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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 G06F 審判 査定不服 特174条1項 取り消して特許、登録 G06F 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06F |
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管理番号 | 1389139 |
総通号数 | 10 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2022-10-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-11-16 |
確定日 | 2022-10-11 |
事件の表示 | 特願2019−113437「プログラム、情報処理方法及び情報処理装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 9月12日出願公開、特開2019−153353、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成26年9月16日(以下、「原出願日」という。)に出願された特願2014−187539号の一部を平成30年4月10日に新たな特許出願としたものである、特願2018−75408号の更にその一部を、令和元年6月19日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和 2年 3月 3日 :手続補正書の提出 令和 2年 7月15日付け:拒絶理由通知書 令和 2年 9月24日 :意見書、手続補正書の提出 令和 3年 2月15日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書 令和 2年 4月19日 :意見書、手続補正書の提出 令和 3年 8月 4日付け:令和2年4月19日に提出された手続補正 書に係る手続補正の却下の決定、拒絶査定 令和 3年11月16日 :拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提 出 令和 4年 5月12日付け:拒絶理由(当審拒絶理由)通知書 令和 4年 7月14日 :意見書、手続補正書の提出 第2 原査定の概要 令和2年9月24日付け手続補正書でした補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 補正後の請求項1,7,8の記載について、「前記変更手段により前記第1の送信先を前記第2の送信先に変更することで、前記第1の送信先が設定されていない状態となった場合、送信元のメールアドレスをヘッダーToとして設定する設定手段」と補正されたが、上記記載の「前記変更手段により前記第1の送信先を前記第2の送信先に変更すること」及び「前記第1の送信先が設定されていない状態となった場合」のそれぞれの記載と、明細書の段落【0077】の記載とは異なっている。 したがって、請求項1−8に係る発明は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでない。 第3 当審拒絶理由の概要 当審が令和4年5月12日付けで通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の概要は次のとおりである。 本願請求項1,5,7,8に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:特開2007−11431号公報 第4 本願発明 本願請求項1〜12に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」〜「本願発明12」という。)は、令和4年7月14日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1〜12に記載された事項により特定されるものであり、本願発明1〜3,7〜12は次のとおりの発明である。 「【請求項1】 コンピュータを、 所定の条件を満たす電子メールについて、メールアドレスが受信者に示されるヘッダーTo、Ccとして設定された送信先を、メールアドレスが受信者に示されない第2の送信先に設定変更する変更手段と、 前記変更手段により送信先の設定が変更される前の電子メールについて、第2の送信先が設定されているか否かを判定する判定手段として機能させ、 前記変更手段は、前記判定手段により前記第2の送信先が設定されていると判定された場合、前記ヘッダーTo、Ccとして設定されている送信先のうち、前記第2の送信先として設定されている送信先と同一ドメインの送信先を、前記第2の送信先に設定変更する ことを特徴とするプログラム。 