• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01R
管理番号 1389187
総通号数 10 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-12-13 
確定日 2022-09-08 
事件の表示 特願2017−161154「電気的接続装置」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 3月14日出願公開、特開2019− 39753〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年8月24日の特許出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和 3年 7月 6日付け:拒絶理由通知書
同年 8月19日 :意見書の提出
同年10月29日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同年11月 2日 :原査定の謄本の送達)
同年12月13日 :審判請求書、手続補正書の提出


第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和3年12月13日に提出された手続補正書による補正を却下する。

[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の概要
令和3年12月13日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)のうち、請求項1についての補正は、以下の(1)に示される本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載を、以下の(2)に示される本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正することを含むものである。下線は、補正箇所を示す。

(1) 本件補正前
「【請求項1】
管形状のバレル、及び前記バレルの両端部の開口端からそれぞれ先端部が露出した状態で前記バレルに接合された棒形状のトップ側プランジャーとボトム側プランジャーを有し、前記両端部の中間の領域に前記バレルの本体部とは異なる外径を有するストッパー領域が形成されたプローブと、
前記ストッパー領域と前記本体部のうちの外径が相対的に細い領域は通過し且つ外径が相対的に太い領域は通過できないミドルガイドを有し、前記相対的に細い領域が前記ミドルガイドを貫通した状態で前記プローブを保持するプローブヘッドと、
を備え、
前記プローブが、前記両端部と前記ストッパー領域との間のそれぞれで軸方向に伸縮自在に構成され、
前記プローブが前記軸方向に伸縮したときに、前記相対的に太い領域が前記ミドルガイドに圧着する
ことを特徴とする電気的接続装置。」

(2) 本件補正後
「 【請求項1】
管形状のバレル、及び前記バレルの両端部の開口端からそれぞれ先端部が露出した状態で前記バレルに接合された棒形状のトップ側プランジャーとボトム側プランジャーを有し、前記両端部の中間の領域に前記バレルの本体部とは異なる外径を有するストッパー領域が形成されたプローブと、
前記ストッパー領域と前記本体部のうちの外径が相対的に細い領域は通過し且つ外径が相対的に太い領域は通過できないミドルガイドを有し、複数の前記プローブの前記相対的に細い領域のそれぞれが同一の前記ミドルガイドを貫通した状態で前記プローブを保持するプローブヘッドと、
を備え、
前記プローブが、前記両端部と前記ストッパー領域との間のそれぞれで軸方向に伸縮自在に構成され、
前記プローブが前記軸方向に伸縮したときに、前記相対的に太い領域が前記ミドルガイドに形成された前記プローブが貫通する貫通孔の開口部の周囲に圧着する
ことを特徴とする電気的接続装置。」

2 本件補正についての当審の判断
(1) 本件補正の目的
ア(ア) 本件補正のうち請求項1についての補正は、次のa及びbの限定を行うものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正である。
a 本件補正前の「前記相対的に細い領域が前記ミドルガイドを貫通した状態で前記プローブを保持するプローブヘッド」との記載を「複数の前記プローブの前記相対的に細い領域のそれぞれが同一の前記ミドルガイドを貫通した状態で前記プローブを保持するプローブヘッド」と補正することにより、プローブヘッドが保持するプローブの数が「複数」であり、それぞれが貫通するミドルガイドが「同一」のものであるものに限定すること。
b 本件補正前の「前記プローブが前記軸方向に伸縮したときに、前記相対的に太い領域が前記ミドルガイドに圧着する」との記載を「前記プローブが前記軸方向に伸縮したときに、前記相対的に太い領域が前記ミドルガイドに形成された前記プローブが貫通する貫通孔の開口部の周囲に圧着する」と補正することにより、前記ストッパー領域と前記本体部のうちの外径が相対的に太い領域が前記ミドルガイドに圧着する箇所を「前記ミドルガイドに形成された前記プローブが貫通する貫通孔の開口部の周囲」に限定すること。

(イ) そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。

(ウ) したがって、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

イ そこで、本件補正後における請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下検討を行う。

(2) 本件補正発明
本件補正発明は、本件補正後の請求項1に記載された事項(前記1(2)参照)により特定されるとおりのものである。

(3) 引用文献に記載された発明の認定等
ア 引用文献1に記載された事項と引用発明の認定
(ア) 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された特開2009−288156号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。下線は当審が付与した。
a 段落【0001】〜【0033】
「【技術分野】
【0001】
本発明は、検査用ソケットに関し、特にICパッケージや集積回路素子等を検査する検査用ソケットに関する。
(中略)
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の検査用ソケットにあっては、第1プランジャおよび第2プランジャが単一の圧縮ばねにより離隔方向に付勢されていたため、ICパッケージやウェハー等の被検査対象物の接続端子と検査信号を取り出すテスト回路基板の接続端子とに第1プランジャおよび第2プランジャを接触させるときの接触圧を調整することが困難であった。
【0005】
すなわち、被検査対象物の接続端子に接触する第1プランジャは、高い接触圧が必要であるのに対して、テスト回路基板の接続端子に接触する第2プランジャは、テスト回路基板の接続端子に良好な接触力で必要以上の荷重がかからないように接触させることによって、テスト回路基板の損傷を抑える必要がある。
【0006】
従来の両端変位型コンタクトプローブを備えた検査用ソケットは、第1プランジャおよび第2プランジャが単一の圧縮ばねにより離隔方向に付勢されているため、被検査対象物の接続端子に接触する第1プランジャの接触圧に合わせて高い接触圧(荷重)を発生させる圧縮ばねを用いると、テスト回路基板の接続端子への接触圧が高くなってテスト回路基板の損傷を抑え難い。
【0007】
一方、テスト回路基板の接続端子に接触する第2プランジャの接触圧に合わせて低い接触圧(荷重)を発生させる圧縮ばねを用いると、被検査対象物の接続端子への接触圧が低くなって導通不良が発生するおそれがある。
【0008】
また、被検査対象物の種類が変わると、それに応じた仕様の両端変位型コンタクトプローブに変更する必要があるため、すなわち、両端変位型コンタクトプローブ全部を交換する必要があるため、検査用ソケットの汎用性が低いという問題がある。
【0009】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、検査装置の接続端子および被検査対象物の接続端子に対して最適な接触圧を確保することができるとともに、異なる被検査対象物に対応可能な汎用性の高い検査用ソケットを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の検査用ソケットは、上記目的を達成するため、少なくとも1つ以上の貫通孔が形成されたソケット本体と、前記貫通孔の一端の開口部側に配置され、被検査対象物の接続端子に接触するための電気的接触部を構成する第1導電部材と、前記貫通孔の他端の開口部側に配置され、検査装置の接続端子に接触するための電気的接触部を構成する第2導電部材と、前記ソケット本体の貫通孔に収納され、一端に前記第1導電部材が摺動自在に保持結合されるとともに、他端に前記第2導電部材が摺動自在に保持結合される第3導電部材と、前記第3導電部材の軸方向の所定箇所に形成され、前記第3導電部材の半径方向外方に拡径される拡径部と、前記第1導電部材と前記拡径部との間で前記第3導電部材を取り囲むようにして設けられ、前記第1導電部材を前記拡径部から離隔する方向に付勢する中空の第1弾性部材と、前記第2導電部材と前記拡径部との間で前記第3導電部材を取り囲むようにして設けられ、前記第2導電部材を前記拡径部から離隔する方向に付勢する中空の第2弾性部材と、前記ソケット本体の貫通孔に形成され、前記拡径部の半径方向外周部が挿通される挿通部とを備えたものから構成されている。
【0011】
この構成により、第3導電部材の軸方向に形成された拡径部を境にして、第1 導電部材と拡径部との間で第3導電部材を取り囲むようにして第1弾性部材が設けられるとともに、第3導電部材と拡径部との間で第2導電部材を取り囲むようにして第2 弾性部材が設けられ、ソケット本体の貫通孔に形成された挿通部に拡径部の半径方向外周部が挿通されるので、第1弾性部材と第2弾性部材の仕様を異ならせることができる。
【0012】
このため、被検査対象物と検査装置に対してそれぞれ必要とされる荷重を発生させる弾性部材を選定することができ、第1弾性部材を被検査対象物の接続端子に高い接触圧で接触させて導通不良が発生するのを防止することができる一方、第2弾性部材を検査装置の接続端子に良好な接触力で必要以上の荷重がかからないように接触させて検査装置に損傷を与えてしまうのを防止することができる。
【0013】
また、被検査対象物の種類が変更されるときには、第1導電部材の形状や寸法を変更したり、第1弾性部材のばね荷重を変更することにより、第1導電部材や第1弾性部材を被検査対象物に応じた仕様のものに変えることで対応することができ、ソケット装置の汎用性を高めることができる。
【0014】
また、検査装置の接続端子に対する接触圧は常に一定であるため、第2導電部材および第2弾性部材を標準化することができる。これに加えて、検査時に第1導電部材に汚れや磨耗が発生して被検査対象物の接続端子に対する接触機能が低下した場合には、第1導電部材のみを交換することで接触機能を回復することができる。この結果、交換費用を大幅に低減することができる。
(中略)
【0031】
また、本発明による検査用ソケットは、前記第1 弾性部材の一端が前記第1導電部材の外周部に嵌合されるとともに、前記第1弾性部材の他端が前記拡径部側の前記第3導電部材の外周部に嵌合され、前記第2弾性部材の一端が前記第2導電部材の外周部に嵌合されるとともに、前記第2弾性部材の他端が前記拡径部側の前記第3導電部材の外周部に嵌合されるものから構成されている。
【0032】
この構成により、第1導電部材、第2導電部材、第3導電部材、第1弾性部材および第2弾性部材からなる両端変位型コンタクトプローブを一体化してソケット本体に組み付けることができ、両端変位型コンタクトプローブの組み付け作業の作業性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0033】
以上説明したように、本発明は、検査装置の接続端子および被検査対象物の接続端子に対して最適な接触圧を確保することができるとともに、異なる被検査対象物に対応可能な汎用性の高い検査用ソケットを提供することができる。」

