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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1389151
総通号数 10 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-11-24 
確定日 2022-10-11 
事件の表示 特願2020−202730「コンピュータプログラム、方法、及び、サーバ」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 6月17日出願公開、特開2022− 90367、請求項の数(25)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、令和2年12月7日の出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
令和3年 3月12日付け:拒絶理由通知書
令和3年 5月14日: 意見書、手続補正書の提出
令和3年 8月11日付け:拒絶査定
令和3年11月24日: 審判請求書、手続補正書の提出
令和4年 5月25日付け:拒絶理由通知書(以下、「当審拒絶理由」と
いう。)
令和4年 7月25日: 意見書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和3年8月11日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

理由1(進歩性) 本願請求項1−32に係る発明は、以下の引用文献A−Bに基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
A.韓国公開特許第10−2018−0079145号公報
B.特開2012−118919号公報

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は、以下のとおりである。

理由1(明確性) この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
(1) 請求項1には、「前記第1モードとは異なる第2モード」と記載されるが、現在の請求項1の記載では、「第1モード」が規定されていないことによって、「第1モード」と「第2モード」は、何がどのように「異なる」モードであるのかが不明確である。
また、請求項2−10、12−19についても同様である。

(2) 請求項8には、「前記第1アバター及び前記少なくとも一の第2アバターと異なる態様で表示される第3アバターを表示する」と記載される。
一方、請求項8が従属する請求項1−7は、いずれも、(表示される)第2アバターは、「前記第1ユーザによって指定されたユーザのアバターのみであ」ることを特定している。
よって、請求項1−7に従属する請求項8では、記載が不明確である。
また、請求項8を引用する、請求項9−19についても同様である。

(3) 請求項10
請求項10は、「第1仮想会場とは異なる領域」から、着席(着座)前の「三人称視点に関する表示」(「第1モード」)を経由せずに、直接「第2モード」(【図8】参照。)に移行することを特定していると理解できる。
一方、請求項10が従属する請求項1−8では、いずれも、「第1モード」を経由すると理解できる。
よって、請求項1−8に従属する請求項10では、「第2モード」に移行する前に、「第1モード」を経由するか否かが不明確である。
また、請求項10を引用する、請求項11−19についても同様である。

理由2(進歩性) 本願請求項1−29に係る発明は、引用文献1−3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.韓国公開特許第10−2018−0079145号公報(拒絶査定時の引用文献A)
2.特開2012−118919号公報(拒絶査定時の引用文献B)
3.特開2020−145654号公報

第4 本願発明
本願請求項1−25に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」−「本願発明25」という。)は、令和4年7月25日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1−25に記載された事項により特定される発明であって、本願発明1−2は以下のとおりの発明である。(下線は、特に着目した箇所を示す。)

「【請求項1】
少なくとも一のプロセッサにより実行されるコンピュータプログラムであって、
第1ユーザの第1端末を用いて操作される仮想空間内の第1アバターの動作データを含む第1データを取得し、
少なくとも前記第1アバターを前記第1端末の表示部に表示する第1モードにおいて、前記第1データに含まれるデータに関する第1条件を満たすか否かを判定し、
前記第1条件を満たす場合に、前記仮想空間のうち第1仮想会場内において動画を表示する第1表示領域、前記第1アバター以外の複数の第2アバター、及び、前記複数の第2アバターを操作する端末から送信されるメッセージデータに含まれるメッセージを、前記第1モードとは異なる第2モードにおいて表示するように前記表示部を制御する制御データを決定し、
前記制御データに基づいて前記表示部を制御する、ように前記少なくとも一のプロセッサを機能させ、
前記複数の第2アバターは、
前記判定を行う前に決定され、前記第1ユーザによって指定されたユーザのアバターのみであり、
前記複数の第2アバターのうち少なくとも2つの第2アバターの各々は異なる形状及び/又は色彩であり、
前記第1条件は、
前記第1データが、前記第1仮想会場内に設けられる席を選択することに応じて前記第1アバターを着座又は着席させる指示に関するデータを含み、
前記表示部は、
前記第1アバターが着座又は着席した前記第1仮想会場内の位置に依らない場所を基準として、前記第1表示領域、前記複数の第2アバター、及び、前記メッセージデータを送信した端末によって操作されるアバターの周囲で且つ前記第1表示領域に重畳しないように前記メッセージを表示する、
コンピュータプログラム。

【請求項2】
少なくとも一のプロセッサにより実行されるコンピュータプログラムであって、
通信回線を介して、第1ユーザの第1端末を用いて操作される仮想空間内の第1アバターの動作データを含む第1データを受信し、
少なくとも前記第1アバターを前記第1端末の表示部に表示する第1モードにおいて、前記第1データに含まれるデータに関する第1条件を満たすか否かを判定し、
前記第1条件を満たす場合に、前記仮想空間のうち第1仮想会場内において動画を表示する第1表示領域、前記第1アバター以外の複数の第2アバター、及び、前記複数の第2アバターを操作する端末から送信されるメッセージデータに含まれるメッセージを、前記第1モードとは異なる第2モードにおいて表示するように前記表示部を制御する制御データを決定し、
前記制御データを前記第1端末に送信する、ように前記少なくとも一のプロセッサを機能させ、
前記複数の第2アバターは、
前記判定を行う前に決定され、前記第1ユーザによって指定されたユーザのアバターのみであり、
前記複数の第2アバターのうち少なくとも2つの第2アバターの各々は異なる形状及び/又は色彩であり、
前記第1条件は、
前記第1データが、前記第1仮想会場内に設けられる席を選択することに応じて前記第1アバターを着座又は着席させる指示に関するデータを含み、
前記表示部は、
前記第1アバターが着座又は着席した前記第1仮想会場内の位置に依らない場所を基準として、前記第1表示領域、前記複数の第2アバター、及び、前記メッセージデータを送信した端末によって操作されるアバターの周囲で且つ前記第1表示領域に重畳しないように前記メッセージを表示する、
コンピュータプログラム。」

