ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L 審判 査定不服 特174条1項 取り消して特許、登録 H01L 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01L 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H01L |
---|---|
管理番号 | 1389076 |
総通号数 | 10 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2022-10-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-10-18 |
確定日 | 2022-10-11 |
事件の表示 | 特願2019−544902「金フリーコンタクトを有する窒化物構造及びそのような構造を形成する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 8月30日国際公開、WO2018/156375、令和 2年 3月19日国内公表、特表2020−508574、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2018年(平成30年)2月13日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2017年2月21日(以下、「本願の優先日」という。)(US)米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和 2年 9月25日付け:拒絶理由通知書 令和 2年12月 4日 :手続補正書、意見書の提出 令和 3年 6月25日付け:拒絶査定 令和 3年10月18日 :手続補正書、審判請求書の提出 令和 4年 5月25日付け:拒絶理由通知書 令和 4年 7月13日 :手続補正書、意見書の提出 第2 本願発明 本願請求項1〜12に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」〜「本願発明12」という。)は、令和4年7月13日にされた手続補正後の特許請求の範囲の請求項1〜12に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 III族−N半導体層と、 前記III族−N半導体層とオーミックコンタクトしたソース電極構造及びドレイン電極構造と、 前記ソース電極構造と前記ドレイン電極構造との間に配置され、前記III族−N半導体層と接触したゲート電極構造と を有し、 前記ソース電極構造、前記ドレイン電極構造及び前記ゲート電極構造は各々、金フリーの電気コンタクト構造と、該電気コンタクト構造上の金フリーの電極コンタクトとを有し、各電極コンタクトが同様の材料であり、 前記ソース電極構造、前記ドレイン電極構造及び前記ゲート電極構造の前記電極コンタクトの各々が、前記電気コンタクト構造上に配置されたライナと、該ライナ上に配置された導電性材料とを有し、前記導電性材料の底面及び側壁が前記ライナで覆われている、 半導体構造。 【請求項2】 前記ドレイン電極構造の前記電極コンタクト、前記ソース電極構造の前記電極コンタクト、及び前記ゲート電極構造の前記電極コンタクトは、共平面の上面を有する、請求項1に記載の半導体構造。 【請求項3】 III族−N半導体層と、 前記III族−N半導体層とオーミックコンタクトしたソース電極構造及びドレイン電極構造と、 前記ソース電極構造と前記ドレイン電極構造との間に配置され、前記III族−N半導体層と接触したゲート電極構造と を有し、 前記ソース電極構造、前記ドレイン電極構造及び前記ゲート電極構造は各々、金フリーの電気コンタクト構造と、該電気コンタクト構造上の金フリーの電極コンタクトとを有し、前記電極コンタクトが共平面の上面を有し、 前記ソース電極構造、前記ドレイン電極構造及び前記ゲート電極構造の前記電極コンタクトの各々が、前記電気コンタクト構造上に配置されたライナと、該ライナ上に配置された導電性材料とを有し、前記導電性材料の底面及び側壁が前記ライナで覆われている、 半導体構造。 【請求項4】 III族−N半導体層と、 前記III族−N半導体層とオーミックコンタクトしたソース電極構造及びドレイン電極構造と、 前記ソース電極構造と前記ドレイン電極構造との間で前記III族−N半導体層の上に配置されたゲート電極構造と を有し、 前記ソース電極構造、前記ドレイン電極構造及び前記ゲート電極構造は各々、金フリーの電気コンタクト構造と、該電気コンタクト構造上の金フリーの電極コンタクトとを有し、各電極コンタクトが同様の材料であり、 前記ドレイン電極構造の前記電極コンタクト、前記ソース電極構造の前記電極コンタクト、及び前記ゲート電極構造の前記電極コンタクトの各々が、前記電気コンタクト構造上に配置されたライナと、該ライナ上に配置された導電性材料とを有し、前記導電性材料の底面及び側壁が前記ライナで覆われている、 半導体構造。 【請求項5】 前記ゲート電極構造は、前記III族−N半導体層と直に接触している、請求項4に記載の半導体構造。 【請求項6】 前記ドレイン電極構造の前記電極コンタクト、前記ソース電極構造の前記電極コンタクト、及び前記ゲート電極構造の前記電極コンタクトは、共平面の上面を有する、請求項4又は5に記載の半導体構造。 【請求項7】 前記ドレイン電極構造の前記電気コンタクト構造及び前記ソース電極構造の前記電気コンタクト構造は各々、 前記III族−N半導体層と接触した金フリーコンタクト層と、 前記金フリーコンタクト層上に配置され、前記金フリーコンタクト層に電気的に接続された金フリーの導電性のエッチング停止層と、 を有する多層電気コンタクト構造である、 請求項4乃至6のいずれか一項に記載の半導体構造。 【請求項8】 前記多層電気コンタクト構造は、前記金フリーコンタクト層の上に配置されたアルミニウムベースの層を含む、請求項7に記載の半導体構造。 【請求項9】 前記金フリーコンタクト層は、前記III族−N半導体層と直に接触しており、前記金フリーコンタクト層及び前記アルミニウムベースの層は、660度未満の温度で前記III族−N半導体層とともにアニールすることで前記III族−N半導体層とのオーミックコンタクトを形成することが可能な物理的アニーリング特性を有する、請求項8に記載の半導体構造。 【請求項10】 前記金フリーコンタクト層は金属シリサイドを有し、該金属シリサイドが前記III族 −N半導体層とオーミックコンタクトしている、請求項7に記載の半導体構造。 