b 段落【0035】〜【0050】
「【0035】
まず、構成を説明する。図1において、検査用ソケット装置1は、両端変位型コンタクトプローブ(以下、単にプローブともいう)2とソケット本体10とを備えている。
【0036】
プローブ2は、その軸方向両端側にそれぞれ電気的接触部を構成する第1導電部材3および第2導電部材4を有し、ソケット本体10の貫通孔11に収納されている。なお、図示していないが、ソケット本体10には互いに平行に所定ピッチ(図1中、左右方向で一定の間隔)で貫通孔が形成されており、この貫通孔内にもプローブ2が収納されている。
【0037】
第1導電部材3は、貫通孔11の上方(一端)の開口部11a側に配置されており、被検査対象物21の接続端子21a(図4参照)に接触するようになっている。
【0038】
また、第2導電部材4は、貫通孔11の下方(他端)の開口部11b側に配置されており、検査装置であるプリント配線板22の接続端子22a(図4参照)に接触するようになっている。
【0039】
ソケット本体10の貫通孔11には第3導電部材5が収納されており、第3導電部材5は、上端(一端)に第1導電部材3が摺動自在に保持結合されるとともに、下端(他端)に第2導電部材4が摺動自在に保持結合されている。
【0040】
また、第3導電部材5の軸方向中央部には拡径部としてのフランジ部5aが形成されており、このフランジ部5aは、第3導電部材5の半径方向外方に拡径されている。
【0041】
また、第3導電部材5のフランジ部5aの上方側は第1端部5bを構成しており、第1導電部材3とフランジ部5aの間には第1端部5bを取り囲むように中空の第1弾性部材である第1圧縮ばね6が設けられている。
【0042】
また、第3導電部材5のフランジ部5aの下方側は第2端部5cを構成しており、第2導電部材4とフランジ部5aの間には第2端部5cを取り囲むように中空の第2弾性部材である第2圧縮ばね7が設けられている。
【0043】
第1圧縮ばね6は、第1導電部材3をフランジ部5aから離隔する方向に付勢しており、第1導電部材3の外端部であるコンタクト部3aは、ソケット本体10の開口部11aから外方に突出している。
【0044】
第2圧縮ばね7は、第2導電部材4をフランジ部5aから離隔する方向に付勢しており、第2導電部材4の外端部であるコンタクト部4aは、ソケット本体10の開口部11bから外方に突出している。また、コンタクト部4aは、三角形状の凹凸部が連続する冠形状に形成されている。
【0045】
また、ソケット本体10の貫通孔11には挿通部としての環状溝11cが形成されており、この環状溝11cにはフランジ部5aの半径方向外周部が挿通されている。
【0046】
また、第1導電部材3および第2導電部材4の各々は、コンタクト部3a、4aより大径に形成されるとともにコンタクト部3a、4aの基端側で第1圧縮ばね6の上端面および第2圧縮ばね7の下端面に当接するフランジ部3f、4fと、これらフランジ部3f、4fからフランジ部5a側に突出するとともに第1圧縮ばね6の上端および第2圧縮ばね7の下端に嵌入された嵌入部3e、4eと、これら嵌入部3e、4eの径方向内方で軸方向に延在する有底の、または貫通した孔部3c、4cとを有している。
【0047】
第1導電部材3および第2導電部材4のコンタクト部3a、4aは、それぞれ、フランジ部3f、4fから軸方向一方側に突出する導通部となっており、ソケット本体10の開口部11a、11bにより軸方向に変位(摺動)可能に保持されている。
【0048】
また、開口部11a、11bの開口面積は、貫通孔11の内周面積よりも小さく形成されることにより、開口部11a、11bと貫通孔11の間に第1係合部としての環状係合部11d、11eが形成されており、第1導電部材3のフランジ部3fおよび第2導電部材4のフランジ部4fが環状係合部11d、11eに係合することにより、第1導電部材3および第2導電部材4がソケット本体10から抜け出ないようになっている。本実施の形態では、第1導電部材3のフランジ部3fおよび第2導電部材4のフランジ部4fが第2係合部を構成している。
【0049】
図2に示すように、ソケット本体10は、環状溝11cを境に分割された第1ソケット本体13および第2ソケット本体14を備えており、第1ソケット本体13には環状溝11cの一方を構成する第1溝13aが形成されているとともに、第2ソケット本体14には環状溝11cの他方を構成する第2溝14aが形成されている。
また、第1ソケット本体13には、貫通孔11の一方側を構成する第1貫通孔11fが形成されており、第2ソケット本体14には、貫通孔11の他方側を構成する第2貫通孔11gが形成されている。なお、図1に第1ソケット本体13および第2ソケット本体14の分割面をP1、P2で示す。
【0050】
また、図3に示すように、フランジ部5aは、円状に形成されており、環状溝11cとの間で所定の隙間を介して、あるいは環状溝11cに密着するようにして環状溝11cに挿通されている。
なお、図3は、図2(b)のA−A方向矢視図であり、第1溝13aと第2溝14aは、共に同一形状となるように第1ソケット本体13および第2ソケット本体14に形成されている。」

