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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1389085
総通号数 10 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-10-20 
確定日 2022-09-22 
事件の表示 特願2019−212501「ファブリック感知デバイス」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 4月 9日出願公開、特開2020− 57398、請求項の数(20)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続きの経緯

本願は、2015年(平成27年)9月16日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2014年9月30日 米国)を国際出願日とする出願である特願2017−517053号の一部を、令和元年11月25日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 元年12月16日付け :手続補正書の提出
令和 2年12月10日付け :拒絶理由通知
令和 3年 3月12日 :意見書、手続補正書の提出
令和 3年 6月11日付け :拒絶査定(原査定)
令和 3年10月20日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 4年 4月20日付け :拒絶理由通知(当審拒絶理由)
令和 4年 7月22日 :意見書、手続補正書の提出


第2 原査定の概要
原査定(令和 3年 6月11日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1、3−9、16−20に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2011−102457号公報

第3 本願発明

本願請求項1−20に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」−「本願発明20」という。)は、令和 4年 7月22日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1−20に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
タッチ感知式ファブリックであって、
第1の1組の導電糸と、
前記第1の1組の導電糸と重なり合う第2の1組の導電糸と、
前記第1の1組の導電糸および前記第2の1組の導電糸と編み合わされた絶縁スペーサ糸と、
前記第1の1組の導電糸および前記第2の1組の導電糸に結合された回路であって、前記回路は、前記第1の1組の導電糸と前記第2の1組の導電糸とを横切る容量の変化を検出することにより、前記タッチ感知式ファブリック上へのタッチを検出するとともに、前記回路は、前記タッチ感知式ファブリックの撓みに基づいて前記タッチの力を検出する、
回路と、
を含むタッチ感知式ファブリック。
【請求項2】
前記絶縁スペーサ糸は、前記第1の1組の導電糸と前記第2の1組の導電糸とを分離するモノフィラメントを含む、請求項1に記載のタッチ感知式ファブリック。
【請求項3】
前記回路は、前記第1の1組の導電糸に駆動信号を供給する、請求項1に記載のタッチ感知式ファブリック。
【請求項4】
前記第1の1組の導電糸と織り交ぜられた第1の1組の絶縁糸と、
前記第2の1組の導電糸と織り交ぜられた第2の1組の絶縁糸と、
を更に含む、請求項1に記載のタッチ感知式ファブリック。
【請求項5】
前記第2の1組の絶縁糸は、前記第1の1組の絶縁糸に重なりあう、請求項4に記載のタッチ感知式ファブリック。
【請求項6】
前記回路は、前記第1の1組の導電糸と前記第2の1組の導電糸とを横切る容量の前記変化に基づいて、前記タッチの位置を判断する、請求項1に記載のタッチ感知式ファブリック。
【請求項7】
前記第1の1組の導電糸は、電気絶縁コーティングを有する導電糸を含む、請求項1に記載のタッチ感知式ファブリック。
【請求項8】
前記第1の1組の導電糸は、導電性材料で被覆された非導電性材料から形成された導電糸を含む、請求項1に記載のタッチ感知式ファブリック。
【請求項9】
前記回路は、前記タッチ感知式ファブリック上への前記タッチの大きさを、前記容量の変化を前記タッチの大きさと関連づける関数に基づいて検出する、請求項1に記載のタッチ感知式ファブリック。
【請求項10】
タッチセンサであって、
第1の1組の導電糸と、
前記第1の1組の導電糸と織り交ぜられた第2の1組の導電糸であって、前記第2の1組の導電糸は、感知ノードを形成するように前記第1の1組の導電糸と重なり合う、第2の1組の導電糸と、
前記第1の1組の導電糸および前記第2の1組の導電糸と織り交ぜられた非導電糸と、
前記第1の1組の導電糸および前記第2の1組の導電糸に結合された回路であって、前記回路は、前記第1の1組の導電糸に駆動信号を供給し、前記第2の1組の導電糸上での容量の変化を感知するとともに、前記回路は、前記容量の変化に基づいてタッチの場所および前記タッチの力を検出し、前記タッチの場所に基づいてグラフィカルユーザインターフェースを制御する、回路と、
を含むタッチセンサ。
【請求項11】
前記回路は、タッチジェスチャを検出する、請求項10に記載のタッチセンサ。
【請求項12】
前記非導電糸は、前記第1の1組の導電糸に平行である第1の1組の非導電糸と、前記第2の1組の導電糸に平行である第2の1組の非導電糸とを含む、請求項10に記載のタッチセンサ。
【請求項13】
容量の前記変化は、前記第1の1組の導電糸における第1の導電糸と、前記第2の1組の導電糸における第2の導電糸との間の容量の変化である、請求項10に記載のタッチセンサ。
【請求項14】
前記第2の導電糸は、導電条片領域を形成する隣接する導電糸の群にあり、容量の前記変化は、前記導電条片領域で計測される、請求項13に記載のタッチセンサ。
【請求項15】
タッチ感知デバイスであって、
第1の1組の非導電糸と織り交ぜられた第1の1組の導電糸から形成される第1の層と、
第2の1組の非導電糸と織り交ぜられた第2の1組の導電糸から形成される第2の層と、
前記第1の1組の導電糸および前記第2の1組の導電糸との間における容量の変化を検出する回路と、
を含み、
前記第1の1組の導電糸は、導電材料で被覆された非導電材料から形成された導電糸と、該導電糸の外部に沿った電気絶縁被覆とを含み、
前記回路は、前記容量の変化に基づいてタッチの場所および前記タッチの力を検出する、タッチ感知デバイス。
【請求項16】
前記第1の層は、所定の距離だけ前記第2の層から分離され、前記回路は、前記所定の距離の変化を検出する、請求項15に記載のタッチ感知デバイス。
【請求項17】
前記第1の1組の導電糸は、第1方向に向けられ、前記第2の1組の導電糸は、前記タッチ感知デバイスのタッチ感知領域において前記第1方向とは異なる第2方向に向けられている、請求項15に記載のタッチ感知デバイス。
【請求項18】
前記第1の1組の導電糸および前記第2の1組の導電糸は、前記タッチ感知領域とは異なる前記タッチ感知デバイスの領域で第1の方向に向けられている、請求項17に記載のタッチ感知デバイス。
【請求項19】
前記第1の1組の導電糸と前記第2の1組の導電糸との間の電気分離を高める遮蔽層を更に含む、請求項18に記載のタッチ感知デバイス。
【請求項20】
前記回路は、前記タッチ感知デバイス上への前記タッチの場所および前記タッチの力を、前記容量の変化を前記タッチの大きさと関連づける関数に基づいて検出する、請求項15に記載のタッチ感知デバイス。」

