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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1389257
総通号数 10 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-01-17 
確定日 2022-09-27 
事件の表示 特願2019− 12962「シリコンウェーハの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 8月13日出願公開、特開2020−123610、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続きの経緯
本願は、平成31年1月29日の出願であって、令和3年7月21日付けで拒絶理由通知がされ、同年9月21日付けで手続補正がなされるとともに意見書が提出され、同年10月22日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、令和4年1月17日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(令和3年10月22日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1、2に係る発明は、以下の引用文献1、2、5に基づいて、その発明が属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものである。また、本願請求項3に係る発明は、以下の引用文献1〜3、5に基づいて、当業者が容易に発明できたものである。また、本願請求項4に係る発明は、以下の引用文献1〜5に基づいて、当業者が容易に発明できたものである。また、本願請求項5、6に係る発明は、以下の引用文献1、5に基づいて、当業者が容易に発明できたものである。また、本願請求項7に係る発明は、以下の引用文献1、4、5に基づいて、当業者が容易に発明できたものである。したがって、本願請求項1−7に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開平11−219923号公報
2.国際公開第2008/93488号
3.特開平11−348031号公報
4.特開平5−198543号公報
5.特開平6−114745号公報

第3 審判請求時(令和4年1月17日付け)の補正について
審判請求時の補正(以下、「本件補正」という。)は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
本件補正によって、請求項1に記載されていた「前記ノッチにおける前記傾斜部の傾斜角度θ1及びθ2が12°以下(11°を除く)となるように」との記載を「前記ノッチにおける前記傾斜部の傾斜角度θ1及びθ2が12°以下(11°を除く)の所望の面取り形状となるように」とする補正事項は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、「前記ノッチにおける前記傾斜部の傾斜角度θ1及びθ2が12°以下(11°を除く)の所望の面取り形状となるように」という事項は、本願の出願当初の明細書の段落【0039】に記載されているから、当該補正事項は新規事項を追加するものではない。
本件補正によって、請求項1に記載されていた「前記面取り加工を行う」との記載を「砥石に前記所望の面取り形状に形作られた溝に前記シリコンウェーハのノッチを当接し、該シリコンウェーハのノッチを前記砥石の溝形状に成形することで、前記ノッチの面取り加工を行う」とする補正事項は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、「砥石に前記所望の面取り形状に形作られた溝に前記シリコンウェーハのノッチを当接し、該シリコンウェーハのノッチを前記砥石の溝形状に成形することで、前記ノッチの面取り加工を行う」という事項は、本願の出願当初の明細書の段落【0039】に記載されているから、当該補正事項は新規事項を追加するものではない。
また、その他の本件補正における特許請求の範囲についての補正事項は、本件補正前の請求項3、5〜7を削除し、それにともない本件補正前の請求項4を請求項3に繰り上げるとともに、引用請求項の項番号を繰り上げたものである。
そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、本件補正後の請求項1〜3に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。

第4 本願発明
本願請求項1〜3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」、「本願発明2」、「本願発明3」という。)は、令和4年1月17日付け手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1〜本願発明3は、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
ノッチを有するシリコンウェーハの周縁部を研削して面取り加工を行う面取り工程と、
該面取り工程の後に、前記シリコンウェーハの主面にラッピング又は両面研削加工を行うラッピング又は両面研削工程と、
該ラッピング又は前記両面研削工程の後に、前記シリコンウェーハにエッチング加工を行うエッチング工程と、
該エッチング工程の後に、前記シリコンウェーハの面取り部の鏡面面取り加工を行う鏡面面取り工程とを含むシリコンウェーハの製造方法であって、
前記シリコンウェーハの前記ノッチの前記面取り部の断面形状において、前記シリコンウェーハの第1の主面に接続する傾斜部の前記第1の主面に対する傾斜角度をθ1とし、前記シリコンウェーハの第2の主面に接続する傾斜部の前記第2の主面に対する傾斜角度をθ2と定義したとき、
前記面取り工程において、前記ノッチにおける前記傾斜部の傾斜角度θ1及びθ2が12°以下(11°を除く)の所望の面取り形状となるように、砥石に前記所望の面取り形状に形作られた溝に前記シリコンウェーハのノッチを当接し、該シリコンウェーハのノッチを前記砥石の溝形状に成形することで、前記ノッチの面取り加工を行うことを特徴とするシリコンウェーハの製造方法。
【請求項2】
前記面取り工程において、前記ノッチにおける前記傾斜部の傾斜角度θ1及びθ2が10°以上となるように前記面取り加工を行うことを特徴とする請求項1に記載のシリコンウェーハの製造方法。
【請求項3】
前記シリコンウェーハを、前記主面の結晶面方位が(100)であり、前記ノッチの結晶方位が<100>のものとすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシリコンウェーハの製造方法。」