c 段落【0078】〜【0080】
「【0078】
また、本実施の形態では、開口部11a、11bの開口面積を貫通孔11の内周面積よりも小さく形成することにより、開口部11a、11bと貫通孔11の間に環状係合部11d、11eを形成し、第1導電部材3および第2導電部材4のフランジ部3f、4fを環状係合部11d、11eに係合させているので、第1導電部材3、第2導電部材4、第1圧縮ばね6および第2圧縮ばね7がソケット本体10から抜け出るのを防止することができる。
【0079】
また、本実施の形態では、ソケット本体10を、環状溝11cの一方を構成する第1溝13aが形成された第1ソケット本体13および環状溝11cの他方を構成する第2溝14aが形成された第2ソケット本体14から構成し、第1ソケット本体13に第1貫通孔11fを形成するとともに、第2ソケット本体14に第2貫通孔11gを形成したので、環状溝11cにフランジ部5aを容易に挿通してプローブ2をソケット本体10に組み付けることができる。
【0080】
また、本実施の形態では、第1圧縮ばね6および第2圧縮ばね7がフランジ部5aを介して分離されるので、第1導電部材3および第2導電部材4が被検査対象物21の接続端子21aおよびプリント配線板22の接続端子22aにそれぞれ接触するときに、大きいばね荷重を有する第1圧縮ばね6の反発力が小さいばね荷重を有する第2圧縮ばね7に影響することがない。」

d 段落【0084】及び【0085】
「【0084】
また、本実施の形態では、拡径部を円状のフランジ部5aから構成するとともに、挿通部を環状溝11cから構成しているが、図7に示すように、拡径部を四角形状のフランジ部23から構成するとともに、挿通部を、第2ソケット本体14に形成された直線部A、Bからなる四角形状の第2溝23aと第1ソケット本体13に形成された第2溝23aと同形状の第1溝(図示略)とから構成してもよい。
【0085】
このようにすれば、ソケット本体10に互いに平行に所定ピッチで形成された複数の貫通孔11を、それぞれ直線部Aを介して隣接させることにより、貫通孔11のピッチを小さくすることができ、ソケット本体10を小型化することができ、検査用ソケット1を小型化することができる。
また、隣接する貫通孔11のピッチを小さくすることができるので、微小な被検査対象物21の検査を行うことができる。具体的には、被検査対象物21の接続端子21aのピッチが、例えば、0.4mmや0.3mmのように小さいものであっても、貫通孔11のピッチを小さくすることができれば、第2導電部材4のピッチを小さくすることができるため、微小な被検査対象物21の検査にも対応することが可能となる。」

e 【図1】〜【図4】
「【図1】

【図2】

【図3】

【図4】



f 【図7】
「【図7】



g 【図1】から読み取れる事項
本願の明細書の段落【0035】から【0048】の記載を参酌しつつ、【図1】を参照すると、【図1】の記載から、フランジ部(拡径部)5aは、第1導電部材3、第2導電部材4、第3導電部材5、第1圧縮ばね(第1弾性部材)6及び第2圧縮ばね(第2弾性部材)7のいずれよりも径が大きいことが、読み取れる。
また、環状溝11cには、フランジ部(拡径部)5aの半径方向外周部のみが挿通されており、第1導電部材3、第2導電部材4、第1圧縮ばね(第1弾性部材)6及び第2圧縮ばね(第2弾性部材)7のいずれも挿通されておらず、第3導電部材5の第1端部5b及び第2端部5cはいずれも挿通されていないことが、読み取れる。

(イ) 引用発明の認定
上記アに摘記した引用文献1の記載事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

[引用発明]
「両端変位型コンタクトプローブ2(以下、単に「プローブ」ともいう。)とソケット本体10を備える検査用ソケット装置1であって、(【0035】)
両端変位型コンタクトプローブ2は、第1導電部材、第2導電部材、第3導電部材、第1弾性部材及び第2弾性部材からなり、(【0032】)
プローブ2は、その軸方向両端側にそれぞれ電気的接触部を構成する第1導電部材3及び第2導電部材4を有し、ソケット本体10の貫通孔11に収納されており(【0036】)、
ソケット本体10には互いに平行に所定ピッチで貫通孔が形成されており、この貫通孔内にもプローブが収納されており、(【0036】)
第1導電部材3は、貫通孔11の上方(一端)の開口部11a側に配置されており、被検査対象物21の接続端子21aに接触するようになっており、(【0037】)
第2導電部材4は、貫通孔11の下方(他端)の開口部11b側に配置されており、検査装置であるプリント配線板22の接続端子22aに接触するようになっており、(【0038】)
ソケット本体10の貫通孔11には第3導電部材5が収納されており、第3導電部材5は、上端(一端)に第1導電部材3が摺動自在に保持結合されるとともに、下端(他端)に第2導電部材4が摺動自在に保持結合されており、(【0039】)
第3導電部材5の軸方向中央部には拡径部としてのフランジ部5aが形成されており、このフランジ部5aは、第3導電部材5の半径方向外方に拡径されており、(【0040】)、
フランジ部5aは、円状に形成されており、環状溝11cとの間で所定の隙間を介して、あるいは環状溝11cに密着するようにして環状溝11cに挿通されており、(【0050】)
第3導電部材5のフランジ部5aの上方側は第1端部5bを構成しており、第1導電部材3とフランジ部5aの間には第1端部5bを取り囲むように中空の第1弾性部材である第1圧縮ばね6が設けられており、(【0041】)
第3導電部材5のフランジ部5aの下方側は第2端部5cを構成しており、第2導電部材4とフランジ部5aの間には第2端部5cを取り囲むように中空の第2弾性部材である第2圧縮ばね7が設けられており、(【0042】)
ソケット本体10の貫通孔11には挿通部としての環状溝11cが形成されており、この環状溝11cにはフランジ部5aの半径方向外周部が挿通されており、(【0045】)
フランジ部5aは、第1導電部材3、第2導電部材4、第3導電部材5、第1圧縮ばね(第1弾性部材)6及び第2圧縮ばね(第2弾性部材)7のいずれよりも径が大きいものであり、(【図1】)
環状溝11cには、フランジ部(拡径部)5aの半径方向外周部のみが挿通されており、第1導電部材3、第2導電部材4、第1圧縮ばね(第1弾性部材)6及び第2圧縮ばね(第2弾性部材)7のいずれも挿通されておらず、第3導電部材5の第1端部5b及び第2端部5cはいずれも挿通されておらず、(【図1】)
第1圧縮ばね6は、第1導電部材3をフランジ部5aから離隔する方向に付勢しており、(【0043】)
第2圧縮ばね7は、第2導電部材4をフランジ部5aから離隔する方向に付勢しており、(【0044】)
第1圧縮ばね6及び第2圧縮ばね7はフランジ部5aを介して分離されており、第1導電部材3及び第2導電部材4が被検査対象物21の接続端子21a及びプリント配線板22の接続端子22aにそれぞれ接触するときに、大きいばね荷重を有する第1圧縮ばね6の反発力が小さいばね荷重を有する第2圧縮ばね7に影響することがなく、(【0080】)
第1導電部材3及び第2導電部材4の各々は、コンタクト部3a、4aより大径に形成されるとともにコンタクト部3a、4aの基端側で第1圧縮ばね6の上端面及び第2圧縮ばね7の下端面に当接するフランジ部3f、4fと、これらフランジ部3f、4fからフランジ部5a側に突出するとともに第1圧縮ばね6の上端及び第2圧縮ばね7の下端に嵌入された嵌入部3e、4eを有し、(【0046】)
第1導電部材3および第2導電部材4のコンタクト部3a、4aは、それぞれ、フランジ部3f、4fから軸方向一方側に突出する導通部となっており、ソケット本体10の開口部11a、11bにより軸方向に変位(摺動)可能に保持されており、(【0047】)
開口部11a、11bの開口面積は、貫通孔11の内周面積よりも小さく形成されることにより、開口部11a、11bと貫通孔11の間に第1係合部としての環状係合部11d、11eが形成されており、第1導電部材3のフランジ部3f及び第2導電部材4のフランジ部4fが環状係合部11d、11eに係合することにより、第1導電部材3および第2導電部材4がソケット本体10から抜け出ないようになっている、(【0048】)
検査用ソケット装置1(【0035】)。」