第4 引用文献、引用発明等

1.引用文献1について
令和 3年 6月11日付けの拒絶査定に引用された引用文献1(特開2011−102457号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は、強調のため当審にて付与。以下同様。)

「【実施例1】
【0016】
[導電性織物の構成]
始めに、本発明の実施例1におけるタッチセンサ装置30(図5参照)で使用する導電性織物10の構成について説明する。
図1に導電性織物10の写真を示す。導電性織物10は、導電糸12が織り込まれた2枚の導電布(導電上布20と導電下布22)が上下に面合わせに重ね合わされて、パイル糸で結びつけられた立体構造とされている。導電糸12は図1では灰色で表されており、絶縁糸14は図1では白色で表されている。
導電性織物10を構成する各導電布20、22を形成する縦糸は、複数の導電糸12を並べた導電糸域16と、複数の絶縁糸14を並べた絶縁糸域18とが、交互に並べられた構成とされ、横糸は絶縁糸14のみが並べられた構成とされている。なお、横糸を導電糸域16と絶縁糸域18が交互に並べられた構成として、縦糸を絶縁糸14のみが並べられた構成としても良い。縦糸に導電糸12を配する場合は、横糸には絶縁糸14のみを用いるので、布を織る過程で横糸を取り換える必要がない。また、横糸に導電糸12を配する場合は、布を織る過程で、導電糸域16の幅を調整することが可能となる。
なお、製織方法については、ドビー織機、ジャガード織機による製織方法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0017】
そして、縦糸と横糸のうちいずれか一方の糸により導電糸域16が形成された導電布を適宜のサイズに切断して、導電上布20、及び導電下布22とする。実施例1では、図1に示すとおり、導電上布20には導電糸域16が横向きとなるように3箇所に形成された構成とされている。なお、導電上布20における導電糸域16の幅及び導電糸域16同士の間隔は、それぞれ、1センチメートルである。
そして、導電上布20の導電糸域16の右側端部には、マルチプレクサ32(図5参照)を取り付けるための上布電極21が形成されており、導電下布22の導電糸域16の下側端部には周期信号を印加するための下布電極23が形成されている。
なお、実施例1では、絶縁糸14としてポリプロピレン、導電糸12としてサンダーロン(日本蚕毛染色製)、パイル糸としてポリプロピレンを使用した。
【0018】
そして、導電上布20及び導電下布22の2枚の導電布は、導電糸12が互いに交差する方向で上下に重ね合わされて、パイル糸で結びつけられている。図2は、導電性織物10において、導電上布20と導電下布22の導電糸域16が交差する態様で重ね合わされている様子を、模式的に示したものである。そして、図1に示すように、導電上布20の導電糸域16と導電下布22の導電糸域16が交差する領域をセル24と名付けている。
図3には、導電性織物10の断面を示す。導電性織物10の導電上布20と導電下布22の間には、導電上布20と導電下布22を結びつけるパイル糸によりパイル糸層26が形成されている。このパイル糸層26は、隙間を有し弾発性を備えた層である。
【0019】
[導電性織物の特性]
導電性織物10は、図1、図2、図3に示すように、導電糸域16が横向きとなるように形成されている導電上布20と、導電糸域16が縦向きとなるように形成された導電下布22がパイル糸層26で結びつけられている。
そのため、導電上布20の導電糸域16と導電下布22の導電糸域16が交差するセル24と名付けた領域では、導電性織物10の他の部分に比べて導電上布20の導電糸12と導電下布22の導電糸12が導電布20,22の面方向で接近しているので、導電性織物10の変形による静電容量の変化が大きい。そして、導電性織物10は導電上布20と導電下布22がパイル糸層26で結びつけられて立体構造とされているので、導電性織物10に圧力が加わった時、圧力によりパイル糸層26のパイル糸が歪み、導電上布20と導電下布22が接近して、導電上布20の導電糸12と導電下布22の導電糸12との間の静電容量が大きく変化する。よって、導電性織物10は、高感度に圧力を検知することができると考えられる。