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付与した。以下、同じ。)。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体ウェハおよび半導体ウェハの製造技術ならびに半導体装置の製造技術に関し、特に、半導体装置の製造プロセスにおける異物付着対策等に適用して有効な技術に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、半導体素子の高集積化が進むにつれて、その製造プロセスにおける歩留低下の要因として塵挨(異物)付着の占める割合はますます増加してきている。この塵挨付着量を低減するためには、環境の清浄度が重要であることは勿論であるが、前述の半導体素子の製造プロセス中においてはそれだけでは十分とは言えない。
【0003】すなわち、マスクパターンが微細化すると、影響する塵挨の大きさも必然的に小さくなるため、歩留の向上策としては、高清浄環境だけでなく、たとえば半導体ウェハ(以下、単にウェハと記す)自体からの塵挨付着についても防止することが重要となっている。
【0004】従来、ウェハ自体を発生源とする塵挨付着の対策として、たとえば、株式会社工業調査会、1993年11月20日発行、「電子材料」1993年別刷、P33〜P40、等の文献にも記載されているように、インゴットから切り出されたウェハの外縁部に面取り加工を施すことが知られている。
【0005】すなわち、インゴットから切り出された直後のウェハの外縁部に、所定のテーパおよび丸みを持つ凸のR形状の面取り加工を施すものである。このとき、R形状の頂点の位置は、ウェハの厚さ方向の断面中心上に位置するように面取り加工が施されている。
【0006】ところで、ウェハの製造工程では、上述のような面取り加工後、さらに、ウェハの表裏両面に、厚さ寸法の規格化のためのラップ加工、さらにはエッチ加工を施し、最後に、素子形成面のみに対して鏡面研磨加工が施される。
【0007】このため、単にウェハを切り出した段階での面取り加工で頂点の位置を厚さ寸法の中間位置にしたのでは、たとえば、最後の鏡面研磨加工の分だけ、素子形成面側に面取り部の頂点が偏って存在することとなる。」

「【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述のように、面取り部の頂点が素子形成面側に偏って存在するウェハを半導体装置の製造プロセスに供した場合には以下のような技術的課題あることが明らかになった。
【0010】すなわち、ウェハプロセスにおいて、半導体製造装置にウェハをセットすべく自動アーム搬送する際のウェハの面取り部のチャッキング操作や、装置内に搬送されたウェハの位置決めのためのストッパー部(溝形状やピン形状になっている)への当接操作等において、面取り部から異物が発生し、素子形成面に付着する現象が見られた。
【0011】この現象は特に、ウェハの素子形成面側の面取りを寸法L1、素子形成面と反対の裏面側を寸法L2としたとき、面取り寸法L1が面取り寸法L2と略同一でない面取り形状(ウェハ厚さ中心線に対して均等でない面取り形状)のときに起こり、面取り寸法L1が面取り寸法L2よりも小さいと、ウェハ厚さの中心線よりも面取り部の頂点が素子形成面側にあるため、ウェハの素子形成面側へ特に異物発塵する(図10(c))。また、面取り寸法L1が面取り寸法L2よりも大きいと、ウェハ厚さの中心線よりも面取り部の頂点が裏面側にあるため裏面側に異物発塵すると判明した(図10(b))。
【0012】このような異物発塵は、たとえば、ウェハプロセスにて素子形成面に半導体素子を形成する際に酸化膜の絶縁破壊を招くなどの歩留低下の一因となる。
【0013】本発明の目的は、半導体ウェハ自体等を発生源とする塵埃や異物の発生を低減させることが可能な半導体ウェハおよびその製造技術を提供することにある。」

「【0016】
【課題を解決するための手段】本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0017】すなわち、本発明の半導体ウェハは、半導体素子が形成される第1主面と、第1主面と表裏をなす第2主面とを備え、外縁部に面取り部が形成されてなる半導体ウェハであって、第1主面が鏡面加工された状態において、面取り部の頂点から第1主面までの第1の寸法と、頂点から第2主面までの第2の寸法とがほぼ等しい形状か、または、面取り部の頂点から第1主面までの第1の寸法が、頂点から第2主面までの第2の寸法よりも大きい形状としたものである。
【0018】また、本発明の半導体ウェハは、半導体素子が形成される第1主面と、第1主面と表裏をなす第2主面とを備え、外縁部に面取り部が形成されてなる半導体ウェハであって、第1主面が鏡面加工された状態において、第1および第2主面の中間を通り両者に平行な中心面上に、面取り部の頂点がほぼ一致してなる形状か、または、第1および第2主面の中間を通り両者に平行な中心面よりも第2主面側に偏った位置に面取り部の頂点が存在する形状としたものである。
【0019】より具体的には、たとえば、ウェハの半導体素子を形成する面側の面取り寸法をL1、裏面側の面取り寸法をL2としたとき、面取り寸法L1が面取り寸法L2と略同一とされているものであるか、面取り寸法L1が面取り寸法L2よりも大きくされているものである。
【0020】これにより、面取り寸法L1および寸法L2が略同一とされていることで、たとえば、半導体ウェハの面取り形状が厚さ方向にほぼ対称形であることを想定して制作されたウェハプロセスでのストッパ等の治具の溝形状とほぼ一致するため、接触による発塵量自体が少なくなる。
・・・
【0022】また、上述のような半導体ウェハを用いる半導体装置の製造工程では、半導体ウェハの素子形成面への異物の付着量が確実に減少し、半導体ウェハ自体を発生源とする異物に起因する歩留り低下を防止して、ウェハプロセスでの歩留り向上を実現できる。」

