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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 補正却下を取り消す 原査定を取り消し、特許すべきものとする  H04N
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 補正却下を取り消す 原査定を取り消し、特許すべきものとする  H04N
審判 査定不服 特174条1項 補正却下を取り消す 原査定を取り消し、特許すべきものとする  H04N
審判 査定不服 2項進歩性 補正却下を取り消す 原査定を取り消し、特許すべきものとする  H04N
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 補正却下を取り消す 原査定を取り消し、特許すべきものとする  H04N
管理番号 1389060
総通号数 10 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-10-11 
確定日 2022-09-27 
事件の表示 特願2017− 26528「符号化装置、復号装置及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成30年8月2日出願公開、特開2018−121317、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年2月16日(優先権主張 平成28年2月17日、平成29年1月26日)の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和2年11月17日付け:拒絶理由通知書
令和3年 3月23日 :意見書及び手続補正書の提出
同年 4月16日付け:拒絶理由通知書(最後)
同年 6月28日 :意見書及び手続補正書の提出
同年 7月 5日付け:補正の却下の決定及び拒絶査定
同年10月11日 :審判請求書及び手続補正書の提出
令和4年 6月24日付け:拒絶理由通知書(当審)
同年 8月17日 :意見書及び手続補正書の提出

第2 令和3年7月5日付けの補正の却下の決定の適否について
審判請求人は、審判請求書の「2.拒絶査定の要点」において、
「原査定は、この出願については令和3年4月16日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって拒絶をすべき、というものであり、令和3年6月28日付け手続補正書による補正は拒絶査定と同日付けで却下する、とされています。
具体的には、審査官殿は、補正の却下の決定において、次のように認定しています。
・・・
しかしながら、このような認定には承服しかねますので、以下において意見を述べます。」
と主張し、また、「5.むすび」において、
「上述致しましたように、令和3年6月28日付け手続補正書による補正は補正要件を満たし、且つ、本願発明は進歩性を有すると思料致します。」
と主張しており、かつ審判請求と同時に補正がなされていないことから、令和3年7月5日付けの補正の却下の決定に対して不服の申立てがあるものと認められる。
したがって、令和3年6月28日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下するとしている、令和3年7月5日付けの補正の却下の決定の適否について以下に検討する。

1 補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により補正された特許請求の範囲は、次のとおりである。なお、補正箇所に下線を付した。

「 【請求項1】
動画像を構成するフレーム単位の原画像を符号化対象ブロックに分割して符号化するように構成されている符号化装置であって、
イントラ予測モードを用いて予測画像を生成するように構成されているイントラ予測部と、
前記予測画像と原画像との差分により残差信号を生成するように構成されている残差信号生成部とを具備しており、
前記直交変換処理が適用されない場合に、前記残差信号生成部は、
前記イントラ予測部が予測画像を生成する際に、少なくとも前記符号化対象ブロックの下側の画素を参照画素として用いる場合、前記残差信号を水平方向に反転し、
前記イントラ予測部が予測画像を生成する際に、少なくとも前記符号化対象ブロックの右側の画素を参照画素として用いる場合、前記残差信号を垂直方向に反転する
ように構成されていることを特徴とする符号化装置。
【請求項2】
動画像を構成するフレーム単位の原画像を符号化対象ブロックに分割して復号するように構成されている復号装置であって、
イントラ予測モードを用いて予測画像を生成するように構成されているイントラ予測部と、
逆変換部とを具備しており、
逆直交変換処理が適用されない場合に、前記逆変換部は、
前記イントラ予測部が予測画像を生成する際に、少なくとも前記符号化対象ブロックの下側の画素を参照画素として用いる場合、エントロピー復号処理及び逆量子化処理によって得られる信号を水平方向に反転し、
前記イントラ予測部が予測画像を生成する際に、少なくとも前記符号化対象ブロックの右側の画素を参照画素として用いる場合、エントロピー復号処理及び逆量子化処理によって得られる信号を垂直方向に反転する
ように構成されていることを特徴とする復号装置。
【請求項3】
コンピュータを、請求項1に記載の符号化装置として機能させるためのプログラム。
【請求項4】
コンピュータを、請求項2に記載の復号装置として機能させるためのプログラム。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、令和3年3月23日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲は次のとおりである。