【請求項11】 半導体構造を形成する方法であって、 III族−N半導体層を設け、金フリーのソース電気コンタクト構造及び金フリーのドレイン電気コンタクト構造が前記III族−N半導体層とオーミックコンタクトし、前記ソース電気コンタクト構造とドレイン電気コンタクト構造との間に配置される金フリーのゲート電気コンタクト構造が前記III族−N半導体層と接触し、 複数の金フリーの電極コンタクトを同時に形成し、前記複数の金フリーの電極コンタクトの各々が、前記ソース電気コンタクト構造、前記ドレイン電気コンタクト構造及び前記ゲート電気コンタクト構造のうちの対応する1つの上に形成されて該1つに電気的に接続される、 ことを有し、 前記電極コンタクトの各々が、前記ソース電気コンタクト構造、前記ドレイン電気コンタクト構造及び前記ゲート電気コンタクト構造のうちの対応する1つの上に形成されたライナと、該ライナ上に形成された導電性材料とを有し、前記導電性材料の底面及び側壁が前記ライナに接する、 方法。 【請求項12】 前記複数の電極コンタクトは、共平面の上面を有して形成される、請求項11に記載の方法。」 第3 原査定の拒絶の理由 原査定(令和3年6月25日付け拒絶査定)の拒絶の理由の概要は、以下のとおりである。 1 本願の請求項1〜9、11〜12に係る発明は、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 2 本願の請求項1〜9、11〜12に係る発明は、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 3 本願の請求項1〜9、11〜12に係る発明は、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献2に記載された発明及び引用文献3に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 4 本願の請求項10に係る発明は、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1又は2に記載された発明及び引用文献3〜5に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開2013−201370号公報 2.国際公開第2014/097524号 3.特開2010−147254号公報 4.特表2009−524242号公報 5.特開2010−192771号公報 第4 引用文献、引用発明等 1 引用文献1について (1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、次の記載がある(下線は当審による。)。 「【技術分野】 【0001】 本発明の実施形態は、窒化物半導体装置およびその製造方法に関する。」 「【0010】 (第1実施形態) 図1は、第1実施形態に係る窒化物半導体装置の模式図であり、(a)は、平面模式図、(b)は、(a)のX−Y位置における断面模式図である。 【0011】 第1実施形態に係る窒化物半導体装置1は、Si基板10等の下地層と、下地層の上に設けられ、窒化物半導体を含む半導体積層体15と、半導体積層体15の上に設けられ、半導体積層体15に接するソース電極40およびドレイン電極50と、半導体積層体15の上に設けられ、ソース電極40とドレイン電極50とのあいだに設けられたゲート電極30と、を備える。 【0012】 半導体積層体15は、バッファ層11と、バッファ層11の上に設けられたキャリア走行層12と、キャリア走行層12の上に設けられた障壁層13と、を有する。 ・・・ 【0014】 窒化物半導体装置1においては、Si基板10上にバッファ層11が設けられている。バッファ層11上には、GaN層を含むキャリア走行層12が設けられている。キャリア走行層12上には、障壁層13が設けられている。障壁層13は、ノンドープもしくはn形のAlXGa1−XN(0<X≦1)層またはInYAl1−YN(0<Y≦1)層、または、ノンドープもしくはn形のAlXGa1−XN(0<X≦1)層と、InYAl1−YN(0<Y≦1)層と、の混合物、または、ノンドープもしくはn形のAlXGa1−XN(0<X≦1)層と、InYAl1−YN(0<Y≦1)層と、の積層体、のいずれかである。障壁層13の膜厚は5nmから40nm程度が望ましい。キャリア走行層12内のキャリア走行層12と障壁層13の界面付近には二次元電子系12eが発生する。 【0015】 障壁層13上には、ゲート絶縁膜20が設けられている。ゲート絶縁膜20の材質は、窒化珪素膜(Si3N4)、酸化珪素膜(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)のいずれかである。ゲート絶縁膜20上には、ゲート電極30が設けられている。また、窒化物半導体装置1においては、ゲート電極30の他に、障壁層13とオーミック性接続されるソース電極40と、障壁層13とオーミック性接続されるドレイン電極50とが設けられている。 【0016】 ゲート電極30は、ゲート絶縁膜20と直接接触しているゲートメタル層30aと、バリアメタル層30bと、配線層30c、30dと、を含む。配線層は、配線層30cと配線層30dの2層で構成されている。 【0017】 ゲートメタル層30aの材質は、Ni、Ti、TiN、TiW、TaN、W等の群から選択される少なくとも1つ、もしくは、Ni、Ti、TiN、TiW、TaN、W等の群から選択される少なくとも1つにSiを添加した混合物である。バリアメタル層30bの材質は、Ti、TiN、TiW,TaN等の群から選択される少なくとも1つのメタル層、もしくは、Ti、TiN、TiW,TaN等の群から選択される少なくとも1つにSiを添加した混合物である。配線層30cの材質は、Ti、Ta、Mo等のいずれかである。配線層30dは、Al、AlSi、AlSiCu、AlCu等のいずれかである。ゲートメタル層30aの組成とバリアメタル層30bの組成とが同じであってもよい。 【0018】 ソース電極40は、コンタクト層40a(第1コンタクト層40a)と、Alを含むメタル層40b(第1メタル層40b)と、を含む。ソース電極40の一部の下には、バリアメタル層40c(第1バリアメタル層40c)が設けられている。コンタクト層40aとAlを含むメタル層40bとは、図中では、2層に分かれているものの、徐々に組成の変わる一体の層構造でもよい。 【0019】 コンタクト層40aの材質は、Ti、Ta、Mo等のいずれかである。