【請求項2】 コンピュータを、 所定の条件を満たす電子メールについて、メールアドレスが受信者に示されるヘッダーTo、Ccとして設定された送信先を、メールアドレスが受信者に示されない第2の送信先に設定変更する変更手段と、 前記変更手段により送信先の設定が変更される前の電子メールについて、前記ヘッダーTo、Ccとして設定されているメールアドレスに対応付けられて予め記憶手段に記憶されている名前が、電子メールの本文に記載されているか否かを判定する判定手段として機能させ、 前記変更手段は、前記判定手段により前記ヘッダーTo、Ccとして設定されているメールアドレスに対応付けられた名前が当該電子メールの本文に記載されていると判定された場合、当該電子メールに前記ヘッダーTo、Ccとして設定されている送信先のうち、前記判定手段により対応する名前が記載されていると判定された送信先以外の送信先を、前記第2の送信先に設定変更することを特徴とするプログラム。 【請求項3】 コンピュータを、 所定の条件を満たす電子メールについて、メールアドレスが受信者に示されるヘッダーTo、Ccとして設定された送信先を、メールアドレスが受信者に示されない第2の送信先に設定変更する変更手段と、 前記変更手段により送信先の設定が変更された電子メールの送信を保留する制御手段と、 前記制御手段により保留された電子メールに対して、監査画面を介して監査者による送信可否の指示を受け付ける受付手段として機能させ、 前記監査画面には、前記変更手段により前記第2の送信先に設定変更された送信先が他の送信先と識別可能に表示されることを特徴とするプログラム。」 「【請求項7】 情報処理装置における情報処理方法であって、 所定の条件を満たす電子メールについて、メールアドレスが受信者に示されるヘッダーTo、Ccとして設定された送信先を、メールアドレスが受信者に示されない第2の送信先に設定変更する変更工程と、 前記変更工程において送信先の設定が変更される前の電子メールについて、第2の送信先が設定されているか否かを判定する判定工程とを有し、 前記変更工程は、前記判定工程で前記第2の送信先が設定されていると判定された場合、前記ヘッダーTo、Ccとして設定されている送信先のうち、前記第2の送信先として設定されている送信先と同一ドメインの送信先を、前記第2の送信先に設定変更することを特徴とする情報処理方法。 【請求項8】 情報処理装置における情報処理方法であって、 所定の条件を満たす電子メールについて、メールアドレスが受信者に示されるヘッダーTo、Ccとして設定された送信先を、メールアドレスが受信者に示されない第2の送信先に設定変更する変更工程と、 前記変更工程で送信先の設定が変更される前の電子メールについて、前記ヘッダーTo、Ccとして設定されているメールアドレスに対応付けられて予め記憶手段に記憶されている名前が、電子メールの本文に記載されているか否かを判定する判定工程とを有し、 前記変更工程は、前記判定工程において前記ヘッダーTo、Ccとして設定されているメールアドレスに対応付けられた名前が当該電子メールの本文に記載されていると判定された場合、当該電子メールに前記ヘッダーTo、Ccとして設定されている送信先のうち、前記判定工程により対応する名前が記載されていると判定された送信先以外の送信先を、前記第2の送信先に設定変更することを特徴とする情報処理方法。 【請求項9】 情報処理装置における情報処理方法であって、 所定の条件を満たす電子メールについて、メールアドレスが受信者に示されるヘッダーTo、Ccとして設定された送信先を、メールアドレスが受信者に示されない第2の送信先に設定変更する変更工程と、 前記変更手段において送信先の設定が変更された電子メールの送信を保留する制御工程と、 前記制御工程において保留された電子メールに対して、監査画面を介して監査者による送信可否の指示を受け付ける受付工程とを有し、 前記監査画面には、前記変更手段により前記第2の送信先に設定変更された送信先が他の送信先と識別可能に表示されることを特徴とする情報処理方法。 【請求項10】 情報補処理装置であって、 所定の条件を満たす電子メールについて、メールアドレスが受信者に示されるヘッダーTo、Ccとして設定された送信先を、メールアドレスが受信者に示されない第2の送信先に設定変更する変更手段と、 前記変更手段により送信先の設定が変更される前の電子メールについて、第2の送信先が設定されているか否かを判定する判定手段として機能させ、 前記変更手段は、前記判定手段により前記第2の送信先が設定されていると判定された場合、前記ヘッダーTo、Ccとして設定されている送信先のうち、前記第2の送信先として設定されている送信先と同一ドメインの送信先を、前記第2の送信先に設定変更することを特徴とする情報処理装置。 【請求項11】 情報補処理装置であって、 所定の条件を満たす電子メールについて、メールアドレスが受信者に示されるヘッダーTo、Ccとして設定された送信先を、メールアドレスが受信者に示されない第2の送信先に設定変更する変更手段と、 前記変更手段により送信先の設定が変更される前の電子メールについて、前記ヘッダーTo、Ccとして設定されているメールアドレスに対応付けられて予め記憶手段に記憶されている名前が、電子メールの本文に記載されているか否かを判定する判定手段とを有し、 前記変更手段は、前記判定手段により前記ヘッダーTo、Ccとして設定されているメールアドレスに対応付けられた名前が当該電子メールの本文に記載されていると判定された場合、当該電子メールに前記ヘッダーTo、Ccとして設定されている送信先のうち、前記判定手段により対応する名前が記載されていると判定された送信先以外の送信先を、前記第2の送信先に設定変更することを特徴とする情報処理装置。 