「【0024】図1(a)〜(d)および図2(a)〜(d)は、本発明の一実施の形態である半導体ウェハの製造方法の一例を工程順に例示した断面図であり、図3および図4は、本実施の形態の半導体ウェハの製造方法の一例を示すフローチャート、図5は、半導体ウェハの一例を示す断面図、図6および図7は、半導体ウェハの外観形状の一例を示す斜視図である。
【0025】また、図8は、本実施の形態の半導体ウェハの製造方法に用いられる面取り装置の構成の一例を示す概念図、図9は、その加工軌跡の一例を示す線図、である。
【0026】まず、図5にて、本実施の形態の半導体ウェハの形状について説明する。本実施の形態の半導体ウェハ1は、半導体装置の製造工程におけるウェハプロセスに供されて半導体素子を形成するための基板であり、半導体素子を形成する面側であり、ウェハプロセスに供される前に所望の平坦度に鏡面研磨加工が施された素子形成面2(表面:第1主面)と、その反対側で、ウェハプロセスに供される前にエッチング加工等が施されている裏面3(第2主面)、そして、チッピング等を防止する目的で、半導体ウェハ1の外縁部に面取り加工を施すことによって形成された面取り加工部4からなる。
【0027】また、図6および図7に例示されるように、半導体ウェハ1の外縁部には、当該半導体ウェハの方位を識別するためのオリエンテーションフラット1a、またはノッチ1bが形成されている。面取り加工部4は、オリエンテーションフラット1aおよびノッチ1bにも形成されている。
【0028】本実施の形態の場合、面取り加工部4は、断面形状で見ると、頂点4aと、この頂点4aから、素子形成面2に至る稜線4bと、頂点4aから裏面3に至る稜線4cで構成され、素子形成面2の側において、頂点4aから、稜線4bと素子形成面2との交点までの距離を、面取り寸法L1とし、裏面3側において、頂点4aから、稜線4cと裏面3との交点までの距離を、面取り寸法L2とする。
【0029】そして、本実施の形態の場合、ウェハプロセスに供される直前に、素子形成面2に対して鏡面研磨加工が施された状態において、半導体ウェハ1の厚さ方向の中心線CLに対して、頂点4aがほぼ一致する形状か、あるいは、頂点4aが、中心線CLよりも裏面3側に偏った形状となるように、後述の半導体ウェハ製造工程にて形状が制御される。
【0030】まず、図1および図3にて、本実施の形態における半導体ウェハの製造方法の一例について説明する。
【0031】まず、Si等の半導体からなる円柱状の単結晶インゴットを、結晶引上げ等の方法にて製造する(ステップ100)。
・・・
【0033】さらに、外筒研削された円柱状の単結晶インゴットを、軸に直交する方向に所望の厚さでスライスすることによって、複数の半導体ウェハ1を切り出す(ステップ102)。
【0034】その後、半導体ウェハ1の外縁部に面取り加工を施す(ステップ103)。
【0035】この時、本実施の形態の場合には、この面取り加工の段階において、すでに、面取り加工部4の頂点4aが、中心線CLよりも裏面3側に偏った形状となるように面取り加工を実行する。この状態が、図1(a)である。
【0036】この状態では、面取り寸法L1(L10)は、面取り寸法L2(L20)よりも大きい。また、頂点4aを通って素子形成面2および裏面3に平行な面と、素子形成面2との距離A0、および当該面と裏面3との距離B0は、A0>B0の関係にある。
【0037】なお、一例として、面取り加工部4の片側の面取り角度αは、半導体ウェハ1の品種にもよるが、MOS系の半導体装置の製造に用いられる場合には22°、バイポーラ系の半導体装置の製造に用いられる場合には11°である。
・・・
【0039】次に、半導体ウェハ1の厚さを所定の規格値にする等の目的で、半導体ウェハ1の両面にラップ加工を施す(ステップ104)。
・・・
【0042】次に、ラップ加工後の半導体ウェハ1の素子形成面2および裏面3に、清浄化等の目的でエッチ加工を施す(ステップ105)。
・・・
【0045】次に、後の素子形成等に備えて、素子形成面2の側のみに鏡面研磨加工を施す(ステップ106)。
・・・
【0049】このような一連の工程を経て製造された半導体ウェハ1は、半導体装置の製造工程におけるウェハプロセスに供される。その時、本実施の形態の半導体ウェハ1の場合には、ウェハプロセスに供される状態において、面取り寸法L1(L13)は、面取り寸法L2(L23)よりも大きいので、図10の(b)に例示されるように、面取り加工部4の頂点4aが治具等に当接する際の当該面取り加工部4からの発塵は、素子形成面2と反対側の裏面3の側に発生するので、素子形成面2における異物や塵埃等の付着を確実に防止できる。」