なお、本願発明3−25の概要は以下のとおりである。
本願発明3−15は、本願発明1、または、本願発明2を減縮した発明である。
本願発明16は、本願発明1に対応する「方法」の発明であり、本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。
本願発明17は、本願発明2に対応する「方法」の発明であり、本願発明2とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。
本願発明18−21は、本願発明16、または、本願発明17を減縮した発明である。
本願発明22は、本願発明2に対応する「サーバ」の発明であり、本願発明2とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。
本願発明23−25は、本願発明22を減縮した発明である。

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1及び引用発明
(1) 引用文献1
当審拒絶理由において引用した引用文献1には、図面とともに、以下の記載がある(下線は、特に着目した箇所を示す。訳は当審訳。以下同様。)。

ア 段落[0038]−[0046]





(訳:
[0038]
図3は本開示の一実施例による仮想現実の上映館のロビーを示した図面であり、図4は本開示の一実施例による上映館のスクリーンと座席を示した図面であり、図5は本開示の一実施例による上映館の入場モード、仮想現実機器着用モード、仮想現実機器非着用モードを示した図面である。
[0039]
図3を参照すると、加入者アバターの場合、仮想現実の上映館のロビーで、自己自身の全身は見られず、加入者アバター(302)は、自分の足端程度のみを見られる。加入者アバター(302)は、他の加入者のアバター(304、306)は、その全身が見られる。加入者アバター(302)を、アバターの現在位置を示すポインタ(308)と、上向き矢印(312)及び下向き矢印(310)を含む仮想コントロールパネル(328)を通じて移動できる。すなわち、加入者アバター(302)が、自分の位置を移動させる場合、ポインタ(308)を上向き矢印(312)及び下向き矢印(308)の一つと一致させたまま一定時間(約1秒または2秒以下)維持すると、アバター(302)が上向きまたは下向きに移動する。ポインタ(308)の移動は、例えば、仮想現実機器(130−1、130−2・・・130−n)に内蔵したジャイロセンサー(非図示)を利用して実行できる。加入者アバター(302)は、頭を左右に動かしながら、上映館(314)内部をよく見られる。加入者アバター(302)は、上映中の動画(320、322、324)の一つを選択して視聴できる。加入者アバター(302)が視聴する動画を選択すると、上映館内部の座席表(326)が提示されて、加入者アバター(302)は、座席表(326)の所望の座席を選択できる。
[0040]
仮想コントロールパネル(328)は、加入者アバター(302)の前方下向き約30度角度に表示されることが望ましい。従来は、コントローラハードウェアを保有していれば仮想空間でアバターの動きを調整できたが、本開示では、仮想コントロールパネル(328)を通じて、仮想現実機器(130−1、130−2・・・130−n)のみを活用して、仮想現実上でアバター(302)を動作させられる。また、本開示によると、インタラクティブ仮想現実と音声チャットを結合した形態で、加入者アバター(302)を通じて他者のアバター(304、306)の加入者と自由なコミュニケーションが可能である。 アバター間の音声チャットを円滑にさせるために、仮想現実機器(130−1、130−2・・・・130−n)に、イヤホン(earphone)(非図示)とマイク(microphone)(非図示)を備えることが望ましい。一実施例で、音声チャットのため、仮想現実機器(130−1、130−2・・・・130−n)の一つがそのマイクを通じて入力された音声をデジタル化して生成されたデジタル信号を、動画提供サーバ(110)に転送すると、動画提供サーバ(110)は、そのデジタル信号を再び音声に変換して他の仮想現実機器のイヤホンを通じて出力できる。
[0041]
一実施例では、加入者アバター(302)が視聴する動画を探すためには、動画サービス提供サーバ(110)が提供するカテゴリ別メニュー(韓国映画、SF/ファンタジー、コメディー、恐怖/スリラー、メロ、クラシック/名作、ドラマ、家族/幼児など)(非図示)の中から選択できる。一実施例では、加入者アバター(302)のポインタ(308)で、検索ボタン(316)を見つめると、キーボード(318)が提示され、キーボード(318)にキー入力することで所望の動画を直接選択できる。キー入力方法は、加入者アバター(302)のポインタ(308)をキーボード(318)のキーと一致させて一定時間(約1秒または2秒以下)維持すると、キーボード(318)のキーが入力される方式を使用できる。アバター(302)はキーボード(318)を利用して他の加入者のアバターとチャットをすることもできる。
[0042]
図4を参照すると、加入者アバター(302)は、所望の動画を選択して上映館内部(450)に入って行き、自身が選択した座席(C3)に着席して、スクリーン(460)を介して動画を視聴する。加入者アバター(302)が着席する場合、自身の下半身程度のみを見られるが、他の加入者のアバター(420、430)についてはその全身を見ることができる。アバター(420)はA4座席に着席しており、アバター(430)はB3座席に着席している。加入者アバター(302)はポインタ(308)をボリューム調節ボタン(470)に一致させて、同じ相のボリュームの大きさを調節できる。一実施例では、加入者が動画のみに集中したい場合には、全画面モード選択ボタン(480)をポインタ(308)で見つめて、スクリーン(460)のみを鑑賞するモードに変更することも可能である。
[0043]
加入者アバター(302)は、動画を一緒に視聴する他の加入者を招待することができる。他の加入者は、加入者が他の加入者の個人情報(例えば、ID、名前、電話番号の少なくとも一つ)を知っている既存の友達である可能性があるが、1対1ランダムマッチング(random matching)を通じて招待された第3の加入者であるかも知れない。招待される他の加入者は2人以上の複数の加入者であり得る。サービス加入者アバター(302)と他のアバター(420、430)との間で音声チャットを行うことができる。動画提供サーバ(110)は加入者アバター(302)の座席位置と他のアバター(420、430)それぞれの座席位置との間の距離を考慮して、その距離に反比例して音声の大きさを調節できる。音声の大きさはアバター間の距離だけでなくアバター間の方向も考慮して調節することができる。すなわち、アバターが向かい合う時の場合が、アバターがお互いに背いている場合よりも音声の大きさがより大きいように調節できる。
[0044]
一実施例では、加入者アバター(302)が静かに動画を視聴しようとする場合、音会話オフ(440)ボタンをポインタ(308)で見つめて音声会話をオフにすることができる。動画(460)を視聴中は、ポインタ(308)が視野を妨げる可能性があるため、一定時間(例えば3秒−5秒)加入者アバター(302)が視野を固定していると、ポインタ(308)が視野内で消え、加入者アバター(302)が頭を振るとポインタ(308)が現われるようにできる。
[0045]
図5を参照すると、動画サービス提供サーバ(110)は加入者アバターが、入場モード(530)、仮想現実機器着用モード(510)、仮想現実機器非着用モード(520)のいずれかを選択するようにできる。入場モード(530)は、サービス加入者が動画を選択できるモードであり、仮想現実機器着用モード(510)はサービス加入者が仮想現実を経験できるように、左画面映像(非図示)と右画面映像(非図示)を同時に視聴するモードであり、仮想現実機器非着用モード(530)は、単一画面映像を視聴するモードである。
[0046]
加入者がスクリーン(540)の映像のみを視聴する場合に比べて、一実施例では、加入者の視聴映像範囲を拡大することが可能である。例えば、空を舞うシーン、森の中を歩くシーン、雪が降るシーンなど特定のシーンを最大化して現実感を増すため、動画サービス提供サーバ(110)からスクリーン(540)の映像を拡大させるシーンをあらかじめ撮影する。またはコンピュータグラフィックスで製作して準備しているが、このような特定シーンでスクリーン(540)の左側映像(550)、スクリーン(540)の右側映像(560)、スクリーン(540)の上側映像(570)、スクリーン(540)の下側映像(580)、及び、スクリーンの反対側映像(非図示)(すなわち、加入者アバターが180度振り返えった時に見られる画像)を一緒に上映することで、加入者の現実感を最大化することができる。)