Alを含むメタル層40bの材質は、Al、AlSi、AlSiCu、AlCu等のいずれかである。バリアメタル層40cの材質は、Ti、TiN、TiW,TaN等のいずれかである。 【0020】 ドレイン電極50は、コンタクト層50a(第2コンタクト層50a)と、Alを含むメタル層50b(第2メタル層50b)と、を含む。ドレイン電極50の一部の下には、バリアメタル層50c(第2バリアメタル層50c)が設けられている。コンタクト層50aとAlを含むメタル層50bとは、図中では、2層に分かれているものの、徐々に組成の変わる一体の層構造でもよい。 【0021】 コンタクト層50aの材質は、Ti、Ta、Mo等のいずれかである。Alを含むメタル層50bの材質は、Al、AlSi、AlSiCu、AlCu等のいずれかである。バリアメタル層50cの材質は、Ti、TiN、TiW,TaN等のいずれかである。 【0022】 また、コンタクト層40a、50aと、ゲート電極30の配線層30cと、は同じ組成且つ同じ膜厚であり、メタル層40b、50bと、ゲート電極30の配線層30dと、は同じ組成且つ同じ膜厚である。」 「【図1】 」 (2)引用文献1の記載事項 ア 上記(1)の【0001】に、「本発明の実施形態は、窒化物半導体装置およびその製造方法に関する」と記載されているから、引用文献1の記載は、「窒化物半導体装置」に関するものであるといえる。 イ 同【0011】には、「第1実施形態に係る窒化物半導体装置1は、Si基板10等の下地層と、下地層の上に設けられ、窒化物半導体を含む半導体積層体15と、半導体積層体15の上に設けられ、半導体積層体15に接するソース電極40およびドレイン電極50と、半導体積層体15の上に設けられ、ソース電極40とドレイン電極50とのあいだに設けられたゲート電極30と、を備える」と記載されているから、「窒化物半導体装置」は、「半導体積層体15」と、「ソース電極40」と、「ドレイン電極50」と、前記「ソース電極40」及び前記「ドレイン電極50」の間に設けられた「ゲート電極30」と、を含む。 ウ 同【0012】には、「半導体積層体15は、バッファ層11と、バッファ層11の上に設けられたキャリア走行層12と、キャリア走行層12の上に設けられた障壁層13と、を有する」と記載されているから、「窒化物半導体装置」の「半導体積層体15」は、「障壁層13」を含む。 エ 同【0014】には、「障壁層13は、ノンドープもしくはn形のAlXGa1−XN(0<X≦1)層またはInYAl1−YN(0<Y≦1)層、または、ノンドープもしくはn形のAlXGa1−XN(0<X≦1)層と、InYAl1−YN(0<Y≦1)層と、の混合物、または、ノンドープもしくはn形のAlXGa1−XN(0<X≦1)層と、InYAl1−YN(0<Y≦1)層と、の積層体、のいずれかである」と記載されているから、「窒化物半導体装置」の「障壁層13」は、「AlXGa1−XN(0<X≦1)層」である。 オ 同【0015】には、「障壁層13上には、ゲート絶縁膜20が設けられている」、及び、「ゲート絶縁膜20上には、ゲート電極30が設けられている」と記載されているから、「窒化物半導体装置」の「障壁層13」は、「ゲート絶縁膜20」に接し、「ゲート絶縁膜20」は「ゲート電極20」に接する。 カ 同【0015】には、「また、窒化物半導体装置1においては、ゲート電極30の他に、障壁層13とオーミック性接続されるソース電極40と、障壁層13とオーミック性接続されるドレイン電極50とが設けられている」と記載されているから「窒化物半導体装置」の「ソース電極40」及び「ドレイン電極50」は「障壁層13」に接する。 キ 同【0016】には、「ゲート電極30は、ゲート絶縁膜20と直接接触しているゲートメタル層30aと、バリアメタル層30bと、配線層30c、30dと、を含む。配線層は、配線層30cと配線層30dの2層で構成されている。」と記載され、同【0017】には、「ゲートメタル層30aの材質は、Ni、Ti、TiN、TiW、TaN、W等の群から選択される少なくとも1つ、もしくは、Ni、Ti、TiN、TiW、TaN、W等の群から選択される少なくとも1つにSiを添加した混合物である。バリアメタル層30bの材質は、Ti、TiN、TiW,TaN等の群から選択される少なくとも1つのメタル層、もしくは、Ti、TiN、TiW,TaN等の群から選択される少なくとも1つにSiを添加した混合物である。配線層30cの材質は、Ti、Ta、Mo等のいずれかである。配線層30dは、Al、AlSi、AlSiCu、AlCu等のいずれかである。ゲートメタル層30aの組成とバリアメタル層30bの組成とが同じであってもよい。」と記載されているから、「窒化物半導体装置」の「ゲート電極30」は、「ゲートメタル層30a」と、「バリアメタル層30b」と、「配線層30c」と、「配線層30d」と、を含み、前記「ゲートメタル層30a」の材質は、Niであり、前記「バリアメタル層30b」の材質は、前記「ゲートメタル層30a」と同じであり、前記「配線層30c」の材質は、Tiであり、前記「配線層30d」の材質は、Alである、といえる。 ク 同【0018】には、「ソース電極40は、コンタクト層40a(第1コンタクト層40a)と、Alを含むメタル層40b(第1メタル層40b)と、を含む。ソース電極40の一部の下には、バリアメタル層40c(第1バリアメタル層40c)が設けられている。」と記載されており、同【0019】には、「コンタクト層40aの材質は、Ti、Ta、Mo等のいずれかである。Alを含むメタル層40bの材質は、Al、AlSi、AlSiCu、AlCu等のいずれかである。バリアメタル層40cの材質は、Ti、TiN、TiW,TaN等のいずれかである。」と記載されているから、「窒化物半導体装置」の「ソース電極40」は、「コンタクト層40a」と、「メタル層40b」と、「バリアメタル層40c」とを含み、前記「コンタクト層40a」の材質は、Tiであり、前記「メタル層40b」の材質は、Alであり、前記「バリアメタル層40c」の材質は、Tiである、といえる。 ケ 同【0020】には、「ドレイン電極50は、コンタクト層50a(第2コンタクト層50a)と、Alを含むメタル層50b(第2メタル層50b)と、を含む。ドレイン電極50の一部の下には、バリアメタル層50c(第2バリアメタル層50c)が設けられている。」と記載されており、同【0021】には、「コンタクト層50aの材質は、Ti、Ta、Mo等のいずれかである。Alを含むメタル層50bの材質は、Al、AlSi、AlSiCu、AlCu等のいずれかである。