• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F16H
管理番号 1389288
総通号数 10 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-02-16 
確定日 2022-10-04 
事件の表示 特願2018− 63697「歯車装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年10月10日出願公開、特開2019−173898、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成30年3月29日の出願であって、令和3年7月29日付けで拒絶理由通知がされ、令和3年10月4日に手続補正がされ、令和3年11月5日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、令和4年2月16日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(令和3年11月5日付け拒絶査定)の概要は、次のとおりである。

本願請求項1、2及び4ないし7に係る発明は、特開2009−2485号公報(以下「引用文献1」という。)に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第5項までの要件に違反しているものとはいえない。
審判請求時の補正によって請求項2及び3に句点である「。」を追加する補正は、明らかに誤記の訂正を目的とするものである。
また、審判請求時の補正によって請求項3の「基部」を「保持板」とする補正は、誤記の訂正を目的とするものであって、当初図面の【図3】に、潤滑剤リテーナが、軸受の内輪と「保持板」の間に挟まれることが記載されているから、当初明細書等に記載された事項であり、新規事項を追加するものではない。

第4 本願発明
本願請求項1ないし7に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明7」という。)は、令和4年2月16日付けの手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
歯車が収納された潤滑剤貯留空間より上に配置される軸受と、前記軸受を支持するケーシングと、を備える歯車装置であって、
前記軸受は、前記潤滑剤貯留空間とは別に潤滑剤が封入される封入空間を有し、
前記軸受の下方に配置され、前記封入空間の潤滑剤の流出を抑制する潤滑剤リテーナを有し、
前記潤滑剤リテーナを前記潤滑剤リテーナの下側で支持する保持板を有し、
前記保持板と前記ケーシングの間の隙間は、前記潤滑剤リテーナと前記ケーシングの間の隙間より狭いことを特徴とする歯車装置。
【請求項2】
前記潤滑剤リテーナは、径方向に張り出す基部と、前記基部から前記軸受側に突出する突出部を有し、
前記突出部は、前記ケーシングと対向して隙間を形成することを特徴とする請求項1に記載の歯車装置。
【請求項3】
前記潤滑剤リテーナは、前記軸受の内輪と前記保持板との間に挟まれることを特徴とする請求項2に記載の歯車装置。
【請求項4】
前記保持板と前記ケーシングの互いに対向する面の少なくとも一方に油溝が設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の歯車装置。
【請求項5】
前記油溝は、前記保持板に設けられることを特徴とする請求項4に記載の歯車装置。
【請求項6】
前記ケーシングには空気孔が設けられ、前記空気孔の上端は前記保持板より上に位置することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の歯車装置。
【請求項7】
前記空気孔の下端は前記保持板より下に位置することを特徴とする請求項6に記載の歯車装置。」