イ 周知技術の認定
(ア) 引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された特開2016−80657号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。
a 段落【0039】〜【0041】
「【0039】
図3は、第1の実施形態の電気的接触子20の構成を示す断面図であり、電気的接触子20の中心軸を通る平面で切断した縦断面図である。
【0040】
電気的接触子20は、バレル40と、ボトムプランジャー41と、トッププランジャー42とを有する。バレル40、ボトムプランジャー41及びトッププランジャー42は、いずれも導電性の材質で形成されている。
【0041】
バレル40は、概ね円筒形状を有する。第1の実施形態の電気的接触子20におけるバレル40は、上下方向(長手方向)に弾性力を発揮する3つのスプリング部40b、40d及び40fを有し、それ以外の部分は弾性力を発揮しない非スプリング部40a、40c、40e及び40gとなっている。すなわち、バレル40は、下側から、第1の非スプリング部40a、第1のスプリング部40b、第2の非スプリング部40c、第21のスプリング部40d、第3の非スプリング部40e、第3のスプリング部40f及び第5の非スプリング部40gを有する。」

b 段落【0045】〜【0051】
「【0045】
図4は、第1の実施形態の電気的接触子20におけるバレル40を示す正面図である。第1の実施形態の電気的接触子20が上下動に伴う中心軸周りの回転が問題とならないものである場合には、図4(A)に示すように、バレル40における3つのスプリング部40b、40d及び40f共に、同じ螺旋状のものを適用すれば良い。第1の実施形態の電気的接触子20が上下動に伴う中心軸周りの回転が問題とならないものである場合には、図4(B)に示すように、バレル40における3つのスプリング部40b、40d及び40fとして、異なる方向の螺旋を有する部分の長さが同じになるようにしたものを適用すれば良い。図4(B)は、スプリング部40bの螺旋が右上がりで、スプリング部40fの螺旋が左上がりで、スプリング部40dが、右上がりの螺旋部分と左上がりの螺旋部分とが半々になっている例を示している。
【0046】
ボトムプランジャー41は概ね円柱形状を有する。ボトムプランジャー41の外径は、バレル40の内径とほぼ一致しており、ボトムプランジャー41がバレル40の下端の開口から上方へ挿通されている。
【0047】
ボトムプランジャー41の下部41aは、バレル40の下端から下方へ突出している。下部41aの突出量は、ボトムガイド板30の下部支持穴30bを貫通し、検査対象物19の電極パッド19aと接触し得る長さに選定されている。ボトムプランジャー41がバレル40の下端から突出することにより、バレル40の下端にできる段差が、ボトムガイド板30の下部支持穴30b周辺の上面(内面)部分と係合することにより、電気的接触子20が下部支持穴30bから抜けないようになっている。ボトムガイド板30の下部支持穴30bの径は、ボトムプランジャー41の外径とほぼ同じになっている。
【0048】
バレル40の最も下の非スプリング部40aの所定高さの位置(周方向の1点ではなく、数点又は円を表している;ここでの点は、微小な点に限定されず、例えば長手方向に長い長円などの接合領域をかせぐ領域であっても良い)PBにおいて、非スプリング部40aとボトムプランジャー41とが、例えば、抵抗溶接(スポット溶接)、レーザ溶接又はかしめによって接合されて互いに固定されている。抵抗溶接を適用する場合には、抵抗溶接による接合が強固になるように、バレル40の内周面の全域若しくは一部領域や、ボトムプランジャー41の外周面の一部領域等に同一材質(例えば金)によるメッキを施すようにしていても良い。
【0049】
ボトムプランジャー41の上端は、電気的接触子20に上下方向の外力が印加されていない状態においても、最も上方に位置している非スプリング部40gの内部に達している。ボトムプランジャー41における固定点PBより上の大半の部分は、スプリング部40b、40d及び40fの伸縮により、バレル40内を相対的に摺動する。
【0050】
トッププランジャー42は概ね円柱形状を有する。トッププランジャー42の外径は、バレル40の内径とほぼ一致しており、トッププランジャー42がバレル40の上端の開口から下方へ挿通されている。トップガイド板34の上部支持穴34bの径は、トッププランジャー42の外径とほぼ同じになっている。
【0051】
トッププランジャー42の概ね上半部42aは、バレル40の上端から上方へ突出している。上半部42aの突出量は、配線基板21(図1)の電極と接触する部分が、バレル40ではなく、トッププランジャー42であることを保証できる量に選定されている。バレル40の最も上の非スプリング部40gの所定高さの位置PTにおいて、非スプリング部40gとトッププランジャー42とが接合されて互いに固定されている。バレル40とトッププランジャー42との接合方法は、上述したバレル40とボトムプランジャー44との接合方法と同様である。」

c 段落【0072】及び【0073】
「【0072】
第1の実施形態の電気的接触子20は、配線基板21の電極との電気的接触性を高めるトッププランジャー42を設けたこと(第1の特徴)、及び、バレル40のスプリング部の数が3個であること(第1の実施形態の効果の説明で言及したように3個に限らず3個以上であれば良い;第2の特徴)を大きな特徴とするものである。これら2つの特徴のうち、いずれか一方の特徴だけを適用して電気的接触子を構成するようにしても良い。
【0073】
例えば、第1の特徴を適用しているならば、スプリング部の数が1個や2個であっても良い。バレル40の材質や肉厚等によって変形の恐れが小さい場合であれば、電気的接触性を高めるために、トッププランジャーを設けることだけを導入するようにしても良い。図9は、2個のスプリング部を有する電気的接触子が適用された接触子支持基板(電気的接続装置)の概略構成を示しており、描画の簡易化を期して、1個の電気的接触子だけを適用しているように描いている。図9に示す接触子支持基板は、ボトムガイド板と、中間絶縁シートと、トップガイド板とによって、電気的接触子を保持するものであり、中間絶縁シートは、電気的接触子の中間の非スプリング部の部分を保持する。」

