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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G08B 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G08B |
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管理番号 | 1389146 |
総通号数 | 10 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2022-10-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-11-19 |
確定日 | 2022-09-20 |
事件の表示 | 特願2017−121373「表示灯付発信機」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 1月17日出願公開、特開2019− 8404、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成29年6月21日の出願であって、その手続の経緯の概要は、以下のとおりである。 令和3年 2月22日付け 拒絶理由通知書 令和3年 4月14日 意見書・手続補正書 令和3年 9月29日付け 拒絶査定 令和3年11月19日 審判請求書・手続補正書 令和4年 1月 7日付け 前置報告書 第2 原査定の概要 令和3年9月29日付け拒絶査定(以下、「原査定」という。)の概要は次のとおりである。 本願の請求項1−2に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 また、本願の請求項3に係る発明は、以下の引用文献1−2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開2017−084023号公報 2.特開2013−012435号公報 第3 本願発明 本願請求項1−2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」−「本願発明2」という。)は、令和3年11月19日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1−2に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 監視領域における異常を通報する表示灯付発信機であって、 発光手段と、 前記発光手段が発光した光を導光する1の導光手段と、 前記発光手段及び前記導光手段を覆う表カバーと、を備え、 前記表カバーは、各々が前記導光手段の、相互に異なる複数の一部各々に対応する複数の透過領域であって、前記導光手段が導光した光を前記表示灯付発信機の外部に透過する前記複数の透過領域を有する、 表示灯付発信機。 【請求項2】 前記導光手段は、前記表カバーの周縁に沿う環状となっており、 前記複数の透過領域各々は、前記表カバーの周縁に沿う弧状となっており、前記導光手段の、相互に異なる複数の一部と各々対向して重なる位置に設けられている、 請求項1に記載の表示灯付発信機。」 第4 引用文献、引用発明等 1.引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審において付与した。以下、同様。)。 「【発明を実施するための形態】 【0031】 本発明の実施形態について、図面に沿って詳細に説明する。図1には、本発明の第1の実施形態における表示灯装置1の正面図を、図2には、表示灯装置1の斜視図を、図3には、図1のA−A’ 断面図を、それぞれ示している。なお、図3において火災発信機3の内部構造は省略している。この表示灯装置1 は、建物の壁面または、建物の壁面に設けられる機器収容箱に埋め込まれて使用されるものであって、表示灯装置1内に設けられる防災機器である火災発信機3の位置を示す光表示部14を有しており、表示灯装置1の前方または側方から、光表示部14からの光を視認できるように構成されている。 【0032】 表示灯装置1は、扁平円筒状の筐体2を有し、筐体2の中央部には、防災機器である火災発信機3が配置されている。火災発信機3は、前面に円形状の操作部20と、略四角形状の扉部21とを有している。火災が発生した際には、押し釦スイッチからなる操作部20を押圧操作することで、他の機器に火災発生信号を送信することができる。また、扉部21は開閉自在に形成されており、内部には非常用電話を接続するための端子(図示しない)が配置される。 【0033】 筐体2は、室内側に露出する前面部10と、壁面または機器収容箱に埋め込まれて室内側には露出しない周面部11とを有している。