【0020】
[タッチセンサ装置の構成]
次に、実施例1におけるタッチセンサ装置について説明する。図5に実施例1における導電性織物10を使用したタッチセンサ装置30の構成を示す。
図5に示すように、タッチセンサ装置30を構成する導電性織物10の導電下布22の3箇所の導電糸域16a、導電糸域16b、導電糸域16cには、それぞれ、各導電糸域の導電糸に周期信号を印加する第1発振器40、第2発振器42、第3発振器44が接続されている。そして、導電性織物10の導電上布20の3箇所の導電糸域16d、導電糸域16e、導電糸域16fには、各導電糸域の導電糸から出力される信号を取出すマルチプレクサ32が接続されている。
そして、マルチプレクサ32には、導電上布20の導電糸から取出した信号と印加した周期信号との信号差を検出する信号差検出回路34が接続されている。そして信号差検出回路34は、周期信号を基準信号として取り込むために、第1発振器40、第2発振器42および第3発振器44に接続されるとともに、タッチパネル装置30の動作を制御する動作処理回路36に接続されている。
【0021】
[タッチされたセルの検出方法]
次に、タッチされたセル24の検出方法を説明する。第1発振器40からは、図5にf1で示した1メガヘルツのサイン波が導電下布22の導電糸域16aの導電糸に対して印加されると共に、信号差検出回路34に1メガヘルツのサイン波が基準信号として送られる。第2発振器42からは、図5にf2で示した1.5メガヘルツのサイン波が導電下布22の導電糸域16bの導電糸に対して印加されると共に、信号差検出回路34に1.5メガヘルツのサイン波が基準信号として送られる。そして、第3発振器44からは、図5にf3で示した3.9メガヘルツのサイン波が導電下布22の導電糸域16cの導電糸に対して印加されると共に、信号差検出回路34に3.9メガヘルツのサイン波が基準信号として送られる。なお、導電下布22の各導電糸域の導電糸に印加されるサイン波の周波数f1、f2、f3は、互いに干渉しない周波数が選択されている。
【0022】
そして、マルチプレクサ32は、導電上布20の導電糸域16d、導電糸域16e及び導電糸域16cの導電糸から取出した信号を、導電糸域毎に分離した状態で、信号差検出回路34に送り出す。
セル24にタッチして、セル24の静電容量が変化すると、セル24に印加されている周期信号の位相及び振幅が変化する。そこで、セル24から取出した周期信号の位相あるいは振幅の、印加信号との差を調べることで静電容量の変化を生じたセルを知ることができる。
実施例1では、信号差検出回路34は、導電上布20の各導電糸域から取込んだ3系列の信号について、サイン波の周波数毎に各発振器から取込んだ基準信号との信号差から、位相差の検出を行う。そして、検出された位相差から、回路上の混線なく、各セル24毎の正確な静電容量の変化を検出し、タッチされたセル24を特定する。
【0023】
例えば、導電上布20の各導電糸域から取込んだ3系列の信号について、サイン波の周波数毎に基準信号との位相差の検出を行った結果、導電糸域16fから取得した1メガヘルツのサイン波で位相差の変化に対応する静電容量の変化が最大であれば、タッチ信号が与えられたセル24は、導電糸域16f上のセル24であり、かつ、1メガヘルツのサイン波が印加された導電糸域16a上のセル24であることがわかるので、タッチ信号が与えられたセルは、導電糸域16aと導電糸域16fが交差する図5の左下のセル24であることが特定できる。
図6は、タッチセンサ装置30を用いて導電性織物10のセル24の位置に対応したLEDがタッチ信号により点灯するタッチ位置表示器48を実現した例である。
【0024】
[変形例]
実施例1では、信号差検出回路34により、導電糸域から取込んだ信号と基準信号の信号差のうち、位相差を検出することで各セル24の静電容量の変化を検出したが、信号差検出回路34により、信号差のうちの振幅差を検出して、各セル24の静電容量の変化を検出しても良い。また、信号差検出回路34により、位相差と振幅差の双方を検出することで各セル24の静電容量の変化を検出しても良い。
また、実施例1では、周期信号としてサイン波を使用しているが、周期信号として矩形波を使用しても良い。」