バリアメタル層50cの材質は、Ti、TiN、TiW,TaN等のいずれかである。」と記載されているから、「窒化物半導体装置」の「ドレイン電極50」は、「コンタクト層50a」と、「メタル層50b」と、「バリアメタル層50c」とを含み、前記「コンタクト層50a」の材質は、Tiであり、前記「メタル層50b」の材質は、Alであり、前記「バリアメタル層50c」の材質は、Tiである、といえる。 コ 同【0022】には、「また、コンタクト層40a、50aと、ゲート電極30の配線層30cと、は同じ組成且つ同じ膜厚であり、メタル層40b、50bと、ゲート電極30の配線層30dと、は同じ組成且つ同じ膜厚である。」と記載されており、上記ク及びケによれば、「コンタクト層40a」及び「メタル層40b」は、「窒化物半導体装置」の「ソース電極40」に含まれ、「コンタクト層50a」及び「メタル層50b」は、「窒化物半導体装置」の「ドレイン電極50」に含まれるから、「窒化物半導体装置」の「ゲート電極30」、「ソース電極40」及び「ドレイン電極50」は、同じ組成の膜を含む、といえる。 (3)引用文献1に記載された発明 前記(2)の記載事項から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「半導体積層体15と、 ソース電極40と、 ドレイン電極50と、 前記ソース電極40及び前記ドレイン電極50の間に設けられたゲート電極30と、 を含み、 前記半導体積層体15は、障壁層13を含み、 前記障壁層13は、AlXGa1−XN(0<X≦1)層であり、 前記障壁層13は、ゲート絶縁膜20に接し、前記ゲート絶縁膜20は前記ゲート電極20に接し、 前記ソース電極40及び前記ドレイン電極50は、前記障壁層13に接し、 前記ゲート電極30は、ゲートメタル層30aと、バリアメタル層30bと、配線層30cと、配線層30dと、を含み、前記ゲートメタル層30aの材質は、Niであり、前記バリアメタル層30bの材質は、前記ゲートメタル層30aと同じであり、前記配線層30cの材質は、Tiであり、前記配線層30dの材質は、Alであり、 前記ソース電極40は、コンタクト層40aと、メタル層40bと、バリアメタル層40cとを含み、前記コンタクト層40aの材質は、Tiであり、前記メタル層40bの材質は、Alであり、前記バリアメタル層40cの材質は、Tiであり、 前記ドレイン電極50は、コンタクト層50aと、メタル層50bと、バリアメタル層50cとを含み、前記コンタクト層50aの材質は、Tiであり、前記メタル層50bの材質は、Alであり、前記バリアメタル層50cの材質は、Tiであり、 前記ゲート電極30、前記ソース電極40及び前記ドレイン電極50は、同じ組成の膜を含む、 窒化物半導体装置。」 2 引用文献2について (1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、次の記載がある(下線部は当審による。)。 「技術分野 [0001] 本発明は、半導体装置に関し、特に、活性領域の上に形成された配線と電極パッドとを有する横型の半導体装置に関する。」 「[0028] (実施の形態1) 以下、本発明の第1の実施の形態について、図1〜図3Gを参照して説明する。 [0029] [半導体装置の構成] 図1は、本発明の実施の形態1に係る半導体装置の配線レイアウト図である。具体的には、電界効果トランジスタである窒化物半導体装置の第1配線層及び第2配線層のレイアウトの一例を示している。同図に示されるように、本実施の形態に係る半導体装置1には、第1ソース電極配線101、第1ドレイン電極配線102及び第1ゲート電極配線103が、後述する活性領域の上方であって第1配線層に形成されている。第1配線層は、トランジスタを構成ずるソース電極、ドレイン電極、及びゲート電極の上に形成されている。 ・・・ [0031] 図2は、本発明の実施の形態1に係る半導体装置の断面図である。具体的には、図1のA−A’における断面図を表している。図2に示されるように、本実施の形態に係る半導体装置1は、Si基板201の上に、バッファ層202を介して、窒化物半導体層203が形成されている。窒化物半導体層203は、厚さが2.5μmのアンドープGaN層204と、厚さが50nmのアンドープAlGaN層205とが基板側から順に形成されている。アンドープGaN層204におけるアンドープAlGaN層205との界面領域には、2次元電子ガス(2DEG)が発生し、チャネル領域が形成されている。 [0032] 窒化物半導体層203の上には、ソース電極207及びドレイン電極208が、互いに間隔をおいて形成されている。本実施の形態においては、コンタクト抵抗を低減するために、アンドープAlGaN層205及びアンドープGaN層204の一部が除去され、ソース電極207及びドレイン電極208がアンドープAlGaN層205とアンドープGaN層204との界面よりも下側に達するように形成されている。ソース電極207及びドレイン電極208は、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)などの金属からなる。 [0033] ソース電極207とドレイン電極208の間の一部では、アンドープAlGaN層205が幅1μmにわたり膜厚が薄くなっており、その上に厚さが200nmのマグネシウム(Mg)がドープされたp型GaN層210が形成されている。p型GaN層210の上には、パラジウム(Pd)、金(Au)、白金(Pt)、などからなるゲート電極209が形成されている。 ・・・ [0037] 絶縁膜206の開口部を介して、ソース電極207及びドレイン電極208の上に、それぞれ、Tiを密着バリア層としたAl及びTiが積層された第1ソース電極配線101及び第1ドレイン電極配線102が形成されている。なお、前述したように、図2には図示されていない第1ゲート電極配線103を含め、第1ソース電極配線101及び第1ドレイン電極配線102は、第1配線層に形成された第1電極配線である。これらの電極の膜厚は2μmであり、幅は下層のソース電極207またはドレイン電極208と同等かそれ以上である。ここで、第1ソース電極配線101は、隣接する2つのユニットのゲート電極209を覆うように形成され、その幅はドレイン電極側に広がるように形成されており、ゲート電極209に対する外部端子からのダメージを抑制するとともに、ソースフィールドプレートとしても機能する。」 