。
・引用文献1に記載の「電磁波シールド性を有する熱伝導性シート状積層体」は、上記「イ.」、「キ.」の記載によれば、凹凸面への追従性がよく、各種電子機器部品からの発熱を効率よく放熱体へ伝導し、かつ良好な電磁波遮蔽特性(電磁波シールド特性)を有する熱伝導性シート状積層体に関するものである。そして、上記「ア.」の【請求項1】、「ウ.」の記載によれば、金属で被覆処理した繊維基材シートの少なくとも片面に、熱伝導性充填材を含有した軟質樹脂層を積層した構造を有し、両面に熱伝導性充填材含有の軟質樹脂層を積層した場合には、対象物体への密着性がより向上されるものである。
・上記「エ.」の記載によれば、繊維基材シートを被覆する金属としては銅(Cu)が特に好適に使用される。
・上記「ア.」の【請求項3】、「オ.」の記載によれば、熱伝導性充填材を含有した軟質樹脂層としては、シリコーン系重合体が好適に使用され、そのシリコーン系重合体としては、末端あるいは側鎖にビニル基を有するオルガノポリシロキサンと末端あるいは側鎖に2個以上のH−Si基を有するオルガノポリシロキサンとの架橋物である二液性シリコーンを用いることができる。
・上記「カ.」の記載によれば、軟質樹脂に含有される熱伝導性充填材としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム等が用いられ、これらを単独あるいは複数組み合わせて使用することができる。

(3)以上のことから、特に金属で被覆処理した繊維基材シートの両面に熱伝導性充填材含有の軟質樹脂層を積層した「電磁波シールド性を有する熱伝導性シート状積層体」であって、軟磁性樹脂層が末端あるいは側鎖にビニル基を有するオルガノポリシロキサンと末端あるいは側鎖に2個以上のH−Si基を有するオルガノポリシロキサンとの架橋物である二液性シリコーンを用いたシリコーン系重合体である場合のものに着目すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「金属(Cu)で被覆処理した繊維基材シートの両面に、熱伝導性充填材を含有した軟質樹脂層をそれぞれ積層した構造を有し、
前記熱伝導性充填材を含有した軟質樹脂層は、それぞれ、軟質樹脂層が末端あるいは側鎖にビニル基を有するオルガノポリシロキサンと末端あるいは側鎖に2個以上のH−Si基を有するオルガノポリシロキサンとの架橋物である二液性シリコーンを用いたシリコーン系重合体であり、熱伝導性充填材が酸化アルミニウム、酸化マグネシウム等を単独あるいは複数組み合わせて用いられる、電磁波シールド性を有する熱伝導性シート状積層体。」

5.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)電磁波シールド性放熱シートについて
引用発明における「金属(Cu)で被覆処理した繊維基材シート」は、金属(Cu)の被覆処理により導電性を有することは明らかであるから、本願発明でいう「導電層」に相当する。
また、金属(Cu)で被覆処理した繊維基材シートの一方の面に積層された「熱伝導性充填材を含有した軟質樹脂層」、及び金属で被覆処理した繊維基材シートの他方の面に積層された「熱伝導性充填材を含有した軟質樹脂層」は、いずれも熱伝導性充填材を含有するものであることから、それぞれ本願発明でいう「第1の熱伝導性樹脂層」、及び「第2の熱伝導性樹脂層」に相当する。
そして、引用発明における「電磁波シールド性を有する熱伝導性シート状積層体」は、本願発明でいう「電磁波シールド性放熱シート」に相当するものである。
したがって、本願発明と引用発明とは、「第1の熱伝導性樹脂層と、導電層と、第2の熱伝導性樹脂層とをこの順に備え」た「電磁波シールド性放熱シート」である点で一致する。