イ 図3−図5






ウ 段落[0047]−[0052]



(訳:
[0047]
図6は動画提供サーバで行われる動画サービス提供方法を説明するためのフローチャートである。
[0048]
動画提供サーバ(110)は、仮想現実機器を着用したサービス加入者に対して動画サービスを提供し、まず、サービス加入者のサービス・ウェブまたはアプリ実行時に、仮想現実の上映館を提供する(S301)。また、サービス加入者アバター(302)を生成して、アバターが上映館で移動可能にする(S302)。サービス加入者アバター(302)の移動は、アバターの現在位置を示すポインタ(308)と上向き矢印(312)または下向き矢印(310)が一致し、一定時間維持することで行われても良い。
[0049]
動画提供サーバ(110)は、加入者アバター(302)が上映館内(450)に移動した場合、上映館のスクリーン(460)と座席(図4のA3、A4、B2、B3、B4、C3参照。)を表示することができる。C3座席に着席した加入者アバター(302)は、A4座席に着席しているアバター(420)及びB3座席に着席しているアバター(430)と音声チャットをすることができる。
[0050]
動画提供サーバ(110)はアバター(302)の座席位置(C3)とスクリーン(460)の方向を考慮してスクリーン(460)に映像を上映することができる。図3の座席表(326)を参照してみると、C3座席はスクリーン(460)正面からやや右側に位置するので、アバター(302)の場合、頭を左に少し回すとスクリーン(460)を視聴すること容易である。高さの点では、C3座席はスクリーン(460)のほぼ中央部分に位置するので、アバター(302)の場合、頭を上下に動かす必要はない。このように、アバター(302)の座席位置(C3)とスクリーン(460)の位置を考慮して、アバター(302)がスクリーン(460)を視聴する角度、視野角などを調整することにより、サービス加入者は実際に上映館内で動画を見る効果を持つことができる。
[0051]
また、複数のサービス加入者があらかじめ定められた時間に同時に動画を視聴することで、サービス加入者が実際の映画館で視聴する効果を持たせるために、動画提供サーバ(110)は、複数のサービス加入者に対してあらかじめ定められた時間に動画の提供を開始する同時入場モードを提供することができる。このようにすることで、複数のサービス加入者が仮想現実空間でまるで劇場封切り映画を同時に視聴する効果を有することができる。
[0052]
前記方法は、特定の実施例を参照して説明されているが、前記方法はまた、コンピュータ可読記録媒体にコンピュータ判読可能なコードとして実装が可能である。コンピュータ可読記録媒体は、コンピュータシステムによって読み取ることができるデータが記憶されるあらゆる種類の記録装置を含む。コンピュータ可読記録媒体の例は、ROM、RAM、CD−ROM、磁気テープ、フロッピーディスク、光データ記憶装置などがあり、また搬送波(例えばインターネットを介した伝送)の形態で実施されるものも含む。また、コンピュータ可読記録媒体は、ネットワーク接続されたコンピュータシステムに分散されて、分散方式でコンピュータによって読み取られるコードを記憶して実行できる。そして、前記実施例を具現するための機能的な(functional)プログラム、コード及びコードセグメントは、本開示が属する技術分野のプログラマによって容易に推論され得る。)

エ 図6



(訳:
開始
S301:仮想現実の上映館を提供
S302:アバターを上映館で移動可能にする
S303:上映館のスクリーンと座席を表示
S304:アバターの座席位置とスクリーンの方向を考慮してスクリーンに映像を上映
S305:音声チャットサービスを提供
終了)