「【0051】次に、図2および図4を参照して、本実施の形態の半導体ウェハの製造方法の変形例について説明する。
【0052】この変形例の場合には、半導体ウェハ1の素子形成面2に対する鏡面研磨加工が完了した状態で、面取り加工部4の頂点4aが、半導体ウェハ1の厚さ方向の中間位置に有り、素子形成面2の側の面取り寸法L1と、裏面3側の面取り寸法L2とがほぼ等しくなる形状とする場合について説明する。
【0053】すなわち、本実施の形態の場合には、まず、面取り加工を行うステップ103Aにおいては、図2(a)に例示されるように、面取り加工完の状態において、面取り寸法L1(L10)と、面取り寸法L2(L20)とはほぼ等しく、その値は、口径200φの場合には、一例として各々500μmである。また、頂点4aを通って素子形成面2および裏面3に平行な面と、素子形成面2との距離A0、および当該面と裏面3との距離B0は、A0≒B0の関係にある。
【0054】そして、ステップ104Aのラップ加工では、後の素子形成面2のみの鏡面研磨加工による面取り寸法L1の減少を見込んで、裏面3側のラップ加工の加工代dLbを、素子形成面2側の加工代dLaよりも大きくする。両者の差は、たとえば、後の鏡面研磨加工における加工代dMaとほぼ等しくすればよい。
【0055】このラップ完後の寸法関係は、面取り寸法L1(L11)は、面取り寸法L2(L21)よりも大きい。また、距離A0(A1)、距離B0(B1)は、A1>B1の関係にある。
【0056】その後、半導体ウェハ1の素子形成面2および裏面3の双方に、等しい加工代dEa、dEbのエッチ加工を施す(ステップ105)。
【0057】この時も、両面の加工代が等しいので、図2(c)のように、ステップ103Aの関係が維持され、面取り寸法L1(L12)は、面取り寸法L2(L22)よりも大きい。また、距離A0(A2)、距離B0(B2)は、A2>B2の関係にある。
【0058】最後に、素子形成面2のみに、加工代dMaの鏡面研磨加工を施す(ステップ106)。鏡面研磨加工完了後の半導体ウェハ1の厚さ(A3+B3)は、口径200φの場合には725μmである。」

「【0065】上述のような、半導体ウェハ1の面取り加工部4の加工には、たとえば、図8に例示されるような、いわゆる数値制御方式の面取り加工装置を用いることができる。
【0066】すなわち、この面取り加工装置は、真空吸着等の方法で半導体ウェハ1を保持するチャック51と、チャック51をθ1方向に回転させるモータ52、チャック51を図8の左右(Y)方向および紙面に垂直な(X)方向に移動させるX−Yテーブル53、砥石54をθ2方向に回転させるモータ55、砥石54を図8の上下(Z)方向に変位させるZテーブル56、全体の動作を制御する面取りコントローラ57、この面取りコントローラ57に、面取り加工部4の加工形状を指定するためのプロファイルデータ等が格納される面取りプロファイルテーブル58等で構成されている。
【0067】そして、たとえば、図1(a)に例示されるように、面取り加工部4の頂点4aの位置を裏面3の側に偏心させた形状に面取り加工する場合には、図8に例示されるような、砥石54の加工軌跡のデータを予め面取りプロファイルテーブル58に格納し、面取りコントローラ57が、この加工軌跡のデータや、予め設定されている半導体ウェハ1のオリエンテーションフラット1aやノッチ1b等の形状を含めた輪郭形状や厚さ等のデータ等に基づいて、チャック51の回転やX−Yテーブル53の移動、砥石54の回転、Zテーブル56の上下動等を適宜制御することにより、目的の所望の面取り加工部4の形状に半導体ウェハ1を加工する。
【0068】なお、特に図示しないが、ノッチ1bの加工は、当該ノッチ1bの寸法形状等に適合させた比較的小口径の砥石を、砥石54の代わりにモータ55にセットしたり、モータ55および砥石54からなるユニットと同等のユニットを備え、砥石54と自動的に切り替えて使用することにより連続的な加工が可能である。」

図1、2、7、8は以下のとおりのものである。





(2)上記記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。

ア 「本発明の一実施の形態である半導体ウェハの製造方法」及び「本実施の形態の半導体ウェハの製造方法の変形例」において、「半導体ウェハ1」は「Siウェハ1」であること(【0024】、【0031】、【0033】、【0051】、【0052】)。

イ バイポーラ系の半導体装置の製造に用いられる場合には、面取り加工部4の片側の面取り角度αを11°とすること(【0037】)。

ウ 面取り加工部4の加工は、砥石54を使用し、砥石54の回転等を適宜制御することにより行うこと(【0065】〜【0067】)。

エ 面取り加工部4は、ノッチ1bにも形成されており、ノッチ1bの加工は当該ノッチ1bの寸法形状等に適合させた比較的小口径の砥石を使用すること(【0027】、【0068】)。