「 【請求項1】
動画像を構成するフレーム単位の原画像を符号化対象ブロックに分割して符号化するように構成されている符号化装置であって、
イントラ予測モードを用いて予測画像を生成するように構成されているイントラ予測部と、
前記予測画像と原画像との差分により残差信号を生成するように構成されている残差信号生成部とを具備しており、
直交変換処理が適用されない場合に、前記残差信号生成部は、前記対象ブロックの上側に隣接する復号済み画素ライン及び前記対象ブロックの左側に隣接する復号済み画素ラインのうちの少なくとも1つの画素を前記イントラ予測部がイントラ予測処理で参照するか否かに基づいて、前記残差信号を水平方向及び垂直方向の少なくとも一方に反転するように構成されていることを特徴とする符号化装置。
【請求項2】
前記直交変換処理が適用されない場合に、前記残差信号生成部は、
前記イントラ予測部が予測画像を生成する際に、少なくとも前記符号化対象ブロックの下側の画素を参照画素として用いる場合、前記残差信号を水平方向に反転し、
前記イントラ予測部が予測画像を生成する際に、少なくとも前記符号化対象ブロックの右側の画素を参照画素として用いる場合、前記残差信号を垂直方向に反転する
ように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の符号化装置。
【請求項3】
動画像を構成するフレーム単位の原画像を符号化対象ブロックに分割して復号するように構成されている復号装置であって、
イントラ予測モードを用いて予測画像を生成するように構成されているイントラ予測部と、
逆直交変換処理が適用されない場合に、前記対象ブロックの上側に隣接する復号済み画素ライン及び前記対象ブロックの左側に隣接する復号済み画素ラインのうちの少なくとも1つの画素を前記イントラ予測部がイントラ予測処理で参照するか否かに基づいて、エントロピー復号処理及び逆量子化処理によって得られる信号を水平方向及び垂直方向の少なくとも一方に反転することによって残差信号を生成するように構成されている逆変換部とを具備することを特徴とする復号装置。
【請求項4】
前記逆直交変換処理が適用されない場合に、前記逆変換部は、
前記イントラ予測部が予測画像を生成する際に、少なくとも前記符号化対象ブロックの下側の画素を参照画素として用いる場合、前記残差信号を水平方向に反転し、
前記イントラ予測部が予測画像を生成する際に、少なくとも前記符号化対象ブロックの右側の画素を参照画素として用いる場合、前記残差信号を垂直方向に反転する
ように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の復号装置。
【請求項5】
コンピュータを、請求項1又は2に記載の符号化装置として機能させるためのプログラム。
【請求項6】
コンピュータを、請求項3又は4に記載の復号装置として機能させるためのプログラム。」

(3)補正事項
上記(1)及び(2)から、本件補正は以下の補正事項1〜3を含むものである。
(補正事項1)補正前の請求項1、3を削除し、これに合わせて補正後の請求項3が請求項1のみ、補正後の請求項4が請求項2のみを引用するように引用関係を整理する補正。
(補正事項2)補正前の請求項2について、請求項2が引用する請求項1における「直交変換処理が適用されない場合に、前記残差信号生成部は、前記対象ブロックの上側に隣接する復号済み画素ライン及び前記対象ブロックの左側に隣接する復号済み画素ラインのうちの少なくとも1つの画素を前記イントラ予測部がイントラ予測処理で参照するか否かに基づいて、前記残差信号を水平方向及び垂直方向の少なくとも一方に反転する」を削除し、補正後の請求項1とする補正。
(補正事項3)補正前の請求項4について、請求項4が引用する請求項3における「逆直交変換処理が適用されない場合に、前記対象ブロックの上側に隣接する復号済み画素ライン及び前記対象ブロックの左側に隣接する復号済み画素ラインのうちの少なくとも1つの画素を前記イントラ予測部がイントラ予測処理で参照するか否かに基づいて、エントロピー復号処理及び逆量子化処理によって得られる信号を水平方向及び垂直方向の少なくとも一方に反転することによって残差信号を生成するように構成されている」を削除し、当該削除した記載における残差信号に係る記載である「エントロピー復号処理及び逆量子化処理によって得られる信号」で「前記残差信号」を置き換え、補正後の請求項2とする補正。

2 令和3年7月5日付けの補正の却下の決定の概要
令和3年7月5日付けの補正の却下の決定の概要は、次のとおりである。

令和3年6月28日付けの手続補正は、補正後の請求項1において、補正前の請求項1に記載されていた「直交変換処理が適用されない場合に、前記残差信号生成部は、前記対象ブロックの上側に隣接する復号済み画素ライン及び前記対象ブロックの左側に隣接する復号済み画素ラインのうちの少なくとも1つの画素を前記イントラ予測部がイントラ予測処理で参照するか否かに基づいて、前記残差信号を水平方向及び垂直方向の少なくとも一方に反転するように構成されている」という事項を削除する補正を含むものである。
しかしながら、このような、発明特定事項を削除する補正は、特許請求の範囲の減縮(特許法第17条の2第5項第2号)、明瞭でない記載の釈明(特許法第17条の2第5項第4号)には該当しない。
また、当該補正は、請求項の削除(特許法第17条の2第5項第1号)、誤記の訂正(特許法第17条の2第5項第3号)を目的とするものでもない。
また、以上の点は、補正後の請求項2〜4についても同様である。
よって、この補正は、特許法第17条の2第5項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当せず、同法第17条の2第5項の規定に違反するものであるから、同法第53条第1項の規定により、令和3年6月28日付け手続補正書でした明細書、特許請求の範囲又は図面についての補正は却下する。