第5 引用文献、引用発明等
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

1.「【0002】
図4にケーシング内に鉛直方向に配置される鉛直軸を、一対の軸受によって支持した従来のウォーム減速機の構成例を示す。」
2.「【0003】
・・・(中略)・・・ウォーム減速機10のケーシング18内には、潤滑油(オイル)OLがウォームピニオン14とウォームギヤ16との噛合位置付近の高さH1まで封入されている。・・・(後略)。」
3.「【0004】
この結果、鉛直に配置された入力軸12を支持している下側の軸受20は該潤滑油OLによって潤滑できるものの、上側の軸受22は、該潤滑油OLによって潤滑することができないため、該軸受22内に給脂口28を介してグリースが封入され、該グリースによって潤滑がなされるように構成されている。なお、図4の符号26は封入されたグリースが減速機内に侵入するのを防止するためのシール部材、24は上側の軸受22の内圧が所定値以上となったときに該軸受22内のエアをケーシング外に逃がすリリーフ弁(図示略)付きの排脂口である。また、符号30は、潤滑油OLのケーシング18外への漏出を防止するオイルシールである。なお、ケーシング18内の内圧が上昇したときは、ケーシング上方に形成されている図示せぬエアブリーザ(エアベント)からエアが抜けるようになっている。」
4.「【0016】
図1は、本発明の実施形態の一例が適用されたウォーム減速機の図4相当の断面図である。」
5.「【0017】
このウォーム減速機38は、ケーシング40内に鉛直方向に配置される入力軸42を備える。減速機38のケーシング40内には潤滑油(オイル)OLが所定の高さH1まで封入される。」
6.「【0019】
・・・(中略)・・・入力軸42を支持するこの上軸受44A、下軸受44B内には、双方ともグリースが封入される。」
7.「【0021】
・・・(中略)・・・上軸受44Aは、軸受ケージ62A内に収められている。軸受ケージ62Aは、鍔部64Aを備え、該鍔部64Aの部分でボルト66Aにより上側蓋体68Aと共にケーシング40に固定されている。」
8.「【0022】
上側蓋体68Aは、上軸受44Aの内部にグリースを封入するための給脂口72A及び排脂口70Aを備える。排脂口70Aは、ケーシング40内のエアが所定圧以上となったときに該ケーシング40内のエアの一部をケーシング外に抜き出す「リリーフ弁」としての機能を有する。このグリースの給脂口72A及び排脂口70A自体の構造は、図4を用いて説明した従来の給脂口28及び排脂口24の構成と基本的に同様の構成を採用することができる。・・・」
9.「【0033】
図3に本発明の実施形態の他の一例を示す。」
10.「【0034】
この実施形態は、本発明の趣旨を充足しながら、各部の構成を簡略化することにより低コスト化を図ったものである。このウォーム減速機90では、スペーサ92A、92Bがリング状のプレートで形成されている。また、上軸受44A、下軸受44Bの軸受ケージ94A、94Bは、鍔部96A、96B、円筒部98A、98Bからなる断面ハット状のシンプルな形状とされている。隙間δ3は、軸受ケージ94A、94B(の円筒部98A、98B)とスペーサ92A、92Bとの間に形成される。」
11.「【0035】
なお、スペーサ92A、92Bは、上軸受44A、あるいは下軸受44Bの内輪45A、45Bと入力軸42の段差部43A、43Bに当接配置された軸方向スペーサ91A、91Bに挟まれることによって、その軸方向位置が規制されている。」
12.「【0040】
なお、本発明では、従来(図4)の符号26に相当するシール部材、即ち軸受内のグリースのケーシング内への移動を阻止可能とするシール部材の併設を禁止するものではない。即ち、このシール部材は必ずしも必要な部材ではないが、この種のシール部材を隙間の開口付近に配置することにより、グリースの通過の遮断をより積極的にできるようになり、必要ならば隙間をグリースが若干通れる程更に大きめの大きさに設定することができる場合がある。この場合は、該大きめの隙間とシール部材とで請求項7における「エアは通れるがグリースは通れない閉塞状態」を形成することになる。グリースのより確実な軸受内の保持と、エアのより円滑な通過を両立させるには、この手法が用いられてもよい。」

上記記載事項1.ないし11.並びに【図3】及び【図4】の記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
13.上記【0003】の記載及び【図4】の記載より、ウォームピニオン14及びウォームギヤ16は潤滑剤貯留空間に収納されている、といえる。
14.上記【0004】、【0021】及び【0034】の記載より、上側の軸受22は、入力軸12を支持すべく、ケーシング18及び軸受ケージに支持されている、といえる。
15.上記【0004】の記載より、上側の軸受22は、潤滑剤貯留空間とは別にグリースが封入される封入空間を有している、といえる。
16.上記【0004】の記載及び【図4】の記載より、シール部材26は、上側の軸受22の下方に配置され、封入空間のグリースの流出を抑制するものである、といえる。
17.上記【0017】の記載及び【図3】の記載より、ウォームピニオン及びウォームギヤは潤滑剤貯留空間に収納されている、といえる。
18.上記【0021】及び【0034】の記載並びに【図3】の記載より、上軸受44Aは、軸受ケージ94A及びケーシングに支持されている、といえる。
19.上記【0019】及び【0022】の記載より、上軸受44Aは、潤滑剤貯留空間とは別にグリースが封入される封入空間を有している、といえる。
20.上記【0034】及び【0035】の記載並びに【図3】の記載より、スペーサ92Aは、上軸受44Aの下方に配置され、軸受ケージ94Aとの間に隙間δ3を有している、といえる。