d 【図3】及び【図4】
「【図3】

【図4】





e 【図9】
「【図9】



(イ) 引用文献6に記載された事項
当審において新たに引用した特開2010−281583号公報(以下「引用文献6」という。)には、次の事項が記載されている。なお、引用文献6は、本願の明細書において、特許文献1として引用されたものである。

a 段落【0037】〜【0041】
「【0037】
[検査用治具の概略の構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る検査用治具10の概略の構成を示す一部断面正面図である。検査用治具10は、ヘッド部12、保持部14、ベース部16及び電極部18を備える。ヘッド部12、保持部14及びベース部16の各々は、複数の樹脂あるいはセラミックス等の絶縁性の板状部材からなる。ヘッド部12、保持部14及びベース部16は、棒状の支持部材11及びその周囲に環装されたスペーサ11sによって保持されている。
【0038】
ヘッド部12及びベース部16は、それぞれ、2枚のプレートから構成されている。枚数及び板厚はこれに限定されない。ヘッド部12の各プレートには複数の貫通孔12hが形成されていて、それに挿入されたプローブ22の先端部22fを所定の位置に案内する。ベース部16の各プレートには複数の貫通孔16hが形成されていて、それに挿入されたプローブ22の後端部22rを電極部18へ案内する。
【0039】
プローブ22の後端部22rは、電極部18に固定されている導線20の端部20e(図4C)と接触しており、導線20は図示せぬ検査装置に接続されている。
【0040】
保持部14は、詳しくは後述するとおり、所定の間隔をおいて配置された3枚のプレート14−1,14−2,14−3からなる(図4A)。それらの間隔を保持するために、プレート14−1とプレート14−2との間と、プレート14−2とプレート14−3との間とには、それぞれ、スペーサ14sが挿入されている。各プレートには、複数の孔14hが形成されていて、3枚のプレートの整列した各孔にはプローブ22が挿入されている。
【0041】
保持部14の3枚のプレートの内、図中上下に位置するプレートは、支持部材11に固定されているが、それらの間に挟まれたプレートは上下のプレートの間を移動することができ、それにより、プローブ22の取り付け又は取り外しを行うことができる。詳しくは後述する。」

b 段落【0044】〜【0055】
「【0044】
[プローブの構造]
図2(A)から図2(D)は、図1の検査用治具に用いることができるプローブのいくつかの実施形態を示す。
【0045】
図2(A)は、図1の検査用治具に用いることができる一実施形態に係るプローブ22を示す。プローブ22は、導電性の円筒状部材から構成されている。例えば、そのプローブとして、外径が、約25から300μmで、内径17が10から250μmのニッケル合金のチューブを用いてもよい。この実施形態では、各プローブの一例として、外径が、約50μm、内径が約30μm、長さが約20mmのニッケル合金のチューブを用いるが、それに限定されるものではない。なお、必要に応じて、プローブの先端部22f及び後端部22rの端面を除いて周面は絶縁被覆してもよい。
【0046】
プローブ22は、円筒形状の先端部22f、中間部22m及び後端部22rを備える。先端部22fは、図1に示すような被検査物50の所定の検査点50dnに接触し、中間部22mは、図1に示すような検査用治具10の保持部14によって保持され、後端部22rは、図1に示すような電極部18と電気的接続を図るように機能する。
【0047】
また、プローブ22は、さらに、先端部22fと中間部22mとの間に、伸縮自在な弾性部22s−1を備え、また、中間部22mと後端部22rとの間に、伸縮自在な弾性部22s−2を備える。弾性部22s−1及び22s−2は、プローブ22の円筒状部材の一部を例えばレーザを用いてらせん状に取り除くことによって、先端部22f、中間部22m及び後端部22rと一体的に形成することができる。
【0048】
図2(A)に示すように、プローブ22の先端部22f及び後端部22rのそれぞれの端面22fe,22reは、平坦に形成されている。
【0049】
図2(B)は、図1の検査用治具に用いることができる他の実施形態に係るプローブ24を示す。プローブ22と同様に、プローブ24も、導電性のある円筒状部材から構成されている。
【0050】
プローブ24は、先端部24fと後端部24rと弾性部24sとから構成されている。先端部24f及び後端部24rは、プローブ22の先端部22f及び後端部22rと同様に、被検査物の所定の検査点と接触したり、電極部18と電気的接続を図ったりする。弾性部24sは、伸縮自在で、プローブ22の弾性部22s−1又は弾性部22s−2と同様に、プローブ24の円筒状部材の一部を例えばレーザによってらせん状に取り除くことによって、先端部24f及び後端部24rと一体的に形成することができる。
【0051】
図2(B)に示すように、プローブ24の先端部24f及び後端部24rのそれぞれの端面24fe,24reは、平坦に形成されている。
【0052】
図2(C)は、図1の検査用治具に用いることができる他の実施形態に係るプローブ26を示す。プローブ26は、図2(A)のプローブ22に、導電性の部材から形成された円柱状の先端ピン30f及び後端ピン30rが組み込まれて構成されている。
【0053】
具体的には、先端部22f及び後端部22rには、それぞれ、先端ピン30f及び後端ピン30rが挿入されており、それらのピンは、例えば先端部22f及び後端部22rの位置Pcを、例えばかしめや抵抗溶接やレーザ溶接することによって固定されている。
【0054】
先端ピン30fは先鋭形状の先端部30feを有しており、その先端部30feは被検査物50の所定の検査点50dn(図1)に接触する。また、後端ピン30rは後端部30reを有しており、その後端部30reは、電極部18と電気的接続を図ることができる。
【0055】
図2(D)は、図1の検査用治具に用いることができる他の実施形態に係るプローブ28を示す。プローブ28も、図2(A)のプローブ22を用いる。具体的には、図2(C)のプローブ26と同様に、先端部22f及び後端部22rには、それぞれ、先端ピン32f及び後端ピン32rが挿入されており、それらのピンは、例えば先端部22f及び後端部22rの位置Pdを、例えばかしめや抵抗溶接やレーザ溶接することによって固定されている。」

c 【図1】〜【図2】
「【図1】

【図2】



d 【図4A】〜【図4C】
「【図4A】

【図4B】

【図4C】



(ウ) 周知技術の認定
引用文献2の段落【0040】、【0046】〜【0048】、【0050】、【0051】、【0073】、【図3】、【図4】、【図9】(上記(ア)参照)及び引用文献6の段落【0050】、【0053】〜【0055】、【図2】(上記(イ)参照)の記載から、次の技術事項は当業者にとって周知の技術であったと認められる(以下「周知技術」という。)。

<周知技術>
「2カ所に弾性部が形成されたバレルの両端側に、一部が突出するように棒形状のトッププランジャーとボトムプランジャーを挿通し、所定の位置で固定するプローブ。」