3 補正の却下の決定の適否についての検討
補正事項1は、特許法第17条の2第5項第1号に掲げる特許請求の範囲の削除を目的とするものに該当する。

補正事項2について検討するに、令和3年4月16日付けの最後の拒絶理由通知書の「●理由3(明確性)について」には、以下のとおり記載されている。
「・請求項 1〜6
請求項1には、「直交変換処理が適用されない場合に、前記残差信号生成部は、前記対象ブロックの上側に隣接する復号済み画素ライン及び前記対象ブロックの左側に隣接する復号済み画素ラインのうちの少なくとも1つの画素を前記イントラ予測部がイントラ予測処理で参照するか否かに基づいて、前記残差信号を水平方向及び垂直方向の少なくとも一方に反転するように構成されている」と記載されている。
しかしながら、該記載では、「前記対象ブロックの上側に隣接する復号済み画素ライン及び前記対象ブロックの左側に隣接する復号済み画素ラインのうちの少なくとも1つの画素を前記イントラ予測部がイントラ予測処理で参照するか否か」と「残差信号を水平方向及び垂直方向の少なくとも一方に反転する」ことの間の技術的関係が不明確であり、「前記対象ブロックの上側に隣接する復号済み画素ライン及び前記対象ブロックの左側に隣接する復号済み画素ラインのうちの少なくとも1つの画素を前記イントラ予測部がイントラ予測処理で参照するか否か」の判断結果がどのような場合に、「残差信号」を水平方向及び垂直方向のどちらに反転するのかが不明確である。
また、以上の点は、請求項2〜6においても同様に不明確である。」

すなわち、令和3年4月16日付けの最後の拒絶理由通知書においては、「直交変換処理が適用されない場合に、前記残差信号生成部は、前記対象ブロックの上側に隣接する復号済み画素ライン及び前記対象ブロックの左側に隣接する復号済み画素ラインのうちの少なくとも1つの画素を前記イントラ予測部がイントラ予測処理で参照するか否かに基づいて、前記残差信号を水平方向及び垂直方向の少なくとも一方に反転するように構成されている」という記載が不明確である旨を指摘しており、この理由を解消するために、補正事項2により、不明確な記載であった「直交変換処理が適用されない場合に、前記残差信号生成部は、前記対象ブロックの上側に隣接する復号済み画素ライン及び前記対象ブロックの左側に隣接する復号済み画素ラインのうちの少なくとも1つの画素を前記イントラ予測部がイントラ予測処理で参照するか否かに基づいて、前記残差信号を水平方向及び垂直方向の少なくとも一方に反転する」を削除したのだから、補正事項2は特許法第17条の2第5項第4号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当するものといえる。

補正事項3も補正事項2と同様に、令和3年4月16日付けの最後の拒絶理由通知書において指摘された記載不備を解消するためのものであり、特許法第17条の2第5項第4号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当するものといえる。

したがって、本件補正は特許法第17条の2第5項第1号に掲げる特許請求の範囲の削除、及び、同法第17条の2第5項第4号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。

4 補正の却下の決定の適否についてのむすび
以上のとおりであるから、本件補正は特許法第17条の2第5項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当せず、同法第17条の2第5項の規定に違反するものであるから、同法第53条第1項の規定により却下するとした、令和3年7月5日付けの補正の却下の決定の判断は妥当なものではない。
よって、本件補正についてなされた、令和3年7月5日付けの補正の却下の決定を取り消す。

第3 本件発明について
本願の請求項1〜4に係る発明は、令和4年8月17日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。
そして、本願については、原査定及び当審の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-09-12 
出願番号 P2017-026528
審決分類 P 1 8・ 537- WYA (H04N)
P 1 8・ 57- WYA (H04N)
P 1 8・ 55- WYA (H04N)
P 1 8・ 113- WYA (H04N)
P 1 8・ 121- WYA (H04N)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 畑中 高行
特許庁審判官 新井 寛
川崎 優
発明の名称 符号化装置、復号装置及びプログラム  
代理人 弁理士法人キュリーズ  

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