【請求項12】 情報補処理装置であって、 所定の条件を満たす電子メールについて、メールアドレスが受信者に示されるヘッダーTo、Ccとして設定された送信先を、メールアドレスが受信者に示されない第2の送信先に設定変更する変更手段と、 前記変更手段により送信先の設定が変更された電子メールの送信を保留する制御手段と、 前記制御手段により保留された電子メールに対して、監査画面を介して監査者による送信可否の指示を受け付ける受付手段とを有し、 前記監査画面には、前記変更手段により前記第2の送信先に設定変更された送信先が他の送信先と識別可能に表示されることを特徴とする情報処理装置。」 なお、本願発明4〜6は、本願発明1〜3のいずれかを減縮した発明である。 第5 引用文献の記載、引用発明等 1 引用文献1、引用発明 (1)当審拒絶理由にて引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審による。)。 「【0013】 図1は、本発明の電子メール送信装置の一例である電子メールクライアント20を含む電子メール送受信システム10の構成を示す。電子メール送受信システム10は、ユーザの端末において動作する電子メールクライアント20と、電子メールの受信を制御する電子メール受信サーバ12と、電子メールの送信を制御する電子メール送信サーバ14と、それらを接続するインターネット16を含む。電子メール受信サーバ12は、POP(Post Office Protocol)サーバなどにより実現され、電子メール送信サーバ14は、SMTP(Simple Mail Transfer Protocol)サーバなどにより実現される。電子メールクライアント20は、パーソナルコンピュータなどの端末装置において動作し、ユーザが作成した電子メールを、インターネット16を介して電子メール送信サーバ14へ送信するとともに、電子メール受信サーバ12に着信したユーザ宛の電子メールを、インターネット16を介して受信する。 【0014】 電子メールクライアント20は、受信部22、表示部24、作成部26、送信部28、条件設定部30、条件保持部32、受信簿34、及び送信簿36を含む。これらの構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。 【0015】 受信部22は、インターネット16を介して、電子メール受信サーバ12から、ユーザのメールアドレス宛に着信した電子メールを受信する。受信された電子メールは、受信簿34に格納される。表示部24は、受信簿34に格納された受信済みの電子メールや、送信簿36に格納された送信済みの電子メールを表示する。作成部26は、ユーザが送信する電子メールを作成する。作成された電子メールは、送信部28によりインターネット16を介して電子メール送信サーバ14へ送信されるとともに、送信簿36に格納される。 【0016】 後で詳述するように、作成部26は、TO欄又はCC欄に指定されたメールアドレスをBCC欄に変換する機能を有しているが、この機能によりBCC欄に変換されて送信された送信済みメールは、送信簿36において、他の送信済みメールと識別可能に保持される。表示部24は、送信簿36に格納された送信済みメールを提示する際に、変換されて送信されたメールと他のメールを識別可能に提示する。これにより、ユーザが送信済みメールを確認するときに、変換されたものとそうでないものを識別することができる。例えば、誤ってTO欄又はCC欄にメールアドレスを指定して、本実施の形態の機能によりBCC欄に変換されて適切に送信されたメールを、後から確認することができる。 【0017】 条件保持部32は、上述した機能を実現するために、作成部26により作成された電子メールの送信を制御するための条件を保持する。条件設定部30は、ユーザから条件の設定を受け付けるための入力画面を表示部24により提示し、受け付けた条件を条件保持部32に格納する。 【0018】 図2は、図1に示した作成部の内部構成を示す図である。作成部26は、編集部40、TO欄宛先受付部42、CC欄宛先受付部44、BCC欄宛先受付部46、変換部48、送信可否判定部50、送信数チェック部52を含む。これらの構成も、ハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できる。 【0019】 編集部40は、編集中の電子メールを表示部24により表示し、図示しないユーザインタフェイスを介してユーザから電子メールの編集指示などを受け付けて、電子メールを編集する。TO欄宛先受付部42は、電子メールの宛先としてTO欄に記述するメールアドレスの指定を受け付ける。CC欄宛先受付部44は、電子メールの宛先としてCC欄に記述するメールアドレスの指定を受け付ける。BCC欄宛先受付部46は、電子メールの宛先としてBCC欄に記述するメールアドレスの指定を受け付ける。TO欄及びCC欄に記述されたメールアドレスは、電子メールの受信者に提示されるので、TO欄及びCC欄は第1の宛先の一例であり、TO欄宛先受付部42及びCC欄宛先受付部44は第1の宛先受付部の一例である。