(2) 引用発明
よって、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されているものと認められる。

「加入者アバターの場合、仮想現実の上映館のロビーで、自己自身の全身は見られず、加入者アバター(302)は、自分の足端程度のみを見られ、加入者アバター(302)は、他の加入者のアバター(304、306)は、その全身が見られ、
加入者アバター(302)が、自分の位置を移動させる場合、ポインタ(308)を上向き矢印(312)及び下向き矢印(308)の一つと一致させたまま一定時間(約1秒または2秒以下)維持すると、アバター(302)が上向きまたは下向きに移動し、ポインタ(308)の移動は、例えば、仮想現実機器(130−1、130−2・・・130−n)に内蔵したジャイロセンサーを利用して実行でき、
加入者アバター(302)は、頭を左右に動かしながら、上映館(314)内部をよく見られ、加入者アバター(302)は、上映中の動画(320、322、324)の一つを選択して視聴でき、加入者アバター(302)が視聴する動画を選択すると、上映館内部の座席表(326)が提示されて、加入者アバター(302)は、座席表(326)の所望の座席を選択でき、
インタラクティブ仮想現実と音声チャットを結合した形態で、加入者アバター(302)を通じて他者のアバター(304、306)の加入者と自由なコミュニケーションが可能であり、
アバター(302)はキーボード(318)を利用して他の加入者のアバターとチャットをすることもでき、
加入者アバター(302)は、所望の動画を選択して上映館内部(450)に入って行き、自身が選択した座席(C3)に着席して、スクリーン(460)を介して動画を視聴し、加入者アバター(302)が着席する場合、自身の下半身程度のみを見られるが、他の加入者のアバター(420、430)についてはその全身を見ることができ、
加入者アバター(302)は、動画を一緒に視聴する他の加入者を招待することができ、他の加入者は、加入者が他の加入者の個人情報(例えば、ID、名前、電話番号の少なくとも一つ)を知っている既存の友達である可能性があるが、1対1ランダムマッチング(random matching)を通じて招待された第3の加入者であるかも知れず、招待される他の加入者は2人以上の複数の加入者であり得、サービス加入者アバター(302)と他のアバター(420、430)との間で音声チャットを行うことができ、
動画提供サーバで行われる動画サービス提供方法において、
動画提供サーバ(110)は、仮想現実機器を着用したサービス加入者に対して動画サービスを提供し、
サービス加入者のサービス・ウェブまたはアプリ実行時に、仮想現実の上映館を提供し(S301)、
サービス加入者アバター(302)を生成して、アバターが上映館で移動可能にし(S302)、サービス加入者アバター(302)の移動は、アバターの現在位置を示すポインタ(308)と上向き矢印(312)または下向き矢印(310)が一致し、一定時間維持することで行われても良く、
動画提供サーバ(110)は、加入者アバター(302)が上映館内(450)に移動した場合、上映館のスクリーン(460)と座席(図4のA3、A4、B2、B3、B4、C3参照。)を表示することができ、
C3座席に着席した加入者アバター(302)は、A4座席に着席しているアバター(420)及びB3座席に着席しているアバター(430)と音声チャットをすることができ、
動画提供サーバ(110)はアバター(302)の座席位置(C3)とスクリーン(460)の方向を考慮してスクリーン(460)に映像を上映することができる、
プログラム。」

2 引用文献2−3
(1) 引用文献2
引用文献2には、下記の記載がある。

ア 段落【0025】−【0026】
「【0025】
背景表示制御モジュール244は、通信端末18上で表示されるライブ動画の背景画像を、コンテンツ・テーマに応じて修飾するためのモジュールである。コンテンツ・テーマは、当該ライブ動画の提供者(すなわちコンテンツ提供者)等により設定されるものであり、例えばストーリー性のある動画であれば、コンテンツ・テーマとして「シアター」が設定される。コンテンツ・テーマは、「シアター」、「ライブ演奏」、「エンターテイメント」・・・といったテーマがコンテンツサーバ12に用意されており、コンテンツ提供者がコンテンツの雰囲気に合わせて設定する。コンテンツ提供者によってコンテンツ・テーマが設定されると、例えば図3に示すようなコンテンツ・テーマ(この場合は「シアター」)に応じた背景画像g2が、ライブ動画に合成された形で通信端末18上に表示される。このように、コンテンツ提供者等が各コンテンツの雰囲気に合った背景画像を自由に設定することができるため、画面全体として統一感のある画面を提供できるようになる。
【0026】
アバタ表示制御モジュール245は、通信端末18上で表示されるライブ動画に対して、コメントを投稿等したユーザのアバタを表示制御するためのモジュールである。詳細は後述するが、表示中のライブ動画に関するコメントが、ユーザによってメッセージサーバ14に投稿されると、アバタ表示制御モジュール245は、そのコメントを投稿したユーザ(すなわち、投稿ユーザ)のアバタを表示させるとともに、そのコメントを例えば吹き出し形式(バルーンなど)で表示させる。本実施形態では、コメントを吹き出し形式で表示することを想定するが、コメント内容がユーザに投稿ユーザのアバタ周辺で視認可能であれば、どのような形式でコメントを表示しても良い。なお、投稿ユーザのアバタを表示するために必要なアバタ画像データ等(すなわちユーザ情報)は、アバタ表示制御モジュール245が、コメントAPIを利用することでメッセージサーバ14から取得する。」