図3に示すように、前面部10は、設置面となる壁面または機器収容箱の室内面4と略面一状となるように配置される。すなわち、筐体2は前面部10のみが室内側に露出する。前面部10の中央部には、前述の火災発信機3が配置され、その外周に沿い、弧状の凹部12が2つ配置される。凹部12は、それぞれ左右に対称となるように配置されている。」 「【0039】 図4には、図3のうち発光部16及び光表示部14付近の拡大図を示している。この図では、発光部16からの光が透光部13に達するまでの光路について、破線にて示している。図4に示すように、発光部16からの光は発散光であり、まず、筐体2の光反射部17に向かって進み、さらに、光反射部17で反射して透光部13に向かって進む。透光部13は、前述のように表面がレンズ面となっているので、透光部13を透過した光は、さらに広がりながら光表示部14により室内側に反射される。」 「【0046】 凹部12の開口部分には、前面部10と同じ方向に面する板状の透明部材15が設けられている。これにより、凹部12内の光表示部14や透光部13が汚れるなどして、光が視認しにくくなることを防止できる。」 「【0073】 次に、本発明の第7の実施形態について説明する。本形態の表示灯装置は、第1の実施形態の表示灯装置と概ね同じ構成を有しているので、共通する部分についての説明は省略する。図13 には、第7の実施形態における表示灯装置のライトガイド部33 及び発光部16の構成を表した正面図を示している。この図においては、筐体2の外形と発光部16及びライトガイド部33以外は破線にて表している。 【0074】 本形態の表示灯装置では、透光部の代わりに弧状に形成されたライトガイド部33が設けられている。また、発光部16は、ライトガイド部33の両端面にそれぞれ対向するように配置されている。ライトガイド部33は、筐体2の周方向に沿って光を透過させることができると共に、透過している光の一部を、周方向の各位置において外周側に向かって放出できるように構成されている。このために、ライトガイド部33の内周側面には、微細な凹凸が形成されている。ライトガイド部33の端面から入射した光は、ライトガイド部33の内周側面によって一部が外周側に向かって反射し、それ以外の光は周方向に沿って進む。ライトガイド部33の内周側面に形成される凹凸は、ライトガイド部33の周方向に沿って外周側面から出射される反射光の強度が、略一定となるように設定される。本形態では、ライトガイド部33の両端面からそれぞれ光が入射されるので、一方の発光部16からの光は、ライトガイド部33の周方向長さの半分の長さに渡って、略一定の強度で外周側に向かって出射されればよい。 【0075】 このように、発光部16からの光を、ライトガイド部33から出射させるようにすることで、ライトガイド部33からの光が、筐体2の周方向に沿って均一となり、光のむらをなくして意匠性を向上させると共に、光の視認性も良好にすることができる。なお、本形態では、第1の実施形態の形状の表示灯装置にライトガイド部33を適用したが、第2の実施形態の形状の表示灯装置においても、透光部の代わりにライトガイド部を設けることができる。」 「【図3】 」 「【図4】 」 上記【0039】、【図3】及び【図4】を参照すると、発光部16及び透光部13は筐体2の前面部10及び透明部材15の下に配置することが見て取れる。 「【図13】 」 したがって、上記引用文献1には、特に「第7の実施形態」の「表示灯装置」に注目すると、当該「第7の実施形態」の「表示等装置」は、「第1の実施形態の表示灯装置と概ね同じ構成を有し、」「共通する部分についての説明は省略」(【0073】参照)されていることから、第1の実施形態(引用文献1の段落【0031】−【0046】)の構成を踏まえた第7の実施形態として、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「扁平円筒状の筐体2を有し、筐体2の中央部には、防災機器である火災発信機3が配置されている表示灯装置1において、 火災発信機3は、前面に円形状の操作部20と、略四角形状の扉部21とを有しており、 火災が発生した際には、押し釦スイッチからなる操作部20を押圧操作することで、他の機器に火災発生信号を送信することができ(【0032】)、 筐体2は、室内側に露出する前面部10と、壁面または機器収容箱に埋め込まれて室内側には露出しない周面部11とを有しており、 前面部10の中央部には、前述の火災発信機3が配置され、その外周に沿い、弧状の凹部12が2つ配置され(【0033】)、 凹部12の開口部分には、前面部10と同じ方向に面する板状の透明部材15が設けられており(【0046】)、 発光部16及び透光部13は筐体2の前面部10及び透明部材15の下に配置し(【図3】、【図4】、【0039】)、 透光部の代わりに弧状に形成されたライトガイド部33が設けられており、 発光部16は、ライトガイド部33の両端面にそれぞれ対向するように配置されており(【0074】)、 発光部16からの光を、ライトガイド部33から出射させるように(【0075】) する表示灯装置1。」 