(4) 対比
ア 対比分析
以下、本件補正発明の発明特定事項の記述に沿って、本件補正発明と引用発明を対比する。
(ア)a 引用発明における、「第1導電部材、第2導電部材、第3導電部材、第1弾性部材及び第2弾性部材からな[る]」「(両端変位型コンタクト)プローブ2」は、本件補正発明における「プローブ」に相当する。

b(a) 「ストッパー領域」について、本願の明細書及び図面の記載を参酌すると、段落【0012】、【0020】及び【図1】は、次のとおり記載されている。
「【0012】
プローブ10は、図1(b)に示すように、管形状のバレル11、及びバレル11の両端部の開口端からそれぞれ先端部が露出した棒形状のトップ側プランジャー121とボトム側プランジャー122を有する。プローブ10の両端部の中間の領域に、バレル11の本体部とは異なる外径を有するストッパー領域13が形成されている。なお、バレル11の本体部とは、ストッパー領域13を除いた、外径が略一定の部分である。」(下線は合議体による。以下同様である。)
「【0020】
上記のように、本発明の第1の実施形態に係る電気的接続装置によれば、トップ側バネ部の伸縮とボトム側バネ部のそれぞれの伸縮が、ストッパー領域13とミドルガイド23との接触によって制動される。このため、プローブ10がランド31に接触する圧力に影響するトップ側バネ部のバネ機能と、プローブ10が被検査体2に接触する圧力に影響するボトム側バネ部のバネ機能を、独立して機能させることができる。」



(b) 前記(a)に摘記した本願の明細書及び図面の記載を参酌すると、本件補正発明の「ストッパー領域」とは、「プローブ」の「両端部の中間の領域に形成され」、「バレル」を含む「プローブ」の「外径が略一定の部分」「とは異なる外径を有する」領域であって、「トップ側バネ部の伸縮とボトム側バネ部のそれぞれの伸縮」を「制動」し、「トップ側バネ部」と「ボトム側バネ部」の「バネ機能を、独立して機能させることができる」領域を指すと解するのが相当である。
他方、引用発明の「フランジ部5a」は、「第3導電部材5の軸方向中央部」に「拡径部として」形成されており、このフランジ部5aは、第3導電部材5の半径方向外方に拡径されており、また、「フランジ部5aを介して」「第1圧縮ばね6及び第2圧縮ばね7」は「分離」され、「第1圧縮ばね6の反発力」が「第2圧縮ばね7に影響」しないから、バネ機能を独立して機能させるようにそれぞれの伸縮を制動しているといえる。
そして、引用発明において、フランジ部5aは、第1導電部材3、第2導電部材4、第3導電部材5、第1圧縮ばね(第1弾性部材)6及び第2圧縮ばね(第2弾性部材)7のいずれよりも径が大きいものであるから、引用発明のフランジ部5aは、プローブの他の部分とは異なる外径を有するものである。
そうすると、引用発明の「フランジ部5a」は、本件補正発明の「プローブの両端部の中間の領域に形成された」「ストッパー領域」に相当することは明らかである。
c 前記a及びbの検討結果を踏まえると、本件補正発明と引用発明は、「両端部の中間の領域にプローブの他の部分とは異なる外径を有するストッパー領域が形成されたプローブ」を備える点で共通する。

(イ)a 引用発明において、第3導電部材5の軸方向中央部に拡径部として形成されたフランジ部5aは、ソケット本体10の貫通孔11に挿通部として形成された環状溝11cとの間で所定の隙間を介して、あるいは環状溝11cに密着するようにして挿通されているから、軸方向に見た場合、フランジ部5aが環状溝11cの軸方向の壁を越えて移動できないことは明らかである。
したがって、引用発明において、「ソケット本体10」のうち、「環状溝11c」が形成された部分(下記参考図の枠で囲った部分に相当する。以下「ソケット本体10の環状溝11c形成部分」という。)は、ストッパー領域は通過できず、プローブのそれ以外の領域は通過できるものであるということができる。すなわち、引用発明において、「ソケット本体10の環状溝11c形成部分」は、「前記ストッパー領域とプローブのそれ以外の領域のうちの外径が相対的に細い領域は通過し且つ外径が相対的に太い領域は通過できないもの」であるということができる。
<参考図>

(注) 参考図は、引用文献1の図1に合議体で枠及び矢印を加筆したものである。
b また、引用発明において、フランジ部(拡径部)5aの半径方向外周部のみが挿通されており、第1導電部材3、第2導電部材4、第1圧縮ばね(第1弾性部材)6及び第2圧縮ばね(第2弾性部材)7のいずれも挿通されておらず、第3導電部材5の第1端部5b及び第2端部5cはいずれも挿通されていないから、「ソケット本体10の環状溝11c形成部分」は、プローブ2のフランジ部5aより相対的に細い領域が通過するものであり、当該領域が貫通するものであるということができる。
c そうすると、引用発明における「ソケット本体10の環状溝11c形成部分」と本件補正発明における「ミドルガイド」は、プローブの部分的な外径の大きさにより通過・非通過が定まるという機能が一致し、また、引用発明の「ソケット本体10の環状溝11c形成部分」は、ソケット本体10の中間部分(ミドルの位置)において「(両端変位型コンタクト)プローブ2」の全体としての水平方向の配置が環状溝11c内に位置するように補助(ガイド)しているといえるから、引用発明の「ソケット本体10の環状溝11c形成部分」は、本件補正発明の「ミドルガイド」に相当する。
d 引用発明において、第1導電部材3及び第2導電部材4のコンタクト部3a、4aは、それぞれ、フランジ部3f、4fから軸方向一方側に突出する導通部となっており、ソケット本体10の開口部11a、11bにより軸方向に変位(摺動)可能に保持されており、また、開口部11a、11bの開口面積は、貫通孔11の内周面積よりも小さく形成されることにより、開口部11a、11bと貫通孔11の間に第1係合部としての環状係合部11d、11eが形成されており、第1導電部材3のフランジ部3f及び第2導電部材4のフランジ部4fが環状係合部11d、11eに係合することにより、第1導電部材3および第2導電部材4がソケット本体10から抜け出ないようになっているから、引用発明においてソケット本体10がプローブ2を保持していることは、明らかである。
そうすると、引用発明におけるプローブ2を保持している「ソケット本体10」と本件補正発明の「プローブを保持するプローブヘッド」は、機能が共通するから、前者は後者に相当するといえる。
e 引用発明においては、「ソケット本体10には互いに平行に所定ピッチで貫通孔が形成されており、この貫通孔内にもプローブが収納されて[いる」」から、ソケット本体10が、同一の構造の「環状溝11cを有する貫通孔11c」を有し、同一の形態で複数のプローブ2を保持していることは明らかである。
f 前記aからeまでの検討結果をまとめると、本件補正発明と引用発明は、「前記ストッパー領域とプローブのそれ以外の領域のうちの外径が相対的に細い領域は通過し且つ外径が相対的に太い領域は通過できないミドルガイドを有し、複数の前記プローブの前記相対的に細い領域のそれぞれが同一の前記ミドルガイドを貫通した状態で前記プローブを保持するプローブヘッド」を備える点で共通する。

(ウ) 引用発明の「プローブ2」は、「第3導電部材5は、上端(一端)に第1導電部材3が摺動自在に保持結合されるとともに、下端(他端)に第2導電部材4が摺動自在に保持結合され」ており、「フランジ部5aを介して」「第1圧縮ばね6及び第2圧縮ばね7」は「分離」され、「第1圧縮ばね6の反発力」が「第2圧縮ばね7に影響」しないから、本件補正発明と引用発明は、「前記プローブが、前記両端部と前記ストッパー領域との間のそれぞれで軸方向に伸縮自在に構成され[ている]」点で一致する。