イ 段落【0029】−【0032】
「【0029】
図3は、通信端末18に表示されるコンテンツ合成画面G1を例示した図である。
コンテンツ合成画面G1の動画表示領域A1には、コンテンツ提供者によって提供されるライブ動画g1が表示され、背景表示領域A2にはコンテンツ・テーマ(この場合は「シアター」)に応じた背景画像g2が表示され、アバタ表示領域A3にはコメント投稿ユーザのアバタ画像g3が表示される。図3に示すように、コンテンツ・テーマが「シアター」の場合には、コメント投稿ユーザが、あたかも実際の劇場でライブ動画を鑑賞しているかのようなコンテンツ合成画面G1が各通信端末18に表示される。なお、コンテンツ合成画面G1には、その他としてユーザがコメントを投稿するためのコメント投稿ボタンB1、デコレーションを行うためのデコレーションボタンB2、投げ銭を行うための投げ銭ボタンB3などが表示される。
【0030】
図4は、あるユーザによってコメントが投稿されたときのコンテンツ合成画面G2を例示した図であり、図5は、コメントのタイムライン表示を含むコンテンツ合成画面G3を例示した図である。
【0031】
視聴しているライブ動画にコメントを投稿する際、ユーザは、まず、コメント投稿ボタンB1をクリックする。すると、図4の右欄に示すように、コメントを投稿するためのコメント欄h1が表示される。ユーザは、このコメント欄h1に自身の感想など(ここでは「スゴイね!」)を書き込み、送信ボタンクリックする。ユーザが送信ボタンをクリックすると、コメント内容をあらわすコメント情報とともに、当該ユーザを識別するコメントユーザIDがメッセージサーバ14に送信される。
【0032】
情報提供サーバ(取得手段)10は、コメントAPIを利用して、メッセージサーバ14からコメント情報とともに投稿ユーザのユーザ情報(コメントユーザIDを含む)を取得する。情報提供サーバ(判断手段)10は、コメントユーザIDに基づき、コメント投稿ユーザのアバタが、アバタ画像として既にコンテンツ合成画面G2に表示されているか否かを判断する。情報提供サーバ(表示制御手段)10は、コメント投稿ユーザのアバタが、アバタ画像g3として既にコンテンツ合成画面G2に表示されている場合には、当該コメント投稿ユーザのアバタ(図4ではユーザ名「aiueo」)から吹き出し形式でコメント(図4では「スゴイね!」)を表示する。」

ウ 【図3】−【図4】





(2) 引用文献3
引用文献3には、下記の記載がある。

ア 段落【0053】−【0066】
「【0053】
図7は、第1ユーザが対象動画を指定した場合に表示されるシアターApp画面の例を示す。図7に示すように、画像生成部36は、対象動画に関する情報(タイトル、説明、画像等)を含むシアターApp画面200のデータを生成する(S12)。画像生成部36は、対象動画の情報を含むシアターApp画面200に開始アイコン202と招待アイコン204を配置する。
【0054】
図6に戻り、操作受付部30は、シアターApp画面200の招待アイコン204を選択する第1ユーザの操作を受け付ける。画像生成部36は、第1ユーザが予め登録したフレンドの中から動画を一緒に視聴するプレイヤーを第1ユーザに選択させるためのフレンド選択画面のデータを生成する。画像出力部40は、フレンド選択画面をHMD100aに表示させる(S14)。図8も、シアターApp画面の例を示す。同図のシアターApp画面200は、フレンド選択画面を示す。フレンド選択画面は、動画視聴に招待するフレンドを選択するプレイヤー選択エリア210と、送信アイコン212を含む。
【0055】
図6に戻り、操作受付部30は、図8のプレイヤー選択エリア210で特定のフレンド(ここでは第2ユーザ)を選択した上で、送信アイコン212を選択する第1ユーザの操作を受け付ける。招待送信部42は、対象動画の視聴に招待する旨の招待データを、プレイヤー選択エリア210で選択された第2ユーザの情報処理装置10bへ送信する(S16)。
【0056】
情報処理装置10bの招待受付部44は、情報処理装置10aから送信された招待データを受け付ける(S18)。実施例では、公知のオンラインサービスが提供する通知機能を利用して招待を送受信する。画像生成部36は、招待の内容を含む招待状画像を生成し、画像出力部40は、招待状画像をHMD100に表示させる(S20)。実施例では、情報処理装置10のシステム機能を使用して招待を表示させる。図9は、招待を表示するシステム画面の例を示す。画像生成部36は、招待状画像302を含むシステム画面300を生成する。招待状画像302には、対象動画の情報、第1ユーザからのメッセージ、および参加アイコン304が配置される。
【0057】
第2ユーザは、第1ユーザの招待を受け入れる場合、図9の招待状画像302における参加アイコン304を選択する。図6に戻り、操作受付部30は、参加アイコン304を選択する第2ユーザの操作を受け付ける。チケット確認部46は、情報処理装置10bのチケット記憶部26に対象動画のチケットが格納されているか否かを確認し、すなわち、第2ユーザが対象動画のチケットを購入済か否かを確認する(S22)。ここでは、チケット記憶部26に対象動画のチケットが格納されていることが確認されたこととする。
【0058】
参加アイコン304を選択する第2ユーザの操作が受け付けられると、情報処理装置10bのシステムは、情報処理装置10bにインストールされているシアターAppを起動する(S24)。また、参加アイコン304を選択する第2ユーザの操作が受け付けられ、かつ、チケット記憶部26に対象動画のチケットが格納されていることが確認された場合、情報処理装置10bの受諾通知部48は、招待を受諾したことを示す受諾データを情報処理装置10aへ送信する(S26)。
【0059】
なお、チケット記憶部26に対象動画のチケットが格納されておらず、すなわち、第2ユーザが対象動画のチケットを未購入の場合、受諾通知部48は、参加アイコン304を選択する第2ユーザの操作が受け付けられても、受諾データの送信を抑制してもよい。また、その場合、情報処理装置10bの画像生成部36は、参加アイコン304を選択不可状態(言い換えれば非アクティブ状態)に設定し、参加アイコン304の近傍位置に、チケット未購入のため視聴不可である旨を表示させてもよい。
【0060】
情報処理装置10aの画像生成部36は、図7に示すシアターApp画面200に招待が受諾された旨を表示させる。第1ユーザは、招待が受諾されると、シアターApp画面200の開始アイコン202を選択する。操作受付部30は、開始アイコン202を選択する第1ユーザの操作を受け付ける。要求送信部32は、動画の配信を要求する配信要求データを配信サーバ3へ送信する(S28)。配信要求データは、対象動画の識別情報(ID等)と、視聴者(言い換えれば配信先)の識別情報を含む。視聴者の識別情報は、例えば、第1ユーザのIDまたは情報処理装置10aのIDを含み、第2ユーザのIDまたは情報処理装置10bのIDをさらに含む。
【0061】
配信サーバ3の要求受付部70は、情報処理装置10aから送信された配信要求データを受け付ける。チケット処理部72は、チケット記憶部66を参照して、配信要求データが示す1人以上の視聴者のそれぞれが対象動画のチケットを購入済か否かを確認する。図6の例では、第1ユーザと第2ユーザの両方が対象動画のチケットを購入済か否かを確認する(S30)。ここでは、第1ユーザと第2ユーザの両方が対象動画のチケットを購入済であることが確認されたこととする。
【0062】
動画配信部74は、情報処理装置10aに対する対象動画データのストリーミング配信を開始し(S32)、それとともに、情報処理装置10bに対する対象動画データのストリーミング配信を開始する(S34)。なお、動画配信部74は、第1ユーザと第2ユーザの少なくとも一方が対象動画のチケットを未購入であれば、情報処理装置10aに対する対象動画データの配信と、情報処理装置10bに対する対象動画データの配信の両方を拒否してもよい。または、動画配信部74は、配信要求データが示す視聴者のうちチケットを購入済のユーザの情報処理装置10には対象動画データを配信し、チケットを未購入のユーザの情報処理装置10には対象動画データの配信を拒否してもよい。
【0063】
情報処理装置10aの動画受付部34は、配信サーバ3から送信された対象動画データを受け付け、情報処理装置10aの画像生成部36は、対象動画が再生表示されるシアターApp画面200を生成し、HMD100aに表示させる(S36)。情報処理装置10bの画像生成部36も、配信サーバ3から送信された対象動画データを受け付け、情報処理装置10bの画像生成部36は、対象動画が再生表示されるシアターApp画面200を生成し、HMD100bに表示させる(S38)。
【0064】
配信サーバ3の動画配信部74、情報処理装置10aの画像生成部36、情報処理装置10bの画像生成部36は、互いに連携することにより、情報処理装置10aにおいて対象動画の表示を開始させることと同期して、情報処理装置10bにおいて対象動画の表示を開始させる表示制御部として機能する。すなわち、情報処理装置10aにおける対象動画の再生開始からの経過時間と、情報処理装置10bにおける対象動画の再生開始からの経過時間とは同期するよう制御され、第1ユーザと第2ユーザは、同時に同じ内容を視聴することができる。複数の装置間で動画の再生表示を同期させることは公知の技術により実現されてよい。
【0065】
図10は、シアターApp画面200の例を示す。同図は、対象動画が再生されるシアターApp画面200を示している。情報処理装置10aおよび情報処理装置10bの画像生成部36は、仮想的な映画館を示すシアタールーム220に、仮想的なスクリーン222を配置したシアターApp画面200を生成する。画像生成部36は、対象動画の再生処理を実行し、対象動画の再生結果をスクリーン222に設定する。これにより、HMD100aを装着した第1ユーザとHMD100bを装着した第2ユーザに、同じ映画館で同じ動画を同時に視聴しているような視聴体験を提供することができる。
【0066】
なお、対象動画の再生表示中、情報処理装置10aと情報処理装置10b間ではボイスチャットが実行されることが望ましい。これにより、第1ユーザと第2ユーザに、同じ映画館で同じ動画を同時に視聴している感覚を一層強く抱かせることができる。」