「[図1] 」 「[図2] 」 (2)引用文献2の記載事項 ア 上記(1)の[0001]に、「本発明は、半導体装置に関し、特に、活性領域の上に形成された配線と電極パッドとを有する横型の半導体装置に関する」と記載されているから、引用文献2の記載は「半導体装置」に関するものであるといえる。 イ 同[0031]に、「図2に示されるように、本実施の形態に係る半導体装置1は、Si基板201の上に、バッファ層202を介して、窒化物半導体層203が形成されている。窒化物半導体層203は、厚さが2.5μmのアンドープGaN層204と、厚さが50nmのアンドープAlGaN層205とが基板側から順に形成されている。」と記載されているから、「半導体装置」は、「アンドープGaN層204」及び「アンドープAlGaN層205」を有する「窒化物半導体層203」を含むといえる。 ウ 同[0032]に、「窒化物半導体層203の上には、ソース電極207及びドレイン電極208が、互いに間隔をおいて形成されている」と記載されているから、「半導体装置」は、「窒化物半導体層203」上に形成された「ソース電極207」及び「ドレイン電極208」を含むといえる。 エ 同[0033]に、「ソース電極207とドレイン電極208の間の一部では、アンドープAlGaN層205が幅1μmにわたり膜厚が薄くなっており、その上に厚さが200nmのマグネシウム(Mg)がドープされたp型GaN層210が形成されている。p型GaN層210の上には、パラジウム(Pd)、金(Au)、白金(Pt)、などからなるゲート電極209が形成されている。」と記載されているから、「半導体装置」は、「アンドープAlGaN層205」上に形成された「p型GaN層210」と、当該「p型GaN層210」上に形成された「ゲート電極209」とを含むといえる。 オ 同[0037]に、「絶縁膜206の開口部を介して、ソース電極207及びドレイン電極208の上に、それぞれ、Tiを密着バリア層としたAl及びTiが積層された第1ソース電極配線101及び第1ドレイン電極配線102が形成されている」と記載されているから、「半導体装置」は、「ソース電極207」上に形成された「第1ソース電極配線101」と、「ドレイン電極208」上に形成された「第1ドレイン電極配線102」とを含むといえる。 カ 同[0029]に、「同図に示されるように、本実施の形態に係る半導体装置1には、第1ソース電極配線101、第1ドレイン電極配線102及び第1ゲート電極配線103が、後述する活性領域の上方であって第1配線層に形成されている。第1配線層は、トランジスタを構成ずるソース電極、ドレイン電極、及びゲート電極の上に形成されている。」と記載され、同[0037]に、「なお、前述したように、図2には図示されていない第1ゲート電極配線103を含め、第1ソース電極配線101及び第1ドレイン電極配線102は、第1配線層に形成された第1電極配線である」と記載されているから、「半導体装置」は、「ゲート電極209」上に形成され、「第1ソース電極配線101」及び「第1ドレイン電極配線102」と同じ「第1配線層」に形成された「第1ゲート電極配線103」を含むといえる。 キ 同[0032]に、「ソース電極207及びドレイン電極208は、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)などの金属からなる」と記載されているから、「半導体装置」の「ソース電極207」及び「ドレイン電極208」は、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)などの金属からなるといえる。 ク 同[0033]に、「パラジウム(Pd)、金(Au)、白金(Pt)、などからなるゲート電極209が形成されている」と記載されているから、「半導体装置」の「ゲート電極209」は、パラジウム(Pd)、金(Au)、白金(Pt)、などからなるといえる。 ケ 同[0037]に、「ソース電極207及びドレイン電極208の上に、それぞれ、Tiを密着バリア層としたAl及びTiが積層された第1ソース電極配線101及び第1ドレイン電極配線102が形成されている」、及び、「なお、前述したように、図2には図示されていない第1ゲート電極配線103を含め、第1ソース電極配線101及び第1ドレイン電極配線102は、第1配線層に形成された第1電極配線である」と記載されているから、「半導体装置」の「第1ソース電極配線101」、「第1ドレイン電極配線102」及び「第1ゲート電極配線103」は、Al及びTiからなるといえる。 コ 同[図2]には、「ゲート電極209」が、「ソース電極207」と「ドレイン電極208」の間に配置されていることが見て取れる。 サ 同[図2]には、「ソース電極207」及び「ドレイン電極208」がそれぞれ、「アンドープAlGaN層205」に接していることが見て取れる。 シ 同[図2]には、「p型GaN層210」が、「アンドープAlGaN層205」に接し、「ゲート電極209」が、「p型GaN層210」に接していることが見て取れる。 (3)引用文献2に記載された発明 前記(2)の記載事項から、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。 「アンドープGaN層204及びアンドープAlGaN層205を有する窒化物半導体層203と、 前記窒化物半導体層203上に形成されたソース電極207及びドレイン電極208と、 前記アンドープAlGaN層205上に形成されたp型GaN層210と、 前記p型GaN層210上に形成されたゲート電極209と、 前記ソース電極207上に形成された第1ソース電極配線101と、 前記ドレイン電極208上に形成された第1ドレイン電極配線102と、 前記ゲート電極209上に形成され、前記第1ソース電極配線101及び前記第1ドレイン電極配線102と同じ第1配線層に形成された第1ゲート電極配線103と、 を含み、 前記ソース電極207及び前記ドレイン電極208は、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)などの金属からなり、 前記ゲート電極209は、パラジウム(Pd)、金(Au)、白金(Pt)、などからなり、 前記第1ソース電極配線101、前記第1ドレイン電極配線102及び前記第1ゲート電極配線103は、Al及びTiからなり、 前記ゲート電極209が、前記ソース電極207と前記ドレイン電極208の間に配置され、 前記ソース電極207及び前記ドレイン電極208がそれぞれ、アンドープAlGaN層205に接し、 前記p型GaN層210が、前記アンドープAlGaN層205に接し、 前記ゲート電極209が、前記p型GaN層210に接する 半導体装置。」 