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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04W
管理番号 1389267
総通号数 10 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-01-26 
確定日 2022-09-13 
事件の表示 特願2019−505574「無線通信装置及び無線通信方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 9月20日国際公開、WO2018/167858、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2017年(平成29年)3月14日を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和2年 2月 7日 :手続補正書、上申書の提出
令和3年 4月 7日付け:拒絶理由通知書
令和3年 6月17日 :意見書の提出
令和3年10月21日付け:拒絶査定
令和4年 1月26日 :拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和3年10月21日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項 2及び5に対して、引用例1及び2
・請求項 1、3、4に対して、引用例1ないし3

引用文献等一覧
1.Apple, LG Electronics,RoHC Symmetric DL/UL Parameters Limitation in LTE,3GPP TSG-RAN WG2 #97 R2-1701761,3GPP,2017年02月04日アップロード(以下、「引用例1」という。)
2.米国特許出願公開第2016/0183123号明細書(以下、「引用例2」という。)
3.特開2016−046652号公報(以下、「引用例3」という。)
ここで、拒絶査定における「引用文献等一覧」では「2.特開2016−046652号公報」、「3.米国特許出願公開第2016/0183123号明細書」となっているが、拒絶査定の文面から、「2.」が「米国特許出願公開第2016/0183123号明細書」であり、「3.」が「特開2016−046652号公報」であることは明らかであるから、上記のように認定した。

第3 本願発明
本願請求項1ないし3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明3」という。)は、令和4年1月26日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
上りリンクまたは下りリンクの何れか一方に、パケット・データ・コンバージェンス・プロトコル・レイヤにおけるヘッダ圧縮を適用する非対称ヘッダ圧縮を実行する無線通信装置であって、
前記無線通信装置の能力情報を対向無線通信装置に通知する能力通知部を備え、
前記能力通知部は、前記上りリンク及び前記下りリンクの両方に前記ヘッダ圧縮を適用する対称ヘッダ圧縮の内容を示すフィールドと、前記対称ヘッダ圧縮の内容を示すフィールドとは別個である前記非対称ヘッダ圧縮の内容を示すフィールドとを含む前記能力情報を通知する無線通信装置。
【請求項2】
前記非対称ヘッダ圧縮の内容を示すフィールド、及び前記対称ヘッダ圧縮の内容を示すフィールドは、サポート可能な前記ヘッダ圧縮のプロファイルと、前記ヘッダ圧縮に用いることができるセッション数と含み、
前記能力通知部は、少なくとも前記非対称ヘッダ圧縮のプロファイルについて、前記対称ヘッダ圧縮のプロファイルを示すフィールドを共用する請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
上りリンクまたは下りリンクの何れか一方に、パケット・データ・コンバージェンス・プロトコル・レイヤにおけるヘッダ圧縮を適用する非対称ヘッダ圧縮を実行する無線通信装置における無線通信方法であって、
前記上りリンク及び前記下りリンクの両方に前記ヘッダ圧縮を適用する対称ヘッダ圧縮の内容を示すフィールドと、前記対称ヘッダ圧縮の内容を示すフィールドとは別個である前記非対称ヘッダ圧縮の内容を示すフィールドとを、前記無線通信装置の能力情報に含めるステップと、
前記能力情報を対向無線通信装置に通知するステップと
を含む無線通信方法。」

第4 引用例の記載及び引用発明
1 原査定の拒絶の理由に引用された、Apple, LG Electronics,RoHC Symmetric DL/UL Parameters Limitation in LTE(当審訳:LTE におけるRoHC対称DL/ULパラメータの制限),3GPP TSG-RAN WG2 #97 R2-1701761,3GPP,2017年02月04日アップロード(引用例1)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

「It is important that the eNB and the UE could enable ROHC in uplink or downlink channels only.」(第2ページ第26行)
(当審訳:eNBとUEがアップリンク又はダウンリンクチャネルでのみROHCを有効にできることが重要である。)