イ 段落【0085】−【0086】
「【0085】
第1実施例と第2実施例の両方に適用可能な第1変形例を説明する。情報処理装置10aの画像生成部36は、図10に示したシアタールーム220に、第1ユーザおよび第2ユーザのアバター画像(言い換えればキャラクタ画像)を配置してもよい。同様に、情報処理装置10bの画像生成部36は、シアタールーム220に、第1ユーザおよび第2ユーザのアバター画像を配置してもよい。また、VR画像が一人称視点の場合、情報処理装置10aの画像生成部36は、シアタールーム220に、第2ユーザのアバター画像を配置し、情報処理装置10bの画像生成部36は、シアタールーム220に、第1ユーザのアバター画像を配置してもよい。
【0086】
また、情報処理装置10aは、HMD100aの姿勢情報(位置、姿勢、視線方向等)を情報処理装置10bへ送信し、情報処理装置10bは、HMD100bの姿勢情報を情報処理装置10aへ送信してもよい。情報処理装置10aの画像生成部36は、情報処理装置10bから送信されたHMD100bの姿勢情報に整合するように、第2ユーザのアバター画像の位置や姿勢を変更してもよい。同様に、情報処理装置10bの画像生成部36は、情報処理装置10aから送信されたHMD100aの姿勢情報に整合するように、第1ユーザのアバター画像の位置や姿勢を変更してもよい。」

ウ 【図7】−【図10】








第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1) 対比

本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア 引用発明の「プログラム」は、本願発明1の「少なくとも一のプロセッサにより実行されるコンピュータプログラム」に相当する。

イ 引用発明の「仮想現実機器(130−1、130−2・・・130−n)」の一つは、本願発明1の「第1ユーザの第1端末」に相当する。
よって、引用発明の「加入者アバター(302)が、自分の位置を移動させる場合、ポインタ(308)を上向き矢印(312)及び下向き矢印(308)の一つと一致させたまま一定時間(約1秒または2秒以下)維持すると、アバター(302)が上向きまたは下向きに移動し、ポインタ(308)の移動は、例えば、仮想現実機器(130−1、130−2・・・130−n)に内蔵したジャイロセンサーを利用して実行でき、
加入者アバター(302)は、頭を左右に動かしながら、上映館(314)内部をよく見られ、加入者アバター(302)は、上映中の動画(320、322、324)の一つを選択して視聴でき、加入者アバター(302)が視聴する動画を選択すると、上映館内部の座席表(326)が提示されて、加入者アバター(302)は、座席表(326)の所望の座席を選択でき」、「加入者アバター(302)は、所望の動画を選択して上映館内部(450)に入って行き、自身が選択した座席(C3)に着席して、スクリーン(460)を介して動画を視聴し」ていることは、本願発明1の「第1ユーザの第1端末を用いて操作される仮想空間内の第1アバターの動作データを含む第1データを取得し」ていることに相当する。