3 引用文献3について (1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、次の記載がある(下線部は当審による。)。 「【0017】 本実施形態の多層配線構は、配線および絶縁膜により構成された配線層が複数積層されたものである。この配線は金属を主成分とする配線であれば特に限定されない。この絶縁膜は、例えば配線材を絶縁分離する膜(層間絶縁膜)である。また、メタル配線およびコンタクトの材料は、主にCuを主成分とすることができる。金属配線材の信頼性を向上させるため、Cu以外の金属元素がCuからなる部材に含まれていても良く、Cu以外の金属元素がCuの上面や側面などに形成されていても良い。さらに、配線あるいはコンタクトを構成する金属元素が層間絶縁膜や下層へ拡散することを防止するために、配線の側面および底面を被覆するバリアメタル膜を設けてもよい。バリアメタル膜は、銅の拡散に対してバリアとなる性質を有する導電性膜を示す。例えば、配線がCuを主成分とする金属元素からなる場合には、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、およびタングステン(W)のような高融点金属やその窒化物等、またはそれらの積層膜が使用されてもよい。このメタル配線の形成方法は特に限定されず、エッチング法、ダマシン法などが用いられる。メタル配線下およびメタル配線間の層間絶縁膜のいずれにもCMPを用いることができる。また、接続パッド152も配線と同様の材料で構成することができる。」 4 引用文献4について (1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には、次の記載がある(下線部は当審による。)。 「【0114】 図14は、障壁層24へのオーミックコンタクト30の形成を示している。ここで図14を参照すると、障壁層22にオーミック金属領域を形成するために、窓8およびリセス9によって露出された障壁層22の部分に、蒸着によって金属が堆積されもよい。適切な金属には、チタン(Ti)、タングステン(W)、チタンタングステン(TiW)、シリコン(Si)、窒化チタンタングステン(TiWN)、タングステンシリサイド(WSi)、レニウム(Re)、ニオブ(Nb)、ニッケル(Ni)、金(Au)、アルミニウム(Al)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ニッケルシリサイド(NiSi)、チタンシリサイド(TiSi)、窒化チタン(TiN)、窒化タングステンシリコン(WSiN)、白金(Pt)などの耐熱金属がある可能性がある。どんな不要な金属も、例えば溶媒を使用して除去されてもよい。オーミック金属領域は、保護層24の窓よりも小さくなるようにパターニングされてもよく、さらに、第1および第2のオーミックコンタクト領域30を形成するようにアニールされてもよい。そのようなものとして、オーミックコンタクト領域30は、オーミックコンタクト金属の形成および/またはパターニングでの位置合わせ不良公差(misalignmenttolerance)を許容するのに十分な距離だけ保護層24から間隔を空けて配置される可能性がある。例えば、オーミックコンタクト領域30の縁は、約0.1マイクロメートル(μm)から約0.5μmの距離だけ保護層24から間隔を空けて配置されてもよい。」 5 引用文献5について (1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5には、次の記載がある(下線部は当審による。)。 「【0089】 なお、第5の実施形態は、2種類の金属(Ti及びMo)を用いてソース電極7s及び7dの接触抵抗がゲート電極7g側で高くなるように構成されているが、3種類以上の導電体(金属、合金、化合物等)が用いられてもよい。つまり、ゲート電極から離間するほど接触抵抗が低くなるように構成されていればその材料は限定されない。例えば、図14に示すように、Mo膜52dよりも接触抵抗が低い導電部材53ad、53bd、53cd及び53ddがゲート電極7gから離間する方向から並んで設けられていてもよい。この場合、導電部材53adの接触抵抗が最も低く、導電部材53ddの接触抵抗が最も高い。また、導電部材53bdの接触抵抗が2番目に低く、導電部材53ddの接触抵抗が2番目に高い。なお、このようなオーミック電極(ソース電極7s及びドレイン電極7d)の材料としては、Mo、Ti、Pt、Ir、W、Ni、Au、Cu、Ag、Pd、Zn、Cr、Al、Mn、Ta、Si、TaN、TiN、Si3N4、Ru、ITO(酸化インジウム錫)、NiO、IrO、SrRuO、CoSi2、WSi2、NiSi、MoSi2、TiSi2、Al−Si合金、Al−Si合金、Al−Cu合金及びAl−Si−Cu合金が挙げられる。」 第5 対比・判断 1 本願発明1〜12と引用発明1との対比・判断 (1)本願発明1について ア 対比 本願発明1と引用発明1とを対比する。 (ア)本願発明1の「III族−N半導体層」について、本願明細書の【0002】に、「以降では、III族窒化物をIII族−Nとして参照することもあり、これは例えば、二元のInN、GaN、AlN合金、例えばAlxGa1−xN(AlGaN)合金などの三元合金、及び他の窒素系合金を含む」と記載され、一方、引用発明1の「半導体積層体15」は、「AlXGa1−XN(0<X≦1)層」である「障壁層13」を含むから、引用発明1の「半導体積層体15」は、本願発明1の「III族−N半導体層」に相当する。 (イ)引用発明1の「ソース電極40」及び「ドレイン電極50」は、「半導体積層体15」の「障壁層13」に接する。ここで、技術常識からすれば、引用発明1の「ソース電極40」及び「ドレイン電極50」は、「障壁層13」とオーミックコンタクトしているといえる。 よって、本願発明1と引用発明1とは、「前記III族−N半導体層とオーミックコンタクトしたソース電極構造及びドレイン電極構造」を有する点で共通する。 (ウ)引用発明1の「ゲート電極50」は、「ソース電極40」及び「ドレイン電極50」の間に設けられ、また、「ゲート絶縁膜20」を介して、「半導体積層体15」の「障壁層13」に接している。 一方、本願明細書の【0056】に「なお、ゲート電気コンタクト構造14GCは、メタル絶縁ゲートHEMT(MISHEMT)を形成するように、図3Aに示すように、ゲート金属層14aとIII族−N半導体層36との間に配置された、例えば酸化アルミニウム(Al2O3)である薄い(典型的に、〜2−10nm)誘電体層14bを有していてもよい。」