図1」



図3」



図5」


したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「タッチセンサ装置30で使用する導電性織物10であって、
導電性織物10は、導電糸12が織り込まれた2枚の導電布(導電上布20と導電下布22)が上下に面合わせに重ね合わされて、パイル糸で結びつけられた立体構造とされており、
各導電布20、22を形成する縦糸は、複数の導電糸12を並べた導電糸域16と、複数の絶縁糸14を並べた絶縁糸域18とが、交互に並べられた構成とされ、横糸は絶縁糸14のみが並べられ、
絶縁糸14としてポリプロピレン、導電糸12としてサンダーロン(日本蚕毛染色製)、パイル糸としてポリプロピレンを使用し、
導電性織物10の導電上布20と導電下布22の間には、導電上布20と導電下布22を結びつけるパイル糸によりパイル糸層26が形成され、
パイル糸層26は、隙間を有し弾発性を備えた層であり、
導電性織物10に圧力が加わった時、圧力によりパイル糸層26のパイル糸が歪み、導電上布20と導電下布22が接近して、導電上布20の導電糸12と導電下布22の導電糸12との間の静電容量が大きく変化することによって、高感度に圧力を検知することができ、
導電下布22の3箇所の導電糸域16a、導電糸域16b、導電糸域16cには、それぞれ、各導電糸域の導電糸に周期信号を印加する第1発振器40、第2発振器42、第3発振器44が接続され、
導電上布20の3箇所の導電糸域16d、導電糸域16e、導電糸域16fには、各導電糸域の導電糸から出力される信号を取出すマルチプレクサ32が接続され、
マルチプレクサ32には、導電上布20の導電糸から取出した信号と印加した周期信号との信号差を検出する信号差検出回路34が接続され、
信号差検出回路34は、各セル24毎の正確な静電容量の変化を検出し、タッチされたセル24を特定する
導電性織物10。」

2.引用文献2について
令和 3年 6月11日付けの拒絶査定に引用された引用文献2(特開2011−86114号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(以下、「引用文献2記載の技術的事項」という。)。

「【0015】
[導電性織物の構成]
図1に実施例1におけるタッチパネル装置30(図4参照)で使用する導電性織物10の写真を示す。
始めに、導電性織物10の構成について説明する。導電性織物10の縦糸は、縦方向に延びる複数本の導電糸12を横方向に並べた導電縦糸域16と、縦方向に延びる複数本の絶縁糸14を横方向に並べた絶縁縦糸域18とが、横方向に交互に並べられた構成とされている。そして、導電性織物10の横糸は、横方向に延びる複数本の導電糸12を縦方向に並べた導電横糸域20と、横方向に延びる複数本の絶縁糸14を縦方向に並べた絶縁横糸域22とが、縦方向に交互に並べられた構成とされている。
そして、導電糸12が絶縁糸14により分離された縦糸と、導電糸12が絶縁糸14により分離された横糸とが織り合わされて織物に形成されており、導電性織物10は、導電糸12同士が絶縁糸14により分離された間引き織り構造を有している。そして、導電縦糸域16と導電横糸域20の交差位置で、縦糸の導電糸12と横糸の導電糸12が織り合わされたセル24が形成されている。
なお、実施例1では、図1に白色で表された縦横双方の導電糸12、12には、芯糸にポリエステル銀めっき糸150D、鞘糸にポリエステル糸150D及びポリエステル糸20/1を使用したダブルカバリング糸を使用している。そして、図1に黒色で表された絶縁糸14には、綿糸20/2を使用している。
【0016】
[間引き織り構造の特性]
導電性織物10は、図1に示すように、導電糸12が絶縁糸14により分離された間引き織り構造とされているので、導電線同士の静電容量の結合が小さく、タッチ位置から離れた部分では静電容量の変化が少ない。そして、縦糸の導電糸12と横糸の導電糸12が織り合わされたセル24では2方向の導電糸12が近接しているので、セル24にタッチした場合は他の部位にタッチした場合に比べて静電容量の変化が大きい。」