(エ)a 引用発明においては「フランジ部5aは、円状に形成されており、環状溝11cとの間で所定の隙間を介して、あるいは環状溝11cに密着するようにして環状溝11cに挿通されており」、「第1圧縮ばね6は、第1導電部材3をフランジ部5aから離隔する方向に付勢しており」、「第2圧縮ばね7は、第2導電部材4をフランジ部5aから離隔する方向に付勢して[いる]」。
b したがって、「プローブ2」の「第1導電部材3」又は「第2導電部材4」が「摺動自在」に移動する際に、「第1圧縮ばね6」又は「第2圧縮ばね7」により「フランジ部5a」に対して軸方向に付勢する力が加わり、「フランジ部5a」が「環状溝11c」の軸方向の壁に圧着することは自明である。
c そして、「フランジ部5a」が圧着する「環状溝11c」の軸方向の壁の端部は、「ソケット本体10の環状溝11c形成部分」のうち「「環状溝11c」以外の貫通孔11」が形成された部分の周囲(参考図における、第1貫通孔11f又は第2貫通孔11gの周囲の部分)であることは明らかである。そうすると、引用発明における「「フランジ部5a」が圧着する「環状溝11c」の軸方向の壁の端部」は、本件補正発明における「前記ミドルガイドに形成された前記プローブが貫通する貫通孔の開口部の周囲」に相当するといえる。
d 前記aからcまでの検討結果をまとめると、本件補正発明と引用発明は、「前記プローブが前記軸方向に伸縮したときに、前記相対的に太い領域が前記ミドルガイドに形成された前記プローブが貫通する貫通孔の開口部の周囲に圧着する」点で一致する。

(オ) 引用発明の「検査用ソケット装置1」の「プローブ2」は「その軸方向両端側にそれぞれ電気的接触部を構成する第1導電部材3及び第2導電部材4を有」するから、引用発明の「検査用ソケット装置1」は、本件補正発明の「電気的接続装置」に相当する。
したがって、本件補正発明と引用発明は「電気的接続装置」の発明である点で一致する。

イ 一致点及び相違点の認定
前記アの対比分析における検討結果を総合すると、本件補正発明と引用発明は、次の一致点で一致し、次の相違点において相違する。
(ア) [一致点]
「両端部の中間の領域にプローブの他の部分とは異なる外径を有するストッパー領域が形成されたプローブと、
前記ストッパー領域とプローブのそれ以外の領域のうちの外径が相対的に細い領域は通過し且つ外径が相対的に太い領域は通過できないミドルガイドを有し、複数の前記プローブの前記相対的に細い領域のそれぞれが同一の前記ミドルガイドを貫通した状態で前記プローブを保持するプローブヘッドと、
を備え、
前記プローブが、前記両端部と前記ストッパー領域との間のそれぞれで軸方向に伸縮自在に構成され、
前記プローブが前記軸方向に伸縮したときに、前記相対的に太い領域が前記ミドルガイドに形成された前記プローブが貫通する貫通孔の開口部の周囲に圧着する電気的接続装置。」

(イ) [相違点]
本件補正発明の「プローブ」は、「管形状のバレル、及び前記バレルの両端部の開口端からそれぞれ先端部が露出した状態で前記バレルに接合された棒形状のトップ側プランジャーとボトム側プランジャーを有し」、「ストッパー領域」ではない部分である「プローブの他の部分」が「バレルの本体部」であるのに対し、引用発明の「プローブ2」は、「第1導電部材3、第2導電部材4、第3導電部材5、第1弾性部材である第1圧縮ばね6及び第2弾性部材である第2圧縮ばね7からなり」、「第3導電部材」の「軸方向中央部」に「フランジ部5a」が形成されており、「第1導電部材3とフランジ部5aの間」に「第1圧縮ばね6が設けられ」、「第2導電部材4とフランジ部5aの間」に「第2圧縮ばね7が設けられ」、「第1導電部材3および第2導電部材4の各々は」、「嵌入部3e、4e」において「第1圧縮ばね6の上端及び第2圧縮ばね7の下端に嵌入され[ている]」ものである点。

(5) 判断
相違点の判断
引用発明の「両端変位型コンタクトプローブ2」は、「第1導電部材3」、「第3導電部材5」、「第2導電部材4」が「第1圧縮ばね」、「第2圧縮ばね」を介して結合した構造である。
そして、「両端変位型コンタクトプローブ」の構造として、2箇所に弾性部が形成されたバレルの両端側に、一部が突出するように棒形状のトッププランジャーとボトムプランジャーを挿通し、所定の位置で固定するものは、周知のものである(前記(3)イ(ウ)の周知技術を参照)。
また、引用発明の「プローブ2」に上記周知技術を適用して同様の構造・機能を有するものとする際に、「第1圧縮ばね」と「第2圧縮ばね」の間に位置する「フランジ部5a」を「バレル」の2つの弾性部の間に位置するようにすることは、プローブの構造からみて当業者には至極当然の自明のことである。
そして、本件補正発明の奏する作用効果としては、引用発明及び周知技術からは予測困難でありかつ格別顕著な効果を認めることはできない。
してみれば、引用発明の「両端変位型コンタクトプローブ2」に、周知技術のプローブ構造を適用して相違点に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。

イ 請求人の主張について
(ア) 審判請求人の主張の概要
審判請求人は、令和3年12月13日に提出した審判請求書で次の主張1及び2をしている。
(主張1) 本件補正発明では、プローブが貫通するトップガイドとボトムガイドの間の空間に配置されたミドルガイドを複数のプローブが貫通した状態で、プローブヘッドが複数のプローブを保持するのに対し、引用発明では、仮にプローブ2が環状溝11cを貫通すると見做しても、環状溝11cを貫通するプローブは1本であり、本件補正発明と引用発明は構成が異なる。

(主張2) 引用発明では、プローブ2が軸方向に変位する際に、フランジ部5aの軸方向の上下の面のいずれかの面が、ソケット本体10の貫通孔11に設けられた環状溝11cを形成する軸方向の上下の内壁のいずれかに当接するが、本件補正発明は、「相対的に太い領域が前記ミドルガイドに形成された前記プローブが貫通する貫通孔の開口部の周囲に圧着」する。よって、本願発明のミドルガイド23は物体であるのに対し、引用発明における環状溝11cは空間であり、環状溝11cがミドルガイドに相当するとした場合、環状溝11cに「前記プローブが貫通する貫通孔」を形成することは想定できず、「前記相対的に太い領域が前記ミドルガイドに形成された前記プローブが貫通する貫通孔の開口部の周囲に圧着する」ことは引用文献1に開示も示唆もない。

(イ) 請求人の主張の検討
a 前記(4)ア(イ)fで検討したとおり、引用発明の「ソケット本体10」は、複数の「プローブ2」を収納する「貫通孔11」を有するものであるから、請求人の前記主張1は採用できない。

b 前記(4)イで検討したとおり、引用発明における「ソケット本体10の環状溝11c形成部分」は本件補正発明における「ミドルガイド」に相当するといえるから、請求人の前記主張2は採用できない。