したがって、上記記載事項1.ないし3.、上記認定事項13.ないし16.より、引用文献1には次の発明が記載されていると認められる。

「ウォームピニオン14及びウォームギヤ16が収納された潤滑剤貯留空間より上に配置される上側の軸受22と、前記上側の軸受22を支持するケーシング18及び軸受ケージと、を備えるウォーム減速機10であって、
前記上側の軸受22は、潤滑剤貯留空間とは別にグリースが封入される封入空間を有し、
前記上側の軸受22の下方に配置され、前記封入空間のグリースの流出を抑制するシール部材26を有するウォーム減速機10。」(以下「引用発明1A」という。)

また、上記記載事項4.ないし11.、上記認定事項17.ないし20.より、引用文献1には次の発明も記載されていると認められる。

「ウォームピニオン及びウォームギヤが収納された潤滑剤貯留空間より上に配置される上軸受44Aと、前記上軸受44Aを支持する軸受ケージ94A及びケーシングと、を備えるウォーム減速機90であって、前記上軸受44Aは、前記潤滑剤貯留空間とは別にグリースが封入される封入空間を有し、
前記上軸受44Aの下方に配置されたスペーサ92Aを有し、
前記スペーサ92Aと前記軸受ケージ94A及びケーシングの間に隙間δ3を有するウォーム減速機90。」(以下「引用発明1B」という。)

第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1Aとを対比すると、次のことがいえる。
引用発明1Aにおける「ウォームピニオン14及びウォームギヤ16」は、本願発明1における「歯車」に相当し、以下同様に、前者の「上側の軸受22」は後者の「軸受」に、前者の「ケーシング18及び軸受ケージ」は後者の「ケーシング」に、前者の「ウォーム減速機10」は後者の「歯車装置」に、前者の「グリース」は後者の「(潤滑剤貯留空間とは別の)潤滑剤」に、前者の「シール部材26」は後者の「潤滑剤リテーナ」に、それぞれ相当する。

そうすると、本願発明1と引用発明1Aとの間には、次の一致点及び相違点があるといえる。

(一致点)
「歯車が収納された潤滑剤貯留空間より上に配置される軸受と、前記軸受を支持するケーシングと、を備える歯車装置であって、前記軸受は、前記潤滑剤貯留空間とは別に潤滑剤が封入される封入空間を有し、前記軸受の下方に配置され、前記封入空間の潤滑剤の流出を抑制する潤滑剤リテーナを有する歯車装置。」

(相違点1)
本願発明1は、「潤滑剤リテーナを前記潤滑剤リテーナの下側で支持する保持板を有し、前記保持板と前記ケーシングの間に隙間」を有するものであるのに対し、引用発明1Aは、かかる保持板を有していない点。
(相違点2)
本願発明1は、「前記潤滑剤リテーナと前記ケーシングの間の隙間」を有し、当該隙間より「前記保持板と前記ケーシングの間の隙間は」「狭い」ものであるのに対し、引用発明1Aは、シール部材26と軸受ケージ及びケーシング18の間の隙間が特定されておらず、したがって、「前記保持板と前記ケーシングの間の隙間は、前記潤滑剤リテーナと前記ケーシングの間の隙間より狭い」に相当する関係も特定されていない点。