(2)第1及び第2の熱伝導性樹脂層について
引用発明における金属(Cu)で被覆処理した繊維基材シートのそれぞれの面に積層された「熱伝導性充填材を含有した軟質樹脂層」において、「軟質樹脂層」は、「末端あるいは側鎖にビニル基を有するオルガノポリシロキサンと末端あるいは側鎖に2個以上のH−Si基を有するオルガノポリシロキサンとの架橋物である二液性シリコーンを用いたシリコーン系重合体」であるから、本願発明でいう「少なくとも末端あるいは側鎖にビニル基を有するオルガノポリシロキサン、及び、少なくとも末端あるいは側鎖に2個以上のH−Si基を有するオルガノポリシロキサンを含むシリコーン樹脂成分の硬化物」に相当する。
また、引用発明における「熱伝導性充填材」は、本願発明でいう「熱伝導性フィラー」に相当する。
したがって、本願発明と引用発明とは、「前記第1の熱伝導性樹脂層及び前記第2の熱伝導性樹脂層は、それぞれ、少なくとも末端又は側鎖にビニル基を有するオルガノポリシロキサン、及び、少なくとも末端又は側鎖に2個以上のH−Si基を有するオルガノポリシロキサンを含むシリコーン樹脂成分の硬化物と、熱伝導性フィラーと」を含むものである点で一致する。
ただし、シリコーン樹脂成分について、本願発明では「25℃での粘度は、100mPa・s以上430mPa・s以下」であることを特定するのに対し、引用発明ではそのような特定を有していない点で相違する。

(3)熱伝導性フィラーについて
引用発明における「熱伝導性充填材」は、「酸化アルミニウム、酸化マグネシウム等を単独あるいは複数組み合わせて用いられる」ものであり、本願発明でいう「前記熱伝導性フィラーは、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、及び炭化珪素からなる群より選ばれる少なくとも1種」という条件を満たす。
ただし、その含有量について、本願発明では「前記第1の熱伝導性樹脂層及び第2の熱伝導性樹脂層のそれぞれに対して40〜85体積%」であることを特定するのに対し、引用発明ではそのような特定を有していない点で相違する。

よって上記(1)ないし(3)によれば、本願発明と引用発明とは、
「第1の熱伝導性樹脂層と、導電層と、第2の熱伝導性樹脂層とをこの順に備え、
前記第1の熱伝導性樹脂層及び前記第2の熱伝導性樹脂層は、それぞれ、 少なくとも末端又は側鎖にビニル基を有するオルガノポリシロキサン、及び、少なくとも末端又は側鎖に2個以上のH−Si基を有するオルガノポリシロキサンを含むシリコーン樹脂成分の硬化物と、
熱伝導性フィラーと、
を含み、
前記熱伝導性フィラーは、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、及び炭化珪素からなる群より選ばれる少なくとも1種である、電磁波シールド性放熱シート。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
シリコーン樹脂成分について、本願発明では「25℃での粘度は、100mPa・s以上430mPa・s以下」であることを特定するのに対し、引用発明ではそのような特定を有していない点。
[相違点2]
熱伝導性フィラーの含有量について、本願発明では「前記第1の熱伝導性樹脂層及び第2の熱伝導性樹脂層のそれぞれに対して40〜85体積%」であることを特定するのに対し、引用発明ではそのような特定を有していない点。

6.判断
上記相違点について検討する。
(1)[相違点1]について
例えば特開2006−335957号公報(以下、「引用文献3」という。)には、高分子マトリックスと熱伝導性充填材とを含有する熱伝導性成形体における高分子マトリックスについて、発熱体及び放熱体への密着性、発熱体及び放熱体の表面形状への追従性等の点からシリコーン系の高分子材料が好ましいこと、常温(25℃)での粘度は500mPa・s以下がより好ましく、実施例では25℃における粘度が400mPa・sの付加型の液状シリコーンゲルを用いたことが記載されているように(特に段落【0015】、【0021】、【0048】を参照)、発熱体等の表面形状への良好な追従性等が要求される熱伝導性成形体に用いられるシリコーン系高分子材料の25℃における粘度として、本願発明で特定する「100mPa・s以上430mPa・s以下」の範囲に含まれる400mPa・s程度のものは普通に採用されるものである。そして、引用発明における「電磁波シールド性を有する熱伝導性シート状積層体」にあっても、引用文献1の段落【0001】、【0044】に記載(上記「4.イ.」、「4.カ.」を参照)のように、凹凸面すなわち発熱体等の表面形状への良好な追従性が求められるものであり、二液性シリコーンを用いたシリコーン系重合体からなる軟質樹脂層の25℃における粘度として400mPa・s程度のものを採用し、相違点1に係る構成とすることは当業者であれば適宜なし得たことである。