(ウ) 請求人の主張についての判断のむすび
請求人の前記主張1及び主張2は、いずれも採用することができないものであるから、前記アの結論を左右するものではない。

ウ 独立特許要件判断の小括
以上検討のとおり、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易になし得たものである。
また、効果の予測性についても、引用発明及び周知技術から当業者が予測可能な範囲内のものにすぎず、格別顕著なものであるということはできない。
よって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件補正発明は、特許法29条2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることはできない。

(6) 補正の却下の決定の理由のむすび
以上検討のとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本件発明について
1 本件発明
本件補正は、上記第2において示したとおり却下したから、本願の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、前記第2の1(1)の本件補正前の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。

2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定における本件発明についての拒絶の理由のうち、理由1(進歩性)の概要は、次のとおりである。

進歩性)本件発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明(下記引用文献1〜3参照)に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。



引用文献1 特開2009−288156号公報
引用文献2 特開2016−080657号公報(周知技術を示す文献)
引用文献3 特開2016−166783号公報(周知技術を示す文献)


3 引用文献に記載された事項
引用文献1に記載された事項及び引用発明の認定、並びに、周知技術の認定は、上記第2の2(3)ア及びイにおいて示したとおりである。

4 対比
本件発明と引用発明を対比する。
(1) 対比分析
ア 前記第2の2(4)ア(ア)で検討したのと同様にして、本件発明と引用発明は、「両端部の中間の領域にプローブの他の部分とは異なる外径を有するストッパー領域が形成されたプローブ」を備える点で共通する。

イ(ア) 引用発明において、第3導電部材5の軸方向中央部に拡径部として形成されたフランジ部5aは、ソケット本体10の貫通孔11に挿通部として形成された環状溝11cとの間で所定の隙間を介して、あるいは環状溝11cに密着するようにして挿通されているから、軸方向に見た場合、フランジ部5aが環状溝11cの軸方向の壁を越えて移動できないことは明らかである。 したがって、引用発明において、「環状溝11c」は、ストッパー領域は通過できず、プローブのそれ以外の領域は通過できるものであるということができる。すなわち、引用発明において、「環状溝11c」は、「前記ストッパー領域とプローブのそれ以外の領域のうちの外径が相対的に細い領域は通過し且つ外径が相対的に太い領域は通過できないもの」であるということができる。
(イ) 引用発明において、フランジ部(拡径部)5aの半径方向外周部のみが挿通されており、第1導電部材3、第2導電部材4、第1圧縮ばね(第1弾性部材)6及び第2圧縮ばね(第2弾性部材)のいずれも挿通されておらず、第3導電部材5の第1端部5b及び第2端部5cはいずれも挿通されていないから、「環状溝11c」は、「プローブ2のフランジ部5aより相対的に細い領域が通過するものであり、当該領域が貫通するもの」であるということができる。
(ウ) そうすると、引用発明における「環状溝11c」と本件発明における「ミドルガイド」は、プローブの部分的な外径の大きさにより通過・非通過が定まるという機能が一致し、また、引用発明の「環状溝11c」は、ソケット本体10の中間部分(ミドルの位置)において「(両端変位型コンタクト)プローブ2」の全体としての水平方向の配置が環状溝11c内に位置するように補助(ガイド)しているといえるから、引用発明の「環状溝11c」は、本件補正発明の「ミドルガイド」に相当するといえる。
(エ) 前記第2の2(4)ア(イ)dで検討したのと同様にして、引用発明における、プローブ2を保持している「ソケット本体10」は、本件補正発明の「プローブを保持するプローブヘッド」に相当するといえる。
(オ) 前記(ア)から(エ)までの検討結果をまとめると、本件補正発明と引用発明は、「前記ストッパー領域とプローブのそれ以外の領域のうちの外径が相対的に細い領域は通過し且つ外径が相対的に太い領域は通過できないミドルガイドを有し、前記相対的に細い領域が前記ミドルガイドを貫通した状態で前記プローブを保持するプローブヘッド」を備える点で共通する。

ウ 前記第2の2(4)ア(ウ)で検討したのと同様にして、本件発明と引用発明は「前記プローブが、前記両端部と前記ストッパー領域との間のそれぞれで軸方向に伸縮自在に構成され[ている]」点で一致する。

エ 前記第2の2(4)ア(エ)a及びbで検討したのと同様にして、本件発明と引用発明は「前記プローブが前記軸方向に伸縮したときに、前記相対的に太い領域が前記ミドルガイドに圧着する」点で一致する。

オ 前記第2の2(4)ア(オ)で検討したのと同様にして、本件発明と引用発明は「本件補正発明と引用発明は「電気的接続装置」の発明である点で一致する。

(2) 一致点及び相違点の認定 前記(1)の対比分析における検討結果を総合すると、本件発明と引用発明は、次の一致点で一致し、次の相違点2において相違する。
[一致点]
「両端部の中間の領域にプローブの他の部分とは異なる外径を有するストッパー領域が形成されたプローブと、
前記ストッパー領域と前記本体部のうちの外径が相対的に細い領域は通過し且つ外径が相対的に太い領域は通過できないミドルガイドを有し、前記相対的に細い領域が前記ミドルガイドを貫通した状態で前記プローブを保持するプローブヘッドと、
を備え、
前記プローブが、前記両端部と前記ストッパー領域との間のそれぞれで軸方向に伸縮自在に構成され、
前記プローブが前記軸方向に伸縮したときに、前記相対的に太い領域が前記ミドルガイドに圧着する
ことを特徴とする電気的接続装置。」

[相違点2]
本件発明の「プローブ」は、「管形状のバレル、及び前記バレルの両端部の開口端からそれぞれ先端部が露出した状態で前記バレルに接合された棒形状のトップ側プランジャーとボトム側プランジャーを有し」、「ストッパー領域」ではない部分である「プローブの他の部分」が「バレルの本体部」であるのに対し、
引用発明の「プローブ2」は、「第1導電部材3、第2導電部材4、第3導電部材5、第1弾性部材である第1圧縮ばね6及び第2弾性部材である第2圧縮ばね7からなり」、「第3導電部材」の「軸方向中央部」に「フランジ部5a」が形成されており、「第1導電部材3とフランジ部5aの間」に「第1圧縮ばね6が設けられ」、「第2導電部材4とフランジ部5aの間」に「第2圧縮ばね7が設けられ」、「第1導電部材3および第2導電部材4の各々は」、「嵌入部3e、4e」において「第1圧縮ばね6の上端及び第2圧縮ばね7の下端に嵌入され[ている]」ものである点。

5 判断
相違点2は、前記第2の2(4)イ(イ)において認定した相違点と同一であるから、前記第2の2(5)で検討したのと同様の理由により、引用発明の「プローブ2」に周知技術のプローブ構造を適用して相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
なお、本件発明の奏する効果についても、引用発明及び周知技術から当業者が予測可能な程度のものにすぎず、格別顕著なものであるということはできない。
よって、本件発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。


第4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-07-07 
結審通知日 2022-07-12 
審決日 2022-07-28 
出願番号 P2017-161154
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01R)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 岡田 吉美
特許庁審判官 濱野 隆
居島 一仁
発明の名称 電気的接続装置  
代理人 三好 秀和  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