上記に「UEがアップリンク又はダウンリンクチャネルでのみROHCを有効にできる」と記載されていることから、引用例1のUEは、アップリンク又はダウンリンクチャネルでのみROHCを有効にできるUEといえる。

したがって、引用例1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「アップリンク又はダウンリンクチャネルでのみROHCを有効にできるUE。」

2 原査定の拒絶の理由に引用された、米国特許出願公開第2016/0183123号明細書(引用例2)には、図面と共に以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

「[0027] Referring to FIG. 1, upon receipt of a User Equipment (UE) capability request from an evolved Node B (eNB) 102 in step 104a, UE 100 transmits its capability information to eNB 102 in step 104b. The capability information includes information indicating whether the UE 100 supports the RoHC function and RoHC profiles indicating RoHC applied targets.」(第2ページ左欄第40行ないし第46行)
(当審訳:[0027]図1を参照すると、ステップ104aにおいて、次世代ノードB(eNB)102からユーザ装置(UE)能力要求を受信すると、端末100は、ステップ104bで基地局102へ自身の能力情報を送信する。能力情報は、ユーザ装置100がRoHC機能をサポートするか否かを示す情報と、RoHC適用対象を示すRoHCプロファイルとを含む。)

したがって、引用例2には、以下の技術事項が記載されていると認められる。

「端末は、基地局へ自身の能力情報を送信し、能力情報は、端末がRoHC機能をサポートするか否かを示す情報と、RoHC適用対象を示すRoHCプロファイルとを含む。」

3 原査定の拒絶の理由に引用された、特開2016−046652号公報(引用例3)には、図面と共に以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

「【0012】
ユーザ装置UEは、ROHCのメモリ領域数に関する最大値(例: 非特許文献3に記載のmaxNumberROHC−ContextSessions parameter)を基地局装置eNBに能力値として通知するが、この能力値は、ROHCが適用される全てのベアラの合計の能力値である。」

よって、引用例3には、以下の技術事項が記載されていると認められる。

「ユーザ装置UEは、ROHCのメモリ領域数に関する最大値を基地局装置eNBに能力値として通知する。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、以下のことがいえる。

ア 引用発明の「UE」が無線通信装置の一種であることは明らかであるから、本願発明1の「無線通信装置」に含まれる。
そして、引用発明の「アップリンク」と「ダウンリンク」は、それぞれ本願発明1の「上りリンク」と「下りリンク」に相当する。
更に、引用発明の「アップリンク又はダウンリンクチャネルでのみROHCを有効」とは、アップリンク又はダウンリンクチャネルのどちらかでのみROHCを有効にすることであるから、アップリンクまたはダウンリンクの何れか一方にROHCを適用する非対称のROHCを実行するといえる。ここで、引用発明の「ROHC」はパケット・データ・コンバージェンス・プロトコル・レイヤにおけるヘッダ圧縮技術であることは技術常識であるから、引用発明の「アップリンク又はダウンリンクチャネルでのみROHCを有効」とは、アップリンクまたはダウンリンクの何れか一方に、パケット・データ・コンバージェンス・プロトコル・レイヤにおけるヘッダ圧縮を適用する非対称ヘッダ圧縮を実行することといえる。
よって、引用発明の「アップリンク又はダウンリンクチャネルでのみROHCを有効にできるUE」は、本願発明1の「上りリンクまたは下りリンクの何れか一方に、パケット・データ・コンバージェンス・プロトコル・レイヤにおけるヘッダ圧縮を適用する非対称ヘッダ圧縮を実行する無線通信装置」に含まれる。

以上を総合すると、本願発明1と引用発明とは、以下の点で一致し、また、相違している。

(一致点)
「 上りリンクまたは下りリンクの何れか一方に、パケット・データ・コンバージェンス・プロトコル・レイヤにおけるヘッダ圧縮を適用する非対称ヘッダ圧縮を実行する無線通信装置。」