ここで、審判請求人は令和4年5月27日に提出した意見書において、アスカーC硬度が15以下であれば放熱シートが特に高い柔軟性を有しているといえるところ(本願明細書の段落【0099】)、25℃での粘度が430mPa・sである樹脂成分<A−1>を用いた実施例4ではアスカーC硬度は「10」であるのに対し、25℃での粘度が1000mPa・sである樹脂成分<A−2>を用いた実施例5ではアスカーC硬度は「30」であり、さらに、添付した実験成績証明書のとおり、25℃での粘度が350mPa・sである樹脂成分<A−3>を用い、実施例4及び実施例5と同様の条件で作製した放熱シート(実験例1)ではアスカーC硬度は「8」であることから、25℃での粘度が「100mPa・s以上430mPa・s以下」である特定の樹脂成分を用いることにより、放熱シートが特に高い柔軟性を有するという効果が奏される旨主張している。
しかしながら、実施例7では、熱伝導性フィラーの含有量が上限の85体積%(樹脂成分は15体積%)のとき、25℃での粘度が350mPa・sである樹脂成分<A−3>を用いているにもかかわらず、アスカーC硬度は「36」であり、また、実施例6についても、熱伝導性フィラーの含有量が下限の40体積%(樹脂成分は60体積%)のとき、25℃での粘度が350mPa・sである樹脂成分<A−3>を用いているにもかかわらず、アスカーC硬度は「20」である。これらのことを踏まえると、上記の審判請求人が主張する実施例4、実施例5、及び実験例1における「25℃での粘度」と「アスカーC硬度」との関係は、熱伝導性フィラーの含有量が67体積%程度(樹脂成分は33体積%程度)の場合に限って言えることであるが、本願発明では、熱伝導性フィラーの含有量は「40〜85体積%」の範囲に特定されているにすぎず、67体積%程度の値に特定されているわけではない。
したがって、樹脂成分の25℃での粘度を「100mPa・s以上430mPa・s以下」の範囲に特定したとしても、熱伝導性フィラーの含有量によっては放熱シートが特に高い柔軟性を有するという効果を奏するわけではなく、審判請求人の上記主張は必ずしも特許請求の範囲(請求項1)の記載に基づいた主張であるとはいえず、採用することはできない。

(2)[相違点2]について
当審による拒絶の理由に引用された引用文献2(特開平9−296114号公報)には、付加反応型液状シリコーンゴム(末端或いは側鎖にビニル基を有するオルガノポリシロキサンと、末端或いは側鎖に2個以上のH−Si基を有するオルガノポリシロキサンとの二液性の付加反応型シリコーンの付加反応により得られたもの)と熱伝導性・絶縁性セラミックス粉末とを含むシリコーンゴム組成物の硬化物からなる放熱スペーサーにおいて、熱伝導性・絶縁性セラミックス粉末の含有量をその種類により異なるが通常40〜70vol%、好ましくは40〜60vol%の範囲が望ましいことが記載されている(特に【請求項1】、【請求項3】〜【請求項4】、段落【0008】、【0010】、【0014】、【0025】を参照)。ここで、引用文献2の放熱スペーサーと引用発明の軟質樹脂層とは、いわゆるマトリクス材が末端或いは側鎖にビニル基を有するオルガノポリシロキサンと末端或いは側鎖に2個以上のH−Si基を有するオルガノポリシロキサンとの二液性の付加反応型シリコーン組成物の硬化物である点で共通することから、引用発明においても、熱伝導性充填材の含有量を上記引用文献2に記載のように40〜70vol%程度とし、相違点2に係る構成とすることは当業者であれば容易になし得たことである。

7.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明、及び引用文献2、引用文献3にそれぞれ記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について検討するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-06-30 
結審通知日 2022-07-05 
審決日 2022-07-19 
出願番号 P2020-145961
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H05K)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 酒井 朋広
特許庁審判官 須原 宏光
井上 信一
発明の名称 電子機器及び電磁波シールド性放熱シート  
代理人 阿部 寛  
代理人 吉住 和之  
代理人 中塚 岳  
代理人 清水 義憲  
代理人 長谷川 芳樹  

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