と記載されているから、本願発明1の「ゲート電極構造」が有する「電気コンタクト構造」は、ゲート電極層とIII族−N半導体層との間に誘電体層を有していてもよい。 よって、本願発明1と引用発明1とは、「前記ソース電極構造と前記ドレイン電極構造との間に配置され、前記III族−N半導体層と接触したゲート電極構造」を有する点で共通する。 (エ)引用発明1の「ゲート電極30」は、Niである「ゲートメタル層30a」と、Niである「バリアメタル層30b」と、Tiである「配線層30c」と、Alである「配線層30d」と、を含む。 また、引用発明1の「ソース電極40」は、Tiである「コンタクト層40a」と、Alである「メタル層40b」と、Tiである「バリアメタル層40c」とを含む。 さらに、引用発明1の「ドレイン電極50」は、Tiである「コンタクト層50a」と、Alである「メタル層50b」と、Tiである「バリアメタル層50c」とを含む。 以上によれば、引用発明1の「ゲート電極30」、「ソース電極40」及び「ドレイン電極50」は、材質に金を含まない。 また、引用発明1の「ゲート電極30」、「ソース電極40」及び「ドレイン電極50」は、同じ組成の膜を含む。 よって、本願発明1と引用発明1とは、「前記ソース電極構造、前記ドレイン電極構造及び前記ゲート電極構造」は、「金フリー」であり、「同様の材料」からなる膜を含む点で共通する。 (オ)引用発明1の「窒化物半導体装置」は、本願発明1の「半導体構造」に相当する。 (カ)以上の(ア)〜(オ)によれば、本願発明1と引用発明1の一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「III族−N半導体層と、 前記III族−N半導体層とオーミックコンタクトしたソース電極構造及びドレイン電極構造と、 前記ソース電極構造と前記ドレイン電極構造との間に配置され、前記III族−N半導体層と接触したゲート電極構造と を有し、 前記ソース電極構造、前記ドレイン電極構造及び前記ゲート電極構造は金フリーであり、同様の材料からなる膜を有する、 半導体構造。」 <相違点1> 本願発明1においては、「前記ソース電極構造、前記ドレイン電極構造及び前記ゲート電極構造は各々」、「電気コンタクト構造」と、「該電気コンタクト構造上」の「電極コンタクト」とを有し、「前記ソース電極構造、前記ドレイン電極構造及び前記ゲート電極構造の前記電極コンタクトの各々が、前記電気コンタクト構造上に配置されたライナと、該ライナ上に配置された導電性材料とを有し、前記導電性材料の底面及び側壁が前記ライナで覆われている」のに対し、引用発明1は、そのような構造を備えない点。 イ 判断 相違点1に係る本願発明1の「前記ソース電極構造、前記ドレイン電極構造及び前記ゲート電極構造は各々」、「電気コンタクト構造」と、「該電気コンタクト構造上」の「電極コンタクト」とを有し、「前記ソース電極構造、前記ドレイン電極構造及び前記ゲート電極構造の前記電極コンタクトの各々が、前記電気コンタクト構造上に配置されたライナと、該ライナ上に配置された導電性材料とを有し、前記導電性材料の底面及び側壁が前記ライナで覆われている」という構成は、上記引用文献1〜5には、記載されておらず、本願の優先日前において周知技術であるともいえない。 よって、引用発明1において、相違点1に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 ウ 小括 よって、本願発明1は、引用発明1、引用発明2及び引用文献3〜5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (2)本願発明2〜10について 本願発明2〜10も、相違点1に係る本願発明1の構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明1、引用発明2及び引用文献3〜5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本願発明11、12について 本願発明11、12は、それぞれ、本願発明1、2に対応する方法の発明であり、相違点1に係る本願発明1の構成に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明1、引用発明2及び引用文献3〜5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 2 本願発明1〜12と引用発明2との対比・判断 (1)本願発明1について ア 対比 本願発明1と引用発明2とを対比する。 (ア)本願発明1の「III族−N半導体層」について、本願明細書の【0002】に、「以降では、III族窒化物をIII族−Nとして参照することもあり、これは例えば、二元のInN、GaN、AlN合金、例えばAlxGa1−xN(AlGaN)合金などの三元合金、及び他の窒素系合金を含む」と記載されているから、引用発明2の「アンドープGaN層204及びアンドープAlGaN層205を有する窒化物半導体層203」及び「前記アンドープAlGaN層205上に形成されたp型GaN層210」は、本願発明1の「III族−N半導体層」に相当する。 (イ)引用発明2の「ソース電極207」及び「ドレイン電極208」は、「窒化物半導体層203」の「アンドープAlGaN層205」に接するものである。 また、引用発明2の「ゲート電極209」は、「窒化物半導体層203」の「アンドープAlGaN層205」上に形成された「p型GaN層210」に接するものである。 更に、引用発明2の「ゲート電極209」は、「ソース電極207」と「ドレイン電極208」の間に配置される。 しかも、引用文献2の[図1](上記第3 2(1))から理解されるように、引用発明2の「第1ゲート電極配線103」は、「第1ソース電極配線101」と「第1ドレイン電極配線102」の間に配置されるものではない。 これに対し、本願発明1における「ゲート電極構造」は、「ソース電極構造」と「ドレイン電極構造」の間に配置されるものである。 以上によれば、引用発明2の「ソース電極207」、「ドレイン電極208」及び「ゲート電極209」が、本願発明1の「ソース電極構造」、「ドレイン電極構造」及び「ゲート電極構造」にそれぞれ対応するといえる。 そして、技術常識からすれば、引用発明2の「ソース電極207」及び「ドレイン電極208」は、「アンドープAlGaN層205」にオーミックコンタクトしているといえる。 