「【0020】
[タッチパネル装置の構成]
次に、実施例1におけるタッチパネル装置について説明する。図4に、実施例1における導電性織物10を使用したタッチパネル装置30の構成を示す。
図4に示すように、タッチパネル装置30を構成する導電性織物10の3箇所の導電縦糸域16a、導電縦糸域16b、導電縦糸域16cには、それぞれ、各導電縦糸域の導電糸12に周期信号を印加する第1発振器40、第2発振器42、第3発振器44が接続されている。そして、導電性織物10の3箇所の導電横糸域20a、導電横糸域20b、導電横糸域20cには、各導電横糸域の導電糸12から出力される信号を取出すマルチプレクサ32が接続されている。
そして、マルチプレクサ32には、導電糸12から取出した信号と印加した周期信号の信号差を検出する信号差検出回路34が接続されている。そして信号差検出回路34は、周期信号を基準信号として取り込むために、第1発振器40、第2発振器42および第3発振器44に接続されるとともに、タッチパネル装置30の動作を制御する動作処理回路36に接続されている。
【0021】
[タッチされたセルの検出方法]
次に、タッチされたセルの検出方法を説明する。第1発振器40からは、図4にf1で示した1メガヘルツのサイン波が導電縦糸域16aの導電糸12に対して印加されると共に、信号差検出回路34に1メガヘルツのサイン波が基準信号として送られる。第2発振器42からは、図4にf2で示した1.5メガヘルツのサイン波が導電縦糸域16bの導電糸12に対して印加されると共に、信号差検出回路34に1.5メガヘルツのサイン波が基準信号として送られる。そして、第3発振器44からは、図4にf3で示した3.9メガヘルツのサイン波が導電縦糸域16cの導電糸12に対して印加されると共に、信号差検出回路34に3.9メガヘルツのサイン波が基準信号として送られる。なお、各導電縦糸域の導電糸12に印加される周波数f1、f2、f3は、互いに干渉しない周波数が選択されている。
そして、マルチプレクサ32は、導電横糸域20a、導電横糸域20b及び導電横糸域20cから取出した信号を、導電横糸域毎に3系列に分離した状態で、信号差検出回路34に送り出す。
セル24にタッチして、セル24の静電容量が変化すると、セル24に印加されている周期信号の位相及び振幅が変化する。そこで、セル24から取出した周期信号の位相あるいは振幅の、印加信号との差を調べることで静電容量の変化を生じたセルを知ることができる。
実施例1では、信号差検出回路34は、導電横糸域から取込んだ3系列の信号について、サイン波の周波数毎に各発振器から取込んだ基準信号との信号差から、位相差の検出を行う。そして、検出した位相差から、回路上の混線なく、各セル24毎の正確な静電容量の変化を検出し、タッチされたセル24を特定する。
【0022】
例えば、導電横糸域から取込んだ3系列の信号について、サイン波の周波数毎に基準信号との位相差の検出を行った結果、導電横糸域20bから取得した1.5メガヘルツのサイン波での位相差の変化に対応する静電容量の変化が最大であれば、タッチ信号が与えられたセル24は、導電横糸域20b上のセル24であり、かつ、1.5メガヘルツのサイン波が印加された導電縦糸域16b上のセルであることがわかるので、タッチ信号が与えられたセル24は、図4の中央のセル24であることが特定できる。
図5は、タッチパネル装置30を用いて導電性織物10のセル24の位置に対応したLEDがタッチ信号により消灯するタッチ位置表示器48を実現した例である。図5(a)は、導電性織物10にタッチしておらず、9個のセル24に対応するLEDが全て点灯した状態を示す。図5(b)は、中央のセル24に触れたために、中央のLEDが消灯した状態を示す。」

第5 対比・判断

1.本願発明1について

(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア.引用発明における「タッチセンサ装置30で使用する導電性織物10」は、「織物」が英語で「ファブリック」を意味し、「タッチセンサ装置」で使用することから、後述する相違点を除いて、本願発明1における「タッチ感知式ファブリック」に相当する。

イ.引用発明における「導電糸12が織り込まれた2枚の導電布」のうち、「導電上布20」は、本願発明1における「第1の1組の導電糸」に相当し、「導電上布20」と、「上下に面合わせに重ね合わされ」た「導電下布22」が、本願発明1における「前記第1の1組の導電糸と重なり合う第2の1組の導電糸」に相当する。

ウ.引用発明の「導電上布20と導電下布22を結びつけるパイル糸」について、「パイル糸としてポリプロピレンを使用」することから、絶縁性であり、「パイル糸層26は、隙間を有し弾発性を備えた層」であることから、「導電上布20と導電下布22」との間にスペースを設けるものであり、更に、上記イを参酌すると、引用発明の「導電上布20と導電下布22を結びつけるパイル糸」は、本願発明1における「前記第1の1組の導電糸および前記第2の1組の導電糸と編み合わされた絶縁スペーサ糸」に相当する。