2.引用文献2について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0018】 図3は、前記クリアランスランプ15を示した平面図である。図3において、矢印αの方向は車両の前方方向に一致づけられ、クリアランスランプ15は、その一端Aが車両後方に他端Bが車両前方に位置づけられるように配置されるようになっている。クリアランスランプ15は、上述したように、たとえば2個の発光素子17A、17Bと、導光板16と、によって構成されている。」 「【0020】 導光板16の光入射面16Bは、導光板16を平面的に観た場合に、光照射面16A側から突起する台形の突起部20の上辺に相当する側壁面に形成されるようになっている。これにより、導光板16は、台形の突起部20によって、光入射面16Bから光照射面16A側にかけて幅広となるように構成され、発光素子17A、17Bから所定の角度範囲内で放射される光のほとんどを導光板16内に効率良く導くことができるようになっている。なお、この実施態様の場合、発光素子17A、17Bは2個備えられており、その数に対応させて台形の突起部20も2個並設されて設けられている。」 上記記載から、引用文献2には次の技術的事項が記載されているものと認められる。 「クリアランスランプ15において、 2個の発光素子17A、17Bと、導光板16と、によって構成されおり、 導光板16の光入射面16Bは、導光板16を平面的に観た場合に、光照射面16A側から突起する台形の突起部20の上辺に相当する側壁面に形成されるようになっており、 発光素子17A、17Bは2個備えられており、その数に対応させて台形の突起部20も2個並設されて設けられていること。」 第5 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 ア「監視領域における異常を通報する表示灯付発信機であって、」について 引用発明の「火災が発生した際」は、当該「火災」の影響により、人命や建物、物品等に損傷を与える可能性のある、日常とは異なる状況であることは明らかであるから、当該「火災」の「発生」は、本願発明1の「異常」に相当する。 そして、引用発明の「表示灯装置1」は、「火災が発生した際には、押し釦スイッチからなる操作部20を押圧操作することで、他の機器に火災発生信号を送信することができ」る「火災発信機3」が「配置されて」いることから、本願発明1の「監視領域 における異常を通報する表示灯付発信機」と「異常を通報する表示灯付発信機」である点で共通する。 イ「発光手段と、」について 引用発明の「発光部16」は本願発明1の「発光手段」に相当する。 ウ「前記発光手段が発光した光を導光する1の導光手段と、」について 引用発明の「ライトガイド部33」は、本願発明1の「導光手段」に相当する。 また、引用発明の「ライトガイド部33」は「発光部16からの光を、ライトガイド部33から出射させるようにする」ことから、本願発明1の「導光手段」と「前記発光手段が発光した光を導光する」点で共通する。 ここで、引用発明の「ライトガイド部33」は、「火災発信機3」の「外周に沿い、弧状の凹部12が2つ配置され」ているそれぞれの「凹部」に「弧状に形成され」ていることから、その「2つ」のうちの「1つ」の「ライトガイド部33」は、本願発明1の「前記発光手段が発光した光を導光する1の導光手段」に相当する。 エ「前記発光手段及び前記導光手段を覆う表カバーと、」について 引用発明において、「発光部16及び透光部15は筐体2の前面部10及び透明部材15の下に配置」し、透光部15の代わりにライトガイド部33が設けられることから、発光部16及びライトガイド部33も筐体2の前面部10及び透明部材15の下に配置されるといえる。 してみると、引用発明の「発光部16」及び「ライトガイド部33」を、その下に配置する「前面部10」及び「透明部材15」は、本願発明1の「前記発光手段及び前記導光手段を覆う表カバー」に相当する。 オ「前記表カバーは、各々が前記導光手段の、相互に異なる複数の一部各々に対応する複数の透過領域であって、前記導光手段が導光した光を前記表示灯付発信機の外部に透過する前記複数の透過領域を有する、」について 引用発明の「透明部材15」は透明であることから、引用発明の「前面部10」及び「透明部材15」は、本願発明1の「表カバー」と「前記導光手段が導光した光を前記表示灯付発信機の外部に透過する透過領域を有する」点で共通する。 