(3)上記(1)、(2)から、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「外縁部にノッチ1bが形成されているSiウェハ1の外縁部に面取り加工を施し、面取り加工部4を形成し、
次に、Siウェハ1の両面にラップ加工を施し、
次に、Siウェハ1にエッチ加工を施し、
次に、Siウェハ1の素子形成面2の側のみに鏡面研磨加工を施すSiウェハ1の製造方法であって、
バイポーラ系の半導体装置の製造に用いられる場合には、面取り加工部4の片側の面取り角度αを11°とし、
面取り加工部4の加工は、砥石54を使用し、砥石54の回転等を適宜制御することにより行い、
面取り加工部4は、ノッチ1bにも形成されており、ノッチ1bの加工は当該ノッチ1bの寸法形状等に適合させた比較的小口径の砥石を使用する、Siウェハ1の製造方法。」

2 引用文献2について
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

「技術分野
[0001] 本発明は、シリコンウエーハの外周部を面取りするシリコンウエーハの面取り装置およびシリコンウエーハの製造方法ならびにエッチドシリコンウエーハに関するものであり、詳しくは、シリコンウエーハの面取り部の断面形状に関する面取り装置および製造方法ならびにエッチドシリコンウエーハに関する。」

「[0007] このような面取り部の断面形状寸法の均一化が望まれている中、従来では 、図4のような製造工程によりシリコンウエーハの製造が行われている。まず、 図4(A)に示すように、単結晶インゴットから薄板ウエーハを切り出すスライス工程と、ウエーハの外周部のカケを防止するための面取り工程と、ウエーハの厚さばらつきをなくすためのラッピング工程もしくは両面研削工程と、前記面取り、ラッピングや研削で導入された加工歪みや汚染物を除去するためのエッチング工程と、ウエーハの面取り部及び主表面或いは両面を鏡面にする鏡面研磨工程を順次行う事が一般的である。
・・・
[0009] 図4の面取り工程では、一般的には、総型の溝を有する面取りホイールをウェーハ外周部に押し付けて、溝の形状をウェーハに転写する事で面取りが行われる(図5に総型面取り方式の一例の概略を示す)。ホイールは高速で自転し、かつウェーハも自転するために、ウェーハの円周方向において、均一な面取り形状の転写が可能とされる。」

「[0041] 次に、面取り砥石3について述べる。面取り砥石3は、シリコンウエーハWの外周部を面取りすることができるものであれば良く特に限定されないが、本発明の性質上、シリコンウエーハWの円周方向に応じて面取り形状を変更して面取りしやすいように、図1に示すように、例えば外筒式のものを用いることができる。さらに面取り砥石3には面取り砥石回転駆動モータ6により自転できるようになっている。」

「[0046] 図2は、本発明における面取り方式、すなわちシリコンウエーハWの外周部と面取り砥石3の相対位置の制御の様子を示す説明図である。上記制御装置4によって、シリコンウエーハWをZ軸方向に移動させ、また、面取り砥石3をX軸方向に移動させることにより、これらの相対位置を変更することが可能になる。また、保持具回転駆動モータ5により保持具2を回転させ、同時にシリコンウエーハWを回転させることができ、シリコンウエーハWのノッチを基準に回転角度を制御し(図省略)、所望の円周方向の位置にあたる外周部を面取りできるようになっている。したがって、面取り砥石3を用い、円周方向に応じたシリコンウエーハWの外周面を所望の面取り形状に変更して面取りすることができる。」

3 引用文献3について
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は半導体デバイスの素材として使用される半導体基板の製造方法、その製造方法に使用される外面加工装置、及びその製造方法によって中間製品として得られる単結晶インゴットに関する。」

「【0036】この外面加工には、例えば図2に示す外面加工装置20が使用される。図2に示された外面加工装置20は、ブロック11を支持して周方向に回転させる手段と、そのブロック11の外周面に押圧される研削ロール21とを備えている。研削ロール21は、所定数の研削ディスク22,22・・を軸方向に連結して一体化した構成になっており、その中心軸はブロック11の回転中心線に平行である。各研削ディスク22は、環状凸部12に対応する断面形状の環状溝を外周面に備えた溝付きディスクであり、その外周面はダイヤモンドが蒸着された凹凸研削面になっている。この凹凸研削面は、軸方向に複数形成されていてもよい。
【0037】・・・これを繰り返すことにより、ブロック11の外周面全体に環状凸部12,12・・が形成され、面取り加工を受けた単結晶ウエーハを複数枚重ね合わせて一体化したような特殊形状のブロック14が製造される。
【0038】即ち、図2に示す外面加工装置20によると、定径のための丸め加工、凹凸加工及び面取り加工が同時に行われる。
【0039】ブロック11の外周面にオリフラが形成されている場合は問題ないが、ノッチが形成されている場合は、図2の外面加工装置20では研削ディスク22がノッチ部に侵入しないため、ノッチ部に面取り加工を行うことができない。そこで、例えば図3に示す外面加工装置30を用いてノッチ部に面取りを行う。
【0040】図3に示された外面加工装置30は、特殊形状のブロック14を支持して周方向に回転させる手段と、そのブロック14の外周面に押圧される研削ロール31とを備えている。研削ロール31は、ノッチ部15に侵入する小径の研削ディスク32,32・・を軸方向に連設した一体構成になっている。研削ロール31を回転させながらブロック14の外周面に押し付け、ブロック14を低速で回転させると、図4に示すように、研削ロール31の各研削ディスク32がブロック14のノッチ部15を通過し、ノッチ部15が面取りされる。
【0041】ここでは、ノッチ部の形成、外面加工装置20による環状凸部12,12・・の形成、及び外面加工装置30によるノッチ部の面取りを順に行ったが、当初より外面加工装置30を使用してノッチ部の形成、環状凸部12,12・・の形成、及びノッチ部の面取りを同時に行うこともできる。また、オリフラを形成する場合も外面加工装置30を用いてオリフラの形成及び環状凸部12,12・・の形成を同時に行うこともできる。」