(相違点)
本願発明1では、
「 前記無線通信装置の能力情報を対向無線通信装置に通知する能力通知部を備え、
前記能力通知部は、前記上りリンク及び前記下りリンクの両方に前記ヘッダ圧縮を適用する対称ヘッダ圧縮の内容を示すフィールドと、前記対称ヘッダ圧縮の内容を示すフィールドとは別個である前記非対称ヘッダ圧縮の内容を示すフィールドとを含む前記能力情報を通知する」
のに対し、引用発明においては、当該発明特定事項が特定されていない点。

(2)判断
相違点に係る本願発明1の一部の発明特定事項として「前記上りリンク及び前記下りリンクの両方に前記ヘッダ圧縮を適用する対称ヘッダ圧縮の内容を示すフィールドと、前記対称ヘッダ圧縮の内容を示すフィールドとは別個である前記非対称ヘッダ圧縮の内容を示すフィールドとを含む前記能力情報」が特定されている。
上記「第4」の「2」及び「3」のように、引用例2及び引用例3には「前記上りリンク及び前記下りリンクの両方に前記ヘッダ圧縮を適用する対称ヘッダ圧縮の内容を示すフィールドと、前記対称ヘッダ圧縮の内容を示すフィールドとは別個である前記非対称ヘッダ圧縮の内容を示すフィールドとを含む前記能力情報」は記載されておらず、無線通信技術分野において周知技術であるともいえない。
よって、引用発明において、上記相違点に係る本願発明1の一部の発明特定事項である「前記上りリンク及び前記下りリンクの両方に前記ヘッダ圧縮を適用する対称ヘッダ圧縮の内容を示すフィールドと、前記対称ヘッダ圧縮の内容を示すフィールドとは別個である前記非対称ヘッダ圧縮の内容を示すフィールドとを含む前記能力情報」を通知することは、当業者といえども、容易に想到し得たとはいえない。
したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明、引用例2及び3に記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2について
本願発明2は、本願発明1の発明特定事項を全て含むから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用例2及び3に記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

3 本願発明3について
本願発明3は、本願発明1に対応する無線通信装置における無線通信方法であり、本願発明1の上記相違点の一部の発明特定事項に対応する「前記上りリンク及び前記下りリンクの両方に前記ヘッダ圧縮を適用する対称ヘッダ圧縮の内容を示すフィールドと、前記対称ヘッダ圧縮の内容を示すフィールドとは別個である前記非対称ヘッダ圧縮の内容を示すフィールドとを、前記無線通信装置の能力情報に含める」を含むことから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用例2及び3に記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 原査定についての判断
令和4年1月26日にされた手続補正により、本願発明1及び本願発明2は、少なくとも「前記上りリンク及び前記下りリンクの両方に前記ヘッダ圧縮を適用する対称ヘッダ圧縮の内容を示すフィールドと、前記対称ヘッダ圧縮の内容を示すフィールドとは別個である前記非対称ヘッダ圧縮の内容を示すフィールドとを含む前記能力情報」という発明特定事項を備えるものとなっている。また、本願発明3は、少なくとも「前記上りリンク及び前記下りリンクの両方に前記ヘッダ圧縮を適用する対称ヘッダ圧縮の内容を示すフィールドと、前記対称ヘッダ圧縮の内容を示すフィールドとは別個である前記非対称ヘッダ圧縮の内容を示すフィールドとを、前記無線通信装置の能力情報に含める」という発明特定事項を備えるものとなっている。
してみれば、上記「第5」のとおり、本願発明1ないし3は、当業者であっても、原査定において引用された引用発明、引用例2及び3に記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-08-30 
出願番号 P2019-505574
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04W)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 廣川 浩
特許庁審判官 石田 紀之
中木 努
発明の名称 無線通信装置及び無線通信方法  
代理人 三好 秀和  

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