エ.引用発明の「第1発振器40、第2発振器42、第3発振器44」は、それぞれ、「導電下布22の3箇所の導電糸域16a、導電糸域16b、導電糸域16c」に接続され、また、「マルチプレクサ32」は、「導電上布20の3箇所の導電糸域16d、導電糸域16e、導電糸域16f」に接続されており、「マルチプレクサ32には、導電上布20の導電糸から取出した信号と印加した周期信号との信号差を検出する信号差検出回路34が接続され」ている事から、上記イを参酌すると、引用発明の「第1発振器40、第2発振器42、第3発振器44」、「マルチプレクサ32」、及び「信号差検出回路34」は、後述する相違点を除いて、本願発明1における「前記第1の1組の導電糸および前記第2の1組の導電糸に結合された回路」に相当する。

オ.引用発明の「信号差検出回路34は、各セル24毎の正確な静電容量の変化を検出し、タッチされたセル24を特定する」ことについて、「各セル24」とは、「導電上布20と導電下布22」によって構成されるセルのことであり、「各セル24」の静電容量の変化とは、「導電上布20と導電下布22」の間の静電容量の変化を示し、また、「タッチされたセル24を特定する」とは、「導電性織物10」上のタッチされた位置を特定することである。一方、本願発明1における「前記タッチ感知式ファブリック上へのタッチを検出するとともに、前記回路は、前記タッチ感知式ファブリックの撓みに基づいて前記タッチの力を検出する」について、検出するものは「タッチ」と「タッチの力」であるが、当該文言からみて、「タッチ」はタッチした「場所」を含むものと解される(本願明細書段落【0068】)。よって、上記ア、イ、エを参酌すると、引用発明の「信号差検出回路34は、各セル24毎の正確な静電容量の変化を検出し、タッチされたセル24を特定する」ことは、本願発明1における「前記回路は、前記第1の1組の導電糸と前記第2の1組の導電糸とを横切る容量の変化を検出することにより、前記タッチ感知式ファブリック上へのタッチを検出する」ことに相当する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「 タッチ感知式ファブリックであって、
第1の1組の導電糸と、
前記第1の1組の導電糸と重なり合う第2の1組の導電糸と、
前記第1の1組の導電糸および前記第2の1組の導電糸と編み合わされた絶縁スペーサ糸と、
前記第1の1組の導電糸および前記第2の1組の導電糸に結合された回路であって、前記回路は、前記第1の1組の導電糸と前記第2の1組の導電糸とを横切る容量の変化を検出することにより、前記タッチ感知式ファブリック上へのタッチを検出する、
回路と、
を含むタッチ感知式ファブリック。」

(相違点1)
本願発明1は、「回路は、前記第1の1組の導電糸と前記第2の1組の導電糸とを横切る容量の変化を検出することにより、前記タッチ感知式ファブリック上へのタッチを検出するとともに、前記回路は、前記タッチ感知式ファブリックの撓みに基づいて前記タッチの力を検出する」のに対して、引用発明は「タッチを検出する」ことは記載されているものの、「タッチを検出するとともに、前記回路は、前記タッチ感知式ファブリックの撓みに基づいて前記タッチの力を検出する」ことについては明記されていない点。

(2)相違点についての判断
引用発明には、「導電性織物10に圧力が加わった時、圧力によりパイル糸層26のパイル糸が歪み、導電上布20と導電下布22が接近して、導電上布20の導電糸12と導電下布22の導電糸12との間の静電容量が大きく変化することによって、高感度に圧力を検知することができ」ることは、記載されているものの、タッチの場所の検出と共に、タッチの力の大きさを検出していることは特定されていない。また、引用文献2記載の技術的事項にも、導電性織物において、セルの静電容量の変化に基づいてタッチされたセルを特定することは記載されているものの、タッチされたセルの場所とタッチの力の大きさとを同時に検出することについては記載されていないから、仮に引用発明に引用文献2記載の技術的事項を加味したとしても、タッチされたセルの場所を検出すると共に、タッチの力の大きさを検出する構成とはならない。
また、当該相違点に係る構成は本願の出願日前において周知技術であるともいえない。
したがって、本願発明1は、当業者であっても引用発明、及び引用文献2記載の技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2−9について

本願発明2−9は、いずれも,本願発明1と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により、当業者であっても引用発明、及び引用文献2記載の技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

3.本願発明10について

本願発明10は、「タッチ感知式ファブリック」である本願発明1と実質的に同様内容を含む「タッチセンサ」に係る発明であるので、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても引用発明、及び引用文献2記載の技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