「【0050】膜形成が終わると、図1(e)に示すように、結晶面が所定の面になるように、ブロック14をスライス機にセットし、隣接する環状凸部12,12の間でブロック14を切断することにより、ブロック14から複数枚のウエーハ18,18・・を切り出す。スライス機としてはワイヤソーでも内周刃ソーでもよい。この加工では、ブロック14の外周面が保護膜17にて保護されているので、その外周面の損傷や汚れが防止される。切り出されたウエーハ18は、既に外周面の面取り及び鏡面仕上げを終え、更に仕上げ面が保護膜17にて保護された状態にある。」

4 引用文献4について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0002】
【従来の技術】半導体デバイスは従来は単結晶シリコン層の上に製造されていた。・・・
【0003】多くの単結晶シリコンウェハは(100)結晶面の露出面を有する。それらのウェハのことを以後(100)ウェハと呼ぶことにする。」

「【0025】ここで説明している実施例は数多くの詳細事項を含むが、本発明の要旨または範囲を逸脱しない別の数多くの実施例が存在することがわかるであろう。別の実施例においては、フロートゾーン結晶形成法、または基板の露出面に対応する結晶面とは独立に単結晶基板を形成できる他の任意の方法を用いてインゴットが形成される。n形の(100)ウェハのためのSEMI規格は、ウェハの両側で、好ましくは、<100>結晶方向に沿う主平らな面と第2の平らな面により示される。別の実施例においては、インゴットの形成後で、第1のデバイスパターンをウェハの上に置く前の任意の時刻に、<100>結晶方向に沿って主平らな面を形成できる。(100)ウェハの結晶方向を示すために、ウェハの縁部に沿うノッチその他のマークを使用できる。<100>結晶方向に沿うマークを有することが好ましいが、本発明の利点は、へき開面に沿わない任意の結晶方向を示すためにマークが用いられる時には常に期待される。(100)結晶面に沿う<100>結晶方向は、(100)結晶面に沿う<100>結晶方向の間の中間であるから、好ましい。デバイスの製造に用いられる半導体製造装置により結晶方向を決定できるものとすると、平らな面およびその他のマークは絶対となる。未来の製造装置は結晶格子自体を調べることにより<100>結晶方向を定めることができる。<100>結晶方向を製造装置により決定できるものとすると、本発明をマークなしの基板に使用できる。」

5 引用文献5について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、半導体ウェーハ研削用砥石に関する。
【0002】
【従来の技術】半導体ウェーハ(以下、単にウェーハという)の研削工程において、ウェーハの面取り形状はラウンド形状とテーパ形状とがあり、その研削加工方式としては倣い方式が一般的である。テーパ形状を倣い方式によって研削加工する場合は、図6に示すように、ウェーハ1の側端部1aを研削するときは砥石2の円筒部2aで、またそのテーパ部1b,1cを研削するときは砥石2のテーパ部2b,2cでそれぞれ研削加工する方法が知られている(たとえば、特公昭57− 10568号公報、エレクトロニクス用結晶材料の精密加工技術(サイエンスフォーラム社,昭和60年1月発行,P.228 , P.231-232)など参照)。このとき、砥石2のテーパ部2b,2cは、ウェーハ1の仕上がり形状のテーパ角度と同じ角度がそれぞれ与えられるのが一般的である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記したように、砥石2のテーパ部2b,2cがウェーハ1の仕上がり形状のテーパ角と同じ角度になっていると、砥石2の底部に近いほど研削量が多くなり、したがって砥石自体も底部に近いほど摩耗し、その結果研削回数の増加に伴ってそのテーパ部2b,2cが変形し、ウェーハ1の面取り加工形状が目標から大きく異なってしまうという欠点があった。」