そうすると、本願発明1と引用発明2とは、「前記III族−N半導体層とオーミックコンタクトしたソース電極構造及びドレイン電極構造」と、「前記ソース電極構造と前記ドレイン電極構造との間に配置され、前記III族−N半導体層と接触したゲート電極構造」とを有する点で共通する。 (ウ)引用発明2の「ソース電極207」及び「ドレイン電極208」は、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)などの金属からなる。 また、引用発明2の「ゲート電極209」は、パラジウム(Pd)、金(Au)、白金(Pt)、などからな」る。 よって、本願発明1と引用発明2とは、「前記ソース電極構造、前記ドレイン電極構造及び前記ゲート電極構造は」、「金フリー」である点で共通する。 (エ)引用発明2の「半導体装置」は、本願発明1の「半導体構造」に相当する。 (オ)以上の(ア)〜(エ)によれば、本願発明1と引用発明2の一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「III族−N半導体層と、 前記III族−N半導体層とオーミックコンタクトしたソース電極構造及びドレイン電極構造と、 前記ソース電極構造と前記ドレイン電極構造との間に配置され、前記III族−N半導体層と接触したゲート電極構造と を有し、 前記ソース電極構造、前記ドレイン電極構造及び前記ゲート電極構造は金フリーである、 半導体構造。」 <相違点2> 本願発明1においては、「前記ソース電極構造、前記ドレイン電極構造及び前記ゲート電極構造は各々」、「電気コンタクト構造」と、「該電気コンタクト構造上」の「電極コンタクト」とを有し、「各電極コンタクトが同様の材料であり」、「前記ソース電極構造、前記ドレイン電極構造及び前記ゲート電極構造の前記電極コンタクトの各々が、前記電気コンタクト構造上に配置されたライナと、該ライナ上に配置された導電性材料とを有し、前記導電性材料の底面及び側壁が前記ライナで覆われている」のに対し、引用発明2は、そのような構造を備えない点。 イ 判断 相違点2に係る本願発明1の「前記ソース電極構造、前記ドレイン電極構造及び前記ゲート電極構造は各々」、「電気コンタクト構造」と、「該電気コンタクト構造上」の「電極コンタクト」とを有し、「各電極コンタクトが同様の材料であり」、「前記ソース電極構造、前記ドレイン電極構造及び前記ゲート電極構造の前記電極コンタクトの各々が、前記電気コンタクト構造上に配置されたライナと、該ライナ上に配置された導電性材料とを有し、前記導電性材料の底面及び側壁が前記ライナで覆われている」という構成は、上記引用文献1〜5には、記載されておらず、本願の優先日前において周知技術であるともいえない。 よって、引用発明2において、相違点2に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 ウ 小括 よって、本願発明1は、引用発明2、引用発明1及び引用文献3〜5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (2)本願発明2〜10について 本願発明2〜10も、相違点2に係る本願発明1の構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明2、引用発明1及び引用文献3〜5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本願発明11、12について 本願発明11、12は、それぞれ、本願発明1、2に対応する方法の発明であり、相違点2に係る本願発明1の構成に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明2、引用発明1及び引用文献3〜5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 第6 原査定についての判断 令和2年12月4日付け手続補正により補正された請求項1〜9、11〜12に係る発明は、いずれも、上記相違点1に係る構成を有しているから、引用発明1であるとはいえない。 また、令和2年12月4日付け手続補正により補正された請求項1〜12に係る発明は、いずれも、上記相違点1及び上記相違点2に係る構成を有しているから、上記のとおり、相違点1、相違点2に係る構成は、引用発明1、引用発明2及び引用文献3〜5に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 したがって、原査定を維持することはできない。 第7 当審拒絶理由について 1 特許法第17条の2第3項 当審では、請求項1〜12について、電気コンタクト構造が「平面状の頂面を持つ」との事項が新規事項に該当するとの拒絶理由を通知しているが、令和4年7月13日にされた補正により、当該事項が削除されたことにより、この拒絶理由は解消した。 2 特許法第36条第6項第1号 当審では、請求項1〜12について、ソース電極構造、ドレイン電極構造及びゲート電極構造に金が含まれるものについても包含しているといえ、金が含まれるものであった場合には「Auフリー」とはならず、本願発明が解決しようとする課題は解決されないから、請求項1〜12に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでないとの拒絶理由を通知しているが、令和4年7月13日にされた補正により、ソース電極構造、ドレイン電極構造及びゲート電極構造の各々の電気コンタクト構造及び電極コンタクトが「金フリー」である旨が特定されたことにより、この拒絶理由は解消した。 第8 むすび 以上のとおり、本願発明1〜12は、引用発明1、引用発明2及び引用文献3〜5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2022-09-21 |
出願番号 | P2019-544902 |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WY
(H01L)
P 1 8・ 55- WY (H01L) P 1 8・ 121- WY (H01L) P 1 8・ 113- WY (H01L) |
最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
河本 充雄 |
特許庁審判官 |
棚田 一也 鈴木 聡一郎 |
発明の名称 | 金フリーコンタクトを有する窒化物構造及びそのような構造を形成する方法 |
代理人 | 伊東 忠彦 |
代理人 | 大貫 進介 |
代理人 | 伊東 忠重 |