4.本願発明11−14について

本願発11−14は、本願発明10と同一の構成を備えるものであるから,本願発明10と同じ理由により、当業者であっても引用発明、及び引用文献2記載の技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

5.本願発明15について

(1)対比
本願発明15と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア.引用発明における「タッチセンサ装置30」は、後述する相違点を除いて、本願発明15における「タッチ感知デバイス」に相当する。

イ.引用発明における「導電糸12が織り込まれた2枚の導電布」について、「各導電布20、22を形成する縦糸は、複数の導電糸12を並べた導電糸域16と、複数の絶縁糸14を並べた絶縁糸域18とが、交互に並べられた構成とされ、横糸は絶縁糸14のみが並べられ」ていることから、「導電糸12が織り込まれた2枚の導電布」のうち、「導電上布20」は、本願発明15における「第1の1組の非導電糸と織り交ぜられた第1の1組の導電糸から形成される第1の層」に相当し、「導電上布20」と、「上下に面合わせに重ね合わされ」た「導電下布22」が、本願発明15における「第2の1組の非導電糸と織り交ぜられた第2の1組の導電糸から形成される第2の層」に相当する。

ウ.引用発明の「第1発振器40、第2発振器42、第3発振器44」は、それぞれ、「導電下布22の3箇所の導電糸域16a、導電糸域16b、導電糸域16c」に接続され、また、「マルチプレクサ32」は、「導電上布20の3箇所の導電糸域16d、導電糸域16e、導電糸域16f」に接続されており、「マルチプレクサ32には、導電上布20の導電糸から取出した信号と印加した周期信号との信号差を検出する信号差検出回路34が接続され」ており、「信号差検出回路34は、各セル24毎の正確な静電容量の変化を検出」している事から、上記イを参酌すると、引用発明の「第1発振器40、第2発振器42、第3発振器44」、「マルチプレクサ32」、及び「信号差検出回路34」は、後述する相違点を除いて、本願発明15における「前記第1の1組の導電糸および前記第2の1組の導電糸との間における容量の変化を検出する回路」に相当する。

エ.引用発明の「導電糸12」について、「導電糸12としてサンダーロン(日本蚕毛染色製)」を使用することが記載されており、当該「サンダーロン」とは、アクリル繊維・ナイロン繊維に硫化銅を化学結合させた有機導電性繊維であることから、本願発明15における「前記第1の1組の導電糸は、導電材料で被覆された非導電材料から形成された導電糸と、該導電糸の外部に沿った電気絶縁被覆とを含み」とは、「前記第1の1組の導電糸は、導電材料で被覆された非導電材料から形成された導電糸を含み」という点において共通する。

オ.引用発明の「信号差検出回路34は、各セル24毎の正確な静電容量の変化を検出し、タッチされたセル24を特定する」ことについて、「各セル24」とは、「導電上布20と導電下布22」によって構成されるセルのことであり、「各セル24」の静電容量の変化とは、「導電上布20と導電下布22」の間の静電容量の変化を示し、また、「タッチされたセル24を特定する」とは、「導電性織物10」上のタッチされた位置を特定することである。一方、本願発明15における「前記回路は、前記容量の変化に基づいてタッチの場所および前記タッチの力を検出する」ことについて、検出するものは「タッチ」と「タッチの力」であるが、当該文言からみて、「タッチ」はタッチした「場所」を含むものと解される(本願明細書段落【0068】)。よって、上記ア、イ、エを参酌すると、引用発明の「信号差検出回路34は、各セル24毎の正確な静電容量の変化を検出し、タッチされたセル24を特定する」ことは、本願発明15における「前記回路は、前記容量の変化に基づいてタッチの場所および前記タッチの力を検出する」こととは、「前記回路は、前記容量の変化に基づいてタッチの場所を検出する」点において共通する。

したがって、本願発明15と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「 タッチ感知デバイスであって、
第1の1組の非導電糸と織り交ぜられた第1の1組の導電糸から形成される第1の層と、
第2の1組の非導電糸と織り交ぜられた第2の1組の導電糸から形成される第2の層と、
前記第1の1組の導電糸および前記第2の1組の導電糸との間における容量の変化を検出する回路と、
を含み、
前記第1の1組の導電糸は、導電材料で被覆された非導電材料から形成された導電糸を含み、
前記回路は、前記容量の変化に基づいてタッチの場所を検出する、タッチ感知デバイス。」

(相違点2)
本願発明15は「前記第1の1組の導電糸は、導電材料で被覆された非導電材料から形成された導電糸と、該導電糸の外部に沿った電気絶縁被覆とを含」むものであるのに対して、引用発明は「該導電糸の外部に沿った電気絶縁被覆」を含むものではない点。