そして、引用発明の「透明部材15」は「凹部12の開口部分に」設けられており、引用発明の「ライトガイド部33」は、「火災発信機3」の「外周に沿い、弧状の凹部12が2つ配置され」ているそれぞれの「凹部」に「弧状に形成され」ていることから、1つの「透明部材15」は1つの「ライトガイド部33」に対応する。 よって、引用発明と、本願発明1の「前記表カバーは、各々が前記導光手段の、相互に異なる複数の一部各々に対応する複数の透過領域であって、前記導光手段が導光した光を前記表示灯付発信機の外部に透過する前記複数の透過領域を有する」構成とは、「前記表カバーは、前記導光手段に対応する透過領域であって、前記導光手段が導光した光を前記表示灯発信機の外部に透過する透過領域を有する」点で共通する。 以上のことから、本願発明1と引用発明とは、 「異常を通報する表示灯付発信機であって、 発光手段と、 前記発光手段が発光した光を導光する1の導光手段と、 前記発光手段及び前記導光手段を覆う表カバーと、を備え、 前記表カバーは、前記導光手段に対応する透過領域であって、前記導光手段が導光した光を前記表示灯発信機の外部に透過する透過領域を有する、 表示灯付発信機。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点) 相違点1 異常について、本願発明1では、「監視領域における」異常であるのに対し、引用発明には、そのような異常の監視領域について特定されていない点。 相違点2 1の導光手段を覆う表カバーの構成が、本願発明1では、「各々が前記導光手段の、相互に異なる複数の一部各々に対応する複数の透過領域」を有するのに対し、引用発明は、「各々が前記導光手段の、相互に異なる複数の一部各々に対応する複数の透過領域」であることは特定されていない点。 (2)相違点についての判断 事案に鑑みて、上記相違点2について先に検討する。 上記相違点2に係る本願発明1の構成は、引用文献1及び引用文献2のいずれにも記載されていない。 また、当審で新たに挙げる特開2012−089290号公報(令和4年1月7日付前置報告書を参照)には、特に段落【0022】を参照すると、照明用光源において、円環状または円弧状の導光体を用いることが記載されているものの、上記相違点2に係る本願発明1の「各々が前記導光手段の、相互に異なる複数の一部各々に対応する複数の透過領域」という構成は記載されていない。 仮に、上記構成が周知技術であったとしても、引用発明は、「防災機器である火災発信機3が配置され」る「表示灯装置」であって、防災のための表示灯の光の視認性を良好にすることは自明の課題であるといえるところ、引用発明において、当該視認性を良好にすべき1の導光手段に対応する1つの透過領域を、複数とすること、すなわち、1つの透過領域の一部に光を透過しない領域を設けることで複数の透過領域を構成することは、視認性を低下させることになるから、動機付けが存在しない。 したがって、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 2.本願発明2について 本願発明2も、上記相違点2に係る本願発明1の「各々が前記導光手段の、相互に異なる複数の一部各々に対応する複数の透過領域」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 第6 原査定について 審判請求時の補正により、本願発明1−2は、上記相違点2に係る事項を含むものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1−2に記載された発明に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。 また、拒絶査定において、拒絶査定の理由以外に新たに発見した拒絶の理由として、請求項3−6について特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、また、請求項4−6について特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない旨が指摘されているが、審判請求時の補正により、請求項3−6は削除されたため、当該拒絶の理由は解消した。 したがって、原査定の理由を維持することはできない。 第7 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2022-09-07 |
出願番号 | P2017-121373 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G08B)
P 1 8・ 537- WY (G08B) |
最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
角田 慎治 |
特許庁審判官 |
赤穂 美香 衣鳩 文彦 |
発明の名称 | 表示灯付発信機 |
代理人 | 斉藤 達也 |