「【0006】
【作 用】本発明は、上記の課題を解決するためにウェーハの面取り形状の許容差に着目してなされたものであり、砥石の各研削面の摩耗量をウェーハの研削量に比例するとの前提に立ち、ウェーハ面研削前後で砥石形状を写したウェーハ面形状を調査検討し、これを確認し得たものである。
【0007】すなわち、図1に示すように、砥石2のテーパ部2b,2cにおけるウェーハの面取り形状が初め許容公差の一方の値に接するように初期形状3とされ、その後ウェーハの研削回数が増加していく過程で目標形状4とされ、さらに研削回数が増加してその許容公差のもう一方の値に接するような最終砥石形状5とされるように形成するのである。
【0008】さらに詳しく述べると、砥石2の初期形状3については、通常の砥石形状はウェーハ1の目標形状に合わせるようにして製作されるのに対し、位置ごとに異なる砥石摩耗量を予め付加した形状とすることである。そして、この形状の砥石2を使ってウェーハ1を研削すると、ウェーハ1の端部に近いほど研削量が大きく、したがって砥石摩耗量も大きい。その結果、研削回数が増加するのに従い、砥石形状は目標形状4に近づく。それ以後の使用では、通常の砥石と同様に摩耗し、許容限度いっぱいの最終形状5となり、その寿命が尽きることになる。したがって、本発明による形状の砥石を使用すると、砥石の寿命は通常形状のものに比して長くなることになる。」

「【0016】
【実施例】ウェーハの面取り角度11°を目標形状として、テーパ部の角度が12°の砥石を試作した。この砥石を使用して、ウェーハ仕上がり角度の研削回数の増加に伴う変化を調べた結果を図5に示した。ここで、形状の許容範囲を面取り角度で10°〜12°(11°±1°)としたところ、27000 回まで使用することができた。なお、従来例の寿命は15000 回が通常であるから、本発明例は80%もの寿命延長が可能となった。」

(2)上記記載からみて、引用文献5には、次の技術的事項が記載されていると認められる。

「ウェーハの面取り角度11°を目標形状として、テーパ部の角度が12°の砥石を試作し、この砥石を半導体ウェーハの面取り加工に使用して、ウェーハ仕上がり角度の研削回数の増加に伴う変化を調べ、ここで、形状の許容範囲を面取り角度で10°〜12°(11°±1°)としたこと。」

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア 引用発明における「ノッチ1b」、「Siウェハ1」、「外縁部」、「面取り加工」、「ラップ加工」、「エッチ加工」は、それぞれ、本願発明1における「ノッチ」、「シリコンウェーハ」、「周縁部」、「面取り工程」、「ラッピング(工程)」、「エッチング工程」に相当する。

イ 引用発明は、「外縁部にノッチ1bが形成されているSiウェハ1の外縁部に面取り加工を施し、面取り加工部4を形成し」、「面取り加工部4の加工は、砥石54を使用し、砥石54の回転等を適宜制御することにより行」うものであるから、ノッチ1bを有するSiウェハ1の外縁部を研削して面取り加工を施すものであるといえる。
したがって、本願発明1と引用発明とは、「ノッチを有するシリコンウェーハの周縁部を研削して面取り加工を行う面取り工程」を含む点で一致する。

ウ 引用発明は、「次に、Siウェハ1の両面にラップ加工を施」すものであるから、本願発明1と引用発明とは、「該面取り工程の後に、前記シリコンウェーハの主面にラッピングを行うラッピング工程」を含む点で一致する。

エ 引用発明は、「面取り加工部4は、ノッチ1bにも形成されており、ノッチ1bの加工は当該ノッチ1bの寸法形状等に適合させた比較的小口径の砥石を使用する」ものであるから、本願発明1と引用発明とは、「前記面取り工程において、所望の面取り形状となるように、砥石を用いて、前記ノッチの面取り加工を行う」点で共通する。

オ したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

<一致点>
「ノッチを有するシリコンウェーハの周縁部を研削して面取り加工を行う面取り工程と、
該面取り工程の後に、前記シリコンウェーハの主面にラッピングを行うラッピング工程と、
該ラッピング工程の後に、前記シリコンウェーハにエッチング加工を行うエッチング工程とを含むシリコンウェーハの製造方法であって、
前記面取り工程において、所望の面取り形状となるように、砥石を用いて、前記ノッチの面取り加工を行うシリコンウェーハの製造方法。」

<相違点>
<相違点1>
本願発明1は、「該エッチング工程の後に、前記シリコンウェーハの面取り部の鏡面面取り加工を行う鏡面面取り工程」を含むのに対し、引用発明は、そのような工程を含むことは特定されていない点。

<相違点2>
面取り工程における、ノッチの面取り加工について、本願発明1では、「前記シリコンウェーハの前記ノッチの前記面取り部の断面形状において、前記シリコンウェーハの第1の主面に接続する傾斜部の前記第1の主面に対する傾斜角度をθ1とし、前記シリコンウェーハの第2の主面に接続する傾斜部の前記第2の主面に対する傾斜角度をθ2と定義したとき、前記面取り工程において、前記ノッチにおける前記傾斜部の傾斜角度θ1及びθ2が12°以下(11°を除く)の所望の面取り形状となるように」、行うのに対し、引用発明は、「面取り加工部4は、ノッチ1bにも形成されており、ノッチ1bの加工は当該ノッチ1bの寸法形状等に適合させた比較的小口径の砥石を使用する」ものの、ノッチ1bの面取り部の断面形状について特定されていない点。