(2)相違点についての判断
(相違点1について)
ア 「第5 引用文献、引用発明等」に記載のとおり、引用文献1には、引用発明1Bが記載されており、引用発明1Bにおける「上軸受44A」は本願発明1における「軸受」に相当する。
しかしながら、相違点1に係る本願発明1の「保持板」は、「潤滑剤リテーナを潤滑剤リテーナの下側で支持する」ものであるから、潤滑剤リテーナたるシール部材を有しない引用発明1Bにおける「スペーサ92A」とは異なるものである(スペーサ92Aは、軸受ケージ94Aとの間に隙間δ3を形成するものである。上記記載事項10.参照。)。
イ ここで、引用文献1の【0040】には「従来(図4)の符号26に相当するシール部材、即ち軸受内のグリースのケーシング内への移動を阻止可能とするシール部材の併設を禁止するものではない。即ち、このシール部材は必ずしも必要な部材ではないが、この種のシール部材を隙間の開口付近に配置することにより、グリースの通過の遮断をより積極的にできるようになり、必要ならば隙間をグリースが若干通れる程更に大きめの大きさに設定することができる場合がある。」との記載があり(上記記載事項12.)、当該記載に触れた当業者であれば、シール部材26を有する引用発明1Aに、スペーサ92Aを有する引用発明1Bを適用し、シール部材26とスペーサ92Aとの併設の示唆がある。
ウ しかしながら、両発明を組み合わせる具体的態様については、同段落には、「シール部材の併設」及び「シール部材を隙間の開口付近に配置」と記載されているにすぎず、引用文献1にはシール部材26とスペーサ92Aとの配置を含む構造的関係が記載も示唆もされていない。そうすると、たとえ両発明を組み合わせたとしても、引用発明1Bのスペーサ92Aについて、これを引用発明1Aのシール部材26の下側に配置して、下側からシール部材26を支持する構成に変更することの動機付けがあるとはいえない。
エ また、当業者が引用発明1Aにおいてスペーサ92Aをシール部材26の下側に配置することができたとしても、引用発明1Aのシール部材26は、【図4】の記載及び技術常識(審判請求書【請求の理由】4(3−1)(リ)参照)からみて、軸受ケージに固定され入力軸12(上記記載事項3.)と摺動するものであり、他方、引用発明1Bのスペーサ92Aは、【0035】及び【図3】の記載からみて、入力軸42(上記記載事項11.)に固定されていることから、シール部材26とスペーサ92Aは相対回転することになる。そうすると、各々の固定態様に照らして、両発明を組み合わせる際に相対回転することになるシール部材26とスペーサ92Aについて、少なくとも、当該スペーサ92Aを「シール部材26を下側で支持する」構成に変更することの動機付けがあるとはいえない。
オ 以上のとおり、たとえ引用発明1Aに引用発明1Bを適用する動機付けがあるとしても(上記イ)、両発明を組み合わせる際に、相違点1に係る本願発明1の構成のように変更することの動機付けまではなく(上記ウ及びエ)、また、引用発明1Bのスペーサ92Aの本来の機能(上記ア)にも照らすと、両発明を組み合わせても、相違点1に係る本願発明1の構成に到達することはできない。
よって、相違点1に係る本願発明1の構成については、引用発明1A及び1Bに基いて容易想到であるとはいえない。

(相違点2について)
「(相違点1について)」で述べたように、引用発明1Aのシール部材26は軸受ケージに固定され入力軸12と摺動するものであることから(上記エ)、当業者にとって、引用発明1Aにおいて、シール部材26と軸受ケージ及びケーシング18の間に隙間を設けることの動機付けがあるとはいえない。かえって、かかる隙間を設けるとシール部材26と軸受ケージとの固定に影響を及ぼすことになるから、かかる隙間を設けることについて阻害要因があるともいえる。したがって、引用発明1Aに引用発明1Bにおけるスペーサ92Aを適用したとしても、相違点2に係る本願発明1の構成が容易想到であるとはいえない。

よって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明1A及び1Bに基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

2.本願発明2ないし7について
本願発明2ないし7も、本願発明1の「保持板」を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1A及び1Bに基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし7は、当業者が引用発明1A及び1Bに基いて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2022-09-21 
出願番号 P2018-063697
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F16H)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 平瀬 知明
特許庁審判官 保田 亨介
内田 博之
発明の名称 歯車装置  
代理人 富所 輝観夫  
代理人 森下 賢樹  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