ウ 引用発明において、加入者アバターが「着席」する前の表示状態(引用文献1の図3を参照。)では、「仮想現実の上映館のロビーで、自己自身の全身は見られず、加入者アバター(302)は、自分の足端程度のみを見られ、加入者アバター(302)は、他の加入者のアバター(304、306)は、その全身が見られ」るから、本願発明1の「少なくとも前記第1アバターを前記第1端末の表示部に表示する第1モード」に相当する。
引用発明において、アバターを着席した状態で表示する前提として、「着席」を判定していることは明らかであって、この「着席」の判定は、本願発明1の「少なくとも前記第1アバターを前記第1端末の表示部に表示する第1モードにおいて、前記第1データに含まれるデータに関する第1条件を満たすか否かを判定し」、「前記第1条件は、前記第1データが、前記第1仮想会場内に設けられる席を選択することに応じて前記第1アバターを着座又は着席させる指示に関するデータを含」むことに相当する。

エ 引用発明において、加入者アバターが「着席」した後の表示状態は、「加入者アバター(302)が着席する場合、自身の下半身程度のみを見られるが、他の加入者のアバター(420、430)についてはその全身を見ることができ」る表示状態(引用文献1の図4を参照。)であって、本願発明1の「第2モード」に相当する。
よって、引用発明において、「加入者アバター(302)は、所望の動画を選択して上映館内部(450)に入って行き、自身が選択した座席(C3)に着席して、スクリーン(460)を介して動画を視聴し、加入者アバター(302)が着席する場合、自身の下半身程度のみを見られるが、他の加入者のアバター(420、430)についてはその全身を見ることができ」ることは、本願発明1の「前記第1条件を満たす場合に、前記仮想空間のうち第1仮想会場内において動画を表示する第1表示領域、前記第1アバター以外の複数の第2アバター、及び、前記複数の第2アバターを操作する端末から送信されるメッセージデータに含まれるメッセージを、前記第1モードとは異なる第2モードにおいて表示するように前記第1端末の表示部を制御する制御データを決定し、
前記制御データに基づいて前記表示部を制御する、ように前記少なくとも一のプロセッサを機能させ」ていることと、「前記第1条件を満たす場合に、前記仮想空間のうち第1仮想会場内において動画を表示する第1表示領域、前記第1アバター以外の複数の第2アバターを、前記第1モードとは異なる第2モードにおいて表示するように前記第1端末の表示部を制御する制御データを決定し、
前記制御データに基づいて前記表示部を制御する、ように前記少なくとも一のプロセッサを機能させ」ている点で共通するといえる。

よって、本願発明1と引用発明との一致点・相違点は次のとおりであるといえる。

[一致点]
「少なくとも一のプロセッサにより実行されるコンピュータプログラムであって、
第1ユーザの第1端末を用いて操作される仮想空間内の第1アバターの動作データを含む第1データを取得し、
少なくとも前記第1アバターを前記第1端末の表示部に表示する第1モードにおいて、前記第1データに含まれるデータに関する第1条件を満たすか否かを判定し、
前記第1条件を満たす場合に、前記仮想空間のうち第1仮想会場内において動画を表示する第1表示領域、前記第1アバター以外の複数の第2アバターを、前記第1モードとは異なる第2モードにおいて表示するように前記第1端末の表示部を制御する制御データを決定し、
前記制御データに基づいて前記表示部を制御する、ように前記少なくとも一のプロセッサを機能させ、
前記第1条件は、
前記第1データが、前記第1仮想会場内に設けられる席を選択することに応じて前記第1アバターを着座又は着席させる指示に関するデータを含む、
コンピュータプログラム。」

[相違点1]
「第2モード」の表示内容として、本願発明1では、さらに「前記複数の第2アバターを操作する端末から送信されるメッセージデータに含まれるメッセージ」を、表示するのに対して、引用発明では、着席後に「メッセージ」を表示することが特定されていない点。

[相違点2]
「第2モード」で表示される「第2アバター」について、本願発明1では、「前記複数の第2アバターは、前記判定を行う前に決定され、前記第1ユーザによって指定されたユーザのアバターのみであり、前記複数の第2アバターのうち少なくとも2つの第2アバターの各々は異なる形状及び/又は色彩であ」るのに対し、引用発明では、着席後に表示される他の加入者のアバターが、「判定を行う前に決定され」たものであることが特定されておらず、「前記第1ユーザによって指定されたユーザのアバターのみであ」ることが特定されておらず、「前記複数の第2アバターのうち少なくとも2つの第2アバターの各々は異なる形状及び/又は色彩であ」ることが特定されていない点。

[相違点3]
「第2モード」で表示される「メッセージ」について、本願発明1では、「前記表示部は、
前記第1アバターが着座又は着席した前記第1仮想会場内の位置に依らない場所を基準として、前記第1表示領域、前記複数の第2アバター、及び、前記メッセージデータを送信した端末によって操作されるアバターの周囲で且つ前記第1表示領域に重畳しないように前記メッセージを表示する」のに対し、引用発明では、「メッセージ」を送信した端末の「アバターの周囲で且つ」、スクリーン領域に「重畳しないように」表示することが特定されていない点。