(相違点3)
本願発明15は、「前記回路は、前記容量の変化に基づいてタッチの場所および前記タッチの力を検出する」のに対して、引用発明は「タッチの場所を検出する」ことは記載されているものの、「タッチの場所および前記タッチの力を検出する」ことについては明記されていない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み、まず相違点3について検討すると、引用発明には、「導電性織物10に圧力が加わった時、圧力によりパイル糸層26のパイル糸が歪み、導電上布20と導電下布22が接近して、導電上布20の導電糸12と導電下布22の導電糸12との間の静電容量が大きく変化することによって、高感度に圧力を検知することができ」ることは、記載されているものの、タッチの場所の検出と共に、タッチの力の大きさを検出していることは特定されていない。また、引用文献2記載の技術的事項にも、導電性織物において、セルの静電容量の変化に基づいてタッチされたセルを特定することは記載されているものの、タッチされたセルの場所とタッチの力の大きさとを同時に検出することについては記載されていないから、仮に引用発明に引用文献2記載の技術的事項を加味したとしても、タッチされたセルの場所を検出すると共に、タッチの力の大きさを検出する構成とはならない。
また、当該相違点に係る構成は本願の出願日前において周知技術であるともいえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明15は、当業者であっても引用発明、及び引用文献2記載の技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

6.本願発明16−20について

本願発明16−20は、いずれも,本願発明15と同一の構成を備えるものであるから,本願発明15と同じ理由により、当業者であっても引用発明、及び引用文献2記載の技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

第6 原査定についての判断
令和 4年 7月22日付け手続補正により補正された請求項1は、「タッチを検出するとともに、前記回路は、前記タッチ感知式ファブリックの撓みに基づいて前記タッチの力を検出する」という構成を有するものとなっており、請求項10は、「前記回路は、前記容量の変化に基づいてタッチの場所および前記タッチの力を検出し、前記タッチの場所に基づいてグラフィカルユーザインターフェースを制御する」という構成を有するものとなっており、請求項15は、「前記回路は、前記容量の変化に基づいてタッチの場所および前記タッチの力を検出する」という構成を有するものとなっており、上記のとおり、本願発明1−20は、上記引用発明及び上記引用文献2記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。

第7 当審拒絶理由について
1.特許法第36条第6項第2号について
当審では、請求項10−20について、請求項10、15記載の「力の入力」が不明で、「回路」は何を検出するものなのか特定できないとの拒絶の理由を通知しているが、令和 4年 7月22日付け手続補正において、当該請求項記載の「前記回路は、前記容量の変化に基づいて力の入力を検出」を「前記回路は、前記容量の変化に基づいてタッチの場所および前記タッチの力を検出」へと変更する補正がされた結果、この拒絶の理由は解消した。

2.特許法第36条第6項第1号について
当審では、請求項10−20について、請求項10、15記載の「力の入力」に関して、図2記載の実施形態の説明である、段落【0040】からみて、タッチの「場所」を検出できることは記載されているものの、図5の説明である段落【0068】乃至【0071】記載の「タッチの力の大きさ」に関する記載に対応する記載は見当たらず、自明なことでもないとの拒絶の理由を通知しているが、令和 4年 7月22日付け手続補正において、当該請求項記載の「前記回路は、前記容量の変化に基づいて力の入力を検出する」を「前記回路は、前記容量の変化に基づいてタッチの場所および前記タッチの力を検出し、前記タッチの場所に基づいてグラフィカルユーザインターフェースを制御する」へと変更する補正がされると共に、意見書で段落【0075】、【0082】を引用して説明がされた結果、この拒絶の理由は解消した。

3.特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項について
当審では、請求項10−14に係る発明は、引用文献(特開2011−86114号公報)に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるとの拒絶の理由を通知しているが、令和 4年 7月22日付け手続補正において、「前記回路は、前記容量の変化に基づいてタッチの場所および前記タッチの力を検出」するという技術的事項を有するものとなった。
当該技術的事項は、原査定における引用文献1及び当審拒絶理由3及び4における引用文献(特開2011−86114号公報)には記載されておらず、本願優先日前における周知技術でもないので、本願発明10−14は、当業者であっても、引用文献1または引用文献(特開2011−86114号公報)に基づいて容易に発明できたものではない。
したがって、この拒絶の理由は解消した。

第8 むすび

以上のとおり、本願発明1−20は、当業者が引用発明、及び引用文献2記載の技術的事項に基づいて、容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-09-06 
出願番号 P2019-212501
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
P 1 8・ 113- WY (G06F)
P 1 8・ 537- WY (G06F)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 ▲吉▼田 耕一
特許庁審判官 ▲高▼瀬 健太郎
稲葉 和生
発明の名称 ファブリック感知デバイス  
代理人 特許業務法人大塚国際特許事務所  

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