<相違点3>
面取り工程における、ノッチの面取り加工について、本願発明1では、「砥石に前記所望の面取り形状に形作られた溝に前記シリコンウェーハのノッチを当接し、該シリコンウェーハのノッチを前記砥石の溝形状に成形することで」、行うのに対し、引用発明は、「面取り加工部4は、ノッチ1bにも形成されており、ノッチ1bの加工は当該ノッチ1bの寸法形状等に適合させた比較的小口径の砥石を使用する」ものの、本願発明1の上記のような特定はなされていない点。

(2)相違点についての判断
ア 事案に鑑み、まず、相違点2について検討する。

引用文献2には、ノッチを有するシリコンウエーハWの外周部を面取りする面取り工程は開示されているものの、面取り工程において、ノッチの面取り加工を行うことは記載されていない。
引用文献5に記載の技術的事項は、「ウェーハの面取り角度11°を目標形状として、テーパ部の角度が12°の砥石を試作し、この砥石を半導体ウェーハの側端部を研削して面取り加工に使用して、ウェーハ仕上がり角度の研削回数の増加に伴う変化を調べ、ここで、形状の許容範囲を面取り角度で10°〜12°(11°±1°)としたこと」であるから、引用文献5には、半導体ウェーハの側端部を研削して面取り加工を行う面取り工程について開示されているといえるものの、当該半導体ウェーハがノッチを有し、前記面取り工程において、前記ノッチの面取り加工を行うことついては開示されていない。
引用文献3には、ブロック11の外周面全体に環状凸部12,12・・が形成され、面取り加工を受けた単結晶ウエーハを複数枚重ね合わせて一体化したような特殊形状のブロック14であって、ノッチが形成されているブロック14のノッチ部15に面取りを行うことは開示されているものの、半導体ウェーハを面取り加工することは開示されていない。
引用文献4には、単結晶シリコンウェハについては記載されているものの、当該シリコンウェハがノッチを有するものであることも、当該シリコンウェハの面取り加工を行うことも開示されていない。

以上のとおり、引用文献2〜5から、ノッチを有するシリコンウェーハの面取り工程において、ノッチの面取り加工を、ノッチの面取り部の断面形状に着目して行う記載を見出せず、また、ノッチを有するシリコンウェーハの周縁の面取り部の断面形状とノッチの面取り部の断面形状を同じにすることが技術常識であるとも認められない。

そうすると、当業者といえども、引用発明において、ノッチ1bの加工を、引用文献2〜5に記載された技術的事項に基づいて、相違点2に係る本願発明1の、「前記シリコンウェーハの前記ノッチの前記面取り部の断面形状において、前記シリコンウェーハの第1の主面に接続する傾斜部の前記第1の主面に対する傾斜角度をθ1とし、前記シリコンウェーハの第2の主面に接続する傾斜部の前記第2の主面に対する傾斜角度をθ2と定義したとき、前記ノッチにおける前記傾斜部の傾斜角度θ1及びθ2が12°以下(11°を除く)の所望の面取り形状となるように」、行うという構成に容易に想到することはできない。

イ したがって、上記相違点1、相違点3について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明、引用文献2〜5に記載された技術事項に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明2、3について
本願発明2、3は、本願発明1の「前記シリコンウェーハの前記ノッチの前記面取り部の断面形状において、前記シリコンウェーハの第1の主面に接続する傾斜部の前記第1の主面に対する傾斜角度をθ1とし、前記シリコンウェーハの第2の主面に接続する傾斜部の前記第2の主面に対する傾斜角度をθ2と定義したとき、前記面取り工程において、前記ノッチにおける前記傾斜部の傾斜角度θ1及びθ2が12°以下(11°を除く)の所望の面取り形状となるように」、「前記ノッチの面取り加工を行う」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2〜5に記載された技術的事項に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。

第7 原査定について
本件補正後の本願発明1〜3は、「前記シリコンウェーハの前記ノッチの前記面取り部の断面形状において、前記シリコンウェーハの第1の主面に接続する傾斜部の前記第1の主面に対する傾斜角度をθ1とし、前記シリコンウェーハの第2の主面に接続する傾斜部の前記第2の主面に対する傾斜角度をθ2と定義したとき、前記面取り工程において、前記ノッチにおける前記傾斜部の傾斜角度θ1及びθ2が12°以下(11°を除く)の所望の面取り形状となるように」、「前記ノッチの面取り加工を行う」という構成を有するものとなっているから、本願発明1〜3は、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1〜5に記載された発明に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-09-14 
出願番号 P2019-012962
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 瀧内 健夫
特許庁審判官 恩田 春香
佐藤 智康
発明の名称 シリコンウェーハの製造方法  
代理人 大塚 徹  
代理人 好宮 幹夫  
代理人 小林 俊弘  

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