(2) 当審の判断
事案に鑑みて、「第2モード」における「第2のアバター」を含む表示の態様について相互に関連する、上記[相違点2]、[相違点3]について先に検討すると、本願発明1の上記[相違点2]に係る、「第2モード」で表示される「第2アバター」について、「前記複数の第2アバターは、前記判定を行う前に決定され、前記第1ユーザによって指定されたユーザのアバターのみであり、前記複数の第2アバターのうち少なくとも2つの第2アバターの各々は異なる形状及び/又は色彩であ」ること、及び、本願発明1の上記[相違点3]に係る、「第2モード」で表示される「メッセージ」について、「前記表示部は、前記第1アバターが着座又は着席した前記第1仮想会場内の位置に依らない場所を基準として、前記第1表示領域、前記複数の第2アバター、及び、前記メッセージデータを送信した端末によって操作されるアバターの周囲で且つ前記第1表示領域に重畳しないように前記メッセージを表示する」ことについては、上記引用文献1−3には記載されておらず、周知技術であるともいえない。
すなわち、例えば、上記[相違点2]のうち、「第2モード」で表示される「第2アバター」が、「判定を行う前に決定され」たアバターであって、「前記第1ユーザによって指定されたユーザのアバターのみであ」る点は、上記引用文献1−3には開示されていない。
ここで、引用発明には、「加入者アバター(302)は、動画を一緒に視聴する他の加入者を招待することができ、他の加入者は、加入者が他の加入者の個人情報(例えば、ID、名前、電話番号の少なくとも一つ)を知っている既存の友達である可能性がある」ことから、既存の友達を「招待」することにより、アバターとして表示されることは開示されるが、上記[相違点2]のように、「第2モード」で表示される「第2アバター」が、「判定を行う前に決定され」たアバターであって、「前記第1ユーザによって指定されたユーザのアバターのみであ」ることは、開示されていない。
引用文献2には、段落【0032】に「当該コメント投稿ユーザのアバタ(図4ではユーザ名「aiueo」)から吹き出し形式でコメント(図4では「スゴイね!」)を表示する」と記載され、【図4】を参照すると、メッセージを、当該メッセージを送信したユーザのアバターの周囲で、動画再生領域に重畳しないように表示することが開示されているとはいえるが、上記[相違点2]のように、「第2モード」で表示される「第2アバター」が、「判定を行う前に決定され」たアバターであって、「前記第1ユーザによって指定されたユーザのアバターのみであ」ることは、開示されていない。
引用文献3には、複数のユーザが仮想空間で動画を一緒に視聴する際、あるユーザが、既存の友達から招待したいユーザを選択して、招待を行ったあるユーザと、そのユーザから招待され、招待を受諾したユーザとが、仮想空間での動画の視聴を開始できることが開示され、さらに、引用文献3の段落【0085】の「図10に示したシアタールーム220に、第1ユーザおよび第2ユーザのアバター画像(言い換えればキャラクタ画像)を配置してもよい」との記載に基づいて、各々のユーザがアバターとして表示される場合、「判定を行う前に決定され」たアバターを表示することが開示されているとはいえるが、上記[相違点2]のように、「第2モード」で表示される「第2アバター」が、(特定のユーザである)「前記第1ユーザによって指定されたユーザのアバターのみであ」ることは開示されていない。
よって、当業者といえども、引用発明及び引用文献2−3に記載された技術的事項から、本願発明1の上記[相違点2]、「相違点3」に係る構成を容易に想到することはできない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び引用文献2−3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 請求項2−25について
本願発明2−25も、本願発明1の上記[相違点2]に係る、「第2モード」で表示される「第2アバター」について、「前記複数の第2アバターは、前記判定を行う前に決定され、前記第1ユーザによって指定されたユーザのアバターのみであり、前記複数の第2アバターのうち少なくとも2つの第2アバターの各々は異なる形状及び/又は色彩であ」ること、及び、本願発明1の上記[相違点3]に係る、「第2モード」で表示される「メッセージ」について、「前記表示部は、前記第1アバターが着座又は着席した前記第1仮想会場内の位置に依らない場所を基準として、前記第1表示領域、前記複数の第2アバター、及び、前記メッセージデータを送信した端末によって操作されるアバターの周囲で且つ前記第1表示領域に重畳しないように前記メッセージを表示する」ことと、(実質的に)同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2−3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第7 当審拒絶理由の理由1(明確性) について
1 令和4年7月25日付けの補正による、補正後の請求項1は、(1)「第1モード」が「少なくとも前記第1アバターを前記第1端末の表示部に表示する第1モード」であることが特定されるように補正されるとともに、(2)請求項8が削除され、(3)請求項10が削除された結果、当審拒絶理由の理由1(明確性)は解消した。

第8 原査定についての判断
令和4年7月25日付けの補正による、補正後の請求項1−25は、本願発明1の上記[相違点2]に係る、「第2モード」で表示される「第2アバター」について、「前記複数の第2アバターは、前記判定を行う前に決定され、前記第1ユーザによって指定されたユーザのアバターのみであり、前記複数の第2アバターのうち少なくとも2つの第2アバターの各々は異なる形状及び/又は色彩であ」ること、及び、本願発明1の上記[相違点3]に係る、「第2モード」で表示される「メッセージ」について、「前記表示部は、前記第1アバターが着座又は着席した前記第1仮想会場内の位置に依らない場所を基準として、前記第1表示領域、前記複数の第2アバター、及び、前記メッセージデータを送信した端末によって操作されるアバターの周囲で且つ前記第1表示領域に重畳しないように前記メッセージを表示する」という技術的事項を有するものとなった。当該技術的事項は、原査定における引用文献A−Bには記載されておらず、周知技術でもないので、本願発明1−25は、当業者であっても、原査定における引用文献A−Bに基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。

第9 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-09-27 
出願番号 P2020-202730
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G06F)
P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 ▲吉▼田 耕一
特許庁審判官 富澤 哲生
稲葉 和生
発明の名称 コンピュータプログラム、方法、及び、サーバ  
代理人 市川 祐輔  
代理人 森山 正浩  
代理人 後藤 未来  
代理人 市川 英彦  
代理人 河野 隆  
代理人 岩瀬 吉和  

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