BCC欄に記述されたメールアドレスは、電子メールの受信者に秘されるので、BCC欄は第2の宛先の一例であり、BCC欄宛先受付部46は第2の宛先受付部の一例である。 【0020】 送信数チェック部52は、条件保持部32に保持された、一度に送信可能なメールアドレスの数の上限に関する条件を参照して、TO欄宛先受付部42、CC欄宛先受付部44、BCC欄宛先受付部46が受け付けたメールアドレスの数が上限を超えていないかチェックする。送信数チェック部52は、チェックした結果に基づいて、条件保持部32に保持された動作を実行する。送信可否判定部50は、条件保持部32に保持された、宛先のメールアドレスに対するメールの送信の可否に関する条件を参照して、TO欄宛先受付部42、CC欄宛先受付部44、BCC欄宛先受付部46が受け付けたメールアドレスに対するメールの送信が可能か否かを判定する。送信可否判定部50は、判定結果に基づいて、条件保持部32に保持された動作を実行する。変換部48は、条件保持部32に保持された条件にしたがって、TO欄宛先受付部42又はCC欄宛先受付部44が受け付けたメールアドレスをBCC欄に変換する。以下、これらの動作の詳細について説明する。 【0021】 図3は、条件設定部30が表示部24によりユーザに提示した条件設定画面の一例を示す。図3では、TO欄、CC欄、BCC欄のそれぞれについて、一度に送信可能なメールアドレスの数の上限を設定するための条件設定画面60が示されている。ユーザは、TO欄、CC欄、BCC欄のそれぞれについて、アドレス数の上限値を入力することができる。また、上限を超えた場合の動作を設定することができる。 【0022】 例えば、ユーザが「許可しない」という条件を設定した場合は、送信数チェック部52は、その宛先欄に指定されたメールアドレスの数が、設定された上限値を超えているときに、エラー画面を出力してメールの送信を禁止する。ユーザが「警告する」という条件を設定した場合は、送信数チェック部52は、警告画面を出力してメールを送信してよいか否かをユーザに問い合わせる。すなわち、送信数チェック部52は報知部の機能を兼ねる。ユーザが「自動的にBCCに変換する」という条件を設定した場合は、送信数チェック部52は、TO欄及びCC欄に指定されたメールアドレスを自動的にBCC欄に変換するよう変換部48に指示する。変換部48の動作の詳細については後述する。変換部48が変換を行った後に、再度、送信数チェック部52がメールアドレスの数をチェックしてもよい。ユーザが「何もしない」という条件を設定した場合は、送信数チェック部52は、指定されたメールアドレスの数が上限を超えていたとしても、そのまま電子メールの送信を許可する。」 「【図1】 」 「【図2】 」 「【図3】 」 (2)上記(1)から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「ユーザの端末において動作する電子メールクライアント20と、電子メールの受信を制御する電子メール受信サーバ12と、電子メールの送信を制御する電子メール送信サーバ14と、それらを接続するインターネット16を含む、電子メール送受信システム10であって、 電子メールクライアント20は、表示部24、作成部26、条件設定部30、条件保持部32を含み、これらの構成は、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現され、 条件保持部32は、作成部26により作成された電子メールの送信を制御するための条件を保持し、条件設定部30は、ユーザから条件の設定を受け付けるための入力画面を表示部24により提示し、受け付けた条件を条件保持部32に格納し、 作成部26は、TO欄宛先受付部42、CC欄宛先受付部44、BCC欄宛先受付部46、変換部48、送信数チェック部52を含み、 送信数チェック部52は、条件保持部32に保持された、一度に送信可能なメールアドレスの数の上限に関する条件を参照して、TO欄宛先受付部42、CC欄宛先受付部44、BCC欄宛先受付部46が受け付けたメールアドレスの数が上限を超えていないかチェックし、送信数チェック部52は、チェックした結果に基づいて、条件保持部32に保持された動作を実行し、 条件設定部30が表示部24によりユーザに提示した条件設定画面の一例において、ユーザは、TO欄、CC欄、BCC欄のそれぞれについて、アドレス数の上限値を入力することができ、また、上限を超えた場合の動作を設定することができ、 例えば、ユーザが「自動的にBCCに変換する」という条件を設定した場合は、送信数チェック部52は、TO欄及びCC欄に指定されたメールアドレスを自動的にBCC欄に変換するよう変換部48に指示する、電子メール送受信システム10。」 第6 当審拒絶理由について(引用発明との対比・判断) 1 本願発明1について (1)対比 ア 本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。 (ア)引用発明の「ユーザの端末」は、「ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現され」る「電子メールクライアント20」が「動作」するものであり、コンピュータで構成されることが明らかであるから、本願発明1の「コンピュータ」に相当する。 (イ)引用発明は、「電子メールクライアント20」が「作成部26、条件設定部30、条件保持部32」を「含み」、「条件保持部32は、作成部26により作成された電子メールの送信を制御するための条件を保持し」、「作成部26」が「含」む「送信数チェック部52」は、「条件保持部32に保持された、一度に送信可能なメールアドレスの数の上限に関する条件を参照して、TO欄宛先受付部42、CC欄宛先受付部44、BCC欄宛先受付部46が受け付けたメールアドレスの数が上限を超えていないかチェックし、送信数チェック部52は、チェックした結果に基づいて、条件保持部32に保持された動作を実行」するものである。 そして、「条件保持部32に保持された動作」の内容は、「アドレス数」が「上限を超えた場合の動作」について、「例えば、ユーザが「自動的にBCCに変換する」という条件」を「条件設定部30」の「条件設定画面」において「設定した場合」に、「TO欄及びCC欄に指定されたメールアドレスを自動的にBCC欄に変換するよう」、「作成部26」が「含」む「変換部48に指示する」というものである。 したがって、引用発明の「電子メールクライアント20」の「変換部48」は、「アドレス数」が「上限を超えた」との条件を満たす「電子メール」について、「TO欄及びCC欄に指定されたメールアドレスを自動的にBCC欄に変換する」ものであるといえる。 ここで、「アドレス数」が「上限を超えた」との条件は、本願発明1の「所定の条件」に含まれ、「変換部48」は、本願発明1の「変更手段」に相当する。 また、引用文献1の「TO欄とCC欄に指定されたメールアドレスは受信者に示されるので、受信者は、同じ電子メールが誰に宛てて送信されたのかを見ることができるが、BCC欄に指定されたメールアドレスは受信者に示されない。」(段落【0002】)との記載を参酌すると、引用発明の「TO欄及びCC欄に指定されたメールアドレスを自動的にBCC欄に変換する」ことは、本願発明1の「メールアドレスが受信者に示されるヘッダーTo、Ccとして設定された送信先を、メールアドレスが受信者に示されない第2の送信先に設定変更する」ことに相当する。 (ウ)引用発明は、「電子メールクライアント20」に含まれる「作成部26」等の「構成」が、「ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現され」るものであるから、引用発明の当該「プログラム」は、「ユーザの端末」を、「変換部48」として機能させる部分を含むといえる。 イ 上記アから、本願発明1と引用発明とは、以下の点で一致する。 (一致点) 「コンピュータを、 所定の条件を満たす電子メールについて、メールアドレスが受信者に示されるヘッダーTo、Ccとして設定された送信先を、メールアドレスが受信者に示されない第2の送信先に設定変更する変更手段として機能させるプログラム。」 ウ また、本願発明1と引用発明とは、以下の点で相違する。 (相違点1) 本願発明1の「プログラム」は、「コンピュータ」を「前記変更手段により送信先の設定が変更される前の電子メールについて、第2の送信先が設定されているか否かを判定する判定手段として機能させ」るものであるとともに、「前記変更手段」が、「前記判定手段により前記第2の送信先が設定されていると判定された場合、前記ヘッダーTo、Ccとして設定されている送信先のうち、前記第2の送信先として設定されている送信先と同一ドメインの送信先を、前記第2の送信先に設定変更する」ものであるのに対して、引用発明は、「作成部26により作成された電子メール」について、「メールアドレス」が「BCC欄」に「指定され」ているか否かを判定することを含むものではなく、「指定され」ていると判定された場合に上記「メールアドレス」と同一ドメインの「TO欄及びCC欄に指定されたメールアドレス」を「BCC欄に変換する」ものでもない点。 (2)判断 そこで、相違点1について検討する。 メールアドレスが受信者に示されない送信先である第2の送信先が電子メールに設定されているか否かを判定し、設定されていると判定された場合、ヘッダーTo、Ccとして設定されている送信先のうち、第2の送信先として設定されている送信先と同一ドメインの送信先を、第2の送信先に設定変更することは、引用文献1には記載されておらず、原出願日前において周知技術であったともいえない。 よって、本願発明1は、当業者であっても、引用文献1に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 2 本願発明2について (1)対比 本願発明2と引用発明とを対比すると、本願発明2における本願発明1と共通の構成について、上記1(1)アと同様のことがいえることから、本願発明2と引用発明とは、同イで述べた点で一致し、また、次の点で相違する。 (相違点2) 本願発明2の「プログラム」は、「コンピュータ」を「前記変更手段により送信先の設定が変更される前の電子メールについて、前記ヘッダーTo、Ccとして設定されているメールアドレスに対応付けられて予め記憶手段に記憶されている名前が、電子メールの本文に記載されているか否かを判定する判定手段として機能させ」るものであるとともに、「前記変更手段」が、「前記判定手段により前記ヘッダーTo、Ccとして設定されているメールアドレスに対応付けられた名前が当該電子メールの本文に記載されていると判定された場合、当該電子メールに前記ヘッダーTo、Ccとして設定されている送信先のうち、前記判定手段により対応する名前が記載されていると判定された送信先以外の送信先を、前記第2の送信先に設定変更する」ものであるのに対して、引用発明は、「作成部26により作成された電子メール」の「TO欄及びCC欄に指定されたメールアドレス」に対応付けられて予め記憶手段に記憶されている名前が、「電子メール」の本文に記載されているか否かを判定することを含むものではなく、記載されていると判定された場合に、「TO欄及びCC欄に指定されたメールアドレス」のうちの記載されていると判定されたもの以外の「メールアドレス」を「BCC欄に変換する」ものでもない点。 (2)判断 そこで、相違点2について検討する。 ヘッダーTo、Ccとして設定されているメールアドレスについて、これに対応付けられて予め記憶手段に記憶されている名前が、電子メールの本文に記載されているか否かを判定し、記載されていると判定された場合、当該電子メールにヘッダーTo、Ccとして設定されている送信先のうち、対応する名前が本文に記載されていると判定された送信先以外の送信先を、メールアドレスが受信者に示されない第2の送信先に設定変更することは、引用文献1には記載されておらず、原出願日前において周知技術であったともいえない。 よって、本願発明2は、当業者であっても、引用文献1に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 3 本願発明3について (1)対比 本願発明3と引用発明とを対比すると、本願発明3における本願発明1と共通の構成について、上記1(1)アと同様のことがいえることから、本願発明3と引用発明とは、同イで述べた点で一致し、また、次の点で相違する。 (相違点3) 本願発明3の「プログラム」は、「コンピュータ」を「前記変更手段により送信先の設定が変更された電子メールの送信を保留する制御手段と、前記制御手段により保留された電子メールに対して、監査画面を介して監査者による送信可否の指示を受け付ける受付手段として機能させ」るものであるとともに、「前記監査画面には、前記変更手段により前記第2の送信先に設定変更された送信先が他の送信先と識別可能に表示される」ものであるのに対して、引用発明は、「TO欄及びCC欄に指定されたメールアドレスを自動的にBCC欄に変換」した「電子メール」の送信を保留し、当該保留された「電子メール」に対して、監査画面を介して監査者による送信可否の指示を受け付けることを含むものではない点。 (2)判断 そこで、相違点3について検討する。 メールアドレスが受信者に示されるヘッダーTo、Ccとして設定された送信先を、メールアドレスが受信者に示されない第2の送信先に自動的に設定変更した電子メールの送信を保留し、当該保留された電子メールに対する監査者による送信可否の指示を、前記第2の送信先に設定変更された送信先が他の送信先と識別可能に表示される監査画面を介して受け付けるようにすることは、引用文献1には記載されておらず、原出願日前において周知技術であったともいえない。 よって、本願発明3は、当業者であっても、引用文献1に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 4 本願発明4〜12について 本願発明4〜6は、本願発明1〜3のいずれかを減縮した発明であり、本願発明7〜9、10〜12は、それぞれ、本願発明1〜3に対応する「情報処理方法」、「情報処理装置」の発明であって本願発明1〜3と発明のカテゴリが相違するのみである。 そうすると、本願発明4〜12は、相違点1〜3のいずれかに係る発明特定事項又はこれに対応する発明特定事項を含むものであるから、本願発明1〜3と同様の理由により、当業者であっても引用文献1に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 5 小括 以上のとおりであるから、当審拒絶理由は解消した。 第7 原査定についての判断 令和4年7月14日に提出された手続補正書により補正された請求項1〜12は、いずれも、「前記変更手段により前記第1の送信先を前記第2の送信先に変更すること」及び「前記第1の送信先が設定されていない状態となった場合」についての記載を含まないものであり、当該補正は、出願当初明細書等に記載した事項の範囲内のものである。 よって、原査定を維持することはできない。 第8 むすび 以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2022-09-27 |
出願番号 | P2019-113437 |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WY
(G06F)
P 1 8・ 121- WY (G06F) P 1 8・ 575- WY (G06F) P 1 8・ 55- WY (G06F) |
最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
▲吉▼田 耕一 |
特許庁審判官 |
▲高▼瀬 健太郎 富澤 哲生 |
発明の名称 | プログラム、情報処理方法及び情報処理装置 |
代理人 | 特許業務法人ひのき国際特許事務所 |
代理人 | 特許業務法人ひのき国際特許事務所 |